(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6545384
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】エレベータのロープ監視装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20190705BHJP
【FI】
B66B5/02 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-525854(P2018-525854)
(86)(22)【出願日】2016年7月5日
(86)【国際出願番号】JP2016069879
(87)【国際公開番号】WO2018008080
(87)【国際公開日】20180111
【審査請求日】2018年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【弁理士】
【氏名又は名称】別所 公博
(74)【代理人】
【識別番号】100206782
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰洋
(72)【発明者】
【氏名】饗場 純一
(72)【発明者】
【氏名】村上 博行
(72)【発明者】
【氏名】平井 敬秀
(72)【発明者】
【氏名】小泉 賢一
(72)【発明者】
【氏名】若土 剛之
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
実開平2−145276(JP,U)
【文献】
特開2010−215410(JP,A)
【文献】
特開2012−188259(JP,A)
【文献】
特開2010−222143(JP,A)
【文献】
特開2004−099328(JP,A)
【文献】
特開昭55−048181(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0046463(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/158871(WO,A1)
【文献】
中国実用新案第203079457(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 − 5/28
B66B 7/00 − 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内に設けられた制御盤と、
第1滑車に対応して設けられた一対の第1ロープ外れ止めとを備えたエレベータのロープ監視装置であって、
前記一対の第1ロープ外れ止めの少なくとも一方にロープが衝突したことを検出する、一つの第1衝突検出センサをさらに備え、
前記制御盤は、前記第1衝突検出センサによって前記一対の第1ロープ外れ止めの両方に前記ロープが衝突したことが検出されたときに前記ロープの変形が生じているものと判断する判断部を含む、
エレベータのロープ監視装置。
【請求項2】
前記制御盤は、演算部を含み、前記演算部は、1回目の衝突があったとき、衝突のあった滑車の情報およびかご速度情報とに基づき、1回目の衝突から2回目の衝突までの衝突時間間隔を演算し、
前記判断部は、2回目の衝突が、1回目の衝突から前記衝突時間間隔の範囲内にあったときに、前記ロープの変形の発生を確定する、
請求項1のエレベータのロープ監視装置。
【請求項3】
第2滑車に対応して設けられた一対の第2ロープ外れ止めと、
前記一対の第2ロープ外れ止めにロープが衝突したことを検出する第2衝突検出センサとをさらに備え、
前記一対の第1ロープ外れ止めの両方に前記ロープが衝突した後、かごの速度が変更され、前記一対の第2ロープ外れ止めにロープの両方に前記ロープが衝突したときには、前記判断部は、前記一対の第1ロープ外れ止めに関する衝突間隔時間と、前記一対の第2ロープ外れ止めに関する衝突間隔時間との変化をもって、前記ロープの変形の発生を確定する、
請求項1のエレベータのロープ監視装置。
【請求項4】
第2滑車に対応して設けられた一対の第2ロープ外れ止めと、
前記一対の第2ロープ外れ止めにロープが衝突したことを検出する第2衝突検出センサとをさらに備え、
前記判断部は、衝突間隔時間の長さから、衝突が生じた滑車を特定する、
請求項1のエレベータのロープ監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのロープ監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、上下に延びる昇降路と、その中を移動可能に設けられたかごとを備えている。かごは、ロープによって吊り下げられており、ロープを巻上機で駆動することによって、かごの昇降がなされる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロープに、部分的な変形が存在していることを検出する技術が開示されている。具体的には、振動検出センサと、時刻情報と、かご位置情報とを使用し、ロープ外れ止めに、ロープの変形部分が衝突したときの振動を検出し、変形部分の存在位置を検知する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5203339号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示の装置では、ロープにおける変形部分の位置を特定するために、複数回、エレベータを走行させる必要がある。よって、より短時間で、ロープの変形部の存在を検出することができれば、より好ましい。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ロープの破断を短時間で検出することができる、エレベータのロープ監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明は、昇降路内に設けられた制御盤と、第1滑車に対応して設けられた一対の第1ロープ外れ止めとを備えたエレベータのロープ監視装置であって、前記一対の第1ロープ外れ止めにロープが衝突したことを検出する第1衝突検出センサをさらに備え、前記制御盤は、前記第1衝突検出センサによって前記一対の第1ロープ外れ止めの両方に前記ロープが衝突したことが検出されたときに前記ロープの変形が生じているものと判断する判断部を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロープの破断を短時間で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1を適用するエレベータの概念図である。
【
図2】エレベータのロープ監視装置を概念的に示す構成図である。
【
図3】一つの滑車に関する衝突を説明する図である。
【
図4】ロープ外れ止めへのロープの衝突と、センサの出力との関係を示す図である。
【
図6】本実施の形態2に関する、
図2と同態様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0011】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1を適用するエレベータの概念図である。エレベータは、昇降路1内に、かご3と、釣り合いおもり5と、巻上機7と、制御盤9とを備えている。なお、以下の説明は、巻上機をピットに配置した機械室なしのエレベータを例に行うが、本発明は、これに限定されるものではなく、巻上機を昇降路の上部に支持した機械室なしのエレベータや、機械室を有するエレベータに対して実施することもできる。
【0012】
かご3および釣り合いおもり5は、ロープ11によって、昇降路内に吊り下げられている。かご3の下部には、複数のかご吊り車13が設けられている。また、釣り合いおもり5の上方にはおもり吊り車15が設けられている。さらに、昇降路内の比較的上部には、複数の返し車17が設けられている。そして、ロープ11は、滑車としての、かご吊り車13、おもり吊り車15、返し車17、巻上機7の綱車19に巻き掛けられている。滑車としては、これに限定されるものではなく、例えばそらせ車など、ロープ11が巻き掛けられた対象を広く滑車とする。
【0013】
一例であるが、本実施の形態1では、かご吊り車13、おもり吊り車15、返し車17および綱車19には、それぞれ、ロープ外れ止め21が設けられている。ロープ外れ止めの構造や設置態様は公知のとおりでよい。
【0014】
エレベータのロープ監視装置は、制御盤9と、複数のロープ外れ止め21とを備えている。本発明の最小限の構成として、エレベータのロープ監視装置は、一つの滑車に対応して設けられた一対のロープ外れ止めを備えるものとするが、本実施の形態1では、かご吊り車13、おもり吊り車15、返し車17および綱車19のそれぞれに、一対のロープ外れ止め21が設けられている。
【0015】
図2を参照して、本実施の形態1のエレベータのロープ監視装置の構成について説明する。まず、センサ側として、複数の衝突検出センサ23と、接点出力部25とを備えている。
【0016】
衝突検出センサ23は、一つの滑車ごとに設けられており、一対のロープ外れ止めにロープが衝突したことを検出する。そして、上述したように、一つの滑車には、一対のロープ外れ止め21が設けられている。衝突検出センサ23は、一対のロープ外れ止め21に一つのセンサ部が割り当てられる態様で設けられ、一対のロープ外れ止め21の少なくとも一方にロープが衝突したことを検出する一つのセンサ部を備えているか、または、一つのロープ外れ止め21毎に一つのセンサ部が割り当てられる態様で設けた、一対のセンサ部を備えている。
【0017】
本実施の形態1では、センサ部は、振動を検出できる加速度センサである。
【0018】
接点出力部25には、これら衝突検出センサ23からの検出結果が入力されており、衝突検出センサ23は、いずれかの衝突検出センサ23で衝突が検出された場合、後述する演算部に接点出力する。
【0019】
一方、制御盤側として、本実施の形態1のエレベータのロープ監視装置は、判断部27を備えている。判断部27には、接点出力部25からの上述したように衝突があった旨の接点出力が入力される。判断部27は、後述するように、ロープのストランド破断の有無を判断する。
【0020】
図3は、一つの滑車に関する衝突を説明する図である。
図4は、ロープ外れ止めへのロープの衝突と、センサの出力との関係を示す図である。
図3に示されるように、かご吊り車13、おもり吊り車15、返し車17、綱車19等の何れかの滑車において、例えばストランド破断等であるロープ変形部11aを含んだロープ11が進行しているとする。ロープ11は、矢印Rで示されるように進行し、まず、ロープ変形部11aは、一方のロープ外れ止め21を通過し、滑車の曲りに沿って進行し、さらに、他方のロープ外れ止め21を通過する。
【0021】
よって、
図4に示されるように、一つの滑車において、まず、1回目の衝突が発生し、続いて、2回目の衝突が発生する。つまり、ロープ変形部11aが、一つの滑車を通過するまでに、ロープ変形部11aとロープ外れ止め21との衝突が2回発生することとなる。また、これらの衝突によって、衝突検出センサ23は、2つの振動を検出することとなる。
【0022】
次に、以上のように構成された本実施の形態1のエレベータのロープ監視装置の動作(ロープ変形発生の検出方法)について説明する。まず、
図5に示されるように、ステップS1として、衝突検出センサ23の検出結果として、振動データが接点出力部25に取り込まれると、接点出力部25は、ステップS2として、そのデータの振動の大きさ又は強さが予め設定されている閾値と比較される。本実施の形態1の例では、振動データの振幅と、閾値とを比較する。そして、接点出力部25は、取り込まれた振動の振幅が閾値を超えていた場合に、ステップS3として、接点出力を行う。
【0023】
制御盤9の判断部27では、1つの滑車に対応した1つの衝突検出センサ23の検出結果として、1つの滑車に対応した一対のロープ外れ止め21の両方にロープが衝突したことが検出されたときに、ロープ11に、ロープ変形部11aが生じていることものと判断する。
【0024】
なお、判断部27でロープ変形部11aが生じていることものと判断された後には、エレベータのかご3を停止すると共に、管理者や外部に対して、警報を発するようにしてもよい。
【0025】
上述した本実施の形態1によれば、比較的安価なセンサと演算手段とを使用し、1回の走行で、ランダムに発生しうる振動による誤検知を回避しつつ、ロープ変形部の発生を検出することができる。また、この検出は、1回の走行で完了するため、ロープの破断を短時間で検出することができる。また、ロープに付着した異物が、単に一回だけ、ロープ外れ止めに衝突した場合には、ロープ変形部が発生したものとは認定されない。よって、上記のようにロープの破断を短時間で検出することが可能でありながら、より正確なロープ変形部の発生の有無を判断することができる。また、振動の評価に閾値との比較を含めている場合には、正常なロープの進行において常時、生じている振動が、ロープ変形部の発生の検出精度を低下させにくくなっている。
【0026】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。なお、本実施の形態2は、以下に説明する内容を除いては、上述した実施の形態1と同様であるものとする。
図6は、本実施の形態2に関する、
図2と同態様の図である。
【0027】
本実施の形態2のエレベータのロープ監視装置は、制御盤側として、演算部129と、判断部127とを備えている。判断部127には、接点出力部25からの上述したように衝突があった旨の接点出力に加え、かご位置情報131、かご速度情報133および滑車情報135が入力される。
【0028】
本実施の形態2のエレベータのロープ監視装置の動作(ロープ変形発生の検出方法)について説明する。
図7において、ステップS4として、演算部129において接点入力があると、演算部129には、スッテプ5としてかご位置情報131が読み込まれ、ステップS6としてかご速度情報133が読み込まれ、ステップS7として滑車情報135が読み込まれる。なお、これらステップS5〜S7の処理順序は、
図7の例に限定されない。
【0029】
次に、ステップS8として、演算部129は、ある滑車で1回目の衝突があったとき、その衝突のあった滑車の情報およびかご速度情報とに基づき、1回目の衝突から2回目の衝突までの衝突時間間隔を演算する。判断部27は、算出された衝突時間間隔の間、待機しており、その待機中に、1回目の衝突があった滑車において、2回目の衝突を示す接点入力があった否かを監視する。そして、待機中に接点入力があったときには、警報を発し、なかったときには、その1回目の接点入力は無視する。つまり、判断部は、2回目の衝突が、1回目の衝突から衝突時間間隔の範囲内にあったときに、ロープの変形の発生を最終的に確定する。
【0030】
なお、本実施の形態2では、かご位置情報も得ていることから、衝突時のかご位置と、衝突のあった滑車を通るロープの部位との関係を考慮し、ロープにおけるロープ変形部の生じている部位を特定することもできる。
【0031】
本実施の形態2によっても、上述した実施の形態1と同様な作用効果が得られる。
【0032】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。なお、本実施の形態3は、以下に説明する内容を除いては、上述した実施の形態1と同様であるものとする。
【0033】
実施の形態3として、制御盤は、演算部と、判断部とを含んでいる。第1の滑車に対応した一対のロープ外れ止めの両方にロープが衝突した後には、かごの速度が変更される。第1の滑車に対応した一対のロープ外れ止めの両方にロープが衝突した後、かごの速度が変更され、第2の滑車に対応した一対のロープ外れ止めの両方にロープが衝突したときには、判断部は、第1の滑車に対応した一対のロープ外れ止めの間で生じる2つの衝突間隔時間と、第2の滑車に対応した一対のロープ外れ止めの間で生じる2つの衝突間隔時間との変化が、かごの速度の変更に依拠しているときに、ロープの変形の発生を確定する。
【0034】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。なお、本実施の形態4は、以下に説明する内容を除いては、上述した実施の形態1と同様であるものとする。
【0035】
すなわち、実施の形態4として、制御盤は、演算部と、判断部とを含んでおり、判断部は、衝突検出センサによって実際に検出された衝突間隔時間と、滑車情報およびかご速度情報に基づいて演算部によって演算された衝突間隔時間との長さの比較を行うことで、衝突が生じた滑車を特定する。
【0036】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について説明する。なお、本実施の形態5は、以下に説明する内容を除いては、上述した実施の形態1〜4の何れかと同様であるものとする。
【0037】
本実施の形態5は、衝突検出センサはそれぞれ、加速度センサに代えて、マイクで構成されている。すなわち、ロープ外れ止めにロープ変形部が衝突するとき、衝突音が発生することから、この衝突音を検出することをもって、衝突の発生が検出される。
【0038】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0039】
本願発明には、上述した実施の形態それぞれに関して、いずれか1つ以上の実施の形態の構成の一部または全部を、他の実施の形態に組み合わせるものも含まれる。
【符号の説明】
【0040】
3 かご、9 制御盤、11 ロープ、13 かご吊り車13(滑車)、15 おもり吊り車(滑車)、17 返し車(滑車)、19 綱車(滑車)、21 ロープ外れ止め、23 衝突検出センサ、27 判断部27、127、133 かご速度情報、135 滑車情報。