特許第6545475号(P6545475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6545475
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20190705BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   A62C35/20
   A62C3/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-24730(P2015-24730)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-146906(P2016-146906A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中川 治靖
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−217646(JP,A)
【文献】 特開2001−238976(JP,A)
【文献】 実開昭60−132751(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/20
A62C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道の側部に立設された監査路に設けられ、ホースを収納するホース収納部を備えた箱状の本体と、本体の前面に設けられ、ホース収納部の前方に位置する開口部を有する前面パネルと、前面パネルの開口部に開閉可能に設けられ、背面側に操作レバー及びホースガイドを有する前傾式扉とを備え、前記前傾式扉が上端部分を有する上側扉と下端部分とを有する下側扉とからなり、前記前傾式扉の開放時において、前傾式扉の上端部分を、前傾式扉の下端部分よりも高さ方向において下方に位置させる回動機構が設けられた消火栓装置において、
前記上側扉は、前記下側扉の上端部に対して回動可能に接続されるとともに、背面側に消火ノズルを収納する凹んだ収納部が設けられ、前記下側扉の背面側には、前記ホースガイドが設けられることを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
前記上側扉は、前記前傾式扉全体の長さの3分の1の長さであり、前記下側扉は、前記前傾式扉全体の長さの3分の2の長さであり、前記ホースガイドは、前記上側扉と前記下側扉の境界付近に設けられることを特徴とする請求項1記載の消火栓装置。
【請求項3】
車道の側部に立設された監査路に設けられ、ホースを収納するホース収納部を備えた箱状の本体と、本体の前面に設けられ、ホース収納部の前方に位置する開口部を有する前面パネルと、前面パネルの開口部に開閉可能に設けられ、背面側に操作レバー及びホースガイドを有する前傾式扉とを備えた消火栓装置において、
前記前傾式扉の開放時において、前記前傾式扉を140度に回動させる回動機構を設け、前記本体は前記監査路に固定されたベース上に設けられ、前記ベースは、前記前傾式扉の開放時において、前記前傾式扉の上端部分が前記監査路にあたらないだけの高さを有することを特徴とする消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等に設置される前傾式の消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルには消火栓装置が設けられている。まず、この消火栓装置が設置される箇所について図5を用いて説明する。トンネル1の底面には、車道2が設けられ、その側部には、監視員等が通る監査路3が立設されている。監査路3は、車道より1m程度の高さに設けられる。
監査路3から立ち上がっている壁面5には、箱抜き空間7が形成される。箱抜き空間7は、消火栓装置が収容される大きさであって、例えば、箱状(直方体状)に掘られて形成されている。この箱抜き空間7の床面にベースが固定され、そのベースを介して消火栓装置が配設される。
【0003】
次に箱抜き空間7に設置される消火栓装置9について図6を用いて説明する。消火栓装置9は、ホースを収納するホース収納部を備えた箱状の本体10と、本体10の前面に設けられ、ホース収納部の前方に位置する開口部12cを有する前面パネル12と、前面パネル12の開口部12cに開閉可能に設けられる前傾式扉14とを備えており、前述のベース上に設けられる。
【0004】
前傾式扉14の背面側には、逆U字状のホースガイド16が設けられ、先端に消火ノズル19が接続されたホース20が通されている。また、前傾式扉14の背面には、消火栓の操作レバー22も備えられている。
【0005】
消火栓装置9の前傾式扉14は、前方に倒れるように開放動作するものであり、トンネル1内で火災が発生した場合には、前傾扉14を開放させて、消火活動を行う。
【0006】
前傾式扉14が前傾する機構について、図7図8を用いて説明する。前傾式扉14は金属製であり重みがあることから、操作者が開放させる際、前傾扉14が勢いよく開放しないように、ダンパ18sのような緩衝手段を消火栓装置9内に設けてある。
消火栓装置9の本体10にダンパ18sの一端の取付部89を固定し、また他端の取付部90が前傾式扉14に固定されている。このダンパ18sは、本体内にオイルを備えてその中をシャフト83に形成されたピストンが摺動するようになっている一般的なものである。このピストンは、シャフト83が本体から伸びようとするときには、ピストンが緩慢な動きになり、逆に、縮もうとするときには、軽い力で縮むことができる。
ダンパ18sによって開放する前傾式扉14は、通常の状態から、前方に略90度まで開放する。即ち、前傾式扉14の開放時において、前傾式扉14は監査路3と略平行な位置関係となる。この前傾式扉14の開放状態において、前傾式扉14の先端(上端)は、監査路3の幅内に収まっており、監査路3(車道側の先端)より大きく突出することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−238976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、道路、トンネルにおいては、構造物等により車両や歩行者の交通の安全性・円滑性に支障をきたすことを防ぐため、構造物を配置してはならない一定の幅、一定の高さの範囲を、建築限界として定めている。
【0009】
消火栓装置が設置される監査路の幅が狭かったり、または箱抜き空間がないトンネルにおいて消火栓装置を後付けで設置するような場合は、消火栓装置の前傾式扉が、トンネルの建築限界を侵す可能性がある。つまり、前傾式扉を開放させたとき、その扉の先端部が、監査路の幅を越えて、扉先端部が監査路から突出することになる。このとき車道側に突出する扉先端部の割合が大きいと、トンネルの建築限界を侵すことになり、また突出する割合がそれ程大きくなくとも、監査路から突出した扉は、トンネル火災における避難の妨げとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
車道の側部に立設された監査路に設けられ、ホースを収納するホース収納部を備えた箱状の本体と、本体の前面に設けられ、ホース収納部の前方に位置する開口部を有する前面パネルと、前面パネルの開口部に開閉可能に設けられ、背面側に操作レバー及びホースガイドを有する前傾式扉とを備え、前記前傾式扉が上端部分を有する上側扉と下端部分とを有する下側扉とからなり、前記前傾式扉の開放時において、前傾式扉の上端部分を、前傾式扉の下端部分よりも高さ方向において下方に位置させる回動機構が設けられた消火栓装置において、前記上側扉は、前記下側扉の上端部に対して回動可能に接続されるとともに、背面側に消火ノズルを収納する凹んだ収納部が設けられ、前記下側扉の背面側には、前記ホースガイドが設けられることを特徴とする消火栓装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、火災時等において、前傾式扉を開放させると、前傾式扉の上端部分を、前傾式扉の下端部分より下方に位置するまで回動させる回動機構を備えた。このため、前傾式扉の開放時において、前傾式扉の水平方向における突出量は、少なくとも前傾式扉を90度回動させた場合よりも小さくすることができる。よって、前傾式扉の上端部分は、監査路から車道側に大きく突出することはなく、トンネルの建築限界が侵されるのを防止でき、前傾式扉が避難の妨げとなることはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1の消火栓装置の扉閉鎖時における正面図および側面図である。
図2】本発明の実施形態1の消火栓装置の扉開放時における正面図および側面図である。
図3】本発明の実施形態1の消火栓装置の扉開放時における上面図である。
図4】本発明の実施形態2の消火栓装置の扉開放時における側面図である。
図5】従来の消火栓装置の設置状態を示す図面である。
図6】従来の消火栓装置の斜視図である。
図7】消火栓装置の開放動作を説明する図面である。
図8】消火栓装置の扉が開放された状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態1
図1図2図3を用いて、本発明の実施形態1の消火栓装置について説明する。なお、従来例の消火栓装置と同じ部分にはこれと同じ符号を付けて説明を省略する。本実施の形態1においては、前傾式扉の構造だけが新規な構造であり、消火栓装置のそれ以外に係わる基本的な部分は従来例で示した消火栓装置9の構造とほぼ同じである。
【0014】
前傾式扉24は板状の金属板から構成され、扉の閉鎖時において、前面パネル14の開口部14cに設けられる。前傾式扉24は、2つの部材(上側扉と下側扉)によって分離される。上側扉24aは、前傾式扉24の上端部分を有する上側扉24aと、下端部分を有する下側扉24bとに分離されている。上側扉24aの正面側には、前傾式扉24を開放させる際に使用するハンドルが設けられ、下側扉24bの背面側には、ホースガイド16および操作レバー22が設けられる。ホースガイド16は、上側扉24aと下側扉24bの境界付近に設けられる。また、上側扉24aの背面側には、消火ノズル19を収納するための凹んだ収納部が形成され、収納部が消火ノズル19を保持している。
上側扉24aの下端部と下側扉24bの上端部とは、例えば、図示しない蝶番のような部材を使用して連結されており、蝶番により上側扉24aは、下側扉24bの上端部分に対して回動可能に接続された状態にある。
【0015】
上側扉24aは、前傾式扉24全体の長さの大体3分の1の長さであり、下側扉24bは、前傾式扉24全体の長さの大体3分の2の長さとなっている。この各扉24a、24bの長さは一例であり、前傾式扉24の開放時における監査路3からの突出量が建築限界を侵さない長さであれば、扉の長さは自由に選択できる。
【0016】
なお、図面上、3つの矩形で示される部材は、操作説明銘板26である。操作説明銘板26は、ホース収納部(格納部)の前面側(扉側)に貼り付けてある。消火栓装置29の開口部14cは大きいので、操作説明銘板26をホース収納部に貼り付けておくと、操作者にとって見やすい。
【0017】
次に消火栓装置29を操作する場合について説明する。トンネル1内で火災が発生すると、操作者は、まず消火栓装置29の前傾式扉24にあるハンドルをつかんで、前傾式扉24を前面側(車道側)に引き出す。前傾式扉24は、ダンバー18sによって、ゆるやかに前方側に回動していき、下側扉24bが90度回動して、下側扉24bが監査路3とほぼ平行になった段階で、下側扉24bの回動は停止する。
【0018】
下側扉24bに回動可能に連結された上側扉24aは、下側扉24bが停止した後、自重によって、更に90度手前側へ回動した状態となる。つまり、上側扉24aは下側扉24bに先端に対して垂れ下がった状態となり、前傾式扉24は、開放時においては、上端側の部分(上側扉24a)が下方へ折れ曲がるようにして、監査路3からの飛び出し量を小さくする。
【0019】
このとき、上側扉24aが自重によって回転することで、操作者の目の前に上側扉24aの背面にある消火ノズル19が現れるので、操作者は消火ノズル19の存在に気付きやすい。また、下側扉24bには、従来例と同様に、操作レバー22とホースガイド16があるので、操作者は、操作レバー22を操作して、ホース20を引き出して火災を消火できる。
【0020】
このように、本実施形態では、前傾式扉24の開放時において、前傾式扉24の上端部分である上側扉24aを、前傾式扉24の下端部分である下側扉24bよりも高さ方向において下方に位置させる回動機構を設けたものである。
【0021】
このため、前傾式扉24の開放時において、前傾式扉24の水平方向における突出量は、少なくとも前傾式扉を90度回動させた場合よりも小さくすることができる。よって、前傾式扉24の上端部分である上側扉24aは、監査路3から車道2側に大きく突出することはなく、トンネルの建築限界が侵されるのを防止でき、前傾式扉が避難の妨げとなることはない。
【0022】
なお、前傾式扉の扉自体を小さくすることで、扉開放時における突出量を抑えることも可能であるが、扉を小さくすると、操作性が悪くなり、また操作説明銘板を扉等に取り付けることができなくなってしまう。特に扉を小さくすると、ホースガイドが消火栓装置本体側に近づくことになり、ホースの引き出し性能が悪くなってしまう。この点、本実施形態においては、従来例と同じ大きさの前傾式扉を利用したまま、扉開放時における突出量だけを小さくすることが可能である。
【0023】
実施形態2
図4を用いて、本発明の実施形態2の消火栓装置について説明する。なお、従来例の消火栓装置と同じ部分にはこれと同じ符号を付けて説明を省略する。本実施の形態2においては、実施形態1と異なり、前傾式扉の構造も従来例と同じであり、前傾式を回動させる部分の構造だけが新規であり、消火栓装置のそれ以外に係わる部分は従来例で示した消火栓装置9の構造と同じである。
【0024】
従来例の前傾式扉は、扉の開放時において、90度開放するものであったが、本実施形態の消火栓装置は、前傾式扉34を、90度以上、例えば120度に回動させる回動機構を備えるものである。
【0025】
前傾式扉自体34は本体10の下端部に対して回動可能に設けられている。回動する範囲は、ダンパー39sのシャフトの長さを変えることで調整可能であり、本実施形態では、例えば、扉を100度〜140度の範囲で回動できる長さのシャフトを有するダンパー39sを使用している。
【0026】
なお、扉の回動範囲を90度以上にする回動機構としては、シャフトの長さを変えなくても、ダンパーの取付位置を調整することでも対応可能である。例えば、ダンパー39sの前傾式扉34の取付部の位置を本体10側に設けることで、扉の回動する範囲を大きくすることができる。また同じように、ダンパー39sの本体10の取付部の位置を前傾式扉34側に設けることで、扉の回動する範囲を大きくすることができる
消火栓装置39の前面パネルに12に対する前傾式扉34の突出量は、扉34が水平状態となる回動角度が90度のときが一番大きいので、扉の回動角度を90度よりも小さく又は大きくすることで、前傾式扉34の突出量をわずかに減らすことが可能となる。
【0027】
特に、前傾式扉34の回動角度を90度よりも大きくする場合には、回動角度を小さくする場合に比べて、扉の開放時における操作レバー22の操作や、消火ノズル19の取り出し作業が行いやすい。
【0028】
なお、前傾式扉34の回動角度を大きくすると、扉の開放時において、前傾式扉34の上端部分が監査路3に当たってしまう可能性がある。そのため、本体10をのせるためのベースは、扉開放時において、前傾式扉の上端(先端)部分が監査路3に当たらないだけの高さを持つものを使うとよい。
【0029】
このように、本実施形態では、前傾式扉34の開放時において、前傾式扉34の上端部分を、前傾式扉34の下端部分(本体10の取付側)よりも高さ方向において下方に位置させる回動機構を設けたものである。
【0030】
このため、前傾式扉34の開放時において、前傾式扉34の水平方向における突出量は、少なくとも前傾式扉を90度回動させた場合よりも小さくすることができる。よって、前傾式扉34の上端部分は、監査路3から車道2側に大きく突出することはなく、トンネルの建築限界が侵されるのを防止でき、前傾式扉が避難の妨げとなることはない。
【0031】
本発明においては、2つの実施形態をそれぞれ説明したが、実施形態1と実施形態2とを組み合わせ、120度に回動する前傾式扉を2つの扉に分離して連結接続させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 トンネル、 2 車道、 3 監査路、 5 壁面、 7 箱抜き空間
9 消火栓装置、10 本体、 12 前面パネル、 14 前傾式扉、
16 ホースガイド、 18s ダンパ、 19 ノズル、 20 ホース、
22 操作レバー、24 前傾式扉、 24a 上側扉、 24b 下側扉、
29 消火栓装置、 34 前傾式扉、 39 消火栓装置、ta
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8