【実施例1】
【0043】
次に、本実施形態の水解性シートの製造方法により製造された上述の連続水解性シートを用いて、バインダー溶液の塗布面の均一性、浸透性、及びバインダー溶液塗布後のシートの水解性について評価した結果を表2及び表3を用いて説明する。表2は、連続水解性シートを製造する際に、二流体方式のスプレーノズルを使用してバインダー溶液を付与したときの評価結果を示す表である。表3は、一流体方式のスプレーノズルを使用してバインダー溶液を付与したときの評価結果を示す表である。
【0044】
<実施条件>
水溶性バインダーを含んでいない水解紙(連続乾燥原紙1A,1A)を上述のプライ加工工程にて2プライ加工し、次いで、上述の溶液付与工程にて、2プライ加工された連続シート1Bの両方の外面に二流体方式または一流体方式のノズルの各スプレーノズル3,3によりバインダー溶液を噴霧し、次いで、上述の乾燥工程にて、バインダー溶液が噴霧された連続シート1Cを乾燥させ、次いで、スリット・巻き取り工程にて、所定の幅にスリットし、巻き取った後の連続水解性シート1Dにて、バインダー溶液の塗布面の均一性、浸透性、及びバインダー塗布後のシートの水解性について評価を行った。
【0045】
水溶性バインダーを含んでいない水解紙の各条件は下記表1に示す通りである。
なお、各条件の値は、JISに基づく試験方法で測定されたものである。
その他条件
バインダー噴霧量:含有されるCMC噴霧量がドライの原紙重量に対し、1.0%相当
バインダー溶液中のCMC(エーテル化度1.0)の濃度:3.25重量%
バインダー溶液の成分:CMC、水
バインダー溶液の粘度:520 MPa・s
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1−1、実施例1−2、及び実施例1−3は、本実施形態に対応しており、二流体方式のスプレーノズルによりバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。具体的には、実施例1−1は、スプレー圧2.0MPaでバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。実施例1−2は、スプレー圧1.5MPaでバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。実施例1−3は、スプレー圧1.0MPaでバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。なお、実施例1−1、実施例1−2、及び実施例1−3のシートは、表1に示すシートIを2プライ加工したものである。
また、実施例2−1、実施例2−2、及び実施例2−3は、本実施形態に対応しており、一流体方式のスプレーノズルによりバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。具体的には、実施例2−1は、スプレー圧2.0MPaでバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。実施例2−2は、スプレー圧1.5MPaでバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。実施例2−3は、スプレー圧1.0MPaでバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。なお、実施例2−1、実施例2−2、及び実施例2−3のシートは、表1に示すシートIを2プライ加工したものである。
【0048】
また、上記のようにスプレー圧を異ならせた各実施例に対し、スプレー圧については各実施例の条件と合わせる一方、目付け、プライ数、及び塗布面の各条件を変更してサンプルを試作し、これらのサンプルを比較例に用いて比較評価を行った。
【0049】
比較例1−1−1から1−1−3は、上記実施例1−1に対するものである。具体的には、比較例1−1−1は、目付けが45gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。比較例1−1−2は、目付けが90gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートII)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を両面とした。比較例1−1−3は、目付けが45gsmであり、プライ数が2のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。
【0050】
比較例1−2−1から1−2−3は、上記実施例1−2に対するものである。具体的には、比較例1−2−1は、目付けが45gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。比較例1−2−2は、目付けが90gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートII)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を両面とした。比較例1−2−3は、目付けが45gsmであり、プライ数が2のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。
【0051】
比較例1−3−1から1−3−3は、上記実施例1−3に対するものである。具体的には、比較例1−3−1は、目付けが45gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。比較例1−3−2は、目付けが90gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートII)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を両面とした。比較例1−3−3は、目付けが45gsmであり、プライ数が2のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。
【0052】
比較例2−1−1から2−1−3は、上記実施例2−1に対するものである。具体的には、比較例2−1−1は、目付けが45gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。比較例2−1−2は、目付けが90gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートII)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を両面とした。比較例2−1−3は、目付けが45gsmであり、プライ数が2のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。
【0053】
比較例2−2−1から2−2−3は、上記実施例2−2に対するものである。具体的には、比較例2−2−1は、目付けが45gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。比較例2−2−2は、目付けが90gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートII)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を両面とした。比較例2−2−3は、目付けが45gsmであり、プライ数が2のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。
【0054】
比較例2−3−1から2−3−3は、上記実施例2−3に対するものである。具体的には、比較例2−3−1は、目付けが45gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。比較例2−3−2は、目付けが90gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートII)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を両面とした。比較例2−3−3は、目付けが45gsmであり、プライ数が2のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。
【0055】
バインダー溶液塗布面の均一性の評価方法としては、色つきの台紙にバインダー溶液を噴霧した際に、目視により噴霧性状・塗布状態を確認し、全くムラ・濃淡のない状態を「◎」、殆どムラ・濃淡のない状態を「○」、ややムラ・濃淡が見られる状態を「△」、ムラ・濃淡が見られる状態を「×」として評価した。
バインダー溶液の浸透性の評価方法としては、バインダー溶液を塗布した水解紙を後加工としてエンボス加工を施し、エンボスロールの山と山との間に紙粉がたまるか否かを観察した。紙粉がほとんど溜まらない場合を「◎」、ややたまる場合を「○」、たまる場合を「△」、紙粉が大量にたまる場合を「×」、として評価した。
【0056】
また、バインダー溶液を塗布した水解紙の水解性を以下の通り試験し評価した。
1.スターラー、回転子、ビーカー、水(20℃±5)、ストップウォッチを用意する。
2.スターラーの上に水の入ったビーカーを設置し、回転数を600に設定する。
3.原紙(バインダー溶液塗布後のシート)をダンベルカッターで114mm角 にカットする。
4.2プライのシートは、1枚ずつ剥がし、丸めて水に投入する。一方、1プライのシ ートは、そのまま丸めて水に投入する。
5.回転数が600から490〜590の間に落ちたタイミングで、ストップウォッチ での計測をスタートする。
6.回転数が540以上に復帰した時点で時間の計測を終了し、計測時間(秒)を記録 する。
7.計測時間(秒)が70秒以下であれば、「○」として評価した。
【0057】
なお、比較例1−1−1、1−2−1、1−3−1、2−1−1、2−2−1、2−3−1は、バインダー溶液を片面塗布した目付け45gsmのシートの当該バインダー溶液を塗布していない面同士でプライし合計90gsmとして、エンボス加工して、浸透性の評価を実施した。それ以外の実施例、及び比較例は、いずれも合計目付けが90gsmとなっているため、所定条件でバインダーを塗布した後に、エンボス加工して、浸透性の評価を実施した。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表2に示す結果の通り、実施例1−1と、この実施例1−1に対する比較例1−1−1から1−1−3を比較すると、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、いずれも評価結果が「◎」であったが、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例1−1だけが「○」であり、比較例1−1−1から1−1−3はいずれも「△」であった。
つまり、スプレー圧の条件が2.0MPaである場合、バインダー溶液の塗布面の均一性、及び、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例1−1が最も高い評価結果を得ることができた。
なお、水解性に関しては、実施例1−1、比較例1−1−1、比較例1−1−2、比較例1−1−3とも評価結果が「○」であった。
【0061】
また、実施例1−2と、この実施例1−2に対する比較例1−2−1から1−2−3を比較すると、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、いずれも評価結果が「◎」であったが、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例1−2だけが「○」であり、比較例1−2−1及び比較例1−2−2は「△」、比較例1−2−3は「×」であった。
つまり、スプレー圧の条件が1.5MPaである場合、バインダー溶液の塗布面の均一性、及び、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例1−2が最も高い評価結果を得ることができた。
なお、水解性に関しては、実施例1−2、比較例1−2−1、比較例1−2−2、比較例1−2−3とも評価結果が「○」であった。
【0062】
また、実施例1−3と、この実施例1−3に対する比較例1−3−1から1−3−3を比較すると、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、いずれも評価結果が「○」であったが、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例1−3だけが「△」であり、比較例1−3−1から1−3−3はいずれも「×」であった。つまり、スプレー圧の条件が1.0MPaである場合、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例1−3の評価結果自体は「△」と低いが、上記のように比較例1−3−1から1−3−3はいずれも「×」であり、実施例1−3では、比較例1−3−1から1−3−3に比べてバインダー溶液の浸透性を向上させることができた。すなわち、スプレー圧の条件が1.0MPaである場合、バインダー溶液の塗布面の均一性、及び、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例1−3が最も高い評価結果を得ることができた。
なお、水解性に関しては、実施例1−3、比較例1−3−1、比較例1−3−2、比較例1−3−3とも評価結果が「○」であった。
【0063】
上記のように表2に示す結果から、スプレー圧の条件が2.0、1.5、1.0MPaのいずれの場合であっても、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、実施例も、その実施例に対する比較例も相対的にみて同等の評価結果であることが分かった。一方、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3の各実施例のように、目付けが45gsmの水解紙を2プライ加工し、バインダー溶液を両面に塗布する製造方法を採用することによって、各実施例では、当該各実施例に対応する比較例に比べてバインダー溶液の浸透性が向上することが分かった。更に、各実施例を比べると、スプレー圧の条件を1.5MPa以上とすることにより、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しても、バインダー溶液の浸透性に関しても、「○」以上の評価結果となることが分かった。
【0064】
表3に示す結果の通り、実施例2−1と、この実施例2−1に対する比較例2−1−1から2−1−3を比較すると、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、いずれも評価結果が「△」であったが、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例2−1だけが「◎」であり、比較例2−1−1から2−1−3はいずれも「○」であった。
つまり、スプレー圧の条件が2.0MPaである場合、バインダー溶液の塗布面の均一性、及び、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例2−1が最も高い評価結果を得ることができた。
なお、水解性に関しては、実施例2−1、比較例2−1−1、比較例2−1−2、比較例2−1−3とも評価結果が「○」であった。
【0065】
また、実施例2−2と、この実施例2−2に対する比較例2−2−1から2−2−3を比較すると、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、いずれも評価結果が「○」であったが、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例2−2だけが「○」であり、比較例2−2−1から2−2−3はいずれも「△」であった。
つまり、スプレー圧の条件が1.5MPaである場合、バインダー溶液の塗布面の均一性、及び、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例2−2が最も高い評価結果を得ることができた。
なお、水解性に関しては、実施例2−2、比較例2−2−1、比較例2−2−2、比較例2−2−3とも評価結果が「○」であった。
【0066】
また、実施例2−3と、この実施例2−3に対する比較例2−3−1から2−3−3を比較すると、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、いずれも評価結果が「○」であったが、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例2−3だけが「○」であり、比較例2−3−1から2−3−3はいずれも「△」であった。
つまり、スプレー圧の条件が1.0MPaである場合、バインダー溶液の塗布面の均一性、及び、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例2−3が最も高い評価結果を得ることができた。
なお、水解性に関しては、実施例2−3、比較例2−3−1、比較例2−3−2、比較例2−3−3とも評価結果が「○」であった。
【0067】
上記のように表3に示す結果から、スプレー圧の条件が2.0、1.5、1.0MPaのいずれの場合であっても、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、実施例も、その実施例に対する比較例も相対的にみて同等の評価結果であることが分かった。一方、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3の各実施例のように、目付けが45gsmの水解紙を2プライ加工し、バインダー溶液を両面に塗布する製造方法を採用することによって、各実施例では、当該各実施例に対応する比較例に比べてバインダー溶液の浸透性が向上することが分かった。更に、各実施例を比べると、スプレー圧の条件を1.5MPa以下とすることにより、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しても、バインダー溶液の浸透性に関しても、「○」の評価結果となることが分かった。
【0068】
以上のように、本実施形態の水解性シートの製造方法によれば、プライ加工工程でプライ加工されたシートの両方の外面に対応して設けられたスプレーノズルからバインダー溶液を対応する外面に噴射するので、他の方法に比べ、バインダー溶液を斑無く各外面に均一に及びシート内部まで好適に浸透させることができる。
従って、ワイプに加工して拭いても各外面の表面が破れにくい十分な表面強度を持ち、また、適度な引張り強度を有する一体化した水解性シートを得ることができる。
【0069】
また、本実施形態の水解性シートの製造方法によれば、プライ加工工程でプライ加工されたシートを、その後の工程へテンションをかけて搬送するので、シート同士を密着させることができ、さらに巻き取り工程でシートが巻き取られる際にシートが圧縮されることにより当該シートに水溶性バインダーがより浸透するので、十分な強度を有する一体化した水解性シートを得ることができる。
【0070】
また、本実施形態の水解性シートの製造方法によれば、溶液付与工程で用いるスプレーノズルを二流体方式のものにした場合、バインダー溶液を一定圧力(噴射圧1.5MPa)以上且つ好適な粘度で塗布することにより、シートの各外面に斑なく均一にバインダー溶液を吹き付けることができるとともに、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させることができる。また、巻き取り工程で巻き取られることにより一体化されたシートの表裏面は、溶液付与工程で微粒子状のきめ細かいバインダー溶液が噴霧されているので、より均一に水溶性バインダーで覆われるようにすることができる。
【0071】
また、本実施形態の水解性シートの製造方法によれば、溶液付与工程で用いるスプレーノズルを一流体方式のものにした場合、バインダー溶液を一定圧力(噴射圧1.5MPa)以下且つ好適な粘度で塗布することにより、シートの各外面に斑なく均一にバインダー溶液を吹き付けることができるとともに、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させることができる。
【0072】
また、本実施形態の水解性シートの製造方法によれば、水溶性バインダーを含んでいない原紙(連続乾燥原紙1A,1A)のそれぞれの目付けが15〜75gsm程度の場合プライ加工された状態では30〜150gsmであり、ワイプ等の加工工程での折り・裁断・エンボス・薬液含浸など加工適正が良く、加工条件を調整しやすく、加工条件を調整することで、ワイプとして必要な強度・嵩高さ・表面の凹凸など、用途に応じた品質を得られることができる。
【0073】
<変形例1>
本実施形態において、
図2(a) に示すように、抄造された原紙を巻取った複数(例えば、2本)の原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aの各シートの外面(各シートが対向しない面)に、ニ流体方式または一流体方式のスプレーノズル3,3でバインダー溶液を付与し、直後にバインダー溶液が付与された各連続原紙1A´,1A´をプライ加工し、連続シート1Cを乾燥させ、スリットし巻き取る工程としても良い。
【0074】
次に、変形例1の水解性シートの製造方法により製造された上述の連続水解性シートを用いて、バインダー溶液の塗布面の均一性、浸透性、及びバインダー塗布後のシートの水解性について評価した結果を表4及び表5を用いて説明する。表4は、連続水解性シートを製造する際に、二流体方式のスプレーノズルを使用してバインダー溶液を付与したときの評価結果を示す表である。表5は、一流体方式のスプレーノズルを使用してバインダー溶液を付与したときの評価結果を示す表である。
【0075】
<実施条件>
水解性シートの表面及び裏面となる水溶性バインダーを含んでいない2枚の水解紙(連続乾燥原紙1A,1A:上記実施形態の実施例と同一)のそれぞれの面に対応して設けられた各スプレーノズル3,3からバインダー溶液を対応する水解紙に噴霧し、次いで、2枚の水解紙をプライ加工し、次いで、連続シート1Cを乾燥させ、次いで、所定の幅にスリットし、巻き取った後の連続水解性シート1Dにて、バインダー溶液の塗布面の均一性、浸透性、及びバインダー塗布後のシートの水解性について評価を行った。なお、その他の条件は、上記実施形態の実施例と同一であるため、その説明は省略する。
【0076】
実施例3−1、実施例3−2、及び実施例3−3は、上記変形例1に対応しており、二流体方式のスプレーノズルによりバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。具体的には、実施例3−1は、スプレー圧2.0MPaでバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。実施例3−2は、スプレー圧1.5MPaでバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。実施例3−3は、スプレー圧1.0MPaでバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。なお、実施例3−1、実施例3−2、及び実施例3−3のシートは、表1に示すシートIを2プライ加工したものである。
また、実施例4−1、実施例4−2、及び実施例4−3は、上記変形例1に対応しており、一流体方式のスプレーノズルによりバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。具体的には、実施例4−1は、スプレー圧2.0MPaでバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。実施例4−2は、スプレー圧1.5MPaでバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。実施例4−3は、スプレー圧1.0MPaでバインダー溶液が噴霧されたシートを使用した。なお、実施例4−1、実施例4−2、及び実施例4−3のシートは、表1に示すシートIを2プライ加工したものである。
【0077】
また、上記のようにスプレー圧を異ならせた各実施例に対し、スプレー圧については各実施例の条件と合わせる一方、目付け、プライ数、及び塗布面の各条件を変更してサンプルを試作し、これらのサンプルを比較例に用いて比較評価を行った。
【0078】
比較例3−1−1から3−1−3は、上記実施例3−1に対するものである。具体的には、比較例3−1−1は、目付けが45gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。比較例3−1−2は、目付けが90gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートII)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を両面とした。比較例3−1−3は、目付けが45gsmであり、プライ数が2のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。
【0079】
比較例3−2−1から3−2−3は、上記実施例3−2に対するものである。具体的には、比較例3−2−1は、目付けが45gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。比較例3−2−2は、目付けが90gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートII)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を両面とした。比較例3−2−3は、目付けが45gsmであり、プライ数が2のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。
【0080】
比較例3−3−1から3−3−3は、上記実施例3−3に対するものである。具体的には、比較例3−3−1は、目付けが45gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。比較例3−3−2は、目付けが90gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートII)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を両面とした。比較例3−3−3は、目付けが45gsmであり、プライ数が2のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。
【0081】
比較例4−1−1から4−1−3は、上記実施例4−1に対するものである。具体的には、比較例4−1−1は、目付けが45gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。比較例4−1−2は、目付けが90gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートII)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を両面とした。比較例4−1−3は、目付けが45gsmであり、プライ数が2のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。
【0082】
比較例4−2−1から4−2−3は、上記実施例4−2に対するものである。具体的には、比較例4−2−1は、目付けが45gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。比較例4−2−2は、目付けが90gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートII)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を両面とした。比較例4−2−3は、目付けが45gsmであり、プライ数が2のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。
【0083】
比較例4−3−1から4−3−3は、上記実施例4−3に対するものである。具体的には、比較例4−3−1は、目付けが45gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。比較例4−3−2は、目付けが90gsmであり、プライ数が1のシート(表1のシートII)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を両面とした。比較例4−3−3は、目付けが45gsmであり、プライ数が2のシート(表1のシートI)を使用した。また、バインダー溶液の塗布面を片面とした。
【0084】
バインダー溶液の塗布面の均一性、バインダー溶液の浸透性、及びバインダー塗布後のシートの水解性の評価方法は、上記実施形態の実施例での評価方法と同一であるため、その説明は省略する。
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
表4に示す結果の通り、実施例3−1と、この実施例3−1に対する比較例3−1−1から3−1−3を比較すると、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、いずれも評価結果が「◎」であったが、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例3−1だけが「○」であり、比較例3−1−1から3−1−3はいずれも「△」であった。
つまり、スプレー圧の条件が2.0MPaである場合、バインダー溶液の塗布面の均一性、及び、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例3−1が最も高い評価結果を得ることができた。
なお、水解性に関しては、実施例3−1、比較例3−1−1、比較例3−1−2、比較例3−1−3とも評価結果が「○」であった。
【0088】
また、実施例3−2と、この実施例3−2に対する比較例3−2−1から3−2−3を比較すると、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、いずれも評価結果が「◎」であったが、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例3−2だけが「○」であり、比較例3−2−1及び比較例3−2−2は「△」、比較例3−2−3は「×」であった。
つまり、スプレー圧の条件が1.5MPaである場合、バインダー溶液の塗布面の均一性、及び、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例3−2が最も高い評価結果を得ることができた。
なお、水解性に関しては、実施例3−2、比較例3−2−1、比較例3−2−2、比較例3−2−3とも評価結果が「○」であった。
【0089】
また、実施例3−3と、この実施例3−3に対する比較例3−3−1から3−3−3を比較すると、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、いずれも評価結果が「○」であったが、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例3−3だけが「△」であり、比較例3−3−1から3−3−3はいずれも「×」であった。
つまり、スプレー圧の条件が1.0MPaである場合、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例3−3の評価結果自体は「△」と低いが、上記のように比較例3−3−1から3−3−3はいずれも「×」であり、実施例3−3では、比較例3−3−1から3−3−3に比べてバインダー溶液の浸透性を向上させることができた。すなわち、スプレー圧の条件が1.0MPaである場合、バインダー溶液の塗布面の均一性、及びバインダー 溶液の浸透性に関しては、実施例3−3が最も高い評価結果を得ることができた。
なお、水解性に関しては、実施例3−3、比較例3−3−1、比較例3−3−2、比較例3−3−3とも評価結果が「○」であった。
【0090】
上記のように表4に示す結果から、スプレー圧の条件が2.0、1.5、1.0MPaのいずれの場合であっても、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、実施例も、その実施例に対する比較例も相対的にみて同等の評価結果であることが分かった。一方、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例3−1、実施例3−2、実施例3−3の各実施例のように、水解性シートの表面及び裏面となる目付けが45gsmの水解紙のそれぞれの面にバインダー溶液を塗布し、2プライ加工する製造方法を採用することによって、各実施例では、当該各実施例に対応する比較例に比べてバインダー溶液の浸透性が向上することが分かった。更に、各実施例を比べると、スプレー圧の条件を1.5MPa以上とすることにより、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しても、バインダー溶液の浸透性に関しても、「○」以上の評価結果となることが分かった。
【0091】
表5に示す結果の通り、実施例4−1と、この実施例4−1に対する比較例4−1−1から4−1−3を比較すると、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、いずれも評価結果が「△」であったが、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例4−1だけが「◎」であり、比較例4−1−1から4−1−3はいずれも「○」であった。
つまり、スプレー圧の条件が2.0MPaである場合、バインダー溶液の塗布面の均一性、及び、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例4−1が最も高い評価結果を得る ことができた。
なお、水解性に関しては、実施例4−1、比較例4−1−1、比較例4−1−2、比較例4−1−3とも評価結果が「○」であった。
【0092】
また、実施例4−2と、この実施例4−2に対する比較例4−2−1から4−2−3を比較すると、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、いずれも評価結果が「○」であったが、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例4−2だけが「○」であり、比較例4−2−1から4−2−3はいずれも「△」であった。
つまり、スプレー圧の条件が1.5MPaである場合、バインダー溶液の塗布面の均一性、及び、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例4−2が最も高い評価結果を得ることができた。
なお、水解性に関しては、実施例4−2、比較例4−2−1、比較例4−2−2、比較例4−2−3とも評価結果が「○」であった。
【0093】
また、実施例4−3と、この実施例4−3に対する比較例4−3−1から4−3−3を比較すると、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、いずれも評価結果が「○」であったが、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例4−3だけが「○」であり、比較例4−3−1から4−3−3はいずれも「△」であった。
つまり、スプレー圧の条件が1.0MPaである場合、バインダー溶液の塗布面の均一性、及び、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例4−3が最も高い評価結果を得ることができた。
なお、水解性に関しては、実施例4−3、比較例4−3−1、比較例4−3−2、比較例4−3−3とも評価結果が「○」であった。
【0094】
上記のように表5に示す結果から、スプレー圧の条件が2.0、1.5、1.0MPaのいずれの場合であっても、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しては、実施例も、その実施例に対する比較例も相対的にみて同等の評価結果であることが分かった。一方、バインダー溶液の浸透性に関しては、実施例4−1、実施例4−2、実施例4−3の各実施例のように、水解性シートの表面及び裏面となる目付けが45gsmの水解紙のそれぞれの面にバインダー溶液を塗布し、2プライ加工する製造方法を採用することによって、各実施例では、当該各実施例に対応する比較例に比べてバインダー溶液の浸透性が向上する ことが分かった。更に、各実施例を比べると、スプレー圧の条件を1.5MPa以下とすることにより、バインダー溶液の塗布面の均一性に関しても、バインダー溶液の浸透性に関しても、「○」の評価結果となることが分かった。
【0095】
以上のように、変形例1の水解性シートの製造方法によれば、水溶性バインダーを含んでいない複数(2枚)の原紙(連続乾燥原紙1A,1A)のうち、水解性シートの表面及び裏面となる原紙のそれぞれの面に対してバインダー溶液を付与し、すぐにプライするので、他の方法よりバインダー溶液をシート内部まで好適に浸透させることができる。
従って、各外面の表面強度が強く、ワイプに加工して拭いても表面が破れにくい十分な強さを持ち、適度な引張り強度を有する一体化した水解性シートを得ることができる。
【0096】
また、変形例1の水解性シートの製造方法によれば、プライ加工工程でプライ加工されたシートを、その後の工程へテンションをかけて搬送するので、シート同士を密着させることができ、さらに巻き取り工程でシートが巻き取られる際にシートが圧縮されることにより当該シートに水溶性バインダーがより浸透するので、十分な強度を有する一体化した水解性シートを得ることができる。
【0097】
また、変形例1の水解性シートの製造方法によれば、溶液付与工程で用いるスプレーノズルを二流体方式のものにした場合、バインダー溶液を一定圧力(噴射圧1.5MPa)以上且つ好適な粘度で塗布することにより、シートの各外面に斑なく均一にバインダー溶液を吹き付けることができるとともに、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させることができる。また、巻き取り工程で巻き取られることにより一体化されたシートの表裏面は、溶液付与工程で微粒子状のきめ細かいバインダー溶液が噴霧されているので、より均一に水溶性バインダーで覆われるようにすることができる。
【0098】
また、変形例1の水解性シートの製造方法によれば、溶液付与工程で用いるスプレーノズルを一流体方式のものにした場合、バインダー溶液を一定圧力(噴射圧1.5MPa)以下且つ好適な粘度で塗布することにより、シートの各外面に斑なく均一にバインダー溶液を吹き付けることができるとともに、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させることができる。
【0099】
また、変形例1の水解性シートの製造方法によれば、水溶性バインダーを含んでいない原紙(連続乾燥原紙1A,1A)のそれぞれの目付けが15〜75gsm程度の場合、プライ加工された状態では30〜150gsmであり、ワイプ等の加工工程での折り・裁断・エンボス・薬液含浸など加工適正が良く、加工条件を調整しやすく、加工条件を調整することで、ワイプとして必要な強度・嵩高さ・表面の凹凸など、用途に応じた品質を得られることができる。
【0100】
<変形例2>
本実施形態において、
図2(b)に示すように、各原反ロール1,1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aの対向面に対しても、二流体方式または一流体方式のスプレーノズル3,3から上述のバインダー溶液を噴霧するようにしても良い。これにより、搬送中にシート同士が密着し、巻取り工程で圧着する中でさらに浸透するのである。
【0101】
<変形例3>
本実施形態において、
図2(c)に示すように、プライ加工工程において、バインダー溶液が付与された各連続原紙1A´,1A´の間に当該バインダー溶液を付与しない連続乾燥原紙1Aを挟み込み3プライ加工するようにしても良い。なお、各連続原紙1A´,1A´の間に挟み込む連続乾燥原紙1Aに対してもバインダー溶液を付与するようにしても良い。
【0102】
なお、上記実施形態、各変形例のいずれの場合でも、目的に応じて、バインダー溶液の塗布する量や塗布する成分・処方を変えることができる。
【0103】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。