(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1延伸部の先端部が、前記外嵌部に外嵌される回転軸線方向の深さと、前記第2延伸部の先端部が、前記第1延伸部とは逆の方向から前記外嵌部に外嵌される回転軸線方向の深さとが略等しくなるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のクローポール型モータ。
前記第1コア、前記第2コア及び前記第3コアが、粉体状の磁性材料を前記回転軸線方向からプレス加工して構成されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載のクローポール型モータ。
前記第1V相コイル要素又は前記第2V相コイル要素の巻数が、前記U相コイル又は前記W相コイルの巻数と異なることを特徴とする請求項5、6又は7記載のクローポール型モータ。
前記各コアが、粉体状の磁性材料を前記回転軸線方向からプレス加工して構成されたものであることを特徴とする請求項13又は14記載のクローポール型モータの製造方法。
前記成型工程が、前記第1延伸部の先端面と前記第2延伸部の先端面を圧着した状態で、前記第1延伸部、前記第2延伸部及び前記外嵌部を樹脂で固定するとともに、前記第1延伸部及び前記第2延伸部の少なくとも一部の内側を覆うように樹脂層を形成することを特徴とする請求項16記載のクローポール型モータの製造方法。
【背景技術】
【0002】
このようなモータとして、例えば特許文献1で示すようなクローポール型モータがある。クローポール型モータとは、回転軸線方向に延伸する複数の爪磁極が周方向に配置された固定子と、複数の永久磁石が周方向に配置された回転子とを具備し、爪磁極の磁極を変化させて、爪磁極と永久磁石との間の引力と斥力を入れ替えて回転子を回転させるものである。
【0003】
この固定子は、U相爪磁極が外周に等間隔に配置されたU相コア本体を具備するU相コアと、V相爪磁極が外周に等間隔に配置されたV相コア本体を具備するV相コアと、W相爪磁極が外周に等間隔に配置されたW相コア本体を具備するW相コアと、U相爪磁極、V相爪磁極及びW相爪磁極を磁化するU相コイル、V相コイル及びW相コイルとを具備するものである。このU相コア本体は、W相コアに向かって延伸する第1延伸部を具備し、V相コア本体は、U相コア及びW相コアに向かって延伸する第2延伸部を具備し、W相コア本体は、U相コアに向かって延伸する第3延伸部を具備する。
【0004】
そして、U相コア、V相コア及びW相コアは、V相コアをU相コアとW相コアの間に配置した状態で、回転軸線方向に組み合わせられている。
このように組み合わせると、第1延伸部の先端面と第2延伸部のU相コアに向かって延伸する先端面との間に製造誤差によるUVギャップが形成されるとともに、第2延伸部のW相コアに向かって延伸する先端面と第3延伸部の先端面との間にも製造誤差によるVWギャップが形成される。本来、第1延伸部と第2延伸部との間、第2延伸部と第3延伸部とは当接することが望ましいが、製造誤差や組立許容誤差によるギャップが必ず形成される。
【0005】
ところで上述のクローポール型モータでは、U相コイル、V相コイル又はW相コイルに流れる電流によって磁束が発生すると、U相爪磁極、V相爪磁極及びW相爪磁極を磁化するために、U相コア本体、V相コア本体及びW相コア本体を磁束が通過する。
【0006】
このとき、U相コア本体とV相コア本体との間を通過する磁束、及びV相コア本体とW相コア本体との間を通過する磁束は、第1延伸部及び第2延伸部の間、又は第2延伸部及び第3延伸部の間を通過するので、UVギャップ又はVWギャップのいずれか一方を通過するのに対し、U相コア本体とW相コア本体との間を通過する磁束は、その間にV相コアが配置されるために、第1延伸部及び第2延伸部の間及び第2延伸部と第3延伸部の間を通過するので、UVギャップ及びVWギャップの両方を通過することとなる。
【0007】
しかしながら、UVギャップ及びVWギャップには空気の層が形成されており、空気の透磁率はコアをなす鉄の透磁率と大きく異なるので、UVギャップ及びVWギャップが磁気抵抗となる。
そのため、UVギャップ又はVWギャップのいずれか一方を通過する磁束に比べて、UVギャップ又はVWギャップの両方を通過する磁束の磁気抵抗が大きくなり、磁束量が減少して、爪磁極を磁化する磁束量に歪みが生じる。このように磁束量に歪みが生じると、モータの回転動作が悪くなり、モータに振動や騒音が生じるという問題がある。
【0008】
また、上述のようにU相コア、V相コア及びW相コアを組み合わせると、U相コア本体とV相コア本体との間に第1空間が形成されるとともに、V相コア本体とW相コア本体との間に第2空間が形成される。U相コイル、V相コイル及びW相コイルは、このコア内部に形成された空間内に収容されるが、このとき、V相コイルを直列結線された2つのV相コイル要素に分けて、U相コイル及び一方のV相コイル要素を第1空間に収容するとともに、他方のV相コイル要素及びW相コイルを第2空間に収容する。このようにコイルをコア内部に収容することで、モータの小型化を図っている。
【0009】
このように構成された固定子では、各コイルに印加電圧をかけて電流を流し、コイルの周囲に磁束を生じさせ、この磁束が各コアの本体を通過して爪磁極を磁化する。このとき、コイルの巻回方向が異なれば磁束の向きが変わるので、爪磁極の磁極が変化する。そのため、U相コイル、V相コイル、W相コイルの巻回方向を異ならせて、印加電圧をかけるコイルを順次変更していくことで、爪磁極の磁極を適宜変化させている。
【0010】
ところで、U相コア、W相コアの爪磁極を磁化する磁束量は、それぞれU相コイル、W相コイルで発生する磁束量に等しい。
一方、V相コアの爪磁極を磁化する磁束量は、各V相コイル要素で発生した磁束量を足し合わせたものとなるが、各V相コイル要素から発生した磁束は、V相コアの爪磁極に向かう磁束とU相コア又はW相コアの爪磁極に向かう磁束とに分岐するので、各V相コイル要素からV相コアの爪磁極に向かう磁束量は、発生した磁束量の半分となる。
そうすると、V相コアの爪磁極を磁化する磁束量は、実質的に、各V相コイル要素が単独で発生した磁束量と等しくなる。したがって、U相コア、V相コア及びW相コアの爪磁極を磁化する磁束量を均一にするには、各V相コイル要素が単独で発生する磁束量を、U相コイル又はW相コイルで発生する磁束量と等しくする必要があり、このために、U相コイル、各V相コイル要素、W相コイルの巻数をほぼ等しくする必要がある。
【0011】
しかしながら、コイルの巻数を等しくするとコイルの抵抗値も等しくなるので、U相コイル、W相コイル及び各V相コイル要素の抵抗値は全て等しくなる。そうすると、V相コイルの抵抗値は、各V相コイル要素の抵抗値を合わせた値となって、U相コイル及びW相コイルの抵抗値よりも大きくなってしまう。このようにU相コイル、V相コイル、W相コイルの抵抗値が異なると、各コアに流れる電流がアンバランスとなってトルク脈動が発生し、モータの回転が不安定となって振動や騒音が発生するという問題が生じる。
【0012】
さらに上述のクローポール型モータとして、例えば特許文献2記載のものがあるが、この特許文献2記載のモータでは、固定子側のU相爪磁極、V相爪磁極及びW相爪磁極の個数Sが12個、回転子側のN極磁極及びS極磁極の個数Pが8個であるから、S:Pが3:2の関係となっている。
【0013】
この比例関係においては、固定子側のU相爪磁極、V相爪磁極及びW相爪磁極の3つの爪磁極に対して、回転子側のN極磁極及びS極磁極が対応することとなる。この関係を
図13に示すように、周方向の電気角を示す周方向角度で示すと、N極磁極及びS極磁極の周方向角度はともに180°であるので、N極磁極及びS極磁極を合わせた360°の周方向角度に、U相爪磁極、V相爪磁極、W相爪磁極を合わせた周方向角度が対応することとなる。そのため、各爪磁極の周方向角度は、それぞれ最大で120°となる。なお、この周方向角度は、各爪磁極の幅を表すものでもある。
【0014】
しかしながら、特許文献2に記載されたモータでは、コギングトルク及び鎖交磁束の歪みの双方を同時に一定以上低減することができないという不具合がある。
このような不具合に対し、本願発明者らが鋭意検討を重ねた結果、縦軸にトルク、横軸に爪磁極の周方向角度を示す
図18のグラフに示すように、モータの円滑な回転を妨げるコギングトルク及び鎖交磁束の歪みを減らすためには、爪磁極の周方向角度を130°〜160°にする必要があることを見出した。
これに対し、特許文献2に記載されたモータでは、上述したように爪磁極の周方向角度を最大で120°までしか大きくすることができないので、爪磁極の周方向角度を変えて、コギングトルク及び鎖交磁束の歪みを減らすことができないという問題がある。
【0015】
加えて、U相コア、V相コア、W相コアを、粉体状の磁性材料を回転軸線方向からプレス加工して成型する場合、回転軸線方向の寸法精度がばらつくので、U相コア本体とV相コア本体との間、及び、V相コア本体とW相コア本体との間に空隙が生じる場合がある。この空隙は、空気の透磁率がコアをなす磁性材料の透磁率と大きく異なることから磁気抵抗となるので、各コア間を通過する磁束量がばらついて、モータの性能が劣化するという問題もある。
【0016】
また、U相コア、V相コア、W相コアを、粉体状の磁性材料を回転軸線方向からプレス加工して成型する場合、プレス加工時の圧力を高めるほど、粉体状の磁性材料の質量密度を高めて磁気抵抗を減らした性能のよい固定子を製造することができる。
そこで、特許文献3では、固定子を複数のパーツに分割し、各パーツをプレス加工して製造した後に、これらを組み合わせて固定子を製造している。このように複数のパーツに分けることによって、それぞれのパーツの質量密度を高めて、固定子全体の質量密度を高めることができる。
この複数のパーツは、固定子を径方向に分割したものであって、外周が円弧形状をなすものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、モータの振動や騒音を低減することができるクローポール型モータを提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のクローポール型モータは、回転軸線上に配置された第1コア本体と、前記第1コア本体の周囲に前記回転軸線方向に延伸するように設けられた複数の第1爪磁極とを具備する第1コアと、前記回転軸線上であって前記第1コア本体の隣に配置される第2コア本体と、前記第2コア本体の周囲に前記回転軸線方向に延伸するように設けられた複数の第2爪磁極とを具備する第2コアと、前記回転軸線上であって前記第2コア本体の隣に配置される第3コア本体と、前記第3コア本体の周囲に前記回転軸線方向に延伸するように設けられた複数の第3爪磁極とを具備する第3コアとを具備したものである。そして、前記第1コア本体が、前記第3コア本体に向かって延伸する第1延伸部を具備したものであり、前記第3コア本体が、前記第1コア本体に向かって延伸し、その先端面が前記第1コア本体の先端面と向かい合って近接又は当接する第2延伸部を具備したものであり、前記第2コア本体が、前記第1延伸部の先端部及び前記第2延伸部の先端部に外嵌する外嵌部を具備したものであることを特徴とする。
【0021】
これにより、U相コア本体とV相コア本体との間を通過する磁束は、第2コア本体の外嵌部と第1コア本体の第1延伸部との間に形成されるUVギャップを通過し、V相コア本体とW相コア本体との間を通過する磁束は、第2コア本体の外嵌部と第3コア本体の第2延伸部との間に形成されるVWギャップを通過し、U相コア本体とW相コア本体との間を通過する磁束は、第1延伸部の先端面と第2延伸部の先端面との間に形成されるUWギャップを通過することとなる。そのため、いずれのコア本体間を通過する磁束であっても、通過するギャップは1つとなるので、磁気抵抗が等しくなって磁束量が均一となり、モータの振動や騒音を抑えることができる。また、磁束が通過するギャップを1つにしたので、磁束量の減少を最小限に抑えることができる。
【0022】
このようなクローポール型モータの具体的な一態様としては、前記第1延伸部の先端部が、前記外嵌部に外嵌される回転軸線方向の深さと、前記第2延伸部の先端部が、前記第1延伸部とは逆の方向から前記外嵌部に外嵌される回転軸線方向の深さとが、略等しくなるように構成されているものを挙げることができる。
【0023】
これにより、第1延伸部と外嵌部との間に形成されるUVギャップを通過する磁束密度と、第2延伸部と外嵌部との間に形成されるVWギャップを通過する磁束密度とが略等しくなるので、より均一化した磁束量によってモータの振動や騒音を抑えることができる。
【0024】
また、本発明の効果が特に顕著に奏される実施形態として、クローポール型モータは、前記第1コア、前記第2コア及び前記第3コアが、粉体状の磁性材料を前記回転軸線方向からプレス加工して構成されたものを挙げることができる。
従来では、回転軸線方向にギャップが生じており、そのギャップが製造誤差によって非常に大きくなり、モータ特性の劣化を招いていた。しかし、本発明は一部が径方向のギャップ(UVギャップ、VWギャップ)となって、製造誤差の低減を図れるため、モータ特性をより向上することができる。
【0025】
本発明のクローポール型モータの具体的な構成としては、前記外嵌部が、中心孔を有した円筒形状をなすものであり、前記第1延伸部及び前記第2延伸部の先端部が、前記中心孔に略隙間なく嵌り込んでいるものを挙げることができる。
【0026】
本発明のクローポール型モータの別の具体的な一態用としては、前記第1コアが、回転軸線上に配置されたU相コア本体の周囲に、軸線方向に延伸する複数のU相爪磁極を設けてなるU相コアであり、前記第2コアが、前記回転軸線上であって前記U相コア本体の隣に配置されたV相コア本体の周囲に、軸線方向に延伸する複数のV相爪磁極を設けてなるV相コアであり、前記第3コアが、前記回転軸線上であって前記V相コア本体の隣に配置されたW相コア本体の周囲に、軸線方向に延伸する複数のW相爪磁極を設けてなるW相コアであり、前記各コアをそれぞれ磁化するU相コイル、V相コイル、W相コイルをさらに具備し、前記U相コイルは、前記U相コア本体及びV相コア本体の間に配置してあり、前記W相コイルは、前記V相コア本体及びW相コア本体の間に配置してあり、前記V相コイルは、直列に接続された第1V相コイル要素及び第2V相コイル要素からなり、前記第1V相コイル要素が前記U相コア本体及び前記V相コア本体の間に配置してあるとともに、前記第2V相コイル要素が前記V相コア本体及び前記W相コア本体の間に配置してあり、前記V相コイルの線径の一部又は全部が、前記U相コイル及び前記W相コイルの線径に比べて大きく設定してあるものを挙げることができる。
【0027】
このようなものであれば、V相コイルの線径の一部又は全部、すなわち、第1V相コイル要素及び第2V相コイル要素の一部又は全部の線径が、U相コイル及びW相コイルに比べて大きいので、コイルの線径がコイルの抵抗値に反比例することから、第1V相コイル要素及び第2V相コイル要素の抵抗値を小さくして、V相コイルの抵抗値をU相コイル及びW相コイルの抵抗値に近づけることができる。このように、U相コイル、V相コイル及びW相コイルの抵抗値が均一となるので、電圧が一定の場合、各相に電流をバランスよく流すことができ、トルク脈動の発生を低減し、モータの回転が不安定になることによる振動や騒音を防止することができる。
また、U相コイル、V相コイル及びW相コイルの巻数を変えることなく、コイル線径を変えるだけでV相コイルの抵抗値を下げることができるので、U相コイル、V相コイル及びW相コイルの巻数をほぼ同じにして磁束を均一化し、モータの回転を安定化することができる。
【0028】
本発明のクローポール型モータの別の具体的な一態用としては、前記第1V相コイル要素が、前記U相コイルの外側に配置されており、前記第2V相コイル要素が、前記W相コイルの外側に配置されているものを挙げることができる。
【0029】
2つのコイルを内外に配置した場合、内側に巻回されるコイルの長さは、外側に巻回されるコイルの長さに比べて必然的に短くなる。コイルの抵抗値はコイルの長さに比例するので、内側に配置されるコイルの抵抗値は外側に配置されるコイルの抵抗値に比べて小さくなる。
しかし本発明のクローポール型モータでは、外側に配置される第1V相コイル要素及び第2V相コイル要素の線径を太くしているので、外側に配置される第1V相コイル要素及び第2V相コイル要素の抵抗値を小さくして、U相コイル及びW相コイルの抵抗値に近づけることができる。そのため、各相に電流をバランスよく流してモータの回転を安定化することができる。
【0030】
上述の好ましい線径としては、前記U相コイル又は前記W相コイルの線径をD1とし、前記第1V相コイル要素又は前記第2V相コイル要素の線径をD2とすると、D1/D2が、1.0以上1.4以下となるものを挙げることができる。
【0031】
本発明のクローポール型モータの別の具体的な一態用としては、前記第1V相コイル要素又は前記第2V相コイル要素の巻数が、前記U相コイル又は前記W相コイルの巻数と異なるものを挙げることができる。
【0032】
一般的にU相コア、V相コア、W相コアは、粉体鉄心を軸方向に押圧加工して製造されていることが多く、このように製造されたコアは軸方向の長さにばらつきが生じやすい。そうすると、磁路の長さがコア毎に異なったり、各コア間の接合部分の微小な空隙に磁気抵抗が生じたりして、U相コア、V相コア及びW相コアに製造誤差による磁束の不均一が生じる。
このような磁束の不均一を是正するためには、第1V相コイル要素、第2V相コイル要素、U相コイル又はW相コイルの巻数をそれぞれ異ならせて、コイルの抵抗値を調整する構成が挙げられる。
【0033】
本発明のクローポール型モータの別の具体的な一態用としては、前記第1V相コイル要素が、前記U相コイルの内側に配置されており、前記第2V相コイル要素が、前記W相コイルの内側に配置されており、前記U相コイル及び前記W相コイルの線径の一部又は全部が、前記V相コイルの線径に比べて大きく設定してあるものを挙げることができる。
【0034】
上述のように構成することによって、内側に配置される第1V相コイル要素及び第2V相コイル要素の抵抗値を下げるとともに、外側に配置されるU相コイル及びW相コイルの抵抗値を、コイルの線径を大きくして下げることができる。そのため、U相コイル、V相コイル、W相コイルの抵抗値を等しくして、各相に電流をバランスよく流してモータの回転を安定化させることができる。
【0035】
本発明のクローポール型モータの別の具体的な一態用としては、前記第1コアが、回転軸線上に配置されたU相コア本体の周囲に、軸線方向に延伸する複数のU相爪磁極を設けてなるU相コアであり、前記第2コアが、前記回転軸線上であって前記U相コア本体の隣に配置されたV相コア本体の周囲に、軸線方向に延伸する複数のV相爪磁極を設けてなるV相コアであり、前記第3コアが、前記回転軸線上であって前記V相コア本体の隣に配置されたW相コア本体の周囲に、軸線方向に延伸する複数のW相爪磁極を設けてなるW相コアであり、前記U相コア、前記V相コア及び前記W相コアを具備し、前記U相爪磁極、前記V相爪磁極、前記W相爪磁極がこの順で周方向に繰り返し表れるように配置されている固定子と、前記U相爪磁極、前記V相爪磁極及び前記W相爪磁極に対面するように周方向に配置された複数の磁極を具備し、前記複数の磁極がN極とS極とに周方向に交互に着磁されている回転子とを具備し、前記固定子の前記U相爪磁極、前記V相爪磁極、前記W相爪磁極を合わせた個数をS、前記回転子の磁極の個数をPとすると、下記式(1)が成立するものを挙げることができる。
【数1】
【0036】
これにより、固定子側のU相爪磁極、V相爪磁極及びW相爪磁極の3つの爪磁極に対応して、回転子側の周方向にN極及びS極に着磁された2つの磁極からなるユニットが(n+1)個配置される。1つのユニットの周方向角度は360°であるので、U相爪磁極、V相爪磁極及びW相爪磁極を合わせた周方向角度は、360°×(n+1)となる。そのため、U相爪磁極、V相爪磁極、W相爪磁極のそれぞれの周方向角度を120°以上にすることができるので、コギングトルクや鎖交磁束の歪みを減らし、モータの振動や騒音を低減することができる。
【0037】
上述の比率の好ましい形態としては、前記式(1)において、nが1となるものを挙げることができる。
【0038】
上述のように構成すれば、S:Pが3:4となるので、U相爪磁極、V相爪磁極及びW相爪磁極に対して、周方向にN極及びS極に着磁された2つの磁極からなるユニットを2つ配置することとなる。そのため、U相爪磁極、V相爪磁極及びW相爪磁極のこれら3つの爪磁極を合わせた周方向角度は、360°×2で720°となり、各爪磁極の周方向角度は、最大で240°となる。したがって、爪磁極の周方向角度を120°以上にして、コギングトルクや鎖交磁束の歪みを減らし、モータの振動や騒音を低減することができる。
【0039】
また、前記爪磁極の周方向の幅が、電気角で130°以上160°以下、すなわち、各爪磁極の周方向角度を130°以上160°以下、さらに好ましくは150°とすれば、
図18に示すように、コギングトルクや鎖交磁束を最も低下させることができ、モータの振動や騒音をより効果的に低減することができる。
【0040】
本発明のクローポール型モータの製造方法は、コア本体と、前記コア本体の周囲に回転軸線方向に延伸するように設けられた複数の爪磁極とを具備するコアを複数具備するクローポール型モータの製造方法であって、前記複数のコアのうち少なくとも2つは、前記回転軸線方向に前記コア本体が隣り合って配置されており、前記隣り合うコア本体を回転軸線方向に押圧した状態で、前記複数のコアを固定する成型工程を具備することを特徴とする。
【0041】
上述のように構成されたクローポール型モータの製造方法では、隣り合うコア本体を回転軸線方向に押圧した状態で、複数のコアを固定するので、隣り合うコアが圧着されて、回転軸線方向に空隙が生じることを防ぐことができ、モータの振動や騒音を低減することができる。
【0042】
本発明のクローポール型モータの製造方法の具体的な一形態としては、前記隣り合うコア本体を回転軸線方向に圧着した状態において、各コア本体に設けられた前記爪磁極が輪番で周方向に繰り返し表れており、前記成型工程において、隣り合う前記爪磁極の間に金型を嵌め込むものを挙げることができる。
【0043】
このように構成すれば、隣り合う爪磁極の周方向の幅を金型によって精度よく位置決めした状態で、複数のコアを一体成型するので、爪磁極を周方向に等間隔に配置することができ、モータの回転を滑らかにして振動や騒音を低減することができる。
【0044】
また、本発明の効果が特に顕著に奏される実施形態として、前記各コアが、粉体状の磁性材料を前記回転軸線方向からプレス加工して構成されたものを挙げることができる。
【0045】
本発明のクローポール型モータの製造方法の別の具体的な一形態としては、前記複数のコアが、回転軸線上に配置されたU相コア本体と、前記U相コア本体の周囲に設けられた複数のU相爪磁極とを具備するU相コア、回転軸線上に配置されたV相コア本体と、前記V相コア本体の周囲に設けられた複数のV相爪磁極とを具備するV相コア及び前記W相コア本体の周囲に設けられた複数のW相爪磁極とを具備するW相コアからなる。そして、前記U相コア本体が、前記W相コア本体に向かって延伸する第1延伸部を具備したものであり、前記W相コア本体が、前記U相コア本体に向かって延伸する第2延伸部を具備したものであり、前記V相コア本体が、前記第1延伸部の先端部及び前記第2延伸部の先端部に外嵌する外嵌部を具備したものであって、前記成型工程は、前記第1延伸部の先端面と前記第2延伸部の先端面を圧着した状態で行われるものを挙げることができる。
【0046】
このように構成すれば、U相コア本体とW相コア本体との間は、回転軸線方向に配置され、U相コア本体とV相コア本体との間、及びV相コア本体とW相コア本体との間は、周方向に配置されることとなる。
各コアが粉体状の磁性材料を回転軸線方向からプレス加工して構成された場合、回転軸線方向とは垂直な方向となる周方向の寸法精度は、回転軸線方向の寸法精度に比べて格段に良いので、U相コア本体とV相コア本体との間、及びV相コア本体とW相コア本体との間にはほとんど空隙が生じないことに加えて、U相コア本体とW相コア本体との間は、コア本体が圧着した状態で固定されているので、この間にも空隙が生じることを防ぐことができ、モータの振動や騒音を低減することができる。
また、U相コア本体、V相コア本体、W相コア本体をこの順で回転軸線方向に配置してなる固定子は、回転軸線方向に配置されるU相コア本体とV相コア本体との間、及びV相コア本体とW相コア本体との間の2箇所を圧着する必要があるのに対し、上述の構成では、回転軸線方向に配置されるのはU相コア本体とW相コア本体との間の1箇所のみであるので、確実にコア本体を圧着させて、製造性を安定させることができる。
【0047】
本発明のクローポール型モータの製造方法の別の具体的な一形態としては、前記成型工程が、前記第1延伸部の近傍を押して、前記第1延伸部の先端面と前記第2延伸部の先端面とを圧着するものを挙げることができる。
【0048】
このように構成すれば、U相コア本体とW相コア本体の回転軸線方向の荷重に対して強度が最も強い第1延伸部の先端面と第2延伸部の先端面とを突き合わせて、より確実に先端面同士に生じる隙間をなくすことができる。
【0049】
本発明のクローポール型モータの製造方法の別の具体的な一形態としては、前記成型工程が、前記第1延伸部の先端面と前記第2延伸部の先端面を圧着した状態で、前記第1延伸部、前記第2延伸部及び前記外嵌部を樹脂で固定するとともに、前記第1延伸部及び前記第2延伸部の少なくとも一部の内側を覆うように樹脂層を形成するものを挙げることができる。
【0050】
このように構成すれば、U相コア本体、V相コア本体及びW相コア本体と組み合わされる部材、例えば、U相コア本体、V相コア本体及びW相コア本体の略中心部に挿入される軸受等の部材との間に樹脂層を介在させることができるので、U相コア本体、V相コア本体及びW相コア本体で発生する熱が伝達することを防ぐことができる。
【0051】
また、上述した方法を用いて製造されたクローポール型モータも本発明の1つである。
【0052】
本発明のクローポール型モータの製造方法は、コア本体と、前記コア本体の周囲に回転軸線方向に延伸するように設けられた複数の爪磁極とを具備するコアを複数具備するクローポール型モータの製造方法であって、前記各コア本体を、略環状形状をなす部材を同心円状に分割した複数のパーツを組み合わせて構成し、最も外側に配置される前記パーツの外周端縁部に前記複数の爪磁極を一体的に保持することを特徴とする。
【0053】
これにより、コア本体を構成する複数のパーツが同心円状に分割されたものであるので、複数のパーツを組み合わせる場合、それぞれのパーツの中心軸を容易に一致させることができる。そのため、爪磁極の真円度が低下してモータの回転が歪むことを防ぐことができ、モータの振動や騒音を低減することができる。また、最も外側に配置されるパーツの外周端縁部に爪磁極が一体に保持されているので、このパーツが位置決めされれば自ずと爪磁極が位置決めされ、パーツと爪磁極とを別々に設けた場合と比べて、容易に爪磁極を位置決めすることができる。
【0054】
また、本発明の効果が特に顕著に奏される実施形態としては、少なくとも前記爪磁極が、粉末からなる軟磁性材料を回転軸線方向にプレス加工して構成されたものを挙げることができる。
【0055】
つまり、各パーツを製造する際のプレス加工時の圧力を高めて、各パーツの質量密度を高めることができるので、固定子全体として質量密度を高めた磁気抵抗を少ない性能のよい固定子を製造することができる。
【0056】
本発明のクローポール型モータの製造方法の具体的な一形態としては、前記爪磁極を構成する材料が、前記パーツを構成する材料とは異なるものを挙げることができる。
【0057】
このように構成すれば、コストがかかる鉄系絶縁粒子を爪磁極のみに使用し、パーツには鉄系絶縁粒子とは異なる材料を使用することができるので、コストを削減することができる。
【0058】
本発明のクローポール型モータの製造方法の別の具体的な一形態としては、前記爪磁極を構成する材料が、前記パーツを構成する材料よりも体積抵抗率が大きいものが用いられているものを挙げることができる。
【0059】
モータを作動させると、爪磁極の表面に渦電流が発生し、この渦電流によってコアが発熱してエネルギー損失が生じる渦電流損が生じてモータの効率が悪化する。しかしながら、本発明では、爪磁極を構成する材料をパーツを構成する材料よりも体積抵抗率の高い材料にするので、爪磁極の電気抵抗を大きくして爪磁極の表面に生じる渦電流を低減させることができる。
【0060】
本発明のクローポール型モータの製造方法の別の具体的な一形態としては、前記爪磁極を磁化するコイルをさらに具備し、前記複数のパーツが、第1パーツ及び前記第1パーツの内側に配置される第2パーツからなり、前記第2パーツの外径が、前記コイルの外径よりも大きいものを挙げることができる。
【0061】
このように構成すれば、例えば、第1パーツを組み合わせたものと、第2パーツ及びコイルを組み合わせたものとを製造し、第1パーツを組み合わせたものの中に、第2パーツ及びコイルを組み合わせたものを収容して固定することによりクローポール型モータを製造することができる。この製造方法の工程数は、第1パーツと第2パーツとを組み合わせて各コアを別々に製造し、各コア間に隙間にコイルを配置してから、これらを固定する製造方法に比べて、組立性を向上させて、容易にクローポール型モータを製造することができる。
【0062】
本発明のクローポール型モータの製造方法の別の具体的な一形態としては、前記第1パーツが、外周に前記爪磁極を保持するものであり、前記第2パーツが、径方向に分割された複数の分割要素から構成されるものを挙げることができる。
【0063】
このように構成すれば、第2パーツに設けられた径方向に分割された3つの分割要素の間にそれぞれ電気抵抗が生じ、この電気抵抗によって周方向に流れる渦電流を低減することができる。また、爪磁極を保持する第1パーツは径方向に分割されていないので、爪磁極の真円度が低下することを防ぐことができる。
【0064】
本発明のクローポール型モータの製造方法の別の具体的な一形態としては、前記第1パーツ及び前記第2パーツが圧入して固定されているものを挙げることができる。
【0065】
このように構成すれば、第1パーツと第2パーツとの隙間をなくして、モータ特性を向上することができる。
【0066】
本発明のクローポール型モータの製造方法の具体例としては、前記複数のコアが、U相コア本体を具備するU相コア、V相コア本体を具備するV相コア及びW相コア本体を具備するW相コアからなり、前記コイルが、U相コイル、V相コイル及びW相コイルからなり、前記U相コイルは、前記U相コア本体及びV相コア本体の間に配置してあり、前記W相コイルは、前記V相コア本体及びW相コア本体の間に配置してあり、前記V相コイルは、直列に接続された第1V相コイル要素及び第2V相コイル要素からなり、前記第1V相コイル要素が前記U相コア本体及び前記V相コア本体の間に配置してあるとともに、前記第2V相コイル要素が前記V相コア本体及び前記W相コア本体の間に配置してあるものを挙げることができる。
【0067】
このように構成すれば、U相コア本体とV相コア本体との間に形成される空間に、U相コイル及び第1V相コイル要素を配置するとともに、V相コア本体とW相コア本体との間に形成される空間に、第2V相コイル要素及びW相コイルを配置することによってクローポール型モータを製造することができるので、実質的に、3個のコア本体と2つのコイルとでクローポール型モータを製造することができ、製造性を向上することができる。
【0068】
また、上述した方法を用いて製造されたクローポール型モータも本発明の1つである。
【0069】
本発明によれば、モータの振動や騒音を低減することができるクローポール型モータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下に本発明に係るクローポール型モータの一実施形態について説明する。
【0072】
本実施形態におけるクローポール型モータ1は、冷蔵庫や自動車等の様々な分野で使用されるものであって、
図1及び
図2に示すように、複数の永久磁石18(請求項にいう磁極)が内周方向に配置された回転子2と、軸線方向に延伸する複数の爪磁極5(5a、5b、5c)が外周方向に配置された固定子3とを具備し、回転子2の内周面と固定子3の外周面とが対面するように配置されている。そして、回転子2の永久磁石18と、固定子3の爪磁極5との間に生じる引力及び斥力によって、回転子2が、その中心に仮想的に設けられた回転軸線に対して周方向に回転する。
【0073】
回転子2は、
図1、
図2及び
図3に示すように、一方が開口し、他方が閉塞する有底円筒形状をなすものであって、閉塞する一端面の中心には回転子2を回転させる回転軸4が挿入して固定されている。また、その内周面には、回転軸線方向に延伸する長片形状をなす複数の永久磁石18が周方向に等間隔に配置されている。この複数の永久磁石18は、周方向にN極とS極とに交互に繰り返し着磁されている。そして、本実施形態では、N極に着磁された永久磁石18aとS極に着磁された永久磁石18bとを合わせた永久磁石18の個数は24個となる。なお、以下では説明のため、周方向に隣り合うN極に着磁された永久磁石18a及びS極に着磁された永久磁石18bをユニット23とする。
【0074】
固定子3は、
図4及び
図5に示すように、爪磁極5(5a、5b、5c)を磁化するための磁気回路となるU相コア8、V相コア9、W相コア10と、前記各コアをそれぞれ磁化するU相コイル14、V相コイル15、W相コイル16とを具備する。
【0075】
U相コア8は、
図5に示すように、回転軸線上に配置されたU相コア本体19と、U相コア本体19の周囲に設けられ、軸線方向に延伸する複数のU相爪磁極5aとを具備する。U相コア本体19は、互いに機械角で60°ずつずれて等間隔に配置したU相爪磁極5aを外周に一体に保持するリング状部材11aと、リング状部材11aの片面にリング状部材11aと同軸に一体に取り付けられた中心円筒状部材12aとを具備する。
【0076】
中心円筒状部材12aは、請求項に記す第1延伸部に相当し、U相爪磁極5aが延伸する方向と同じ方向に向かって突出している。
【0077】
V相コア9は、
図5に示すように、回転軸線上であって、U相コア本体19の隣に配置されたV相コア本体20と、V相コア本体20の周囲に設けられ、軸線方向に延伸する複数のV相爪磁極5bとを具備する。このV相コア本体20は、中心孔を有した中心円筒状部材12bと、中心円筒状部材12bと同じ軸線方向の高さを有し、この中心円筒状部材12bの軸線方向の略中央から放射状に延伸する複数のアーム17とを具備する。
【0078】
中心円筒状部材12bは、請求項に記す外嵌部に相当し、その内径がU相コア8の中心円筒状部材12aの外径に等しいものである。
【0079】
アーム17は、その先端が、V相爪磁極5bの延伸方向の真ん中に一体的に接続されていて、V相爪磁極5bは、アーム17に対して線対称をなすように軸線方向の両方に延伸している。本実施形態においては、例えば6本のアーム17が機械角で60°ずつずれて等間隔に延伸するものであるから、この先端に設けられた6個のV相爪磁極5bも、互いに機械角で60°ずつずれて等間隔に配置されている。
【0080】
W相コア10は、
図5に示すように、回転軸線上であってV相コア本体20の隣に配置されたW相コア本体21と、W相コア本体21の周囲に設けられ、軸線方向に延伸する複数のW相爪磁極5cとを具備する。このW相コア本体21は、互いに機械角で60°ずつずれて等間隔に配置したW相爪磁極5cを外周に一体に保持するリング状部材11cと、リング状部材11cの片面に当該リング状部材11cと同軸に一体に取り付けられた中心円筒状部材12cとを具備する。
【0081】
中心円筒状部材12cは、請求項に記す第2延伸部に相当し、U相コア本体19に向けて突出しており、W相爪磁極5cは、中心円筒状部材12cが突出する方向と同じ方向に向かって延伸している。この方向は、U相爪磁極5aの延伸方向とは逆となり、U相コア8の第1延伸部(中心円筒状部材12a)は、W相コア本体21に向かって延伸している。また、中心円筒状部材12cの内径及び外径は、U相コア8の中心円筒状部材12aの内径及び外径とそれぞれ等しい。
【0082】
U相コア8、V相コア9、W相コア10は、
図6に示すように、U相コア本体19の中心線及びW相コア本体21の中心線が回転軸線と合致するように、中心円筒状部材12aの先端面と中心円筒状部材12cの先端面とが向かい合って近接又は当接している。また、V相コア本体20の中心線が回転軸線と合致するように、中心円筒状部材12a及び中心円筒状部材12cの先端部が、中心円筒状部材12bの中心孔に隙間なく嵌り込んでいる。そして、この状態において、U相コア8、V相コア9、W相コア10が樹脂等によって固定されている。
【0083】
この状態において、
図6に示すように、中心円筒状部材12aの先端面と中心円筒状部材12cの先端面との間に、UWギャップG1が形成されている。また、中心円筒状部材12bの先端面と中心円筒状部材12aの外周面との間に、UVギャップG2が形成されているとともに、中心円筒状部材12bの先端面と中心円筒状部材12cの外周面との間にVWギャップG3が形成されている。
【0084】
このとき、中心円筒状部材12aの先端部が中心円筒状部材12bに嵌りこむ回転軸線方向の深さと、中心円筒状部材12cの先端部が中心円筒状部材12bに嵌りこむ回転軸線方向の深さとが等しくなるように構成されている。このように構成することによって、UVギャップG2を通過する磁束密度と、VWギャップG3を通過する磁束密度とが略等しくなるので、より均一化した磁束量によってモータの振動や騒音を抑えることができる。
【0085】
UVギャップG2、UWギャップG1、VWギャップG3の幅は0であることが好ましい。また、幅が0でない場合、UVギャップG2及びVWギャップG3の幅の誤差範囲は、UWギャップG1の幅の誤差範囲に比べて十分小さくなる。
これは、U相コア8、V相コア9、W相コア10が、粉体状の磁性材料を回転軸線方向からプレス加工して構成されているので、回転軸線方向の寸法精度がラジアル方向に比べて悪く、ラジアル方向のUVギャップG2及びVWギャップG3に比べて回転軸線方向のUWギャップG1の製造誤差が大きくなるからである。
【0086】
このように組み合わせられたU相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cがこの順で、互いに機械角で20°ずれて周方向に繰り返し表れる。そして、本実施形態では、U相爪磁極5a、V相爪磁極5b及びW相爪磁極5cを合わせた爪磁極5の個数は18個となる。
【0087】
上述のように構成した回転子2、固定子3では、回転子2の永久磁石18の個数をP、固定子3のU相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cを合わせた個数をSとすると、以下の式(1)が成立する。
【数1】
より具体的には、上述したようにSが18、Pが24であることから、S:P=3:4の関係が成立する。
【0088】
そのため、本実施形態のクローポール型モータ1では、固定子3側のU相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cに対応して、回転子2側の上述した周方向にN極及びS極に着磁された2つの永久磁石18a、18bからなるユニット23が2つ配置されている。
【0089】
この関係を周方向の電気角を示す周方向角度で示すと、N極に着磁された永久磁石18a及びS極に着磁された永久磁石18bの周方向角度はそれぞれ180°であるので、1ユニット23の周方向角度は360°となり、
図7に示すように、2つのユニット23に対応するU相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cを合わせた周方向角度は、360°×2で720°となる。したがって、各爪磁極5の周方向角度は、720°を3で割った240°となり、各爪磁極5の周方向角度は最大で240°となる。
【0090】
本実施形態では、U相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cの周方向角度を130°以上160°以下、さらに好ましくは150°としている。
【0091】
U相コイル14は、絶縁体からなる第1ボビン7aに所定の線径を有する線体を巻回して構成されているものである。この第1ボビン7aは、その中心線と回転軸線とが一致するようにU相コア本体19及びV相コア本体20の間に形成される空間S1に配置されている。なお、この空間S1は樹脂によって封止されている。
【0092】
W相コイル16は、絶縁体からなる第2ボビン7bに所定の線径を有する線体を巻回して構成されているものである。この第2ボビン7bは、その中心線と回転軸線とが一致するようにV相コア本体20及びW相コア本体21の間に形成される空間S2に配置されている。なお、この空間S2は樹脂によって封止されている。
【0093】
V相コイル15は、
図6に示すように、直列に接続された第1V相コイル要素15a及び第2V相コイル要素15bからなる。第1V相コイル要素15aは、絶縁体からなる第1ボビン7aに所定の線径を有する線体を巻回して構成されているものである。この第1ボビン7aは、上述したように、その中心線と回転軸線とが一致するように空間S1に配置されている。第2V相コイル要素15bは、絶縁体からなる第2ボビン7bに所定の線径を有する線体を巻回して構成されているものである。この第2ボビン7bは、上述したように、その中心線と回転軸線とが一致するように空間S2に配置されている。
【0094】
このとき、空間S1には、外側に第1V相コイル要素15a、内側にU相コイル14が配置されているとともに、空間S2には、外側に第2V相コイル要素15b、内側にW相コイル16が配置されている。なお、本実施形態において、U相コイル14、第1V相コイル要素15a、第2V相コイル要素15b、W相コイル16の巻数は同じである。
【0095】
また、U相コイル14の巻回方向を正とすると、第1V相コイル要素15aの巻回方向は正、第2V相コイル要素15bの巻回方向は負、W相コイル16の巻回方向は負となるように巻回されており、これらのコイルは互いに図示しない巻き終わり端子が接続されている。
【0096】
そして、第1V相コイル要素15a及び第2V相コイル要素15bの線径は、
図6に示すように、U相コイル14及びW相コイル16の線径に比べて大きくなるように構成されている。
【0097】
ここで、コイルの抵抗値をR[Ω]、コイルの線径をD[mm]、コイルの長さをL[mm]、コイルを構成する金属の抵抗率をaとすると、以下の関係式(2)が成り立つ。
R=aL/πD
2・・・(2)
つまり、この式(2)から、コイルの線径が大きくなるほどコイルの抵抗値が小さくなり、また、コイルの巻数が増えるもしくは、コイルの周長が長くなることにより、コイルの抵抗値が大きくなることが分かる。
【0098】
上述のように構成したクローポール型モータの固定子3の製造方法は以下の通りである。
【0099】
まず、U相コア8、V相コア9、W相コア10を、それぞれ例えば粉体状の軟磁性材料を回転軸線方向からプレス加工して製造するコア製造工程を行う。なお、プレス加工する材料は鋼板等であってもよい。
【0100】
次に、U相コア本体19及びW相コア本体21の中心線が回転軸線と合致するように、中心円筒状部材12aの先端面と中心円筒状部材12cの先端面とを向かい合わせて配置するとともに、中心円筒状部材12bの中心孔に、中心円筒状部材12a及び中心円筒状部材12cの先端部を略隙間なく嵌り込ませて、U相コア8とW相コア10との間にV相コア9を配置する。
【0101】
このとき、U相コイル14及び第1V相コイル要素15aを、U相コア本体19とV相コア本体20との間に形成された空間S1に配置し、第2V相コイル要素15b及びW相コイル16を、V相コア本体20とW相コア本体21との間に形成された空間S2に配置する。このように配置したU相コア8、V相コア9、W相コア10、U相コイル14、V相コイル15及びW相コイル16をまとめて固定子形成部材30とよぶ。
【0102】
最後に、
図8に示すように、固定子形成部材30を上金型31及び下金型32で回転軸線方向に挟むように配置する。
【0103】
上金型31及び下金型32は、内部に固定子形成部材30を収容する凹部が設けられたものである。
【0104】
上金型31は、凹部が設けられた開口端が下金型32の凹部が設けられた開口端と当接するものであって、その上面には、
図8に示すように、樹脂を注入するための注入用孔部37が複数設けられるとともに、押しピン38を挿入する押しピン用孔40が設けられている。
【0105】
下金型32は、
図8に示すように、固定子形成部材30を位置決めするための位置決め凸部39が設けられており、この位置決め凸部39は、機械角で20°ずつずれて周方向に配置されたものである。
【0106】
そして、下金型32の凹部に固定子形成部材30を嵌めこんだ状態で、下金型32の凹部が設けられた開口端と、上金型31の凹部が設けられた開口端とを合わせて、上金型31及び下金型32の内部に固定子形成部材30を収容する。
このとき、下金型32に設けられた位置決め凸部39と、固定子形成部材30のU相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cとがそれぞれ当接する。
【0107】
そして、上金型31に設けられた押しピン用孔40から押しピン38を挿入して、この押しピン38によって固定子形成部材30を下金型32に押し付けながら、上金型31に設けられた注入用孔部37から樹脂を流し込んで固定子形成部材30を固定する成型工程を行う。
【0108】
このとき、押しピン38は、U相コア8の中心円筒状部材12aの近傍を押圧する。このように押圧することによって、回転軸線方向の荷重に対して最も強度が強いU相コア8の中心円筒状部材12aの先端面と、W相コア10の中心円筒状部材12cの先端面とが突き合い、これらが隙間なく接触する。
【0109】
この状態において樹脂で固定されるので、中心円筒状部材12aの先端面と中心円筒状部材12cの先端面とが圧着された状態で樹脂によって固定される。
【0110】
また、下金型32に設けられた位置決め凸部39によって、U相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cがこの位置で位置決めされて固定される。
【0111】
この場合、中心円筒状部材12aの内面の少なくとも一部及び中心円筒状部材12cの内面少なくとも一部に樹脂層が形成されるように構成してもよい。そうすると、中心円筒状部材12a及び中心円筒状部材12cの中に挿入される軸受等の部材が、樹脂層を介して接触することになるので、固定子3で発生する熱が軸受等の部材に伝熱することを防ぐことができる。
【0112】
また、以下のようにしてクローポール型モータの固定子3を製造することもできる。
【0113】
つまり、U相コア本体19を、
図9に示すように、第1U相パーツ41及び第2U相パーツ42で構成する。この第1U相パーツ41及び第2U相パーツ42は、略環状形状をなす部材を同心円状に2つに分割して構成したものである。
【0114】
第1U相パーツ41は、
図9に示すように、第2U相パーツ42の外側に配置され、その外周端縁部に周方向に等間隔に配置された複数のU相爪磁極5aを一体的に保持するものである。
【0115】
第2U相パーツ42は、
図9に示すように、第1U相パーツ41の内側に略隙間なく嵌合するものであって、その内面に円筒状部材が設けられている。また、第2U相パーツ42の外径は、上述のU相コイル14、V相コイル15(第1V相コイル要素15a及び第2V相コイル要素15b)、W相コイル16の外径よりも大きいものである。また、第2U相パーツ42は、機械角で120°の位置で径方向に分割された3つの分割要素を周方向に配置することによって構成されている。
【0116】
V相コア本体20を、
図10に示すように、第1V相パーツ43及び第1V相パーツ43の内側に配置される第2V相パーツ44で構成する。第1V相パーツ43及び第2V相パーツ44は、略円板状をなす部分を同心円状に分割して構成されたものである。
【0117】
第1V相パーツ43は、
図10に示すように、第2V相パーツ44の外側に配置され、円環状をなす本体部分と、この本体部分から放射状に延伸する複数のアーム17と、アーム17の先端にその回転軸線方向の略中央部分が一体的に保持された複数のV相爪磁極5bとを具備するものである。
【0118】
第2V相パーツ44は、
図10に示すように、第1V相パーツ43の内側に略隙間なく嵌合する円環状をなす本体部分と、この本体部分の内面に軸方向の略中央部分が一体的に接続された円筒状部材とを具備する。また、第2V相パーツ44の外径は、上述のU相コイル14、V相コイル15(第1V相コイル要素15a及び第2V相コイル要素15b)、W相コイル16の外径よりも大きいものである。また、第2V相パーツ44は、機械角で120°の位置で径方向に分割された3つの分割要素を周方向に配置することによって構成されている。
【0119】
W相コア本体21を、
図11に示すように、第1W相パーツ45及び第2W相パーツ46で構成する。この第1W相パーツ45及び第2W相パーツ46は、略環状形状をなす部材を同心円状に2つに分割して構成したものである。
【0120】
第1W相パーツ45は、
図11に示すように、第2W相パーツ46の外側に配置され、その外周端縁部に周方向に等間隔に配置された複数のW相爪磁極5cを一体的に保持するものである。
【0121】
第2W相パーツ46は、
図11に示すように、第1W相パーツ45の内側に略隙間なく嵌合するものであって、その内面に円筒状部材が設けられている。また、第2W相パーツ46の外径は、上述のU相コイル14、V相コイル15(第1V相コイル要素15a及び第2V相コイル要素15b)、W相コイル16の外径よりも大きいものである。また、第2W相パーツ46は、機械角で120°の位置で径方向に分割された3つの分割要素を周方向に配置することによって構成されている。
【0122】
上述の第1U相パーツ41及び第2U相パーツ42、第1V相パーツ43及び第2V相パーツ44、第1W相パーツ45及び第2W相パーツ46は、粉末状の軟磁性材料を回転軸線方向にプレス加工して構成される。また、第1U相パーツ41、第1V相パーツ43、第1W相パーツ45にそれぞれ一体的に保持されるU相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cは、第1U相パーツ41、第1V相パーツ43、第1W相パーツ45をプレス加工する際に同時に製造される。
【0123】
このとき、第1U相パーツ41及び第2U相パーツ42と、第1V相パーツ43及び第2V相パーツ44と、第1W相パーツ45及び第2W相パーツ46をなす材料は、U相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cをなす材料とは異なるものが用いられる。
【0124】
より具体的には、U相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cをなす材料は、第2U相パーツ42、第2V相パーツ44、第2W相パーツ46をなす材料よりも体積抵抗率が大きいものが用いられている。
【0125】
上述のように構成した第1U相パーツ41、第1V相パーツ43、第1W相パーツ45の中心軸線を回転軸線に一致させた状態で、上述の順でこれらのパーツを回転軸線方向に組み合わせて樹脂で固定した第1パーツ集合体を製造する。
【0126】
このとき、第1U相パーツ41、第1V相パーツ43、第1W相パーツ45はそれぞれU相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cを一体的に保持したものであるから、第1U相パーツ41、第1V相パーツ43、第1W相パーツ45を固定することによって、U相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cも位置決めされる。
【0127】
そして、第1パーツ集合体の外側には、U相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cが、この順で等間隔に周方向に繰り返し表れる。また、第1パーツ集合体の内側には略円筒形状の孔が形成されている。
【0128】
次に、第2U相パーツ42と第2V相パーツ44との間にU相コイル14及び第1V相コイル要素15aを配置した状態で、これらの中心軸線を一致させるように回転軸線方向に組み合わせて固定した第1内側ユニットを製造する。上述したように、第2U相パーツ42及び第2V相パーツ44の外径は、U相コイル14、V相コイル15(第1V相コイル要素15a及び第2V相コイル要素15b)、W相コイル16の外径よりも大きいので、U相コイル14及び第1V相コイル要素15aは、第2U相パーツ42と第2V相パーツ44との間からはみ出ることなく収容されている。
【0129】
また、第2W相パーツ46の回転軸線方向の上側に第2V相コイル要素15b、W相コイル16を配置した状態で、これらの中心軸線を一致させるように固定した第2内側ユニットを製造する。この場合も上述したように、第2W相パーツ46の外径は、U相コイル14、V相コイル15(第1V相コイル要素15a及び第2V相コイル要素15b)、W相コイル16の外径よりも大きいので、第2V相コイル要素15b及びW相コイル16は、第2W相パーツ46からはみ出ることなく収容されている。
【0130】
最後に、第1パーツ集合体の内側に形成された略円筒形状の孔に、第2内側ユニット、及び、第2内側ユニットの回転軸線方向の上側に第1内側ユニットを配置して、これらを樹脂で固定する。
【0131】
このクローポール型モータの動作は以下の通りである。
まず、W相コイル16に電圧が印加されると、この印加電圧とW相コイル16に生じた誘起電圧の差と、W相コイル16の抵抗によって電流が流れて磁束が生じる。この磁束は、W相コア本体21からW相爪磁極5cに向かい、W相爪磁極5cをN極に磁化するとともに、V相爪磁極5b及びU相爪磁極5aをS極に磁化する。
【0132】
次に、U相コイル14に電圧が印加されると、この印加電圧とU相コイル14に生じた誘起電圧の差と、U相コイル14の抵抗によって電流が流れて磁束が生じる。ここで、W相コイル16とU相コイル14とはコイルの巻回方向が逆となっていることから、この磁束は、U相コア本体19からU相爪磁極5aに向かい、U相爪磁極5aをN極に磁化するとともに、V相爪磁極5b及びW相爪磁極5cをS極に磁化する。
【0133】
最後に、V相コイル15、すなわち、第1V相コイル要素15a及び第2V相コイル要素15bに電圧が印加されると、第1V相コイル要素15aでは、この印加電圧と第1V相コイル要素15aに生じた誘起電圧の差と、第1V相コイル要素15aの抵抗によって電流が流れるとともに、第2V相コイル要素15bでは、この印加電圧と第2V相コイル要素15bに生じた誘起電圧の差と、第2V相コイル要素15bの抵抗によって電流が流れる。
【0134】
このとき、第1V相コイル要素15aに流れる電流によって生じた磁束は、U相コア本体19からV相コア本体20又はW相コア本体21に向かい、V相爪磁極5bとW相爪磁極5cをN極に磁化するとともに、U相爪磁極5aをS極に磁化する。一方、第2V相コイル要素15bに流れる電流によって生じた磁束は、W相コア本体21からV相コア本体20又はU相コア本体19に向かい、V相爪磁極5bとU相爪磁極5aをN極に磁化するとともに、W相爪磁極5cをS極に磁化する。
【0135】
そのため、これらの磁束を合成すると、V相コア9の爪磁極5がN極に磁化されるとともに、U相コア8の爪磁極5及びW相コア10の爪磁極5がS極に磁化される。
【0136】
上述のようにW相コイル16、U相コイル14、V相コイル15に次々と電圧が印加されていくことによって、爪磁極5を磁化する磁極が変化し、固定子3側の爪磁極5と回転子2側の永久磁石18との間に生じる引力及び斥力によって回転子2が回転する。
【0137】
このとき、U相コア本体19とV相コア本体20との間を通過する磁束は、UVギャップG2を通過し、V相コア本体20とW相コア本体21との間を通過する磁束は、VWギャップG3を通過し、U相コア本体19とW相コア本体21との間を通過する磁束は、UWギャップG1を通過する。すなわち、いずれのコア本体間を通過する磁束であっても、磁束が通過するギャップは1つとなる。
【0138】
また、W相コイル16の印加電圧、U相コイル14の印加電圧、V相コイル15の印加電圧は全て等しく、W相コイル16、U相コイル14、V相コイル15に生じた誘起電圧はほぼ等しくなるので、W相コイル16、U相コイル14、V相コイル15において、印加電圧から誘起電圧を引いた電圧はほぼ一定となる。
【0139】
そして、V相コイル15の線径、すなわち第1V相コイル要素15a及び第2V相コイル要素15bの線径を、W相コイル16の線径及びU相コイル14の線径よりも太くしているので、U相コイル14の抵抗値、V相コイル15の抵抗値、W相コイル16の抵抗値はほぼ均一となる。
【0140】
したがって、W相コイル16によって流れる電流値、U相コイル14によって流れる電流値、V相コイル15によって流れ電流値がほぼ等しくなり、各コアに電流がバランスよく流れる。
【0141】
さらに、固定子3側のU相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cに対して、回転子2側の永久磁石18のユニット23を2つ対応させるので、U相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cの周方向角度を最大で240°まで大きくすることができ、本実施形態においては、この周方向角度を150°にするので、
図8に示すようにコギングトルク及び鎖交磁束の歪みが低減する。
【0142】
このように構成した本実施形態のクローポール型モータは以下のような格別の効果を具備する。
【0143】
つまり、上述したように、いずれのコア本体間を通過する磁束であっても、通過するギャップは1つとなるので、磁気抵抗が等しくなって磁束量が均一となり、モータの振動や騒音を抑えることができる。また、磁束が通過するギャップを1つにしたので、磁束量の減少を最小限に抑えることができる。
【0144】
各コアに電流をバランスよく流すことができるので、トルク脈動の発生を低減し、モータの回転が不安定になることによる振動や騒音を防止することができる。
【0145】
さらに、U相コイル14、V相コイル15及びW相コイル16の巻数を変えることなく、コイル線径を変えるだけでV相コイル15の抵抗値を下げることができるので、U相コイル14、V相コイル15及びW相コイル16の巻数を同じにして磁束を均一化し、モータの回転を安定化することができる。
【0146】
また、本実施形態ではU相コイル14、第1V相コイル要素15a、第2V相コイル要素15b、W相コイル16が同じ巻数を具備するものであったが、この巻数を異ならせてもよい。このように構成すれば、U相コア8、V相コア9、W相コア10に軸方向の製造誤差が生じているような場合であっても、コイル毎に巻数を変えてコイルの抵抗値を調整することができるので、製造誤差によってU相コア8、V相コア9及びW相コア10に生じる磁束の不均一を是正することができる。
【0147】
固定子3側のU相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cを合わせた個数Pと、回転子2側のN極に着磁された永久磁石18a及びS極に着磁された永久磁石18bをあわせた個数Sとは、S:Pが3:2(n+1)となるので、固定子3側のU相爪磁極5a、V相爪磁極5b及びW相爪磁極5cの3つの爪磁極5に対応して、回転子2側の周方向にN極及びS極に着磁された2つの永久磁石18a、18bからなるユニット23が(n+1)個配置される。1ユニット23の周方向角度は360°であるので、U相爪磁極5a、V相爪磁極5b及びW相爪磁極5cを合わせた周方向角度は、360°×(n+1)となる。そのため、各爪磁極5の周方向角度を120°以上にすることができるので、コギングトルクや鎖交磁束の歪みを減らし、モータの振動や騒音を低減することができる。
【0148】
このとき、本実施形態では式(1)においてnを1とした値、つまり、S:Pを3:4とすることによって、上述したようにU相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cの周方向角度を最大で240°まで大きくすることができる。そこで、U相爪磁極5a、V相爪磁極5b、W相爪磁極5cの周方向角度を150°にして、
図18に示すようにコギングトルク及び鎖交磁束の歪みを低減することができる。
【0149】
上述のクローポール型モータの製造方法において、回転軸線方向に隣り合って配置されるU相コア本体19とW相コア本体21の中心円筒状部材12aの先端面と中心円筒状部材12cの先端面とが互いに押圧した状態で固定されるので、中心円筒状部材12aの先端面と中心円筒状部材12cの先端面とが圧着されて、この間に空隙が生じることを防いで、モータの振動や騒音を低減することができる。
【0150】
また、下金型32に設けられた位置決め凸部39によって隣り合う爪磁極5の間の周方向の幅が精度よく位置決めされるので、爪磁極5を周方向に等間隔に配置して、モータの回転を滑らかにして振動や騒音を低減することができる。
【0151】
さらに、固定子3を上述のように構成したことによって、U相コア本体19とW相コア本体21との間は、回転軸線方向に配置され、U相コア本体19とV相コア本体20との間、及びV相コア本体20とW相コア本体21との間は、周方向に配置されることとなる。
各コアが粉体状の磁性材料を回転軸線方向からプレス加工して構成された場合、回転軸線方向とは垂直な方向となる周方向の寸法精度は、回転軸線方向の寸法精度に比べて格段に良いので、U相コア本体19とV相コア本体20との間、及びV相コア本体20とW相コア本体21との間にはほとんど空隙が生じないことに加えて、U相コア本体19とW相コア本体21との間は、コア本体が圧着した状態で固定されているので、この間にも空隙が生じることを防ぐことができ、モータの振動や騒音を低減することができ、効率を向上することが可能となる。
【0152】
また、クローポール型モータの製造方法において、各コア本体を構成する複数のパーツが同心円状に分割されたものであるので、これら複数のパーツを組み合わせて固定子3を製造する場合に、それぞれのパーツの中心軸を容易に一致させることができる。そのため、爪磁極5の真円度が低下してモータの回転が歪むことを防ぐことができ、モータの振動や騒音を低減することができる。また、最も外側に配置される第1パーツの外周端縁部に爪磁極5が一体に保持されているので、この第1パーツが位置決めされれば自ずと爪磁極5が位置決めされ、パーツと爪磁極5とを別々に設けた場合と比べて、容易に爪磁極5を位置決めすることができる。
【0153】
爪磁極5を構成する材料が、パーツ41、42、43、44、45、46を構成する材料とは異なるので、コストがかかる鉄系絶縁粒子を爪磁極5のみに使用し、パーツ41、42、43、44、45、46には鉄系絶縁粒子とは異なる材料を使用することができるので、コストを削減することができる。
【0154】
さらに、爪磁極5を構成する材料が、第2パーツ42、44、46を構成する材料よりも体積抵抗率が高いものを用いるので、爪磁極5の電気抵抗を大きくして爪磁極5の表面に生じる渦電流を低減させることができる。
また、第2パーツ42、44、46が、径方向に分割された3つの分割要素を周方向に配置して構成されているので、これら分割要素の間にそれぞれ電気抵抗が生じ、この電気抵抗によって周方向に流れる渦電流を低減することができる。
【0155】
加えて、第2パーツ42、44、46の外径が、U相コイル14、V相コイル15(第1V相コイル要素15a及び第2V相コイル要素15b)、W相コイル16の外径よりも大きいので、第1パーツ集合体を製造した後に、第1内側ユニット、第2内側ユニットを収容して固定子3を製造することができる。このように構成することによって、組立性を向上することができる。
【0156】
なお、本発明は、上記実施形態に限られたものではない。
【0157】
上記実施形態では、固定子をU相コア、V相コア、W相コア、U相コイル、V相コイル及びW相コイルを用いて構成したが、この構成に限られたものではなく、3つのコアを用いて構成された固定子であればどのようなものであっても構わない。
【0158】
また、上記実施形態では、請求項に記載した第1コアがU相コア、請求項に記載した第2コアがV相コア、請求項に記載した第3コアがW相コアに該当するものであったが、これに限られず、第1コア、第2コア、第3コアが、U相コア、V相コア、W相コアのいずれに該当するものであっても構わない。
【0159】
上記実施形態では、請求項でいう外嵌部が中心円筒状部材であったが、この形状に限られず、例えばアームの一端面を外嵌部としてもよい。この場合、放射状に収束して配置されるアームの一端面がU相コア及びW相コアの中心円筒状部材の外周面と近接又は当接して配置される構成とすることができる。
【0160】
上述した実施形態では、U相コア本体の中心円筒状部材の先端部がV相コア本体の中心円筒状部材に嵌っている回転軸線方向の深さと、W相コア本体の中心円筒状部材の先端部がV相コア本体の中心円筒状部材に嵌っている回転軸線方向の深さとが等しくなるように構成されているが、例えばU相コア本体の中心円筒状部材の先端部がV相コア本体の中心円筒状部材に嵌っている回転軸線方向の深さが、W相コア本体の中心円筒状部材の先端部がV相コア本体の中心円筒状部材に嵌っている回転軸線方向の深さよりも深くなるように構成されていてもよく、その逆でもよい。
【0161】
また、例えば、
図12に示すように、U相コア本体51及びW相コア本体53の中心円筒状部材の先端部の外径を小さくした凹み部を設けておき、U相コア本体51及びW相コア本体53の凹み部に、V相コア本体52の中心円筒状部材を嵌め合わせて第2接合面を形成してもよい。
【0162】
上記実施形態において、第1V相コイル要素及び第2V相コイル要素の全部の線径を、U相コイル14及びW相コイル16よりも大きく構成しているが、第1V相コイル要素及び第2V相コイル要素の一部の線径を大きくするように構成してもよい。
【0163】
また上記実施形態において、固定子の爪磁極の電気角度は120°に設定されていたが、この角度は適宜変更することができる。この変更を行うには、U相コア、V相コア、W相コアが具備する爪磁極の本数やその配置する角度を適宜変更すればよい。
【0164】
上記実施形態では、第1V相コイル要素とU相コイルは、第1ボビンに別々の線体を巻回して構成されたものであったが、同じ線体を巻回して構成されたものであってもよい。同様に、第2V相コイル要素とW相コイルは、第2ボビンに別々の線体を巻回して構成されたものであったが、同じ線体を巻回して構成されたものであってもよい。
【0165】
上記実施形態では、S:Pを3:4としているが、これに限られず、式(1)を満たせばどのような値を用いてもよい。また、爪磁極の周方向角度は150°に限られず、130°以上160°以下の範囲であればどのような値であってもよい。
【0166】
上述の実施形態では、中心円筒状部材12aの内面及び中心円筒状部材12cの内面に樹脂層が形成されるように構成することが記載されていたが、このような樹脂層がなくてもよい。
【0167】
固定子の製造方法は上述の工程に限られず、例えばU相コア本体、V相コア本体、W相コア本体をそれぞれ製造した後に、U相コア本体とV相コア本体との間にU相コイル及び第1V相コイル要素を配置するとともに、V相コア本体とW相コア本体との間に第2V相コイル要素及びW相コイルを配置して、これらを固定するものであっても構わない。
【0168】
また、上述の実施形態では、爪磁極とパーツとが異なる材料で構成されていたが、爪磁極及びパーツを同じ材料で構成したものであっても構わない。
【0169】
また、上記実施形態では、回転子の磁極を有するものとして、永久磁石が用いられていたが、例えば電磁石等でもよく、磁極を有するものであればなんでもよい。
【0170】
そのほか、本発明はその趣旨に逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0171】
以下に実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0172】
本実施形態のクローポール型モータと従来のクローポール型モータとにおいて、コイルに通電したときに発生する交流電流の波形を比較した。
【0173】
図14(a)に示すように、従来のクローポール型モータは、コア間の接合面を1回通過するV相コアとU相コア又はW相コアとの間の磁束が、コア間の接合面を2回通過するU相コアとW相コアとの間の磁束に比べて大きくなるので、V相コイルによって生じる交流電流の波形の振幅値が約25%程度大きくなるとともに、U相コイル及びW相コイルによって生じる交流電流の波形の位相が8°ずれる。
【0174】
これに対し、
図14(b)に示すように、本実施形態のクローポール型モータは、いずれのコア間を通過する磁束であっても通過する接合面は1回となるので、磁束量が均一となり、V相コアによって生じる交流電流の波形の振幅値の増加を約5%に低減することができるとともに、U相コア及びW相コアによって生じる交流電流の波形の位相のずれを2%に抑えることができる。
【実施例2】
【0175】
また、本実施形態のクローポール型モータと、従来のクローポール型モータにおいて、コイルに通電を行わずに回転子を回転させたときに生じるコギングトルクを測定したものを
図15に示す。
【0176】
図15に示すように、従来のクローポール型モータでは、−0.0009Nmから0.0009Nmの範囲でコギングトルクが発生しているのに対し、本実施形態のクローポール型モータでは、−0.0002Nmから0.0002Nmの範囲でコギングトルクが発生しており、本実施形態のクローポール型モータは、従来のクローポール型モータに比べてコギングトルクを約1/4程度低減することができた。
【0177】
これは、本実施形態のクローポール型モータでは、従来のクローポール型モータに比べて磁束量が均一であるので、コギングトルクを低減することができたと考えられる。
【実施例3】
【0178】
最後に、コイルの線径の変化とクローポール型モータの振動との関係を調べる試験を行った。
具体的には、第1V相コイル要素及び第2V相コイル要素の線径をU相コイル、W相コイルに比べて大きくしたものを用いた本実施形態のクローポール型モータと、第1V相コイル要素及び第2V相コイル要素の線径をU相コイル、W相コイルと等しくした従来のクローポール型モータを用いて、トルク脈動を測定した。
【0179】
この試験結果を以下の
図16及び
図17のグラフに示す。なお、このグラフにおいて、縦軸はトルクを表し、横軸はモータの回転位相位置を表すものである。
【0180】
図16に示すように、従来のクローポール型モータでは、トルクの最大値が6.2mNmであり、トルクの最小値が4.6mNmであるので、この差であるトルク脈動は約1.6mNmであった。
これに対し、
図17に示すように、本実施形態のクローポール型モータでは、トルクの最大値が7.8mNmであり、トルクの最小値が7.4mNmであるので、この差であるトルク脈動は約0.4mNmとなった。
【0181】
したがって、本実施形態におけるクローポール型モータでは、従来型のクローポール型モータに比べてトルク脈動を約27%程度低減することができる。これは、U相コア、V相コア、W相コアのコイルの抵抗値の差を小さくして各コアに流れる電流をバランスよく流すことができたためと考えられる。