(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、走行停止中の機体の沈下量の時間的推移に基づいて機体が沈下していると判定した場合に前記通知装置を作動させて前記機体が沈下していることを操作者に知らせる、
請求項1に記載のショベル。
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、本発明の実施例に係る建設機械としてのショベルの全体構成について説明する。
図1は本発明の実施例に係るショベルの構成例を示す側面図である。
【0010】
図1のショベルは、下部走行体1、旋回機構2、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、キャブ(操縦室)10、操作装置26、制御装置30等を有する。
【0011】
具体的には、
図1のショベルの下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載される。上部旋回体3には作業体としてのブーム4が取り付けられる。ブーム4の先端には作業体としてのアーム5が取り付けられ、アーム5の先端には作業体としてのバケット6が取り付けられる。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。また、上部旋回体3には転倒時保護構造を有するキャブ10が設けられる。
【0012】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。操作装置26は、パイロットラインを通じ、パイロットポンプが吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する流量制御弁のパイロットポートに供給する。但し、油圧アクチュエータの制御方式は、操作装置26の操作量に対応して駆動される構成であればよく、適宜の方式を用いて構成される。例えば、油圧アクチュエータの駆動量は、操作装置26の操作量を電圧等の別情報に変換する制御装置30によって算出されてもよい。
【0013】
制御装置30は、ショベルの駆動制御を行う制御装置である。本実施例では、制御装置30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置である。具体的には、制御装置30は、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUに実行させて各種機能を実現する。
【0014】
なお、ショベルは、各種油圧アクチュエータの伸縮速度を検出するセンサ、各種油圧アクチュエータを作動させる作動油の圧力を検出するセンサ等を備えていてもよい。また、それらセンサは検出した値を制御装置30に対して出力してもよい。
【0015】
次に、
図2を参照して制御装置30の詳細について説明する。なお、
図2は、制御装置30の構成例を示す機能ブロック図である。本実施形態では、制御装置30は、姿勢検出装置40、情報取得装置41等の出力を受けて各種演算を実行し、通知装置42等に対して各種情報を出力する。例えば、制御装置30は、姿勢検出装置40、情報取得装置41等の出力に基づいてショベルが沈下しているか否かを判定する。そして、ショベルが沈下していると判定した場合に通知装置42を動作させてその旨を操作者に通知する。
【0016】
姿勢検出装置40は、アタッチメントの姿勢を検出する装置である。本実施例では、姿勢検出装置40は、掘削アタッチメントの姿勢を検出する装置である。
【0017】
図3は、
図1のショベルに搭載される姿勢検出装置40を構成する各種センサの出力内容の一例を示すショベルの側面図である。具体的には、姿勢検出装置40は、ブーム角度センサ40a、アーム角度センサ40b、バケット角度センサ40c、及び車体傾斜センサ40dを含む。
【0018】
ブーム角度センサ40aは、ブーム角度θ1を取得するセンサであり、例えば、ブームフートピンの回転角度を検出する回転角度センサ、ブームシリンダ7のストローク量を検出するストロークセンサ、ブーム4の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。ブーム角度θ1は、XZ平面において、ブームフートピン位置P1とアーム連結ピン位置P2とを結ぶ線分の水平線に対する角度である。
【0019】
アーム角度センサ40bは、アーム角度θ2を取得するセンサであり、例えば、アーム連結ピンの回転角度を検出する回転角度センサ、アームシリンダ8のストローク量を検出するストロークセンサ、アーム5の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。アーム角度θ2は、XZ平面において、アーム連結ピン位置P2とバケット連結ピン位置P3とを結ぶ線分の水平線に対する角度である。
【0020】
バケット角度センサ40cは、バケット角度θ3を取得するセンサであり、例えば、バケット連結ピンの回転角度を検出する回転角度センサ、バケットシリンダ9のストローク量を検出するストロークセンサ、バケット6の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。バケット角度θ3は、XZ平面において、バケット連結ピン位置P3とバケット爪先位置P4とを結ぶ線分の水平線に対する角度である。なお、バケット角度センサ40cは省略されてもよい。
【0021】
車体傾斜センサ40dは、ショベルのY軸回りの傾斜角度θ4、及び、ショベルのX軸回りの傾斜角度θ5(図示せず。)を取得するセンサであり、例えば2軸傾斜(加速度)センサ等を含む。なお、
図3のXY平面は水平面である。
【0022】
情報取得装置41は、ショベルに関する情報を取得する装置である。本実施例では、情報取得装置41は、傾斜センサ41a、距離センサ41b、荷重センサ41c、及び、画像センサ41dを含む。なお、ショベルは、傾斜センサ41a、距離センサ41b、荷重センサ41c、及び、画像センサ41dのうちの少なくとも1つを備えていればよい。
【0023】
図4はショベルの背面図であり、情報取得装置41及び通知装置42の配置例を示す。具体的には、
図4(A)は、クローラ1L、1Rの下の地面が沈み込んでいない状態を示し、
図4(B)は、クローラ1L、1Rの下の地面が沈み込んだ状態を示す。
【0024】
傾斜センサ41aはショベルの機体の傾斜を検出するセンサである。本実施例では、傾斜センサ41aは、姿勢検出装置40の車体傾斜センサ40dであり、上部旋回体3に取り付けられる。なお、傾斜センサ41aは下部走行体1に取り付けられてもよい。また、傾斜センサ41aはその検出値を制御装置30に対して出力する。
【0025】
距離センサ41bは、ショベルの機体上の所定点と機体が位置する地面との間の距離を検出するセンサである。本実施例では、距離センサ41bは、下部走行体1のロアフレーム1Fの下面に取り付けられる赤外線距離センサである。そして、ショベルが位置する地面のうち、クローラ1L、1Rの下の沈み込んだ部分(以下、「沈下部分」とする。)ではなく、その周囲の沈み込んでいない部分(以下、「非沈下部分」とする。)とロアフレーム1Fの下面との間の距離D1を検出する。具体的には、距離センサ41bは、センサ本体と非沈下部分との間の距離を検出し、その検出値とセンサ本体の取り付け位置に関する予め記憶された情報から距離D1を算出する。また、距離センサ41bはその算出値を制御装置30に対して出力する。なお、制御装置30が距離センサ41bの検出値に基づいて距離D1を算出してもよい。また、距離センサ41bは上部旋回体3に取り付けられてもよい。また、距離センサ41bは距離画像センサであってもよい。
【0026】
荷重センサ41cは、クローラ1L、1Rの下の地面の沈み込みに起因するショベルの沈下により、地面の非沈下部分が下部走行体1のロアフレーム1Fの下面と接触したときに、非沈下部分がロアフレーム1Fの下面を押し付ける力を検出するセンサである。本実施例では、荷重センサ41cはロアフレーム1Fの下面に取り付けられる圧電センサであり、望ましくは、ロアフレーム1Fの下面と旋回軸との交点付近に取り付けられる。また、荷重センサ41cはその検出値を制御装置30に対して出力する。
【0027】
また、荷重センサ41cは接触センサであってもよい。この場合、制御装置30は、接触センサの出力に基づいて非沈下部分が下部走行体1のロアフレーム1Fの下面と接触したか否かを判定できる。
【0028】
画像センサ41dは、ショベルの周囲を撮像するセンサである。本実施例では、画像センサ41dは、ショベルの左側方を撮像する左側方カメラ41dL、ショベルの右側方を撮像する右側方カメラ41dR、ショベルの後方を撮像する後方カメラ41dBを含む。左側方カメラ41dLは上部旋回体3の上面の左側端部に取り付けられ、右側方カメラ41dRは上部旋回体3の上面の右側端部に取り付けられ、後方カメラ41dBは上部旋回体3の上面の後側端部に取り付けられる。また、画像センサ41dは撮像した画像を制御装置30に対して出力する。
【0029】
通知装置42は、各種情報をショベルの操作者に通知する装置である。本実施例では、通知装置42は、音声出力装置42a、発光装置42b、及び、表示装置42cを含む。なお、ショベルは、音声出力装置42a、発光装置42b、及び、表示装置42cのうちの少なくとも1つを備えていればよい。
【0030】
音声出力装置42aは、制御装置30からの制御指令に応じて各種情報を音声出力する。本実施例では、音声出力装置42aはキャブ10内に設置される車載スピーカである。
【0031】
発光装置42bは、制御装置30からの制御指令に応じて発光する。本実施例では、発光装置42bはキャブ10内に設置される警告ランプである。
【0032】
表示装置42cは、制御装置30からの制御指令に応じて各種情報を表示する。本実施例では、表示装置42cはキャブ10内に設置される車載液晶ディスプレイである。
【0033】
次に、制御装置30が有する機能要素である出力画像生成部31、沈下量取得部32、及び特殊動作判定部33について説明する。制御装置30は、内部メモリに格納された各種機能要素のそれぞれに対応するプログラムをCPUに実行させて各種機能要素のそれぞれによる機能を実現する。
【0034】
出力画像生成部31は出力画像を生成する機能要素である。本実施例では、出力画像生成部31は左側方カメラ41dL、右側方カメラ41dR、及び後方カメラ41dBのそれぞれが撮像した3つの入力画像に基づいて出力画像を生成する。
【0035】
図5は、3つの入力画像と出力画像の関係を示す図である。具体的には、出力画像生成部31は、3つの入力画像を合成して出力画像としての視点変換画像を生成する。出力画像は、
図5に示すように、俯瞰画像領域R1及び水平画像領域R2を含む。俯瞰画像領域R1は、ショベルの周囲を鉛直上方にある仮想視点から見たときの俯瞰画像を表示する領域である。また、水平画像領域R2は、ショベルの周囲を機体の側面にある仮想視点から水平に見たときの水平画像を表示する領域である。
【0036】
沈下量取得部32はショベルの沈下量を取得する機能要素である。本実施例では、沈下量取得部32は、情報取得装置41の出力に基づき、ショベルの走行が停止された時点(例えば走行レバーが中立位置に戻された時点)から所定時間(例えば30秒)毎にショベルの沈下量を取得する。そして、沈下量取得部32は、所定の取得回数(例えば2回)に亘って所定量以上の沈下量を取得した場合、ショベルが沈下していると判定して通知装置42に対して制御指令を出力する。ショベルが沈下している事実を操作者に通知するためである。
【0037】
或いは、沈下量取得部32は、情報取得装置41の出力に基づいて単位時間当たりのショベルの沈下量(以下、「沈下速度」とする。)を取得してもよい。この場合、沈下量取得部32は、ショベルの沈下速度が所定時間に亘って所定の閾値以上となった場合、ショベルが沈下していると判定して通知装置42に対して制御指令を出力する。例えば、沈下量取得部32は、沈下量が400mmを超えた時点から30秒間に亘って閾値以上の沈下速度が維持された場合、ショベルが沈下していると判定して通知装置42に対して制御指令を出力する。
【0038】
制御指令を受けた通知装置42としての音声出力装置42aは、ショベルが沈下していることを表す音声メッセージを音声出力する。警報を出力してもよい。また、制御指令を受けた通知装置42としての発光装置42bは警告ランプを点灯或いは点滅させる。また、制御指令を受けた通知装置42としての表示装置42cは、ショベルが沈下していることを表すテキストメッセージ、アイコン、グラフィック画像等を表示する。
【0039】
具体的には、沈下量取得部32は、ショベルの走行が停止された時点から所定時間毎に、傾斜センサ41aの出力に基づいてショベルのY軸回りの傾斜角度θ4(
図3参照。)、及び、ショベルのX軸回りの傾斜角度θ5をショベルの沈下量として取得する。そして、傾斜角度θ4及びθ5の少なくとも一方に関する10度以上の増加を2回続けて検出した場合に、或いは、10度以上の減少を2回続けて検出した場合、ショベルが沈下していると判定して通知装置42に対して制御指令を出力する。
【0040】
或いは、沈下量取得部32は、ショベルの走行が停止された時点から所定時間毎に、距離センサ41bの出力に基づいて地面の非沈下部分と下部走行体1のロアフレーム1Fの下面との距離D1をショベルの沈下量として取得する。そして、距離D1に関する所定の閾値以上の減少を2回続けて検出した場合、ショベルが沈下していると判定して通知装置42に対して制御指令を出力する。なお、沈下量取得部32は、距離D1が所定の下限値に達した場合、ショベルが沈下していると判定して通知装置42に対して制御指令を出力してもよい。
【0041】
或いは、沈下量取得部32は、ショベルの走行が停止された時点から所定時間毎に、荷重センサ41cの出力に基づいて非沈下部分がロアフレーム1Fの下面を押し付ける力をショベルの沈下量として取得する。そして、その力に関する所定の閾値以上の増大を2回続けて検出した場合、ショベルが沈下していると判定して通知装置42に対して制御指令を出力する。なお、沈下量取得部32は、所定の閾値以上の力が所定時間(例えば30秒)に亘って検出された場合、ショベルが沈下していると判定して通知装置42に対して制御指令を出力してもよい。
【0042】
或いは、沈下量取得部32は、ショベルの走行が中止された時点から所定時間毎に、画像センサ41dの出力に基づいて生成される出力画像を取得する。そして、連続する2つの画像間のオプティカルフローをショベルの沈下量として取得する。そして、オプティカルフローに関する所定の閾値以上の変化を2回続けて検出した場合、ショベルが沈下していると判定して通知装置42に対して制御指令を出力する。なお、沈下量取得部32は、他の公知の画像処理技術を用いながら時間的に連続する複数の出力画像に基づいてショベルの沈下量を取得してもよい。
【0043】
或いは、沈下量取得部32は、上述の判定結果を任意に組み合わせた上で、通知装置42に対して制御指令を出力するか否かを最終的に判定してもよい。
【0044】
特殊動作判定部33は、ショベルによる特殊動作が行われているか否かを判定する機能要素である。本実施例では、特殊動作はジャッキアップを含む。具体的には、特殊動作判定部33は、ブームシリンダ7のロッド側油室の作動油の圧力を検出するブームロッド圧センサ(図示せず。)の出力が所定値以上の場合にジャッキアップが行われていると判定する。そして、特殊動作判定部33は、特殊動作としてのジャッキアップが行われていると判定した場合、通知禁止指令を沈下量取得部32に対して出力する。沈下量取得部32がジャッキアップによる機体の傾斜を機体の沈下と誤認識してしまい、通知装置42が操作者にその旨を通知してしまうのを防止するためである。通知禁止指令を受けた沈下量取得部32は、ショベルが沈下していると判定している場合であっても、通知装置42に対して制御指令を出力しない。
【0045】
なお、特殊動作判定部33は、姿勢検出装置40の出力から掘削アタッチメントの姿勢を導き出し、その掘削アタッチメントの姿勢に基づいてジャッキアップが行われているか否かを判定してもよい。
【0046】
次に、
図6を参照し、制御装置30がショベルの沈下を操作者に通知するか否かを判定する処理(以下、「通知判定処理」とする。)について説明する。
図6は通知判定処理の流れを示すフローチャートである。制御装置30は、ショベル稼働中、所定の制御周期で繰り返しこの通知判定処理を実行する。
【0047】
最初に、制御装置30はショベルが走行停止中であるかを判定する(ステップS1)。本実施例では、制御装置30は、操作装置26としての走行レバーに関するパイロット圧を検出する圧力センサ(図示せず。)の出力に基づいてショベルが走行停止中であるか否かを判定する。なお、制御装置30は、右側走行用油圧モータ2A、左側走行用油圧モータ2Bの回転数を検出する回転数センサ(図示せず。)等の他のセンサの出力に基づいてショベルが走行停止中であるか否かを判定してもよい。
【0048】
走行中であると判定した場合(ステップS1のNO)、制御装置30は、今回の通知判定処理を終了させる。
【0049】
走行停止中であると判定した場合(ステップS1のYES)、制御装置30はショベルが沈下しているかを判定する(ステップS2)。本実施例では、制御装置30の沈下量取得部32が情報取得装置41としての傾斜センサ41a(車体傾斜センサ40d)の出力に基づいてショベルが徐々に沈下しているか否かを判定する。具体的には、沈下量取得部32はショベルのY軸回りの傾斜角度θ4(
図3参照。)及びX軸回りの傾斜角度θ5を30秒毎に取得する。そして、傾斜角度θ4及びθ5の少なくとも一方に関する10度以上の増加を2回続けて検出した場合に、或いは、10度以上の減少を2回続けて取得した場合、ショベルが沈下していると判定する。
【0050】
ショベルが沈下していないと判定した場合(ステップS2のNO)、制御装置30は、今回の通知判定処理を終了させる。
【0051】
ショベルが沈下していると判定した場合(ステップS2のYES)、制御装置30はショベルによる特殊動作が行われているか否かを判定する(ステップS3)。本実施例では、制御装置30の特殊動作判定部33がブームロッド圧センサの出力に基づいてジャッキアップが行われているか否かを判定する。具体的には、特殊動作判定部33はブームロッド圧センサの出力が所定値以上の場合にジャッキアップが行われていると判定する。
【0052】
特殊動作が行われていると判定した場合(ステップS3のYES)、制御装置30は、今回の通知判定処理を終了させる。
【0053】
特殊動作が行われていないと判定した場合(ステップS3のNO)、制御装置30はショベルが沈下していることを操作者に通知する(ステップS4)。本実施例では、制御装置30の沈下量取得部32が通知装置42に対して制御指令を出力する。具体的には、沈下量取得部32は音声出力装置42aに対して制御指令を出力して警報を出力させる。音声出力装置42aは停止ボタンの押下等の所定の操作が行われるまで警報を出力する。なお、音声出力装置42aはショベルの走行が開始された時点で警報を中止させてもよい。
【0054】
次に、
図7及び
図8を参照し、通知判定処理実行中の各種物理量の時間的推移について説明する。なお、
図7は各種物理量の時間的推移を示す。具体的には、
図7(A)は走行レバーパイロット圧の時間的推移を示し、
図7(B)はジャッキアップ検知結果の時間的推移を示す。ジャッキアップ検知結果の「ON」はジャッキアップが行われていると判定されたことを表し、「OFF」はジャッキアップが行われていないと判定されたことを表す。また、
図7(C)は傾斜角度の時間的推移を示し、
図7(D)は通知判定結果の時間的推移を示す。通知判定結果の「ON」は通知を行うと判定されたことを表し、「OFF」は通知を行わないと判定されたことを表す。また、
図8は通知判定処理実行中のショベルの状態を示す。具体的には、
図8(A)は地面の隆起部を乗り越えるように走行するショベルを示す。また、
図8(B)は走行停止中のショベルの左側のクローラ1Lの下の地面が沈み込んでいる状態を示し、
図8(C)はジャッキアップを行うショベルを示す。
【0055】
図7(A)に示すように、時刻t0において走行レバーが操作されて走行レバーパイロット圧が増大するとショベルは走行を開始する。そして、
図8(A)に示すような隆起部を乗り越える場合、傾斜センサ41a(車体傾斜センサ40d)が検出する傾斜角度は、
図7(C)に示すように、ショベルが隆起部に差し掛かったところ(例えば時刻t0)でゼロ度から増加し始める。そして、ショベルが隆起部の頂点付近に達する前に減少に転じ、ショベルが隆起部を超えて水平面で停止したところ(例えば時刻t1)でゼロ度に戻る。
【0056】
この場合、制御装置30は、
図7(D)に示すように、ショベルが沈下していることを操作者に通知しない。ショベルが隆起部を乗り越える際の機体の傾斜をショベルの沈下として誤って通知してしまうのを防止するためである。
【0057】
一方で、制御装置30は、
図8(B)に示すように走行停止中のショベルの傾斜角度が徐々に増大していることを検知した場合にはショベルが沈下していることを操作者に通知する。
【0058】
具体的には、走行停止中、
図7(C)に示すように時刻t2において傾斜角度が増大し始め、その後も継続的に増大する場合、制御装置30はショベルが沈下していると判定する。例えば、制御装置30は、時刻t1から所定時間毎に傾斜角度を取得し、傾斜角度に関する10度以上の増加を2回続けて検出した時点(例えば時刻t3)でショベルが沈下していると判定して通知装置42に対して制御指令を出力する。
【0059】
なお、制御装置30は、
図8(C)に示すようにショベルがジャッキアップを行っている場合には、たとえ走行停止中のショベルの傾斜角度が増大していることを検知した場合であってもショベルが沈下していることを操作者に通知しない。例えば、制御装置30は、
図7(C)に示すように走行停止中のショベルの傾斜角度が時刻t4において増大し始めた場合であっても、時刻t5においてジャッキアップが行われていると判定した場合には、その後に傾斜角度が増大し続けたとしてもショベルが沈下していることを操作者に通知しない。ジャッキアップによる機体の傾斜をショベルの沈下として誤って通知してしまうのを防止するためである。
【0060】
このようにして、制御装置30は、ショベルが徐々に沈下していることを操作者に通知できる。そのため、作業現場の地面の沈み込みによって操作者が気付かないうちにショベルが沈下してその場から脱出不能となったりショベルが転倒したりしてしまうのを防止できる。
【0061】
また、制御装置30は、走行中又はジャッキアップ実行中には、たとえショベルが沈下していると判定した場合であってもその旨を操作者に通知することはない。そのため、
走行中又はジャッキアップ中の機体の傾斜をショベルの沈下として誤って通知してしまうのを防止できる。その結果、通知の信頼性を向上できる。
【0062】
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0063】
例えば、上述の実施例では、沈下量取得部32は、傾斜センサ41a、距離センサ41b、荷重センサ41c、画像センサ41d等、ショベルに取り付けられた情報取得装置41の出力に基づいてショベルが沈下しているか否かを判定する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、沈下量取得部32は、情報化施工で利用される測量器等の補器の出力に基づいてショベルが沈下しているか否かを判定してもよい。具体的には、制御装置30は、作業現場に設置されたレーザ発光器とショベルに取り付けられた受光器とで構成される測量システムの出力を受信してショベルが沈下しているか否かを判定してもよい。