(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F(t)は、周期Tを有し、時間T/2で0となる直線状の関数で、G(t)は、T/2に中心を有し、時間tを示す方向の軸長がTで、G(t)の値を示す方向の軸長がF(0)と等しい値である楕円を表す式の正又は負の一方を表す関数である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態)
図1に本発明の実施の形態に係る電源装置を備える電流−電圧特性測定装置の構成例を示す。この電流−電圧特性測定装置2は、測定対象物1に電流信号を入力したときの測定対象物1での電圧降下の値を測定して測定対象物1のI−V特性を測定する場合の構成例である。
【0015】
電流−電圧特性測定装置2を説明する前に、測定対象物1についてもう少し詳しく説明する。
図1では測定対象物1を3つの電気抵抗K
1〜K
3で表している。電気抵抗K
1はI−V特性を測定する対象となる部位(以下では測定部位K
1と呼ぶ。)を示す。電気抵抗K
2は試料K
1に電流を通電するために測定部位K
1に設置された一方の電極の抵抗とその電極に接続されたリード線の抵抗とを合わせたものである。電気抵抗K
3は試料K
1に電流を通電するために測定部位K
1に設置された他方の電極の抵抗とその電極に接続されたリード線の抵抗とを合わせたものである。以下では、測定対象物1での電圧降下の値とは、特にことわらない限り、測定部位K
1での電圧降下の値、即ち測定部位K
1(電気抵抗K
1)の両端間の電圧を意味することとする。また、測定対象物1のI−V特性とは測定部位K
1のI−V特性を意味することとする。
【0016】
リード線及び電極、即ち電気抵抗K
2、K
3は必ずしも測定対象物1を構成するものとは言えないが、測定部位K
1が超伝導体のような電気抵抗の低い物質のときは、測定部位K
1近傍のリード線や電極で発生するジュール熱が測定部位K
1の温度変動の主因になるため、
図1では、これらを表示する電気抵抗K
2とK
3とを測定対象物1に含めて示した。なお、測定部位K
1が半導体材料や絶縁材料などの高抵抗の物質であれば、測定対象物1に通電したとき発生するジュール熱は測定部位K
1によるものが主であるため、測定部位K
1の温度は、設置環境の温度と、測定部位K
1で発生するジュール熱とで決定され、リード線や電極で発生するジュール熱の影響は無視して良い。従って、このときは、測定対象物1の温度という観点からは、
図1の電気抵抗K
2及びK
3を無視することができる。
【0017】
電流−電圧特性測定装置2は、測定対象物1に入力するための時系列電流パルス信号を出力する電源装置20と、時系列電流パルス信号が入力されたときの測定対象物1での電圧降下値を測定する電圧測定部21と、時系列電流パルス信号の基礎となるデータを設定し電源装置20に出力すると共に、時系列電流パルス信号の波高値の情報と、電圧測定部21の測定結果とに基づき解析することにより、測定対象物1のI−V特性に関する情報を取得する設定・解析部22と、設定・解析部22の解析結果を表示する表示部23とを備える。
【0018】
図1に示す電源装置20は、電流信号を時系列電流パルス信号の形で出力する電流供給源である。電源装置20は、時系列電流パルス信号を、測定対象物1に供給(入力)するとともに、時系列電流パルス信号の出力の際に、電圧測定部21に対して同期用のトリガ信号を出力する。また、設定・解析部22に対して、解析用データとして、出力する時系列電流パルス信号の各パルスの波高値に対応する電流値を出力する。
【0019】
電源装置20は、2関数に基づいて形成された2関数時系列パルスパターンを記憶・格納する2関数時系列パルスパターン記憶部200と、出力する電気信号の最大振幅値を入力する最大振幅設定部201と、2関数時系列パルスパターンと最大振幅値とに基づき時系列パルス信号、
図1の例では時系列電流パルス信号、を生成し出力する時系列パルス信号生成・出力部202とを備える。
【0020】
2関数時系列パルスパターン記憶部200は、通常のメモリで構成され、設定・解析部22から入力された2関数時系列パルスパターンを記憶・格納する。2関数時系列パルスパターンは、時系列電流パルス信号生成用の基礎データとして、時系列信号生成・出力部202で使用される。2関数時系列パルスパターンとは、時間を示す変数をtとしたとき、関数f(t)と関数g(t)の2つの関数に基づいて形成されたパルスの時系列パターンのことである。この関数f(t)と関数g(t)とは、時間tにおけるそれぞれの関数の2乗の和が、一定値になるような関数の対である。
【0021】
図2は、具体例として、f(t)を余弦関数、g(t)を正弦関数としたときの、2関数時系列パルスパターンの概念を示す図である。f(t)とg(t)とは、同一振幅1、同一周期T及び同一位相を有する。このとき、f(t)とg(t)のそれぞれを2乗して加えると、tの値に依らず一定の値1になる。
図2に示すように、2関数時系列パルスパターンは、時間軸tを複数のセクションに分割し、各セクション毎に、そのセクションを代表するtの値に対するf(t)とg(t)の値を交互に取得して一定のパルス幅と一定の相互間隔を有する時系列のパルスパターンとしたものである。即ち2関数時系列パルスパターンは、その包絡線が関数f(t)となる第1の時系列パルスパターンとその包絡線が関数g(t)となる第2の時系列パルスパターンとで構成される。第1の時系列パルスパターンの各パルスと第2の時系列パルスパターンの各パルスとは互いに交互に配置されている。通常、パルス幅は5−100ms(より好ましくは5−50ms)、相互間隔はパルス幅と同程度以上である。この2関数時系列パルスパターンの詳細については後述する。
【0022】
なお、ここでは、2関数時系列パルスパターン記憶部200は、f(t)として余弦関数、g(t)として正弦関数を使用し生成された2関数時系列パルスパターンを記憶・格納している例について説明したが、2乗の和が一定となる2関数であれば、他の2関数に基づいて生成された2関数時系列パルスパターンを記憶・格納してもよい。
【0023】
最大振幅設定部201は、電源装置20の入力部(図示省略)を介して、時系列電流パルス信号の最大振幅値I
0が入力され、入力された最大振幅値I
0を時系列パルス信号生成・出力部202に出力する。このときの最大振幅値I
0の値は測定対象物1での電圧降下値を測定する電圧測定部の測定限界、測定対象物1の、生じうる温度上昇、特性変化及び測定対象物1の通電電流値に関する破壊限界などを考慮して予め決定されたものである。電源装置20の入力部の入力方式はダイヤル、キーボード等のいずれの方式でもよい。
【0024】
時系列信号生成・出力部202は、2関数時系列パルスパターン記憶部200から読み出した2関数時系列パルスパターンと最大振幅値I
0とに基づき(通常は、2関数時系列パルスパターンに最大振幅値I
0を乗じて)時系列電流パルス信号を生成し、測定対象物1に出力するとともに、この出力時に同期用のトリガ信号を電圧測定部21に出力する。また、出力する時系列電流パルス信号の各電流パルスの波高値、即ち電流値を時系列データとして設定・解析部22に出力する。なお、F(t)=I
0×f(t)、G(t)=I
0×g(t)とすると、時系列電流パルス信号は、時間軸tを複数のセクションに分割し、各セクション毎に、そのセクションを代表するtの値に対するF(t)とG(t)の値を交互に取得してそれぞれを波高値とし、一定のパルス幅を有するパルスが一定の相互間隔で時系列に配置されて形成された時系列信号と言える。
【0025】
電圧測定部21は、測定対象物1の電圧降下値を測定する装置であり、具体的には、時系列信号生成・出力部202から出力されるトリガ信号により、時系列電流パルス信号に同期して、測定部位K
1の両端間の電圧を測定する。この電圧は、測定対象物1に入力される時系列電流パルス信号に対応して時系列応答電圧パルス信号として測定され、電圧測定部21は、その信号から信号のドリフト成分をオフセットとして除き、正味のパルス波高値を求めて、これを出力する。具体的な正味のパルス波高値の導出については後述する。
【0026】
設定・解析部22は、ハードウェアとしては
図3に示すようにCPU300、内部メモリ310、外部メモリ320、入力部330、出力部340、及びこれらを結ぶバスライン350で構成されており、機能的には、
図1に示すように2関数時系列パルスパターン設定部220と解析部221とを備える。外部メモリ320にはプログラムが記憶されており、これを読み出してCPU300で実行することにより2関数時系列パルスパターン設定部220及び解析部221の機能が実現される。
【0027】
2関数時系列パルスパターン設定部220は、時系列電流パルス信号生成用の基本データである2関数時系列パルスパターンを設定し、出力部340を介して電源装置20に出力する。2関数時系列パルスパターン設定部220は、入力部330を介して入力されたそれぞれの2乗の和が一定値になる関数f(t)、g(t)から、CPU300及び内部メモリ310を介して2関数時系列パルスパターンを生成する。
【0028】
次に解析部221について説明する。解析部221は、時系列パルス信号生成・出力部202から入力部330を介して受信した時系列電流パルス信号の各電流パルスの波高値である電流値、及び電圧測定部21から入力部330を介して受信した時系列応答電圧パルス信号の各電圧パルスの正味のパルス波高値である電圧値に基づき、CPU300と内部メモリ310を介して、解析等によりI−V特性の情報を生成する。I−V特性の情報とは測定対象物1に通電した電流Iとその電流による測定対象物1での電圧降下値、即ち測定箇所K
1(電気抵抗K
1)の両端間の電圧Vとの関係を示す情報のことである。また、解析部221は、生成したI−V特性の情報を、出力部340を介して表示部23に出力する。
【0029】
I−V特性を
図4に模式的に示す。
図4(A)はI−V特性をI−V特性曲線の形で示したものである。
図4(B)は測定対象物1に入力する電流Iの時間変化を示す。
図4(B)の例は電流Iが正弦波に従って時間変化する例である。時系列電流パルス信号について言えば、正弦関数で表されるG(t)に基づいて生成した波高値のみの包絡線に対応する。
図4(C)は
図4(B)に示す電流Iを測定対象物1に入力したときの測定対象物1での電圧降下値である電圧Vの時間変化を示す。時系列応答電圧パルス信号について言えば、G(t)に対応した時系列電流パルス信号の波高値に対応した時系列応答電圧パルス信号の各電圧パルスの正味のパルス波高値の包絡線のみを示したものである。
【0030】
I−V特性曲線は、電圧Vを電流Iの関数としたとき、VをIでテイラー展開したときの各項の係数によって特性が表現される。Vは、通常、Iの奇数項のみで表され、簡単な例として、Iの1次と3次の項だけでVを表すと、式(1)のようになる。
V(I)=R
0×I+R
2×I
3 (1)
R
0;線型抵抗
R
2;非線形抵抗
【0031】
解析部221は、時系列電流パルス信号のG(t)に対応したパルス波高値とこれに対応した時系列応答電圧パルス信号のパルス波高値から、式(1)のR
0とR
2とを求める。式(1)とR
0とR
2の値はI−V特性の情報に含まれ得る。R
0とR
2とを求める方法にはフーリエ解析手法など各種の既知の方法があり、どのような方法でR
0とR
2を求めても良い。なお、R
0とR
2とを求めることは、通常の手法では、数値微分演算あるいは差分演算を行うことに相当する。測定データには必ずノイズ成分が重畳しているため、数値微分演算あるいは差分演算を行うとノイズの影響が大きくなり有意な解析結果が得られないことが多い。しかし、入力データを波形としてとらえてこれにフーリエ解析を適用すると、ノイズの影響の小さい状態でR
0とR
2とを求めることができる。このフーリエ解析は、基本的には積分操作であるため、ノイズの影響が低減されるからである。フーリエ解析を適用する場合は、使用する電流、電圧の測定データは1周期分のデータを使用する。また、f(t)、g(t)はそれぞれ余弦関数、正弦関数であることが好ましい。
【0032】
なお、解析部221は、多項式フィッティングの手法により、式(1)の形でI−V特性を求めてもよい。また、I−V特性を必ずしも式(1)の形で求めなくてもよく、単に電流値とこれに対応する応答電圧値を表形式又はグラフで表示したものとして生成してもよい。いずれの場合にも、測定対象物1に入力する時系列電流パルス信号の全てのパルス波高値と対応する正味の応答パルス波高値をI−V特性の把握に活用することができ、測定対象物1に入力する信号に無駄がないという利点がある。
【0033】
フーリエ解析を実行する場合にも、工夫することにより、測定対象物1に入力する時系列電流パルス信号の全てのパルス波高値と対応する正味の応答パルス波高値をI−V特性の把握に活用することができる。その方法は、包絡線がf(t)になる第1の時系列パルスパターンに対応した時系列電流パルス信号、即ちF(t)に対応した時系列電流パルス信号のパルス波高値の位相を、包絡線がg(t)になる第2の時系列パルスパターンに対応した時系列電流パルス信号、即ちG(t)に対応した時系列電流パルス信号のパルス波高値の位相に対して90度遅らせる、即ち時間軸上でT/4だけシフトする。この位相シフトにより、第1の時系列パルスパターンに対応した時系列電流パルス信号の包絡線は正弦波となる。その結果、時系列電流パルス信号はその包絡線がG(t)であったと見なすことができる。時系列応答電圧パルス信号に対応して求めた正味の応答パルス波高値についても同様の位相シフト処理を行う。この処理により得られた電流値及び応答電圧値の時系列データを波形情報と見なしてフーリエ解析を行う。これにより、フーリエ解析よりI−V特性を求める場合においても、測定対象物1に入力する時系列電流パルス信号の全てのパルス波高値と対応する正味の応答パルス波高値とを活用することができる。
【0034】
表示部23は、プリンタ、ディスプレイ装置等の出力装置で構成され、設定解析部22で得られる測定対象物1のI−V特性の情報を出力することにより表示する。
【0035】
本実施の形態に係る電源装置20を備えた電流−電圧特性測定装置2の動作について説明する。
【0036】
電源装置20の時系列パルス信号生成・出力部202は、2関数時系列パルスパターン記憶部200に記憶されている2関数時系列パルスパターンを読み出す。この2関数時系列パルスパターンのデータは設定・解析部22の2関数時系列パルスパターン設定部220で既に説明した方法で生成されて出力され、電源装置20に入力され記憶されたものである。また、最大振幅設定部201は、外部から入力された値を最大振幅値として設定する。時系列パルス信号生成・出力部202は、2関数時系列パルスパターンと最大振幅値I
0とに基づき最大振幅値I
0の時系列電流パルス信号を生成し、測定対象物1に出力するとともに、出力の際に同期用の信号としてトリガ信号を電圧測定部21に出力する。また、時系列電流パルス信号の各パルスの波高値を時系列情報として設定・解析部22の解析部221に出力する。
【0037】
電源装置20から測定対象物1に時系列電流パルス信号が出力され、トリガ信号が電圧測定部21に入力されると、電圧測定部21は、測定対象物1での電圧降下を、時系列応答電圧パルス信号の各応答電圧パルスの正味のパルス波高値という形で測定し、解析部221に出力する。
【0038】
解析部221は、電源装置20から入力した時系列電流パルス信号の各パルスの波高値及びこれに対応して電圧測定部21から入力した時系列応答電圧パルス信号の各応答電圧パルスの正味のパルス波高値に基づきI−V特性の情報を求め、その結果を表示部23に出力する。表示部23は解析部221から入力した解析結果を表示する。
【0039】
設定・解析部22の2関数時系列パルスパターン設定部220は、外部から入力された2関数f(t)とg(t)に基づき2関数時系列パルスパターンのデータを生成し、電源装置20に出力する。電源装置20はこのデータを2関数時系列パルスパターン記憶部200に格納する。
【0040】
2関数時系列パルスパターンを、それぞれの2乗の和が一定値になる2つの関数f(t)とg(t)にそれぞれ基づいて生成される2系列の関数時系列パルスパターン、すなわち関数f(t)に基づき生成された第1の時系列パルスパターンと、関数g(t)に基づき生成された第2の時系列パルスパターンとで構成するのは次の理由による。2関数時系列パルスパターンにI
0を乗じて生成する時系列電流パルス信号は、f(t)、g(t)にそれぞれI
0を乗じたF(t)とG(t)とに基づいて生成されたと見なすことができる。従って、2つの関数f(t)、g(t)の2乗の和がtによらず一定値になれば、F(t)とG(t)も、それぞれの2乗の和がtによらず一定値となる。時系列電流パルス信号の各電流パルスの波高値をF(t)とG(t)から交互に選択して設定すると、隣り合う電流パルスの時間間隔が小さくなるに従って、それぞれの波高値の2乗、即ち電流値の2乗の和が時間に依らず略一定になる。ジュール熱は電流の2乗に比例するので、上記のように設定された時系列電流パルス信号を測定対象物1に入力した場合、隣り合う電流パルスにより測定対象物1で発生するジュール熱を平均した値は、時間tに依らず、即ち、I−V特性の測定のために電流を変化させる過程において略一定になる。そのため、測定対象物1の温度が電流に相関して系統的に変動することを原理的に防止することができる。
【0041】
2関数時系列パルスパターンは、その波高値以外は、時系列電流パルス信号のパターンと同じである。従って、以下では、
図5に基づき、時系列応答電圧パルス信号と対比させつつ、時系列電流パルス信号の詳細について説明する。
【0042】
図5(A)は、
図2の時間軸の領域Kに含まれる2系列の関数時系列パルスパターンに対応した時系列電流パルス信号の拡大図を示す。時系列電流パルス信号と関数f(t)及び関数g(t)との関係を明示するために、関数f(t)及び関数g(t)にそれぞれI
0を乗じた関数F(t)及び関数G(t)を破線で示した。
図5(B)は
図5(A)と時間軸を揃えて、
図5(A)に示す時系列電流パルス信号に対応した測定部位K
1の時系列応答電圧パルス信号の測定例を示したものである。
【0043】
時系列電流パルス信号は、Δtの時間間隔で並ぶパルス信号の列である。各パルスは、時間幅(パルス幅)Δt
pと、F(t)又はG(t)に基づいて設定された波高値とを有し、隣り合うパルスの間には時間幅Wの波高値0の区間が存在する。Δt=Δt
p+Wである。
【0044】
各パルスの波高値は、次のようにF(t)とG(t)とを交互に選択して設定されている。t
0は測定開始時点、iは0を含む連続する自然数で上限i
n、時間tに対して、t
2i=t
0+Δt×2i、及びt
2i+1=t
0+Δt×(2i+1)と定義したとき、
図5(A)にA点、B点で示すように、時系列電流パルス信号の隣り合うパルスの波高値は、各iに対して、それぞれF(t
2i)とG(t
2i+1)に等しく設定されている。2i及び2i+1はパルス間の時間間隔Δt、換言すれば区間幅Δtで時間軸を分割したときの、それぞれ偶数番目と奇数番目の区間を示し、それぞれの区間を代表する時間がt
2i及びt
2i+1である。即ち、偶数番目の区間の波高値はF(t)に従って設定され、奇数番目の区間の波高値はG(t)に従って設定されている。
図5(A)の偶数番目の区間に対応するパルスの波高値を示すA点及びC点は、それぞれF(t
2i)及びF(t
2(i+1))の値であり、奇数番目の区間に対応するパルスの波高値を示すB点は、G(t
2i+1)の値である。即ち、時系列電流パルス信号は、波高値の包絡線がF(t)で表わされる第1の時系列電流パルス信号と、波高値の包絡線がG(t)で表わされる第2の時系列電流パルス信号とを有する、2つの系列の信号で構成されていると言うことができる。もちろんF(t)とG(t)の波高値選定の順序が逆であっても良い。
【0045】
なお、
図5(A)では、F(t)とG(t)の値を取得するA、B、C点等のポイントは、各パルス幅の中点に位置しているが、これに限定されない。A、B、C点等がそれぞれに対応するパルスのパルス幅Δt
pの範囲内に位置していればよい。
【0046】
パルス幅Δt
pとパルス間の時間幅Wを決めるためには、時系列応答電圧パルス信号のパルス波形を考慮する必要がある。時系列応答電圧パルス信号のパルス幅は、
図5(B)に示すように、時系列電流パルス信号のパルス幅Δt
pと同じである。また、
図5(B)に示すパルス波形がその立ち上がり、立ち下がり部において、
図5(A)に示すパルスの立ち上がり部及び立ち下がり部のように急峻な直線形状ではなく、なまった形状を示すのは、電圧測定部21が、時定数による応答時間Δt
rを有しているためである。なお、時系列電流パルス信号に対して時系列応答電圧パルス信号は時間遅れが発生する場合があるが、この時間遅れは予め把握でき、時間軸上の平行移動にしかならないため、
図5ではこれを無視して表示した。
【0047】
時系列電流パルス信号のパルス幅とこれに対応する時系列電圧パルス信号のパルス幅は同じ値であることから、Δt
p及びWの値は、電圧測定部21による測定が、次の条件下で実行できるように設定されている。電圧測定部21による測定時間Δt
mを要するパルス領域での測定は、パルス信号の立ち上がりのときから応答時間Δt
rを経過した後に、且つ電圧パルス信号の立ち下がり開始のとき、即ちパルス信号の立ち上がり開始のときからΔt
pの時間内で実行されなければならない。また、隣り合うパルスの間の部位、すなわちオフセット領域での電圧測定部21による測定時間Δt
mを要する測定は、パルス信号の立ち下がり開始のときから応答時間Δt
rを経過した後に、且つ電圧パルスの立ち上がり開始のときまでに、即ちパルス信号の立ち下がり開始のときからWの時間内で実行されなければならない。これらの条件を満たすΔt
p及びWは、次式(2)(3)で表すことができる。Δt
r、Δt
mは、電圧測定部21が決まれば、既知の値として設定することができるので、Δt
p及びWの値は、それぞれ、式(2)及び(3)に従って設定される。
Δt
p≧Δt
r+Δt
m (2)
W≧Δt
r+Δt
m (3)
Δt
p及びWは、式(2)(3)の右辺にそれぞれ所定の時間マージンを加えた時間幅に設定されていてもよい。また、Δt=Δt
p+Wなので、Δt
p及びWは、Δtをどのように設定するかについても考慮して設定される。
【0048】
2関数時系列パルスパターンについてはF(t)、G(t)をそれぞれf(t)、g(t)に置き換えれば上記説明がそのまま成り立つ。
【0049】
2関数時系列パルスパターンの各パルスの間隔Δtの設定について説明する。本発明では、2関数として、それぞれの二乗の和が時間tに依存せず一定値Hになるようなf(t)とg(t)を選定する。
図2及び
図5(A)に示す例では一定値Hは「1」である。既に説明したように、2乗和が一定値Hとなるためには、tは、厳密には2関数において同じ値でなければならない。
【0050】
しかし、
図5(A)に示すF(t)、G(t)(f(t)、g(t)に比例)からわかるように、f(t)とg(t)とは互いにtの値がΔtだけことなる位置での値、即ちf(t
2i)とg(t
2i+1)(t
2i+1−t
2i=Δt、i;0を含む連続する自然数で、予め設定された上限値までの値)とでパルス波高値が設定されている。f(t
2i)
2とg(t
2i+1)
2とを加えた値J(i)は、通常、Δtとiとに依存して変化し、iの値に依らず一定値になるということはない。
【0051】
しかし、f(t)とg(t)とが互いの2乗の和が一定となるように選定されていれば、Δtが小さくなるにつれてJ(i)のiに依存する変化の程度、即ち時間に依存する変化の程度は小さくなり、略一定値と見なすことができるようになる。略一定値と見なすことができるかどうかの判断基準は、測定対象物1の許容される温度変化に対応したジュール発熱の許容時間変化で決められる。ジュール発熱は電流の2乗に比例するため、ジュール発熱の許容時間変化からJ(i)の許容される変動値が算定でき、算定された値が略一定に関する判断基準となる。J(i)の変動値は、J(i)の値の一定値(
図2に示す例では「1」)に対する誤差εに依存して大きくなる。J(i)の許容される変動値の一定値に対する誤差ε
thを閾値誤差又は許容誤差とすると、Δtは、J(i)の値と一定値との差異εが許容誤差ε
th以下になるように設定される。すなわち、ε=ε
thのときのΔtをΔt
maxとすると、2乗和が略一定と見なせるΔtはΔt
max以下の値に設定されればよい。Δtは式(1)、(2)から得られるΔt
pとWの和よりも大きい値であり、且つΔt
max以下の値という条件を満たすものであればどのような値であってもよい。以上の条件を考慮した結果、Δt
p及びWは、通常、測定時間、測定対象物の温度などを考慮して、それぞれ5−100ms程度(より好ましくは5−50ms程度)に設定される。
【0052】
2関数時系列パルスパターンの時間範囲Tについて説明する。この時間範囲Tは、s最大振幅値I
0設定後の時系列電流パルス信号の振幅値が、測定対象物1のI−V特性の情報を取得するために必要な電流値がカバーできる時間範囲に設定される。時系列電流パルス信号の設定で説明したiの値は、このように設定された時間範囲に対応してその最大値が設定される。
図2に示す時間範囲Tは、f(t)=COS(2πt/T)、g(t)=SIN(2πt/T)のとき時間t=0から1周期Tまでの時間範囲を示している。設定・解析部22でフーリエ解析を行う場合は、使用されるデータは周期関数に対応していて、少なくともその一周期分が必要なのでf(t)、g(t)を周期T’の関数とすると、T=n×T’(n=自然数)とする。
【0053】
電圧測定部21による正味の電圧パルス波高値の算定方法について、
図5(B)を利用して説明する。時系列応答電圧パルス信号の各パルスの波高値は、それぞれ測定時間Δt
mで測定されるが、測定結果は、この測定時間を代表する点における波高値であるとする。
図5(B)では代表点は、例えば、各パルスにおける測定時間の中点であるΔt
m/2の時点(a、b、c点等で表示)とする。時系列応答電圧パルス信号のドリフト成分はオフセット領域での波高値で示されているので、ドリフト成分の測定は、
図5(B)に示すように、a、b、c点等の両側に、それぞれ時間Δt
s離れた時間位置を中心に測定時間Δt
mで実行される。
図5(B)ではb点の両側の時間位置はd点とe点とで示されている。なお、オフセット領域の波高値の測定時間はパルス波高値の測定時間Δt
mと異なる値であってもよい。
【0054】
b点を例に、対応する正味のパルス波高値V
xの算定方法を説明する。電圧測定部21は、パルス波高値測定の代表点b、オフセット領域の波高値測定の代表点d、e点のそれぞれの測定値V
b、V
d、V
eを測定により取得する。電圧測定部21は、b点でのドリフト成分V
yを(V
d+V
e)/2に略等しいとして算定し、b点に対応する正味のパルス波高値V
xを、V
bからV
yを除去することにより得る。この方法は3点法と呼ばれ、市販の電圧測定装置で利用される方法である。
【0055】
図6に、高温超伝導体YBa
2Cu
4O
8の焼結体を、測定対象物1を構成する試料、即ち測定部位K
1として、上記の電流−電圧特性測定装置2で測定対象物1のI−V特性を測定した例を示す。この例は式(1)を求めてはおらず、測定対象物1の設置環境の温度をパラメータとして、測定対象物1に入力した電流値と測定部位K
1の両端間の電圧を応答電圧値とをプロットしたものである。このような表示から、各温度毎のI−V特性のデータのばらつきの程度がわかる。ばらつきの程度が大きいほど測定対象物1の温度変動が大きいことになる。設置環境の温度は23.50K、27.40K、29.50K、及び31.40Kである。相互の温度差は約2Kから3Kという小さなものであるが、各温度での測定部位K
1のI−V特性データのばらつきは小さく、相互のデータは良く識別できることがわかる。この結果から、本実施の形態に係る電源装置20を備える電流−電圧特性測定装置2によれば、測定対象物1の測定部位K
1のI−V特性をより高精度に求めることが可能となることが実証できた。従って、本実施の形態に係る電源装置20を使用すれば、測定対象物1の温度変化は、
図6に示す程度に高精度にI−V特性を測定できるほど小さくなることがわかる。
【0056】
このように、本実施の形態に係る電源装置20は、それぞれの2乗の和が一定値になるような関数F(t)とG(t)に基づき、時系列電流パルス信号を生成し、出力するので、電源装置20によれば、その出力信号を測定対象物1に入力したとき、隣り合う電流パルスにより測定対象物1で発生するジュール熱を平均した値を略一定に抑えることができる。更に、この電源装置20を備えた電流−電圧特性測定装置2によれば、測定中の測定対象物1の温度変化を従来よりも小さくすることができるため、測定対象物1の測定部位K
1のI−V特性をより高精度に求めることが可能となる。
【0057】
これまでの説明では、f(t)を余弦関数、g(t)を正弦関数として生成した2関数時系列パルスパターンについて説明したが、f(t)、g(t)は
図7に示す関数であってもよい。
図7に示す例は、2関数時系列パルスパターンの第1の変形例である。このときの2関数は、時間範囲、又は周期をTとしたとき、f(t)=2t/T−1、g(t)=SQR(1−(2t/T−1)
2)である。即ちt=0−Tの時間範囲で、f(t)はT/2で負から正にゼロクロスする直線関数、g(t)は、その中心が時間軸上のT/2の位置にあり、時間軸方向の軸長がT、g(t)方向の軸長が2の楕円を表す式の正の部分を表す関数である。このような関数f(t)、g(t)の場合もそれぞれの2乗の和はtによらず一定値になる。
【0058】
このときは、解析部221でフーリエ解析に使用されるデータは直線関数に対応した電流パルス波高値とそれに対応した正味の電圧パルス波高値のデータである。その理由は、I−V特性は正負の両値に対して必要とされるためである。この場合も、関数形が異なる以外は、これまでの説明内容はそのまま成立し、電源装置20、及びこれを備えた電流−電圧特性測定装置2は、これまで説明した効果と同じ効果を奏する。
【0059】
解析部221は、多項式フィッティングの手法により、式(1)の形でI−V特性を求めてもよい。また、I−V特性を必ずしも式(1)の形で求めなくてもよく、単に電流値とこれに対応する応答電圧値を表形式又はグラフで表示したものとして生成してもよい。このときは、測定対象物1に入力する時系列電流パルス信号の全てのパルス波高値と、これに対応する正味の応答電圧パルス波高値をI−V特性の把握に活用することができ、無駄がないという利点がある。
【0060】
図7の縦軸の絶対値の最大値は1であるが、これに限定されない。任意の値I
aに設定してもよい。ただし、このときは、時系列電流パルス信号の最大値が最大振幅設定部201で設定したI
0に等しくなるように、時系列電流パルス信号を生成するときに2関数時系列パルスパターンに乗じる値はI
0ではなく、I
0/I
aとする。
【0061】
2関数時系列パルスパターンの第2の変形例を
図8に示す。このときのf(t)は余弦関数であるという点はこれまで説明したf(t)が余弦関数の場合と同じである。しかし、2関数時系列パルスパターンの生成に使用するf(t)の時間範囲が周期Tの1/2である点が異なる。更に、g(t)については、f(t)と同一周期Tで振幅と位相が同じ正弦関数であって、2関数時系列パルスパターンの生成に使用するg(t)の時間範囲が周期Tの1/2であり、tがT/4からT/2までの範囲で符号を反転させた関数とする。
図8に示す2関数時系列パルスパターンは、このようなf(t)とg(t)に基づき、これまでと同様に生成されたものである。この場合もf(t)の2乗とg(t)の2乗の和は一定になる。
【0062】
解析部221は、I−V特性を式(1)の形で求める場合は、不連続関数であるg(t)に対応したデータの位相を変換してf(t)に対応したデータと合成する。これにより合成したデータを連続した1関数の1周期分のデータとする。即ち、g(t)に対応した時系列電流パルス信号の電流パルス波高値と、これに対応した時系列応答電圧パルス信号の正味の電圧パルス波高値のそれぞれのt=0からT/4迄のデータの位相を−90度に相当する−T/4だけ時間軸上でずらし、また、t=T/4からT/2までの対応するデータの位相を+90度に相当する+T/4だけ時間軸上でずらして、f(t)に対応した時系列電流パルス信号の電流パルス波高値と、これに対応した時系列応答電圧パルス信号の正味の電圧パルス波高値にそれぞれつないで合成する。これにより、一周期分の一つの正弦関数に対応した時系列電流パルス信号の電流パルス波高値と、これに対応した時系列応答電圧パルス信号の正味の電圧パルス波高値とが測定データとして得られることになる。
【0063】
解析部221は、この合成して生成した1周期分のデータに対してフーリエ解析を適用し、式(1)によるI−V特性の情報を得ることができる。この手法に依れば時系列電流パルス信号を全て活用することができるため無駄がないという効果がある。更に、データの測定時間がT/2で済むため測定の効率化を図ることができる。
【0064】
解析部221で、I−V特性を、式(1)の形ではなく、電流値とこれに対応する応答電圧値とを表形式又はグラフで表示したものとして生成する場合も、時系列電流パルス信号を全て活用することができるため無駄がなく、データの測定時間がT/2で済むため測定の短時間化を図ることができる。また、
図8からわかるように短時間で測定対象物1に入力される電流の符号が正負バランス良く得られるので、その意味でI−V特性を短時間で精度良く取得できる。
【0065】
f(t)とg(t)とから、一方の他方に対する位相をシフトして、一つの周期関数を合成するという方法は、上記の具体例以外にいろいろな方法が考えられるが、いずれの方法でも同様な効果を得ることができる。
【0066】
2関数時系列パルスパターンはそれぞれの2乗の和が一定になる関数f(t)とg(t)とに基づき形生成されたものとしたが、関数g(t)の位相をΔtだけシフトした関数g’(t)をg’(t)=g(t−Δt)として定義し、2関数時系列パルスパターンは関数f(t)とg’(t)とに基づきこれまでと同様な方法で生成されたものとしても良い。なお、時系列電流パルス信号については、f(t)、g’(t)にそれぞれI
0を乗じて得られるF(t)、G’(t)tとに基づいて時系列電流パルス信号が生成されたと見なしても良い。
【0067】
時系列電流パルス信号がF(t)とG(t)に基づいて生成されたときは、隣り合うパルスの代表時間tがΔtずれることにより2乗和の対象となるパルスの同時性が失われること、及び同時性のずれの分、当該パルスの波高値の同時性がなくなる、即ち値が異なってしまうことにより、2乗和が、時間に依らない一定値からの誤差を含むものになるということは既に説明した通りである。時系列電流パルス信号がF(t)とG’(t)に基づいて生成されたときは、隣り合うパルスの代表時間tがΔtずれることにより2乗和の対象となる値自体は同時性が担保されることになる。従ってその分の誤差は低減するので、このような時系列電流パルス信号を出力する電源装置20によれば、出力先の測定対象物1において、出力される時系列電流パルス信号の隣合う2パルスにより発生するジュール熱を平均した値の一定性はこれまで説明したケースに比べて更に改善される。このような電源装置20を備えた電流−電圧特性測定装置によれば、測定対象物1のI−V特性の測定の高精度化も更に改善される。
【0068】
2関数時系列パルスパターンの第4の変形例(図示せず)は、2関数時系列パルスパターンの隣り合う各パルスの波高値の絶対値は、f(t)の絶対値とg(t)の絶対値に基づき交互に設定され、その符号は正負のどちらでも自由に設定されたものとする。これは2関数時系列パルスパターンの生成においては依拠する2関数の2乗の和が問題となるだけであり、2乗するとその符号は無関係となるためである。ただし、I−V特性の測定には正負の電流を測定対象物1に入力する必要があるため、その点を考慮した2関数時系列パルスパターンとする必要がある。上記、第2の変形例は、この第3の変形例の特殊なケースとみてもよい。このような2関数時系列パルスパターンのときは、第2の変形例のように周期関数を合成する場合以外は、通常は、解析部221はフーリエ解析以外の方法でI−V特性の情報を取得する。このときもこれまでと同様に、測定対象物1での温度の時間変動は無視できるようになり、I−V特性の測定精度が向上する。
【0069】
これまでは、測定対象物1に電流を流したときの測定対象物1の測定対象箇所での電圧降下を測定してI−V特性を得るというケースについて説明した。しかし、これとは逆に、測定対象物1の測定対象箇所に電圧を印加し、そのとき測定対象物1に流れる電流を測定することによりI−V特性を得てもよい。このようなときの電流−電圧特性測定装置2の構成例を
図9に示す。
【0070】
図9において、
図1と異なる点は、電源装置20が電圧供給源であり、時系列電圧パルス信号を測定対象部1に出力すること、
図1の電圧測定部21を電流測定部21とし、時系列電圧パルス信号を印加した測定対象物1に流れる電流を時系列応答電流パルス信号として測定すること、電流測定部21と測定対象物1との間の結線は測定対象物1の測定部位K
1に流れる電流を計測できるように結線されていることである。なお、電流測定部21と
図1に示す電圧測定部21とを同じ符号としたのは、それぞれは、上位概念である応答信号測定部21としてまとめることができるからである。
【0071】
測定対象物1に電圧を印加してI−V特性を測定するのは、通常は、電気抵抗K
2、K
3の抵抗が測定部位K
1の抵抗に比べて無視できる場合である。そのような場合には、測定対象物1に印加した電圧は、そのまま測定部位K
1の電圧降下に等しくなる。そのため、測定部位K
1の電圧降下値を測定しなくても、電源装置20の出力した時系列電圧パルス信号の各パルス波高値を設定・解析部22に電圧値として送信することができる。電流測定部21から設定解析出力されるデータは正味の電流パルス波高値である。
【0072】
図9に示す構成の装置に対しては、以上を前提として、
図1に関する説明を、電流と電圧を入れ替えて読めば、
図1に関する説明がそのまま成り立つ。変形例を含む効果についてもこれまでの説明と同様に成立する。従って、
図9に示す電源装置20は、隣り合うパルスにより測定対象物1に発生するジュール熱を平均すると時間に依らず略一定になるような時系列電圧パルス信号を出力できる。このような電源装置20を備えた電流−電圧特性測定装置によれば、I−V特性の測定過程での測定対象物1での温度変動は無視できるようになるため、高精度でのI−V特性の測定が可能となる。
【0073】
なお、I−V特性の測定において電圧を入力して電流を測定するという場合でも、
図9に示す応答信号測定部21又は別途備える電圧測定部により測定部位K
1の両端間の電圧を測定できる場合は、その電圧測定結果を解析部221に入力することにより、測定部位K
1の抵抗値に依らず、測定対象物1のI−V特性を高精度に測定することができる。
【0074】
電源装置20の出力は、
図1では時系列電流パルス信号であり、
図9では時系列電圧パルス信号である。これらを総称して、
図1、
図9に示すように、時系列パルス信号と言うことができる。また、
図1の電圧測定部21及び
図9の電流測定部21は総称して応答信号測定部21ということができるということは既に説明したが、電圧測定部21の時系列応答電圧パルス信号、及び電流測定部21の時系列応答電流パルス信号は総称して時系列応答パルス信号と言うことができる。