(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車輪を車軸に締結する車輪締結部に着脱可能に設置されて前記車輪締結部の締結状態によって変化する状態量を検出するセンサユニットと、このセンサユニットに接続された情報端末と、この情報端末に接続されたサーバとを備え、
前記センサユニットは、前記状態量として歪を検出する歪センサを有し、
前記情報端末は、車両の制御・通信系から車両状態データを読み込み、この車両状態データから定められたタイミングで前記センサユニットに測定を指示する測定タイミング指示部と、前記センサユニットから前記歪センサの検出データを測定データとして受信し前記サーバへ送信する通信手段とを有し、
前記サーバは、前記測定データを、前記車両状態データの定められた項目につき過去に同一条件で測定して記憶した蓄積データと比較することで、前記車輪締結部の締結状態の異常を判定する情報処理部を有する車輪締結状態のサーバ利用判定装置。
請求項1に記載の車輪締結状態のサーバ利用判定装置において、前記センサユニットと前記情報端末との間の通信、および前記情報端末と前記サーバとの間の通信を無線で行う通信手段を備え、前記サーバの前記情報処理部は前記測定データを記憶しかつ前記判定を行い、前記情報端末は前記サーバから送られた判定結果を表示装置の画面に表示する表示部を有する車輪締結状態のサーバ利用判定装置。
請求項1または請求項2に記載の車輪締結状態のサーバ利用判定装置において、前記情報端末は、前記測定データを、前記車両状態データから前記車輪締結部の締結状態の異常を判定する情報処理部を有する車輪締結状態のサーバ利用判定装置。
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車輪締結状態のサーバ利用判定装置において、前記サーバは、車両に異常が発生した場合に、その異常が判定された測定データと他の車両における測定データを比較し、この比較の結果、両測定データの間に同様の傾向または同等の水準の状況が見出された場合に対象車両情報を車両の管理部もしくは当該車両のドライバーへ連絡して注意喚起する比較報知部を有する車輪締結状態のサーバ利用判定装置。
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車輪締結状態のサーバ利用判定装置において、前記センサユニットは、前記車輪の全周に渡り設けられて前記車輪のホイールをハブに取付ける各ハブボルトの頭部とホイールナットとの間に介在し前記各ハブボルトとホイールナットとによる締め付け力を受ける変形発生用のリング状のスペーサ状部材をさらに有し、前記歪センサは、前記スペーサ状部材における前記ハブボルトが挿通されるボルト穴の間の位相部位に設けられて前記スペーサ状部材の歪を検出する車輪締結状態のサーバ利用判定装置。
請求項5に記載の車輪締結状態のサーバ利用判定装置において、前記センサユニットは、前記スペーサ状部材の前記ボルト穴の間の位相部位に、前記歪センサ、この歪センサの検出信号を通信する通信装置、並びに前記歪センサおよび前記通信装置に通電する電源が設けられた車輪締結状態のサーバ利用判定装置。
請求項5または請求項6に記載の車輪締結状態の判定装置において、前記センサユニットの前記スペーサ状部材は、前記ボルト穴の間の位相部位が薄肉部とされた車輪締結状態の判定装置。
請求項7に記載の車輪締結状態のサーバ利用判定装置において、前記スペーサ状部材は、前記ボルト穴の間の前記薄肉部とされた位相部位における一部の位相部位に、歪集中部となる最薄部を有し、この最薄部の歪を検出する歪センサを有する車輪締結状態のサーバ利用判定装置。
請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の車輪締結状態のサーバ利用判定装置において、前記センサユニットは、前記歪センサの他に、温度センサを有し、かつ加速度センサ、ジャイロ、および回転センサのうちの少なくとも一つを有する車輪締結状態のサーバ利用判定装置。
請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の車輪締結状態のサーバ利用判定装置において、前記センサユニットは、前記スペーサ状部材に取付けられてこのスペーサ状部材の変形により歪むダイヤフラムと、このダイヤフラムに取付けられてこのダイヤフラムの歪を検出するセンサ素子とで構成された歪センサを有する車輪締結状態のサーバ利用判定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
・外観、打音による従来の確認手法では、ナット緩み、ボルト破損等の異常を走行中に検出できない。
・点検者の経験則に基づく判定の場合、検出精度にばらつきがある。
・車両の使用環境(積載量、加減速、旋回、路面状況、タイヤ状況、車両の劣化状況等)によって生じる外乱を加味した異常判定が困難である。
・前述の先行技術の様に、ハブ、ホイール間に連結固定される弾性部材を設ける場合、構造が複雑になり、コストが高く、車両重量、車軸幅の増加、および車両の支持剛性にも影響する。
【0007】
これらの課題を解決するものとして、車輪締結部にセンサユニットを設置し、その測定データを車載器または携帯端末で解析して締結異常の判定を行うシステムを考えた。しかし、そのシステムにおいても、次の課題がある。
・車載器もしくは携帯端末で測定データや解析データを保存する場合、データ保存量に制約が生じる。
・車載器もしくは携帯端末で解析/ 状態判定する場合、処理に時間がかかる。
・解析方式や判定基準の改訂時等、アップデート作業が煩雑。(アップデートにタイムラグが生じる)
・車両管理部門でのデータ管理、車両状態監視が難しい。
・車両毎のスタンドアローン評価の場合、設定時の問題を検出出来ない可能性がある。 (当初からナットが緩んでいる場合や、タイヤの空気圧が不適な場合等、判定基準の初期設定時点での問題)
【0008】
この発明の目的は、走行中の車輪締結状態の監視が可能で、かつ走行条件違いによる影響を低減した異常判定が可能であり、メンテナンス精度の向上、判定精度の向上、判定基準の定量化が図れ、さらにサーバの利用により大容量の情報蓄積によるさらなるメンテナンス精度の向上、判定精度の向上、状態判定の高速化が得られる車輪締結状態の判定装置を提供することである。
この発明の他の目的は、センサ類の車両への着脱が容易であり、車両重量、車軸幅、支持剛性への影響が小さくできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の車輪締結状態のサーバ利用判定装置は、車輪2Aを車軸に締結する車輪締結部2Aaに着脱可能に設置されて前記車輪締結部2Aaの締結状態によって変化する状態量を検出するセンサユニット3と、情報端末4と、この情報端末4に接続されたサーバ30とを備え
、
前記センサユニット3は、前記状態量として歪を検出する歪センサ13を有し、
前記情報端末4は、車両の制御・通信系5から車両状態データを読み込み、この車両状態データから定められたタイミングで前記センサユニット3に測定を指示する測定タイミング指示部23と、前記センサユニット3か
ら前記歪センサの検出データを測定デー
タとして受信し前記サーバ30へ送信する通信手段22とを有し、
前記サーバ30は、前記測定データを、前記車両状態データの定められた項目につき過去に同一条件で測定して記憶した蓄積データと比較することで、前記車輪締結部2Aaの締結状態の異常を判定する情報処理部32を有する。
【0010】
この構成によると、車輪締結部2Aaに着脱可能に設置されて前記車輪締結部2Aaの締結状態によって変化する状態量を検出するセンサユニット3を用いる。そのため、走行中の車輪締結状態の監視が可能で、またセンサ類の車両への着脱が容易である。また、情報端末4は、測定タイミング指示部23により車両状態データを読み込み、定められたタイミングで前記センサユニット3に測定を指示する。サーバ30の情報処理部32は、前記測定データを、過去に同一条件で測定して記憶した蓄積データと比較することで、前記車輪締結部2Aaの締結状態の異常を判定する。このため、車両走行条件を限定した測定により、走行条件違いによる影響等の外乱を低減した異常判定が可能で、判定精度の向上、判定基準の定量化、メンテナンス精度の向上が図れる。前記情報処理部32は、サーバ30に設けられているため、大容量の蓄積データを用い、より精度良く異常判定が行え、またサーバ30の持つ高速処理機能により、異常判定の処理の高速化が得られる。
【0011】
なお、前記「制御・通信系」とはECU等の制御装置とCAN等の通信装置とを含む概念である。前記「車両状態データ」は、例えば、エンジン回転数、ステア角、タイヤ回転数(車速)、アクセル開度、ブレーキ作動の状況、トランスミッションの使用ギア、イグニッションスイッチのオンオフ、アクセサリー系のみオンのいずれの状態であるか等の情報であり、車両走行条件を推定出来るエンジン回転数、ステア角、タイヤ回転数、アクセル開度、ブレーキ作動の状況等が前記「項目」である。また、前記「同一条件で測定」とは、厳密な同一を示すのではなく、例えば、アイドリング時、定常走行時(直進でかつ一定速度)、安定路面走行等の区別について同一であれば問題ない。
【0012】
この発明において、前記センサユニット3と前記情報端末4との間の通信、および前記情報端末4と前記サーバ30との間の通信を無線で行う通信手段22,26,31を備え、前記サーバ30の前記情報処理部32は前記測定データを記憶しかつ前記判定を行い、前記情報端末4は前記サーバ30から送られた判定結果を表示装置の画面に表示する表示部25を有するようにしても良い。
上記構成の場合、センサユニット3と情報端末4とが無線で通信されるため、回転する車輪2Aと固定側にある情報端末4との間の配線が簡素となる。また、情報端末4とサーバ30との通信も無線で行うため、前記情報端末4が車載器4Aや携帯端末4Bであっても良く、走行する車両上からサーバ30との通信が行える。判定結果は、情報端末4の画面に表示するため、走行している車両上で運転者等に締結異常の判定結果を認知させることができる。
【0013】
この発明において、前記情報端末4は、前記測定データを、前記車両状態データから前記車輪締結部2Aaの締結状態の異常を判定する情報処理部24を有していても良い。
走行する車両とサーバ30との間で、通信が確立できない場合があるが、このような場合であっても、情報端末4に前記情報処理部24を有することで、車輪締結部2Aaの締結状態の異常の判定を行うことができる。情報端末4では、サーバ30ほどの大容量の過去蓄積データを用いることはできず、また演算速度も限られるが、実用可能な範囲での精度の良い締結状態の異常判定が行える。
【0014】
この発明において、前記サーバ30は、前記測定データから何らかの異常が判定された場合に、その異常が判定された測定データと他の類似車両における測定データを比較し、この比較の結果、両測定データの間に同様の傾向または同等の水準の状況が見出された場合にその同様の傾向または同等の水準の状況が見出された測定データを車両の管理部へ連絡して注意喚起する比較報知部33を有するようにしても良い。また、本比較報知部33はセンサユニット3の初期設定において、各測定データを類似車種の他車両データと比較することで、初期の締付不良、空気圧不適等による基準の初期設定時の問題を検出することが出来る。
前記比較報知部を備える場合、異常発生時に注意喚起を他車のドライバーや運行管理部門等に認識させることができる。
【0015】
この発明において、前記センサユニット3は、前記車輪2Aの全周に渡り設けられて前記車輪2Aのホイールをハブ6に取付ける各ハブボルト7の頭部7aとホイールナット8との間に介在し前記各ハブボルト7とホイールナット8とによる締め付け力を受ける変形発生用のリング状のスペーサ状部
材12をさらに有し、前記歪センサ13は、前記スペーサ状部材12における前記ハブボルト7が挿通されるボルト穴11の間の位相部位に設けられて前記スペーサ状部材12の歪を検
出しても良い。
この構成のセンサユニット3の場合、スペーサ状部材12の歪を検出してホイールナット8の締結状態の異常を検出するため、車両の走行中の締結状態の異常を検出できる。歪を生じさせるための前記スペーサ状部材12は、ハブボルト7の頭部7aとホイールナット8との間に介在させるリング状の部材であり、このスペーサ状部材12に歪センサ13を取付けた構成であるため、構造が簡単で、ホイール2の支持剛性への影響も小さい。
また、センサ類の車両への着脱が容易であり、車両重量、車軸幅への影響が小さくできる。
【0016】
この発明において、前記センサユニット3は、前記スペーサ状部材12の前記ボルト穴11の間の位相部位に、前記歪センサ13、この歪センサ13の検出信号を通信する通信装置16、並びに前記歪センサ13および前記通信装置16に通電する電源17が設けられていても良い。
前記歪センサ13による検出やその検出信号の通信のためには通信装置16や電源17が必要であるが、スペーサ状部材12のボルト穴11の間の位相部位に前記通信装置16および電源17を配置することで、センサユニット3をコンパクトに構成することができる。前記スペーサ状部材12は、ボルト穴11の存在する位相部位では、締め付けを行うためにハブ、ホイール等に対してある程度の接触面積を確保する必要があるが、ボルト穴11の間の位相部位は接触していなくても(肉厚を薄くしても)良い。そのため、例えば、この薄くすることで生じる空間内に前記通信装置16や電源17を配置することで、センサユニット3の全体としての肉厚を厚くすることなく、通信装置16および電源17を配置することができる。
【0017】
この発明において、前記センサユニット3の前記スペーサ状部材は、前記ボルト穴11の間の位相部位が薄肉部12bとされていても良い。
このように薄肉部12bを設けることで、センサ類や、通信装置16、電源17等の実装部位として利用し、その実装したセンサ類等をスペーサ状部材12の全体の肉厚から突出しないようにできる。そのため、前記スペーサ状部材12を支障なく部材間に挟み込むことができる。また、前記薄肉部12bを設けることで歪を集中させることができ、歪の検出の感度を向上させ、締結状態の異常判定の精度を向上させることができる。
【0018】
このように薄肉部12bを設ける場合に、前記スペーサ状部材12は、前記ボルト穴11の間の前記薄肉部12bとされた位相部位における一部の位相部位に、歪集中部となる最薄部12cを有し、この最薄部12cの歪を検出する歪センサ13を有していても良い。
このように最薄部12cを設けることで、スペーサ状部材12の歪がより一層集中し、歪の検出の感度の向上、締結状態の異常判定の精度をより一層向上させることができる。
【0019】
この発明において、前記センサユニット3は、前記歪センサ13の他に、温度センサ14を有し、かつ加速度センサ15、ジャイロ、および回転センサ(いずれも図示せず)のうちのいずれか一つを有していても良い。
歪センサ13の歪の検出値は温度によって変わるため、温度センサ14で温度を検出し、温度補正を行うことが、締結状態の異常判定の精度向上の上で好ましい。また、温度センサ14により、ブレーキ引きずり等による異常発熱の検知も可能になる。前記加速度センサ15を備える場合は、振動によるハブベアリングの損傷や、タイヤパンク等の異常の検出も可能となる。前記ジャイロまたは回転センサのいずれかが設けられる場合は、さらに車輪2Aの姿勢や各車輪の回転角情報を用いた種々状態の検出が行える。
【0020】
この発明において、前記センサユニット3に前記スペーサ状部材12を設ける場合に、前記センサユニット3が、前記スペーサ状部材12に取付けられてこのスペーサ状部材12の変形により歪むダイヤフラム13aと、このダイヤフラム13aに取付けられてこのダイヤフラム13aの歪を検出するセンサ素子13bとで構成された歪センサ13を有していても良い。
スペーサ状部材自体12にダイヤフラム13aを設けてもスペーサ状部材12の歪を感度良く検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明の車輪締結状態のサーバ利用判定装置は、車輪を車軸に締結する車輪締結部に着脱可能に設置されて前記車輪締結部の締結状態によって変化する状態量を検出するセンサユニットと、情報端末と、この情報端末に接続されたサーバとを備え
、前記センサユニットは、前記状態量として歪を検出する歪センサを有し、前記情報端末は、車両の制御・通信系から車両状態データを読み込み、この車両状態データから定められた走行条件時に前記センサユニットに測定を指示する測定タイミング指示部と、前記センサユニットか
ら前記歪センサの検出データを測定デー
タとして受信し前記サーバへ送信する通信手段とを有し、前記サーバは、前記測定データを、前記車両状態データの定められた項目につき過去に同一条件で測定して記憶した蓄積データと比較することで、前記車輪締結部の締結状態の異常を判定する情報処理部を有するため、走行中の車輪締結状態の監視が可能で、かつ測定時の車両走行条件指定により、走行条件違いによる影響等の外乱を低減した異常判定が可能であり、メンテナンス精度の向上、判定精度の向上、判定基準の定量化が図れ、さらにサーバの利用により大容量の情報蓄積によるさらなるメンテナンス精度の向上、判定精度の向上、状態判定の高速化が得られる。
【0022】
前記センサユニットが、前記車輪の全周に渡り設けられて前記車輪のホイールをハブに取付ける各ハブボルトの頭部とホイールナットとの間に介在し前記各ハブボルトとホイールナットとによる締め付け力を受ける変形発生用のリング状のスペーサ状部材、およびこのスペーサ状部材における前記ハブボルトが挿通されるボルト穴の間の位相部位に設けられて前記スペーサ状部材の歪を検出する歪センサを有する場合は、センサ類の車両への着脱が容易であり、車両重量、車軸幅、支持剛性への影響が小さくできる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は、この車輪締結状態のサーバ利用判定装置を大型商用車に採用したシステムの全体像を示す。この車輪締結状態のサーバ利用判定装置は、車両1の車輪2Aを車軸に締結する車輪締結部2Aaに搭載されたスペーサ型のセンサユニット3と、情報端末4、およびサーバ30とで構成される。車両1は、同図では大型商用車であるトラックの場合を示している。センサユニット3は、前記車輪締結部2Aaの締結状態によって変化する歪等の状態量を検出する手段である。情報端末4は、車載器4A、または携帯端末等の携帯端末4B等で構成され、車両に搭載されたECU、CANから車両状態データの抽出、測定タイミングの指示、各センサユニット3の測定データおよび車両情報の保存、これら測定データおよび車両情報のサーバ30への転送、サーバ30による締結状態の判定結果の表示等を行う。車載器4Aは、車載型のコンピュータ等である。携帯端末4Bは、情報処理機能を備えた所謂スマートフォン等の携帯電話器、または車輪締結状態の判定専用、または他のメンテナンス用途を含むメンテナンス専用の携帯型の端末機である。サーバ30は、汎用コンピュータや高機能のパーソナルコンピュータで構成され、データベース(図示せず)を有する。
【0025】
情報端末4は、車両1の制御・通信系5に無線で接続されている。制御・通信系5は、車両1のメインのECU(電気制御ユニット)等の制御系と、CAN(controller area network )等で構成される車載ネットワーク等の通信系とを総称した概念である。情報端末4は、速度センサ等の車両状態データを検出する手段に、制御系を介することなく直接に通信系で接続されていても良い。
【0026】
サーバ30は、測定データ、判定データ、車両情報等を蓄積するデータサーバとしての機能と、締結異常等の状態判定、その判定基準の更新、判定結果の送信等を行う高速の演算処理機器としての機能を併せ持つ。前記判定結果の送信先は、前記車載器4A,携帯端末4B等の情報端末4と、運行会社の管理部門等である。サーバ30と情報端末4とは、LAN(ローカルエリアネットワーク)またはWAN(ワイドエリアネットワーク)接続されている。
【0027】
図2は、前記車両1が大型商用車である場合に、後
輪ダブルホイール部に前記センサユニット3を実装した例を、その回転軸線を通る面にて切断して示す断面図である。この車輪2Aでは、ハブ6のフランジ6aの片面に2つのホイール2,2を互いに反対に向けて重ね、フランジ6aの他の片面にブレーキドラム9を重ねている。これらホイール2,2とブレーキドラム9とを、ハブボルト7の頭部7aとホイールナット8との間で挟み込んで締め付け固定している。このホイール2をハブ6のフランジ6aにハブボルト7の頭部7aとホイールナット8とでとの間で挟み込んで締め付ける箇所により、車輪2Aを車軸(図示せず)に締結する車輪締結部2Aaが構成される。ハブボルト7は、ハブ6の円周方向の複数箇所に設けられ、前記フランジ6a、ホイール2,2、およびブレーキドラム9に設けられたボルト穴に挿通されている。なお、前記ハブ6は、車軸(図示せず)の外周に設置されるが、ハブベアリング(すなわち車輪用軸受)の一部を構成する部品であっても、ハブベアリングとは別に設けられた部品であっても良い。各ホイール2,2の外周にはタイヤ10が設けられ、ホイール2とタイヤ10とで車輪2Aが構成される。
【0028】
センサユニット3は、ホイール2と同心の円形のリング状で板状の部品であり、この例では2つのホイール2,2間に位置して、前記各ハブボルト7の頭部7aとホイールナット8の間に介在し、これらハブボルト7とホイールナット8とで締め付けられている。センサユニット3は、円周方向の複数箇所にボルト穴11(
図1)を有し、これらボルト穴11にハブボルト7が挿通されている。
【0029】
図3(A)は、
図2におけるセンサユニット3のホイールナット8による締め付け部を拡大して示す。
センサユニット3は、同図(A)のように配置する他に、同図(B)のように、ホイール2とホイールナット8との間に配置しても、同図(C)のようにハブ6のフランジ6aとホイール2との間に配置しても良い。
【0030】
なお、センサユニット3は、ハブボルト7の頭部7aとホイールナット8との間であれば、ハブ6のフランジ6aとブレーキドラム9との間や、ブレーキドラム9とハブボルト7の頭部7aとの間など、ハブボルト7の頭部7aとハブ6のフランジ6aとの間に配置しても良いが、一般的にハブボルト7はハブ6のフランジ6aのボルト穴に圧入して固定されるため、ハブ6のフランジ6aよりもホイールナット8に配置する方が好ましい。
また、
図3の各例ではスペーサ型のセンサユニット3は後輪ダブルホイール部に配置されているが、このホイールナット緩み検出装置が適用される車輪2Aは、前輪のシングルタイヤ仕様であっても良い。
【0031】
図4は、センサユニット3の例を示す。このセンサユニット3は、リング状で板状のスペーサ状部材12と、このスペーサ状部材12に取付けられた歪センサ13とを有する。歪センサ13は、例えば箔ひずみゲージ、線ひずみゲージ、半導体ひずみゲージなどである。スペーサ状部材12には、ホイール2等の部品の状態を検知する状態検知センサ21として、歪センサ13と温度センサ14が取り付けられる。この他に、加速度センサ15やジャイロや回転センサ(いずれも図示せず)を設けても良い。なお、前記状態検知センサ21は、前記各センサの総称である。また、スペーサ状部材12には、通信装置16および電源17が搭載される。この例では、通信装置16と電源17とを纏めて一つの部品とした電源・通信ユニット18が用いられている。
【0032】
スペーサ状部材12は、各部位のハブボルト7とホイールナット8とによる締め付け力の差によって変形を生じさせるための部材であり、前述のように、各ハブボルト7を挿通させるボルト穴11が設けられている。スペーサ状部材12の材質については、鉄合金の様に高強度、かつ高剛性の金属材料で形成されていても、またアルミニウム合金の様に弾性が比較的高い金属材料にて形成されても良い。
【0033】
スペーサ状部材12は、前記ホイールナット8の最外径内の領域では凹みおよび欠如部分のいずれもが存在しない形状であり、この領域は後述のような厚肉部12aとされる。この形状とすることで、ホイールナット8の締付によってホイール2の締結に関係する部材にかかる軸力を損なわず、強固に連結が可能になる。なお、ホイールナット8がワッシャ部(図示せず)を一体に有する場合は、前記最外径は、前記ワッシャ部を含む最外径である。
【0034】
スペーサ状部材12は、ボルト穴11の存在する位相部位、つまりボルト穴11の周囲の部分は厚肉部12aとされ、ボルト穴11間の位相部位は薄肉部12bとされている。薄肉部12bは、スペーサ状部材12の両面が前記厚肉部12aよりも凹む形状であっても、スペーサ状部材12の片面のみが厚肉部12aよりも凹む形状であっても良い。この薄肉部12bとされたボルト穴11間の位相部位は、前記歪センサ13、温度センサ14、加速度センサ15等のセンサ類や、前記通信装置16、電源17、あるいは電源・通信ユニット18を実装する部位とされる。なお、
図4の例では、スペーサ状部材12の片面の内周部は、全周に連続した薄肉部とされ、配線に利用されている。
【0035】
スペーサ状部材12は、さらに、薄肉部12bとされた位相部位における一部の位相部位に、例えば
図5(A)〜(C)に示すように、歪集中部となる最薄部12cを有していても良い。
図5(A)の例では、薄肉部12bはスペーサ状部材12の両面が厚肉部12aに対して凹む部分とされ、かつスペーサ状部材12の表側の面ではボルト穴11間の位相部位の中央に厚肉部12aと同一平面となる中間突条部12dが半径方向に延びて設けられることで、薄肉部12bが円周方向に並ぶ2か所に分割されている。その各分割箇所に半径方向に延びる溝部が形成されて、その溝底部分が前記最薄部12cとされている。
【0036】
図5(B),(C)の例では、いずれも同図(A)の中間突条部12dが存在せず、薄肉部12bはボルト穴11間の位相部位の全体に続く形状とされているが、
図5(B)の例では薄肉部12bにおける円周方向の中央に、半径方向に延びる溝部が形成されて、その溝底部分が前記最薄部12cとされている。
図5(C)の例では
図5(B)の例と同じく溝部によって最薄部12cが形成されているが、最薄部12cはボルト穴11間で円周方向に偏っている。
本例においては、前記歪センサ13(
図4)は、最薄部12cの裏側、すなわち最薄部12cを構成する溝とは反対側の面に取付けられているが、最薄部12cの溝底部に取付けても良い。前記歪センサ13は、この最薄部12cに集中した歪を検出する。なお、
図5(A)〜(C)の各図は、図示した位相部分を反転させて示しており、そのため表を示す図と裏を示す図とで、最薄部12cの位置が反転されて表れている。
【0037】
なお、スペーサ状部材12は、
図11(A),(B)に各例を示すように、歪を検出するダイヤフラム型の歪センサ13を実装しても良い。このダイヤフラム型の歪センサ13は、ダイヤフラム13aと、このダイヤフラム13aの歪を検出するセンサ素子13bとで構成される。ダイヤフラム13aは、
図12(A),(B)に
図11(A),(B)と対応する各例を示すように、薄肉部13aaを設け、この薄肉部13aaの歪を検出するように、薄肉部13aaに位置して歪センサ13bを設けても良い。これにより、ダイヤフラム型の歪センサ13の検出の感度や精度がより一層向上する。
【0038】
また、スペーサ状部材12は、上記の各例では1枚で構成したが、複数枚のスペーサ状部材構成材(図示せず)を組み合わせて一つのスペーサ状部材としても良い。
【0039】
図6は、この車輪締結状態のサーバ利用判定装置のシステム構成をブロック図で示す。センサユニット3は、各車両1の各車輪2A毎に設けられている。各センサユニット3には、
図7に示すように、状態検知センサ21として歪センサ13、温度センサ14、加速度センサ15等が設けられていて、これらの状態検知センサ21の検出データの通信を行う通信装置
16を備えている。なお、ダブルホイールの場合は、
図2,
図3(A)に示したように、そのダブルホイールを構成する2つのホイール2,2に対して一つのセンサユニット3が設けられる。車載器4A、携帯端末4B等の情報端末4は、前記各センサユニット3の通信装置
16と通信を行う通信装置22を備える。
【0040】
図6において、車載器4Aまたは携帯端末4B等の情報端末4は、複数のセンサユニット3に対して、例えば車両1が有する全てのセンサユニット3に対して1台設けられる。また、前記情報端末4は他の車両1に対しても使用することが出来る。なお、同図において、車輪2Aおよびセンサユニット3のブロック内に示した「A〜Z」の符号は、個々の車輪2Aおよびセンサユニット3を識別する符号であり、車輪2Aとその車輪2Aに設けられたセンサユニット3には、同一の符号「A〜Z」を付してある。
【0041】
情報端末4は、前記のように前記通信装置22により複数のセンサユニット3に接続される他に、通信装置22を介して、前記ECUやCAN等の制御・通信系5に、その通信装置26で接続されている。センサユニット3、情報端末4、制御・通信系5、およびサーバ30が有する通信手段である前記各通信装置
16(
図7),22,26,31は、近距離無線通信の規格(例えばブルートゥ−ス(登録商標))に応じた無線通信を行う装置とされる。情報端末4は、その通信装置22でサーバ30の通信装置31にも接続されている。情報端末4とサーバ30との間の前記通信装置22,31による通信手段は、例えばLANやWAN、あるいはLTE(Long Term Evolution :ロング・ターム・エボリューション)等の携帯電話の通信規格に応じた構成とされる。なお、情報端末4の通信装置22は、センサユニット3と通信を行う手段と、サーバ30と通信を行う手段とを纏めて一つのブロックで示している。
【0042】
情報端末4は、コンピュータとプログラムとで主に構成され、前記通信装置22の他に、測定タイミング指示部23、情報処理部24、および表示部25を有する。情報処理部24は、情報端末4とサーバ30の間で通信不可の場合に作動する処理部である。表示部25は、液晶表示装置(図示せず)等の画面に画像を表示する出力を行う手段であり、サーバ30から送信されて情報端末4で受信した各種の判定結果や異常要因、および情報端末4が持つ前記情報処理部24で判定された結果や異常要因等を前記画面に表示する。
【0043】
測定タイミング指示部23は、前記ECU,CAN等の制御・通信系5から、OBD2(On Board Diagnosis second generation)等を介して、または直接に、車両の走行の状態に係る情報である車両状態データを読み込み、この車両状態データから、状態判定に適した走行条件時等の定められたタイミングで前記センサユニット3に測定を指示し、かつその測定データを受信する。
測定タイミング指示部23に設定される前記「定められたタイミング」は、例えば、アイドリング時、定常走行時(直進でかつ一定速度)、安定路面走行時等である。常時測定ではなく、測定に適した時のみの測定とすることにより、センサユニット3側の消費電力削減にもなる。
測定タイミング指示部23は、前記定められたタイミング、例えば測定する時間の間隔や、測定する車両走行条件は、任意に設定および更新可能とされている。この設定や更新は、例えば車載器4A,携帯端末4B等が有する手入力を受け付ける入力手段(図示せず)からの操作によって行えるようにされる。前記入力手段は、例えばキースイッチや、前記表示部25の画面上に設けられるタッチパネル等である。
【0044】
情報端末4の情報処理部24は、前記測定データである歪センサ13の検出データから所定の基準に従い前記ホイールナット8の締結状態の異常を判定する手段であり、個々のセンサユニット3毎に、ホイールナット8の締結状態の異常を判定する。情報処理部24は、異常有無の判定の他に、異常要因を判定する機能を有していても良い。
情報処理部24は、データ記憶部24a、信号解析部24b、および状態判定部24cを有し、データ記憶部24aに、センサユニット3から送信された歪センサ13等の状態検知センサ21の検出信号、およびその他の定められた情報を記憶する。このデータ記憶部24aは、測定した過去のデータも、その測定したときの車両状態データと関連付けて蓄積する。データ記憶部24aは、例えばSDカード等の可搬の記憶媒体で構成されていても良い。
【0045】
信号解析部24bは、締結状態の異常の判定のために必要な前処理となる信号の解析を行う。状態判定部24cは、信号解析部24bで解析された情報を用い、ホイールナット8の締結状態の異常を判定を行う。状態判定部24cは、この他に、前記信号解析部24bで解析された情報を用いて異常要因を求める。異常要因は、前記信号解析部24bで求めるようにしても良い。
【0046】
信号解析部24bは、この実施形態では、ホイールナット8の締結状態の異常の判定の他に、温度センサ14の検出温度を用いて歪の温度ドリフト補正を行う機能、および温度センサ14の検出温度から、ブレーキ引きずり等によるホイール2の異常発熱の検出が可能とされ、また加速度センサ15の検出データからハブベアリング(図示せず)の損傷やタイヤ10のパンク等の異常を検出する機能を備える。
【0047】
情報処理部24は、より詳しくは、前記測定データを、前記車両状態データの定められた項目につき過去に同一条件で測定してデータ記憶部24aに記憶した蓄積データと比較することで、前記車輪締結部2Aaの締結状態の異常を判定を行う。
具体的には、前記信号解析部24bで、ホイール2の回転における各位相の測定データ変動量を各車輪2Aの過去データと比較し、状態判定部24cで異常判定と共に要因を推定する。また、各測定時に全車輪2Aの測定データの相互関係を確認することで、外乱を加味した異常判定と、異常要因を推定する。
例えば、(1) 一輪の限定位相のみ異常傾向を示した場合は、ホイールナット8の緩みやハブボルト7の破損等の締結異常と推定する。
(2) 限られた車輪のみが異常傾向を示した場合は、パンクや、軸受もしくはブレーキの異常、例えば異常発熱等と推定する。
(3) 全ての車輪が異常傾向を示した場合は、過積載、もしくは外乱(路面状況等)の影響と推定する。
【0048】
サーバ30は、データベースとなるサーバおよびデータ処理を高速で行うデータ処理用のサーバとして機能する。サーバ30は、情報端末4から送信された測定データを、情報端末4と同じく、前記車両状態データの定められた項目につき過去に同一条件で測定して記憶した蓄積データと比較することで、前記車輪締結部の締結状態の異常を判定する情報処理部32を有する。この情報処理部32は、情報端末4と同じく、データ記憶部32a、信号解析部32b、および状態判定部32cを有し、これらが行う処理,機能は、情報端末4が持つデータ記憶部24a、信号解析部24b、および状態判定部24cにつき前述した機能,処理と、特に説明する事項を除いて基本的には同様であるが、記憶するデータ量や、信号解析、状態判定に用いる過去の蓄積データの量等が異なり、また演算処理の速度が異なる。データ記憶部32aはデータベースを構成しており、情報端末4から送信された測定データを記憶し、また状態判定部32cで判定した結果を蓄積する。このデータ記憶部32aは、測定した過去のデータも、その測定したときの車両状態データと関連付けて蓄積する。サーバ30についての機能の補足は、以下の作用の説明と共に行う。
【0049】
上記構成の車輪締結状態のサーバ利用判定装置によると、スペーサ型のセンサユニット3を車輪締結部2Aaに挟み込む様に設置し、締結状態等を演算する為のデータを測定する。車載器4Aもしくは携帯端末4B等の情報端末4は、ECUやCANから車両状態データ(スタートキー等の電源のオンオフ、エンジン回転数、ステア角、タイヤ回転数(車速)、アクセル開度、ブレーキ作動の状況、トランスミッションの使用ギア等を読み込み、定められたタイミングである判定に適した走行状態にてセンサユニット3の測定データを記憶する。
【0050】
上記の判定に適した走行状態は、例えば、アイドリング時、定常走行時(直進で一定速度)、安定路面走行時等である。この状態判定に適した走行条件時に、車載器4Aもしくは携帯端末4B等の情報端末4における測定タイミング指示部23から、センサユニット3の起動と測定指示を出して測定しても良い。その場合、常時測定では無く、測定に適した時のみの測定により、センサユニット3側の消費電力削減にもなる。
車載器4Aもしくは携帯端末4B等の情報端末4から、測定部位情報、車両走行条件を含んだ測定データをサーバ30に送信し、サーバ30にて車両毎の各車輪データの蓄積、解析、状態判定を行う。
【0051】
このように測定および判定を行うため、走行中の車輪締結部2Aaの車輪締結状態、および車輪締結部2Aaの周辺構成部品の状態監視が可能である。また、センサユニット3は車両への着脱が容易で、車両重量、車軸幅、支持剛性への影響が小さい。情報処理部24は、測定タイミング指示部23による指示に従って測定を行うため、測定時の車両走行条件指定により、走行条件違いによる影響等の外乱を低減した異常判定が可能である。また、メンテナンス精度の向上、判定精度の向上、判定基準の定量化が得られる。
【0052】
また、サーバ30の活用により、大量のデータを蓄積できるうえ、解析、状態判定を高速に行うことが出来る他、同系、類似車種の不具合発生時データとの比較等により、判定および要因推定の高精度化が可能となる。
状態判定に際しては、測定した走行条件における測定データを、各位相、各車輪、車両全体で比較すると共に、その車両1の過去測定データ、および類似車両の過去異常発生時データとも比較し、車輪締結部位2Aa、および車輪締結部位2Aaの周辺構成部品の状態判定と要因を推定する。
【0053】
例えば、一輪の限定位相のみ異常傾向を示した場合、ホイールナット8の緩みやハブボルト7の破損等の締結異常と推定する。限られた車輪2Aのみが異常傾向を示した場合は、パンクや軸受/ブレーキの異常、異常発熱等と推定する。また、全車輪2Aが異常傾向を示した場合は、過積載、もしくは外乱(路面状況等)の影響と推定する。さらに、比較報知部33による類似車種の異常発生時データとの比較により、高精度な状態判定と要因推定が可能である。
【0054】
サーバ30での状態判定結果は、車載器4Aもしくは携帯端末4B等の情報端末4へ送信し、情報端末4はその受信した状態判定結果を表示部25により表示装置(図示せず)の画面に表示する。状態判定で異常が認められた場合は、ドライバーだけでなく車両管理部門39等へも通信装置31より連絡する。特に、同系車両を多数運用している運送会社の車両管理部門39に有益な効果として、下記が考えられる。
【0055】
(1) 異常発生時、異常が発生した車輪と同様の傾向、同等水準の状況にある車両があれば、当該車両のドライバーおよび運行管理部門へ連絡し注意喚起する。
(2) 運行管理部門にて、走行中の各車両の車輪部測定データを比較、監視することにより、車輪締結異常や異常発熱、振動等の不具合兆候をとらえることが出来る。
(3) 運用条件(走行コース等)と車種毎の不具合傾向解析によって、メンテナンスの最適化が出来る。
【0056】
情報端末4とサーバ30との通信が不可な環境においては、情報端末4のスタンドアロンモードとなる。車載器4A、携帯端末4B等の情報端末4は、データ蓄積、解析、状態判定を行う機能も有しており、情報端末4にて、サーバ30と同じ処理を実施することが可能である。
なお、情報端末4は、通信可能な環境になり次第、通信不可時に蓄積した測定データ、状態判定結果をサーバ30に送信する。
状態判定に適した走行条件(データ測定指示タイミング)や、解析、状態判定方法等に更新がある場合は、無線通信を介して車載器4Aもしくは携帯端末4B等の情報端末4の情報を適時アップデートする。情報端末4において、サーバ活用モードと、スタンドアロンモードは自由に切り替えが可能なように、切り替え操作手段(図示せず)を設けておくことが好ましい。
【0057】
図10は、上記構成の車輪締結状態のサーバ利用判定装置の事前準備(セットアップ)における使用方法および動作を示すフローチャートである。
まず、同図の上段に示すように、車輪2Aに対してセンサユニット3をハブ6〜ホイールナット8(
図3)間に組付け、正規締付トルクでホイールナット8を組付ける。
センサユニット3では、内蔵の各状態検知センサ21(
図4、
図7)でホイール2等の部品の状態を測定し、その測定データを携帯端末4B,車載器4A等に送信する。
携帯端末4Bまたは車載器4Aでは、測定データをセンサユニット3から受信する。また、車種、部位の情報のインプット、および異常判定の基準データとして、前記測定データをデータ記憶部24a(
図6)に記憶する。車種、部位の情報のインプットは、携帯端末4Bまたは車載器4A等が持つ入力機器部から行っても良く、またセンサユニット3に初期設定用のデータとして記憶させておいて、その記憶データを携帯端末4Bまたは車載器4A等に送信し、その受信内容をインプットするようにしても良い。
【0058】
図10の中段に示すように、ECU,CAN等の制御・通信系5と、携帯端末4B,車載器4A等の情報端末4とに関しては、前記通信装置26(
図6)をOBD2等に装着し、アイドリング時や定常走行時等の車両状態データを前記制御・通信系5から出力する。 通信装置26においては、前記車両状態データを、携帯端末4B,車載器4A等の情報端末4へ送信する。
上記車両状態データは、例えば、エンジン回転数、ステア角、タイヤ回転数(車速)、アクセル開度、ブレーキ作動の状況、等である。
携帯端末4B,車載器4A等の情報端末4では、車種データベース(図示せず)等から車両情報の出力データ形式等を読み込み、前記通信装置26から送られた車両状態データの受信を確認して、データ測定タイミングをセットアップする。データ測定タイミングは、例えばアイドリング時や、定常走行時であり、設定時間間隔毎としてもよい。
【0059】
図10の下段に示すように、携帯端末4B,車載器4A等の情報端末4とサーバ30とに関しては、情報端末4において、車両情報をサーバ30(そのデータベース(図示せず))に送信する。前記車両情報は、車両形式、車齢、走行距離、地域、センサユニット3の取付け部位等である。また、車両状態データをサーバ30へ送信する。前記車両状態データは、データ測定タイミングや、基準測定データ(アイドリング時、定常
走行時)等である。
サーバ30では、車両情報や車両状態データの受信を確認する。また、受信データのデータベースへの記憶、解析条件のセットアップ、情報端末4への最新情報のダウンロードを行う。例えば、判定基準、データ測定タイミング推奨値、OBD2の出力等である。また、各測定データより判定基準を設定する際に、位相間、車輪間、及び類似車輪の他車両データ等と比較することで初期の締付不良やタイヤ空気圧不適等による初期設定時の問題を検出することが出来る。
【0060】
図8は、上記構成の車輪締結状態のサーバ利用判定装置の本運転における使用方法および動作を示すフローチャート、
図9はそのサーバ30の情報処理部32が行う処理のフローチャートである。情報端末4の情報処理部24とサーバ30の情報処理部32とは、基本的には同様な処理を行う。なお、
図9では、情報処理部32を構成するどの手段が行うかが明確になるように、データ記憶部32a、信号解析部32b、および状態判別部32cの別に、各ステップを示す矩形枠内にハッチングを施した。
【0061】
図8において、車両1の携帯端末4B,車載器4A等の情報端末4では、ECU,CAN等の制御・通信系5(
図6)から車両状態データを抽出し、情報端末4へ送信する(ステップR1)。抽出する車両状態データは、タイヤ回転数(車速)、ステア角等である。また、センサユニット3にて、搭載の状態検知センサ21(歪センサ13、温度センサ14、…等)により、所定のデータを測定する(ステップR2)。測定事項は、歪、温度、加速度等である。なお、センサユニット3による測定は、情報端末4の測定タイミング指示部23(
図6)による指示に応答して行う。測定タイミング指示部23は、設定条件時に、すなわち前記定められたタイミングに各センサユニット3へデータ測定指示を出力する。前記設定条件時は、例えばアイドリング時や直進の定常走行時であり、測定間隔の指示についても行う。
【0062】
携帯端末4B,車載器4A等の情報端末4では、車両1のECU,CAN等の制御・通信系5から車両状態データを受信し(ステップS1)。受信したデータが測定指示条件に一致するデータであることを確認して(ステップS2)、センサユニット3から測定データを受信する(ステッ
プS3)。サーバ30との通信が可能であるか否かを確認し(ステップS4)、可能である場合、サーバ30に車両情報、車両状態データ、および測定データを送信する(ステップS5)。
【0063】
サーバ30の情報処理部32では、測定データに基づき、状態判定を実施する(ステップS6)。なお、状態判定の方法は
図9と共に後に説明する。状態判定の後、車両情報、測定データ、車両状態データ、判定結果等を保存し、データベースを更新する(ステップS7)。また、判定結果を情報端末4へ送信する。
【0064】
前記の判断ステップS4でサーバ30との通信が可能でない場合は、情報端末4の情報処理部24が、測定データに基づき状態判定を実施し(ステップS6′)、その測定データ、車両状態データ、および判定結果を、自己のデータ記憶部24aに記憶する(ステップS7′)。
【0065】
情報端末4では、サーバ30または情報端末4の情報処理部32,24による上記判定の後、異常の有無に応じて次のように処理する(ステップS8)。異常無しの場合は、表示部25(
図6)の処理によって表示装置(図示せず)の画面に「正常」と表示する(ステップS9)。異常有りの場合は、前記表示装置の画面に「異常」と表示し(ステップS10)、かつサーバ30によって車両管理部門等に電子メール等で連絡する。
【0066】
図9と共に、サーバ30の情報処理部32の処理を説明する。情報端末4の情報処理部24の処理は、同図に示すサーバ30の情報処理部32の処理と同様である。
サーバ30の情報処理部32では、携帯端末4B,車載器4A等の情報端末4から受信した測定データ、測定部位固有情報、車両状態データを用いて次の処理を行う。
【0067】
歪データは、温度データによって温度補正し、その補正後の歪データを用いて締結異常の判定処理を行う。
また、温度データによって異常発熱の判定処理を行う。
前述の測定部位のインプットされた固有情報から、その部位についての過去の測定データ、類似車両のデータ、および異常時データを抽出し、前記締結異常の判定処理、および異常発熱の判定処理に用いる。
【0068】
センサユニット3が加速度センサ15を有する場合は、受信した加速度データから、周波数解析を行い、ホイール2の周辺部品の異常判定の処理を行う。この処理にも前述の抽出された過去測定データが用いられる。
【0069】
前記各判定の処理では、データに異常があるか否かを判定する。例えば、データが閾値を超えているか、またセンサユニット3の複数箇所に設けられた他の歪センサ13等の検出データと異なる傾向があるか、過去の測定データと異なる傾向があるか否かを判定する。また、異常要因の推定を行う。
【0070】
この構成の車輪締結状態のサーバ利用判定装置による効果を纏め直して次に示す。
・走行中の車輪締結状態および周辺構成部品の状態監視が可能。
・サーバ30の活用による、大容量の情報蓄積、および状態判定の高速化が可能。
・サーバ30の活用による、異常発生時の要因推定の高精度化が可能。
・サーバ30の活用による、異常発生時の早期検出、および類似状態の同系車両への注意喚起等が可能。
・サーバ30の活用による、最新測定条件、判定条件の適時適用(アップデート)が可能。
・サーバ30の活用による、車種毎の不具合傾向の解析が行える。
・サーバ30の活用による、基準の初期設定時の問題(初期からの締付不良、タイヤ空気圧不適等)を検出出来る。
・車両1へのセンサユニット3の着脱が容易で、車両重量、車軸幅、支持剛性への影響が小さい。
・測定時の車両走行条件指定により、外乱による影響を低減した異常判定が可能。
【0071】
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。