(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁膜中に設けられ、前記半導体基板に接する第2のビアを更に有し、前記第2のビアの比抵抗が前記半導体基板の比抵抗よりも高い、請求項1または2に記載の半導体スイッチ。
二次元に配列された複数の第2のビアが、第1の方向に配列されるとともに、前記第1の方向に対して斜めの第2の方向にも配列されている、請求項5に記載の半導体スイッチ。
前記第1の導電領域の幅が前記高周波配線の線幅よりも広く、且つ、前記第2の導電領域の幅が前記接地配線の線幅よりも広い、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体スイッチ。
前記導電層は、第1の導電層と、前記第1の導電層と前記配線層との間に設けられた第2の導電層と、を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体スイッチ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る半導体スイッチの概念について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る半導体スイッチの概念を示す平面図である。また、
図2(a)は、
図1に示す切断線A−Aに沿った断面図であり、
図2(b)は、
図1に示す切断線B−Bに沿った断面図である。
【0011】
図2(a)および
図2(b)に示すように、第1の実施形態に係る半導体スイッチ10は、半導体基板11と、絶縁膜12と、STI(Shallow Trench Isolation)層13と、層間絶縁膜14と、導電層15と、配線層16と、を備える。
【0012】
半導体基板11は、第1の層11aと、第2の層11bと、を備える。第2の層11bは、第1の層11aよりも高い不純物濃度を有し、かつ第1の層11aよりも高いアクセプタ濃度を有する。第2の層11b上には、絶縁膜12が形成されている。絶縁膜12上には、STI層13が形成されている。
【0013】
STI層13の上方には導電層15が形成され、導電層15は層間絶縁膜14に覆われている。導電層15は、アルミや銅等の金属で構成された金属層であってもよいし、タングステン(W)やモリブデン(Mo)等の高融点金属とシリコンとの化合物で構成されたシリサイド層であってもよい。導電層15は、第1の導電領域15aと、第2の導電領域15bと、第3の導電領域15cと、を有する。
図1に示すように、第1の導電領域15aは、第3の導電領域15cを介して第2の導電領域15bと部分的に接続されている。つまり、第1の導電領域15aと、第2の導電領域15bと、第3の導電領域15cとは、電気的に接続されている。
【0014】
層間絶縁膜14上には、配線層16が形成されている。配線層16は、スイッチ回路(不図示)に高周波信号を伝送する高周波配線16aと、このスイッチ回路を接地する接地配線16bと、を有する。
【0015】
上記のように構成された半導体スイッチ10では、高周波配線16aに高周波信号が流れると、
図2(a)、2(b)に示すように電気力線17が発生する。仮に、導電層15が設けられていないと、
図2(a)及び
図2(b)に示す点線矢印のように電気力線17は、半導体基板11と絶縁膜12の界面を経由して接地配線16bに向かう。このとき、半導体基板11と絶縁膜12の界面近傍に蓄積された電荷(電子)18が加速されて移動するので、高周波信号には高調波歪が発生しやすくなる。
【0016】
しかし、本実施形態に係る半導体スイッチ10のように、配線層16と絶縁膜12との間に導電層15が形成されていると、この導電層15によって電気力線17の遮蔽効果が高まる。これにより、電荷18の移動に起因する高周波歪みの発生を抑制することが可能となる。
【0017】
次に、本実施形態に係る半導体スイッチ10の全体構成について詳しく説明する。
図3は、第1の実施形態に係る半導体スイッチの回路図である。本実施形態に係る半導体スイッチ10は、例えば、移動可能型通信機器などの送信用または受信用にアンテナの切り替えを行う高周波スイッチである。
【0018】
図3に示すように、半導体スイッチ10には、スイッチ回路SW1〜SW8と、高周波配線RW0〜RW8と、が設けられている。
【0019】
スイッチ回路SW1〜SW8は、アンテナ端子(共通端子)21と、高周波端子(個別端子)RF1〜RF8との間に個別に設けられている。スイッチ回路SW1〜SW8は、高周波配線RW0〜RW8によってアンテナ端子21及び高周波端子RF1〜RF8に接続されている。以下、スイッチ回路SW1について詳しく説明するが、他のスイッチ回路SW2〜SW8についても同様である。
【0020】
スイッチ回路SW1は、ノードN1と高周波端子RF1との間に直列接続された複数のN型MOSトランジスタ(以後、スルートランジスタと称する)T1と、高周波端子RF1と接地端子GNDとの間に直列接続された複数のN型MOSトランジスタ(以後、シャントトランジスタと称する)S1と、を有する。
【0021】
各スルートランジスタT1のゲート端子には、スイッチング動作を安定させる目的(発振防止等)の抵抗R1が接続されている。抵抗R1は、高周波信号がバイアス/制御回路22(
図4参照)に漏洩しない程度の高い抵抗値を有する。各シャントトランジスタS1のゲート端子にも、高周波信号漏洩防止用の抵抗R2が接続されている。抵抗R1、R2の値は、例えば100kΩ以上である。
【0022】
各スルートランジスタT1のゲート端子には、制御信号Cont1が印加される。各シャントトランジスタS1のゲート端子には、制御信号Cont1を反転した反転制御信号Cont1/が印加される。したがって、スルートランジスタT1とシャントトランジスタS1は相補的に導通状態または非導通状態になる。例えば、アンテナ端子21と高周波端子RF1の間を導通状態とするには、スルートランジスタT1を導通状態にし、シャントトランジスタS1を非導通状態にする。同時にスルートランジスT2〜T8を全て非導通状態にし、シャントトランジスタS2〜S8を全て導通状態にする。
【0023】
高周波配線RW0は、アンテナ端子21からノードN1、N2、N3を順に経由してノードN4に到るメインの高周波配線である。高周波配線RW1は、スイッチ回路SW1を経由してノードN1と高周波端子RF1とを接続する。同様に、高周波配線RW2〜RW8の各々も、スイッチ回路SW2〜SW8を経由して、ノードN1と高周波端子RF2〜RF8とをそれぞれ接続する。高周波配線RW0〜RW8は、高周波信号をスイッチ回路SW1〜SW8に伝送する。この高周波信号は、例えば700MHz以上の周波数と、20dBm以上の電力を有し、UMTS(Universal Mobile Telecommunication System)方式で変調されている。
【0024】
高周波配線RW0〜RW8の各々は、
図1および
図2(a)、2(b)に示す高周波配線16aに相当する。以下、高周波配線RW0〜RW8を高周波配線16aと称する場合もある。
【0025】
図4は、スイッチ回路が形成された半導体チップのレイアウトを示す平面図である。
図4に示すように、半導体チップ20における一方の側には、アンテナ端子21と、高周波端子RF1〜RF8と、接地端子G1〜G4と、スルートランジスタT1部〜T8部と、およびシャントトランジスタS1部〜S8部とが配置されている。なお、各ユニットや端子の大きさは図面に示すものに限定されない。
【0026】
接地端子G1の両側に配置されたシャントトランジスタS1部およびS2部は、接地端子G1に共通に接続されている。接地端子G2、G3、G4についても同様であるので、その説明は省略する。
【0027】
半導体チップ20における他方の側には、バイアス/制御回路22が配置されている。バイアス/制御回路22は、制御信号Cont1〜Cont8と反転制御信号Cont1/〜Cont8/とを生成し、スイッチ回路SW1〜SW8を制御する。
【0028】
導電層15は、
図4における点線領域のように高周波配線16aと接地配線16bに対して部分的に形成されていてもよいし、ハッチング領域のように全体的に形成されていてもよい。ハッチング領域では、導電層15は、高周波配線RW0と、
図4では不図示の高周波配線RW1〜RW8の下方に形成されている。さらに、導電層15は、アンテナ端子21および高周波端子RF1〜RF8の下方にも形成されている。
【0029】
また、導電層15は、接地端子G1〜G4の下方や、半導体チップ20の外周部に設けられた接地配線16bの下方に形成されていてもよい。接地配線16bは、アンテナ端子21、高周波端子RF1〜RF8、接地端子G1〜G4、スルートランジスタT1部〜T8部、シャントトランジスタS1部〜S8部、およびバイアス/制御回路22を囲むように形成されていてもよい。接地端子G1〜G4は、接地配線16bに接続されている。
【0030】
図5は、スイッチ回路SW1〜SW8が形成されるSOI基板の断面図である。
図5に示すように、SOI基板30は、支持基板である半導体基板11と、半導体基板11上に成膜された絶縁膜12と、絶縁膜12に積層された半導体層19と、を有する。
【0031】
本実施形態では、半導体基板11は、第1の比抵抗ρ1を有する第1の層11aと、第1の層11aより高い不純物濃度を有する第2の層11bと、を有するp型のシリコン基板で構成されている。第2の層11bの厚さは、例えば0.5〜1μm程度である。第2の層11bの不純物は、例えばアクセプタとなるボロン(B)である。アクセプタは、正孔を発生するので、絶縁膜12と半導体基板11の界面近傍に蓄積された電荷(電子)18は、この正孔により補償される。したがって、界面近傍の電荷密度が低減する。
【0032】
絶縁膜12は、シリコン酸化膜で構成されている。絶縁膜12の厚さT1(
図5参照)は、例えば1〜2μm程度である。絶縁膜12は、BOX(Buried Oxide)層とも呼ばれる。
【0033】
半導体層19は、第2の比抵抗ρ2を有するp
-型のシリコン層で構成されている。能動層である半導体層19と、半導体基板11との間で生じる寄生容量を低減するために、第2の比抵抗ρ2は第1の比抵抗ρ1よりも低い方が望ましい。具体的には、第1の比抵抗ρ1は、例えば1kΩ・cm以上であるのに対し、第2の比抵抗ρ2は、例えば10Ω・cm程度である。また、半導体層19の厚さは、例えば0.1〜1μm程度である。半導体層19には、スイッチ回路SW1〜SW8が形成される。半導体層19は、SOI層とも呼ばれる。
【0034】
図6は、本実施形態に係る半導体スイッチの要部を示す断面図である。
図6では、スイッチ回路SW1の構成要素であるスルートランジスタT1が半導体層19に形成されている。スルートランジスタT1は、一対のソース・ドレイン層23と、ゲート絶縁膜24と、ゲート電極25と、チャネル層26と、を有する。
【0035】
一対のソース・ドレイン層23は、半導体層19を島状に加工することで得られた領域に設けられている。ゲート絶縁膜24は、一対のソース・ドレイン層23の間で、かつ半導体層19上に設けられている。ゲート電極25は、ゲート絶縁膜24上に設けられている。チャネル層26は、ゲート絶縁膜24の下に設けられている。複数のスルートランジスタT1は、ソース・ドレイン層23を共用するように直列接続されている。
【0036】
ゲート絶縁膜24上には、ゲート電極25に接続されたゲート配線27が設けられている。すなわち、ゲート電極25とゲート配線27は同じ層に配置されている。なお、
図6では、ソース・ドレイン層23上にゲート絶縁膜24とゲート配線27とが記載されているが、実際には、ゲート絶縁膜24とゲート配線27とは、ソース・ドレイン層23の外側の領域で複数のゲート電極25をつないでいる。
【0037】
ゲート配線27および導電層15を覆うように、層間絶縁膜14が設けられている。高周波配線16aは、導電層15の上方であって、かつ層間絶縁膜14上に設けられている。
【0038】
半導体層19において、スイッチ回路SW1〜SW8を形成しない部分は除去される。そのため、絶縁膜12が、除去された部分から露出する。絶縁膜12の露出部分には、ソース・ドレイン層23を電気的に分離するためのSTI層13が設けられている。STI層13は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成されたシリコン酸化膜である。STI層13の厚さは、例えば60nmであり、絶縁膜12より十分薄い。
【0039】
STI層13上には、層間絶縁膜14の一部が成膜され、その上に半導体層19よりも高いキャリア濃度を有する導電層15が形成されている。STI層13の上には、ゲート絶縁膜24は設けられていない。したがって、絶縁膜12と、STI層13と、層間絶縁膜14とは、合わせて一つのシリコン酸化膜とみなして差支えないので、層間絶縁膜14上に形成された導電層15は、絶縁膜12の上に形成された導電層15と同等の作用効果をもたらす。
【0040】
ここで、本実施形態に係る半導体スイッチの製造工程の一例について、
図5および
図6を参照して簡単に説明する。
【0041】
まず、半導体層19の上に、ゲート絶縁膜24、層間絶縁膜14となるシリコン絶縁膜を形成する。続いて、ソース・ドレイン層23およびチャネル層26を残して、周りのシリコン絶縁膜および半導体層19を除去する。続いて、シリコン絶縁膜および半導体層19の除去により露出した絶縁膜12の上に、STI層13を形成する。次に、層間絶縁膜14であるシリコン絶縁膜を介したイオン注入により、半導体層19にソース・ドレイン層23を形成し、シリコン絶縁膜およびSTI層13上に、ゲート配線材料膜として、不純物をドープしたポリシリコン膜を形成する。
【0042】
ゲート電極25は、ゲート絶縁膜24上のゲート配線材料膜を加工することにより得られる。ゲート配線27は、ゲート絶縁膜24上のゲート配線材料膜を加工することにより得られる。導電層15は、STI層13の上方に形成される。導電層15の厚さは、例えば325nmである。本実施形態では、導電層15は、半導体基板11、半導体層19、スイッチ回路SW1〜SW8、および高周波配線RW0〜RW8から電気的に絶縁されている。すなわち、導電層15の電位は、フローティング電位である。
【0043】
ゲート配線27の上部とゲート電極25の上部とは、ポリシリコン膜上に高融点金属、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)を形成し、熱処理することによりシリサイドに改質されている。シリサイド層(不図示)の厚さは、例えば50nm程度である。ポリシリコン膜の不純物濃度は、例えば1E15cm
−3以上、シート抵抗は、例えば10Ω/□(square)である。
【0044】
図7(a)は、
図4に示す領域Dを拡大して示す平面図である。
図7(b)は、
図7(a)に示す切断線A−Aに沿った断面図である。
【0045】
図7(a)に示すように、導電層15の第1の導電領域15aは、平面視で高周波配線16aよりも外側にはみ出している。すなわち、第1の導電領域15aの幅W2は、高周波配線16aの線幅W1よりも広い(W2>W1)。具体的には、第1の導電領域15aは、高周波配線16aからΔW1=(W2−W1)/2だけ幅方向Yにはみ出している。換言すると、第1の導電領域15aは、高周波配線16aから+Y方向、−Y方向のそれぞれにはみ出している。
【0046】
第1の導電領域15aの幅W2が高周波配線16aの線幅W1より広くなっているのは、高周波信号が高周波配線16aに流れたときに、第1の導電領域15aが高周波配線16aの幅方向Yの端部より外側に広がるように放出される電気力線を遮蔽するためである。
【0047】
高周波配線16aの線幅W1は、例えば高周波損失、特性インピーダンス等を考慮して定められる。高周波電力が、例えば20dBm程度の場合、高周波配線16aの線幅W1は、例えば50μm程度である。一方、第1の導電領域15aの幅W2は、電気力線の広がり具合、具体的には第1の導電領域15aと高周波配線16aとの距離(換言すると層間絶縁膜14の厚さ)等に応じて定められる。第1の導電領域15aの幅W2は、例えば高周波配線16aの線幅W1の1.5倍程度、具体的には70μm程度である。
【0048】
同様に、第1の導電領域15aの長さL2も、高周波配線16aの長さL1よりも長い(L2>L1)。具体的には、第1の導電領域15aは、高周波配線16aからΔL1=(L2−L1)/2だけ長さ方向Xにはみ出している。換言すると、第1の導電領域15aは、高周波配線16aから+X方向、−X方向のそれぞれにはみ出している。
【0049】
また、導電層15の第2の導電領域15bは、平面視で接地配線16bよりも外側にはみ出している。すなわち、第2の導電領域15bの幅W12は、接地配線16bの線幅W12よりも広い(W12>W11)。具体的には、第2の導電領域15bは、接地配線16bからΔW11=(W12−W11)/2だけ幅方向Yにはみ出している。換言すると、第2の導電領域15bは、接地配線16bから+Y方向、−Y方向のそれぞれにはみ出している。
【0050】
同様に、第2の導電領域15bの長さL12も、接地配線16bの長さL11よりも長い(L12>L11)。具体的には、第2の導電領域15bは、接地配線16bからΔL11=(L12−L11)/2だけ長さ方向Xにはみ出している。換言すると、第2の導電領域15bは、接地配線16bから+X方向、−X方向のそれぞれにはみ出している。
【0051】
図8は、本実施形態に係る半導体スイッチと比較例に係る半導体スイッチとの間で高調波歪を比較した結果を示す図である。比較例に係る半導体スイッチは、導電層15を有さない半導体スイッチである。
図8において、縦軸は高周波信号に含まれる二次高調波電力(dBm)を示している。高周波信号の周波数は、1.95GHz、入力電力は20dBmである。
【0052】
図8に示すように、本実施形態に係る半導体スイッチ10は、比較例に係る半導体スイッチよりも二次高調波電力が16dBほど低減している。
【0053】
以上説明した本実施形態に係る半導体スイッチ10によれば、配線層16と絶縁膜12との間にキャリアの移動度が高い導電層15が形成されている。そのため、高周波信号が高周波配線16aを流れることによって電気力線が発生しても、その電気力線は、導電層15によって遮蔽される。その結果、半導体基板11と絶縁膜12との界面に蓄積された電荷18に作用する電気力線の数が減少するので、電荷18の移動を抑制する効果が高まる。よって、高周波信号の高調波歪および高周波配線16aの高周波損失を低減することが可能となる。
【0054】
以下、本実施形態の変形例について説明する。
図9は、第1の実施形態の変形例に係る半導体スイッチの要部の構成を示す断面図である。
図9(a)は、
図1に示す切断線A−Aに沿った断面図に対応し、
図9(b)は、
図1に示す切断線B−Bに沿った断面図に対応している。
【0055】
図9(a)および
図9(b)に示すように、本変形例に係る半導体スイッチは、層状に形成された複数の導電層15を備える。これにより、高周波配線16aから半導体基板11と絶縁膜12との界面に向かう電気力線の遮蔽効果をさらに向上させることが可能となる。よって、高周波信号の高調波歪および高周波配線16aの高周波損失をさらに低減することが可能となる。
【0056】
以下、別の変形例について説明する。
図10は、第1の実施形態に係る別の変形例に係る半導体スイッチの要部の構成を示す断面図である。第1の実施形態では、半導体基板11の第2の層11bと絶縁膜12が接している形態について説明したが、本変形例では、第2の層11bと絶縁膜12との間に、別の層、例えば改質層31が形成されている。
【0057】
改質層31は、例えば結晶欠陥を含むシリコンからなる。この改質層31の結晶欠陥によって、半導体基板11と絶縁膜12との界面に蓄積された電荷18がトラップされる確率が高くなるので、界面近傍の電荷の移動がさらに抑制される。
【0058】
改質層31は、例えば以下のようにして形成できる。シリコン酸化膜を透過する波長のパルスレーザビームが、絶縁膜12側から第2の層11bと絶縁膜12の界面近傍に向かって照射される。
【0059】
第2の層11bは、レーザ光を吸収して局所的に融解、凝固するので、第2の層11bの一部が改質層31になる。なお、半導体層19は薄いので、半導体層19におけるレーザ光の吸収の影響は無視できる。
【0060】
または、シリコン酸化膜およびシリコンを透過する波長を有する高繰り返し短パルスレーザビームを照射して半導体基板11と絶縁膜12との界面近傍に回折限界レベルまで集光する。レーザビームは、集光点付近の極めて局所的な領域で時間的・空間的に圧縮されて非常に高いピークパワー密度となる。
【0061】
シリコンに対して透過性を示していたレーザビームは、その集光過程においてピークパワー密度がある閾値を超えると局所的に非常に高い吸収特性を示すようになる。半導体基板11と絶縁膜12との界面近傍の焦点付近で、この閾値を超えるようコントロールすることで、半導体層19にダメージを与えることなく、第2の層11bの一部が改質層31になる。
【0062】
改質層31は、SOI基板30の全面に形成されてもよく、高周波配線16aの下方の領域に形成されてもよい。改質層31は、別のシリコン層、例えば不純物濃度が異なる層、導電型が異なる層などであってもよい。なお、スイッチ回路SW1〜SW8は、接合型電界効果トランジスタなどで構成されていてもよい。
【0063】
以下、さらに別の変形例について説明する。
図11(a)は、第1の実施形態に係るさらに別の変形例に係る半導体スイッチの要部の構成を示す平面図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示す切断線A−Aに沿った断面図である。
【0064】
本変形例では、
図11(a)に示すようにSTI層13内に複数のダミーSOI層33が規則的に配置されている。なお、
図11(a)および
図11(b)では不図示であるが、ダミーSOI層33は、絶縁膜12上であって、かつ高周波配線16aの下方に形成されている。ダミーSOI層33は、
図11(b)に示すように、半導体層(SOI層)19と、半導体層(SOI層)19上に形成されたシリサイド層32とで構成されている。具体的には、ダミーSOI層33は、もともとSTI層13と同じ厚さであるが、半導体層19上に載せた金属との化合物がシリサイド層32となる。この金属は、後に取り去られる。
【0065】
本変形例によれば、各ダミーSOI層33が、フローティングの導電層15として機能するので、電気力線の遮蔽効果をより向上させることが可能となる。
【0066】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る半導体スイッチについて
図12を用いて説明する。
図12(a)は、第2の実施形態に係る半導体スイッチの要部の構成を示す平面図であり、
図12(b)は、
図12(a)に示す切断線A−Aに沿った断面図である。以下、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0067】
本実施形態に係る半導体スイッチは、導電層15が半導体基板11に対して正にバイアスされている点で第1の実施形態に係る半導体スイッチ10と異なる。具体的には、
図12に示すように、本実施形態に係る半導体スイッチには、高周波配線16aの近くに第1のビア41が形成されている。第1のビア41は、導電層15の第1の導電領域15aに到達するまで層間絶縁膜14を貫通している。
【0068】
さらに、層間絶縁膜14上には、第1のビア41に電気的に接続されたパッド42が設けられている。パッド42は、抵抗43を介して電源44に接続されている。抵抗43は、導電層15が高周波的にはフローティングとなるように十分大きな抵抗値を有する。抵抗値は、例えば200kΩ以上が適している。
【0069】
本実施形態に係る半導体スイッチでは、導電層15に正の電圧が印加されるので、導電層15は半導体基板11に対して正にバイアスされる。そのため、半導体基板11と絶縁膜12との界面に蓄積された電荷18は、クーロン力により導電層15側に引き寄せられる。その結果、電荷18は、自由な移動が抑制されるので、高調波歪の発生をより確実に防止することが可能である。さらに、高周波配線16aの電力損失をより低減することも可能である。
【0070】
以上説明した本実施形態に係る半導体スイッチによれば、第1の実施形態と同様に、配線層16と絶縁膜12との間に導電層15が形成されている。そのため、高周波信号が高周波配線16aを流れることによって電気力線が発生しても、その電気力線は、導電層15によって遮蔽される。その結果、半導体基板11と絶縁膜12との界面に蓄積された電荷18に作用する電気力線の数が減少するので、電荷18の移動を抑制する効果が高まる。よって、高周波信号の高調波歪および高周波配線16aの高周波損失を低減することが可能となる。
【0071】
特に、本実施形態では、導電層15が第1のビア41を介して電源44に接続されることによって、導電層15の電位が、半導体基板11の電位よりも高くなっている。そのため、半導体基板11と絶縁膜12との界面に蓄積された電荷18は、クーロン力により導電層15側に引き寄せられるので、電荷18が移動しにくくなる。よって、高調波歪をさらに低減することが可能となる。
【0072】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る半導体スイッチについて
図13を用いて説明する。
図13(a)は、第3の実施形態に係る半導体スイッチの要部の構成を示す平面図であり、
図13(b)は、
図13(a)に示す切断線A−Aに沿った断面図である。以下、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同一符号を付して説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0073】
本実施形態に係る半導体スイッチは、絶縁膜12を貫通する複数の柱状体である複数の第2のビア51を有する点で第1の実施形態に係る半導体スイッチ10と異なる。具体的には、
図13に示すように、本実施形態に係る半導体スイッチには、半導体基板11に到達するまで絶縁膜12を貫通する複数の第2のビア51が形成されている。第2のビア51は、半導体基板11の第1の比抵抗ρ1より高い第3の比抵抗ρ3を有する。第3の比抵抗ρ3は、例えば1×106Ω・cm〜1×109Ω・cm程度である。
【0074】
第2のビア51は、例えば多量のドナー不純物および多量のアクセプタ不純物の両方が添加されたポリシリコン膜で構成されている。ドナー不純物濃度とアクセプタ不純物濃度をほぼ等しくすると、ドナーとアクセプタは互いに補償し合い、高い第3の比抵抗ρ3を有するポリシリコンが得られる。
【0075】
複数の第2のビア51は、高周波配線16aの長さ方向Xに対して所定の角度θ1で斜めに配列されたビア列52を構成している。ビア列52において、第2のビア51は、高周波配線16aの幅方向Yに所定の間隔P1で配列されている。また、ビア列52の両端に位置する第2のビア51は、高周波配線16aの端部より外側に配置されている。さらにビア列52は、X方向に所定の間隔P2で配列されている。
【0076】
本実施形態に係る半導体スイッチでは、第2のビア51が半導体基板11に接触しているので、第2のビア51の下には絶縁膜12は存在しない。したがって、絶縁膜12と半導体基板11との界面は存在しないので、界面近傍に蓄積される電荷18も存在しない。その結果、界面近傍に蓄積される電荷18の量を低減することができる。
【0077】
さらに、第2のビア51がポリシリコンである場合、ポリシリコンは多くの結晶欠陥を含んでいるので、第2のビア51の下を通過する電荷18は結晶欠陥にトラップされる確率が高くなる。よって、界面近傍に蓄積される電荷18の量をさらに低減することができる。その結果、高調波歪の発生をより確実に防止し、かつ、高周波配線16aの電力損失をより低減することが可能となる。
【0078】
以上説明した本実施形態に係る半導体スイッチによれば、第1の実施形態と同様に、配線層16と絶縁膜12との間に導電層15が形成されている。そのため、高周波信号が高周波配線16aを流れることによって電気力線が発生しても、その電気力線は、導電層15によって遮蔽される。その結果、半導体基板11と絶縁膜12との界面に蓄積された電荷18に作用する電気力線の数が減少するので、電荷18の移動を抑制する効果が高まる。よって、高周波信号の高調波歪および高周波配線16aの高周波損失を低減することが可能となる。
【0079】
特に、本実施形態では、第2のビア51によって、半導体基板11と絶縁膜12との界面に蓄積される電荷18の量が低減される。そのため、高周波信号の高調波歪をより低減することが可能となる。
【0080】
さらに、本実施形態では、複数の第2のビア51が、絶縁膜12に二次元に形成されている。第2のビア51間の距離が短いと、第2のビア51の形成時に絶縁膜12が損傷することが懸念される。しかし、本実施形態では、複数の第2のビア51が、長さ方向X(第1の方向)と、長さ方向Xに対して斜めの方向(第2の方向)とに二次元に配列されている。そのため、長さ方向Xと、この長さ方向Xに直交する幅方向Yとに配列する場合に比べて、第2のビア51間の距離が長くなる。よって、本実施形態に係る半導体スイッチによれば、絶縁膜12が損傷しにくくなる効果も得られる。
【0081】
なお、本実施形態では、第2のビア51を半導体基板11に対して正にバイアスしてもよい。この場合、第2のビア51は、クーロン力により電荷18を引き寄せ、電荷18の自由な移動を制限する。その結果、高調波歪みをより一層低減することが可能となる。
【0082】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る半導体スイッチについて
図14を用いて説明する。
図14(a)は、本実施形態に係る半導体スイッチの要部の構成を示す平面図であり、
図14(b)は、
図14(a)に示す切断線A−Aに沿った断面図である。以下、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0083】
本実施形態に係る半導体スイッチは、半導体基板11と絶縁膜12との間に電荷捕獲準位を有する電荷捕獲準位層61を備える点で第1の実施形態に係る半導体スイッチと異なる。
【0084】
電荷捕獲準位層61は、電荷をトラップする深い準位を有するシリコン層で構成されている。シリコン層には、不純物や構造の乱れによる欠陥に起因して禁制帯中に電子準位(欠陥準位)が生じる。欠陥準位を測定する方法として、例えばDLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)法がある。DLTS方法とは、欠陥準位へのキャリアの捕獲あるいは欠陥準位からのキャリアの放出に伴う欠陥準位の荷電状態の変化を、ショットキー接合ダイオードや金属、絶縁膜、半導体の積層体からなる容量素子(MIS容量素子)の端子間容量の変化として検出する方法である。
【0085】
電荷捕獲準位層61は、例えば酸素を含有するエピタキシャル層に対して、電荷捕獲準位濃度が高くなるように成長温度、プロセスガス濃度等の条件を設定することにより得ることができる。エピタキシャル成長法の場合、電荷捕獲準位層61は半導体基板11の全面に形成できる。電荷捕獲準位の濃度は、例えば1E16cm
−3〜1E18cm
−3程度である。
【0086】
本実施形態に係る半導体スイッチでは、電荷捕獲準位層61により半導体基板11と絶縁膜12との界面に蓄積された電荷18が捕獲されるので、電荷18の量が低減する。さらに、第2の層11bの高濃度アクセプタにより電荷18が補償されルことによって、さらに電荷18の量が低減する。その結果、高調波歪の発生をより確実に防止し、かつ、高周波配線16aの電力損失をより低減することが可能となる。
【0087】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体スイッチによれば、第1の実施形態と同様に、配線層16と絶縁膜12との間に導電層15が形成されている。そのため、高周波信号が高周波配線16aを流れることによって電気力線が発生しても、その電気力線は、導電層15によって遮蔽される。その結果、半導体基板11と絶縁膜12との界面に蓄積された電荷18に作用する電気力線の数が減少するので、電荷18の移動を抑制する効果が高まる。よって、高周波信号の高調波歪および高周波配線16aの高周波損失を低減することが可能となる。
【0088】
特に、本実施形態では、電荷捕獲準位層61が半導体基板11と絶縁膜12の間に形成されている。この電荷捕獲準位層61が半導体基板11と絶縁膜12との界面に蓄積された電荷18を捕獲することによって、電荷18の量が低減する。よって、高周波信号の高調波歪をより低減することが可能となる。
【0089】
なお、
図15に示すように、電荷捕獲準位層61は、高周波配線16aの下方だけでなく接地配線16bの下方にも形成されてよい。この場合、電荷捕獲準位層61が接地配線16bの下方に位置する電荷18をトラップすることができるので、電荷18の量をさらに低減することが可能となる。
【0090】
以下、本実施形態の変形例について説明する。
図16(a)は、第4の実施形態の変形例に係る半導体スイッチの要部の構成を示す平面図であり、
図16(b)は、
図16(a)に示す切断線A−Aに沿った断面図である。
【0091】
図16(a)および
図16(b)には、
図12に示す第2の実施形態に係る半導体スイッチに電荷捕獲準位層61が新たに形成された半導体スイッチが記載されている。本変形例によれば、正の電位に保持された導電層15によって半導体基板11と絶縁膜12との界面に蓄積された電荷18の移動が抑制されつつ、電荷18をトラップする電荷捕獲準位層61によって電荷18の量が低減する。よって、高調波歪みをより一層低減することが可能となる。
【0092】
図17(a)は、第4の実施形態の別の変形例に係る半導体スイッチの要部の構成を示す平面図であり、
図17(b)は、
図17(a)に示す切断線A−Aに沿った断面図である。
【0093】
図17(a)および
図17(b)には、
図13に示す第3の実施形態に係る半導体スイッチに電荷捕獲準位層61が新たに形成された半導体スイッチが記載されている。本変形例によれば、絶縁膜12を貫通する第2のビア51と電荷捕獲準位層61とによって、半導体基板11と絶縁膜12との間に蓄積される電荷18の量をさらに低減することができる。よって、高調波歪みをより一層低減することが可能となる。
【0094】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。