特許第6545881号(P6545881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6545881ポリオレフィン系樹脂用添加剤、ポリオレフィン系樹脂組成物、ポリオレフィン系合成繊維不織布、及びポリオレフィン系合成繊維不織布の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6545881
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂用添加剤、ポリオレフィン系樹脂組成物、ポリオレフィン系合成繊維不織布、及びポリオレフィン系合成繊維不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20190705BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20190705BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20190705BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20190705BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20190705BHJP
   D01F 6/46 20060101ALI20190705BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20190705BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08K5/05
   C08K5/06
   C08K5/20
   C08K5/10
   D01F6/46 A
   D04H3/007
   D04H3/16
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-195707(P2018-195707)
(22)【出願日】2018年10月17日
【審査請求日】2018年10月17日
(31)【優先権主張番号】特願2018-101261(P2018-101261)
(32)【優先日】2018年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森田 昌武
(72)【発明者】
【氏名】松永 光晴
(72)【発明者】
【氏名】本田 浩気
(72)【発明者】
【氏名】小室 利広
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−018758(JP,A)
【文献】 特開2007−270364(JP,A)
【文献】 特開2006−249615(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/024147(WO,A1)
【文献】 特開2013−159884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、D04H3
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の脂肪族アルコール、及び下記のオキシエチレンアルキルエーテルを含有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂用添加剤。
脂肪族アルコール:炭素数16〜32の一価脂肪族アルコール。
オキシエチレンアルキルエーテル:炭素数12〜26の一価脂肪族アルコール1モルに対しエチレンオキサイドを平均で2モル未満の割合で付加させた化合物。
【請求項2】
前記脂肪族アルコールが、炭素数18〜26の一価脂肪族アルコールである請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂用添加剤。
【請求項3】
前記オキシエチレンアルキルエーテルが、炭素数16〜24の一価脂肪族アルコール1モルに対しエチレンオキサイドを平均で2モル未満の割合で付加させた化合物である請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂用添加剤。
【請求項4】
前記オキシエチレンアルキルエーテルが、前記一価脂肪族アルコール1モルに対しエチレンオキサイドを平均で1.5モル未満の割合で付加させた化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂用添加剤。
【請求項5】
前記脂肪族アルコール、及び前記オキシエチレンアルキルエーテルの含有割合の合計を100質量%とすると、前記脂肪族アルコールを1〜70質量%、及び前記オキシエチレンアルキルエーテルを30〜99質量%の割合で含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂用添加剤。
【請求項6】
更に、下記の脂肪酸誘導体を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂用添加剤。
脂肪酸誘導体:炭素数16〜24のモノカルボン酸と一価脂肪族アルコールとのエステル化合物、炭素数16〜24のモノカルボン酸と多価脂肪族アルコールとのエステル化合物、及び炭素数16〜24の脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1種の化合物。
【請求項7】
前記脂肪族アルコール、前記オキシエチレンアルキルエーテル、及び前記脂肪酸誘導体の含有割合の合計を100質量%とすると、前記脂肪族アルコールを10〜40質量%、前記オキシエチレンアルキルエーテルを30〜80質量%、及び前記脂肪酸誘導体を1〜45質量%の割合で含有する請求項6に記載のポリオレフィン系樹脂用添加剤。
【請求項8】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系合成繊維用樹脂である請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂用添加剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂用添加剤、及びポリオレフィン系樹脂の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリオレフィン系樹脂用添加剤を1〜70質量%、及び前記ポリオレフィン系樹脂を30〜99質量%の割合で含有して成ることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂用添加剤が、ポリオレフィン系合成繊維中に1.0〜7.0質量%の割合で含有していることを特徴とするポリオレフィン系合成繊維不織布。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂用添加剤とポリオレフィン系樹脂とを混合して樹脂組成物を得る工程1と、得られた樹脂組成物を用いてポリオレフィン系合成繊維を紡糸する工程2と、前記ポリオレフィン系合成繊維を接合して不織布にする工程3とを含むことを特徴とするポリオレフィン系合成繊維不織布の製造方法。
【請求項12】
前記工程1において、前記ポリオレフィン系樹脂用添加剤が前記ポリオレフィン系合成繊維中に1.0〜7.0質量%の割合で含有することになるようポリオレフィン系樹脂用添加剤とポリオレフィン系樹脂とを混合する請求項11に記載のポリオレフィン系合成繊維不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にポリオレフィン系樹脂の製造直後に親水性を発現させるポリオレフィン系樹脂用添加剤、ポリオレフィン系樹脂組成物、ポリオレフィン系合成繊維不織布、及びポリオレフィン系合成繊維不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙おむつ等の衛生製品として、体液を吸収するために高吸収性高分子の表面にポリオレフィン系の合成繊維で被覆した製品が知られている。高吸収性高分子の表面を被覆する合成繊維は、例えば親水性、スポット吸収性、繰り返し体液をすばやく吸収する耐久親水性等の優れた吸収特性が要求される。ポリオレフィン系樹脂において、上記特性を付与する観点から、ポリオレフィン系樹脂と混合して用いられるポリオレフィン系樹脂用添加剤が知られている。例えば特許文献1は、ポリオレフィンと混合して用いられるポリオレフィン系樹脂用添加剤として炭素数22〜40の炭化水素基にエチレンオキシド等のアルキレンオキサイドが2〜10モル付加したエーテル化合物について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−523666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来のポリオレフィン系樹脂用添加剤は、特にポリオレフィン系樹脂の製造直後に親水性が発現されないという問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、特にポリオレフィン系樹脂の製造直後に親水性を発現させることができるポリオレフィン系樹脂用添加剤、ポリオレフィン系樹脂組成物、ポリオレフィン系合成繊維不織布、及びポリオレフィン系合成繊維不織布の製造方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の脂肪族アルコール及び特定のオキシエチレンアルキルエーテルを含有して成るポリオレフィン系樹脂用添加剤が正しく好適であることを見出した。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、下記の脂肪族アルコール、及び下記のオキシエチレンアルキルエーテルを含有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂用添加剤が提供される。脂肪族アルコールは、炭素数16〜32の一価脂肪族アルコールである。オキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数12〜26の一価脂肪族アルコール1モルに対しエチレンオキサイドを平均で2モル未満の割合で付加させた化合物である。
【0007】
前記脂肪族アルコールが、炭素数18〜26の一価脂肪族アルコールであることが好ましい。
前記オキシエチレンアルキルエーテルが、炭素数16〜24の一価脂肪族アルコール1モルに対しエチレンオキサイドを平均で2モル未満の割合で付加させた化合物であることが好ましい。
【0008】
前記オキシエチレンアルキルエーテルが、前記一価脂肪族アルコール1モルに対しエチレンオキサイドを平均で1.5モル未満の割合で付加させた化合物であることが好ましい。
【0009】
前記脂肪族アルコール、及び前記オキシエチレンアルキルエーテルの含有割合の合計を100質量%とすると、前記脂肪族アルコールを1〜70質量%、及び前記オキシエチレンアルキルエーテルを30〜99質量%の割合で含有することが好ましい。
【0010】
更に、下記の脂肪酸誘導体を含有することが好ましい。脂肪酸誘導体は、炭素数16〜24のモノカルボン酸と一価脂肪族アルコールとのエステル化合物、炭素数16〜24のモノカルボン酸と多価脂肪族アルコールとのエステル化合物、及び炭素数16〜24の脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0011】
前記脂肪族アルコール、前記オキシエチレンアルキルエーテル、及び前記脂肪酸誘導体の含有割合の合計を100質量%とすると、前記脂肪族アルコールを10〜40質量%、前記オキシエチレンアルキルエーテルを30〜80質量%、及び前記脂肪酸誘導体を1〜45質量%の割合で含有することが好ましい。
【0012】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系合成繊維用樹脂であることが好ましい。
また、本発明の別の態様は、前記ポリオレフィン系樹脂用添加剤、及びポリオレフィン系樹脂の含有割合の合計を100質量%とすると、前記添加剤を1〜70質量%、及び前記樹脂を30〜99質量%の割合で含有して成ることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の別の態様は、前記ポリオレフィン系樹脂用添加剤が、ポリオレフィン系合成繊維中に1.0〜7.0質量%の割合で含有していることを特徴とするポリオレフィン系合成繊維不織布が提供される。
【0014】
また、本発明の別の態様は、前記ポリオレフィン系樹脂用添加剤とポリオレフィン系樹脂とを混合して樹脂組成物を得る工程1と、得られた樹脂組成物を用いてポリオレフィン系合成繊維を紡糸する工程2と、前記ポリオレフィン系合成繊維を接合して不織布にする工程3とを含むことを特徴とするポリオレフィン系合成繊維不織布の製造方法が提供される。
【0015】
前記工程1において、前記ポリオレフィン系樹脂用添加剤が前記ポリオレフィン系合成繊維中に1.0〜7.0質量%の割合で含有することになるようポリオレフィン系樹脂用添加剤とポリオレフィン系樹脂とを混合することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、特にポリオレフィン系樹脂の製造直後に親水性を発現させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
先ず、本発明に係るポリオレフィン系樹脂用添加剤(以下、添加剤という)を具体化した第1実施形態について説明する。本実施形態の添加剤は、下記の脂肪族アルコール及び下記のオキシエチレンアルキルエーテルを含有して成るものである。
【0018】
脂肪族アルコールは、炭素数16〜32の一価脂肪族アルコールである。
オキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数12〜26の一価脂肪族アルコール1モルに対しエチレンオキサイドを平均で2モル未満の割合で付加させた化合物である。
【0019】
本実施形態の添加剤に供する脂肪族アルコールは、上述した炭素数16〜32の一価脂肪族アルコールである。これらの脂肪族アルコールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも炭素数18〜26のものが好ましい。炭素数を16以上とすることにより、本発明の効果を向上することができる。また、不織布製造時、例えばスパンボンド法を用いた不織布の製造時に発煙をより少なくすることができる。また、不織布の耐久親水性をより向上することができる。また、炭素数を32以下とすることにより、本発明の効果を向上することができる。また、不織布のスポット吸水性及び耐久親水性をより向上することができる。
【0020】
炭素数16〜32の一価脂肪族アルコールの具体例としては、例えばヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、オクタデセニルアルコール、イソオクタデシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール、トリアコンチルアルコール等が挙げられる。炭素数18〜26の一価脂肪族アルコールの具体例としては、例えばオクタデシルアルコール、オクタデセニルアルコール、イソオクタデシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール等が挙げられる。
【0021】
本実施形態の添加剤に供するオキシエチレンアルキルエーテルは、上述したように炭素数12〜26の一価脂肪族アルコール1モルにエチレンオキサイドを平均で2モル未満の割合で付加させた化合物である。これらのオキシエチレンアルキルエーテルは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも炭素数16〜24の一価脂肪族アルコール1モルにエチレンオキサイドを平均で2モル未満の割合で付加させた化合物が好ましい。炭素数を12以上とすることにより、本発明の効果を向上することができる。また、不織布製造時、例えばスパンボンド法を用いた不織布の製造時に発煙をより少なくすることができる。また、不織布の耐久親水性をより向上することができる。また、炭素数を26以下とすることにより、本発明の効果を向上することができる。また、不織布のスポット吸水性及び耐久親水性をより向上することができる。本実施形態の添加剤に供するオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイドの付加モル数は、平均で2.0モル未満であり、好ましくは平均で1.5モル未満である。エチレンオキサイドを平均で2.0モル未満の割合で付加させることにより、本発明の効果を向上することができる。また、不織布製造時、例えばスパンボンド法を用いた不織布の製造時に発煙をより少なくすることができ、添加剤の均一性をより向上することができる。
【0022】
オキシエチレンアルキルエーテルの原料となる炭素数12〜26の一価脂肪族アルコールの具体例としては、例えばドデシルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、オクタデセニルアルコール、イソオクタデシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール、ヘキサコシルアルコール等が挙げられる。炭素数16〜24の一価脂肪族アルコールの具体例としては、例えばヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、オクタデセニルアルコール、イソオクタデシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール等が挙げられる。
【0023】
本実施形態の添加剤において、添加剤中の上述した脂肪族アルコール及びオキシエチレンアルキルエーテルの含有割合は特に限定はない。上述した脂肪族アルコール及びオキシエチレンアルキルエーテルの含有割合の合計を100質量%とすると、脂肪族アルコールを1〜70質量%及びオキシエチレンアルキルエーテルを30〜99質量%の割合で含有して成ることが好ましい。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。
【0024】
本実施形態の添加剤は、更に下記の脂肪酸誘導体を含有して成ることが好ましい。脂肪酸誘導体としては、炭素数16〜24のモノカルボン酸と一価脂肪族アルコールとのエステル化合物、炭素数16〜24のモノカルボン酸と多価脂肪族アルコールとのエステル化合物、及び炭素数16〜24の脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1種の化合物である。これらの脂肪酸誘導体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。かかる脂肪族誘導体を配合することにより、不織布製造時、例えばスパンボンド法を用いた不織布の製造時に発煙をより少なくすることができる。
【0025】
上記脂肪酸誘導体の原料となる炭素数16〜24のモノカルボン酸としては、例えばヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オクタデセン酸、イソオクタデカン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸等が挙げられる。
【0026】
上記脂肪酸誘導体の原料となる一価脂肪族アルコールとしては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、オクタデセニルアルコール、イソオクタデシルアルコール、ドコシルアルコール、テトラコシルアルコール、ヘキサコシルアルコール等が挙げられる。
【0027】
上記脂肪酸誘導体の原料となる多価脂肪族アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0028】
炭素数16〜24の脂肪酸アミドとしては、例えばヘキサデカン酸アミド、オクタデカン酸アミド、オクタデセン酸アミド、イソオクタデカン酸アミド、ドコサン酸アミド、ドコセン酸アミド、テトラコサン酸アミド等が挙げられる。
【0029】
本実施形態の添加剤において、添加剤中における上述した脂肪族アルコール、オキシエチレンアルキルエーテル、及び脂肪酸誘導体の含有割合は特に限定はない。上述した脂肪族アルコール、オキシエチレンアルキルエーテル、及び脂肪酸誘導体の含有割合の合計を100質量%とすると、脂肪族アルコールを10〜40質量%、オキシエチレンアルキルエーテルを30〜80質量%、及び脂肪酸誘導体を1〜45質量%の割合で含有して成ることが好ましい。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。
【0030】
本実施形態の添加剤が適用されるポリオレフィン系樹脂の用途に関して特に制限はない。ポリオレフィン系合成繊維用樹脂であることが好ましい。
(第2実施形態)
次に、本発明に係るポリオレフィン系樹脂組成物(以下、樹脂組成物という)を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の樹脂組成物は、第1実施形態の添加剤、及びポリオレフィン系樹脂の含有割合の合計を100質量%とすると、該添加剤を1〜70質量%、及び該樹脂を30〜99質量の割合で含有して成るものである。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物としては、その形態に特に制限はないが、マスターバッチであることが好ましい。ポリオレフィン系合成繊維用のマスターバッチであることがより好ましい。マスターバッチを用いた不織布製造時、例えばスパンボンド法を用いた不織布の製造時に不織布中における添加剤の均一性をより向上することができる。
【0033】
(第3実施形態)
本実施形態に係るポリオレフィン系合成繊維不織布(以下、合成繊維不織布という)を具体化した第3実施形態について説明する。本実施形態の合成繊維不織布は、第1実施形態の添加剤が合成繊維不織布中に1.0〜7.0質量%の割合で含有して成るものである。
【0034】
本実施形態の合成繊維不織布を構成する不織布の種類としては、特に限定されないが、例えばスパンボンド、メルトブローン、スパンボンドとメルトブローンの複合不織布等が挙げられる。
【0035】
(第4実施形態)
最後に、本発明のポリオレフィン系合成繊維不織布の製造方法(以下、合成繊維不織布の製造方法という)を具体化した第4実施形態について説明する。本実施形態の合成繊維不織布の製造方法は、第1実施形態の添加剤とポリオレフィン系樹脂とを混合して樹脂組成物を得る工程1と、得られた樹脂組成物を用いてポリオレフィン系合成繊維を紡糸する工程2と、前記ポリオレフィン系合成繊維を接合して不織布にする工程3とを含むものである。
【0036】
第1実施形態の添加剤とポリオレフィン系樹脂とを混合する工程1は、第1実施形態の添加剤がポリオレフィン系合成繊維中に1.0〜7.0質量%の割合で含有することになるよう、第1実施形態の添加剤とポリオレフィン系樹脂とを混合する工程であることが好ましい。かかる構成により不織布製造時、例えばスパンボンド法を用いた不織布の製造時に発煙を少なくすることができる。また、かかる工程において添加剤を均一に練り込むことができる。
【0037】
合成繊維不織布を構成する合成繊維の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の製造方法が適用可能である。例えば溶融紡糸等が挙げられる。
上記実施形態の添加剤、樹脂組成物、合成繊維不織布、及び合成繊維不織布の製造方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0038】
(1)上記実施形態では、添加剤において炭素数16〜32の一価脂肪族アルコール、及び炭素数12〜26の一価脂肪族アルコール1モルにエチレンオキサイドを平均で2モル未満の割合で付加させたオキシエチレンアルキルエーテルを併用した。
【0039】
したがって、ポリオレフィン系樹脂の製造直後に親水性を発現できる。さらには、良好なスポット吸水性、及び繰り返し体液をすばやく吸収する耐久親水性等の優れた吸収特性を付与することができる。
【0040】
また、不織布製造時、例えばスパンボンド法を用いた不織布の製造時に発煙を少なくすることができる。また、かかる工程において添加剤を均一に練り込むことができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0041】
・上記実施形態の添加剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、添加剤の品質保持のための安定化剤や制電剤として、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常添加剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0043】
試験区分1(ポリオレフィン系樹脂用添加剤の調製)
・ポリオレフィン系樹脂用添加剤(実施例1)の調製
オクタデシルアルコール(A−1)2.0kgとモノオキシエチレンオクタデシルエーテル(B−1)6.0kgとcis−13−ドコセン酸アミド(C−1)2.0kgを80℃にて加温溶解させて均一に混合し、ポリオレフィン系樹脂用添加剤を得た。
【0044】
・ポリオレフィン系樹脂用添加剤(実施例2〜19及び比較例1〜8)の調製
実施例1のポリオレフィン系樹脂用添加剤の調製と同様に、実施例2〜19及び比較例1〜8の添加剤を調製した。表1において、各例で使用した脂肪族アルコール、オキシエチレンアルキルエーテル、及び脂肪酸誘導体の種類、添加剤中における各成分の含有比率(%)を示す。
【0045】
【表1】

表1において、
A−1:オクタデシルアルコール、
A−2:ドコシルアルコール、
A−3:テトラコシルアルコール、
A−4:ヘキサデシルアルコール、
A−5:トリアコンチルアルコール、
ra−1:オクチルアルコール、
ra−2:テトラコンチルアルコール、
B−1:モノオキシエチレンオクタデシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数1.0)、
B−2:モノオキシエチレンドコシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数1.0)、
B−3:モノオキシエチレンテトラコシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数1.0)、
B−4:オキシエチレンオクタデシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数1.35)、
B−5:オキシエチレンドコシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数1.35)、
B−6:モノオキシエチレンドデシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数1.0)、
B−7:モノオキシエチレンヘキサコシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数1.0)、
B−8:オキシエチレンオクタデシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数1.60)、
B−9:オキシエチレンオクタデシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数1.95)、
rb−1:モノオキシエチレンオクチルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数1.0)、
rb−2:モノオキシエチレントリアコンチルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数1.0)、
rb−3:オキシエチレンオクタデシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数3.20)、
rb−4:オキシエチレンオクタデシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数2.40)、
rb−5:オキシエチレンオクタデシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数3.68)、
C−1:cis−13−ドコセン酸アミド、
C−2:オクタデシルオクタデシレート、
C−3:ソルビタンモノオクタデシレート、
C−4:グリセリンモノオクタデシレート、
rc−1:ドデシルドデシレート、
rc−2:ドトリアコンタンアミド、
rc−3:ポリオキシエチレン(10モル)オクタデカンアミド、
を示す。
【0046】
試験区分2(ポリオレフィン系樹脂組成物の調製とポリオレフィン系合成繊維不織布の調製、及び不織布の製造性の評価)
・ポリオレフィン系樹脂組成物(実施例1〜18及び比較例1〜8)の調製
試験区分1で調製した各例のポリオレフィン系樹脂用添加剤10.0kgをポリオレフィン系樹脂としてのポリプロピレン樹脂(MFR=30)10.0kgと混合し、押し出し成形機で200℃に加温溶融させることでポリオレフィン系樹脂用添加剤50質量%含有したポリオレフィン系樹脂組成物であるマスターバッチを得た。
【0047】
・ポリオレフィン系樹脂組成物(実施例19)の調製
試験区分1で調製したポリオレフィン系樹脂用添加剤10.0kgをポリプロピレン樹脂(MFR=30)10.0kgと混合することでポリオレフィン系樹脂用添加剤を50質量%含有したポリオレフィン系樹脂組成物である混合物を得た。
【0048】
・ポリオレフィン系合成繊維不織布の調製
上記のように調製した各例のポリオレフィン系樹脂用添加剤を50質量%含有するポリオレフィン系樹脂組成物を4.0質量%(ポリオレフィン系樹脂用添加剤が2.0質量%)となるようにポリプロピレン樹脂(MFR=30)と混合させた。さらにこの混合物を240℃にて溶融紡糸させ、熱エンボスローラー加工することで20gsmのポリプロピレンスパンボンド不織布(合成繊維不織布)を調製した。合成繊維不織布の製造性評価として、下記に示す発煙の評価及び均一性の評価を行った。合成繊維不織布自体の評価として、下記に示す製造直後親水性、スポット吸水性、及び耐久親水性について評価を行った。
【0049】
なお、表1において、添加量(%)は、合成繊維不織布中におけるポリオレフィン系樹脂用添加剤の配合量(%)を示す。また、オキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイドの付加モル数は、Agilent製7890B GC SystemにAgilent製 DB-1 122-1032カラムを用いることで算出した。
【0050】
・発煙の評価
前記のスパンボンド不織布を製造する際に発煙の有無を下記の評価基準で判断した。
・発煙の評価基準
◎:発煙が若干見られるものの、ごく微量で少ない。
○:発煙が見られるものの、少ない。
×:発煙が多く、紡糸が困難。
【0051】
・均一性の評価
前記のスパンボンド不織布を製造する際に均一にポリオレフィン系樹脂用添加剤が添加されていることを下記の評価基準で判断した。
【0052】
・均一性の評価基準
◎:紡糸時に繊維切れは見られず、また繊維の太さも均一で添加剤が均一に添加されている。
○:紡糸時に繊維切れは見られないが、添加剤が均一に混ざっていないため、繊維の太さにムラが見られる。
×:添加剤が均一に添加されていないため、頻繁に繊維切れが発生してしまう。
【0053】
試験区分3(ポリオレフィン系合成繊維不織布の評価)
・ポリオレフィン系合成繊維不織布の評価
前記のスパンボンド不織布を用いて不織布評価を行った。不織布評価項目として、製造直後親水性、スポット吸水性、及び耐久親水性評価を行った。
【0054】
・製造直後親水性の評価
前記のスパンボンド不織布を調製直後に水平板上に置き、ビューレットを用いて10mmの高さから0.4mlの0.9%生理食塩水を滴下させ、完全に吸収されてしまうまでに要する時間を測定し、下記の評価基準で判断した。
【0055】
・製造直後親水性の評価基準
◎:透水するまでに要する時間が1秒未満。
○:透水するまでに要する時間が1秒以上且つ3秒未満。
×:透水するまでに要する時間が3秒以上。
【0056】
・スポット吸水性の評価
前記のスパンボンド不織布を20℃で60%RHの恒温室内で24時間調湿させた。その後、水平板上に置き、青色に着色させた水滴0.05mlを10mmの高さからシリンジを用いて滴下させ吸水させた。その後、滴下跡について繊維方向と繊維垂直方向の長さを測定し、下記の評価基準で判断した。
【0057】
・スポット吸水性の評価基準
◎:繊維方向と繊維垂直方向の長さがともに10mm未満。
○:繊維方向と繊維垂直方向の長さがともに10mm以上且つ20mm未満。
×:繊維方向若しくは繊維垂直方向のどちらかの長さが20mm以上。
【0058】
・耐久親水性の評価
前記の作製したスパンボンド不織布を10cm×10cmの小片に裁断し、20℃で60%RHの恒温室内で24時間調湿させた。その後、濾紙5枚の上に調湿された不織布を置き、さらにその上の中央に両端が開放された内径1cmの円筒を垂直に立て、この円筒に0.9%生理食塩水5mlを注入し、不織布に完全に吸収されるまでの時間を測定した。さらにその後、不織布を取り出し40℃×90分間送風乾燥して、再度上記の透水性の評価を合計3回繰り返した。3回目の耐久親水性について、下記の評価基準で判断した。
【0059】
・耐久親水性の評価基準
◎:生理食塩水が吸収されるまでに要する時間が3秒未満。
○:生理食塩水が吸収されるまでに要する時間が3秒以上且つ5秒未満。
×:生理食塩水が吸収されるまでに要する時間が5秒以上。
【0060】
表1の結果からも明らかなように、本発明によれば、不織布製造時に発煙が少なく、均一に練り込むことが可能である。また、特に製造直後に親水性を発現させる。さらに、良好なスポット吸水性と耐久親水性を付与することができるという効果がある。
【要約】
【課題】特にポリオレフィン系樹脂の製造直後に親水性を発現させることができるポリオレフィン系樹脂用添加剤、ポリオレフィン系樹脂組成物、ポリオレフィン系合成繊維不織布、及びポリオレフィン系合成繊維不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のポリオレフィン系樹脂用添加剤は、下記の脂肪族アルコール、及び下記のオキシエチレンアルキルエーテルを含有することを特徴とする。脂肪族アルコールは、炭素数16〜32の一価脂肪族アルコールである。オキシエチレンアルキルエーテルは、炭素数12〜26の一価脂肪族アルコール1モルに対しエチレンオキサイドを平均で2モル未満の割合で付加させた化合物である。
【選択図】なし