特許第6545914号(P6545914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6545914アモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6545914
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】アモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/12 20060101AFI20190705BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20190705BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   H01F30/12 H
   H01F27/30 130
   H01F27/32 130
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-541465(P2018-541465)
(86)(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公表番号】特表2018-537001(P2018-537001A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(86)【国際出願番号】CN2015094190
(87)【国際公開番号】WO2017070986
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2018年5月1日
(31)【優先権主張番号】201510729279.1
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518153933
【氏名又は名称】ジアンスー フアペン トランスフォーマー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ、グオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】フアン、ユアンベン
(72)【発明者】
【氏名】ペン、グオジュン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、ウェンジュン
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/132450(WO,A1)
【文献】 特開平06−224062(JP,A)
【文献】 特開2000−021669(JP,A)
【文献】 実開昭57−186012(JP,U)
【文献】 国際公開第2014/132451(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F27/24−27/28
27/29−27/32
30/00−38/12
38/16
41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に配設されるA相コイル、B相コイル、C相コイルの3相のコイルを有し、前記A相コイルと前記B相コイルとが隣接して設置され、前記B相コイルと前記C相コイルとが隣接して設置され、前記3相のコイルが、いずれも外側に位置する高圧コイルと内側に位置する低圧コイルとを有するアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造であって、
前記低圧コイルは、硬化を経て一定の機械強度を持つようになり、
隣接する2相の低圧コイルは、結束バンドで結束されることによって、隣接する2相の高圧コイルを挟持して固定し、
結束された後、前記高圧コイルと低圧コイルとが一体に固定され
前記A相コイルとC相コイルとの外側に、それぞれ挟持板が設置され、
前記挟持板と該当相の低圧コイルは、結束バンドで結束されることによって、該当相の高圧コイルを挟持して固定する
ことを特徴とするアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造。
【請求項2】
前記低圧コイルが、銅箔を巻回してなる多層構造の箔巻コイルであり、
箔層同士の間で熱硬化接着絶縁材料を硬化させることによって、前記低圧コイルを一定の機械強度を持つ締付挟持板として形成する
ことを特徴とする請求項1に記載のアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造。
【請求項3】
前記挟持板はエポキシ絶縁板であることを特徴とする請求項に記載のアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造。
【請求項4】
前記3相のコイルの各相の間、前記A相コイルの外側及び前記C相コイルの外側に、それぞれU型絶縁板紙が設置され、
各相の前記高圧コイル及び前記低圧コイルは、それぞれ前記U型絶縁板紙により囲まれた後、前記結束バンドで結束される
ことを特徴とする請求項1に記載のアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造。
【請求項5】
前記結束バンドは絶縁バンドであることを特徴とする請求項1に記載のアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造。
【請求項6】
前記挟持板の面積が、高圧コイルとの接触面積以上に設けられることを特徴とする請求項1に記載のアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造。
【請求項7】
前記結束バンドには、高強度の絶縁材料が用いられることを特徴とする請求項1に記載のアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造。
【請求項8】
前記高強度の絶縁材料は、ポリエステルバンド、一方向性テープ又は熱収縮チューブであることを特徴とする請求項に記載のアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造。
【請求項9】
前記結束バンドは、前記高圧コイル及び前記低圧コイルの軸方向の変位を共に制限するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造。
【請求項10】
前記挟持板は、前記高圧コイルの外側と隣接して追加され、コイルの高さと一致する高強度絶縁板である
ことを特徴とする請求項1に記載のアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器分野に関し、特にアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アモルファス変圧器のコイルは、主に高圧コイル、低圧コイル、絶縁部材等からなり、変圧器の高圧コイル、低圧コイルが巻回してなるものである。アモルファス変圧器の鉄心に力を加えられず、コイルが通常矩形に形成され、鉄心でアモルファス変圧器の低圧コイルを支持することができないため、矩形コイルの直線部の耐短絡性が劣る。変圧器に短絡が生じると、コイルが、軸方向の力及び径方向の力を受け、限界以上に変形しやすくなり、短絡で壊れやすくなる。
【0003】
現在、アモルファス変圧器のコイルの強度を増加させるため、通常、コイルに対してワニス含浸処理を行うことや、低圧コイル内に筒状エポキシサポータを入れること等の方法を採っている。しかしながら、これらの方法には、材料が多く使用され、時間が掛かり、構造及びプロセスが複雑、巻回作業に手間が掛かり、信頼性が低い等の欠点がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、背景技術における構造が複雑、巻回作業に手間が掛かり、材料が多く使用され、時間が掛かる欠点を克服し、簡単で信頼性が高いアモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造を提出することを課題とする。
【0005】
本発明による技術案は以下のようになる。アモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造は、水平に配設されるA、B、Cの3相のコイルを有し、A相コイルとB相コイルとが隣接して設置され、B相コイルとC相コイルとが隣接して設置され、前記A、B、Cの3相のコイルが、いずれも外側に位置する高圧コイルと内側に位置する低圧コイルとを有し、前記低圧コイルは、硬化を経て一定の機械強度を持つようになり、隣接する2相の低圧コイルは、結束バンドで結束されるとともに「対を成す挟持板」として形成されることによって、隣接する2相の高圧コイルを挟持して固定し、結束された後、前記高圧コイルと低圧コイルとが一体に固定される。
【0006】
さらに、本発明において、前記低圧コイルが、銅箔を巻回してなる多層構造の箔巻コイルである。箔層同士の間で熱硬化接着絶縁材料を硬化させることによって、低圧コイルを一定の機械強度を持つ締付挟持板として形成する。
【0007】
さらに、短絡力が大きい場合、本発明において、前記A相コイルとC相コイルとの外側に、それぞれ挟持板が設置される。前記挟持板と該当相の低圧コイルは、対を成す挟持板として形成されるとともに結束バンドで結束されることによって、該当相の高圧コイルを挟持して固定する。形成された「対を成す挟持板」は、コイルを挟持して固定することができるので、コイルの耐短絡性を大幅に向上させることができる。短絡力が小さい場合、A、C相のコイルの外側の挟持板を使用せず、バンドだけで補強すればよい。
【0008】
さらに、本発明において、前記A、B、Cの3相のコイルの各相の間、A相コイルの外側及びC相コイルの外側に、それぞれU型絶縁板紙が設置され、各相の高圧コイル及び低圧コイルは、それぞれ前記U型絶縁板紙により囲まれた後、結束バンドで結束される。
【0009】
さらに、高圧及び低圧コイルを確実に挟持し、コイルの移動を防ぐために、本発明にいて、前記挟持板の面積が、高圧コイルとの接触面積以上に設けられる。
【0010】
さらに、本発明において、前記結束バンドは絶縁バンドである。結束バンドとして、PETバンド(ポリエステルバンド)、一方向性テープ(Unidirectional tape)、熱収縮チューブ等の高強度の絶縁材料を用いることができる。
【0011】
本発明は以下のような有益効果を有している。1.硬化した低圧箔巻コイル及びエポキシ板が挟持板として形成されるので、短絡になっている間にコイルの径方向における変形を防ぐことができる。2.結束バンドにより高圧及び低圧コイルが一体に結束されるので、短絡になっている間にコイルの軸方向における変位を防ぐことができる。3.変圧器の製造コストを大幅に低減させた(アモルファス変圧器の生産量を25〜30万台とする場合、コストを5億人民元以上低減させることができる)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の構造模式図である。
図2図1におけるI部の部分拡大図である。
図3】本発明の斜視構造模式図である。
図4図1におけるA―A線に沿った断面図である。
図5図1におけるB―B線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面及び好ましい実施例を参照し、本発明をさらに詳しく説明する。これらの図面は、模式的に本発明の基本構造を説明するための簡素化した模式図であり、本発明に関わる構造のみを示している。
【0014】
図1図3に示すように、アモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決するためのセルフクランピング構造は、水平に配設されるA、B、Cの3相のコイルを有する。A相コイル1とB相コイル2とが隣接して設置され、B相コイル2とC相コイル3とが隣接して設置されている。図1に示すように、A、B、Cの3相のコイルは、いずれも外側に位置する高圧コイルと内側に位置する低圧コイルとを有する。低圧コイルは、銅箔を巻回してなる多層構造の箔巻コイルである。箔層同士の間で熱硬化接着絶縁材料を硬化させることによって、低圧コイルを一定の機械強度を持つ締付挟持板として形成する。
【0015】
A相コイル1とB相コイル2は、隣接する箇所にU型絶縁板紙4が設置されて、PETバンド5で結束されている。図5に示すように、隣接する2相の低圧コイルがPETバンド5で結束される。また、隣接する2相の低圧コイルは、対を成す挟持板として形成され、隣接する2相の高圧コイルを挟持して固定する。結束された後、高圧コイル7―1と低圧コイル7―2とが一体に固定されている。高圧コイル7―1と低圧コイル7―2との間に高低圧コイル間の絶縁部材8が設置されている。図5は、高圧コイル7―1と低圧コイル7―2との一部の断面を示すものである。
【0016】
図3に示すように、短絡力が大きい場合、A相コイル1とC相コイル3との外側に、それぞれエポキシ絶縁板6が設置される。図4に示すように、エポキシ絶縁板6と該当相の低圧コイル7―2とは、対を成す挟持板として形成されるとともに結束バンドにより結束することによって、該当相の高圧コイル7―1を挟持して固定する。電気容量が小さい製品の短絡力が小さいので、この場合、A、C相のコイルの外側の挟持板を使用せず、バンドだけで補強すればよい。図4は、高圧コイル7―1と低圧コイル7―2との一部の断面を示すものである。
【0017】
本発明は、径方向短絡力及び軸方向短絡力のいずれに対しても、優れた抵抗効果を有している。
【0018】
1、径方向短絡力の抵抗について
従来の径方向短絡力に対する対策として、変圧器コイル導体自身の強度を増加させることや、補強構造(例えば絶縁筒、ステー)等の支持部材を追加することが用いられる。
【0019】
それに対して、本発明は、層間絶縁材料を硬化させることによって、低圧箔巻コイルを接着させて「構造的挟持板」として形成するように構成されている。低圧コイルがコイルの内側に位置するため、内径側で硬化して形成された低圧コイルを挟持板として形成し、コイルを挟持して固定することができるので、コイルの径方向の変形及び変位を防ぐことができる。また、低圧箔巻コイルが一体に硬化したため、低圧コイルは、電気的素子及び挟持板の役割を両立するように構成されている。それによって、従来構造に必要となるエポキシ筒を削減することができるとともに、エポキシ筒よりも遥かに高い強度を持たせることができる。
【0020】
A、C相のコイルの外側に位置する矩形の直線部において、挟持板として高圧コイルの外側と隣接しコイルの高さと一致する高強度絶縁板を追加する。該絶縁挟持板と該当する相における硬化して成形された低圧コイルとは、「対を成す挟持板」として形成され、コイルを挟持して固定することができるので、コイルの径方向の変形及び変位を防ぐことができる。「対を成す挟持板」で高圧及び低圧コイルを挟持するので、変圧器コイルの変形、変位及び損傷を防ぐことができる。
【0021】
挟持板及び絶縁部材の結束に用いられる汎用のPETバンドであるポリエステルバンドは、強度が高く、価格が安く、加工性に優れるので、異なる相の低圧コイル同士、または低圧コイルとエポキシ挟持板とにより、安定な「挟持板―挟持板」構造を容易に形成することができる。それにより、短絡が発生する高圧コイル及び低圧コイルをしっかり固定することができる。PETバンドの代わりに、その他の材料のものを使用してもよいが、PETバンドによる結束は、一般の梱包機による梱包方式で行われることができる。
【0022】
2、軸方向短絡力の抵抗について
PETバンドで変圧器の高圧コイル及び低圧コイルを一体に形成させ、「挟持板―挟持板」構造によりコイルを径方向に固定しながら、結束バンドで低圧コイル及び挟持板とともに、高圧コイルと低圧コイルとの軸方向における変位を制限できるようになった。このため、変圧器の軸方向における押付構造を削減することができ、構造を簡素化し、製造コストを低減させることができる。
【0023】
コイルの結束方法が全体として簡単且つ便利であるため、本発明により、アモルファス変圧器の耐短絡性に関わる問題を解決できるのみならず、構造が簡単で、変圧器の製造コストを大幅に低減させることができるので、大きな利益をもたらすことができる。
【0024】
以上の明細書に記載された内容は、本発明の具体的な実施形態に過ぎず、挙げられた各実施例が本発明の実質的な内容を限定するものではない。当業者が本明細書を閲読して上記具体的な実施形態に対する改良及び変更も、本発明の実質的な内容及び範囲に属する。
【符号の説明】
【0025】
1 A相コイル、2 B相コイル、3 C相コイル、4 U型絶縁板紙、5 PETバンド、6 エポキシ絶縁板、7―1 高圧コイル、7―2 低圧コイル、8 高低圧コイル間の絶縁部材
図1
図2
図3
図4
図5