(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マイクロコントローラは、前記第1温度情報が示す温度が所定の第1しきい値より高く、前記第1しきい値より高く定められた所定の第2しきい値より低い範囲において、前記第2しきい値において光量がゼロとなるように前記調光信号が指示する光量を実質的に線形に低下させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の点灯回路。
前記マイクロコントローラは、前記第1温度情報が示す温度が前記第2しきい値より高く定められた第3しきい値より高い範囲において、前記調光信号に前記第1温度情報を反映させないことを特徴とする請求項4に記載の点灯回路。
第2温度検出素子を含み、前記第2温度検出素子が示す温度が所定の第4しきい値より高いとき、前記調光電圧を低下させる高温シャットダウン回路をさらに備えることを特徴とする請求項1、2、4から6のいずれかに記載の点灯回路。
第3温度検出素子を含み、前記第3温度検出素子が示す温度が高いほど、前記調光電圧を低下させるハード温度ディレーティング回路をさらに備えることを特徴とする請求項1、3から9のいずれかに記載の点灯回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に記載の温度ディレーティング制御は、サーミスタをアナログ回路に組み込み、アナログ回路により、半導体光源に供給する電流の目標値を変化させるものであった。したがって温度と電流(光量)の関係(ディレーティング特性という)は、アナログ回路で実現しうる範囲に制約され、必ずしも、半導体光源や点灯回路を保護するために最適なディレーティング特性であったとはいえず、改善の余地があった。
【0007】
加えて、半導体光源の定格温度はデバイスごとに異なる。またヒートシンクや基板、筐体の形状が変更となると、同じ光量で点灯させたときの半導体光源の温度も異なる。したがって従来のアナログ回路による温度ディレーティング制御では、半導体光源のデバイスや周辺の構造が変更となると、ディレーティング回路を再設計する必要が生じ、膨大な時間とコストを要することとなる。
【0008】
従来のHIDランプやハロゲンランプ等の光源に関しても、定格温度が規定され、ディレーティング機能が必要となる。
【0009】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、光源に適した温度ディレーティング制御を実現可能な点灯回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、光源の点灯回路に関する。点灯回路は、第1温度検出素子を含み、温度を示す第1温度情報を生成する温度検出回路と、光源の光量を指示する光量指令を上位コントローラから受けるとともに、第1温度情報を受け、光量指令および第1温度情報にもとづく調光信号を出力するマイクロコントローラと、光源に電力を供給するスイッチングコンバータと、調光信号に応じた調光電圧を受け、光源に流れる電流が、調光電圧に応じた目標値に近づくように、スイッチングコンバータを制御する駆動回路と、を備える。
【0011】
この態様では、車両情報等にもとづいて灯具を統括的に制御する上位マイコンと、スイッチングコンバータの駆動回路の間に、マイクロコントローラが挿入される。市販されるマイクロコントローラが標準機能として具備するA/Dコンバータを利用し、第1温度検出素子からのアナログの第1温度情報をデジタル値に変換し、デジタル信号処理によって、調光信号を生成することにより、温度と調光信号の関係、つまり温度と光量の関係を任意の関数やテーブルにもとづいて設定することができる。これによりアナログ回路による温度ディレーティング制御のような制約を受けずに、ソフトウェアの変更のみで光源に適した温度ディレーティング制御が実現できる。
【0012】
マイクロコントローラは、第1温度情報が示す温度が所定の第1しきい値より高く、第1しきい値より高く定められた所定の第2しきい値より低い範囲において、第2しきい値において光量がゼロとなるように調光信号が指示する光量を実質的に線形に低下させてもよい。
この態様によれば、第1しきい値、第2しきい値および傾きの組み合わせを最適化することで、光源に適した温度ディレーティングが実現できる。
【0013】
マイクロコントローラは、第1温度情報が示す温度が第2しきい値より高く定められた第3しきい値より高い範囲において、調光信号に温度情報を反映させなくてもよい。
第3しきい値を、温度検出回路が正常動作するときに第1温度情報が取り得る範囲よりも高く定めることで、第1温度情報が示す温度が第3しきい値を超えた場合に、温度検出回路に異常が発生し、あるいは故障しているものと推定できる。したがって、この場合には第1温度情報にもとづく温度ディレーティング制御を停止することで、光源の点灯を維持できる。
【0014】
マイクロコントローラは、(i)第1温度情報が示す温度が所定の第1しきい値より高く、第1しきい値より高く定められた所定の第2しきい値より低い範囲において、第1温度情報が示す温度に応じて調光信号が指示する光量を低下させ、(ii)第1温度情報が示す温度が第2しきい値より高く定められた第3しきい値より高い範囲において、調光信号に第1温度情報を反映させなくてもよい。
【0015】
ある態様の点灯回路は、第2温度検出素子を含み、第2温度検出素子が示す温度が所定の第4しきい値より高いとき、調光電圧を低下させる高温シャットダウン回路をさらに備えてもよい。
これにより、マイクロコントローラによる温度ディレーティング制御と、高温シャットダウン回路による保護が2重で存在することとなるため、回路の信頼性を高めることができる。
【0016】
またマイクロコントローラの非動作状態において、駆動回路は、光源を調光信号に依存しない所定の光量で点灯させるように構成されてもよい。この場合に、マイクロコントローラによる温度ディレーティング制御が無効化されても、高温シャットダウン回路により、光源を保護することができる。
【0017】
第4しきい値は、ヒステリシスを有してもよい。これによりチャタリングを防止し、安定した制御が可能となる。
【0018】
調光信号は、目標となる光量に応じたデューティ比を有するようにパルス変調されてもよい。点灯回路は、調光信号を平滑化し、調光電圧を生成するフィルタ回路をさらに備えてもよい。高温シャットダウン回路は、フィルタ回路の入力信号の振幅を変化させることにより調光電圧を変化させてもよい。
マイクロコントローラによる温度ディレーティング制御は、調光信号のデューティ比を温度に応じて変化させることで実現される。そして高温シャットダウン回路により、フィルタ回路の入力信号(調光信号)の振幅を変化させることで、マイクロコントローラによる温度ディレーティング制御と、高温シャットダウン回路による保護を併存させることができ、信頼性を高めることができる。
【0019】
点灯回路は、フィルタ回路の前段に設けられ、調光信号の振幅をレベルシフトするレベルシフタをさらに備えてもよい。レベルシフタは、分圧回路を含んでもよい。高温シャットダウン回路は、分圧回路を構成する第1抵抗と並列に、直列接続される第2抵抗および第1スイッチを含み、第2温度検出素子が示す温度と第4しきい値の比較結果に応じてスイッチをオン、オフ制御してもよい。
この場合、分圧回路の分圧比は、第1スイッチのオン、オフに応じて変化する。したがって、温度と第4しきい値の比較結果に応じて、レベルシフタの出力パルスの振幅を変化させることができる。
【0020】
ある態様の点灯回路は、第3温度検出素子を含み、第3温度検出素子が示す温度が高いほど、調光電圧を低下させるハード温度ディレーティング回路をさらに備えてもよい。
このハード温度ディレーティング回路は、従来のアナログ回路による温度ディレーティングに相当するものであり、温度と光量の関係の自由度の観点において、マイクロコントローラによる温度ディレーティングには劣るが、補助的に用いることで、灯具の信頼性を高めることができる。
【0021】
マイクロコントローラは、その動作状態において第1レベル、その非動作状態において第2レベルとなる選択信号を出力するよう構成され、ハード温度ディレーティング回路は、選択信号を受け、選択信号が第1レベルのときオフ状態、選択信号が第2レベルのときオン状態となり、オン状態において、第3温度検出素子が示す温度が高いほど、調光電圧を低下させてもよい。
これによりマイクロコントローラが停止中は、ハード温度ディレーティング回路により回路を保護でき、マイクロコントローラが動作中は、ハード温度ディレーティング回路を無効化し、マイクロコントローラによる温度ディレーティングを採用して、最適な温度制御が実現できる。
【0022】
調光信号は、目標となる光量に応じたデューティ比を有するようにパルス変調されていてもよい。点灯回路は、調光信号を平滑化し、調光電圧を生成するフィルタ回路をさらに備えてもよい。ハード温度ディレーティング回路は、フィルタ回路の入力信号の振幅(電圧レベル)を変化させることにより調光電圧を変化させてもよい。
マイクロコントローラによる温度ディレーティング制御は、調光信号のデューティ比を温度に応じて変化させることで実現される。そしてハード温度ディレーティング回路により、フィルタ回路の入力振幅を変化させることで、マイクロコントローラによる温度ディレーティング制御と、ハード温度ディレーティング回路による保護を併存させることができ、信頼性を高めることができる。
【0023】
点灯回路は、フィルタ回路の前段に設けられ、調光信号の振幅をレベルシフトするレベルシフタをさらに備えてもよい。レベルシフタは、分圧回路を含んでもよい。第3温度検出素子であるサーミスタは、分圧回路を構成する第1抵抗と並列に設けられてもよい。
これにより、温度に応じてサーミスタの抵抗値が変化すると、分圧回路の分圧比が変化し、レベルシフタの出力パルスの振幅を変化させることができる。
【0024】
ハード温度ディレーティング回路は、第3温度検出素子であるサーミスタと直列接続される第2スイッチをさらに含んでもよい。
この場合、第2スイッチをオフすることで、ハード温度ディレーティング回路をオフ状態(無効化)とすることができる。
【0025】
駆動回路は、サーマルシャットダウン回路を含み、サーマルシャットダウン回路が検出する温度が所定の第6しきい値を超えると、スイッチングコンバータの制御を停止してもよい。
駆動回路による温度保護機能を併用することでさらに信頼性を高めることができる。
【0026】
第6しきい値は、ヒステリシスを有してもよい。これによりチャタリングを防止し、安定した制御が可能となる。
【0027】
マイクロコントローラは、それに供給される電源電圧を監視し、電源電圧が所定の第7しきい値より低くなると、調光信号が指示する光量を低下させてもよい。
スイッチングコンバータの入力電力が一定とすると、電源電圧の低下にともない、スイッチングコンバータの入力電流が増大する。入力電流は、スイッチングトランジスタ等に流れて損失となるため、回路の発熱量の増加の原因となる。したがって電源電圧が低いほど、光量を低下させることで、スイッチングコンバータの発熱と光源の発熱を低下させることができる。
【0028】
駆動回路は、スイッチングコンバータのスイッチングトランジスタに流れる電流を検出し、検出した電流が所定の第8しきい値より高くなると、光源に供給される電流が減少するようにスイッチングコンバータを制御してもよい。
駆動回路によりスイッチングコンバータの入力電流を監視することで、スイッチングコンバータの消費電力、ひいてはその温度を推定することができ、温度上昇を抑制するように、スイッチングコンバータを制御できる。
【0029】
調光信号は、目標となる光量に応じたデューティ比を有するようにパルス変調されており、点灯回路は、調光信号を平滑化し、調光電圧を生成するフィルタ回路をさらに備えてもよい。マイクロコントローラは、デューティ比と光量指令の関係を補正可能に構成されてもよい。
これにより、駆動回路との間に挿入されるハードウェアのばらつきをキャンセルすることができる。
【0030】
光源は、半導体光源であってもよい。点灯回路は、複数の半導体光源を駆動対象としてもよい。マイクロコントローラおよび第1温度検出素子は、複数の半導体光源に対して共通に設けられてもよい。スイッチングコンバータおよび駆動回路は、半導体光源ごとに設けられてもよい。マイクロコントローラは、複数の半導体光源それぞれの光量を指示する光量指令を上位コントローラから受け、複数の調光信号を出力するよう構成されてもよい。各駆動回路は、対応する調光信号に応じた調光電圧を受け、対応する半導体光源に流れる電流が、対応する調光電圧に応じた目標値に近づくように、対応するスイッチングコンバータを制御してもよい。
【0031】
本発明の別の態様は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、半導体光源と、上述のいずれかの点灯回路と、を備える。
【0032】
本発明のさらに別の態様の車両用灯具は、ハイビーム用の第1半導体光源と、第1半導体光源を点灯させる第1駆動モジュールと、冷却ファンと、を備える。第1駆動モジュールは、上述のいずれかの点灯回路を含む。第1駆動モジュールの点灯回路のマイクロコントローラは、冷却ファンの回転数を監視し、回転数が所定のしきい値を下回る状態が所定時間継続すると、第1半導体光源に対する調光信号が指示する光量を低下させてもよい。
この態様によれば、冷却ファンの回転数にもとづいて冷却ファンの故障を検出でき、冷却ファンの故障時には光量を低下させることで温度上昇を抑制できる。
【0033】
車両用灯具は、追加ロービーム用の第2半導体光源と、第2半導体光源を点灯させる第2駆動モジュールと、をさらに備えてもよい。マイクロコントローラは、回転数が所定のしきい値を下回る状態が所定時間継続すると、冷却ファンの故障を示唆する故障診断信号をアサートしてもよい。第2駆動モジュールは、故障診断信号のアサートに応答して、第2半導体光源の光量を低下させつつも発光を維持してもよい。
冷却ファンの故障時に、追加ロービーム用の第2半導体光源の光量の発光を維持することで、視認性が低下するのを防止できる。
【0034】
マイクロコントローラと上位コントローラは、LIN(Local Interconnect Network)を介して接続されており、マイクロコントローラは、LINを介して冷却ファンの故障を上位コントローラに通知してもよい。
これにより、上位コントローラは、冷却ファンの故障をユーザに通知したり、ログを残したり、といった処理が可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のある態様によれば、光源に適した温度ディレーティング制御を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0038】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0039】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0040】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る車両用灯具1のブロック図である。車両用灯具1は、半導体光源10および点灯回路20を備える。たとえば半導体光源10は、ひとつの、あるいは直列に接続された複数の発光素子12を含む。発光素子12は、LEDやLDである。本実施の形態では、発光素子12はLEDであるものとする。点灯回路20は、LDM(LED Driving Module)とも称される。
【0041】
点灯回路20のHi端子には、バッテリ2の電圧V
BAT(+Bとも称する)がヘッドライトスイッチ3を介して供給される。本実施の形態において半導体光源10はハイビーム用の光源であり、したがってヘッドライトスイッチ3を介して供給される電圧をHi(ハイビーム用)電圧V
Hiと称する。また点灯回路20のIG端子には、バッテリ2の電圧V
BATがイグニッションスイッチ4を介して供給される。IG端子に供給される電圧を、IG(イグニッション)電圧V
IGと称する。点灯回路20のGND端子は接地される。
【0042】
点灯回路20のインタフェース(I/F)端子には、上位コントローラであるECU(Electronic Control Unit)6からの制御指令(光量指令S1という)が入力され、点灯回路20は光量指令S1にもとづいて半導体光源10の光量を制御する。ECU6とマイクロコントローラ60は、たとえばLIN(Local Interconnect Network)規格に準拠したバスで接続される。
【0043】
続いて点灯回路20の構成を説明する。
点灯回路20は、電圧レギュレータ22、スイッチングコンバータ30、駆動IC40、温度検出回路50、マイクロコントローラ60、高温シャットダウン回路70、ハード温度ディレーティング回路80を備える。
【0044】
電圧レギュレータ22は、IG電圧V
IGを受け、5V程度に安定化された定電圧V
REGを生成する。温度検出回路50は、第1温度検出素子52を含み、温度を示す第1温度情報ST1を生成する。たとえば第1温度検出素子52としては、温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタが好適に利用される。温度検出回路50は、定電圧V
REGが供給される定電圧ラインと接地ラインの間に直列に設けられたサーミスタ52と抵抗54を含む。なお定電圧V
REGは、マイクロコントローラ60に内蔵される電圧レギュレータにより生成された電圧であってもよい。温度検出回路50は、サーミスタ52と抵抗54の接続点の電位を、温度に応じた電圧レベルを有する第1温度情報ST1として出力する。サーミスタ52の抵抗値は、正温特を有してもよいし、負温特を有してもよい。たとえば負温特のサーミスタ52を利用した場合、第1温度情報ST1の電圧レベルは、温度が上昇するほど大きくなる。なお第1温度検出素子52は、半導体光源10の直近に配置することが好ましい。
【0045】
マイクロコントローラ60は、市販される汎用のものが利用できる。マイクロコントローラ60の電源(VDD)端子には、定電圧V
REGが供給され、GNDピンは接地される。市販のマイクロコントローラ60は、あるピン(THピンという)に入力される電圧を、デジタル値に変換するA/Dコンバータ(不図示)を内蔵する。THピンには、温度検出回路50からの第1温度情報ST1の電圧が入力される。
【0046】
また、マイクロコントローラ60は、外部のコントローラとの汎用的なインタフェース回路を内蔵している。マイクロコントローラ60のひとつあるいは複数のピン(以下、CTRLピンという)は、通信線(バス)を介してECU6と接続され、相互にデータを送受信可能となっている。たとえばこのバスは、LIN(Local Interconnect Network)規格に準拠してもよい。マイクロコントローラ60のCTRLピンには、ECU6からの光量指令S1が入力される。
【0047】
マイクロコントローラ60は、光量指令S1および第1温度情報ST1にもとづいて調光信号S2を生成し、調光(DIM)ピンから出力する。調光信号S2の信号形式は特に限定されず、たとえば後述するような光量に応じたデューティ比を有するようパルス変調された信号であってもよいし、光量に応じた電圧レベルを有するアナログ電圧であってもよい。
【0048】
スイッチングコンバータ30は、バッテリ電圧(Hi電圧V
Hi)を受け、半導体光源10に電力を供給する。たとえばスイッチングコンバータ30は、昇圧DC/DCコンバータである。
【0049】
駆動IC(Integrated Circuit)40は、スイッチングコンバータ30を制御可能に構成された機能ICである。駆動IC40の内部の構成は特に限定されず、市販の、あるいはカスタム設計されたICを利用することができる。駆動IC40の電源(VDD)ピンには、Hi電圧V
Hiが供給され、そのGNDピンは接地される。
【0050】
駆動IC40の調光(DIM)ピンには、マイクロコントローラ60が生成する調光信号S2に応じた調光電圧V
DIMが入力される。なお
図1では、マイクロコントローラ60のDIMピンと駆動IC40のDIMピンは単一の配線で直接接続されるように示されるが、本発明はそれには限定されず、それらの間には、マイクロコントローラ60と駆動IC40のインタフェースの役割を果たすアナログ回路が挿入されてもよい。
【0051】
駆動IC40の電流検出(CS)ピンには、半導体光源10に流れるLED電流(駆動電流)I
LEDを示す電流検出信号S3が入力される。駆動IC40は、電流検出信号S3にもとづき、半導体光源10に流れる電流I
LEDが、DIMピンに入力される調光電圧V
DIMに応じた目標値I
REFに近づくように、スイッチングコンバータ30を制御する。本実施の形態では理解の容易化のため、目標値I
REFは調光電圧V
DIMに比例するものとする。駆動IC40のスイッチング出力(OUT)ピンからはスイッチングパルスS4が出力され、このスイッチングパルスS4に応じてスイッチングコンバータ30のスイッチングトランジスタ(不図示)がスイッチングする。たとえば調光電圧V
DIMが0Vのとき、駆動電流I
LEDの目標値I
REFは0Aであり、調光電圧V
DIMが増大するにしたがい、目標値L
REFは増加する。
【0052】
以上の構成により、マイクロコントローラ60が生成した調光信号S2に応じて、半導体光源10に流れる電流I
LED、ひいては半導体光源10の光量が制御される。
【0053】
すなわち、マイクロコントローラ60によって、第1温度検出素子52からのアナログの第1温度情報ST1をデジタル値に変換し、デジタル信号処理によって調光信号S2を生成することにより、温度と調光信号S2の関係、つまり温度と光量(電流)の関係を任意の関数やテーブルにもとづいて設定することができる。これによりアナログ回路による温度ディレーティング制御のような制約を受けずに、ソフトウェアの変更のみで半導体光源に適した温度ディレーティング制御(以下、ソフト温度ディレーティング制御ともいう)が実現できる。
【0054】
半導体光源10の定格温度はデバイスの種類、ベンダーごとに異なる。またヒートシンクや基板、筐体の形状が変更となると、同じ光量で点灯させたときの半導体光源10の温度も異なる。つまり従来のアナログ回路による温度ディレーティング制御では、半導体光源10のデバイスや周辺の構造が変更となると、ディレーティング回路を再設計する必要が生じ、膨大な時間とコストを要することとなる。これに対して、実施の形態に係る点灯回路20によれば、テーブルや関数をソフトウェア的に書き換えれば足りるため、点灯回路20を多くの品種に関して共通のプラットフォームとすることができる。
【0055】
続いて、マイクロコントローラ60による温度ディレーティング制御について詳細に説明する。
図2(a)は、温度ディレーティング特性の一例を示す図である。
【0056】
マイクロコントローラ60には、Ta<Tb<Tcである第1しきい値Ta1〜第3しきい値Ta3が定められる。マイクロコントローラ60には、第1温度情報ST1が示す温度T1に応じたディレーティング電流(許容最大電流)I
DRが定められる。ディレーティング電流I
DRは、温度T1が第1しきい値Taより低い範囲で最大値I
MAX(たとえば0.8A)をとり、第1しきい値Taより高く第2しきい値T2より低い範囲において、最大値I
MAXから最小値I
MINに向かって低下する。
【0057】
マイクロコントローラ60は、光量指令S1が指示する電流量(指令電流I
CMDとする)とディレーティング電流I
DRのうち小さい方にもとづいて、半導体光源10に供給すべき駆動電流I
LEDの電流量を決定し、調光信号S2を生成する。
図2(b)は、指令電流I
CMDと駆動電流I
LEDの関係を示す図である。
【0058】
より具体的には、T1<TaにおいてI
DR=I
MAX(=0.8A)であり、Ta<T1<Tbの範囲においてI
DRはI
MIN〜I
MAXの間で線形に減少し、Tb<T1の範囲においてI
DR=I
MINとなる。
図2(a)においてI
MIN=0A、Ta=100℃、Tb=130℃である。当然のことながら、I
MIN、Ta,Tbは、半導体光源10の定格電流や放熱設計を考慮して定めればよい。
【0059】
これにより、第1しきい値Ta、第2しきい値Tbおよび傾きの組み合わせをソフトウェア的に変更することで、半導体光源10に対して最適なソフト温度ディレーティングが実現できる。
【0060】
またマイクロコントローラ60は、第1温度情報ST1が示す温度T1が第3しきい値Tcより高い範囲において、調光信号S2に温度情報T1を反映させない、つまりソフト温度ディレーティングを停止する。これは、T1>Tcの範囲でI
DR=I
MAXとすることで実現できる。
【0061】
第3しきい値Tcは、温度検出回路50が正常動作するときに第1温度情報ST1が取り得る範囲よりも高く定められる。
図2(a)では、Tc=150℃である。これにより第1温度情報ST1が示す温度T1が第3しきい値Tcを超えた場合には、温度検出回路50に異常が発生し、あるいは故障しているものと推定できる。したがって、この場合には第1温度情報ST1にもとづくソフト温度ディレーティング制御を停止し、光量指令S1のみにもとづいて調光信号S2を生成することで、半導体光源10の点灯を維持できる。
【0062】
図1に戻る。点灯回路20は高温シャットダウン回路70を備えることを特徴のひとつとする。高温シャットダウン回路70は、第2温度検出素子(不図示)を含み、第2温度検出素子が示す温度T2が所定の第4しきい値Tdより高いとき、調光電圧V
DIMを低下させる。第2温度検出素子は、第1温度検出素子52と同様にサーミスタが利用される。本実施の形態では、高温シャットダウン回路70は、T2>Tdのときに、調光電圧V
DIMを低電位側にプルダウンし、電流I
LEDを減少させる。
【0063】
図3(a)は、高温シャットダウン回路70による温度ディレーティングの一例を示す図である。第4しきい値Tdはヒステリシスを有し、Td
LとTd
Hの2値で遷移する。これによりチャタリングが防止される。光量指令S1が指示する電流量がI
CMD=0.8Aであるとする。高温シャットダウン回路70は、T2<Tdの範囲において、調光電圧V
DIMは変化させず、したがってI
LED=0.8Aが維持される。高温シャットダウン回路70は、Td<T2の範囲では、I
LED=I
CMD×αとなるように、調光電圧V
DIMの電圧レベルを低下させる。αは所定の係数であり、たとえばα=0.2の場合、I
LED=0.16Aまで低下する。変形例において、高温シャットダウン回路70は、T2>Tdのときに、電流I
LEDがゼロとなるように、調光電圧V
DIMを0Vまで低下させてもよい。
【0064】
この構成によれば、マイクロコントローラ60によるソフト温度ディレーティング制御と、高温シャットダウン回路70による保護が2重で存在することとなるため、回路の信頼性を高めることができる。
【0065】
図1に戻る。マイクロコントローラ60は、動作状態と非動作状態が切りかえ可能である。具体的には、イグニッションスイッチ4がオフしているときはマイクロコントローラ60に電源が供給されないため非動作状態となる。マイクロコントローラ60の非動作状態において、調光電圧V
DIMは非ゼロの所定レベルとなる。このとき駆動IC40は、半導体光源10を調光信号S2に依存しない所定の光量で点灯させることができる。
【0066】
マイクロコントローラ60の動作、非動作状態が切りかえ可能なプラットフォームでは、マイクロコントローラ60が停止すると、ソフト温度ディレーティング制御が無効化されるところ、高温シャットダウン回路70を設けることで、マイクロコントローラ60の非動作状態においても、高温シャットダウン回路70により、半導体光源10を保護することができる。
【0067】
また点灯回路20は、ハード温度ディレーティング回路80を備えることを特徴のひとつとする。ハード温度ディレーティング回路80は、第3温度検出素子(不図示)を含み、第3温度検出素子が示す温度T3が高いほど、調光電圧V
DIMを低下させる(ハード温度ディレーティング制御という)。
【0068】
図3(b)は、ハード温度ディレーティング回路80によるハード温度ディレーティングの一例を示す図である。ハード温度ディレーティング制御を開始する温度(第5しきい値Te)は、たとえば75℃程度であってもよい。このハード温度ディレーティング回路80は、基本的な考え方は従来のアナログ回路による温度ディレーティングにもとづくものであり、温度T3と光量(電流)の関係の自由度の観点において、マイクロコントローラ60によるソフト温度ディレーティングには劣る。本実施の形態では、ハード温度ディレーティング回路80を、補助的に用いることで、灯具の信頼性を高めることができる。
【0069】
上述のようにマイクロコントローラ60は、動作、非動作が切りかえ可能である。マイクロコントローラ60は、その動作状態において第1レベル(たとえばハイレベル)、その非動作状態において第2レベル(たとえばローレベル)となる選択信号S5を、選択(SEL)ピンから出力する。ハード温度ディレーティング回路80は、選択信号S5を受け、選択信号S5が第1レベルのときオフ状態、選択信号S5が第2レベルのときオン状態となり、オン状態において、第3温度検出素子が示す温度T3が高いほど、調光電圧V
DIMを低下させる。ハード温度ディレーティング回路80はオフ状態において、調光電圧V
DIMに影響を及ぼさない。
【0070】
これによりマイクロコントローラ60が停止中は、ハード温度ディレーティング回路80により回路を保護でき、マイクロコントローラ60が動作中は、ハード温度ディレーティング回路80を無効化し、マイクロコントローラ60によるソフト温度ディレーティングを採用して、最適な温度制御が実現できる。
【0071】
駆動IC40は、サーマルシャットダウン回路42を含む。サーマルシャットダウン回路42が検出する温度T4が所定の第6しきい値Tfを超えると、駆動IC40は、スイッチングコンバータ30の制御を停止する。これにより、駆動電流I
LEDはゼロとなり、温度上昇が抑制される。第6しきい値Tfはヒステリシスを有してもよい。これによりチャタリングを防止し、安定した制御が可能となる。
【0072】
このように駆動IC40による温度保護機能を、ソフト温度ディレーティング制御、高温シャットダウン制御、ハード温度ディレーティング制御と併用することで、一層信頼性を高めることができる。
【0073】
以上が第1の実施の形態に係る点灯回路20の基本構成である。本発明は、
図1のブロック図および上述の説明から把握される様々な回路に及ぶものであるが、以下ではその具体的な構成例を説明する。
【0074】
図4は、第1の実施の形態に係る点灯回路20の構成例を示す回路図である。スイッチングコンバータ30は、昇圧DC/DCコンバータ(ブーストコンバータ)であり、入力電圧V
Hiを昇圧し、出力電圧V
OUTを生成する。スイッチングコンバータ30は、スイッチングトランジスタM1、インダクタL1、整流ダイオードD1、入力キャパシタC1、出力キャパシタC2を含む。スイッチングコンバータ30のトポロジーは一般的であるため説明は省略する。スイッチングコンバータ30は、半導体光源10のカソードに入力電圧V
Hiを、半導体光源10のアノードに出力電圧V
OUTを供給する。
【0075】
電流センス抵抗34は、駆動電流I
LEDを検出するために、駆動電流I
LEDの経路上に挿入される。電流センス抵抗34には、駆動電流I
LEDに比例する電圧降下V
CSが発生する。駆動IC40のCS+ピンとCS−ピンは、電流センス抵抗34の両端と接続され、電流検出信号S3が入力される。
【0076】
マイクロコントローラ60は、A/Dコンバータ62、ソフトディレーティング回路66、パルス変調器68を備える。A/Dコンバータ62は、THピンに入力される第1温度情報ST1をデジタル値S6に変換する。ソフトディレーティング回路66は、デジタル値S6が示す温度T1と光量指令S1にもとづいて、半導体光源10の光量、つまり電流量を指示するデジタルの電流指令値(デューティ指令値)S7を生成する。
【0077】
調光信号S2は、目標となる光量(電流量)に応じたデューティ比を有するようにパルス変調されるパルス信号である。マイクロコントローラ60のパルス変調器68は、電流指令値S7をパルス変調(たとえばパルス幅変調)し、調光信号S2に変換する。
図4において調光信号S2は負論理系の信号であり、ローレベル区間と周期の比であるオフデューティ比が駆動電流I
LEDの目標値を示す。調光信号S2の周波数は、数百Hz〜数kHzであり、一例として1kHzに設定される。
【0078】
ソフトディレーティング回路66およびパルス変調器68が、その他の回路と区別可能な回路ブロックではなく、マイクロコントローラ60に内蔵されるさまざまなハードウェア資源とソフトウェアプログラムの組み合わせにより実現される機能ブロックであることが理解される。
【0079】
たとえばソフトディレーティング回路66は、マイクロコントローラ60に内蔵される演算処理ユニット(プロセッサ)と、ROMに格納されるソフトウェアプログラムの組み合わせで構成することができる。
【0080】
またパルス変調器68はハードウェア的には、オシレータとカウンタの組み合わせで構成できる。あるいはパルス変調器68は、のこぎり波あるいはランプ波形を有するデジタル周期信号を発生する構成と、デジタル周期信号を電流指令値S7と比較し、スライスするデジタル比較器の組み合わせで構成することもできる。
【0081】
かくしてマイクロコントローラ60のDIMピンからは、パルス変調された調光信号S2が出力される。
【0082】
駆動IC40のDIMピンと、マイクロコントローラ60のDIMピンの間には、調光信号S2をアナログの調光電圧V
DIMに変換するための平滑化回路90が設けられる。平滑化回路90は、レベルシフタ92およびフィルタ回路94を含む。レベルシフタ92は、調光信号S2の振幅レベルを、駆動IC40のDIMピンの入力レンジに適合するようにレベルシフトするとともに、調光信号S2の論理レベルを必要に応じて反転する。上述のようにマイクロコントローラ60が負論理系で調光信号S2を生成する場合、平滑化回路90は調光信号S2を論理反転してフィルタ回路94に入力する。
【0083】
平滑化回路90に供給される電源電圧V
DDは、駆動IC40に内蔵される電圧レギュレータにより生成してもよい。電源電圧V
DDは、図示しない電圧源により生成してもよいが、IG電圧V
IGではなくHi電圧V
Hiを用いて生成することが好ましい。これにより、IG電圧V
IGが供給されていない状態においても、高温シャットダウン回路70やハード温度ディレーティング回路80を機能させることができる。平滑化回路90は、トランジスタQ11〜Q13、抵抗R11〜R14を含む。抵抗R11、R12は分圧回路96を形成する。レベルシフタ92を経た後の調光信号S2のハイレベル電圧は、V
DD×R12/(R11+R12)となり、ローレベル電圧は0Vとなる。なお、レベルシフタ92の構成は特に限定されない。
【0084】
フィルタ回路94は、レベルシフタ92を経た調光信号S8を平滑化し、アナログの調光電圧V
DIMに変換する。調光電圧V
DIMは、調光信号S2のデューティ比をβ%とするとき、以下の式(1)で与えられる。
V
DIM=β/100×V
DD×R12/(R11+R12) …(1)
フィルタ回路94は、キャパシタC11および抵抗R15を含むRCフィルタであってもよい。当業者によれば、平滑化回路90の構成にさまざまな変形例が存在しうることが理解されよう。
【0085】
ここで、電源電圧V
DDや抵抗R11、R12がばらついたり、設計変更されると、デューティ比βと調光電圧V
DIMの関係が変化する。そこでマイクロコントローラ60のパルス変調器68は、調光信号S2のデューティ比と、光量指令S1の関係を補正可能であることが望ましい。これにより、ハードウェア(平滑化回路90)のばらつきをキャンセルすることができ、調光信号S2のデューティ比βを0〜100%の範囲で変化させたときに、駆動電流I
LEDを最小値0A〜最大値の範囲で変化させることができる。
【0086】
続いて高温シャットダウン回路70を参照する。第2温度検出素子72であるサーミスタおよび抵抗74は、電源電圧V
DDと接地の間に直列に接続され、それらの接続点の電位V12が、温度T2を示す第2温度情報ST2となる。抵抗R21、R22は、電源電圧V
DDを分圧し、しきい値電圧V
THを生成する。このしきい値電圧V
THは、
図3(a)で示した第4しきい値Tdに対応する。電圧コンパレータ76は、電圧V12と電圧V
THを比較することにより、温度T2と第4しきい値Tdを比較する。T2>Tdのとき、電圧コンパレータ76の出力S9はハイレベル、T2<Tdのとき出力S9はローレベルとなる。
【0087】
図3(a)に示すように、第4しきい値Tdにはヒステリシスが設定される。そのために、抵抗R22と並列に、抵抗R32とトランジスタQ21が直列接続される。出力S9がハイレベルのときトランジスタQ21がオンし、しきい値電圧V
THが低下し、第4しきい値はTd
Lとなり、出力S9がローレベルのときトランジスタQ21がオフし、しきい値電圧V
THが上昇し、第4しきい値はTd
Hとなる。なおヒステリシスを設定する方法はこれには限定されず、公知技術を用いればよい。
【0088】
高温シャットダウン回路70は、フィルタ回路94に入力されるパルス電圧Vp、言い換えればレベルシフタ92の出力信号の振幅を変化させることにより調光電圧V
DIMを変化させる。このために、高温シャットダウン回路70は、分圧回路96を構成する抵抗R12と並列に、直列接続される第1スイッチM21および第1抵抗R24を含む。
【0089】
T2<Tdのとき、電圧コンパレータ76の出力はローレベルであり、第1スイッチ(トランジスタ)M21はオフである。したがって第1抵抗R24は、平滑化回路90には影響を与えない。T2>Tdとなると、電圧コンパレータ76の出力がハイレベルとなり、トランジスタM21がオンする。したがって第1抵抗R24は抵抗R12と並列に接続される。抵抗R12とR24の並列接続のインピーダンスをR12’とすれば、調光電圧V
DIMは、調光信号S2のデューティ比をβ%とするとき、β/100×V
DD×R12’/(R11+R12’)となる。つまりレベルシフタ92の出力段の分圧比が小さくなり、パルス電圧Vpの振幅が低下する。これにより、調光電圧V
DIMが低下し、高温シャットダウン機能が実現できる。
【0090】
続いてハード温度ディレーティング回路80を参照する。
ハード温度ディレーティング回路80は、高温シャットダウン回路70と同様に、フィルタ回路94の入力電圧Vpを変化させることにより調光電圧V
DIMを変化させる。このために、ハード温度ディレーティング回路80は、抵抗R12と並列に、直列接続される第3温度検出素子82であるサーミスタおよび第2スイッチM31を含む。
【0091】
スイッチ制御回路84は、選択信号S5がハイレベルのとき、つまりマイクロコントローラ60が動作中は、第2スイッチM31をオフする。これによりサーミスタ82は平滑化回路90には影響を与えない。つまりハード温度ディレーティング機能は無効化される。
【0092】
スイッチ制御回路84は、選択信号S5がローレベルのとき、つまりマイクロコントローラ60が停止中(非動作状態)は、第2スイッチM31をオンする。これによりサーミスタ82が、トランジスタR12と並列に接続される。これにより、サーミスタ82の抵抗値、つまり温度に応じて、分圧回路96の分圧比が変化し、温度が高くなるほど、フィルタ回路94の入力電圧Vpを低下させ、調光電圧V
DIMを低下させることができる。
【0093】
続いて
図4の点灯回路20の動作を説明する。はじめにマイクロコントローラ60によるソフト温度ディレーティング制御を説明する。
図5は、ソフト温度ディレーティング制御を示す波形図である。
図5には、温度T1、電流指令値(デューティ指令値)S7、調光信号S2の反転信号、調光電圧V
DIM、駆動電流I
LEDが示される。
図5では、光量指令S1が指示する電流量I
CMDに相当するデューティ比は75%である。温度T1が第1しきい値Taより低いとき、調光信号S2のデューティ比は、光量指令S1に応じて定まる75%である。温度T1が第1しきい値Taを超えると、温度T1の増加にともなって調光信号S2のデューティ比が低下し、温度T1が第2しきい値Tbに達すると、調光信号S2のデューティ比は0%となる。調光電圧V
DIMは、調光信号S2を平滑化した電圧であり、したがって調光信号S2のデューティ比に応じた電圧レベルを有する。駆動電流I
LEDは、調光電圧V
DIMの低下に応じて減少していく。
【0094】
続いて高温シャットダウン回路70による高温シャットダウン動作を説明する。
図6は、高温シャットダウン動作を示す波形図である。
図6には、温度T2、電圧コンパレータ76の出力、調光信号S2の反転信号、フィルタ回路94の入力電圧Vp、調光電圧V
DIM、駆動電流I
LEDを示す。
図6でも光量指令S1が指示する電流量I
CMDに相当するデューティ比は75%である。温度T2が第4しきい値Td
Hより低いとき、調光信号S2のデューティ比は、光量指令S1に応じて定まる75%であり、駆動電流I
LEDは、電流量I
CMDに維持される。温度T3が第4しきい値Td
Hを超えると信号S9がハイレベルとなり、第1抵抗R24と抵抗R12が並列接続され、分圧回路96の分圧比が低下する。これによりフィルタ回路94の入力パルスVpの振幅が低下する。これにより調光電圧V
DIMおよび駆動電流I
LEDが減少する(シャットダウン状態)。
【0095】
駆動電流I
LEDが減少すると発熱量が減り、温度T3が低下に転ずる。そして、温度T3が第4しきい値Td
Lを下回ると、電圧コンパレータ76の出力S9がローレベルとなり、フィルタ回路94の入力パルスVpの振幅がもとに戻り、調光電圧V
DIMおよび駆動電流I
LEDが増大し、シャットダウン状態から復帰する。
【0096】
続いてハード温度ディレーティング回路80によるハード温度ディレーティングを説明する。
図7は、ハード温度ディレーティング動作を示す波形図である。
図7には、温度T3、調光信号S2、フィルタ回路94の入力電圧Vpおよび調光電圧V
DIM、駆動電流I
LEDが示される。
【0097】
マイクロコントローラ60が非動作中に、第2スイッチM31がオンし、第3温度検出素子であるサーミスタ82が分圧回路96と接続され、ハード温度ディレーティング回路80がオン状態となる。マイクロコントローラ60の非動作状態においては、調光信号S2はパルスではなく一定レベル(ローレベル固定)となるため、フィルタ回路94の入力電圧Vpも非パルスの一定となる。具体的には、マイクロコントローラ60の非動作状態では、調光信号S2がローレベル、トランジスタQ2がオフ、トランジスタQ13がオン、トランジスタQ11がオンとなる。このときの調光電圧V
DIMは、以下の式(2)で与えられる。R12’は、抵抗R12とサーミスタ82の並列合成抵抗である。
V
DIM=Vp≒V
DD×R12’/(R11+R12’) …(2)
これはマイクロコントローラ60の動作状態において、調光信号S2のデューティ比が100%であることと等価である。温度T3が上昇すると、合成抵抗R12’のインピーダンスが低下し、調光電圧V
DIMが低下し、ひいては駆動電流I
LEDが減少する。これによりハード温度ディレーティングが実現できる。
【0098】
(第2の実施の形態)
図8は、第2の実施の形態に係る点灯回路20の回路図である。第1の実施の形態では、温度に応じて電流I
LEDを変化させる温度ディレーティングを説明したが、第2の実施の形態では、電源電圧(IG電圧やHi電圧)に応じて、電流I
LEDを変化させる電源電圧ディレーティングを説明する。当然のことながら電源電圧ディレーティングは単独で用いることも、温度ディレーティングと併用することができるが、
図8には、電源電圧ディレーティングに関連する構成のみを示す。
【0099】
マイクロコントローラ60は、それに供給される電源電圧、つまりIG電圧V
IGを監視し、電源電圧V
IGが所定の第7しきい値Vaより低くなると、調光信号S2が指示する光量を低下させる。
【0100】
電圧検出回路100は、抵抗102,104を含み、IG電圧V
IGを分圧し、マイクロコントローラ60のA/Dコンバータと接続されるひとつのピン(電圧センスVS)に入力する。マイクロコントローラ60に内蔵されるA/Dコンバータ(不図示)は、VSピンの電圧をデジタル値に変換する。マイクロコントローラ60は、IG電圧V
IGに応じたデジタル値にもとづいて、電圧V
IGが低下するほど、調光信号S2が指示する光量を低下させる。マイクロコントローラ60による電源電圧ディレーティングをソフト電源電圧ディレーティングと称する。
【0101】
図9は、調光信号S2が指示する電流量(光量)I
LEDと、電源電圧V
IGの関係の一例を示す図である。
【0102】
マイクロコントローラ60は、VSピンの電圧が示す電源電圧V
IGが第7しきい値Vaより高い範囲において、光量指令S1が指示する電流量I
CMD(たとえば0.8A)をそのまま駆動IC40に指示する。
【0103】
VSピンの電圧が示す電源電圧V
IGが第7しきい値電圧Vaより低くなると、マイクロコントローラ60は、電源電圧V
IGが低下するほど、調光信号S2が指示する電流量(光量)をI
CMDから低下させていく。なお電源電圧V
IGがある程度低くなるとマイクロコントローラ60が動作不能となる。この場合、上述したように調光電圧V
DIMが調光信号S2に依存しない所定電圧レベルとなり、駆動IC40は、所定量の駆動電流I
LEDを半導体光源10に供給する。
【0104】
スイッチングコンバータ30の入力電力が一定とすると、電源電圧V
IG(V
Hi)の低下にともない、スイッチングコンバータ30の入力電流I
L1が増大する。入力電流I
L1は、スイッチングトランジスタ(
図4のM1)等に流れて損失となるため、回路の発熱量の増加の原因となる。したがって電源電圧V
IGが低いほど、光量(駆動電流I
LED)を低下させることで、スイッチングコンバータ30の入力電力、ひいては入力電流I
L1が減少し、スイッチングコンバータ30の発熱と半導体光源10の発熱を低下させることができる。
【0105】
またIG電圧V
IGが低い状態は、その上流のバッテリ電圧V
BATが低下した状態であり、バッテリに異常が生じているか、あるいはその他の負荷が大きな電力を消費している状態と把握される。したがってIG電圧V
IGの低下にともない車両用灯具1の消費電力を低減することでシステムの信頼性を高めることができる。
【0106】
マイクロコントローラ60による電源電圧ディレーティングは、第1の実施の形態で説明したソフト温度ディレーティングと同様に、電源電圧V
IGと電流I
LEDの関係、すなわち、しきい値、カーブの形状、傾きなどのパラメータを、ソフトウェア的に任意に定義することができる。したがってこの点灯回路20によれば、半導体光源10やスイッチングコンバータ30に使用する部品、デバイスの特性に応じて最適なディレーティング制御を簡易に実現できる。
【0107】
図8に戻る。駆動IC40にも、電源電圧ディレーティング機能が備わっている。具体的には駆動IC40には、スイッチングコンバータ30の入力電流I
L1を示す電流検出信号S10が入力される。駆動IC40は、検出した電流I
L1が所定の第8しきい値Ibより高くなると、半導体光源10に供給される電流I
LEDが減少するようにスイッチングコンバータ30を制御する。入力電流I
M1は、電流検出信号S3が示す駆動電流I
LEDとは異なることに留意されたい。
【0108】
図10(a)、(b)は、駆動IC40による電源電圧ディレーティングを説明する図である。
図10(a)には電源電圧V
IGと駆動電流I
LEDの関係が示される。
図10(a)に示すように、V
IGに対するI
LEDの関係は、半導体光源10を構成する発光素子12の個数に応じて最適化することが望ましい。より具体的には、発光素子12のチップ数(個数)が小さい場合には、ディレーティング制御の傾きを小さくし、発光素子12のチップ数が増加するにしたがってディレーティング制御の傾きを大きくすることが好ましい。
図10(b)の(i)〜(iii)は、チップ数が2、3、4の場合を示す。駆動電流I
LEDが同じ条件では、発光素子12のチップ数が多い方が、半導体光源10全体の発熱量は大きくなる。またチップ数が多いほど、チップの実装密度が高くなり、局所的にジャンクション温度が上昇しやすい傾向がある。そこでチップ数が多いほどディレーティングの傾きを大きくすることで、最適な電源電圧ディレーティングが実現できる。
【0109】
なお、駆動IC40による電源電圧ディレーティングは、スイッチングコンバータ30の回路定数などに依存するものであり、入力電流I
LINを利用した間接的な電源電圧ディレーティングであるため、ディレーティング特性の自由度、精度の観点で、マイクロコントローラ60によるソフト電源電圧ディレーティングには劣る。しかしながらソフト電源電圧ディレーティングはマイクロコントローラ60の動作中のみ機能するのに対して、駆動IC40による電源電圧ディレーティングは常時機能するため、補助的に用いることで点灯回路20全体の信頼性を高めることができる。
【0110】
以上が第2の実施の形態に係る点灯回路20の基本構成である。本発明は、
図10のブロック図および上述の説明から把握される様々な回路に及ぶものであるが、以下ではその具体的な構成例を説明する。
【0111】
図11は、第2の実施の形態に係る点灯回路20の構成例を示す回路図である。
図4と同じ構成については説明を省略する。
【0112】
マイクロコントローラ60による電源電圧ディレーティング制御に関連して、マイクロコントローラ60は、A/Dコンバータ63、ソフトディレーティング回路66、パルス変調器68を備える。A/Dコンバータ63は、VSピンの電圧をデジタル値S11に変換する。ソフトディレーティング回路66は、デジタル値S11が示す電源電圧V
IGと光量指令S1にもとづいて、半導体光源10の光量、つまり電流量を指示するデジタルの電流指令値(デューティ指令値)S7を生成する。パルス変調器68は、電流指令値S7をパルス幅変調し、DIMピンから調光信号S2を出力する。マイクロコントローラ60による電源電圧ディレーティングは、IG電圧V
IGではなく、Hi電圧V
Hiにもとづいて直接行なってもよい。
【0113】
続いて駆動IC40による電源電圧ディレーティング制御を説明する。電流センスアンプ43は、駆動電流I
LEDを示す検出電圧V
CS1を接地基準の電圧に変換/増幅する。変調器44は、検出電圧V
CS1が調光電圧V
DIMに近づくようにデューティ比が調節されるパルス信号S11を生成する。ドライバ45は、パルス信号S11にもとづいてスイッチングコンバータ30のスイッチングトランジスタM1をスイッチングする。
【0114】
スイッチングコンバータ30は、入力電流I
L1の経路上、具体的にはスイッチングトランジスタM1のソースと接地ラインの間に設けられた電流センス抵抗R
CS2を備える。電流センス抵抗R
CS2には、スイッチングトランジスタM1のオン区間において入力電流I
L1(I
M1)が流れ、入力電流I
L1に比例した電圧降下V
CS2が生ずる。駆動IC40には、電圧降下V
CS2が、電流検出信号S10として入力される。コンパレータ46は、上述の第8しきい値Ibに対応する電圧Vbと検出信号V
CS2を比較し、V
CS2>Vbとなると、パルスバイパルスでスイッチングトランジスタM1を強制オフする。
【0115】
図10(b)は、駆動IC40による電源電圧ディレーティング制御を説明する波形図である。(i)は通常動作時の、(ii)は電源電圧V
IGが低下したときの波形を示す。理解の容易のため、点灯回路20の出力電力および変換効率が一定と仮定すると、入力電力も一定となる。いま点灯回路20の入力電力が一定の仮定のもと、入力電圧V
Hi(つまりV
IG)が十分に高いときには、(i)に示すように入力電流I
L1の平均は小さく、入力電圧V
Hi(つまりV
IG)が低下すると、(ii)に示すように入力電流I
L1の平均は大きくなる。つまりスイッチングトランジスタM1のオン区間に流れる電流I
M1のピークも増大する。
【0116】
電源電圧V
IGがさらに低下すると、入力電力を一定に保つために電流I
M1はさらに上昇しようとする。ところが、電流I
M1が第8しきい値Ibに達すると、スイッチングトランジスタM1が強制オフとなりオン時間が不足し、電流I
M1、ひいては入力電流I
L1が頭打ちとなる。これにより、電源電圧V
IG(V
Hi)が上昇するほど、点灯回路20の入力電力が低下するように制限がかかり、出力電力ひいては駆動電流I
LEDが減少する。以上の動作により
図10(a)に示す電源電圧ディレーティング制御が実現される。駆動IC40による電源電圧ディレーティングは、過電流保護回路あるいは電流制限回路として把握される。
【0117】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、第1あるいは第2の実施の形態に係る点灯回路を利用した車両用灯具1について説明する。
図12は、第3の実施の形態に係る車両用灯具1のブロック図である。
【0118】
この実施の形態において車両用灯具1は、ECU6、ハイビーム用の複数の半導体光源10_1〜10_N(Nは2以上の整数)、ハイビーム用の第1の駆動モジュール20A、追加ロービーム用の半導体光源10B、追加ロービーム用の第2の駆動モジュール20B、冷却ファン8を備える。なお車両用灯具1は、ロービーム用の光源およびその点灯回路をさらに備えるが、ここでは省略する。
【0119】
駆動モジュール20Aは、第1、第2の実施の形態に係る点灯回路20であってもよく、その基本構成は上述した通りである。駆動モジュール20Aは、複数の半導体光源10_1〜10_Nを駆動対象とする。マイクロコントローラ60および第1温度検出素子52は、複数の半導体光源10_1〜10_Nに対して共通に設けられる。スイッチングコンバータ30および駆動回路40は、半導体光源10ごとに設けられる。マイクロコントローラ60は、複数の半導体光源10_1〜10_Nそれぞれの光量を指示する光量指令S1_1〜S1_Nを上位コントローラであるECU6から受け、複数の調光信号S2_1〜S2_Nを出力する。
【0120】
図12の駆動モジュール20Aが、
図4の点灯回路20を含む場合、高温シャットダウン回路70のうち出力S9を生成する回路ブロックは、複数の半導体光源10に共通に設けられ、抵抗R24、トランジスタM21を半導体光源10ごとに設けられてもよい。
【0121】
各駆動回路40_i(1≦i≦N)は、対応する調光信号S2_iに応じた調光電圧V
DIMを受け、対応する半導体光源10_iに流れる電流が、対応する調光電圧V
DIMiに応じた目標値に近づくように、対応するスイッチングコンバータ30_iを制御する。
【0122】
冷却ファン8は、半導体光源10_1〜10_Nを冷却するために設けられる。冷却ファン8は具体的には半導体光源10と熱的に結合されるヒートシンクに対向して配置され、ヒートシンクを空冷する。冷却ファン8は、回転数に応じた周波数を有するFG(Frequency Generation)信号を出力する。マイクロコントローラ60は、このFG信号を受け、冷却ファン8の回転数をモニターする。
【0123】
マイクロコントローラ60は、冷却ファン8の回転数を監視し、回転数が所定のしきい値を下回る状態が所定時間継続すると、第1半導体光源10_1〜10_Nに対する調光信号S2〜S2_Nが指示する光量を低下させる。たとえば第1半導体光源10の光量を0%まで落としてもよい。所定時間は、冷却ファン8の起動後、回転数が安定化するまでに要する時間より長く定められ、たとえば数十秒〜数分、より具体的には120秒程度であってもよい。またしきい値は、定常的な冷却ファン8の回転数より低く定められ、たとえば1000〜2000rpm、より具体的には1500rpm程度(FG周波数で50Hz以下)であってもよい。
【0124】
これにより、冷却ファン8の故障を検出、推定することができ、冷却能力が低下した場合に、半導体光源10の発熱量を抑えることで、回路を保護することができる。
【0125】
またマイクロコントローラ60は、回転数が所定のしきい値を下回る状態が所定時間継続すると、冷却ファン8の故障を示唆する故障診断信号S12をアサート(たとえばハイレベル)する。追加ロービーム用の半導体光源10Bを駆動する第2の駆動モジュール20Bは、故障診断信号S12のアサートに応答して、第2半導体光源10Bの光量を低下させ、たとえば正常時の30%の光量で点灯させる。
【0126】
冷却ファン8の故障時に、半導体光源10の光量を低下させると、車両前方が暗くなる。そこで半導体光源10Bの光量をゼロまで低下させずに発光を維持することで視認性が低下するのを防止できる。
【0127】
また上述のようにマイクロコントローラ60とECU6は、LIN(Local Interconnect Network)を介して接続され、マイクロコントローラ60は、ECU6に対してLINを介して冷却ファン8の故障を通知する。これによりECU6、冷却ファン8の故障をユーザに通知したり、ログを残したり、といった処理が可能となる。
【0128】
車両には、左右2個の車両用灯具1が搭載される。ECU6は、一方の車両用灯具1において冷却ファン8の故障が検出されると、他方の車両用灯具1のマイクロコントローラ60に通知する。通知を受けたマイクロコントローラ60は、ハイビーム用の半導体光源10の光量は低下させず、追加ロービーム用の半導体光源10Bの光量を、故障側と同様に30%で点灯させる。
【0129】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0130】
(第1変形例)
半導体光源10としては、LEDの他に、LD(レーザダイオード)や有機EL(エレクトロルミネッセンス)などの半導体光源を用いてもよい。
【0131】
(第2変形例)
実施の形態では、スイッチングコンバータ30をブーストコンバータで構成したが本発明はそれに限定されない。たとえばスイッチングコンバータ30は、降圧スイッチングコンバータ(Buckコンバータ)とその前段に設けられたフライバック型あるいはフォワード型の昇降圧スイッチングコンバータを挿入してもよい。あるいはスイッチングコンバータ30は、CukコンバータやZetaコンバータであってもよい。
【0132】
(第3変形例)
ソフト温度ディレーティングの具体的なアルゴリズムは上述のそれには限定されない。たとえば
図2(a)のディレーティング特性を、温度に依存する係数K(0≦K≦1)として定義し、マイクロコントローラ60は、I
CMD×K=I
LEDとして電流量を決定し、調光信号S2を生成してもよい。
【0133】
(第4変形例)
第1の実施の形態において、マイクロコントローラ60の非動作時にハード温度ディレーティング回路80を停止させることとしたが、ハード温度ディレーティング回路80を常時動作させてもよい。この場合、温度T1に応じてフィルタ回路94の入力信号(入力パルス)Vpのデューティ比が変化し、温度T3に応じて、フィルタ回路94の入力信号(入力パルス)Vpの振幅が変化することとなり、ソフト温度ディレーティングとハード温度ディレーティングの両方が機能することとなる。
【0134】
(第5変形例)
実施の形態では、半導体光源を有する車両用灯具を説明したが、光源としてHIDランプやハロゲンランプを備える車両用灯具においても、本発明は有効である。たとえば従来のHIDランプを有する車両用灯具では、環境温度が高い場合に光源からの発熱で点灯回路内の電子部品が定格温度を超えるのを防止するために、温度ディレーティングや入力電圧ディレーティングを行なっており、このような車両用灯具にも本発明は適用可能である。この場合、スイッチングコンバータ30の構成が、HIDの駆動に適した形式に変更されることはいうまでもない。
【0135】
本明細書には、特許請求の範囲に記載したもののほか、以下の技術的思想が開示される。
1.前記調光信号は、目標となる光量に応じたデューティ比を有するようにパルス幅変調される。前記点灯回路は、前記調光信号を平滑化し、前記調光電圧を生成するフィルタ回路をさらに備える。前記ハード温度ディレーティング回路は、前記フィルタ回路の入力信号の振幅または電圧レベルを変化させることにより前記調光電圧を変化させる。
【0136】
2.前記点灯回路は、前記フィルタ回路の前段に設けられ、前記調光信号の振幅をレベルシフトするレベルシフタをさらに備える。前記レベルシフタは、分圧回路を含む。前記第3温度検出素子であるサーミスタは、前記分圧回路を構成する第1抵抗と並列に設けられる。
【0137】
3. 前記ハード温度ディレーティング回路は、前記第3温度検出素子と直列接続される第2スイッチをさらに含む。
【0138】
4. 前記駆動回路は、サーマルシャットダウン回路を含み、前記サーマルシャットダウン回路が検出する温度が所定の第6しきい値を超えると、前記スイッチングコンバータの制御を停止する。
5. 第6しきい値は、ヒステリシスを有する。
【0139】
6. 前記マイクロコントローラは、それに供給される電源電圧を監視し、前記電源電圧が所定の第7しきい値より低くなると、前記調光信号が指示する光量を低下させる。
【0140】
7. 駆動回路は、前記スイッチングコンバータのスイッチングトランジスタに流れる電流を検出し、検出した電流が所定の第8しきい値より高くなると、前記光源に供給される電流が減少するように前記スイッチングコンバータを制御する。
8. 前記調光信号は、目標となる光量に応じたデューティ比を有するようにパルス幅変調される。前記点灯回路は、前記調光信号を平滑化し、前記調光電圧を生成するフィルタ回路をさらに備える。前記マイクロコントローラは、前記デューティ比と前記光量指令の関係を補正可能に構成される。
【0141】
9. 前記光源は、半導体光源である。点灯回路は、複数の半導体光源を駆動対象とする。前記マイクロコントローラおよび前記第1温度検出素子は、前記複数の半導体光源に対して共通に設けられる。前記スイッチングコンバータおよび前記駆動回路は、前記半導体光源ごとに設けられる。前記マイクロコントローラは、前記複数の半導体光源それぞれの光量を指示する光量指令を前記上位コントローラから受け、複数の前記調光信号を出力するよう構成される。各駆動回路は、対応する調光信号に応じた調光電圧を受け、対応する半導体光源に流れる電流が、前記対応する調光電圧に応じた目標値に近づくように、対応するスイッチングコンバータを制御する。
【0142】
10. また、本明細書に開示される点灯回路は、以下のように把握できる。は、別の態様の半導体光源の点灯回路が開示される。点灯回路は、前記半導体光源の光量を指示する光量指令を上位コントローラから受け、前記光量指令に応じたデューティ比を有するパルス変調された調光信号を出力するマイクロコントローラと、前記調光信号の振幅をレベルシフトするレベルシフタと、前記レベルシフタの出力を平滑化し、調光電圧を生成するフィルタ回路と、前記半導体光源に電力を供給するスイッチングコンバータと、前記半導体光源に流れる電流が前記調光電圧に応じた目標値に近づくように、前記スイッチングコンバータを制御する駆動回路と、温度、前記点灯回路の所定経路の電流または前記点灯回路の所定ノードの電圧の少なくともひとつを検出し、検出値に応じて、前記レベルシフタの出力の振幅を変化させるディレーティング回路と、を備える。
【0143】
11.本明細書に開示される車両用灯具は、以下のように把握できる。車両用灯具は、ハイビーム用の第1半導体光源と、前記第1半導体光源を点灯させる第1駆動モジュールと、冷却ファンと、を備える。前記第1駆動モジュールは、上述の点灯回路を含む。第1駆動モジュールの点灯回路の前記マイクロコントローラは、前記冷却ファンの回転数を監視し、前記回転数が所定のしきい値を下回る状態が所定時間継続すると、前記第1半導体光源に対する前記調光信号が指示する光量を低下させる。
【0144】
12. 車両用灯具は、追加ロービーム用の第2半導体光源と、前記第2半導体光源を点灯させる第2駆動モジュールと、をさらに備える。前記マイクロコントローラは、前記回転数が所定のしきい値を下回る状態が所定時間継続すると、前記冷却ファンの故障を示唆する故障診断信号をアサートし、前記第2駆動モジュールは、前記故障診断信号のアサートに応答して、前記第2半導体光源の光量を低下させつつも発光を維持する。
【0145】
13. 前記マイクロコントローラと前記上位コントローラは、LIN(Local Interconnect Network)を介して接続される。前記マイクロコントローラは、前記LINを介して前記冷却ファンの故障を前記上位コントローラに通知する。
【0146】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。