特許第6545973号(P6545973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6545973
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】液体吐出装置および空気除去方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20190705BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20190705BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   B05C5/00 101
   B05C11/10
   B05D1/26 Z
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-25085(P2015-25085)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-147424(P2016-147424A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】391019120
【氏名又は名称】ノードソン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 栄哲
(72)【発明者】
【氏名】冨原 朗
(72)【発明者】
【氏名】林 太一
(72)【発明者】
【氏名】大野 誠
(72)【発明者】
【氏名】井部 豪士
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−187956(JP,A)
【文献】 特開2012−86563(JP,A)
【文献】 特開2005−169312(JP,A)
【文献】 特開2007−152317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 7/00−21/00
B05D 1/00− 7/26
B41J 2/01− 2/215
B01D 19/00−19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置であって、
液体を貯蔵する貯蔵槽と、
前記貯蔵槽へ供給する液体が収容された容器を着脱可能に装着する装着部と、
を備え、
前記容器の加圧及び減圧を複数回行うことにより、前記容器から前記貯蔵槽へ液体を供給し且つ前記貯蔵槽内の空気を前記貯蔵槽から前記容器へ移動させ
前記容器は、前記貯蔵槽と連通する液体出口と、空気源に連通する空気入口とを有し、
前記空気源から圧縮空気を前記容器へ供給することにより前記容器を加圧し、前記空気源から前記容器への前記圧縮空気の供給を停止することにより前記容器を減圧することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記容器は、プランジャーを有し、
前記プランジャーを前記容器内で往復移動させることにより前記容器の加圧及び減圧を行うことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記貯蔵槽は、前記装着部の近傍に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記容器に収容された材料を加熱して溶融し前記液体にする加熱器をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
液体を吐出するノズルと、
前記貯蔵槽と前記ノズルの間に配置され、前記貯蔵槽から前記ノズルへ液体を圧送する歯車ポンプと、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記容器が交換されたときに、前記容器の加圧及び減圧を複数回行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記貯蔵槽に貯蔵された液体の液面を検知する液面センサーをさらに備え、
前記液面センサーの検知信号に基づいて前記容器の加圧及び減圧の開始および停止を行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記容器の減圧は、前記容器内の液体を大気圧または負圧にすることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
液体吐出装置へ供給される液体から空気を除去する空気除去方法であって、
液体を貯蔵する貯蔵槽が設けられた前記液体吐出装置に、前記貯蔵槽と連通する液体出口及び空気源に連通する空気入口を有し、前記貯蔵槽へ供給する液体が収容された容器を着脱可能に装着する工程と、
前記容器を加圧して前記容器から前記貯蔵槽へ液体を供給する加圧工程と、前記容器を減圧して前記貯蔵槽内の空気を前記容器へ移動させる減圧工程とを交互に複数回繰り返す加圧及び減圧工程と、
を備え
前記加圧工程は、前記空気源から前記容器へ圧縮空気を供給して前記容器を加圧する工程を含み、
前記減圧工程は、前記空気源から前記容器への前記圧縮空気の供給を停止して前記容器を減圧する工程を含むことを特徴とする空気除去方法。
【請求項10】
前記加圧及び減圧工程は、前記容器内でプランジャーを往復移動させる工程を有することを特徴とする請求項に記載の空気除去方法。
【請求項11】
前記容器に収容された材料を加熱して溶融し前記液体にする工程をさらに備えたことを特徴とする請求項9又は10に記載の空気除去方法。
【請求項12】
前記容器が交換されたときに、前記加圧及び減圧工程を行うことを特徴とする請求項乃至11のいずれか一項に記載の空気除去方法。
【請求項13】
前記加圧及び減圧工程は、前記貯蔵槽に貯蔵された液体の液面を検知する液面センサーの検知信号に基づいて開始および停止されることを特徴とする請求項乃至12のいずれか一項に記載の空気除去方法。
【請求項14】
前記加圧及び減圧工程は、前記容器内の液体を大気圧または負圧にすることを特徴とする請求項乃至13のいずれか一項に記載の空気除去方法。
【請求項15】
前記加圧及び減圧工程は、前記加圧工程と前記減圧工程とを交互に所定回数繰り返すことを特徴とする請求項乃至14のいずれか一項に記載の空気除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出装置および液体吐出装置へ供給される液体から空気を除去する空気除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体収容容器が着脱可能な液体吐出装置がある(特許文献1)。液体収容容器には、液体吐出装置へ供給するための液体が充填されている。液体吐出装置へ液体を供給する際に、液体収容容器を液体吐出装置へ装着して液体収容容器内の液体を液体吐出装置へ供給する。しかし、液体収容容器を液体吐出装置へ装着する際に、液体吐出装置内の液体と液体収容容器内の液体との間に隙間が生じるため、液体に空気が混入することがある。
【0003】
一般に、液体収容容器の交換後、液体に混入した空気を除去するために空気が混入した液体を液体吐出装置のドレンバルブから排出する。空気が混入した液体を排出している間、液体吐出装置からの液体の吐出を停止する必要があるので、生産性が著しく低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4397227号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、液体吐出装置が液体を吐出している間でも容器の交換および液体からの空気除去が可能な液体吐出装置を提供する。また、本発明は、液体吐出装置へ供給される液体から空気を除去する空気除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決する為に本発明の一実施例の液体吐出装置は、
液体を貯蔵する貯蔵槽と、
前記貯蔵槽へ供給する液体が収容された容器を着脱可能に装着する装着部と、
を備え、
前記容器の加圧及び減圧を複数回行うことにより、前記容器から前記貯蔵槽へ液体を供給し且つ前記貯蔵槽内の空気を前記貯蔵槽から前記容器へ移動させ
前記容器は、前記貯蔵槽と連通する液体出口と、空気源に連通する空気入口とを有し、
前記空気源から圧縮空気を前記容器へ供給することにより前記容器を加圧し、前記空気源から前記容器への前記圧縮空気の供給を停止することにより前記容器を減圧することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の別の実施例の液体吐出装置へ供給される液体から空気を除去する空気除去方法は、
液体を貯蔵する貯蔵槽が設けられた前記液体吐出装置に、前記貯蔵槽と連通する液体出口及び空気源に連通する空気入口を有し、前記貯蔵槽へ供給する液体が収容された容器を着脱可能に装着する工程と、
前記容器を加圧して前記容器から前記貯蔵槽へ液体を供給する加圧工程と、前記容器を減圧して前記貯蔵槽内の空気を前記容器へ移動させる減圧工程とを交互に複数回繰り返す加圧及び減圧工程と、
を備え
前記加圧工程は、前記空気源から前記容器へ圧縮空気を供給して前記容器を加圧する工程を含み、
前記減圧工程は、前記空気源から前記容器への前記圧縮空気の供給を停止して前記容器を減圧する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液体吐出装置が液体を吐出している間でも容器の交換および液体からの空気除去が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例による液体吐出装置1を示す図。
図2】貯蔵槽内の空気を除去する工程を示す説明図。
図3】実施例1の空気除去動作を示すフローチャート。
図4】実施例2の空気除去動作を示すフローチャート。
図5】実施例3の空気除去動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0011】
(液体吐出装置)
図1は、実施例による液体吐出装置1を示す図である。液体吐出装置(ディスペンサー)1は、液体吐出装置本体(以下、本体という。)2、ノズル3及び空気源4からなる。本体2は、樹脂などの液体6を収容したシリンジ(液体収容容器)7が着脱可能に装着された装着部(接合部)8が設けられている。また、本体2は、制御装置5、貯蔵槽(液体室)9、歯車ポンプ(計量ポンプ)10、マニホールド11、加熱器12、13、モータ14及び三方電磁弁20が設けられている。貯蔵槽9は、装着部8の近傍に配置されている。貯蔵槽9は、シリンジ7から供給された液体6を貯蔵する。
【0012】
シリンジ7は、液体6を排出する液体出口16、圧縮空気が供給される空気入口17及び液体6の漏れを防止するためのプランジャー(シール部材)18が設けられている。なお、プランジャー18は、なくてもよい。空気入口17は、空気管19により三方電磁弁20に連通している。三方電磁弁20は、空気管21により空気源4に連通している。空気源4と三方電磁弁20との間の空気管21には、空気源4から三方電磁弁20へ供給される圧縮空気の圧力を調整するレギュレータ35が設けられている。レギュレータ35は、シリンジ7に掛けられる圧力を調整することができる。制御装置5は、三方電磁弁20を制御する。三方電磁弁20により空気管19が空気管21に連通すると、空気源4から圧縮空気がシリンジ7へ供給される。シリンジ7内の圧力が高くなり、シリンジ7内の液体6は、貯蔵槽9へ供給される。一方、三方電磁弁20により空気管19が空気管22に連通すると、シリンジ7内の空気が大気へ解放されてシリンジ7内の圧力が大気圧になる。これによって、液体6の供給が停止する。なお、制御装置5及び三方電磁弁20は、シリンジ7の装着部8から空気を除去する後述のエア抜き機構を構成する。
【0013】
シリンジ7は、加熱器12により加熱される。シリンジ7の温度は、温度検知器33により検知される。制御装置5は、温度検知器33の検知温度に基づいて、加熱器12の温度を制御する。制御装置5、加熱器12及び温度検知器33は、シリンジ7の温度を制御する温度制御機構を構成する。本実施例において、シリンジ7には、液体6が収容されている。しかし、シリンジ7には、常温で固体の材料が収容されていてもよい。加熱器12によりシリンジ7を加熱することによりシリンジ7に収容された固体材料を液体にしてもよい。すなわち、液体吐出装置1の本体2は、固体材料を溶融するメルターとして機能するようにしてもよい。シリンジ7に収容される固体の材料は、例えば、熱可塑性接着剤などの樹脂である。
【0014】
貯蔵槽9には、貯蔵槽9内の液体6の液面高さを検知するための液面センサー23が設けられている。貯蔵槽9の下流に歯車ポンプ10が配置されている。貯蔵槽9内の液体6は、液体通路24を通って歯車ポンプ10へ供給される。歯車ポンプ10は、モータ14により駆動される。歯車ポンプ10は、加熱器13により加熱される。歯車ポンプ10の温度は、温度検知器34により検知される。制御装置5は、温度検知器34の検知温度に基づいて、加熱器13の温度を制御する。制御装置5、加熱器13及び温度検知器34は、歯車ポンプ10の温度を制御する温度制御機構を構成する。歯車ポンプ10は、液体通路25によりマニホールド11へ接続されている。歯車ポンプ10は、液体6をマニホールド11へ定量圧送する。すなわち、歯車ポンプ10は、貯蔵槽9とノズル3の間に配置されて貯蔵槽9の液体6をノズル3へ圧送し、ノズル3から吐出させる。本体2には、前述したエア抜き機構及び温度制御機構が設けられている。
【0015】
貯蔵槽9の断面積は、液体6を貯蔵槽9から歯車ポンプ10へ送る液体通路24の断面積よりも大きい。貯蔵槽9は、製品へ液体6を連続的に吐出することができるように多くの量の液体6を貯蔵することができる。貯蔵槽9は、シリンジ7から歯車ポンプ10へ供給される液体6を一時的に保持するバッファーとしての機能を有している。なお、貯蔵槽9を歯車ポンプ10に直結してもよい。
【0016】
マニホールド11は、ホース26によりノズル3へ接続されている。マニホールド11は、フィルター27を有する。液体6は、フィルター27を通ってノズル3へ分配される。液体6は、ノズル3から製品へ吐出される。製品へ吐出されなかった液体6は、戻り通路28と通って歯車ポンプ10の上流へ戻される。制御装置5は、三方電磁弁20、加熱器12、加熱器13、及びモータ14を制御する。制御装置5は、液面センサー23からの検知信号を受信する。
【0017】
本実施例によれば、シリンジ7から供給される液体6を、本体2の内部に設置した貯蔵槽9に一旦貯めておき、貯蔵槽9の下流に設置された歯車ポンプ10により精密に計量した液体6をノズル3へ送ることができる。
【0018】
なお、歯車ポンプ10を設けなくてもよい。歯車ポンプ10を設けない場合、シリンジ7内の空気圧により液体6をノズル3から吐出する。シリンジ7に空気圧をかける構造は、簡易であるという利点がある。この場合、制御装置5は、三方電磁弁20を制御して、シリンジ7の空気圧を常に精密に制御する。また、歯車ポンプ10を設けない場合、ニードル弁を設け、ニードル弁を弁座に対して上下させることにより液体6を押し出すように構成してもよい。
【0019】
歯車ポンプ10により液体6をノズル3から定量吐出する利点は、シリンジ7に圧力をかけなくてもノズル3から液体を吐出することができるので、製品へ液体6を連続的又は断続的に吐出している最中にシリンジ7の交換を可能とすることができることである。
【0020】
(空気除去方法)
次に、図2を参照して、本実施例による空気除去方法(エア抜き機構)を説明する。図2は、貯蔵槽9内の空気を除去する工程を示す説明図である。なお、図2は、シリンジ7内のプランジャー18を省略した場合を示している。
【0021】
I.初期状態
図2(1)は、シリンジ7を交換した直後の状態を示す図である。貯蔵槽9内の液体6の液面高さは、HL以下である。液面高さHLは、貯蔵槽9の液体6が消費されて貯蔵槽9が空に近い状態を示す。使用者は、空になったシリンジ7を装着部8から取り外して、液体6が充填された新たなシリンジ7を装着部8に装着する。シリンジ7を交換した直後、シリンジ7内の液体6と貯蔵槽9内の液体6との間には、空気30が存在する。空気30が存在する状態で液体を吐出すると、空気30は、ノズル3から吐出されるおそれがある。そこで、本実施例では、液体6の間に存在する空気30を除去する。図2(1)に示す初期状態において、貯蔵槽9内の空気30及びシリンジ7内の空気31の圧力は、共に大気圧P1である。しかし、初期状態における貯蔵槽9内の空気30及びシリンジ7内の空気31の圧力は、大気圧P1でなくてもよい。大気圧P1より高い圧力(所定の正圧)又は大気圧P1より低い圧力(所定の負圧)に設定されてもよい。本実施例によれば、シリンジ7内の空気31の加圧及び減圧(圧抜き)を交互に複数回繰り返すことにより、貯蔵槽9内の空気30をシリンジ7の上部へ移動させる。以下、シリンジ7内の空気31の加圧及び減圧を説明する。
【0022】
II.加圧状態
図2(2)は、シリンジ7の加圧状態を示す図である。空気除去動作が開始されると、制御装置5は、三方電磁弁20を制御して、空気源4からシリンジ7へ例えば0.6MPaの圧縮空気を供給する。シリンジ7内の空気31は、0.6MPaの圧力P2(第一圧力)へ上昇し、シリンジ7内の液体6は、貯蔵槽9へ滴下すると同時に貯蔵槽9内の空気30も0.6MPaの圧力P2まで上昇する。本実施例においては、約10秒の所定時間T1の間、空気源4からシリンジ7へ圧縮空気を供給する。なお、所定時間T1は、約10秒に限定されるものではなく、液体6の粘度、温度などの条件に応じて適宜設定される。
【0023】
III.圧力解放直後
図2(3)は、シリンジ7の圧力を開放した直後の状態を示す図である。制御装置5は、三方電磁弁20を制御して、空気源4からシリンジ7への圧縮空気の供給を一旦停止し、シリンジ7内の圧力を大気へ解放させる。シリンジ7内の空気31が圧力P3bへ下がると同時に、貯蔵槽9内の空気30も圧力P3aへ下がる。このとき、シリンジ7内の圧力P3bは、貯蔵槽9内の圧力P3aよりも小さい(圧力P3b<圧力P3a)。シリンジ7内の液体6と貯蔵槽9内の液体6との間の空気30は、気泡32として液体出口16を通して圧力の低いシリンジ7へ移動する。空気30の移動は、液体6の粘度に依存するため、一度の圧力解放で全ての空気30が気泡32としてシリンジ7へ移動するものではない。
【0024】
IV.所定時間経過後
図2(4)は、シリンジ7の圧力解放後、所定時間T2が経過した状態を示す図である。シリンジ7の圧力解放後、所定時間T2経過すると、シリンジ7と貯蔵槽9の内部圧力は、圧力P4(第二圧力)の平衡状態に達する。圧力P4は、ほぼ大気圧P1である。本実施例において、所定時間T2は、約10秒である。なお、所定時間T2は、約10秒に限定されるものではなく、液体6の粘度、温度などの条件に応じて適宜設定される。図2(1)に示す初期状態Iとの違いは、シリンジ7内の液体6が貯蔵槽9へ移動し、シリンジ7内の液体6と貯蔵槽9内の液体6との間の空気30の一部がシリンジ7の上部へ移動している点である。この時点で、液面センサー23からの検知信号に基づいて、制御装置5は、貯蔵槽9内の液体6の液面高さがHH以上になったか否かを判断する。液面高さHHは、液面高さHLよりも高く、貯蔵槽9が液体6でほぼ満杯の状態を示す。貯蔵槽9内の液体6の液面高さがHH以上になっていない場合、貯蔵槽9内に空気30がまだ存在すると判断し、再度、加圧動作を行う。
【0025】
V.加圧状態
図2(5)は、2回目のシリンジ7の加圧状態を示す図である。シリンジ7内の空気31及び貯蔵槽9内の空気30の圧力は、共に圧力P5へ上昇する。圧力P5は、0.6MPaの圧力P2とほぼ同じである。同様に、シリンジ7内の圧力P5を大気圧へ解放すると、シリンジ7内の液体6と貯蔵槽9内の液体6との間の空気30は、気泡32として圧力の低いシリンジ7の上部へ移動する。2回目のシリンジ7の圧力解放後、所定時間T2が経過したときに、貯蔵槽9内の液体6の液面高さがHH以上になっていない場合、貯蔵槽9内に空気30がまだ存在すると判断し、再度、加圧及び減圧(圧力解放)の動作(II→III→IV)を繰り返す。
【0026】
VI.所定時間経過後
図2(6)は、複数回目のシリンジ7の圧力解放後、所定時間T2が経過した状態を示す図である。貯蔵槽9内の空気30が気泡32としてシリンジ7の上部へ移動を終えると、貯蔵槽9内の液体6の液面高さがHH以上になり、制御装置5は、空気除去動作を終了する。
【0027】
(空気除去動作のフロー)
次に、図3を参照して、本実施例による制御装置5のCPUによる空気除去動作を説明する。図3は、実施例1の空気除去動作を示すフローチャートである。制御装置5のCPUは、制御装置5に内蔵されたROMに格納されたプログラムに従って空気除去動作を実行する。
【0028】
操作者は、空のシリンジ7を装着部8から取り外して、液体6が充填された新たなシリンジ7を装着部8へ装着する。シリンジ7の交換後、操作者は、制御装置5のスイッチを押す。スイッチが押されると、制御装置5は、空気除去動作を開始する。制御装置5は、温度検知器33の検知温度に基づいて、シリンジ7内の材料が十分に加熱され溶融された状態になっていか否かを判断する(S1)。シリンジ7内の材料が十分に溶融された状態でなければ(S1でNO)、シリンジ7内の材料が液体6になるまで待機する。シリンジ7内の材料が十分に溶融されたと判断した場合(S1でYES)、制御装置5は、三方電磁弁20を制御して、空気源4からシリンジ7へ圧力P2(例えば0.6MPa)の圧縮空気を供給する(S2)。シリンジ7内の圧力が圧力P2へ上昇しシリンジ7内の空気31がプランジャー18を押すことにより、シリンジ7内の液体6が貯蔵槽9へ押し出される。貯蔵槽9内の液体6とシリンジ7から押し出され落下した液体6との間に残った空気30が圧縮され、貯蔵槽9内の空気30の圧力が圧力P2へ上昇すると、シリンジ7から液体6が押し出されなくなる。
【0029】
制御装置5は、空気源4からシリンジ7への圧縮空気の供給を開始してから所定時間T1が経過したか否かを判断する(S3)。所定時間T1が経過していない場合(S3でNO)、制御装置5は、シリンジ7への圧縮空気の供給を続ける。所定時間T1が経過した場合(S3でYES)、制御装置5は、三方電磁弁20を制御して、空気源4からシリンジ7への圧縮空気の供給を停止するとともに、シリンジ7内の空気圧力を解除(減圧)する(S4)。シリンジ7内の空気31は、大気へ解放される。シリンジ7内の空気31の圧力P3bは、貯蔵槽9内の空気30の圧力P3aよりも小さくなるので(P3b<P3a)、プランジャー18が上方へ引き上げられる。プランジャー18の液体6の側も、貯蔵槽9内の空気30の圧力P3aよりも小さいので、シリンジ7内の液体6と貯蔵槽9内の液体6との間の空気30は、気泡32として液体出口16を通して圧力の低いシリンジ7へ移動する。
【0030】
制御装置5は、空気源4からシリンジ7への圧縮空気の供給を停止してから所定時間T2が経過したか否かを判断する(S5)。所定時間T2が経過していない場合(S5でNO)、制御装置5は、シリンジ7の空気圧力の解除を続ける。所定時間T2が経過した場合(S5でYES)、制御装置5は、液面センサー23からの検知信号に基づいて、貯蔵槽9内の液体6の液面高さがHH以上になったか否かを判断する(S6)。貯蔵槽9内の液体6の液面高さがHH以上でない場合(S6でNO)、貯蔵槽9内に空気30がまだ残っているものと判断して、ステップS2へ戻り、ステップS2〜S6を繰り返す。貯蔵槽9内の液体6の液面高さがHH以上になった場合(S6でYES)、制御装置5は、貯蔵槽9が液体6で充填され且つ貯蔵槽9内の空気30の除去が完了したものと判断して、空気除去動作を終了する。
【0031】
本実施例によれば、シリンジ7の圧力を変化させることでシリンジ7の装着部8から液体6に混入した空気30をシリンジ7の上部(液体6の液面の上)へ導くことができる。よって、液体6に混入した空気30を排出するために、ノズル3から空気30が混入した液体6を排出する必要がなくなる。従って、シリンジ7を交換する際に、ノズル3から製品への液体6の吐出動作を停止することなく、液体6に混入した空気30を除去することができる。よって、液体6の連続塗布の最中にもシリンジ7の交換が可能となり、生産性を大きく向上することができる。また、ノズル3から液体6を吐出している最中にシリンジ7の圧力を変化させても、歯車ポンプ10が設けられているので、ノズル3からの液体6の吐出量に影響はない。
【実施例2】
【0032】
以下、実施例2を説明する。実施例2において、実施例1と同様の構造には同様の参照符号を付して説明を省略する。実施例2の液体吐出装置および空気除去方法は、実施例1と同様であるので説明を省略する。実施例2においては、貯蔵槽9内の液体6の液面高さがHL以下になったときに、空気除去動作を開始する。図4は、実施例2の空気除去動作を示すフローチャートである。制御装置5のCPUは、制御装置5に内蔵されたROMに格納されたプログラムに従って空気除去動作を実行する。
【0033】
制御装置5は、液体吐出装置1が動作しているときに、空気除去動作を開始する。ノズル3から液体6が吐出されるにつれて、貯蔵槽9内の液体6の液面の高さが低下する。制御装置5は、液面センサー23からの検知信号に基づいて、貯蔵槽9内の液体6の液面高さがHL以下になったか否かを判断する(S11)。貯蔵槽9内の液体6の液面高さがHL以下になった場合(S11でYES)、制御装置5は、三方電磁弁20を制御して、空気源4からシリンジ7へ圧力P2の圧縮空気を供給する(S2)。以下、実施例1と同様にして、シリンジ7の加圧および減圧を実行し(S2〜S5)、シリンジ7の液体6を貯蔵槽9へ供給しつつ貯蔵槽9内の空気30をシリンジ7の上部へ移動させる。貯蔵槽9内の液体6の液面高さがHH以上になった場合(S6でYES)、制御装置5は、貯蔵槽9が液体6で充填され且つ貯蔵槽9内の空気30の除去が完了したものと判断して、空気除去動作を終了する。
【0034】
一方、貯蔵槽9内の液体6の液面高さがHH以上でない場合(S6でNO)、制御装置5は、空気除去動作の開始から所定時間T3が経過したか否かを判断する(S12)。所定時間T3は、例えば約5分である。所定時間T3が経過していなければ(S12でNO)、ステップS2へ戻り、ステップS2〜S6を繰り返す。所定時間T3が経過した場合(S12でYES)、制御装置5は、シリンジ7が空であると判断して、シリンジ7の交換を促す表示を表示装置29に表示する(S13)。制御装置5は、空気除去動作を終了する。
【0035】
本実施例によれば、ノズル3から液体6を吐出している最中に、液体6の吐出を停止することなくシリンジ7から貯蔵槽9へ液体6を供給するとともに液体6から空気30を除去することができる。よって、生産性を向上することができる。また、シリンジ7が空になった時に、操作者へシリンジ7の交換を促す表示をすることができる。従って、液体切れにより液体吐出装置1が生産途中で停止することを防止できる。
【実施例3】
【0036】
以下、実施例3を説明する。実施例3において、実施例1と同様の構造には同様の参照符号を付して説明を省略する。実施例3においては、液面センサー23を液体吐出装置1から省略することができる。図5は、実施例3の空気除去動作を示すフローチャートである。制御装置5のCPUは、制御装置5に内蔵されたROMに格納されたプログラムに従って空気除去動作を実行する。
【0037】
実施例3によれば、予め設定された回数だけシリンジ7の加圧及び減圧を行うことにより、シリンジ7内の液体6を貯蔵槽9へ供給しつつ貯蔵槽9内の空気30を除去する。加圧及び減圧の回数は、液体6の種類、粘度、温度などに応じて予め設定されている。操作者は、シリンジ7を交換したとき、又は、貯蔵槽9内の液体6の量が空に近くなったと判断したときなどに、制御装置5のスイッチを入れる。制御装置5のスイッチが入ると、制御装置5は、空気除去動作を開始する。
【0038】
制御装置5は、三方電磁弁20を制御して、空気源4からシリンジ7へ圧力P2の圧縮空気を供給する(S2)。以下、実施例1と同様にして、シリンジ7の加圧および減圧を実行し(S2〜S5)、シリンジ7の液体6を貯蔵槽9へ供給しつつ貯蔵槽9内の空気30をシリンジ7の上部へ移動させる。制御装置5は、シリンジ7の加圧および減圧を所定回数実行したか否かを判断する(S21)。シリンジ7の加圧および減圧の実行回数が所定回数に達していない場合(S21でNO)、ステップS2へ戻り、ステップS2〜S5を繰り返す。これによって、貯蔵槽9を液体6で充填するとともに、貯蔵槽9内の空気30を除去する。シリンジ7の加圧および減圧の実行回数が所定回数に達した場合(S21でYES)、制御装置5は、空気除去動作を終了する。
【0039】
実施例3によれば、液面センサー23なしでシリンジ7の液体6を貯蔵槽9へ供給し、液体出口16を通して貯蔵槽9内の空気30をシリンジ7へ移動させて貯蔵槽9から空気30を除去することができる。
【0040】
なお、上記実施例においては、シリンジ7への圧縮空気の供給および停止によりシリンジ7を加圧及び減圧したが、本発明は、これに限定されるものではない。アクチュエータによりプランジャー18をシリンジ7内で往復移動させることによりシリンジ7を加圧及び減圧してもよい。減圧の際にシリンジ7内の圧力を負圧にすることができるのでより速く空気を除去することができる。
【0041】
本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、その特徴事項から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0042】
1 液体吐出装置
6 液体
7 シリンジ(容器)
8 装着部
9 貯蔵槽
図1
図2
図3
図4
図5