(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1半導体層と、第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層とを有する半導体層であって、前記第1半導体層は、前記発光層および前記第2半導体層を含む積層膜に囲まれた第1n側領域を有する半導体層と、
前記第2半導体層上に設けられたp側電極と、
前記p側電極上に設けられた絶縁膜と、
前記第1半導体層の側面に設けられた第1部分と、前記第1n側領域に設けられた第2部分と、前記絶縁膜を介して前記p側電極に重なり、前記第1部分と前記第2部分とを接続する第3部分と、を有するn側電極と、
前記絶縁膜上に設けられ、前記絶縁膜に形成された開口内に設けられたビアを介して前記p側電極と接続されたp側配線部と、
前記絶縁膜上に設けられ、前記n側電極と接続されたn側配線部と、
を備えた半導体発光装置。
前記第1半導体層における前記側面に続く第1面に設けられ、前記n側電極の前記第1部分と接続された透明電極をさらに備えた請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0008】
図1は、実施形態の半導体発光装置の模式断面図である。
図2(a)は、
図1に示す第1半導体層11と第2半導体層12の平面レイアウトの一例を示す模式平面図である。
図2(b)は、
図1に示すp側電極16とn側電極17の平面レイアウトの一例を示す模式平面図である。
【0009】
実施形態の半導体発光装置は、支持体100と、蛍光体層30と、支持体100と蛍光体層30との間に設けられた、半導体層15を含む積層体と、を有する。
【0010】
半導体層15は、第1半導体層11と、第2半導体層12と、第1半導体層11と第2半導体層12との間に設けられた発光層13と、を有する。
【0011】
第1半導体層11および第2半導体層12は、例えば、窒化ガリウムを含む。第1半導体層11は、例えば、下地バッファ層、n型GaN層を含む。第2半導体層12は、例えば、p型GaN層を含む。発光層13は、青、紫、青紫、紫外光などを発光する材料を含む。発光層13の発光ピーク波長は、例えば、430〜470nmである。
【0012】
第1半導体層11は、第1面11aと、第1面11aから続く側面11bを有する。第1面11aは粗面化され、複数の微小凹凸を持つ。
【0013】
第1半導体層11における第1面11aの反対側には、発光層13と第2半導体層12とを含む積層膜(メサ)14が設けられている。積層膜14は、第1面11aの反対側にメサ状に突出している。
【0014】
第1半導体層11における第1面11aの反対側には、積層膜14が設けられた部分と、第1n側領域11dと、第2n側領域11cと、が設けられている。第1n側領域11dおよび第2n側領域11cには、発光層13を含む積層膜14が設けられていない。
【0015】
図2(a)に示すように、第1n側領域11dは、例えば、半導体層15の面方向の中央部に島状(ドット状)に設けられている。第1n側領域11dの周囲は、積層膜14に連続して囲まれている。
【0016】
第2n側領域11cは、第1半導体層11の外周側に設けられ、
図1に示すように、第1半導体層11の側面11bと、積層膜14との間に設けられている。
図2に示すように、第2n側領域11cは、積層膜14の周囲を連続して囲んでいる。
【0017】
図1に示すように、積層膜14の第2半導体層12上に、p側電極16が設けられている。p側電極16は、第1n側領域11dおよび第2n側領域11cには設けられていない。
【0018】
第1半導体層11の側面11b、第1n側領域11d、および第2n側領域11cには、n側電極17が設けられている。n側電極17は、第1部分17aと、第2部分17cと、第3部分17eと、第4部分17bと、コンタクト部17dと、を有する。第1部分17a、第2部分17c、第3部分17e、第4部分17b、およびコンタクト部17dは、同じ材料で一体に設けられている。
【0019】
第1部分17aは、第1半導体層11の側面11bに設けられている。第1部分17aは、第1半導体層11のすべての側面11bに設けられ、側面11bの周囲を連続して囲んでいる。第1部分17aは、側面11bから続く第2n側領域11cの一部にも設けられている。第1部分17aは、側面11bおよび第2n側領域11cに接している。
【0020】
第1部分17aは、側面11bから第1面11aの反対側に突出している。その第1部分17aの突出した先端部には、第4部分17bが一体に設けられている。
図2(b)に示すように、第4部分17bは、p側電極16の外周に沿って設けられている。
【0021】
図1に示すように、積層膜14およびp側電極16は、絶縁膜18で覆われている。絶縁膜18は、例えばシリコン酸化膜などの無機絶縁膜である。
【0022】
第4部分17bは、絶縁膜18を介して、p側電極16の端部に重なっている。p側電極16の外周に沿って、例えば4本の第4部分17bが一体に設けられている。
【0023】
n側電極17と積層膜14との間、およびn側電極17とp側電極16との間には、絶縁膜18が設けられている。
【0024】
第1半導体層11の第1n側領域11dには、n側電極17の第2部分17cが設けられている。第2部分17cは、第1n側領域11dで第1半導体層11に接している。
【0025】
第1部分17aと第2部分17cは、第4部分17bおよび
図2(b)に示す第3部分17eを介して接続されている。
【0026】
図2(b)に示すように、第3部分17eは、4本の第4部分17bのうちの平行な2本の第4部分17bの間をつないで、p側電極16の上を横切っている。第3部分17eは、絶縁膜18を介してp側電極16に重なり、第1部分17aと第2部分17cとを接続している。
【0027】
4本の第4部分17bのうちの1本の第4部分17bには、そのの幅方向に突出したコンタクト部17dが設けられている。コンタクト部17dは、絶縁膜18を介してp側電極16に重なっている。
【0028】
n側電極17は、第1半導体層(例えばn型GaN層)11に対してオーミックコンタクトする第1膜(例えばアルミニウム膜)を含む。また、そのアルミニウム膜は、発光層13の発光光に対して反射性をもつ。さらに、n側電極17は、第1膜(アルミニウム膜)に対して積層された第2膜(例えば、チタン膜、プラチナ膜、金膜、ニッケル膜など)を含む。
【0029】
p側電極16は、第2半導体層(例えばp型GaN層)12に対してオーミックコンタクトする第1膜(例えば銀膜)を含む。また、その銀膜は、発光層13の発光光に対して反射性をもつ。さらに、p側電極16は、第1膜(銀膜)に対して積層された第2膜(例えば、チタン膜、プラチナ膜、金膜、ニッケル膜など)を含む。
【0030】
p側電極16とn側電極17を通じて発光層13に電流が供給され、発光層13は発光する。そして、発光層13から放射される光は、第1半導体層11の第1面11a側から蛍光体層30に入射する。
【0031】
発光層13を含む発光領域(p側電極16が設けられた領域)の面積は、発光層13を含まないn側領域(第1n側領域11dおよび第2n側領域11c)の面積よりも広い。これにより、広い発光面が得られ、光出力を高くできる。
【0032】
半導体層15における第1面11aの反対側(第2面側)には、支持体100が設けられている。半導体層15、p側電極16およびn側電極17を含む発光素子は、支持体100によって支持されている。
【0033】
半導体層15の第1面11a側には、半導体層15の放射光に所望の光学特性を与える光学層として、蛍光体層30が設けられている。蛍光体層30は、複数の粒子状の蛍光体31を含む。蛍光体31は、発光層13の放射光により励起され、その放射光とは異なる波長の光を放射する。
【0034】
複数の蛍光体31は、透明層32中に分散されている。透明層32は、発光層13の放射光および蛍光体31の放射光を透過する。ここで「透過」とは、透過率が100%であることに限らず、光の一部を吸収する場合も含む。
【0035】
半導体層15における第1面11aの反対側(第2面側)、p側電極16およびn側電極17は、絶縁膜18、19に覆われている。絶縁膜18、19は、例えば、シリコン酸化膜などの無機絶縁膜である。
【0036】
絶縁膜18、19上には、p側配線層21とn側配線層22とが互いに分離して設けられている。
【0037】
絶縁膜18、19には、
図7(a)に示すように、p側電極16に通じる複数の第1開口81と、n側電極17のコンタクト部17dに通じる第2開口82が形成される。なお、第1開口81は、より大きな1つの開口でも良い。
【0038】
p側配線層21は、絶縁膜18、19上および第1開口81の内部に設けられている。p側配線層21は、第1開口81内に設けられた複数のビア21aを介してp側電極16と電気的に接続されている。
【0039】
n側配線層22は、絶縁膜18、19上および第2開口82の内部に設けられている。n側配線層22は、第2開口82内に設けられたビア22aを介してn側電極17のコンタクト部17dと電気的に接続されている。
【0040】
p側配線層21のn側配線層22側の一部は、絶縁膜19を介して、n側電極17の第3部分17eに重なっている。p側配線層21の他の一部は、絶縁膜19を介して、n側電極17の第4部分17bに重なっている。n側配線層22は、絶縁膜18、19を介して、p側電極16に重なっている。
【0041】
p側配線層21及びn側配線層22は、例えば銅膜を含む。その銅膜は下地金属膜上に例えばめっき法で形成される。下地金属膜は、めっきのシード層となる銅膜と、発光層13の放射光に対して高い反射性を有する例えばアルミニウム膜を含む。また、下地金属膜は、銅膜とアルミニウム膜との間に設けられたチタン膜または窒化チタン膜を含む。チタン膜または窒化チタン膜は、バリア膜および密着膜として機能する。
【0042】
p側配線層21及びn側配線層22が、半導体層15の第2面側の領域の大部分を占めて絶縁膜18、19上に広がっている。したがって、半導体層15の第2面側の大部分の領域に、p側配線層21及びn側配線層22の下地に含まれるアルミニウム膜が広がって形成されている。これにより、蛍光体層30側に向かう光の量を増大できる。
【0043】
また、第1半導体層11の側面11bにも、アルミニウム膜を含むn側電極17が設けられている。発光層13から第1半導体層11の側面11bに向かった光は、n側電極17で反射し、外部に漏れない。このため、半導体発光装置の側面側からの光漏れによる色割れや色ムラを防ぐことができる。
【0044】
p側配線層21上にはp側金属ピラー23が設けられている。p側配線部41は、p側配線層21及びp側金属ピラー23を含む。n側配線層22上にはn側金属ピラー24が設けられている。n側配線部43は、n側配線層22及びn側金属ピラー24を含む。
【0045】
p側配線部41とn側配線部43との間には、絶縁層として樹脂層25が設けられている。樹脂層25は、p側配線部41の側面およびn側配線部43の側面に設けられている。樹脂層25は、p側金属ピラー23の側面とn側金属ピラー24の側面に接するように、p側金属ピラー23とn側金属ピラー24との間に充填されている。樹脂層25は、p側配線層21とn側配線層22との間に充填されている。
【0046】
樹脂層25は、第1半導体層11の側面11bに隣接する領域(チップ外周部)にも設けられ、n側電極17の第1部分17aを覆っている。
【0047】
p側金属ピラー23におけるp側配線層21とは反対側の端部(面)は、樹脂層25から露出し、実装基板等の外部回路と接続可能なp側外部端子23aとして機能する。n側金属ピラー24におけるn側配線層22とは反対側の端部(面)は、樹脂層25から露出し、実装基板等の外部回路と接続可能なn側外部端子24aとして機能する。p側外部端子23a及びn側外部端子24aは、例えば、はんだ、または導電性の接合材を介して、実装基板のパッドに接合される。
【0048】
p側外部端子23aとn側外部端子24aとの間隔は、絶縁膜19上におけるp側配線層21とn側配線層22との間隔よりも広い。p側外部端子23aとn側外部端子24aとの間隔は、実装時のはんだの広がりよりも大きくする。これにより、はんだを通じた、p側外部端子23aとn側外部端子24aとの間の短絡を防ぐことができる。
【0049】
これに対し、p側配線層21とn側配線層22との間隔は、プロセス上の限界まで狭くすることができる。このため、p側配線層21の面積の拡大が可能となる。これにより、発光層13の熱の放熱を促進できる。
【0050】
また、複数のビア21aを通じてp側配線層21がp側電極16と接する面積は、ビア22aを通じてn側配線層22がn側電極17と接する面積よりも広い。これにより、発光層13に流れる電流の分布を均一化できる。
【0051】
絶縁膜18、19上で広がるn側配線層22の面積は、第1n側領域11dおよび第2n側領域11cの面積よりも広くできる。また、n側配線層22の上に設けられるn側金属ピラー24のn側外部端子24aの面積を、第1n側領域11dおよび第2n側領域11cの面積よりも広くできる。これにより、信頼性の高い実装に十分なn側外部端子24aの面積を確保しつつ、第1n側領域11dおよび第2n側領域11cの面積を小さくすることが可能となる。すなわち、半導体層15における発光層13を含まない領域の面積を縮小し、発光層13を含む発光領域の面積を広げて光出力を向上させることが可能となる。
【0052】
第1半導体層11は、n側電極17及びn側配線層22を介してn側金属ピラー24と電気的に接続されている。第2半導体層12は、p側電極16及びp側配線層21を介してp側金属ピラー23と電気的に接続されている。
【0053】
p側金属ピラー23の厚さ(p側配線層21とp側外部端子23aとを結ぶ方向の厚さ)は、p側配線層21の厚さよりも厚い。n側金属ピラー24の厚さ(n側配線層22とn側外部端子24aとを結ぶ方向の厚さ)は、n側配線層22の厚さよりも厚い。p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25のそれぞれの厚さは、半導体層15よりも厚い。
【0054】
金属ピラー23、24のアスペクト比(平面サイズに対する厚みの比)は、1以上であっても良いし、1より小さくても良い。すなわち、金属ピラー23、24は、その平面サイズより厚くても良いし、薄くても良い。
【0055】
p側配線層21、n側配線層22、p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25を含む支持体100の厚さは、半導体層15、p側電極16およびn側電極17を含む発光素子(LEDチップ)の厚さよりも厚い。
【0056】
半導体層15は、基板上にエピタキシャル成長法により形成される。基板は支持体100を形成した後に除去され、半導体層15は第1面11a側に基板を含まない。半導体層15は、剛直な板状の基板にではなく、金属ピラー23、24と樹脂層25との複合体からなる支持体100によって支持されている。
【0057】
p側配線部41及びn側配線部43の材料として、例えば、銅、金、ニッケル、銀などを用いることができる。これらのうち、銅を用いると、良好な熱伝導性、高いマイグレーション耐性および絶縁材料に対する密着性を向上させることができる。
【0058】
樹脂層25は、p側金属ピラー23およびn側金属ピラー24を補強する。樹脂層25は、実装基板と熱膨張率が同じもしくは近いものを用いるのが望ましい。そのような樹脂層25として、例えば、エポキシ樹脂を主に含む樹脂、シリコーン樹脂を主に含む樹脂、フッ素樹脂を主に含む樹脂を挙げることができる。
【0059】
また、樹脂層25におけるベースとなる樹脂に光吸収剤、光反射剤、光散乱剤などが含まれ、樹脂層25は発光層13の光に対して遮光性または反射性を有する。これにより、支持体100の側面及び実装面側からの光漏れを抑制することができる。
【0060】
半導体発光装置の実装時の熱サイクルにより、p側外部端子23aおよびn側外部端子24aを実装基板のパッドに接合させるはんだ等に起因する応力が半導体層15に加わる。p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25は、その応力を吸収し緩和する。特に、半導体層15よりも柔軟な樹脂層25を支持体100の一部として用いることで、応力緩和効果を高めることができる。
【0061】
半導体層15の形成(成長)に用いた基板は、半導体層15から除去される。これにより、半導体発光装置は低背化される。また、半導体層15における基板が除去された第1面11aに微小凹凸を形成することができ、光取り出し効率の向上を図れる。例えば、アルカリ系溶液を使ったウェットエッチング、またはドライエッチングにより微小凹凸が形成され、半導体層15の光取り出し側に粗面(第1面11a)が形成される。この粗面により、全反射成分を減らして、光取り出し効率を向上できる。
【0062】
第1面11aを粗面化した後、第1面11a上に絶縁膜51を介して蛍光体層30が形成される。絶縁膜51は、半導体層15と蛍光体層30との密着性を高める密着層として機能し、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜である。
【0063】
蛍光体層30は、透明層32中に複数の粒子状の蛍光体31が分散された構造を有する。透明層32は、例えばシリコーン樹脂を主に含む透明樹脂層である。
【0064】
蛍光体層30は、第1面11aからチップ外周部まで広がっている。チップ外周部において、樹脂層25と蛍光体層30との間、およびn側電極17と蛍光体層30との間には、密着膜として機能する絶縁膜18が設けられている。
【0065】
蛍光体層30は、半導体層15の第2面側、金属ピラー23、24の周囲、および支持体100の側面にまわりこんで形成されていない。蛍光体層30の側面と、支持体100の側面(樹脂層25の側面)とが揃っている。
【0066】
すなわち、実施形態の半導体発光装置は、チップサイズパッケージ構造の非常に小型の半導体発光装置である。このため、例えば照明用灯具などへの適用に際して、灯具デザインの自由度が高まる。
【0067】
光を外部に取り出さない実装面側には蛍光体層30が無駄に形成されず、コスト低減が図れる。第2面側に広がるp側配線層21、n側配線層22、および厚い金属ピラー23、24を介して、発光層13の熱を実装基板側に放散させることができ、小型でありながらも放熱性に優れている。
【0068】
一般的なフリップチップ実装では、LEDチップを実装基板にバンプなどを介して実装した後に、チップ全体を覆うように蛍光体層が形成される。あるいは、バンプ間に樹脂がアンダーフィルされる。
【0069】
これに対して実施形態によれば、実装前の状態で、p側金属ピラー23の周囲及びn側金属ピラー24の周囲には、蛍光体層30と異なる樹脂層25が設けられ、実装面側に応力緩和に適した特性を与えることができる。また、実装面側にすでに樹脂層25が設けられているため、実装後のアンダーフィルが不要となる。
【0070】
第1面(粗面)11a側には、光取り出し効率、色変換効率、配光特性などを優先した設計の光学層が設けられ、実装面側には、実装時の応力緩和や、基板に代わる支持体としての特性を優先した層が設けられる。例えば、樹脂層25には、シリカ粒子などのフィラーを高密度充填し、支持体として適切な硬さに調整することができる。
【0071】
発光層13から第1面11a側に放射された光は蛍光体層30に入射し、一部の光は蛍光体31を励起し、発光層13の光と、蛍光体31の光との混合光として例えば白色光が擬似的に得られる。
【0072】
ここで、第1面11a上に基板があると、蛍光体層30に入射せずに、基板の側面から外部に漏れる光が生じる。すなわち、基板の側面から発光層13の光の色みの強い光が漏れ、蛍光体層30を上面から見た場合に、外縁側に青色光のリングが見える現象など、色割れや色ムラの原因になり得る。
【0073】
これに対して、実施形態によれば、第1面11aと蛍光体層30との間には基板がないため、基板側面から発光層13の光の色みが強い光が漏れることによる色割れや色ムラを防ぐことができる。
【0074】
また、実施形態によれば、n側電極17が第1半導体層11の側面11bに接する面積は、n側電極17が第1半導体層11の第2面側で第1n側領域11dおよび第2n側領域11cに接する面積よりも広い。第1半導体層11の第2面側で第1半導体層11に接するn側電極17の面積を制限することで、相対的に発光層13を含む積層膜14およびその積層膜14に接して設けられたp側電極16が第2面側で広がる面積(発光領域)を拡大できる。この発光領域の拡大は、半導体発光装置の光束を上げる。
【0075】
第1半導体層11の側面11bのみでn側電極17と第1半導体層11とを接触させると、発光層13の面方向の中央付近に効率的に電流を流すことが難しくなる場合がある。
【0076】
実施形態によれば、第2面側の中央付近においても、n側電極17を第1半導体層11の第1n側領域11dと接触させているため、電流を発光層13に均一に流すことができる。
【0077】
したがって、実施形態によれば、発光領域を拡大しつつも、電流の均一分布を実現し、大光束で均一発光が可能な半導体発光装置を提供することができる。
【0078】
第1n側領域11dに設けたn側電極17の第2部分17cには、n側配線層22とのコンタクト部を設けていない。そのため、第2部分17cの幅および面積の拡大を抑え、相対的に発光層13およびp側電極16が設けられる発光領域の面積を拡大できる。
【0079】
n側電極17とn側配線層22とのコンタクト部17dは、絶縁膜18を介してp側電極16に重なっている。コンタクト部17dは、第1半導体層11の第2面に接していない。そのため、p側電極16の面積はコンタクト部17dによって制限されずに、発光領域の拡大が可能となる。
【0080】
n側電極17の各部分(第1部分17a、第2部分17c、第3部分17e、第4部分17b、およびコンタクト部17d)は、一体につながっている。したがって、n側配線層22とn側電極17とは1カ所でコンタクトさせればよい。n側電極17の各部分のそれぞれにn側配線層22をコンタクトさせる必要がない。
【0081】
第1部分17aと第3部分17e、および第1部分17aとコンタクト部17dとをつなぐ第4部分17bは、絶縁膜18を介してp側電極16の端部に重なっている。したがって、p側電極16の面積拡大を妨げずに、第4部分17bの線幅を拡大し、n側電極17全体の抵抗を下げることができる。この結果、発光層13に供給される電流効率を上げ、半導体発光装置の大光束且つ均一発光を可能にする。
【0082】
図3(a)、(b)および(c)に示すように、第1n側領域11dおよびn側電極17の第2部分17cは、それぞれ複数設けてもよい。半導体層15の外周側の第4部分17bと、第2部分17cとをつなぐ第3部分17eも複数本設けられる。
【0083】
第1n側領域11dおよびn側電極17の第2部分17cを複数設けることで、電流を半導体層15の面方向に、より均一に分散させることができる。
【0084】
また、
図3(c)に示すように、第3部分17eは、第2部分17cで交差するように格子状に形成してもよい。
【0085】
次に、
図4(a)〜
図10を参照して、実施形態の半導体発光装置の製造方法について説明する。
【0086】
図4(a)に示すように、例えば、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法により、基板10の主面上に、第1の半導体層11、発光層13および第2の半導体層12が順にエピタキシャル成長される。
【0087】
基板10は、例えばシリコン基板である。または、基板10はサファイア基板であってもよい。半導体層15は、例えば、窒化ガリウム(GaN)を含む窒化物半導体層である。
【0088】
第1の半導体層11は、例えば、基板10の主面上に設けられたバッファ層と、バッファ層上に設けられたn型GaN層とを有する。第2の半導体層12は、例えば、p型GaN層を有する。発光層13は、例えば、MQW(Multiple Quantum well)構造を有する。
【0089】
第2半導体層12上には、
図4(b)に示すように、p側電極16が選択的に形成される。
【0090】
その後、例えば、図示しないマスクを用いたRIE(Reactive Ion Etching)法により、第2の半導体層12及び発光層13を選択的にエッチングして除去し、
図4(c)に示すように、第1半導体層11を選択的に露出させる。
【0091】
第2半導体層12および発光層13を含む積層膜(メサ)14、およびp側電極16で囲まれた領域に、第1n側領域11dが露出する。
【0092】
次に、
図5(a)に示すように、第1半導体層11を選択的に除去し、溝61を形成する。基板10の主面上で、溝61によって半導体層15は複数に分離される。溝61は、ウェーハ状の基板10上に例えば格子状パターンで形成される。
【0093】
溝61は、半導体層15を貫通し、基板10に達する。さらに、基板10の主面も少しエッチングされ、溝61の底が基板10と第1半導体層11との界面よりも下方に後退する。
【0094】
次に、
図5(b)に表すように、基板10上の構造体を覆うように絶縁膜18を形成する。その絶縁膜18には、例えば、レジストマスクを用いたエッチングにより、選択的に開口が形成される。その開口からは、第1半導体層11の側面11b、および第1n側領域11dが露出する。また、第1半導体層11の側面11bと、積層膜14との間に設けられた第1半導体層11の第2n側領域11cの一部も露出する。
【0095】
p側電極16の上面、p側電極16の側面、および積層膜14の側面は、絶縁膜18で覆われている。溝61の底面も絶縁膜18で覆われている。
【0096】
第1半導体層11の側面11bと、積層膜14の側面とは揃っていない。第1半導体層11の側面11bと、積層膜14の側面との間に段差があることで、積層膜14の側面を覆う絶縁膜18を残しつつ、第1半導体層11の側面11bを容易に露出させることができる。
【0097】
図6(a)に示すように、絶縁膜18上には選択的にレジスト膜62が形成され、その後、レジスト膜62上、およびレジスト膜62で覆われていない絶縁膜18上にn側電極17が形成される。
【0098】
n側電極17は、第1半導体層11の側面11bに接して形成される。さらに、n側電極17は、第1n側領域11dおよび第2n側領域11cに形成される。
【0099】
n側電極17を形成した後、レジスト膜62を除去する。レジスト膜62を覆っているn側電極17は、レジスト膜62とともに除去される(リフトオフされる)。
【0100】
図6(b)に示すように、n側電極17の第1部分17a、第2部分17c、第3部分17e(
図2(b)に示す)、第4部分17b、およびコンタクト部17dが残される。
【0101】
n側電極17上および絶縁膜18上には、
図7(a)に示すように、絶縁膜19が形成される。絶縁膜19には、n側電極17のコンタクト部17dを露出させる開口82が形成される。p側電極16上の絶縁膜18、19には、p側電極16を露出させる複数の開口81が形成される。
【0102】
次に、図示しないレジストマスクを用いた電解銅めっき法により、
図7(b)に示すように、絶縁膜19上に、p側配線層21およびn側配線層22を形成する。
【0103】
p側配線層21は、開口81内にも形成され、p側電極16と電気的に接続される。n側配線層22は、開口82内にも形成され、n側電極17のコンタクト部17dと電気的に接続される。
【0104】
次に、図示しないレジストマスクを用いて、p側配線層21及びn側配線層22をシード層として用いた電解銅めっき法により、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24を形成する。
【0105】
p側金属ピラー23は、p側配線層21上に形成される。p側配線層21とp側金属ピラー23とは同じ銅材料で一体化される。n側金属ピラー24は、n側配線層22上に形成される。n側配線層22とn側金属ピラー24とは同じ銅材料で一体化される。
【0106】
次に、
図7(b)に示す構造体の上に、
図8に示す樹脂層25を形成する。樹脂層25は、p側配線層21およびp側金属ピラー23を含むp側配線部41、およびn側配線層22およびn側金属ピラー24を含むn側配線部43を覆う。
【0107】
また、樹脂層25は、チップ外周部にも形成され、絶縁膜19を介して、n側電極17の第1部分17aを覆う。
【0108】
樹脂層25は、p側配線部41及びn側配線部43とともに支持体100を構成する。その支持体100に半導体層15が支持された状態で、基板10が除去される。
【0109】
例えば、シリコン基板である基板10が、ウェットエッチングまたはドライエッチングにより除去される。あるいは、基板10がサファイア基板の場合には、レーザーリフトオフ法により除去することができる。
【0110】
基板10上にエピタキシャル成長された半導体層15は、大きな内部応力を含む場合がある。p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25は、例えばGaN系材料の半導体層15に比べて柔軟な材料である。したがって、エピタキシャル成長時の内部応力が基板10の剥離時に一気に開放されたとしても、p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25は、その応力を吸収する。このため、基板10を除去する過程における半導体層15の破損を回避することができる。
【0111】
基板10の除去により、
図9に示すように、第1半導体層11の第1面11aが露出する。露出した第1面11aには、
図10に示すように、微小凹凸が形成される。例えば、KOH(水酸化カリウム)水溶液やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)等で、第1面11aをウェットエッチングする。このエッチングでは、結晶面方位に依存したエッチング速度の違いが生じる。このため、第1面11aに凹凸を形成することができる。第1面11aに微小凹凸を形成することにより、発光層13の放射光の取り出し効率を向上させることができる。あるいは、レジストマスクを使ったドライエッチングにより、第1面11aに微小凹凸を形成することもできる。
【0112】
第1面11a上には、
図1に示すように、絶縁膜51を介して蛍光体層30が形成される。絶縁膜51は、チップ外周部の絶縁膜18上にも形成される。蛍光体層30は、例えば、印刷、ポッティング、モールド、圧縮成形などの方法により形成される。絶縁膜51は、第1半導体層11と蛍光体層30との密着性を高める。絶縁膜51は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などの無機絶縁膜である。
【0113】
また、蛍光体層30として、蛍光体を結合材を介して焼結させた焼結蛍光体を、絶縁膜51を介して蛍光体層30に接着してもよい。
【0114】
蛍光体層30を形成した後、樹脂層25の表面(
図10における下面)が研削され、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24が樹脂層25から露出される。p側金属ピラー23の露出面はp側外部端子23aとなり、n側金属ピラー24の露出面はn側外部端子24aとなる。
【0115】
次に、複数の半導体層15を分離した前述の溝61が形成された領域で、ウェーハを切断する。蛍光体層30、絶縁膜18、19、および樹脂層25が切断される。これらは、例えば、ダイシングブレード、またはレーザ光により切断される。半導体層15は、ダイシング領域に存在しないためダイシングによるダメージを受けない。
【0116】
個片化される前の前述した各工程は、多数の半導体層15を含むウェーハ状態で行われる。ウェーハは、少なくとも1つの半導体層15を含む半導体発光装置として個片化される。なお、半導体発光装置は、ひとつの半導体層15を含むシングルチップ構造でも良いし、複数の半導体層15を含むマルチチップ構造であっても良い。
【0117】
個片化される前の前述した各工程は、ウェーハ状態で一括して行われるため、個片化された個々のデバイスごとに、配線の形成、ピラーの形成、樹脂層によるパッケージング、および蛍光体層の形成を行う必要がなく、大幅なコストの低減が可能になる。
【0118】
ウェーハ状態で、支持体100および蛍光体層30を形成した後に、それらが切断されるため、蛍光体層30の側面と、支持体100の側面(樹脂層25の側面)とは揃い、それら側面が個片化された半導体発光装置の側面を形成する。したがって、基板10がないこともあいまって、チップサイズパッケージ構造の小型の半導体発光装置を提供することができる。
【0119】
図11に示すように、n側電極17の第1部分17aは、第1半導体層11の第2n側領域11cにはコンタクトせず、側面11bのみにコンタクトしてもよい。
【0120】
図12は、実施形態の半導体発光装置の他具体例の模式断面図である。
【0121】
図12に示す半導体発光装置によれば、第1半導体層11における側面11bに続く第1面11aに、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極71が設けられている。透明電極71は、n側電極17の第1部分17aと接続されている。透明電極71は、第1部分17aの第1面11a側の端部の内壁に接している。
【0122】
透明電極71と蛍光体層30との間には、それら両者の密着性を高める絶縁膜72が設けられている。絶縁膜72は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜などの無機絶縁膜である。
【0123】
第1半導体層11の第1面11aの全面にわたって、n側電極17と接続された透明電極71が設けられているため、第1半導体層11を流れる電流の面方向の均一性をより高めることができる。
【0124】
前述した
図5(a)に示すように、第1半導体層11を複数に分離する溝61を形成するときに、基板10の主面も少し後退する。そのため、
図6(b)に示すように、溝61の側面にn側電極17の第1部分17aを形成すると、第1部分17aの端部が第1半導体層11の第1面11aよりも基板10側に突出する。
【0125】
そして、基板10を除去し、
図10に示すように第1面11aを粗面化すると、n側電極17の第1部分17aの端部の内壁が露出する。その状態で、第1面11a上に透明電極1を形成すれば、透明電極71と第1部分17aとを接触させることができる。
【0126】
図13は、実施形態の半導体発光装置のさらに他の具体例の模式断面図である。
【0127】
図13に示す実施形態によれば、チップ外周部の絶縁膜(無機絶縁膜)18が、半導体発光装置の側面にまで延びていない。チップ外周部に設けられた絶縁膜18は、樹脂層25で覆われ、樹脂層25が半導体発光装置の側面を形成している。
【0128】
したがって、ウェーハをダイシングするとき、ダイシング領域には絶縁膜18が存在しない。そのため、ダイシング時の衝撃で、絶縁膜18と蛍光体層30との界面、または絶縁膜18と樹脂層25との界面にクラックが入ることを抑制できる。そのクラックからの水分の浸入を防ぐことができ、半導体発光装置の信頼性を高くできる。
【0129】
図14は、実施形態の半導体発光装置のさらに他の具体例の模式断面図である。
【0130】
図14に示す実施形態によれば、チップ外周部における樹脂層25と蛍光体層30との間に、n側電極17の第5部分17fが設けられている。第5部分17fは、第1半導体層11の側面11bに設けられた第1部分17aの端部に一体に設けられ、その第1部分17aの端部から半導体発光装置の側面に向けて延びている。
【0131】
このため、半導体発光装置のチップ外周部の蛍光体31の放射光において、下方の支持体100側に向かう光をn側電極17の第5部分17fで反射させて蛍光体層30側に戻すことができる。
【0132】
したがって、半導体発光装置のチップ外周部において、蛍光体31の放射光が樹脂層25に吸収されることによる損失を防いで、蛍光体層30側からの光取り出し効率を高めることができる。
【0133】
第5部分17fと蛍光体層30との間に設けられた絶縁膜18は、第5部分17fと蛍光体層30との密着性を高める。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。