(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステップ(iii)において、更新ごとに前記一部分は、前記基準オブジェクトの位置から徐々に遠ざかることを特徴とする請求項3または4に記載の車両灯具システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1の灯具システム2rにおいて、カメラ10と前照灯14の取り付け位置精度が重要である。なぜならそれらの取り付け位置がずれていると、本来遮光すべき領域を照射してグレアを与えるという問題が生じうるからである。
【0007】
このため従来では、カメラ10および前照灯14の取り付け位置のばらつきを考慮して、消灯領域R
OFFを設定していた。具体的には、カメラ10の画像から先行車両、対向車両を検出すると、先行車両、対向車両が存在する領域R
Xにマージンを付加した領域を消灯領域とすることで、グレアを防止していた。
【0008】
前照灯14による配光パターンの制御方式は、(1)照射領域を複数の小領域に分割し、小領域ごとに点灯、消灯を切り替える分割方式、(2)ビームを車両前方で走査しながら、時間ごとに点灯、消灯を切り替える走査方式などがある。ADBシステムに使用される前照灯14は、より精細に配光を制御可能となるよう開発が進められている。たとえば分割方式では、分割数を増やすことで高精細な配光制御が可能となり、走査方式では、点消灯切り替えの時間分解能を高めることで、高精細な配光制御が可能となる。
【0009】
ところがコントローラ12において、位置ずれを考慮して消灯領域のマージンを広くとって配光パターンを決めたのでは、前照灯14を高精細にしたことの優位性が失われ、前照灯14がオーバースペックとなる。
【0010】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、カメラと前照灯の位置ずれを検出可能な車両灯具システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様は、車両灯具システムに関する。車両灯具システムは、車両前方を撮影し、画像情報を生成するカメラと、カメラからの画像情報にもとづき車両前方に形成すべき配光パターンを指示する配光指令を生成するコントローラと、配光指令にもとづき、指示された配光パターンが得られるように、車両前方を照射する前照灯と、カメラと前照灯の位置ずれを検出する位置キャリブレータと、を備える。位置キャリブレータは、画像情報にもとづいて、路上に存在する基準オブジェクトを検出し、基準オブジェクトの輝度を測定するステップと、ある配光パターンに応じて得られる基準オブジェクトの輝度と、ある配光パターンと比べて一部分のみの光量が異なる別の配光パターンに応じて得られる基準オブジェクトの輝度との間に有意な差があるとき、一部分の位置を利用して位置ずれを検出するステップと、を実行する。
【0012】
前照灯に対してランプ座標系を、カメラに対してカメラ座標系を定義する。前照灯が、ランプ座標系のある一部分の光量を変化させたときに、カメラから得られる基準オブジェクトの輝度が変化すれば、カメラ座標系での基準オブジェクトの座標と、ランプ座標の光量を変化させた一部分の座標とを対応付けることができる。したがってこの態様によれば、カメラと前照灯の位置ずれを検出し、必要に応じてキャリブレートできる。
「輝度の有意な差」とは、外乱光やノイズの影響による輝度差ではなく、配光パターンを変化させたことに起因した輝度変化であると認められる程度の輝度差をいう。
【0013】
位置キャリブレータは、画像情報にもとづいて、基準オブジェクトを検出し、基準オブジェクトの輝度を示す輝度データを生成する基準オブジェクト検出器と、切り替え可能なキャリブレーション用の配光パターンを指示する配光指令を生成するパターン発生器と、ある配光パターンに応じて得られる輝度データと、別の配光パターンに応じて得られる輝度データとの間に有意な差があるかを判定し、判定結果に応じてキャリブレーションデータを生成する位置ずれ検出器と、を含んでもよい。
【0014】
位置キャリブレータは、以下の処理を行ってもよい。
(i)前照灯に、ある配光パターンを指示する配光指令を供給する。
(ii)車両前方がある配光パターンに応じて照射されたときに得られる第1画像情報から、基準オブジェクトの輝度を取得する。
(iii)別の配光パターンを指示する第2配光指令を設定し、前照灯に供給する。
(iv)車両前方が第2配光指令に応じて照射されたときに得られる第2画像情報から、基準オブジェクトの輝度を取得する。
(v)第1画像情報から得られた基準オブジェクトの輝度と第2画像情報から得られた基準オブジェクトの輝度との差を検出する。
(vi)ステップ(v)において、有意な輝度差が検出された場合、位置ずれ量を検出する。
(vii)ステップ(v)において有意な輝度差が検出されない場合、ステップ(iii)に戻り、一部分を移動させて別の配光パターンを更新する。
この処理を繰り返すことで、オブジェクトの輝度を変化させることが可能な一部分を検出できる。
【0015】
1回目のステップ(iii)において、一部分は基準オブジェクトの位置であってもよい。1回目のステップ(vi)において有意な輝度差が検出されたとき、カメラと前照灯の位置が正しいと判定してもよい。
【0016】
ステップ(iii)において、更新ごとに一部分は、基準オブジェクトの位置から徐々に遠ざかってもよい。
【0017】
基準オブジェクトは、所定の標識、デリニエータ、路面に描かれた道路標示であってもよい。
【0018】
基準オブジェクトは、先行車両であってもよい。
【0019】
本発明の別の態様もまた、車両灯具システムである。この車両灯具システムは、車両前方を撮影し、画像情報を生成するカメラと、カメラからの画像情報にもとづき車両前方に形成すべき配光パターンを指示する配光指令を生成するコントローラと、指示された配光指令にもとづき、配光パターンが得られるように車両前方を照射する前照灯と、前照灯に対して相対的に固定されており、車両前方の所定領域にマーカを照射するマーカ発生器と、マーカ発生器が車両前方にマーカを照射したときに、画像情報に現れるマーカの位置にもとづいて、カメラと前照灯の相対的な位置ずれを検出する位置キャリブレータと、を備える。
【0020】
マーカは前照灯に固定されているため、ランプ座標系の所定座標を照射することが保証される。したがって画像情報から得られるカメラ座標系でのマーカの座標と、ランプ座標系の所定座標が対応する。したがってこの態様によれば、カメラ座標系とランプ座標系の位置ずれを検出し、必要に応じてキャリブレートできる。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のある態様によれば、カメラと前照灯の位置ずれを検出できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態に係る灯具システム2を示すブロック図である。灯具システム2は、ADB機能を有し、車両前方に多様な配光パターンを形成する。
灯具システム2は、カメラ10、コントローラ12、前照灯14および位置キャリブレータ20を備える。前照灯14は、ADB機能付きのハイビームである。
【0026】
カメラ10は、車両前方を撮影し、画像情報S1を生成する。コントローラ12は、カメラ10からの画像情報S1にもとづき、車両前方に形成すべき目標配光パターンS
REFを指示する配光指令S2を生成する。配光パターンは、光が照射されない消灯領域と、光が照射される点灯領域と、の組み合わせで構成される。また点灯領域の光量は可変であってもよい。たとえばコントローラ12は、画像情報S1にもとづいて、先行車両や対向車両、歩行者等を検出し、それらが検出された領域を、グレアを与えないように消灯領域に設定し、あるいは光量が非常に小さな点灯領域に設定する。コントローラ12には、車速情報やステアリング情報が入力されてもよく、これらの追加の情報を目標配光パターンS
REFに反映させてもよい。
【0027】
コントローラ12は、CPU(Central Processing Unit)やマイクロコントローラなどのハードウェアと、ソフトウェアの組み合わせで構成することができる。またコントローラ12は、車両用灯具(ランプアッシー)に内蔵された灯具ECU(Electronic Control Unit)の一部であってもよいし、車両側に搭載された車両ECUの一部であってもよい。
【0028】
前照灯14は、配光指令S2にもとづき、目標配光パターンS
REFが得られるように、車両前方を照射する。前照灯14が車両情報S2にもとづいて車両前方に実際に形成する配光パターンを照射パターンIと称する。
【0029】
カメラ10と前照灯14の位置ずれが存在しない場合、照射パターンIは、目標配光パターンS
REFと一致する。ところが、カメラ10と前照灯14の取り付け位置がずれている場合、照射パターンIは、目標配光パターンS
REFから乖離する。
【0030】
図2の灯具システム2は、カメラ10と前照灯14の取り付け位置のずれを検出するために、位置キャリブレータ20を備える。以下、位置キャリブレータ20による位置ずれの検出方法を説明する。
【0031】
位置キャリブレータ20は、以下の処理により位置ずれを検出する。
(処理1) 画像情報S1にもとづいて、路上に存在する基準オブジェクトを検出し、基準オブジェクトの輝度を測定する。
【0032】
基準オブジェクトは、道路標識やデリニエータ、路面に描かれた停止線や道路標示であってもよい。あるいは後述するように、車両を基準オブジェクトとして利用することも可能である。基準オブジェクトは発光体ではなく、前照灯14により照射された光を反射する物体であることが望ましい。位置キャリブレータ20は、カーナビからの情報を利用して、基準オブジェクトを検出してもよい。
【0033】
以下では理解の容易のため、基準オブジェクトは所定の形状、所定の色を有し、所定の文字あるいは図柄が記された道路標識であるものとする。位置キャリブレータ20は、画像情報S1を参照し、パターンマッチングにより画像内の基準オブジェクトを検出し、その座標を特定する。
【0034】
(処理2) ある配光パターンに応じて得られる基準オブジェクトの輝度L
REFと、ある配光パターンと比べて一部分(注目領域と称する)のみの光量が異なる別の配光パターンに応じて得られる基準オブジェクトの輝度との間に有意な差があるとき、一部分(注目領域)の位置を利用して位置ずれを検出する。
【0035】
以上が実施の形態に係る灯具システム2の基本構成である。続いてその位置ずれ検出処理(キャリブレーション)を説明する。
【0036】
図3は、車両前方を示す図である。
この例では前照灯14は分割方式でADB制御が可能となっており、具体的には照射領域は11個の小領域Rs1〜Rs11に分割され、小領域Rsごとに点灯、消灯が切り替え可能となっている。小領域Rs1〜Rs11の位置は、前照灯14の取り付け位置に応じて変化する。
【0037】
理解を容易とするために、カメラ10の取り付け位置を基準とするカメラ座標系θ
CAMと、前照灯14の取り付け位置を基準とするランプ座標系θ
LAMPを導入する。本実施の形態では、各座標系は角度のディメンジョンを有するものとする。カメラ10の取り付け位置と前照灯14の取り付け位置が正しい場合、
図3の下部Aに示すように、座標系θ
CAM、θ
LAMPの原点は一致する。
【0038】
カメラの10と前照灯14に位置ずれが生じた場合、
図3の下部Bに示すように、座標系θ
CAM、θ
LAMPの原点はずれる。ここでは前照灯14のみが位置ずれしている場合を示すが位置ずれは、カメラ10と前照灯14とで複合的に起こりえる。
【0039】
コントローラ12は、カメラ10が生成する画像情報S1にもとづいて、配光指令S2を生成する。したがって配光指令S2は、カメラ座標系θ
CAMを基準として生成される。一方、前照灯14は、カメラ座標系θ
CAMとランプ座標系θ
LAMPが一致しているものとして、ランプ座標系θ
LAMPを基準として車両前方を照射する。
【0040】
Bに示すように座標系がずれている場合の通常走行時のADB制御を考える。
図3に示すように、カメラ座標系θ
CAMで座標[θ
L1〜θ
R1]の間(小領域Rs6,Rs7)に対向車両32が認識されると、コントローラ12は座標[θ
L1〜θ
R1]の範囲を消灯範囲とする配光パターンを生成する。前照灯14が、ランプ座標系θ
LAMPで座標[θ
L1〜θ
R1]を消灯範囲として車両前方を照射する。その結果、小領域Rs8,Rs9が消灯範囲R
OFFとなり、小領域Rs6,Rs7が点灯領域R
ONとなり、対向車両32にグレアを与える。
【0041】
続いて、このような問題を解決するためのキャリブレーション処理を説明する。カメラ10からの画像情報S1にもとづき、基準オブジェクト30として「止まれの標識」がカメラ座標系θ
CAMの[θ
L2〜θ
R2]の範囲で検出される。ここでは理解の容易化、説明の簡潔化のため、キャリブレーション中、車両は停止しているものとし、車両前方の視界は変化しないものとする。
【0042】
位置キャリブレータ20は、キャリブレーションのために、少なくとも2つの配光パターンを切り替え、前照灯14に車両前方を照射させる。ひとつの配光パターンと、別の配光パターンとは、ある一部分(注目領域)θx〜θyのみの光量が異なっており,それ以外の部分の光量は同一である。
【0043】
ある配光パターンは全範囲を点灯領域とする。別の配光パターンは、[θx〜θy]のみが消灯領域であり、残りが点灯範囲である。このような2つの配光パターンを切り替えたときに、基準オブジェクト30の輝度が変化したとする。そうするとカメラ座標系θ
CAMの座標[θ
L2〜θ
R2]は、ランプ座標系θ
LAMPの座標[θx〜θy]に対応すると言える。つまり、左端の座標を基準とした場合、カメラ座標系θ
CAMとランプ座標系θ
LAMPのずれ量は、[θ
L2−θx]である。基準はどこにとってもよく、右端を基準とすれば、ずれ量は[θ
R2−θy]である。あるいは基準は中央にとってもよい。以下は、左端を基準として説明する。
【0044】
言い換えれば、位置キャリブレータ20によるキャリブレーションは、基準オブジェクト30の輝度を変化させることが可能な注目領域[θx〜θy]を検出することと等価である。
【0045】
たとえば
図3の下部Aのように位置ずれがない場合を考える。この場合、注目領域[θx〜θy]を[θ
L2〜θ
R2]としたときに、基準オブジェクト30の輝度変化が検出される。ずれ量はθ
L2−θx=θ
L2−θ
L2=0であるから、位置ずれがないことが確認される。
【0046】
図3の下部Bのように位置ずれがある場合を考える。この場合、注目領域[θx〜θy]を[θ
L2−Δθ〜θ
R2−Δθ]としたときに、基準オブジェクト30の輝度変化が検出される。ずれ量はθ
L2−θx=θ
L2−(θ
L2−Δθ)=Δθであるから、座標系のずれ量Δθと一致する。
【0047】
このように、
図2の灯具システム2によれば、カメラ10と前照灯14の位置ずれを検出し、必要に応じてキャリブレートできる。
【0048】
キャリブレーションの方法は特に限定されない。たとえばコントローラ12が配光指令S2を生成する際に、ずれ量Δθを補正した角度情報を与えてもよい。あるいは前照灯14にずれ量Δθを保持しておき、配光指令S2が示す角度情報をずれ量Δθを考慮してシフトしてもよい。
【0049】
続いて位置キャリブレータ20の構成およびキャリブレーションのフローについて具体的に説明する。なお、本発明は上記説明から把握されるさまざまな形態に及ぶものであり、以下で説明する具体例に拘泥されない。
【0050】
図4は、位置キャリブレータ20の構成例を示す機能ブロック図である。位置キャリブレータ20は、基準オブジェクト検出器22、パターン発生器24、位置ずれ検出器26を備える。
【0051】
位置キャリブレータ20は、コントローラ12と同様に、CPU(Central Processing Unit)やマイクロコントローラなどのハードウェアと、ソフトウェアの組み合わせで構成することができる。また位置キャリブレータ20は、車両用灯具(ランプアッシー)に内蔵された灯具ECU(Electronic Control Unit)の一部であってもよいし、車両側に搭載された車両ECUの一部であってもよい。コントローラ12と位置キャリブレータ20は、同一のプロセッサあるいはCPUであってもよい。
【0052】
基準オブジェクト検出器22は、カメラ10からの画像情報S1にもとづいて、パターンマッチングにより基準オブジェクト30を検出し、基準オブジェクト30の輝度を示す輝度データS4を生成する。基準オブジェクト検出器22は、基準オブジェクト30のカメラ座標系における位置[θ
L2〜θ
R2]を示す位置データS5を生成してもよい。
【0053】
パターン発生器24は、切り替え可能なキャリブレーション用の配光パターンを指示する配光指令S3を生成する。キャリブレーション時には、配光指令S3により前照灯14が制御される。
【0054】
位置ずれ検出器26は、ある配光パターンS
CALAに応じて得られる輝度データS4
Aと、別の配光パターンS
CALBに応じて得られる輝度データS4
Bとの間に有意な差があるかを判定する。そして、判定結果に応じてキャリブレーションデータS6を生成する。
【0055】
キャリブレーションを運転者あるいは周囲の通行人に認識させたくない場合、配光パターンの切り替えは、短時間で行う必要がある。その場合、ある配光パターンS
CALAを定常的に出力しておき、ある短い期間だけ、別の配光パターンS
CALBに切り替えることで、バックグラウンドでのキャリブレーションが可能となる。この場合は、輝度データS4
Bの生成に使用する画像情報S1
Bを撮影する際に、カメラ10の露光時間と露光タイミングに注意を払う必要がある。
【0056】
位置ずれ検出器26は、配光パターンS
CALAと別の配光パターンS
CALBの輝度が異なる領域[θx〜θy]を検出する。そして有意な輝度変化が検出されたときの領域[θx〜θy]と、位置データS5が示す位置[θ
L2〜θ
R2]の関係から、ずれ量Δθを示すキャリブレーションデータS6を生成してもよい。
【0057】
位置キャリブレータ20は、位置ずれ検出器26によって有意な輝度変化が検出されるまで、配光パターンS
CALAと別の配光パターンS
CALBの組み合わせを切り替える。
【0058】
この位置キャリブレータ20の構成によれば、位置ずれの有無およびそのずれ量Δθを検出することができる。
【0059】
図5は、キャリブレーション処理の第1のフローチャートである。
はじめに、基準となる配光パターンS
CALAが設定され(S100)、そのときの輝度データS4
Aが測定される(S102)。配光パターンS
CALAは任意でよく、たとえば全領域点灯、あるいは全領域消灯であってもよい。あるいは走行中のキャリブレーションであれば、直前にコントローラ12により生成された目標配光パターンS
REFであってもよい。
【0060】
続いて別の配光パターンS
CALBが設定され(S104)、そのときの輝度データS4
Bが測定される(S106)。上述のように、配光パターンS
CALBと配光パターンS
CALAは、注目領域[θx〜θy]のみの光量が異なる関係を有している。
【0061】
そして輝度差の絶対値|S4
A−S4
B|があるしきい値S
THより大きい場合(S108のY)、つまり有意な輝度差が検出された場合、そのときの[θx〜θy]にもとづいて位置ずれ量を算出する(S110)。
【0062】
そして輝度差|S4
A−S4
B|があるしきい値S
THより小さい場合(S108のN)、つまり有意な輝度差が検出されない場合、ステップS104に戻り、注目領域[θx〜θy]を変化させて、配光パターンS
CALBを更新する。
以上のフローにより、位置ずれ量を検出できる。
【0063】
図6は、キャリブレーション処理の第2のフローチャートである。上述した
図5のフローでは、配光パターンS
CALAが1回目に設定された初期状態に固定され、配光パターンS
CALBのみを変化させた。これに対して
図6のフローでは、あるサイクルの配光パターンS
CALBを次のサイクルの基準となる配光パターンS
CALAとして使用する。
【0064】
具体的にはステップS112が追加されている。ステップS108において輝度差|S4
A−S4
B|があるしきい値S
THより小さい場合(S108のN)、つまり有意な輝度差が検出されない場合、基準となる配光パターンS
CALAに、直前の比較用の配光パターンS
CALBがセットされ、基準となる輝度データS4
Aに、直前の比較用の輝度データS4
Bがセットされる。ステップS104では、配光パターンS
CALBが更新される。
【0065】
このフローによっても位置ずれ量を検出できる。特に走行中にキャリブレーションを行う場合には、
図6のフローの方が適していると言える。
【0066】
続いてパターン発生器24によるキャリブレーション用の配光指令S3の生成アルゴリズム、すなわち
図5あるいは
図6のステップ104の処理を説明する。
【0067】
パターン発生器24は、注目領域[θx〜θy]を、位置データS5が示す基準オブジェクト30の座標[θ
L2〜θ
R2]を初期値として、徐々に遠ざかるようにシフトさせてもよい。
【0068】
図7は、
図5のフローチャートに対応した配光パターンS
CALBの遷移を示す図である。注目領域[θx〜θy]は、座標[θ
L2〜θ
R2]を初期値として、徐々に遠ざかるようにシフトしていく。
図7では注目領域はジグザグに移動するが、別のパターンで移動してもかまわない。
【0069】
図8は、
図6のフローチャートに対応した配光パターンS
CALBの遷移を示す図である。注目領域[θx〜θy]は、座標[θ
L2〜θ
R2]を初期値として、徐々に遠ざかるようにシフトしていく。
【0070】
図5のフローチャートを用いた場合、
図7に示すように、あるサイクルと隣接するサイクルとで、配光パターンS
CAL2は2カ所で異なる。一方、
図6のフローチャートを用いた場合、
図8に示すように、あるサイクルと隣接するサイクルとで、配光パターンS
CAL2は1カ所のみので異なり、運転者あるいは周囲の通行人が気づきにくいという利点がある。したがってバックグラウンドでのキャリブレーションを行う場合、
図6のフローの方が適していると言える。
【0071】
(変形例1)
これまでは、基準オブジェクト30として静止した標識や道路標示、デリニエータを使用する場合を説明した。走行中のバックグラウンドでのキャリブレーションを行う場合、静止物は、画像情報S1内で移動することとなり、時々刻々と基準オブジェクト30の位置を捕捉し直す必要がある。
【0072】
走行中のキャリブレーションを考慮すると、自車との相対速度が小さい物体を基準オブジェクトとすることが望ましい。高速道路や幹線道路を巡航中は、先行車と自車は、経験的に実質的に同じ速度で移動することが多い。そこでこの変形例では、基準オブジェクト30として、先行車両34が用いられる。
【0073】
ただし先行車両34を基準オブジェクト30として使用する場合、キャリブレーション中にグレアを与えないように配慮する必要がある。
【0074】
図9(a)〜(d)は、基準オブジェクト30として先行車両を用いたキャリブレーションを説明する図である。夜間走行中、カメラ10の画像により先行車両34が捕捉され、先行車両34にグレアを与えないようにコントローラ12が目標配光パターンS
REFを決定する。前照灯14は、目標配光パターンS
REFが得られるよう車両前方を照射している。
【0075】
ここでは、
図6のフローにもとづいて配光パターンS
CAL2が切り替えられる。注目領域36の範囲[θx〜θy]は、先行車両34の両脇から、徐々に先行車両34に近づく方向に移動していく。
図9(d)において、注目領域36が先行車両34とオーバーラップし、基準オブジェクト30の輝度変化が観測される。
【0076】
この変形例によれば、先行車両にグレアを与えないようにして、走行中のキャリブレーションが可能となる。
【0077】
(変形例2)
先行車両34を基準オブジェクト30として利用する場合においても、基準オブジェクト30に光が照射される時間を、運転者が認識しうる時間よりも短くすることで、グレらを与える心配はないため、静止物と同様のキャリブレーションを行ってもよい。
【0078】
(第2の実施の形態)
図10は、第2の実施の形態に係る灯具システム2aのブロック図である。灯具システム2aは、
図2の灯具システム2に加えて、マーカ発生器16をさらに備える。
マーカ発生器16は、前照灯14に対して相対的に固定されており、位置キャリブレータ20aからの発光指示S7に応答して、車両前方の所定領域に、所定の色、所定の形状を有するマーカ40を照射する。マーカ40はカメラ10により撮影可能な箇所に照射される。マーカ発生器16は、発光ダイオードやレーザなどある程度指向性の強い光を発生する光源が望ましい。
【0079】
位置キャリブレータ20aは、マーカ発生器16が車両前方にマーカ40を照射したときに、画像情報S1に現れるマーカ40の位置にもとづいて、カメラ10と前照灯14の相対的な位置ずれを検出する。
【0080】
図11は、車両前方を示す図である。マーカ発生器16は、前照灯14に対して固定されているため、マーカ40の座標は、前照灯14の位置ずれにかかわらず、ランプ座標系θ
LAMPでは常に一定値θ
Mである。
【0081】
Aに示すように、位置ずれが生じていない場合、画像情報S1から計算されたマーカ40のランプ座標系θ
LAMPの座標θ
Aは、θ
Mと一致する。
【0082】
Bに示すように位置ずれにより、2つの座標系がΔθずれている場合、画像情報S1から計算されたマーカ40’のランプ座標系θ
LAMPの座標θ
A’は、θ
M+Δθとなる。つまり画像情報S1から計算されたマーカ40のランプ座標系θ
LAMPの座標θ
Aと座標θ
Mの差は、2つの座標系のずれ量Δθを表す。
【0083】
このように
図10の灯具システム2aによれば、カメラ10と前照灯14の位置ずれを検出し、必要に応じてキャリブレートできる。
【0084】
続いて位置キャリブレータ20aの構成を具体的に説明する。なお、本発明は上記説明から把握されるさまざまな形態に及ぶものであり、以下で説明する具体例に拘泥されない。
【0085】
図12は、位置キャリブレータ20aの構成例を示す機能ブロック図である。位置キャリブレータ20aは、マーカ検出器42、位置ずれ検出器44、キャリブレーションコントローラ46を備える。
【0086】
位置キャリブレータ20aは、コントローラ12と同様に、CPU(Central Processing Unit)やマイクロコントローラなどのハードウェアと、ソフトウェアの組み合わせで構成することができる。また位置キャリブレータ20aは、車両用灯具(ランプアッシー)に内蔵された灯具ECU(Electronic Control Unit)の一部であってもよいし、車両側に搭載された車両ECUの一部であってもよい。コントローラ12と位置キャリブレータ20aは、同一のプロセッサあるいはCPUであってもよい。
【0087】
キャリブレーションコントローラ46は、発光指示S7をアサートし、マーカ発生器16を点灯させる。発光指示S7による発光タイミングは、カメラ10による露光タイミングと同期させる。
【0088】
マーカ検出器42は、カメラ10からの画像情報S1にもとづいて、パターンマッチングによりマーカ40を検出し、マーカ40のカメラ座標系における位置θ
Aを示す位置データS8を生成し、位置ずれ検出器44に出力する。
【0089】
位置ずれ検出器44は、発光指示S7がアサートされているときに検出されたマーカ40の座標θ
Aと、マーカ40の基準位置θ
Mの関係から、キャリブレーションデータS6を生成する。
【0090】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0091】
実施の形態では、分割方式のADB制御に即して説明したが、前照灯14は、走査方式あるいはその他の方式によって、配光パターンが可変に構成されてもよい。
【0092】
典型的にはADB制御で配光パターンが制御されるのは、ハイビームであるが、本発明はそれには限定されず、ロービームの配光パターンが可変な前照灯14にも適用可能である。
【0093】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。