特許第6546002号(P6546002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6546002有機リン系化合物、難燃剤およびそれからなる難燃製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546002
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】有機リン系化合物、難燃剤およびそれからなる難燃製品
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6574 20060101AFI20190705BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20190705BHJP
   C08K 5/5357 20060101ALI20190705BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20190705BHJP
   D06M 13/313 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   C07F9/6574 Z
   C09K21/12
   C08K5/5357
   C08L101/00
   D06M13/313
【請求項の数】4
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-101058(P2015-101058)
(22)【出願日】2015年5月18日
(65)【公開番号】特開2016-216382(P2016-216382A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年2月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山中 克浩
(72)【発明者】
【氏名】武田 強
(72)【発明者】
【氏名】今里 健太
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/187492(WO,A1)
【文献】 特開2010−095731(JP,A)
【文献】 特開2004−018384(JP,A)
【文献】 特開2010−077194(JP,A)
【文献】 特開2006−104373(JP,A)
【文献】 特開昭51−062838(JP,A)
【文献】 特開2016−044165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/6574
C08K 5/5357
C08L 101/00
C09K 21/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)〜(vii)の条件を満たす下記式(1)記載の有機リン系化合物を少なくとも50重量%含有する難燃剤を使用することにより得られる難燃製品
(i)有機純度が98%以上である
(ii)水への溶解度が0.1g/100g水以下である
(iii)全含有ハロゲン成分が1000ppm以下である
(iv)全揮発性有機物含有量が800ppm以下である
(v)ΔpH値が1.0以下である
(vi)体積基準メジアン径が25μm以下である
(vii)最大粒径が200μm以下である
【化1】
(式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アントリル基、または芳香族置換基を有しても良い炭素数1〜4の分岐上状または直鎖状のアルキル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。)
【請求項2】
式(1)で表される有機リン系化合物が下記式(2)〜(5)に記載の化合物よりなる群から選択される1種の化合物または2種以上の混合物である請求項1記載の難燃製品
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項3】
式(1)で表される有機リン系化合物は、全含有ハロゲン成分が500ppm以下、全揮発性有機物含有量が500ppm以下、ΔpH値が0.5以下、体積基準メジアン径が20μm以下、且つ最大粒径が150μm以下である請求項1記載の難燃製品
【請求項4】
下記式(1)記載の有機リン系化合物をR−OHもしくはR10−C(O)−R11で表される化合物(Rは水素原子もしくは炭素数1〜6の飽和の直鎖もしくは分岐のアルキル基、R10およびR11は同一または異なっていてもよく、炭素数1〜6の飽和の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。)を用いて、洗浄温度35℃〜120℃で還流洗浄し、得られた精製された有機リン系化合物を粉砕することを特徴とする下記(i)〜(vii)の条件を満たす有機リン系化合物を製造する方法。
(i)有機純度が98%以上である
(ii)水への溶解度が0.1g/100g水以下である
(iii)全含有ハロゲン成分が1000ppm以下である
(iv)全揮発性有機物含有量が800ppm以下である
(v)ΔpH値が1.0以下である
(vi)体積基準メジアン径が25μm以下である
(vii)最大粒径が200μm以下である
【化6】
(式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アントリル基、または芳香族置換基を有しても良い炭素数1〜4の分岐上状または直鎖状のアルキル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度な難燃性および良好な外観を有する難燃製品を得るためのノンハロゲン系難燃剤、およびそれを用いた難燃製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等に代表される高分子材料は、その優れた諸物性を活かし、成形材料、繊維材料、フィルム・シート材料として、機械部品、電気部品、自動車部品等の幅広い分野に利用されている。一方、これらの高分子材料は本質的に可燃性である為、上記用途として使用するには一般の化学的、物理的諸特性のバランス以外に、火炎に対する安全性、すなわち、高度な難燃性が要求される場合が多い。
【0003】
高分子材料に難燃性を付与する方法としては、難燃剤としてハロゲン系化合物、さらに難燃助剤としてアンチモン化合物を樹脂に添加する方法が一般的である。しかしながら、この方法は成形加工時あるいは燃焼時に、多量の腐食性ガスを発生させる等の問題がある。また、特に近年、製品廃棄時における環境影響等が懸念されている。そこで、ハロゲンを全く含まない難燃剤や難燃処方が強く望まれている。
【0004】
ハロゲン系難燃剤を使用せずに高分子材料を難燃化する方法としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物を添加する方法が広く知られている。しかし、充分な難燃性を得る為には、上記金属水和物を多量に添加する必要があり、高分子材料本来の特性が失われるという欠点を有していた。さらに、重合体種や用途によっては、製造方法の観点から、基本的に使用できない用途も存在する。
【0005】
また、トリアリールリン酸エステルモノマーや縮合リン酸エステルオリゴマーの芳香族リン酸エステルも、有機重合体に難燃性を付与するための難燃剤として頻繁に用いられてきた。しかし、トリフェニルホスフェートに代表されるトリアリールリン酸エステルモノマーは、組成物の耐熱性を著しく低下させ、かつ、揮発性が高い為に、押出、成形、紡糸、製膜等の加工時にガスの発生量が多く、ハンドリング性に問題があった。さらに、この化合物は高分子材料を高温に加熱するとその少なくとも一部が揮発、あるいはブリード等によって樹脂中から失われるという問題点を有していた。また、縮合リン酸エステルオリゴマーは、揮発性が改善されているものの、その多くが液体であることから、加熱溶融混練工程を必要とする高分子材料との混練には液注装置が必要となり、押出し混練時のハンドリング性に問題があった。
【0006】
一方、二置換ペンタエリスリトールジホスホネートは、樹脂用難燃剤を中心に種々の検討がなされている。この化合物を熱可塑性樹脂に配合することにより、熱可塑性樹脂の難燃化を達成することができる。このホスホネート化合物が配合された熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤の配合による耐熱性、および耐衝撃性等の特性が低下することなく、しかも混練の際に化合物が揮発、あるいはブリード等により樹脂中から失われることのない特徴を有する。
【0007】
また、上記二置換ペンタエリスリトールジホスホネートの製造法についてはいくつか開示されている。例えば、特許文献1においては、ペンタエリスリトールとフェニルホスホン酸ジクロライドとの反応により、ジフェニルペンタエリスリトールジホスホネートを得る製造例の記載がある。
【0008】
特許文献2においては、ジエチルペンタエリスリトールジホスファイトとハロゲン化誘導体(例えばベンジルクロライド)との反応により、対応する二置換ペンタエリスリトールジホスホネートを得る製造例の記載がある。
しかしながら、本発明の特定の構造を有するペンタエリスリトールジホスホネートに関して、必ずしも従来通りの製造方法ではかかる目的物を高収率で回収できないという問題があった。また、上記の特許でも製造法の詳細は詳述されておらず、目的物の純度に関する記載もなく、工業的な製造法の見地からも種々の問題が内在していた。
【0009】
さらに、特許文献3〜6では、上記問題を解決するために、当該化合物の酸価、残留揮発物、色相、残留ハロゲン成分およびイオン性ハロゲン成分含有量を改善する方法が記載されており、各種熱可塑性樹脂組成物を製造する際の諸特性が向上することが報告されている。しかしながら、本特許明細書記載の内容のみでは、実際の難燃性高分子材料製品を製造する際に、種々の問題が発現し、効果としては不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−163288号公報
【特許文献2】米国特許第4174343号明細書
【特許文献3】特許第4287095号公報
【特許文献4】特開2004−10586号公報
【特許文献5】特開2004−10588号公報
【特許文献6】特開2004−18380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高度な難燃性および良好な外観を有する難燃製品を得るためのノンハロゲン系難燃剤、およびそれを用いた難燃製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、これらの問題を解決するため、鋭意・研究を行った結果、特定の要件を満足する有機リン系化合物(ペンタエリスリトールジホスホネート化合物)が、高度な難燃性および良好な外観を有する難燃製品を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、発明の課題は、下記により達成される。
【0013】
1.下記(i)〜(vii)の条件を満たす下記式(1)記載の有機リン系化合物を少なくとも50重量%含有する難燃剤を使用することにより得られる難燃製品
(i)有機純度が98%以上である
(ii)水への溶解度が0.1g/100g水以下である
(iii)全含有ハロゲン成分が1000ppm以下である
(iv)全揮発性有機物含有量が800ppm以下である
(v)ΔpH値が1.0以下である
(vi)体積基準メジアン径が25μm以下である
(vii)最大粒径が200μm以下である
【化1】
(式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アントリル基、または芳香族置換基を有しても良い炭素数1〜4の分岐上状または直鎖状のアルキル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。)
【0014】
2.式(1)で表される有機リン系化合物が下記式(2)〜(5)に記載の化合物よりなる群から選択される1種の化合物または2種以上の混合物である前項1記載の難燃製品
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【0015】
3.式(1)で表される有機リン系化合物は、全含有ハロゲン成分が500ppm以下、全揮発性有機物含有量が500ppm以下、ΔpH値が0.5以下、体積基準メジアン径が20μm以下、且つ最大粒径が150μm以下である前項1記載の難燃製品
下記式(1)記載の有機リン系化合物をR−OHもしくはR10−C(O)−R11で表される化合物(Rは水素原子もしくは炭素数1〜6の飽和の直鎖もしくは分岐のアルキル基、R10およびR11は同一または異なっていてもよく、炭素数1〜6の飽和の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。)を用いて、洗浄温度35℃〜120℃でリパルプ洗浄し、得られた精製された有機リン系化合物を粉砕することを特徴とする下記(i)〜(vii)の条件を満たす有機リン系化合物を製造する方法。
(i)有機純度が98%以上である
(ii)水への溶解度が0.1g/100g水以下である
(iii)全含有ハロゲン成分が1000ppm以下である
(iv)全揮発性有機物含有量が800ppm以下である
(v)ΔpH値が1.0以下である
(vi)体積基準メジアン径が25μm以下である
(vii)最大粒径が200μm以下である
【化6】
(式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アントリル基、または芳香族置換基を有しても良い炭素数1〜4の分岐上状または直鎖状のアルキル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。)
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高分子材料本来の物性を保持しながら高度な難燃性および良好な外観を有する難燃製品を得ることができる難燃剤を提供することができる。さらには、本難燃剤を用いることにより、難燃製品を得る際に必要となる高分子材料の各種加工工程において、不具合を発生すること無く良好な外観の難燃製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の難燃剤およびそれからなる難燃製品について詳細に説明する。
本発明の主たる成分である一般式(1)記載の有機リン系化合物(ペンタエリスリトールジホスホネート化合物)としては、一般式(1)においてR、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、アントリル基、または芳香族置換基を有しても良い炭素数1〜4の分岐上状または直鎖状のアルキル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である化合物を挙げることができる。
【0018】
好ましくは、R、Rが同一または異なっていても良いフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ベンジル基、フェネチル基であり、R、R、R、Rが同一または異なっていても良い水素原子、メチル、エチル、各種プロピル、各種ブチル、フェニル基、各種トルイル基、ナフチル基、アントリル基である化合物が挙げられる。さらに好ましくは、R、Rが同一または異なっていても良いフェニル基、ベンジル基であり、R、R、R、Rが同一または異なっていても良い水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基である化合物が挙げられる。
【0019】
かかる化合物の具体例としては、3,9−ビス(フェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−メチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((3−メチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((4−メチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,4−ジメチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,6−ジメチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((3,5−ジメチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,4,6−トリメチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−sec−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((4−sec−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,4−ジ−sec−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,6−ジ−sec−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,4,6−トリ−sec−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((4−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((4−ビフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1−ナフチル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−ナフチル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((1−アントリル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((2−アントリル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス((9−アントリル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(2−メチル−2−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(トリフェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−フェニルメチル−9−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−フェニルメチル−9−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−フェニルメチル−9−(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−フェニルメチル−9−ジフェニルメチル−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)−9−(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)−9−(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−ジフェニルメチル−9−(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−ジフェニルメチル−9−((2,6−ジメチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3−ジフェニルメチル−9−((2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)メチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
【0020】
特に好ましくは下記式(2)〜(5)に示される、3,9−ビス(フェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(下記式(2)の化合物)、3,9−ビス(1−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(下記式(3)の化合物)、3、9−ビス(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(下記式(4)の化合物)、3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキソ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(下記式(5)の化合物)が好ましい。
【0021】
【化7】
【0022】
【化8】
【0023】
【化9】
【0024】
【化10】
【0025】
本発明における一般式(1)記載のペンタエリスリトールジホスホネート化合物の有機純度は98%以上であり、好ましくは98.5%以上、特に好ましくは99.0以上の純度である。
かかる有機純度の測定方法としては、例えば、HPLC装置としてWaters社製Separations Module 2690、検出器としてWaters社製Dual λ Absorbance Detector 2487(UV−264nm)、カラムとして東ソー(株)製TSKgel ODS−120T 2.0mm×150mm(5μm)を用い、溶離液に蒸留水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度40℃で0→12min:アセトニトリル50%、12→17min:アセトニトリル50→80%、17→27min:アセトニトリル80%、27→34min:アセトニトリル80→100%、34→60min:100%のグラジエントプログラムにて測定することができる。測定は、ペンタエリスリトールジホスホネート50±0.5mgをアセトニトリル25mlに溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、測定する。純度は面積%として算出する。
【0026】
本発明における一般式(1)記載のペンタエリスリトールジホスホネート化合物の20℃における水への溶解度は0.1g/100g水以下であり、好ましくは0.08g/100g水以下であり、より好ましくは0.05g/100g水以下である。
かかる水への溶解度は20℃に調温された蒸留水100gに対して、本発明の有機リン系化合物(1)を少量ずつ添加し、添加ごとに1分間撹拌した後に目視にて溶解を確認することにより測定できる。
【0027】
本発明における一般式(1)記載のペンタエリスリトールジホスホネート化合物の全含有ハロゲン成分は、1000ppm以下であり、好ましくは800ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。
かかる全含有ハロゲン成分の測定方法としては、JIS K 7229に準拠した方法で測定することができる。
【0028】
本発明における一般式(1)記載のペンタエリスリトールジホスホネート化合物の全揮発性有機物含有量は800ppm以下であり、好ましくは600ppm以下、より好ましくは400ppm以下である。
かかる全揮発性有機物含有量は、例えば、HPLC装置としてWaters社製Separations Module 2690、検出器としてWaters社製Dual λ Absorbance Detector 2487(UV−264nm)および示差屈折検出器、カラムとして東ソー(株)製TSKgel ODS−120T 2.0mm×150mm(5μm)を用い、溶離液に蒸留水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度40℃で0→12min:アセトニトリル50%、12→17min:アセトニトリル50→80%、17→27min:アセトニトリル80%、27→34min:アセトニトリル80→100%、34→60min:100%のグラジエントプログラムにて測定することができる。測定は、ペンタエリスリトールジホスホネート50±0.5mgをアセトニトリル25mlに溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、測定する。当該化合物製造時に使用する揮発性有機物に関して、あらかじめ検量線を作成し、ペンタエリスリトールジホスホネート中の揮発性有機物の残存量を求める。
【0029】
本発明における一般式(1)記載のペンタエリスリトールジホスホネート化合物のΔpH値は1.0以下であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下である。
かかるΔpHは、市販のpH測定装置を使用し、次に示す方法により測定できる。測定に使用する蒸留水99gに1gの分散剤を加え撹拌し、得られた水溶液のpHを測定する(測定値をpH1とする)。当該水溶液に本発明の有機リン系化合物(1)を1g加え1分間撹拌した後に、有機リン系化合物(1)を濾過する。得られた濾液のpHを測定する(測定値をpH2とする)。本発明のΔpH値は下記式(I)により算出される。
ΔpH値=|pH1−pH2| …(I)
【0030】
本発明における一般式(1)記載のペンタエリスリトールジホスホネート化合物の体積基準メジアン径は30μm以下であり、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下である。
本発明における一般式(1)記載のペンタエリスリトールジホスホネート化合物の最大粒径は200μm以下であり、好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。
【0031】
体積基準メジアン径および最大粒径の調整方法としては特に限定されるものでは無く、グラインダー、ミル、ホモジナイザー等の粉砕・分散機器を用いた機械的な粉砕方法を用いることができる。本機械的粉砕方法においては、乾式粉砕・湿式粉砕の限定はされない。本発明の体積基準メジアン径および最大粒径を満足するための粉砕方法としては、乾式粉砕が好ましく用いられ、具体的な粉砕機の例としては、フロイントターボ社製ターボミル、ホソカワミクロン株式会社製ACMパルペライザー等が挙げられる。
かかる体積基準メジアン径および最大粒径は、例えば、日機装株式会社製マイクロトラックを用い、粒子透過性:透過、粒子形状:非球形の測定条件を用いることによって測定できる。
【0032】
本発明において、一般式(1)記載の有機リン系化合物の有機純度、水への溶解度、全含有ハロゲン成分、全揮発性有機物含有量、ΔpH、体積基準メジアン径、および最大粒径が請求項1記載の範囲を超える場合は、難燃剤の保存安定性の低下、熱加工時の加工性の低下、難燃製品の色相悪化、表面外観の低下等種々の不具合を発現する。殊に一般式(1)記載の有機リン系化合物は高融点化合物となり、体積メジアン径および最大粒径が大きい場合は分散性の低下による外観不良や条件によっては難燃効果の低下を起こす場合がある。当該有機リン系化合物の融点は好ましくは200℃以上であり、より好ましくは220℃以上であり、さらに好ましくは230℃以上である。かかるリン系化合物の融点測定は、示差走査熱量測定装置を用いて容易に測定することができる。
【0033】
本発明の難燃剤は一般式(1)記載の有機リン系化合物の含有量が50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%、さらに好ましくは80重量%以上である。当該有機リン系化合物の含有量が50重量%未満の場合は、難燃効果が低下し、所望の難燃性を有する難燃製品が得られない。
【0034】
本発明の一般式(1)記載の有機リン系化合物に配合できる化合物(A成分)としては特に限定されるものではないが、本発明の主たる目的からノンハロゲン系化合物が好ましい。通常、A成分の配合は、本発明の一般式(1)記載の有機リン系化合物の使用割合低減、難燃製品の難燃性改善、物理的・化学的性質の改善等の目的で配合される。A成分の例としては、他の難燃剤、難燃助剤等を挙げることができる。他の難燃剤の例としては、赤リン、ポリリン酸アンモニウム等に代表される無機リン系難燃剤、トリアリールホスフェート等に代表されるモノマー型リン酸エステル系難燃剤、レゾルシノールジフェニルホスフェート、ビスフェノールAジフェニルホスフェート等に代表される縮合型リン酸エステル系難燃剤、ホスホネート型難燃剤、ホスホン酸金属塩系難燃剤、ホスフィネート系難燃剤、ホスフィン酸金属塩系難燃剤等の有機リン系難燃剤等が挙げられる。また、ポリリン酸メラミン、ホスファゼン化合物(直鎖状、環状何れにも限定されない)等に代用されるリン窒素系の難燃剤を挙げることができる。さらに、シリコーン系難燃剤、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等に代表される無機系難燃剤であっても良い。但し、透明性を要求される用途においては、無機系難燃剤は適さない。また、有機系・無機系難燃助剤を配合することも可能である。
【0035】
次に本発明における前記一般式(1)記載の有機リン系化合物の合成法について説明する。当該有機リン系化合物は、以下に説明する方法以外の方法によって製造されたものであってもよい。
当該有機リン系化合物は例えばペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、続いて酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属化合物により処理し、次いでアラルキルハライドを反応させることにより得られる。
【0036】
また、ペンタエリスリトールにアラルキルホスホン酸ジクロリドを反応させる方法や、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させることによって得られた化合物にアラルキルアルコールを反応させ、次いで高温でArbuzov転移を行う方法により得ることもできる。後者の反応は、例えば米国特許第3,141,032号明細書、特開昭54−157156号公報、特開昭53−39698号公報に開示されている。
【0037】
当該有機リン系化合物の具体的合成法を以下説明するが、この合成法は単に説明のためであって、本発明において使用される有機リン系化合物は、これら合成法のみならず、その改変およびその他の合成法で合成されたものであってもよい。より具体的な合成法は後述する調製例に説明される。
【0038】
(I)有機リン系化合物中の前記(2)の化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、得られた生成物とベンジルアルコールの反応生成物に、ベンジルブロマイドを添加し、高温でArbuzov転移反応を行うことにより得られる。
(II)有機リン系化合物中の前記(3)の化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、1−フェニルエチルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(III)有機リン系化合物中の前記(4)の化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、2−フェニルエチルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(IV)有機リン系化合物中の前記(5)の化合物;
ペンタエリスリトールにジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを反応させることにより得ることができる。
【0039】
また別法としては、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、得られた生成物とジフェニルメチルアルコールの反応生成物に触媒を添加し、高温でArbuzov転移反応を行うことにより得られる。
当該有機リン系化合物中の不純物を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、水、メタノール等の溶剤でリパルプ洗浄(溶剤で洗浄、ろ過を数回繰り返す)を行う方法が最も効果的で、且つコスト的にも有利である。
【0040】
具体的な洗浄方法としては、一般式R−OHもしくはR10−C(O)−R11で表される化合物(Rは水素原子もしくは炭素数1〜6の飽和の直鎖もしくは分岐のアルキル基、R10およびR11は同一または異なっていてもよく、炭素数1〜6の飽和の直鎖もしくは分岐のアルキル基である。)を用いて、目的物のペンタエリスリトールジホスホネートをリパルプ洗浄する方法が好ましい。その際の洗浄温度は35℃〜120℃が好ましい。かかる洗浄温度の範囲内では生成したペンタエリスリトールジホスホネートが分解する可能性が低く、また、洗浄効果が高く、残留揮発物の含有量を低減した該ペンタエリスリトールジホスホネートを得る為には洗浄を何度も繰り返す必要が無く、生産効率の点で好ましい。上記洗浄方法を採用することにより、粉末状のペンタエリスリトールジホスホネートは鱗片状の結晶となり、乾燥性に優れたものとなる。
【0041】
上記一般式R−OHで表される化合物としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等が挙げられ、上記一般式R10−C(O)−R11で表される化合物としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、なかでも、経済的観点、操作性の観点からメタノールが好ましい。
【0042】
洗浄溶媒の使用量は、本発明で使用するペンタエリスリトールジホスホネートのモル濃度で表すと、好ましくは0.1〜5モル/L、より好ましくは0.3〜3モル/Lである。かかる範囲では洗浄に使用する溶媒量が少なく、経済的観点から好ましく、また、スラリー濃度が低く粘度も適当であるため、攪拌機への負荷が小さくなり好ましい。さらに、スラリー濃度が低くなるため、洗浄効率が高くなり、高純度の該ペンタエリスリトールジホスホネートを得る為には洗浄を何度も繰り返す必要が無く、生産効率の点で好ましい。
リパルプ洗浄の方法としては、溶剤を還流させながらペンタエリスリトールジホスホネートを洗浄、ろ過を数回(1〜5回)繰り返す方法が特に好ましい。
【0043】
(加工剤)
本発明の有機リン系化合物(ペンタエリスリトールジホスホネート)は、繊維用防炎加工剤として好適に使用される。繊維用防炎加工剤は、分散剤100重量部に上記式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネートを1〜300重量部混合して得ることができる。
分散剤としては、水、有機溶剤または樹脂(溶液、エマルジョン、ラテックスを含む)が好ましく使用される。
【0044】
防炎加工剤の調製方法としては、上記式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネートを水、有機溶剤または樹脂溶液、樹脂エマルジョン、ラテックスに混合、分散させて調製する方法が好ましい。また、必要に応じて上述した界面活性剤、安定化剤、他の防炎剤等を使用することができる。
この際、分散剤100重量部に対する上記式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネートの混合割合は好ましくは5〜200重量部、より好ましくは10〜100重量部、特に好ましくは20〜50重量部である。上記式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネートが1重量部より少ない場合は、防炎効果が十分でないことがあり、また300重量部より多くなると、樹脂の皮膜形成が悪化し易くなり、繊維製品の品質が低下することがある。
【0045】
そして、得られた繊維用防炎加工剤を繊維製品に対して、固形分として3〜150重量%付着させて防炎繊維製品を製造する。固形分として好ましくは7〜100重量%、特に好ましくは15〜70重量%付着させる。固形分の付着量が3重量%未満では防炎効果が不十分であり、150重量%より多いと繊維製品の品質が低下する。加工法としても特に限定されるものではなく、従来より行われている浸漬法、吹き付け(スプレー等)による加工、はけ塗り等のコーティング法、吸尽法(染色同浴法)、サーモゾル法が一般に用いられる。
【0046】
また、繊維製品に関しては特に限定されるものではないが、代表例として、カーテン、カーペット、絨毯、人工芝、壁装材、椅子張り、幕類(幟旗等)、カーシート、カーマット、不織布フィルター、人工皮革、電磁波シールド材等が挙げられる。繊維素材の種類も特に限定されるものではないが、代表例としてポリエステル、ナイロン、アクリロニトリル、ポリプロピレン等の合成繊維、レーヨン、綿、麻等のセルロース系繊維、あるいは羊毛、絹、羽毛等の動物性繊維等が挙げられ、単独または複合状態で使用しても良い。
【0047】
本発明のペンタエリスリトールジホスホネートは、合成皮革用難燃加工剤としても好適に使用される。難燃性合成皮革の製造方法は特に限定されるものでなく、湿式法あるいは乾式法のいずれの製造法で製造されても良い。
ここでいう湿式法とは、繊維基材上に溶剤に所定の濃度に溶解させた表皮用の樹脂をコーティングし、貧溶媒を含む凝固浴中で固化させるとともに該樹脂層中にスポンジ状に多くの微細な連通孔を生ぜしめ、その後水洗及び乾燥工程を経て製品とする方法である。
【0048】
また乾式法とは繊維基材の上に溶剤に所定の濃度に溶解した表皮用の樹脂を公知のコーティング方法により塗布し、乾燥機にて溶剤を揮散させて固化させるダイレクトコーティング法、または離型紙上に表皮用の樹脂を同じく公知のコーティング法によって塗布、乾燥し表皮樹脂層を形成させる。ここでいう離型紙としては、シリコーンタイプ、ポリプロピレンタイプ等があり、表面処理形状もフラットタイプ、エナメルタイプ、マットタイプ、エンボスタイプ等があるが、限定されるものではない。次いでこの表皮樹脂層上にポリウレタン樹脂系接着剤を公知のコーティング方法によって塗布し、繊維基材と熱圧着で貼り合わせ乾燥して製品とするラミネート法がある。
【0049】
具体的には、以下の方法により製造することができる。
離型紙上に表皮樹脂(例えばポリウレタン樹脂)を含む組成物を塗布し、必要により、熱処理、エージング処理して表皮樹脂層を形成する。次いで、表皮樹脂層表面に加熱溶融状態にある接着剤(例えばホットメルトポリウレタン)を含む組成物を塗布し、該プレポリマー組成物が粘調性を有する状態のうちに、繊維基材に貼り合わせ、室温まで冷却し、エージング処理して接着層を形成する。最後に離型紙を剥離する。
表皮樹脂組成物としては、表皮用樹脂エマルジョンまたは表皮用樹脂溶解液に上記式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネートを添加し、その他必要に応じて架橋剤、顔料等を添加した後均一分散して作製した加工液を使用することが好ましい。
【0050】
表皮樹脂組成物(加工液)を離型紙上に塗布する方法としては、従来公知の種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、リバースロールコーター、スプレーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、T−ダイコーターなどの装置を用いた方法を挙げることができる。なかでも、均一な薄膜層の形成が可能であるという点で、ナイフコーターまたはコンマコーターによる塗布が好ましい。
【0051】
また、接着剤を含む組成物としては、接着層用樹脂エマルジョンまたは接着層用樹脂溶解液に上記式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネートを添加し、その他必要に応じて架橋剤等を添加した後均一分散して作製した加工液を使用することが好ましい。接着剤を含む組成物(加工液)を表皮樹脂層に塗布する方法としては、上述したような従来公知の種々の方法を採用することができる。
【0052】
本発明のペンタエリスリトールジホスホネートは、スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、ABS樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の難燃剤としても好適に使用される。ペンタエリスリトールジホスホネートの配合量は、樹脂100重量部に対して1〜100重量部が好ましく、3〜70重量部がより好ましく、5〜50重量部がさらに好ましく、10〜30重量部が特に好ましい。
【0053】
かかる難燃性樹脂組成物は、非常に高い難燃性能を有し、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器などの種々の成形品を成形する材料として有用である。具体的には、ブレーカー部品、スイッチ部品、モーター部品、イグニッションコイルケース、電源プラグ、電源コンセント、コイルボビン、コネクター、リレーケース、ヒューズケース、フライバクトランス部品、フォーカスブロック部品、ディストリビューターキャップ、ハーネスコネクターなどに好適に用いることができる。さらに、薄肉化の進むハウジング、ケーシングまたはシャーシ、例えば、電子・電気製品(例えば電話機、パソコン、プリンター、ファックス、コピー機、ビデオデッキ、オーディオ機器などの家電・OA機器またはそれらの部品など)のハウジング、ケーシングまたはシャーシに有用である。特に優れた耐熱性、難燃性が要求されるプリンターの筐体、定着ユニット部品、ファックスなど家電・OA製品の機械・機構部品などとしても有用である。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の%は特段の表記が無い限り重量%を意味し、評価は下記の方法で行った。
【0055】
(1)有機純度
HPLC装置としてWaters社製Separations Module 2690、検出器としてWaters社製Dual λ Absorbance Detector 2487(UV−264nm)、カラムとして東ソー(株)製TSKgel ODS−120T 2.0mm×150mm(5μm)を用い、溶離液に蒸留水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度40℃で0→12min:アセトニトリル50%、12→17min:アセトニトリル50→80%、17→27min:アセトニトリル80%、27→34min:アセトニトリル80→100%、34→60min:100%のグラジエントプログラムにて測定した。測定は、ペンタエリスリトールジホスホネート50±0.5mgをアセトニトリル25mlに溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、測定した。純度は面積%として算出した。
【0056】
(2)水溶解度
20℃に調温された蒸留水100gに、ペンタエリスリトールジホスホネートを少量ずつ添加し、添加ごとに1分間撹拌した後に目視にて溶解を確認した。溶解が確認された最大の添加量を水への溶解度とした。
【0057】
(3)全含有ハロゲン成分
JIS K 7229に準拠し測定した。
【0058】
(4)全揮発性有機物含有量
HPLC装置としてWaters社製Separations Module 2690、検出器としてWaters社製Dual λ Absorbance Detector 2487(UV−264nm)および示差屈折検出器、カラムとして東ソー(株)製TSKgel ODS−120T 2.0mm×150mm(5μm)を用い、溶離液に蒸留水とアセトニトリルとの混合液を用いて、カラム温度40℃で0→12min:アセトニトリル50%、12→17min:アセトニトリル50→80%、17→27min:アセトニトリル80%、27→34min:アセトニトリル80→100%、34→60min:100%のグラジエントプログラムにて測定した。測定は、ペンタエリスリトールジホスホネート50±0.5mgをアセトニトリル25mlに溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、測定した。製造時に使用した揮発性有機物の検量線をあらかじめ作成し、ペンタエリスリトールジホスホネート中の揮発性有機物の残存量を求めた。
【0059】
(5)ΔpH値
pH測定装置(株式会社堀場製作所製 HORIBA pH METER D−52)を使用し、次に示す方法により測定した。測定に使用する蒸留水99gに1gの分散剤(フェノール型非イオン界面活性剤)を加え撹拌し、得られた水溶液のpHを測定した(測定値をpH1とする)。当該水溶液にペンタエリスリトールジホスホネートを1g加え1分間撹拌した後に、ペンタエリスリトールジホスホネートを濾過した。得られた濾液のpHを測定した(測定値をpH2とする)。ΔpH値は下記式(I)により算出した。
ΔpH値=|pH1−pH2| …(I)
【0060】
(6)体積基準メジアン径および最大粒径
日機装株式会社製マイクロトラックHRAを用い測定した。測定条件は、粒子透過性:透過、粒子形状:非球形、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.33とした。
【0061】
(7)防炎性
FMVSS−302に準拠し、防炎性の評価を行った。評価に当たっては、FMVSS−302に規定される、標線を越えてからの燃焼距離、標線を越えてからの燃焼時間、標線を越えてからの燃焼速度をそれぞれ3回測定した。不燃は標線以下で自己消火、遅燃は標線を越えて60秒以内かつ5cm以内で自己消火したことを示す。なお、燃焼速度が10cm/分を越えるものは不合格である。
【0062】
(8)難燃性
米国UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験に準じて評価を行った。どの試験片も炎を取り去った後の燃焼が10秒以内で消火し、且つ、滴下物が無い又は滴下物が綿着火をおこさないものがV−0、燃焼が30秒以内で消火し、且つ、滴下物が綿着火をおこすものがV−2であり、この評価基準以下のものをnotVとした。
【0063】
(9)チョーキング試験
実施例及び比較例で作製したシート布から適宜の大きさの試験片を切り出し、その樹脂加工面を爪で引っ掻いて白化の度合いを観察した。評価基準は以下の通り。
○:ほとんど白化しない
△:白化するが粉落ち少ない
×:白化し、粉落ち多い
【0064】
(10)外観評価
目視にて観察し、以下の評価基準に従い、評価を行った。
○:凝集物が無い、または良好な色相・外観
△:凝集物が少ない、または中程度の色相・外観
×:凝集物が多い、または色相・外観が悪い
【0065】
調製例1
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(式(2)記載の化合物、FR−1)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9−ジベンジロキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(約130℃)で4時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン20mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン20mLでリパルプ洗浄を2回実施した。得られた粗精製物とメタノール40mLをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約4時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール20mLで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶20.60g(0.050モル)を得た。生成物は質量スペクトル分析、H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析で2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイドであることを確認した。得られた白色鱗片状結晶を粉砕機(フロイントターボ社製ターボミル)にて粉砕した。
本文記載の方法で測定した有機純度は99.5%、融点は256℃、20℃における水溶解度は0.01g/100g水、全含有ハロゲン成分は100ppm、全揮発性有機物含有量は200ppm、ΔpHは0.5、体積基準メジアン径は18μm、最大粒径は150μmであった。
【0066】
調製例2
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイド(式(3)記載の化合物、FR−2)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン5180.7g(61.0モル)を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×10Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体はH、31P核磁気共鳴スペクトル分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0067】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にて1−フェニルエチルブロマイド2204.06g(11.91モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約4時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶1845.9g(4.23モル)を得た。生成物は質量スペクトル分析、H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析で2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイドであることを確認した。得られた白色鱗片状結晶を粉砕機(フロイントターボ社製ターボミル)にて粉砕した。
本文記載の方法で測定した有機純度は99.0%、20℃における水溶解度は0.01g/100g水、全含有ハロゲン成分は150ppm、全揮発性有機物含有量は220ppm、ΔpHは0.6、体積基準メジアン径は20μm、最大粒径は160μmであった。
【0068】
調製例3
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド(式(4)記載の化合物、FR−3)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン5180.7g(61.0モル)を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×10Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。H、31P核磁気共鳴スペクトル分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0069】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にて(2−ブロモエチル)ベンゼン2183.8g(11.8モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約4時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色鱗片状結晶1924.4g(4.41モル)を得た。生成物は質量スペクトル分析、H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析で2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイドであることを確認した。得られた白色鱗片状結晶を粉砕機(フロイントターボ社製ターボミル)にて粉砕した。
本文記載の方法で測定した有機純度は99.1%、融点は249℃、20℃における水溶解度は0.01g/100g水、全含有ハロゲン成分は120ppm、全揮発性有機物含有量は250ppm、ΔpHは0.3、体積基準メジアン径は22μm、最大粒径は140μmであった。
【0070】
調製例4
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(式(5)記載の化合物、FR−4)の調製
攪拌装置、攪拌翼、還流冷却管、温度計を備えた10リットル三つ口フラスコに、ジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを2058.5g(7.22モル)とペンタエリスリトール468.3g(3.44モル)、ピリジン1169.4g(14.8モル)、クロロホルム8200gを仕込み、窒素気流下、60℃まで加熱し、6時間攪拌させた。反応終了後、クロロホルムを塩化メチレンで置換し、当該反応混合物にに蒸留水6Lを加え攪拌し、白色粉末を析出させた。これを吸引濾過により濾取し、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約4時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色鱗片状結晶1156.2g(2.06モル)を得た。生成物は質量スペクトル分析、H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析で2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドであることを確認した。得られた白色鱗片状結晶を粉砕機(フロイントターボ社製ターボミル)にて粉砕した。
本文記載の方法で測定した有機純度は98.9%、20℃における水溶解度は0.01g/100g水、全含有ハロゲン成分は200ppm、全揮発性有機物含有量は250ppm、ΔpHは0.7、体積基準メジアン径は25μm、最大粒径は180μmであった。
【0071】
調製例5
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(式(2)記載の化合物、FR−5)の調製
粉砕機による粉砕をしなかった以外は、調製例1記載の調製方法にて2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイドの合成を行った。
本文記載の方法で測定した有機純度は99.5%、融点は256℃、20℃における水溶解度は0.01g/100g水、全含有ハロゲン成分は100ppm、全揮発性有機物含有量は200ppm、ΔpHは0.5、体積基準メジアン径は40μm、最大粒径は300μmであった。
【0072】
調製例6
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(式(2)記載の化合物、FR−6)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9−ジベンジロキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(約130℃)で4時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン20mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン20mLで1回洗浄し、白色結晶をろ取した。120℃、1.33×10Paで24時間乾燥し、白色の結晶21.22g(0.052モル)を得た。生成物は質量スペクトル分析、H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析で2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイドであることを確認した。得られた白色結晶を粉砕機(フロイントターボ社製ターボミル)にて粉砕した。
本文記載の方法で測定した有機純度は97.0%、融点は253℃、20℃における水溶解度は0.01g/100g水、全含有ハロゲン成分は1300ppm、全揮発性有機物含有量は1100ppm、ΔpHは1.3、体積基準メジアン径は21μm、最大粒径は140μmであった。
【0073】
実施例で用いる有機リン系化合物は、下記のものを使用した。
(i)調製例1で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド{式(2)のリン系化合物(以下FR−1と称する)}を用いた。
(ii)調製例2で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイド{式(3)のリン系化合物(以下FR−2と称する)}を用いた。
(iii)調製例3で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド{式(4)のリン系化合物(以下FR−3と称する)}を用いた。
(iv)調製例4で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{式(5)のリン系化合物(以下FR−4と称する)}を用いた。
(v)調製例5で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド{式(2)のリン系化合物(以下FR−5と称する)}を用いた。
(vi)調製例6で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド{式(2)のリン系化合物(以下FR−6と称する)}を用いた。
(vii)市販のリン酸エステル系難燃剤(大八化学工業株式会社製PX−200、以下PX−200と称する)を用いた。
【0074】
[実施例1〜4および比較例1、2]<繊維用防炎加工剤での評価>
自動車内装用カーシート布を以下の加工液でコーティング処理した後、防炎性および諸物性に関して試験した。
(試布):ポリエステル100%織物カーシート布(目付300g/m)を使用した。
(加工剤):固形分45%のポリアクリル酸エステルエマルジョン100部に非イオン界面活性材1.5部、ポリアクリル酸系増粘剤1部及び25%アンモニア水0.5部を加え、攪拌しながら上記有機リン系化合物(FR−1〜FR−6)を30部加えた。得られた加工剤を25℃にて24時間静置し、下記判定基準に基づき保存安定性の評価を行った。
○:目視判定により、凝集や沈殿が見られない。
×:目視判定により、凝集や沈殿が見られる。
(処理方法):上記方法にて調製した加工剤をドクターナイフ方式でコーティングした(調製後3時間以内の加工剤を使用した)。加工剤の固形分付着量は100g/mとした。乾燥はプレドライが80℃で5分間、キュアリングは150℃で1分間とした。
(試験結果):安定性、防炎性、チョーキング試験、外観評価の結果について下記表1に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
[実施例5〜8および比較例3、4]<エポキシ樹脂での評価>
フェノールノボラック型エポキシ樹脂EPICLON N−770(大日本インキ工業(株)製、エポキシ当量190g/eq)100重量部、ジシアンジアミド5.5重量部、有機リン系化合物(FR−1〜FR−6)30重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1部に、メチルエチルケトンを加え、不揮発分濃度50重量%となるようにワニスを調製した。この樹脂ワニスを用いて、ガラスクロス(厚さ0.18mm、日東紡績(株)製)100部にワニス固形分で80部含浸させて、150℃の乾燥機炉で4分乾燥させ、樹脂含有量44.4%のプリプレグを作製した。得られたプリプレグ8枚を重ね、その上下に厚さ35μmの電解銅箔を重ねて、圧力3.9×10Pa、温度170℃で120分加熱加圧成形を行い、厚さ1.6mmの両面銅張り積層板を得た。得られた積層板について、難燃性を測定した。一方、上記調製の樹脂ワニスをガラス板上に塗布し、室温/1時間乾燥させた後、乾燥炉にて、80℃1時間、150℃1時間、170℃2時間乾燥させた。得られた樹脂について、外観評価を実施した。評価結果を表2に示した。
【0077】
【表2】
【0078】
[実施例9〜14および比較例5〜8]<耐衝撃性ポリスチレン樹脂での評価>
市販の耐衝撃性ポリスチレン(PSジャパン株式会社製HIPS H9152)100重量部に対して、有機リン系化合物(FR−1〜FR−6、PX−200)を表3記載の組成で添加し、タンブラーにて配合し、15mmφ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)を用いて、シリンダー温度200℃にてペレット化し、得られたペレットを70℃の熱風乾燥機にて4時間乾燥を行った。該ペレットを射出成形機((株)日本製鋼所製、JSW J75EIII)を用いて、シリンダー温度210℃、金型温度40℃にて厚み1.6mmのUL−94燃焼試験片および厚み2mmの見本板を成形した。得られた成形板を用いて難燃性、外観評価を実施した結果を表3に示した。
【0079】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の難燃剤は、各種用途において高度な難燃性と良好な外観特性を有する難燃製品を得るために有用である。