(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る小型電動車両について、具体化した本実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の小型電動車両は、電動走行状態と手押し走行状態に切り替えることが可能な電動三輪車である。電動走行状態では、電動モーターを駆動源とする通常の電動走行が行われる。手押し走行状態では、利用者が手押し操作する台車(カート)のような手押し走行が行われる。尚、以下の説明に用いる各図面では、基本的構成の一部が省略されて描かれていることがある。また、ブレーキ関係や電気配線関係等は、省略されて描かれている。
【0019】
[1.電動走行状態]
図1及び
図2に表すように、本実施形態の小型電動車両1では、ハンドルシャフトホルダー11を備えている。ハンドルシャフトホルダー11の上端部には、ハンドルシャフト13が略水平方向に回動可能に取り付けられている。ハンドルシャフト13の上端部には、ハンドル15が固設されている。ハンドルシャフトホルダー11の下端部には、フロントフォーク17が固設されている。フロントフォーク17の下端部には、前輪19が回動可能に支持されている。
【0020】
ハンドルシャフトホルダー11には、第1フロントフレーム21の前端部が固設されている。第1フロントフレーム21の中央部には、フレーム回動機構23を介して、第2フロントフレーム25の前端部が取り付けられている。フレーム回動機構23は、第1フロントフレーム21及び第2フロントフレーム25を一直線状に展開することを可能にする一方、ハンドルシャフト13に対して第2フロントフレーム25を近接させて折り畳むことを可能にする(後述する
図13等参照)。
【0021】
第2フロントフレーム25の後端部には、第1フレーム支持機構27を介して、メインフレーム29の前端部が取り付けられている。第1フレーム支持機構27は、第2フロントフレーム25及びメインフレーム29を
図1(b)視で略V字状に展開して固定することを可能にする一方、その固定を解除して、第2フロントフレーム25及びメインフレーム29を
図1(b)視で逆V字状に近接させて折り畳むことを可能にする(後述する
図13等参照)。
【0022】
メインフレーム29の後端部には、ブラケット31が固設されている。ブラケット31には、第2フレーム支持機構33を介して、シートフレーム35が取り付けられている。第2フレーム支持機構33は、メインフレーム29及びシートフレーム35を
図1(b)視で略V字状に展開して固定することを可能にする一方、その固定を解除して、メインフレーム29及びシートフレーム35を近接させて折り畳むことを可能にする(後述する
図13等参照)。
【0023】
シートフレーム35の上端部には、シート回動機構36を介して、シート37が取り付けられている。シート回動機構36は、シートフレーム35及びシート37を
図1(b)視で逆V字状に展開することを可能にする一方、シート37を回動移動させることによりシート37の前端部を上方向に向けさせて折り畳むことを可能にする(後述する
図13等参照)。また、シートフレーム35の中央部には、シート37の後側を囲んだパイプ材39が固設されている。
【0024】
さらに、メインフレーム29には、リアフレーム41が固設されている。リアフレーム41の右端には右側後輪43Aが回動可能に支持され、リアフレーム41の左端には左側後輪43Bが回動可能に支持されている。左側後輪43Bには、電動モーター45が取り付けられている。つまり、左側後輪43Bは駆動輪である。
【0025】
電動走行状態では、前輪19、右側後輪43A、及び左側後輪43Bが、走行面Uに接地している。前輪19、右側後輪43A、及び左側後輪43Bは、電動モーター45の駆動力が左側後輪43Bに伝達されると、走行面U上で回転する。
【0026】
次に、
図3乃至
図5を参照して、以下のように構成される可変機構47(
図5参照)について説明する。
図3に表すように、ブラケット31の後端部には、屈曲状の第1ガイド溝101が設けられている。第1ガイド溝101の下端部には、ノッチ部103が第1ガイド溝101に連ねて設けられている。また、ブラケット31には、第1回動軸105、第2回動軸107、及び第3回動軸109が設けられており、スプリング111が第1回動軸105の周辺に内蔵されている。
【0027】
図4に表すように、第1回動軸105には、第1ワンタッチレバー113の前端部が取り付けられている。これにより、第1ワンタッチレバー113は、第1回動軸105を中心にして回動可能である。第1ワンタッチレバー113の中央部には、直線状の第2ガイド溝115が設けられている。第1ワンタッチレバー113の後端部には、平板面を有する第1ペダル117が固設されている。
【0028】
図5に表すように、第2回動軸107には、スイングアーム119の一端部が取り付けられている。これにより、スイングアーム119は、第2回動軸107を中心にして回動可能である。スイングアーム119の中央部には、直線状の第3ガイド溝121が設けられている。スイングアーム119の両他端部には、一対の自在キャスター123,123が取り付けられている(
図2参照)。
【0029】
一対の自在キャスター123,123は、ショッピングカートの規格に準じたもの(例えば、100mm程度の車輪径のもの)が使用される。
【0030】
それに加えて、一対の自在キャスター123,123は、右側後輪43A及び左側後輪43Bと比べて、台車(カート)のような手押し操作によって走行面上を回転する際の走行抵抗が小さいものが使用される。そのような使用を実現するためには、例えば、右側後輪43A及び左側後輪43Bのようなゴム車輪より硬度が高い材質の車輪(例えば、ウレタン車輪、ナイロン車輪、フェノール車輪等)を備えたものを一対の自在キャスター123,123として使用したり、或いは、いわゆる坂道転倒防止キャスターより車輪径が大きいものであるが右側後輪43A及び左側後輪43Bより車輪径が小さいものを一対の自在キャスター123,123として使用したりする。但し、一対の自在キャスター123,123は、右側後輪43A及び左側後輪43Bと比べて走行抵抗が少なければ、上述した車輪材質や車輪径に限られるものではない。
【0031】
第1ガイド溝101、第2ガイド溝115、及び第3ガイド溝121には、ガイド軸Sが挿設されている。ガイド軸Sの両端部には、ボルト等の抜止部材が設けられている。これにより、第1ガイド溝101、第2ガイド溝115、及び第3ガイド溝121からガイド軸Sが抜け外れないようにされている。
【0032】
第1ワンタッチレバー113は、ブラケット31に内蔵されたスプリング111によって、
図4視で反時計回り(矢印Z1回り)に回動移動するように付勢されている。尚、その回動移動については、第1回動軸105を回動中心とする。
【0033】
このようにして構成される可変機構47によって、電動走行状態におけるガイド軸Sは、第1ガイド溝101、第2ガイド溝115、及び第3ガイド溝121内の各ホームポジションに保持される。そのため、第1ペダル117の平板面は走行面Uに略平行となる位置に保持されると共に、一対の自在キャスター123,123は走行面Uから離間した位置に保持される。
【0034】
つまり、本実施形態の小型電動車両1では、電動走行状態にあると、前輪19、右側後輪43A、及び左側後輪43Bが走行面Uに接地すると共に、一対の自在キャスター123,123が走行面Uから離間している。従って、一対の自在キャスター123,123が電動走行状態を妨げることはない。
【0035】
ちなみに、一対の自在キャスター123,123が走行面Uから離間する距離は、想定される坂道走行に支障がない程度の高さに設定される。よって、電動走行状態における一対の自在キャスター123,123は、いわゆる坂道転倒防止キャスターとして機能することができる。
【0036】
[2.手押し走行状態]
次に、
図6乃至
図10に表す手押し走行状態について説明する。手押し走行状態では、
図6及び
図7に表すように、右側後輪43A及び左側後輪43Bが走行面Uから離間すると共に、前輪19及び一対の自在キャスター123,123が走行面Uに接地している。利用者は、本実施形態の小型電動車両1の後側よりパイプ材39を握りながら、本実施形態の小型電動車両1を押し進むことにより、台車(カート)のような手押し走行を行うことができる。
【0037】
電動走行状態から手押し走行状態に切り替えられる際には、
図8乃至
図10に表すように、第1ワンタッチレバー113が、ブラケット31に内蔵されたスプリング111の付勢力に対抗しながら、
図8視で時計回り(矢印Z2回り)に回動移動される。尚、その回動移動については、第1回動軸105が回動中心とされ、例えば、利用者が第1ペダル117の平板面を走行面Uに向かって踏み込むことによって実現される。
【0038】
第1ワンタッチレバー113が
図8視で時計回り(矢印Z2回り)に回動移動すると、第1ワンタッチレバー113の第2ガイド溝115内では、ガイド軸Sが上記ホームポジションから移動して
図8視で左端にまで導かれる。
【0039】
ブラケット31の第1ガイド溝101内では、ガイド軸Sが上記ホームポジションから移動して
図9視で下端にまで導かれた後、ガイド軸Sがノッチ部103に移動して係止される。ブラケット31の第3ガイド溝121内では、ガイド軸Sが上記ホームポジションから移動して
図10視で略中央にまで導かれる。
【0040】
このように動作する可変機構47によって、
図6及び
図7に表すように、一対の自在キャスター123,123が走行面Uに接地され、その接地によって、右側後輪43A及び左側後輪43Bが走行面Uから浮上する。
【0041】
つまり、本実施形態の小型電動車両1では、電動走行状態から手押し走行状態に切り替えられると、一対の自在キャスター123,123が走行面Uに接地し、右側後輪43A及び左側後輪43Bが走行面Uから浮上する。手押し走行状態では、右側後輪43A及び左側後輪43Bと比べて走行抵抗が小さい一対の自在キャスター123,123が走行面U上を回転するので、軽やかな手押し走行が行われる。
【0042】
以上より、本実施形態の小型電動車両1は、本来備えている電動走行性能に支障を与えることなく手押し走行時の軽快性を実現させており、電動走行と手押し走行を両立させている。
【0043】
また、台車(カート)のような手押し走行が行われるときは、駆動輪である左側後輪43Bが走行面Uから浮上しており、利用者の手押しによる力のみが駆動源となることから、暴走等の危険がない。
【0044】
さらに、走行面U上を回転する一対の自在キャスター123,123によって、小さな旋回を自在に行うことが可能となるので、手押し走行時の旋回性が向上する。
【0045】
さらに、例えば、利用者が第1ペダル117の平板面を走行面Uに向かって踏み込むようなワンタッチ動作を行うと、第1ワンタッチレバー113が回動し、その回動に応じて、電動走行状態から手押し走行状態に切り替えられるので、手押し走行状態への切替操作が容易且つ楽である。
【0046】
[3.ハンドルのロック]
図11及び
図12に表すように、本実施形態の小型電動車両1は、係止部材201、サポート部材203、及び係止穴205を備えている。係止部材201は、鈎状に形成されており、ハンドルシャフト13の下端部にて図視で上下方向に回動可能に取り付けられている。サポート部材203は、ハンドルシャフト13側に接する係止部材201の一端部にて図視で上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0047】
係止穴205は、ハンドルシャフトホルダー11に設けられた穴とハンドルシャフト13の下端部に設けられた穴で構成される。直進するようにハンドル15が操作されたときに、ハンドルシャフトホルダー11の穴とハンドルシャフト13の穴が連通する。
【0048】
図1(a)及び
図6(a)に表すように、サポート部材203の下端部では、車幅方向の横幅がハンドルシャフト13のシャフト径程度で狭い。これに対して、サポート部材203の上端部では、車幅方向の横幅がシート37の横幅程度に広く、その横幅方向の形状が水平方向に平行な直線状になっている。
【0049】
手押し走行状態において、直進するようにハンドル15が操作された後で、サポート部材203の上端部が
図11視で時計回り(矢印Z3回り)に回動移動されると、この回動移動に連動して、係止部材201の先端部が
図11視で時計回り(矢印Z3回り)に回転移動してハンドルシャフトホルダー11に到達する。これにより、
図11に表すように、係止部材201の先端部が、係止穴205(つまり、ハンドルシャフトホルダー11の穴及びハンドルシャフト13の穴)に挿入される。
【0050】
そのため、ハンドルシャフトホルダー11とハンドルシャフト13の相対的位置関係が固定されるので、直進するように操作されたハンドル15がロックされる。よって、係止部材201と係止穴205は、ハンドルロック機構Rを構成する。
【0051】
以上より、本実施形態の小型電動車両1では、手押し走行状態において、直進するように操作されたハンドル15をロックさせることができ、そのようにハンドル15がロックされると走行方向が安定するので、手押し走行時の操作性と安全性が向上する。
【0052】
[4.ショッピングバスケットの搭載]
本実施形態の小型電動車両1では、手押し走行状態において、直進するように操作されたハンドル15がロックされると、
図12に表すように、ショッピングバスケット207を置くことができる。ショッピングバスケット207が置かれると、
図12視でショッピングバスケット207の右側端部がシート37で支持され、
図12視でショッピングバスケット207の左側端部がサポート部材203の上端部で支持される。
【0053】
従って、本実施形態の小型電動車両1は、手押し走行時にショッピングカートとして機能することが可能である。
【0054】
このようにして、本実施形態の小型電動車両1がショッピングカートとして利用される場合には、シート37がショッピングバスケット207を受け止める機能を果たし、シート37の後側を囲んだパイプ材39がショッピングカートのハンドルとしての機能を果たす。
【0055】
また、本実施形態の小型電動車両1がショッピングカートとして利用される場合には、電動走行状態から手押し走行状態に切り替える必要があるが、上述したように、手押し走行状態への切替操作は容易且つ楽である。そのため、本実施形態の小型電動車両1は、手軽にショッピングカートとして店舗内で利用できる。
【0056】
その一方で、利用者は、本実施形態の小型電動車両1を電動走行状態で使用することにより店舗の入口付近まで移動すれば、本実施形態の小型電動車両1をシニアカーと同様な歩行補助車として使用することが可能である。よって、店舗の駐車場から店舗の入口まで利用者が歩行して移動することが不要となるので、その移動負担を利用者が感じることはない。
【0057】
その後、利用者は、上述したように、本実施形態の小型電動車両1を店舗内でショッピングカートとして手軽に利用できるので、本実施形態の小型電動車両1から店舗側のショッピングカートに移行する必然性が無くなり、その移行の手間が省かれる。従って、利用者は、本実施形態の小型電動車両1を店舗内外で使い続けられるので、店舗側は、本実施形態の小型電動車両1のための駐車スペースや保管場所を確保する必要がない。
【0058】
[5.折畳状態]
図13及び
図14に表すように、本実施形態の小型電動車両1は折り畳むことが可能である。尚、符号BAは、電動モーター45の駆動源であるバッテリーを示している。
【0059】
折畳状態では、直進するように操作されたハンドル15がロックされ、手押し走行状態と同様にして、右側後輪43A及び左側後輪43Bが走行面Uから離間すると共に、前輪19及び一対の自在キャスター123,123が走行面Uに接地している。従って、折畳状態で走行面U上を移動する際も、手押し走行状態と同様にして、軽快性が実現され、旋回性、操作性、及び安全性が向上する。
【0060】
[6.その他]
ちなみに、本実施形態において、左側後輪43Bは、「駆動輪」の一例である。スプリング111は、「付勢部材」の一例である。第1ワンタッチレバー113は、「ワンタッチレバー」の一例である。一対の自在キャスター123,123は、「補助輪」の一例である。
【0061】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、係止部材201とサポート部材203では、それぞれの回動移動が連動せず個別に行われても良い。
【0062】
また、第1ワンタッチレバー113に代えてガイド軸Sを付勢させても良い。このような場合には、第1ガイド溝101、第2ガイド溝115、及び第3ガイド溝121内において、ガイド軸Sが上方向に付勢される。
【0063】
また、
図1乃至
図5等に表すように、第3回動軸109に第2ワンタッチレバー301の前端部を回動可能に取り付けると共に、第2ワンタッチレバー301の後端部に平板面を有する第2ペダル303を固設しても良い。このような場合には、第2ワンタッチレバー301は、ブラケット31に内蔵されたスプリングによって、
図4視で反時計回り(矢印Z1回り)に回動移動するように付勢される。そのため、第2ペダル303の平板面は走行面Uに略平行となる位置に保持される。その回動移動については、第3回動軸109を回動中心とする。
【0064】
第2ワンタッチレバー301の後端部には、
図15に表すように、突片部305が形成されている。突片部305は、手押し走行状態において第2ワンタッチレバー301が
図4視で時計回り(矢印Z4回り)に回動移動されると、ガイド軸Sをノッチ部103から押し出して第1ガイド溝101に導く。その回動移動については、第3回動軸109が回動中心とされ、例えば、利用者が第2ペダル303の平板面を走行面Uに向かって踏み込むことによって実現される。つまり、利用者が第2ペダル303の平板面を走行面Uに向かって踏み込むようなワンタッチ動作によって、手押し走行状態から電動走行状態に切り替えることが可能である。