特許第6546120号(P6546120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 象印マホービン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546120
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/00 20060101AFI20190705BHJP
【FI】
   A47J37/00 301
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-97293(P2016-97293)
(22)【出願日】2016年5月13日
(65)【公開番号】特開2017-202243(P2017-202243A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2018年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】前田 達也
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−011236(JP,A)
【文献】 実開昭59−133137(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン材料を収容する容器と、
前記容器を出し入れするための横向きの開口部を有する調理室とを備え、
前記容器は、前記調理室に装着するための被装着部を有し、
前記調理室は、底壁に前記被装着部を取外可能に装着するための容器装着部を有し、
前記被装着部及び前記容器装着部のうち、一方に軸部が突設され、他方に前記軸部を着脱可能に支持する受部が設けられており、
前記受部によって前記軸部を支持させた状態で、前記容器は前記軸部を中心として、前記底壁に対して傾斜した第1の姿勢と、前記被装着部が前記容器装着部に装着された第2の姿勢との間を回転可能であり、
前記被装着部及び前記容器装着部のうち前記受部を設けた方に、前記容器を前記開口部から前記容器装着部に装着する方向へ延び、前記軸部を前記受部に誘導する傾斜したガイド部が形成されている、加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
調理室の内部にパン材料を収容した容器を装着して、パンを焼き上げる加熱調理器が知られている。特許文献1の加熱調理器では、容器を出し入れする開口部が横向きに開口している調理室が形成されている。また、調理室の底壁には、容器を取外可能に取り付けるための装着部材が着脱可能に配置されており、容器には、被装着部が設けられている。容器は、装着部材上を滑らせて調理室内に配置され、被装着部を装着部材の筒状の装着孔に差し込むことで調理室内に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−42602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の加熱調理器では、装着部材から容器を取り外す際に、容器を垂直方向に持ち上げて、被装着部を装着孔から引き抜く必要がある。その際、容器が調理室の天壁に当たることがあるため、容器の取外作業性が悪い。なお、調理室の全高を高くすれば、天壁に容器が当たり難くなるが、この場合には加熱調理器自体が大型化する。
【0005】
本発明は、調理室の壁に容器が当たらないように簡単に容器を取り外すことができ、小型化も可能な加熱調理器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、パン材料を収容する容器と、前記容器を出し入れするための横向きの開口部を有する調理室とを備え、前記容器は、前記調理室に装着するための被装着部を有し、前記調理室は、底壁に前記被装着部を取外可能に装着するための容器装着部を有し、前記被装着部及び前記容器装着部のうち、一方に軸部が突設され、他方に前記軸部を着脱可能に支持する受部が設けられており、前記受部によって前記軸部を支持させた状態で、前記容器は前記軸部を中心として、前記底壁に対して傾斜した第1の姿勢と、前記被装着部が前記容器装着部に装着された第2の姿勢との間を回転可能である、加熱調理器を提供する。
【0007】
この加熱調理器によれば、容器を開口部から調理室内に挿入し、底壁に対して容器を傾斜させた第1の姿勢として、軸部を受部に支持させる。この状態で、軸部を中心として容器を回転させると、容器装着部に被装着部を装着させた第2の姿勢になる。よって、簡易な構造で容器を調理室内に簡単に装着できる。また、第2の姿勢の容器を軸部を中心として装着時と逆向きに回転させると、被装着部の開口部側が容器装着部から離脱した第1の姿勢になる。この状態で容器を開口部側へ引き抜くことで、調理室から容器を簡単に取り外すことができる。よって、調理室の壁に容器が当たらないように、調理室内から容器を簡単に取り外すことができる。これにより、調理室の全高を低くすることも可能なため、加熱調理器の小型化も可能である。
【0008】
前記被装着部及び前記容器装着部のうち前記受部を設けた方に、前記容器を前記開口部から前記容器装着部に装着する方向へ延び、前記軸部を前記受部に誘導する傾斜したガイド部が形成されてもよい。この態様によれば、軸部をガイド部に配置することで、軸部を受部に簡単に誘導できるため、容器の被装着部を調理室の容器装着部に装着する際の作業性を向上できる。特に、調理室に装着する際の容器は、内部に水分を含むパン材料が収容されているため重いため、容器をガイド部に載置することでユーザの利便性を大幅に向上できる。
【0009】
前記容器の底壁部には、混練羽根が装着される回転軸が上下方向に延びるように回転可能に配置されていることが好ましい。ここで、パン材料は回転軸に装着された混練羽根の回転によって混練され、この混練時には混練羽根の回転方向の力が容器に作用する。その回転方向が容器を調理室の容器装着部から取り外す際の操作方向と同じ場合には、混練時に調理室の容器装着部から容器が外れる可能性がある。しかし、この態様によれば、混練羽根の回転方向に対して、調理室の容器装着部から容器の被装着部を取り外す方向は、直交方向である。よって、混練時に容器装着部から被装着部が離脱する方向に力が作用することはないため、調理室の容器装着部から容器が外れることを確実に防止できる。
【0010】
前記被装着部及び前記容器装着部のうち、一方に係合突起が設けられ、他方に前記係合突起が取外可能に係合する係合穴が設けられてもよい。この態様によれば、容器の被装着部を調理室の容器装着部に装着した状態を確実に保持できる。
【0011】
前記調理室には、被調理物を載置するための載置部材が取外可能に装着されてもよい。この態様によれば、容器を用いた製パンに加え、載置部材を用いたグリル調理又はコンベクション調理が可能になる。よって、ユーザが加熱調理器を使用する際の利便性を向上できる。
【0012】
前記被装着部には、前記受部によって前記軸部を支持させた状態で、前記軸部を中心とする曲面部が設けられてもよい。この態様によれば、軸部を中心として容器を回転させることで、被装着部を容器装着部に確実に着脱することができる。
【0013】
前記被装着部は、前記容器を装着する方向に沿って延びる側壁部を有し、前記容器装着部の前記開口部側には、前記側壁部を支持する位置決め凹部が設けられてもよい。この態様によれば、位置決め凹部によって被装着部が位置決めされるため、容器を調理室に装着する際の作業性を更に向上できる。また、容器装着部に被装着部を取り付けた状態でのガタツキを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の加熱調理器では、軸部を受部に支持させた状態で、軸部を中心として容器は、底壁に対して傾斜した第1の姿勢と、被装着部を容器装着部に装着した第2の姿勢とに回転可能であるため、調理室の壁に容器が当たらないように、調理室に対して容器を簡単に取り付けたり取り外したりすることができる。これにより、調理室の全高を低くすることも可能なため、加熱調理器の小型化も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の加熱調理器を示す斜視図。
図2A】パンケースを装着した加熱調理器を側方から見た断面図。
図2B】パンケースを装着した加熱調理器を正面から見た断面図。
図3】焼き網を装着した加熱調理器を正面から見た断面図。
図4図1の加熱調理器の背面側を示す分解斜視図。
図5】パンケースの装着構造を示す断面斜視図。
図6】パンケースの装着構造を示す分解斜視図。
図7】パンケースの装着構造を示す断面図。
図8】パンケースの装着構造を示す断面図。
図9A】パンケースの被装着部を調理室のケース装着部に装着する第1工程を示す斜視図。
図9B】パンケースの被装着部を調理室のケース装着部に装着する第2工程を示す斜視図。
図10A】パンケースの被装着部を調理室のケース装着部に装着する第3工程を示す断面図。
図10B図10Aの一部拡大断面図。
図11A】パンケースの被装着部を調理室のケース装着部に装着した状態を示す断面図。
図11B図11Aの一部拡大断面図。
図12】第2実施形態のパンケースの被装着部と調理室のケース装着部を示す分解斜視図。
図13A】第2実施形態の被装着部をケース装着部に装着する第1工程を示す斜視図。
図13B】第2実施形態の被装着部をケース装着部に装着する第2工程を示す斜視図。
図14】係合突起と係合穴の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1から図3は、本発明の第1実施形態に係る加熱調理器20を示す。この加熱調理器20は、グリル調理とコンベクション調理を実行可能な製パン器である。外装体22の内部には、調理室25と加熱室35とが設けられている。ベーカリー処理は、パン材料を収容するパンケース1を調理室25内に装着して行われる。グリル調理とコンベクション調理は、被調理物を載せる載置部材である焼き網17と、被調理物の焼き屑等を受ける屑受け皿18とを調理室25内に装着して行われる。なお、グリル調理には、パンを焼くトースターが含まれている。
【0018】
(加熱調理器の全体構成)
図1から図3を参照すると、調理室25は、底壁26、一対の側壁27,27、天壁28、及び後壁29によって囲まれ、後壁29と対向する正面側を開口部30とした空間である。開口部30は、上下以外の正面で横向きに開口しており、外装体22に配置されている開閉可能な蓋体23によって閉塞されている。図2Aに最も明瞭に示すように、調理室25と加熱室35とは、隔壁である後壁29によって区画されている。図4を併せて参照すると、加熱室35は、一端開口のヒータケース36を後壁29の背面側に配置することで、このヒータケース36の内部に形成されている。後壁29には、調理室25と加熱室35とを連通させる吸込口31と吹出口32とが設けられている。吸込口31は、多数のパンチ孔からなり、加熱室35の中央領域に位置するように1箇所だけ設けられている。吹出口32は、垂直方向に延びるスリットからなり、加熱室35の両側に対向するように一対設けられている。
【0019】
調理室25には、第1加熱ヒータである4本のグリルヒータ38A〜38Dが配置されている。加熱室35には、吸込口31と吹出口32の間に位置するように、第2加熱ヒータである2本のコンベクションヒータ40A,40Bが配置されている。これらヒータ38A〜38D,40A,40Bとしては、絶縁材料で構成された直管状の外郭内に発熱体を配置したガラス管ヒータを用いることができる。また、加熱室35には、一対のコンベクションヒータ40A,40Bの間に循環ファン42が配置されている。この循環ファン42は、吸込口31と対向するように配置されており、ヒータケース36の外方に配置したファンモータ43によって回転される。ファンモータ43の出力軸には、循環ファン42の他に、ファンモータ43を冷却するための冷却ファン44が連結されている。
【0020】
調理室25の側壁27には、焼き網17を取外可能に装着するための網装着部46が設けられている。また、調理室25の底壁26には、パンケース1の被装着部6を取外可能に装着するためのケース装着部48が設けられている。ケース装着部48の内部には、パンケース1内の混練羽根14(図5参照)に連結するための連結部材58が回転可能に配置されている。また、調理室25及び加熱室35の外部には、駆動モータ59、小径の第1プーリ60、及び大径の第2プーリ61が配置されている。第1プーリ60と第2プーリ61には、無端状のベルト62が掛け渡されている。また、連結部材58と第2プーリ61とは、回転軸63に対して相対的に回転不可能に固定されることで、一体的に回転可能である。
【0021】
図2A及び図2Bに示すように、調理室25にパンケース1を装着してベーカリー処理を実行すると、調理室25内の下側グリルヒータ38A,38B、及び駆動モータ59が動作され、予熱、混練、発酵、及び焼成の各工程を経てパンが製パンされる。図3に示すように、調理室25に焼き網17を装着してグリル調理を実行すると、調理室25内全てのグリルヒータ38A〜38Dが動作され、グリルヒータ38A〜38Dによって調理室25内を加熱することで、輻射熱で被調理物が加熱調理される。焼き網17にパンが載せられている場合には、輻射熱でパンが焼き上げられる。
【0022】
調理室25に焼き網17を装着してコンベクション調理を実行すると、加熱室35内のコンベクションヒータ40A,40B、及びファンモータ43が動作される。すると、循環ファン42が回転することで、吸込口31から調理室25内の空気が加熱室35内に吸引され、加熱室35内の空気が吹出口32から調理室25内へ供給される。加熱室35に吸引された空気は、吹出口32に至るまでの間にコンベクションヒータ40A,40Bの周囲を通過することで、コンベクションヒータ40A,40Bによって加熱される。よって、加熱室35内の空気は、設定温度に昇温され、設定された流速の熱風として、吹出口32から調理室25に供給される。調理室25内では、吹出口32から吐出された熱風が流動し、熱風が被調理物に衝突することで、空気の熱で被調理物が加熱調理される。
【0023】
(グリルヒータの配置の詳細)
図2A及び図2Bに示すように、調理室25の底壁26の上方には、左右及び上下に各一対のグリルヒータ38A〜38Dが配置されている。これらのグリルヒータ38A〜38Dは、調理室25の開口部30側から後壁29側へ、パンケース1を出し入れする方向(図2において矢印Xで示す方向及び逆方向)である側壁27に沿って直線状に配置されている。グリルヒータ38A〜38Dは、パンケース1をケース装着部48に装着した状態で開口部30から調理室25内を見て、パンケース1の投影像以外の部分で、かつパンケース1の上端開口4の上方以外の部分に配置されている。なお、パンケース1の投影像以外とは、開口部30から調理室25内を見た際の投影面である後壁29に映し出されるパンケース1の像のことである。
【0024】
下ヒータである左右一対の下側グリルヒータ38A,38Bは、パンケース1をケース装着部48に装着した状態で、パンケース1の側壁部2の横に間隔をあけて配置されている。詳しくは、左下側グリルヒータ38Aの右側頂部、及び右下側グリルヒータ38Bの左側頂部は、対向するパンケース1の側壁部2に対して設定された間隔Iをあけて位置している。上ヒータである左右一対の上側グリルヒータ38C,38Dは、パンケース1をケース装着部48に装着した状態で、パンケース1の上端開口4よりも上方に配置されている。また、上側グリルヒータ38C,38Dは、下側グリルヒータ38A,38Bの真上に位置するように、側壁部2に対して設定された間隔Iをあけて位置している。
【0025】
このようにグリルヒータ38A〜38Dを配置した調理室25では、開口部30からケース装着部48までの間にグリルヒータ38A〜38Dは勿論、パンケース1が干渉するような部材はない。よって、水分を含むパン材料を収容している重いパンケース1を装着する場合でも、ケース装着部48に装着する作業性を向上できる。また、ベーカリー処理によりパンが膨らんでパンケース1の上端開口4からパンが膨出しても、その膨出部分が上側グリルヒータ38C,38Dに干渉することを抑制できる。そして、焼き上がったパンを含むパンケース1を調理室25から取り出す際に、パンケース1及びパンが干渉する部材はないため、取出作業性を向上できる。
【0026】
(パンケースの装着構造の詳細)
加熱調理器20では、パンケース1を出し入れする時に、パンケース1がグリルヒータ38A〜38Dだけでなく天壁28にも当たる可能性がある。これは、パンケース1をケース装着部48から取り外す際に、パンケース1を上向きに移動させる必要があるためである。但し、この問題は、底壁26から天壁28までの調理室25の全高を高くすれば防止できる。しかし、調理室25の全高を高くすると、調理室25が大型になるため、加熱調理器20自体も大型化する。しかも、調理室25の空間が広くなると、グリルヒータ38A〜38D及びコンベクションヒータ40A,40Bによる加熱効率も悪くなる。そこで、本実施形態では、パンケース1と調理室25の装着構造を以下のようにしている。
【0027】
図5から図11Bに示すように、パンケース1の被装着部6には軸部8が形成され、調理室25のケース装着部48には受部53が形成されている。軸部8を受部53に支持させた状態で、軸部8を中心としてパンケース1を第1の姿勢(図10A参照)から第2の姿勢(図11A参照)に回転させることで、被装着部6がケース装着部48に取外可能に装着され、パンケース1が調理室25に装着されるようにしている。
【0028】
詳しくは、図5及び図6に示すように、被装着部6は、パンケース1の底壁部3に固定されている。この被装着部6には、回転軸12が上下方向に延びるように配置されている。回転軸12の上端側は、底壁部3を貫通してパンケース1内に突出されている。この回転軸12の上端には羽根取付部13が設けられており、この羽根取付部13にパン材料を混練する混練羽根14が取外可能に取り付けられている。図7を併せて参照すると、回転軸12の下端側は、被装着部6の下端より上側に位置している。この回転軸12の下端には被連結部材15が固定されている。なお、被連結部材15の下端も、被装着部6の下端より上側に位置している。
【0029】
ケース装着部48は、底壁26に形成されている凹部26aに固定されている。図3を参照すると、ケース装着部48は、グリル調理又はコンベクション調理の実行時には、調理室25内に屑受け皿18を配置することで、この屑受け皿18によって覆い隠される。このケース装着部48には、回転軸63が上下方向に延びるように配置されている。回転軸63は、下端側が調理室25より下側に位置され、上端側が底壁26を貫通してケース装着部48内に突出されている。図2Aを併せて参照すると、回転軸63には、調理室25外に位置する下端に第2プーリ61が固定され、ケース装着部48内に位置する上端に連結部材58が固定されている。連結部材58には、被連結部材15をケース装着部48に装着することで、連結部材58が連結される。
【0030】
被装着部6は、回転軸12の軸方向から見ると、平面視四角形状の上壁部6aを備えている。この上壁部6aには、回転軸12を回転可能に挿通する挿通孔7が設けられている。また、被装着部6は、上壁部6aの両側に、パンケース1の装着方向Xに沿って延びる長方形状の側壁部6b,6bを備えている。これら側壁部6b,6bには、装着方向Xの端部に円柱状の軸部8,8がそれぞれ設けられている。この軸部8は、装着方向X及び回転軸12の延び方向Yに対して直交する方向Zに突出している。
【0031】
図7を併せて参照すると、被装着部6は、装着方向Xの開口部30側(手前側)に、YZ平面状に延びる長方形状の端壁部6cを備えている。この端壁部6cの下端には、軸部8を中心とする円弧状の曲面部9が設けられている。図8を併せて参照すると、端壁部6cには、開口部30側に突出する係合突起10が設けられている。本実施形態の係合突起10は球状部材によって構成されており、端壁部6cに形成した孔にスプリング11と一緒に配置されることで、外向きに付勢されている。
【0032】
引き続いて図5及び図6を参照すると、ケース装着部48は、回転軸63の軸方向から見ると円形状の下壁部49を備えている。この下壁部49には、連結部材58を配置する円形状の凹部50が設けられている。この凹部50には、回転軸63を回転可能に挿通する挿通孔51が設けられている。また、ケース装着部48は、回転軸63の軸方向から見ると四角形状の外周壁52を備えている。この外周壁52は、下壁部49から回転軸63の軸方向に沿って上向きに突出している。ケース装着部48は、外周壁52によって一対の側壁部6b,6b及び端壁部6cを取り囲むように、被装着部6を収容する。また、ケース装着部48と被装着部6の間には、被装着部6を着脱できる程度の隙間(遊び)を有する。
【0033】
外周壁52には、軸部8を着脱可能に支持する受部53と、軸部8を受部53に誘導するガイド部54とが設けられている。受部53は、外周壁52の側壁部52aにおいて、パンケース1の装着方向Xの端部(後壁29側)に形成されているU字形状の溝からなる。U字形状の受部53の開口は、開口部30側に位置している。ガイド部54は、側壁部52aの上端縁を切り欠くことで形成されている。このガイド部54は、受部53の下部に接するように、パンケース1を開口部30からケース装着部48に装着する方向Xに沿って下向きに傾斜している。
【0034】
図7及び図8を併せて参照すると、外周壁52には、外周壁52の開口部30側に位置する端壁部52bに、側壁部6b,6bの外面(被装着部6)を位置決めする位置決め凹部55が設けられている。この位置決め凹部55は、端壁部52bを上端から下向きに長方形状に切り欠くことで形成されている。また、端壁部52bには、被装着部6の係合突起10を取外可能に係合する係合穴56が設けられている。この係合穴56は、端壁部52bの内面から外方に向けて窪む凹部からなる。
【0035】
被装着部6を有するパンケース1、及びケース装着部48を有する調理室25では、被装着部6の軸部8をケース装着部48の受部53に支持させると、軸部8を中心としてパンケース1が回転可能である。図10Aに示すように、パンケース1を底壁26に対して傾斜させた第1の姿勢では、開口部30側に位置する被装着部6の端壁部6cの下端は、ケース装着部48の位置決め凹部55の上端よりも上方に位置する。図11Aに示すように、パンケース1を底壁26に対して起立させた第2の姿勢では、被装着部6がケース装着部48内に装着される。
【0036】
(パンケースの装着作業の一例)
パンケース1を調理室25内に装着する際には、把手5を把持し、この把手5が装着方向Xの後側に位置するように、パンケース1を開口部30から調理室25内に挿入する。ついで、図9Aに示すように、被装着部6をケース装着部48の位置決め凹部55に嵌める。これにより、ケース装着部48の側壁部52a,52a間に被装着部6が挟み込まれ、軸部8が側壁部52a上に位置する。
【0037】
ついで、図9Bに示すように、パンケース1が装着方向Xに沿って前方下向きに傾斜するように、把手5を少し上向きに持ち上げながら、装着方向Xに沿ってパンケース1を押し込む。これにより、被装着部6の軸部8は、ケース装着部48の側壁部52a上を摺動しながらガイド部54上に至る。更に同様の操作を続けることで、被装着部6の側壁部6bがケース装着部48の側壁部52aで支持されつつ、軸部8がガイド部54上を摺動する。
【0038】
そして、図10A及び図10Bに示すように、被装着部6の装着方向Xの先端壁部6dがケース装着部48の先端壁部52cに概ね当接する位置になると、軸部8が受部53内に位置し、パンケース1は第1の姿勢になる。この第1の姿勢で、把手5を上向きに持ち上げる力を弛め、逆に把手5を下向きに押し下げることにより、軸部8を中心としてパンケース1を下向きに移動させる。これにより、図11A及び図11Bに示すように、軸部8を中心として被装着部6が回転することで、この被装着部6がケース装着部48内に装着された第2の姿勢になる。なお、パンケース1は、パンケース1内に収容したパン材料の重量によっては、ユーザが無理に下向きに移動させなくても、自然に下向きに移動して被装着部6がケース装着部48内に装着されることもある。
【0039】
パンケース1が第1の姿勢から第2の姿勢に回転する際、軸部8を中心とした外端である端壁部6cの外面が平坦な場合、端壁部6cがケース装着部48の端壁部52bに干渉して装着できないことがある。しかし、本実施形態では、端壁部6cに軸部8を中心とする曲面部9を設けているため、確実に被装着部6をケース装着部48内に装着できる。
【0040】
パンケース1を第2の姿勢とした状態では、被装着部6の端壁部6cがケース装着部48の端壁部52bの内面側に重畳し、係合突起10が係合穴56に係合するため、パンケース1を調理室25のケース装着部48に装着した状態を確実に保持できる。また、パンケース1の被連結部材15とケース装着部48の連結部材58が連結され、駆動モータ59の回転により混練羽根14が回転可能になる。そして、被装着部6とケース装着部48との間には、ガタツキが生じるような大きな隙間はない。
【0041】
このように、本実施形態の加熱調理器20では、被装着部6に軸部8を設け、ケース装着部48に受部53及び位置決め凹部55を設けるという簡易な構造によって、パンケース1を調理室25内に簡単に装着できる。そして、パンケース1を下向きに回転することで、被装着部6内の被連結部材15をケース装着部48内の連結部材58に簡単に連結できる。また、軸部8を側壁部52a及びガイド部54に摺動させることで、水分を含むパン材料を収容している重いパンケース1を装着する場合でも、パンケース1をケース装着部48に簡単に装着できる。
【0042】
(ベーカリー処理中の力の作用)
パンケース1を調理室25のケース装着部48に装着した状態で、ベーカリー処理を実行すると、混練工程で駆動モータ59が動作される。すると、プーリ60,61及びベルト62を介して回転軸63が回転されることで、連結部材58、及び被連結部材15を介して回転軸12が回転する。その結果、パンケース1内で混練羽根14が回転し、パンケース1内のパン材料を混練する。この時、パンケース1には回転軸12の回転方向の力が作用する。そして、パンケースに力が作用する方向がパンケースの被装着部をケース装着部から取り外す操作方向と同一である場合、ケース装着部からパンケースが脱落することがある。
【0043】
しかし、本実施形態では、回転軸12が上下方向Yに延びるように配置されており、回転軸12が回転することによりパンケース1に作用する力はXZ平面上であるのに対し、調理室25のケース装着部48からパンケース1の被装着部6を取り外す操作方向は上下方向Yである。このように、混練工程中にパンケース1に力が作用する方向と、パンケース1をケース装着部48から取り外す方向とは直交している。よって、混練時にケース装着部48から被装着部6が離脱する方向に力が作用することはない。そのため、混練時に調理室25のケース装着部48からパンケース1が外れることを確実に防止できる。
【0044】
また、本実施形態では、回転軸12,63に対して直交方向に突出する軸部8が溝状の受部53に支持されている。しかも、ケース装着部48及び被装着部6は、回転軸12,63の軸方向から見て四角形状に形成されている。そのため、混練時に回転軸12,63を中心としてパンケース1がケース装着部48に対して回転することもない。
【0045】
(パンケースの取外作業の一例)
パンケース1を調理室25から取り出す際には、例えば、パンケース1が第2の姿勢から第1の姿勢になるように、把手5を把持してパンケース1を上向きに持ち上げる。これにより、軸部8を中心として被装着部6が回転することで、係合突起10と係合穴56の係合が解除される。ついで、被装着部6がケース装着部48から離脱するとともに、パンケース1の被連結部材15とケース装着部48の連結部材58の連結が解除される。
【0046】
ついで、パンケース1を開口部30側へ引っ張ることで、被装着部6の両側が位置決め凹部55に嵌まり、側壁部52a,52aによって被装着部6が支持されながら、軸部8がガイド部54上を摺動する。そして、軸部8が側壁部52a上に位置すると、ユーザがパンケース1を持ち上げながら開口部30側へ引き抜くことで、調理室25からパンケース1を簡単に取り外すことができる。
【0047】
このように、本実施形態では、軸部8を中心としてパンケース1を回転させ、概ね水平方向にパンケース1を移動させるだけであり、パンケース1を垂直方向に大きく移動させる必要はない。よって、調理室25の壁26〜29にパンケース1が当たらないように、調理室25内からパンケース1を簡単に取り外すことができる。よって、調理室25の全高を高くする必要はないため、加熱調理器20自体も大型化することはない。逆に、パンケース1を上下方向に移動させる幅は従来よりも少ないため、調理室25の全高を低くすることが可能なため、加熱調理器20の小型化も可能である。しかも、グリルヒータ38A,38Bによる加熱効率も向上できる。
【0048】
また、本実施形態では、調理室25にパンケース1の代わりに焼き網17を配置することで、ベーカリー処理だけでなく、パンを焼くトースター、被調理物のグリル調理、そして被加熱物のコンベクション調理が可能であるため、ユーザが加熱調理器20を使用することに関する利便性を向上できる。また、調理室25を適切な容積で構成できるため、グリルヒータ38A〜38D及びコンベクションヒータ40A,40Bによる加熱効率を向上できる。
【0049】
(第2実施形態)
図12から図13Bは、第2実施形態の加熱調理器20の被装着部6及びケース装着部48を示す。この第2実施形態では、被装着部6とケース装着部48とが嵌合する部分を、円環状とした点で第1実施形態と相違している。
【0050】
詳しくは、図12に示すように、パンケース1の被装着部6は、回転軸12を軸方向から見ると四角形状の上壁部70を備えている。この上壁部70の装着方向Xの端部には、第1実施形態と同様の軸部8が設けられている。また、上壁部70の下面には、回転軸12を中心とする円筒状の被嵌合壁71が突設されている。この被嵌合壁71の下端外周部には、軸部8を中心とする曲面部72が形成されている。また、被嵌合壁71には、軸部8に対して径方向の逆側に位置する部分に係合突起10が設けられている。
【0051】
調理室25のケース装着部48は、第1実施形態と同様に、回転軸63の軸方向から見ると円形状の下壁部49を備えている。また、ケース装着部48は、被嵌合壁71を内部に収容可能な円筒状の嵌合部75が設けられている。この嵌合部75の内周部には、係合突起10が係合する係合穴56が形成されている。
【0052】
嵌合部75の外周部には、パンケース1の装着方向Xに沿って延びる一対の側壁部76,76と、これら側壁部76,76の装着方向Xの端部を連続する端壁77とが設けられている。側壁部76には、第1実施形態と同様に、軸部8を着脱可能に支持する受部53と、軸部8を受部53に誘導するガイド部54とが設けられている。側壁部76,76の上端は、嵌合部75の上端よりも上側に位置している。また、一対の側壁部76,76の対向面間であるZ方向の寸法は、被装着部6の被嵌合部75の外径寸法と概ね同一に形成されている。これにより、ケース装着部48における開口部30側には、一対の側壁部76,76の内面と嵌合部75の上端面とで構成される位置決め凹部55が形成されている。なお、ケース装着部48に被装着部6を装着した状態では、側壁部76,76の上端に上壁部70が載置した状態になる。
【0053】
パンケース1を調理室25のケース装着部48に装着する際には、第1実施形態と同様に、把手5を把持してパンケース1を開口部30から調理室25内に挿入し、図13Aに示すように、軸部8を側壁部76上に配置する。ついで、図9Bに示すように、パンケース1が傾斜するように第1の姿勢として、装着方向Xに沿ってパンケース1を押し込むことで、軸部8をガイド部54上に配置する。
【0054】
更に同様の操作を続けることで、軸部8がガイド部54上を摺動した後、軸部8が受部53内に位置する。この状態で、軸部8を中心としてパンケース1を下向きに移動させることで、被装着部6がケース装着部48内に装着され、第2の姿勢になる。これにより、被装着部6の係合突起10がケース装着部48の係合穴56に係合され、被装着部6とケース装着部48の装着状態が保持される。
【0055】
また、パンケース1を調理室25に装着した状態でベーカリー処理を実行した場合にも第1実施形態と同様に、パンケース1に回転軸12の回転方向の力が作用しても、ケース装着部48からパンケース1が脱落することはない。しかも、回転軸12,63に対して直交方向に突出する軸部8が溝状の受部53に支持されているため、混練時に回転軸12,63を中心としてパンケース1が装着部48に対して回転することもない。
【0056】
さらに、パンケース1を調理室25から取り出す際には、第2の姿勢のパンケース1が第1の姿勢になるようにパンケース1を上向きに持ち上げることで、係合突起10と係合穴56の係合が解除される。また、被装着部6がケース装着部48から離脱されるとともに、パンケース1の被連結部材15とケース装着部48の連結部材58の連結が解除される。ついで、パンケース1を開口部30側へ引っ張ることで、軸部8がガイド部54上を摺動した後、引き続いて軸部8が側壁部76上に位置する。その後、パンケース1を持ち上げながら開口部30側へ引き抜くことで、調理室25からパンケース1を取り外すことができる。
【0057】
このように、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、調理室25に対してパンケース1が当たらないように、調理室25のケース装着部48にパンケース1を簡単かつ確実に装着できる。また、調理室25にパンケース1を装着し、ベーカリー処理を実行しても、パンケース1がケース装着部48から脱落することはない。
【0058】
なお、本発明の加熱調理器は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、図14に示すように、係合突起10は、球状部材の代わりに三角柱状に突出する爪部材としてもよい。また、係合突起10にはスプリング11を配置しないようにしてもよい。また、パンケース1の被装着部6は、調理室25のケース装着部48内に装着させたが、ケース装着部48の外側を覆うように装着させてもよい。
【0060】
また、受部53は、ケース装着部48における後壁29側に形成したが、ケース装着部48における開口部30側に形成してもよい。即ち、パンケース1を一旦後壁29側まで押し込み、開口部30側に引くようにして、軸部8を受部53に支持させてもよい。この場合、ガイド部54は、開口部30からケース装着部48に向けて上向きに傾斜するように形成する。
【0061】
さらに、前記実施形態では、被装着部6に軸部8を設け、ケース装着部48に受部53を設けたが、被装着部6に受部53を設け、ケース装着部48に軸部8を設けてもよい。さらにまた、被装着部6又はケース装着部48には、ケース装着部48に被装着部6を装着した状態で、これらを取外不可能にロックするロック手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…パンケース(容器)
2…側壁部
3…底壁部
4…上端開口
5…把手
6…被装着部
6a…上壁部
6b…側壁部
6c…端壁部
6d…先端壁部
7…挿通孔
8…軸部
9…曲面部
10…係合突起
11…スプリング
12…回転軸
13…羽根取付部
14…混練羽根
15…被連結部材
17…焼き網(載置部材)
18…屑受け皿
20…加熱調理器
22…外装体
23…蓋体
25…調理室
26…底壁
26a…凹部
27…側壁
28…天壁
29…後壁
30…開口部
31…吸込口
32…吹出口
35…加熱室
36…ヒータケース
38A〜38D…グリルヒータ(第1加熱ヒータ)
40A,40B…コンベクションヒータ(第2加熱ヒータ)
42…循環ファン
43…ファンモータ
44…冷却ファン
46…網装着部
48…ケース装着部(容器装着部)
49…下壁部
50…凹部
51…挿通孔
52…外周壁
52a…側壁部
52b…端壁部
52c…先端壁部
53…受部
54…ガイド部
55…位置決め凹部
56…係合穴
58…連結部材
59…駆動モータ
60…第1プーリ
61…第2プーリ
62…ベルト
63…回転軸
70…上壁部
71…被嵌合壁
72…曲面部
75…嵌合部
76…側壁部
77…端壁
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14