(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
−第1の実施の形態−
図1は本発明の第1の実施の形態に係る作業車両の一例である油圧ショベル1の側面図であり、
図2は油圧ショベル1の上面図である。なお、説明の便宜上、
図1および
図2に示したように前後および上下、左右方向を規定する。
【0010】
図1および
図2に示すように、油圧ショベル1は、走行体2と、走行体2上に旋回可能に設けられた旋回体3とを備える。走行体2は、左右一対のクローラを走行モータによって駆動することにより走行する。
【0011】
旋回体3の前部左側には運転室19が設けられ、運転室19の後部にはエンジン室が設けられている。運転室19にはオペレータが着座する運転席が設けられ、運転席の周囲にはフロント作業装置4や旋回体3を操作するための各種操作部材が配設されている。エンジン室には、動力源であるエンジンや油圧機器等が収容されている。エンジン室の後部には、作業時の機体のバランスをとるためのカウンタウエイトが取り付けられている。旋回体3の前部右側にはフロント作業装置4が設けられている。
【0012】
フロント作業装置4は、複数のフロント部材、すなわちブーム5、アーム7、および、バケット9を備えている。ブーム5は、基端部が旋回体3の前部に回動可能に取り付けられている。アーム7は、その基端部がブーム5の先端部に回動可能に取り付けられている。ブーム5およびアーム7は、ブームシリンダ6およびアームシリンダ8によってそれぞれ駆動されて回動する。バケット9は、アーム7の先端部において、アーム7に対して上下方向に回動可能に取り付けられ、バケットシリンダ10によって駆動されて回動する。
【0013】
油圧ショベル1は、指向性および収束性に優れたレーザ光を発生させる複数のレーザ装置140を備えている。本実施の形態に係る油圧ショベル1は、右側方レーザ装置140Rと、左側方レーザ装置140Lと、後方レーザ装置140Bとを備えている。
【0014】
右側方レーザ装置140Rは、油圧ショベル1の右側方の地面にレーザ光を照射できるように、旋回体3の右側部に配置されている。左側方レーザ装置140Lは、油圧ショベル1の左側方の地面にレーザ光を照射できるように、旋回体3の左側部に配置されている。後方レーザ装置140Bは、油圧ショベル1の後方の地面にレーザ光を照射できるように、旋回体3の後部に配置されている。なお、右側方レーザ装置140R、左側方レーザ装置140Lおよび後方レーザ装置140Bは、同様の構成であるので、以下では総称してレーザ装置140として説明する。
【0015】
図3は、レーザ装置140の正面図である。すなわち、
図3は、レーザ装置140Lを油圧ショベル1の左側方から見た図であり、レーザ装置140Rを油圧ショベル1の右側方から見た図であり、レーザ装置140Bを油圧ショベル1の後方から見た図に相当する。
【0016】
図3に示すように、レーザ装置140は、レーザ光を発生する光源部141と、光源部141を保持する保持ブラケット130と、光源部141を回動駆動させるヨー軸モータ150およびピッチ軸モータ160と、を備えている。レーザ装置140は、旋回体3のエンジン室を覆う建屋カバーの上面に、取付ブラケット17を介して取り付けられている。取付ブラケット17には、回動軸150aが鉛直方向(上下方向)に平行に配置されたヨー軸モータ150の筐体150bが固着されている。図示しないが、筐体150bの内部には円筒状の固定子(ステータ)と固定子の内側に配置される回転子(ロータ)が設けられ、この回転子に回動軸150aが固着されている。
【0017】
ヨー軸モータ150の回動軸150aには、矩形筒状の保持ブラケット130が固着されている。このため、ヨー軸モータ150を駆動させ、回動軸150aを筐体150bに対して左右に回動させると、保持ブラケット130が回動軸150aと一体的に左右に回動する。これにより、地面に照射されるレーザ光の照射領域(照射点)をヨー軸モータ150の回動軸150aを中心として、円弧状の軌跡を描くように左右に移動させることができる(
図5参照)。
【0018】
保持ブラケット130は、互いに対向する一対の側板131と、互いに対向する天板および底板とを有している。一対の側板131には、回動軸160aが水平方向に平行に配置されたピッチ軸モータ160が取り付けられている。ピッチ軸モータ160の筐体160bには、光源部141が固着されている。図示しないが、筐体160bの内部には円筒状の固定子(ステータ)と固定子の内側に配置される回転子(ロータ)が設けられ、この回転子に回動軸160aが固着されている。
【0019】
ピッチ軸モータ160の回動軸160aは、筐体160bから光源部141の左右側方のそれぞれに延在し、端部が側板131に固着されている。このため、ピッチ軸モータ160を駆動させ、ピッチ軸モータ160の筐体160bを回動軸160aに対して上下に回動させると、光源部141が筐体160bと一体的に上下に回動する。これにより、地面に照射されるレーザ光の照射領域(照射点)を油圧ショベル1に近い位置と遠い位置との間で移動させることができる(
図6参照)。
【0020】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る旋回半径報知システム100の構成を示すブロック図である。旋回半径報知システム100は、上述した複数のレーザ装置140と、レーザ装置140の光源部141、ヨー軸モータ150およびピッチ軸モータ160の駆動を制御するコントローラ110と、フロント作業装置4の各フロント部材の駆動用油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ121,122,123と、点灯スイッチ120と、を備えている。
【0021】
ストロークセンサ121,122,123は、それぞれコントローラ110に接続されている。ストロークセンサ121は、ブームシリンダ6のストローク量(変位)を検出し、検出信号をコントローラ110に出力する。ストロークセンサ122は、アームシリンダ8のストローク量(変位)を検出し、検出信号をコントローラ110に出力する。ストロークセンサ123は、バケットシリンダ10のストローク量(変位)を検出し、検出信号をコントローラ110に出力する。
【0022】
点灯スイッチ120は、オペレータによって操作される操作部材であり、運転室19内に配設される。点灯スイッチ120は、コントローラ110に接続され、操作位置に応じた操作信号を出力する3段階式のスイッチである。点灯スイッチ120は、オフ位置(OFF)と、オン位置(ON)と、最大旋回半径位置(MAX)を有し、いずれかの操作位置を選択できるように構成されている。
【0023】
点灯スイッチ120は、オフ位置(OFF)に操作されると、オフ位置に操作されたことを表す操作信号(OFF信号)をコントローラ110に出力する。点灯スイッチ120は、オン位置(ON)に操作されると、オン位置に操作されたことを表す操作信号(ON信号)をコントローラ110に出力する。点灯スイッチ120は、最大旋回半径位置(MAX)に操作されると、最大旋回半径位置(MAX)に操作されたことを表す操作信号(MAX信号)をコントローラ110に出力する。
【0024】
コントローラ110は、CPUや記憶装置であるROMおよびRAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成され、油圧ショベル1の各部の制御を行っている。コントローラ110は、旋回半径演算部111と、ヨー角演算部112と、ピッチ角演算部113と、モータ駆動制御部114と、光源制御部115と、モード設定部116と、を機能的に備えている。
【0025】
モード設定部116は、点灯スイッチ120からの操作信号に基づいて、光源駆動モードを設定する。点灯スイッチ120がオフ位置に操作され、点灯スイッチ120からOFF信号が入力されている場合、モード設定部116は光源駆動モードを「消灯モード」に設定する。点灯スイッチ120がオン位置に操作され、点灯スイッチ120からON信号が入力されている場合、モード設定部116は光源駆動モードを「実旋回半径報知モード」に設定する。点灯スイッチ120が最大旋回半径位置に操作され、点灯スイッチ120からMAX信号が入力されている場合、モード設定部116は光源駆動モードを「最大旋回半径報知モード」に設定する。
【0026】
光源制御部115は、光源駆動モードに応じて、光源部141の動作を制御する制御信号を出力する。光源駆動モードが「消灯モード」に設定されている場合、光源制御部115は、光源部141を消灯させる制御信号を出力する。光源駆動モードが「実旋回半径報知モード」や「最大旋回半径報知モード」に設定されている場合、光源制御部115は、光源部141を点灯させる、すなわち光源部141からレーザ光を射出させる制御信号を出力する。
【0027】
旋回半径演算部111は、各ストロークセンサ121,122,123で検出された各油圧シリンダ6,8,10のストローク量(変位)に基づいて、フロント作業装置4の姿勢を推定し、推定した姿勢に基づいて、油圧ショベル1の旋回半径r0を演算する。旋回半径演算部111は、ブームシリンダ6のストローク量から旋回体3に対するブーム5の回動角度を演算し、アームシリンダ8のストローク量からブーム5に対するアーム7の回動角度を演算し、バケットシリンダ10のストローク量からアーム7に対するバケット9の回動角度を演算する。
【0028】
コントローラ110の記憶装置には、予め油圧ショベル1の幾何学情報として、ブーム5の長さ、アーム7の長さ、バケット9の長さ、油圧シリンダ6,8,10の接続部やフロント部材5,7,9の形状等が記憶されている。ここで、ブーム5の長さとは、旋回体3とブーム5の連結軸からブーム5とアーム7の連結軸までの距離であり、アーム7の長さとは、ブーム5とアーム7の連結軸からアーム7とバケット9の連結軸までの距離である。バケット9の長さとは、アーム7とバケット9の連結軸からバケット9の爪先(先端部)までの距離である。
【0029】
旋回半径演算部111は、各フロント部材5,7,9の回動角度と、各フロント部材5,7,9の長さや旋回体3とブーム5の連結軸と旋回体3の旋回中心Oまでの距離等の幾何学情報に基づいて、フロント作業装置4の作業中の実際の作業半径、すなわち旋回体3の旋回中心Oからフロント作業装置4の最も外側に位置している部分までの旋回半径r0を演算する。
【0030】
たとえば、フロント作業装置4が前方に伸びるように動作し、各フロント部材と旋回中心Oまでの水平距離のうち、バケット9の爪先と旋回中心Oまでの水平距離が最も長い場合(
図7参照)、旋回半径r0は旋回中心Oからバケット9の爪先までの水平距離として演算される。フロント作業装置4が折り畳まれるように動作し、各フロント部材と旋回中心Oまでの水平距離のうち、バケットシリンダ10のロッド端部と旋回中心Oまでの水平距離が最も長い場合(
図1参照)、旋回半径r0は旋回中心Oからバケットシリンダ10のロッド端部までの水平距離として演算される。ここで、バケットシリンダ10のロッド端部とアーム7とバケット9の連結軸との距離は、記憶装置に記憶される幾何学情報から演算される。
【0031】
コントローラ110の記憶装置には、レーザ装置140の地面からの取付け高さh(
図6参照)が記憶されている。
図6に示すように、本実施の形態において、取付け高さhは、走行体2が接する水平の地面から、レーザ装置140のピッチ軸モータ160の回動軸160aの回転中心Pまでの鉛直方向の長さである。
【0032】
旋回半径演算部111は、演算した旋回半径r0に一定の補正値Δrを加算した半径、すなわち旋回半径r0を外方に一定距離Δrだけオフセットさせた半径を疑似旋回半径r(
図2参照)として演算する。補正値Δrは、裕度を持たせるために設定されるものであり、任意の値(Δr>0)を設定することができる。
【0033】
図4に示すモータ駆動制御部114は、ヨー軸モータ150およびピッチ軸モータ160に駆動制御信号を出力し、ヨー軸モータ150およびピッチ軸モータ160を回動させる。ヨー軸モータ150は、モータ駆動制御部114からの制御信号に基づいて、反復的に、予め定められた周期で一定の正逆駆動を繰り返し、光源部141を左右方向に繰り返し回動させる。左右に回動される光源部141から射出されたレーザ光により、地面に円弧状の軌跡(弧S1S2)が描かれる。
【0034】
図5は、ヨー軸モータ150の制御角αの算出方法を示す概略図である。
図5では、レーザ装置140を油圧ショベル1の上方から見たときに、レーザ装置140のレーザ光の軌跡(地面に照射されたレーザスポット(レーザ光の照射領域)の軌跡(弧S1S2))を破線で示している。なお、
図5では、3つのレーザ装置140のうち一のレーザ装置140Bのみを代表して図示し、その他のレーザ装置140R,140Lの図示は省略している。
【0035】
旋回体3の旋回中心Oからレーザ装置140のヨー軸モータ150の回動軸150aの回転中心Yまでの水平距離はbである(b>0)。つまり、旋回中心Oと、ヨー軸モータ150の回転中心Yとは同心ではない。
【0036】
ヨー角演算部112(
図4参照)は、旋回体3の旋回中心Oとヨー軸モータ150の回転中心Yを通過する鉛直方向に平行な平面(以下、中心面CS1と記す)を左右反復動作の中心として、疑似旋回半径rとレーザ光の軌跡とが交差しないようにレーザ装置140のヨー軸モータ150の制御角αを演算する。なお、中心面CS1は、初期状態の位置にある光源部141から射出されるレーザ光の光軸を含む鉛直方向に平行な平面と定義することもでき、本実施の形態では、中心面CS1上に旋回中心Oが位置している。
【0037】
制御角αは、余弦定理を用いて、式(1)により表される。
【数1】
ここで、rは上述した疑似旋回半径であり、bは上述した旋回中心Oから回転中心Yまでの水平距離である。照射位置加算値aは、
図5に示すように、中心面CS1と疑似旋回半径rの円が交差する交差点PIから、中心面CS1上のレーザ光の照射点S0までの水平距離である。別の言い方をすれば、照射位置加算値aは、交差点PIと、中心面CS1とレーザ光の軌跡とが交差する交差点S0との間の水平距離である。照射位置加算値aは、レーザスポット(照射領域)を疑似旋回半径rの外側に配置させるために、予めコントローラ110の記憶装置に記憶されている(a>0)。
【0038】
図6は、ピッチ軸モータ160の制御角βの算出方法を示す概略図である。なお、
図6では、3つのレーザ装置140のうち一のレーザ装置140Bのみを代表して図示し、その他のレーザ装置140R,140Lの図示は省略している。
図6では、レーザ装置140を油圧ショベル1の左方から見たときに、レーザ装置140から地面に向かって射出されるレーザ光を模式的に示している。
【0039】
ピッチ角演算部113(
図4参照)は、ヨー軸モータ150の回転中心Yから中心面CS1上のレーザ光の照射点S0までの水平距離が、疑似旋回半径rに照射位置加算値aを加算した値から旋回中心Oとヨー軸モータ150の回転中心Yとの間の水平距離bを減算した値(r+a−b)となるように、レーザ装置140のピッチ軸モータ160の制御角βを演算する。
【0040】
ピッチ角演算部113は、式(2)に基づいて制御角βを演算する。
【数2】
【0041】
図4に示すモータ駆動制御部114は、光源駆動モードに応じて、ピッチ軸モータ160およびヨー軸モータ150を以下のように制御する。
【0042】
−実旋回半径報知モード−
光源駆動モードが実旋回半径報知モードに設定されると、モータ駆動制御部114は、ヨー角演算部112およびピッチ角演算部113で演算された回動角度に基づいて、ヨー軸モータ150およびピッチ軸モータ160を制御する。
【0043】
モータ駆動制御部114は、回転中心Y(すなわち鉛直軸)と光源部141から射出されるレーザ光の光軸とのなす角が、ピッチ角演算部113で演算された制御角βとなるように、ピッチ軸モータ160の駆動を制御する。これにより、疑似旋回半径rの外側にレーザスポット(照射領域)が配置されるように、ピッチ軸モータ160が回動される。
【0044】
モータ駆動制御部114は、ヨー角演算部112で演算された制御角αに基づいてヨー軸モータ150の駆動を制御する。これにより、疑似旋回半径rの内側にレーザスポット(照射領域)の全体が侵入しないように、ヨー軸モータ150が左右に反復的に回動される。つまり、制御角αは、ヨー軸モータ150の回動を制限するものであり、ヨー軸モータ150の最大の回動角度に相当する。
【0045】
レーザスポットが中心面CS1上のレーザ光の照射点S0に配置されている状態を初期状態として、ヨー軸モータ150の動作について説明する。初期状態からヨー軸モータ150を駆動させる場合、モータ駆動制御部114は、ヨー軸モータ150の左右反復動作の中心面CS1から一方(たとえば、左方)にα/2だけヨー軸モータ150を正転させた後、他方(たとえば、右方)にαだけヨー軸モータ150を逆転させる。その後、モータ駆動制御部114は、ヨー軸モータ150を一方(たとえば、左方)にαだけ正転させる。このように、モータ駆動制御部114は、正転信号と逆転信号を交互に出力することで、ヨー軸モータ150を左右に反復動作させることができる。
【0046】
−最大旋回半径報知モード−
光源駆動モードが最大旋回半径報知モードに設定されると、モータ駆動制御部114は、フロント作業装置4の姿勢にかかわらず、疑似旋回半径rを予めコントローラ110の記憶装置に記憶させている最大旋回半径rmax(一定値)に設定する。モータ駆動制御部114は、実旋回半径報知モードが設定されたときと同様に、ヨー角演算部112およびピッチ角演算部113で演算された回動角度に基づいて、ヨー軸モータ150およびピッチ軸モータ160を制御する。
【0047】
図7は、油圧ショベル1の最大旋回半径を説明する図である。
図7に示すように、最大旋回半径rmaxとは、フロント作業装置4を前方に伸ばしきった状態での油圧ショベル1の旋回中心Oから最先端(バケット9の爪先)までの旋回半径のことである。
【0048】
−消灯モード−
光源駆動モードが消灯モードに設定されると、モータ駆動制御部114は、ヨー軸モータ150およびピッチ軸モータ160を停止させる停止制御信号を出力する。
【0049】
図8は、コントローラ110により実行されるレーザ装置駆動制御プログラムによる処理の一例を示すフローチャートである。
図8に示す処理は、たとえば、イグニッションスイッチ(不図示)のオンにより開始され、所定の制御周期ごとにステップS110以降の処理が繰り返し実行される。なお、図示しないが、コントローラ110は、点灯スイッチ120の操作位置を表す操作信号、ストロークセンサ121,122,123で検出されたストローク量を表す検出信号、ピッチ軸モータ160およびヨー軸モータ150の回動角度を表す検出信号を繰返し、取得している。
【0050】
ステップS110において、コントローラ110は、点灯スイッチ120の操作位置がオン位置、オフ位置および最大旋回半径位置のいずれに操作されているかを判定する。
【0051】
ステップS110において、点灯スイッチ120がオン位置に操作されていると判定された場合、ステップS120へ進む。ステップS120において、コントローラ110は、光源駆動モードを実旋回半径報知モードに設定し、ステップS123へ進む。
【0052】
ステップS123において、コントローラ110は、各ストロークセンサ121,122,123で検出される各油圧シリンダ6,8,10のストローク量や、フロント作業装置4の幾何学情報等に基づいて、疑似旋回半径rを演算し、ステップS126へ進む。
【0053】
ステップS126において、コントローラ110は、ステップS123で演算された疑似旋回半径rに基づいて、制御角αおよび制御角βを演算し、ステップS129へ進む。
【0054】
ステップS129において、コントローラ110は、ステップS126で演算された制御角βに基づいてピッチ軸モータ160を所定の位置まで回動させ、ステップS126で演算された制御角αに基づいてヨー軸モータ150を反復的に回動させ、
図8のフローチャートに示す処理を終了する。
【0055】
ステップS110において、点灯スイッチ120が最大旋回半径位置に操作されていると判定された場合、ステップS130へ進む。ステップS130において、コントローラ110は、光源駆動モードを最大旋回半径報知モードに設定し、ステップS133へ進む。
【0056】
ステップS133において、コントローラ110は、記憶装置に予め記憶されている最大旋回半径rmaxを疑似旋回半径rとして設定し、ステップS136へ進む。
【0057】
ステップS136において、コントローラ110は、ステップS133で設定された疑似旋回半径r(=最大旋回半径rmax)に基づいて、制御角αおよび制御角βを演算し、ステップS139へ進む。
【0058】
ステップS139において、コントローラ110は、ステップS136で演算された制御角βに基づいてピッチ軸モータ160を所定の位置まで回動させ、ステップS136で演算された制御角αに基づいてヨー軸モータ150を反復的に回動させ、
図8のフローチャートに示す処理を終了する。
【0059】
ステップS110において、点灯スイッチ120がオフ位置に操作されていると判定された場合、ステップS140へ進む。ステップS140において、コントローラ110は、光源駆動モードを消灯モードに設定し、ステップS149へ進む。
【0060】
ステップS149において、コントローラ110は、ピッチ軸モータ160およびヨー軸モータ150を停止させ、
図8のフローチャートに示す処理を終了する。なお、ステップS149において、ピッチ軸モータ160の位置およびヨー軸モータ150の位置が初期状態の位置でない場合、初期状態の位置までピッチ軸モータ160およびヨー軸モータ150を駆動させてから停止させてもよい。
【0061】
ステップS129、ステップS139およびステップS149のモータ制御処理が終了し、
図8のフローチャートに示す処理が終了すると、次の制御周期で再びステップS110以降の処理が実行される。
【0062】
以下、本実施の形態の主な動作を掘削作業を例に説明する。オペレータが作業現場における所定の作業位置まで油圧ショベル1を走行させる。所定の作業位置に油圧ショベル1を配置させた後、オペレータは点灯スイッチ120をオフ位置から最大旋回半径位置に操作する。
【0063】
点灯スイッチ120が最大旋回半径位置に操作されると、光源部141からレーザ光が射出され、ピッチ軸モータ160およびヨー軸モータ150が駆動される。各レーザ装置140は、
図2に示すように、疑似旋回半径r(=最大旋回半径rmax)の外側に円弧状の軌跡を生成する。
【0064】
これにより、油圧ショベル1に搭乗するオペレータや油圧ショベル1の周囲で作業を行う作業者が、油圧ショベル1の最大旋回半径rmaxがどの程度かを推測することができる。オペレータは、油圧ショベル1が作業できる領域を事前に確認することができるので、その後の作業の計画を立てやすく、作業効率を向上できる。一方、油圧ショベル1の周囲で作業を行う作業者は、油圧ショベル1の最大旋回範囲を事前に確認することができるので、自分が搭乗する作業車両の作業位置を容易に決定することができる。
【0065】
油圧ショベル1のオペレータは、点灯スイッチ120を最大旋回半径位置からオン位置に操作する。点灯スイッチ120がオン位置に操作されると、光源部141からレーザ光が射出され、ピッチ軸モータ160およびヨー軸モータ150が駆動される。オペレータが各種操作レバーを操作し、フロント作業装置4を駆動させたり、旋回体3を旋回させたりすることで、掘削作業が行われる。
【0066】
掘削作業では、ブーム5、アーム7およびバケット9を動作させて掘削し、バケット9を持ち上げて旋回後に、掘削した土砂を放土する。放土した後、再度旋回して次の掘削位置に戻り、作業を繰り返す。
【0067】
掘削作業が行われている間、フロント作業装置4を構成する各フロント部材5,7,9が油圧シリンダ6,8,10の伸長動作に応じて動作し、実旋回半径r0が変化する。実旋回半径r0が変化すると、疑似旋回半径rも変化する。レーザ装置140は、疑似旋回半径rの変化に応じて、疑似旋回半径rよりも外側に円弧状の軌跡を生成する。疑似旋回半径rが変化するため、フロント作業装置4の姿勢の変化に応じてレーザ光の軌跡の位置も変化する。
【0068】
これにより、油圧ショベル1に搭乗しているオペレータや油圧ショベル1の周囲で作業を行う作業者が、油圧ショベル1の旋回半径がどの程度かを推測することができるので、効率よく作業を行うことができる。
【0069】
油圧ショベル1に搭乗しているオペレータが掘削作業を終了すると、点灯スイッチ120をオフ位置に操作する。これにより、レーザ装置140の光源部141が消灯し、ヨー軸モータ150およびピッチ軸モータ160の回動動作が停止する。
【0070】
なお、作業現場が広く、油圧ショベル1の近くに障害物や他の作業車両が存在しない場合には、オペレータは点灯スイッチ120を最大旋回半径位置に操作したままの状態で作業を行ってもよい。この場合、油圧ショベル1のブーム5、アーム7およびバケット9を操作しても、常に最大旋回半径rmaxの外側をレーザ光が照射することになる。作業中、油圧ショベル1に搭乗しているオペレータや周囲の作業者が最大旋回半径rmaxを推測することができる。オペレータは、周囲の状況や作業内容に応じて、点灯スイッチ120をオン位置および最大旋回半径位置に操作することができる。
【0071】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)油圧ショベル1は、走行体2、走行体2に旋回可能に設けられた旋回体3、および旋回体3に設けられたフロント作業装置4を備える作業車両である。油圧ショベル1のコントローラ110は、フロント作業装置4の姿勢を推定し、推定したフロント作業装置4の姿勢に基づいて旋回半径を演算する。レーザ装置140は、コントローラ110からの制御信号に基づいて駆動され、旋回半径を報知する。
【0072】
このような本実施の形態によれば、フロント作業装置4の動作に応じて変化する旋回半径を、油圧ショベル1の周囲の作業者に知らせることができるので、周囲の作業者の作業効率を向上できる。
【0073】
(2)また、フロント作業装置4の動作に応じて変化する旋回半径を、油圧ショベル1に搭乗しているオペレータに知らせることができる。オペレータは、旋回半径を考慮した操縦が可能となるので、作業の効率化を図ることができる。
【0074】
(3)本実施の形態では、旋回半径を報知する報知装置として、光により旋回半径を報知するレーザ装置140を作用した。レーザ装置140は、レーザ光を発生する光源部141と、光源部141を回動駆動させるモータ(駆動部)を有する光発生装置である。コントローラ110は、旋回半径の外側において、レーザ光の照射領域の軌跡が円弧状に描かれるように、モータを制御する。これにより、オペレータや周囲の作業者に対し、旋回半径を視覚的に報知することができる。
【0075】
(4)点灯スイッチ120は、フロント作業装置4の姿勢に基づいて演算された旋回半径を報知する実旋回半径報知モードと、フロント作業装置4の姿勢にかかわらず、予め定められた最大旋回半径rmaxを報知する最大旋回半径報知モードとを切り換えるモード切換スイッチとしての機能を有している。点灯スイッチ120を操作して、光源駆動モードを最大旋回半径報知モードに設定することで、常に、最大旋回半径rmaxを報知することができる。油圧ショベル1に搭乗しているオペレータや油圧ショベル1の周囲の作業者に対し、油圧ショベル1のフロント作業装置4を駆動させていない状態であっても最大旋回半径rmaxを知らせることができる。
【0076】
従来、最大旋回半径rmaxを知らせるためにロードコーンを複数配置することがあった。これに対し、本実施の形態によれば、ロードコーンを配置することなく、最大旋回半径rmaxを報知することができる。従来、油圧ショベル1を移動させ、作業位置を変更するたびに、ロードコーンを配置し直す手間があったが、本実施の形態によれば、ロードコーンを配置し直す手間を省くことができるので、作業効率の向上を図ることができる。
【0077】
(5)上記(4)のとおり、本実施の形態によれば、ロードコーンを配置する必要がない。このため、凹凸した地形や人の進入が難しい場所にもレーザスポットを生成して、最大旋回半径rmaxを報知することができる。
【0078】
(6)点灯スイッチ120がオフ位置に操作されると、レーザ装置140からのレーザ光の射出を停止し、レーザ装置140のピッチ軸モータ160およびヨー軸モータ150の駆動を停止するようにした。これにより、走行時など、旋回半径を知らせる必要が無いときには、レーザ装置140を停止させることができるので、無駄を省くことができる。
【0079】
−第2の実施の形態−
図9〜
図14を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る作業車両を説明する。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第1の実施の形態では、旋回半径を知らせる報知装置として、レーザ光を発生するレーザ装置140を採用する例について説明した。これに対して、第2の実施の形態では、旋回半径を知らせる報知装置として照明光を発生するスポット照明装置240を採用した。
【0080】
図9は油圧ショベル201の上面図である。
図9に示すように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態で説明した各レーザ装置140に代えて、複数のスポット照明装置240が配置されている。本実施の形態に係る油圧ショベル201は、右側方スポット照明装置240Rと、左側方スポット照明装置240Lと、後方スポット照明装置240Bとを備えている。
【0081】
右側方スポット照明装置240Rは、油圧ショベル201の右側方の地面に照明光を照射できるように、旋回体3の右側部に配置されている。左側方スポット照明装置240Lは、油圧ショベル201の左側方の地面に照明光を照射できるように、旋回体3の左側部に配置されている。後方スポット照明装置240Bは、油圧ショベル201の後方の地面に照明光を照射できるように、旋回体3の後部に配置されている。なお、右側方スポット照明装置240R、左側方スポット照明装置240Lおよび後方スポット照明装置240Bは、同様の構成であるので、以下では総称してスポット照明装置240として説明する。
【0082】
図10は、スポット照明装置240の正面図である。すなわち、
図10は、スポット照明装置240Lを油圧ショベル201の左側方から見た図であり、スポット照明装置240Rを油圧ショベル201の右側方から見た図であり、スポット照明装置240Bを油圧ショベル201の後方から見た図に相当する。
【0083】
図10に示すように、スポット照明装置240は、照明光を発生する光源部241と、光源部241を保持する保持ブラケット130と、光源部241を回動駆動させるピッチ軸モータ160と、を備えている。スポット照明装置240は、旋回体3のエンジン室を覆う建屋カバーの上面に、取付ブラケット17を介して取り付けられている。取付ブラケット17には固定軸250が鉛直方向(上下方向)に平行に配置され、固定軸250には矩形筒状の保持ブラケット130が固着されている。
【0084】
光源部241は、たとえば、筐体内に設けられ、全方向の照射の指向特性を持つ高輝度放電灯やハロゲンランプ等からなる光源を用い、その光が反射鏡で前方に集光され、凸レンズによりスポット照射する構成とされている。
【0085】
保持ブラケット130は、互いに対向する一対の側板131と、互いに対向する天板および底板とを有している。一対の側板131には、回動軸160aが水平方向に平行に配置されたピッチ軸モータ160が取り付けられている。ピッチ軸モータ160の筐体160bには、光源部241が固着されている。
【0086】
ピッチ軸モータ160の回動軸160aは、筐体160bから光源部241の左右側方のそれぞれに延在し、端部が側板131に固着されている。このため、ピッチ軸モータ160を駆動させ、ピッチ軸モータ160の筐体160bを回動軸160aに対して上下に回動させると、光源部241が筐体160bと一体的に上下に回動する。これにより、地面に照射される照明光の照射領域を油圧ショベル201に近い位置と遠い位置との間で移動させることができる(
図13参照)。
【0087】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る旋回半径報知システム200の構成を示すブロック図である。旋回半径報知システム200は、上述した複数のスポット照明装置240と、スポット照明装置240の光源部241およびピッチ軸モータ160の駆動を制御するコントローラ210と、フロント作業装置4の各フロント部材の駆動用油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ121,122,123と、点灯スイッチ120と、を備えている。
【0088】
コントローラ210は、旋回半径演算部111と、ピッチ角演算部213と、モータ駆動制御部214と、光源制御部115と、モード設定部116と、を機能的に備えている。
【0089】
モータ駆動制御部214は、ピッチ軸モータ160に駆動制御信号を出力し、ピッチ軸モータ160を回動させる。
【0090】
図12は、スポット照明装置240を油圧ショベル201の上方から見たときに、地面に照射された照明光の照明スポット(照明光の照射領域)を示す概略図である。
図13は、ピッチ軸モータ160の回動角度γの算出方法を示す概略図である。なお、
図12および
図13では、3つのスポット照明装置240のうち一のスポット照明装置240Bのみを代表して図示し、その他のスポット照明装置240R,240Lの図示は省略している。
図12では、スポット照明装置240を油圧ショベル201の左方から見たときに、スポット照明装置240から地面に向かって射出される照明光を模式的に示している。
【0091】
第2の実施の形態では、スポット照明装置240で発生した光が描く円形状の照射スポット(照射領域)の全てが、疑似旋回半径rよりも内側に入らないように、照射位置を遠くに配置する。別の言い方をすれば、疑似旋回半径rを跨ぐように照射領域を配置させ、照射領域の最も油圧ショベル201から離れた位置Qを疑似旋回半径rの外側に位置するように、回動角度γを制御する。本実施の形態では、光源部241から射出される照明光の光軸を含む鉛直方向に平行な平面(以下、中心面CS2と記す)上に位置Qが配置されている。
【0092】
ピッチ角演算部213(
図11参照)は、旋回中心Oから位置Qまでの水平距離が、疑似旋回半径rに照射位置加算値a2を加算した値から中心面CS2上における旋回中心Oとピッチ軸モータ160の回転中心Pとの間の水平距離bを減算した値(r+a−b)となるように、レーザ装置140のピッチ軸モータ160の回動角度γを演算する。なお、照射位置加算値a2は、中心面CS2と疑似旋回半径rの円の交差点と、位置Qとの間の水平距離である。
【0093】
ピッチ角演算部213は、式(3)に基づいて回動角度γを演算する。
【数3】
【0094】
ここで、上述したように、rは疑似旋回半径(r=r0+Δr)、bは中心面CS2上における旋回体3の旋回中心Oとスポット照明装置240の回転中心Pとの間の水平距離、hはスポット照明装置240の取付け高さ、すなわち地面からスポット照明装置240の回転中心Pまでの鉛直方向の長さである。
【0095】
θは、スポット照明装置240の光源部241からの照明光の径、すなわち照射領域の大きさを決めるビーム角である。
【0096】
図14は、コントローラ210により実行されるスポット照明装置駆動制御プログラムによる処理の一例を示すフローチャートである。
図14に示す処理は、たとえば、イグニッションスイッチ(不図示)のオンにより開始され、所定の制御周期ごとにステップS110以降の処理が繰り返し実行される。なお、図示しないが、コントローラ210は、点灯スイッチ120の操作位置を表す操作信号、ストロークセンサ121,122,123で検出されたストローク量を表す検出信号、ピッチ軸モータ160の回動角度を表す検出信号を繰返し、取得している。
【0097】
図14のフローチャートは、
図8のステップS126,S129,S136,S139の処理に代えてステップS226,S229,S236,S239の処理を追加したものである。ステップS226において、コントローラ210は、ステップS123で演算された疑似旋回半径rに基づいて、回動角度γを演算し、ステップS229へ進む。
【0098】
ステップS229において、コントローラ210は、ステップS226で演算された回動角度γに基づいてピッチ軸モータ160を所定の位置まで回動させ、
図14のフローチャートに示す処理を終了する。
【0099】
ステップS236において、コントローラ210は、ステップS133で設定された疑似旋回半径r(=最大旋回半径rmax)に基づいて、回動角度γを演算し、ステップS239へ進む。
【0100】
ステップS239において、コントローラ210は、ステップS236で演算された回動角度γに基づいてピッチ軸モータ160を回動させ、
図14のフローチャートに示す処理を終了する。
【0101】
このような第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果に加え、次の作用効果を得ることができる。
(7)光発生装置として、照明光を発生する光源部241と、光源部241を駆動するピッチ軸モータ160(駆動部)を有する照明装置であり、コントローラ210は、旋回半径の外側において、照明光の照射領域の一部が配置されるように、ピッチ軸モータ160を制御する。照明領域を広くとることで、別途照明装置を設けることを省略することができる。
【0102】
−第3の実施の形態−
図15〜
図18を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る作業車両を説明する。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第1の実施の形態および第2の実施の形態では、オペレータや周囲の作業者に対し、視覚的に旋回半径を知らせる光発生装置(レーザ装置140およびスポット照明装置240)について説明した。これに対して、第3の実施の形態では、オペレータや周囲の作業者に対し、聴覚的に旋回半径を知らせる複数の音発生装置340を備えている。
【0103】
図15は、第3の実施の形態に係る油圧ショベル301の側面図である。
図15に示すように、音発生装置340はエンジン室内の下部フレームに配設されている。エンジン室は建屋カバーによって覆われており、建屋カバーにおける音発生装置340の正面には、音発生装置340からエンジン室の外部に音が伝わりやすいように、複数のスリット等や複数の開口が設けられている。
【0104】
図16は、本発明の第3の実施の形態に係る旋回半径報知システム300の構成を示すブロック図である。旋回半径報知システム300は、音発生装置340と、音発生装置340の音量や音を発生させる時間を制御するコントローラ310と、フロント作業装置4の各フロント部材の駆動用油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ121,122,123と、音発生スイッチ320と、を備えている。
【0105】
音発生スイッチ320は、オペレータによって操作される操作部材であり、運転室19内に配設される。音発生スイッチ320は、コントローラ310に接続され、操作位置に応じた操作信号を出力するスイッチである。音発生スイッチ320は、オフ位置(OFF)とオン位置(ON)を有し、いずれか一方の操作位置を選択できるように構成されている。
【0106】
音発生スイッチ320は、オフ位置(OFF)に操作されると、オフ位置に操作されたことを表す操作信号(OFF信号)をコントローラ310に出力する。音発生スイッチ320は、オン位置(ON)に操作されると、オン位置に操作されたことを表す操作信号(ON信号)をコントローラ310に出力する。
【0107】
コントローラ310は、旋回半径演算部111と、モード設定部316と、周期決定部317と、音出力制御部318と、を機能的に備えている。モード設定部316は、音発生スイッチ320からの操作信号に基づいて、音源駆動モードを設定する。音発生スイッチ320がオフ位置に操作され、音発生スイッチ320からOFF信号が入力されている場合、モード設定部316は音源駆動モードを「消音モード」に設定する。音発生スイッチ320がオン位置に操作され、音発生スイッチ320からON信号が入力されている場合、モード設定部316は音源駆動モードを「実旋回半径報知モード」に設定する。
【0108】
図17は、音出力周期テーブルを示す図である。コントローラ310の記憶装置には、予め、疑似旋回半径rと音出力周期を対応付けた音出力周期テーブルが格納されている。疑似旋回半径rが2〜4mのときには音出力周期は1.0秒であり、疑似旋回半径rが4〜6mのときには音出力周期は0.6秒であり、疑似旋回半径rが6〜8mのときには音出力周期は0.3秒であり、疑似旋回半径rが8〜10mのときには音出力周期は0.1秒である。本実施の形態では、疑似旋回半径rが大きくなるほど、音出力周期が短く設定され、4段階で音の周期を変更できるように構成されている。なお、本実施の形態では、油圧ショベル301の最大旋回半径rmaxは10mである。
【0109】
周期決定部317は、
図17に示す音出力周期テーブルを参照し、演算した疑似旋回半径rに対応する音出力周期を選択する。
【0110】
音出力制御部318は、実旋回半径報知モードが設定されている場合、選択された音出力周期に基づいて、予め定められた音量で、ビープ音などの音を音発生装置340に発生させる。なお、音出力制御部318は、音出力周期の半分の時間だけ、音発生装置340に音を発生させる。つまり、音出力制御部318は、周期の半分の時間だけ音を発生させ、その後、周期の半分の時間だけ音を発生させないように音発生装置340を制御する。旋回半径が小さいときには音の周期は長く「ピー、ピー、ピー」というように音が出力され、旋回半径が大きいときには音の周期は短く「ピピピ」といったように音が出力される。
【0111】
音出力制御部318は、消音モードが設定されている場合、音発生装置340に音を発生させない。
【0112】
図18は、コントローラ310により実行される音発生装置駆動制御プログラムによる処理の一例を示すフローチャートである。
図18に示す処理は、たとえば、イグニッションスイッチ(不図示)のオンにより開始され、所定の制御周期ごとにステップS110以降の処理が繰り返し実行される。なお、図示しないが、コントローラ310は、音発生スイッチ320の操作位置を表す操作信号、ストロークセンサ121,122,123で検出されたストローク量を表す検出信号を繰返し、取得している。
【0113】
図18のフローチャートは、
図8のステップS110,S120,S126,S129,S140,S149の処理に代えて、ステップS310,S320,S326,S329,S340,S349の処理を追加し、
図8のステップS130,S133,S136,S139の処理を削除したものである。
【0114】
ステップS310において、コントローラ310は、音発生スイッチ320の操作位置がオン位置およびオフ位置のいずれかに操作されているかを判定する。
【0115】
ステップS310において、音発生スイッチ320がオン位置に操作されていると判定された場合、ステップS320へ進む。ステップS320において、コントローラ310は、音源駆動モードを実旋回半径報知モードに設定し、ステップS123へ進む。
【0116】
ステップS123において、疑似旋回半径rの演算処理が終了するとステップS326へ進み、ステップS326において、コントローラ310は、ステップS123で演算された疑似旋回半径rに基づいて、音出力周期を決定し、ステップS329へ進む。
【0117】
ステップS329において、コントローラ310は、ステップS326で決定された音出力周期に基づいて、音発生装置340により音を発生させ、
図18のフローチャートに示す処理を終了する。
【0118】
ステップS310において、音発生スイッチ320がオフ位置に操作されていると判定された場合、ステップS340へ進む。ステップS340において、コントローラ310は、音源駆動モードを消音モードに設定し、ステップS349へ進む。
【0119】
ステップS349において、コントローラ310は、音発生装置340から音が発生することを停止させ、
図18のフローチャートに示す処理を終了する。
【0120】
第3の実施の形態では、報知装置に、音により旋回半径を報知する音発生装置340を採用した。このような第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した(1),(2),(6)と同様の作用効果を得ることができる。
【0121】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
上述した実施の形態では、ストロークセンサ121,122,123で検出された各油圧シリンダ6,8,10のストローク量に基づいて、旋回半径r0を演算する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。以下の変形例1−1、変形例1−2のようにして旋回半径r0を演算してもよい。
【0122】
(変形例1−1)
バケットシリンダ10のストローク量を検出するストロークセンサ123を省略してもよい。この場合、ブームシリンダ6のストローク量およびアームシリンダ8のストローク量に基づいて、フロント作業装置4の作業半径を演算し、この作業半径にバケット9の長さを一定として加算して概略の旋回半径r0を演算する。
【0123】
(変形例1−2)
ストロークセンサ121,122,123に代えて、各フロント部材5,8,10の回動角度を検出する角度センサで検出された回動角度に基づいて、旋回半径r0を演算してもよい。各フロント部材5,8,10の予め定められた位置に発信器を設け、各発信器からの信号に基づいてフロント作業装置4の姿勢を演算し、フロント作業装置4の姿勢に基づき旋回半径r0を演算してもよい。
【0124】
(変形例2)
第3の実施の形態では、4段階で音の周期を変更する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。5段階以上、または3段階以下で音の周期を変更してもよい。少なくとも2段階以上で音の周期を変更すればよい。
【0125】
(変形例3)
第3の実施の形態では、音出力周期により旋回半径を報知する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、音の高さや大きさ、音色、もしくはこれらの組み合わせで旋回半径を報知してもよい。具体例として、最大旋回半径に対応する音量の音と、実旋回半径に対応する音量の音を、一定の周期で、交互に発生させるようにしてもよい。この場合、実旋回半径が最大旋回半径に比べて小さいほど音量を小さくする。これにより、オペレータや周囲の作業者は、交互に発生する音を比較することで、容易に実旋回半径を推定することができる。
【0126】
(変形例4)
上述した実施の形態では、旋回体3を旋回させていない状態でも光や音を出力させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。旋回体3の旋回動作中の間だけ、光や音を出力させてもよい。
図19を参照して、旋回動作中の間だけ音を出力する例について説明する。
図19のフローチャートは、
図18のステップS310の処理とステップS320の処理の間にステップS319の処理を追加したものである。
【0127】
本変形例に係るコントローラ310は、旋回体3を操作する旋回操作レバーからの操作信号、あるいは、旋回体3の旋回角を検出するセンサからの検出信号に基づいて、旋回体3が旋回動作中であるか否かを判定する旋回動作判定部としての機能を有している。モード設定部316は、音発生スイッチ320がオン位置に操作され、かつ、旋回体3が旋回動作を行っている場合に、実旋回半径報知モードを設定する。モード設定部316は、音発生スイッチ320がオン位置に操作されている場合であっても、旋回体3が旋回動作を行っていない場合は、消音モードを設定する。
【0128】
図19に示すように、ステップS319において、コントローラ310が旋回動作中であるか否かを判定する。ステップS319で肯定判定されるとステップS320へ進み、ステップS319で否定判定されるとステップS340へ進む。
【0129】
このように、旋回動作中と判定された場合、旋回体3が旋回している間だけ、光や音を出力させるようにした場合であっても、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0130】
(変形例5)
第1および第2の実施の形態では、最大旋回半径報知モードが設定されると、疑似旋回半径rに最大旋回半径rmaxに設定し、制御角α,βを演算する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。最大旋回半径rmaxに対応する制御角α0(一定値)および制御角β0(一定値)を予め記憶装置に記憶させておき、最大旋回半径報知モードが設定されると、制御角α0および制御角β0に基づいて、ヨー軸モータ150およびピッチ軸モータ160を回動させるようにしてもよい。
【0131】
(変形例6)
上述した実施の形態では、作業具としてバケット9を備えた油圧ショベルを作業車両の一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。作業具としてブレーカ、リフティングマグネット、破砕機を備えた種々の作業車両に本発明を適用することができる。
【0132】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。