(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546140
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】入力端子台と接続が容易な三相ACリアクトル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20190705BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20190705BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
H01F37/00 F
H01F37/00 M
H01F27/28 K
H01F27/28 128
H01F41/04 A
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-185583(P2016-185583)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-49984(P2018-49984A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2017年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 健一
(72)【発明者】
【氏名】松本 要
(72)【発明者】
【氏名】竹下 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】白水 雅朋
【審査官】
木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第202487364(CN,U)
【文献】
特開2016−122830(JP,A)
【文献】
特開2010−252539(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第104376990(CN,A)
【文献】
米国特許第03213397(US,A)
【文献】
特開2015−159657(JP,A)
【文献】
中国実用新案第203351363(CN,U)
【文献】
特開2010−157599(JP,A)
【文献】
特開2012−256807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/28
H01F 41/04
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出力端子台と、
前記入出力端子台の下部に配置される外周部鉄心と、
前記外周部鉄心の内面に接するか、または、該内面に結合され、鉄心及び該鉄心に巻回されたコイルから構成された少なくとも三つの鉄心コイルと、を備え、
前記少なくとも三つの鉄心コイルが、一つの鉄心コイルと隣の鉄心コイルとの間に磁気的に連結可能なギャップを形成する三相ACリアクトルであって、
前記コイルの端部を基点として前記入出力端子台の接続点までコイルを延在させた各相のコイル延在部を有し、該コイル延在部は、前記外周部鉄心の端面に対応した領域内に配置されている、
ことを特徴とする三相ACリアクトル。
【請求項2】
前記入出力端子台が前記外周部鉄心の径方向内側に配置されている、請求項1に記載の三相ACリアクトル。
【請求項3】
三つの入力側のコイル延在部の終端部が第一の直線上に配置され、
三つの出力側のコイル延在部の終端部が第二の直線上に配置され、
前記第一の直線と前記第二の直線が平行である、請求項1または2に記載の三相ACリアクトル。
【請求項4】
前記第一の直線及び第二の直線が、一つのコイルの巻回方向と平行である、請求項3に記載の三相ACリアクトル。
【請求項5】
前記第一の直線及び第二の直線と平行なコイルの終端部が、前記三相ACリアクトルの中心部と第三の直線上に配置される、請求項3または4に記載の三相ACリアクトル。
【請求項6】
前記コイルは、コイルの2つある終端部が、入出力端子台の入力側の接続点または出力側の接続点のどちら側に接続するかが、2つのコイルの終端部と接続点との間の距離の和が小さくなるようにして決められる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の三相ACリアクトル。
【請求項7】
前記コイル延在部は、エッジワイズ曲げにより加工されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の三相ACリアクトル。
【請求項8】
前記各相のコイル延在部がそれぞれ交差しない形状である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の三相ACリアクトル。
【請求項9】
前記第三の直線を基準とし、コイル延在部の終端部が線対称である、請求項5に記載の三相ACリアクトル。
【請求項10】
前記少なくとも三つの鉄心コイルの材質が、銅、または、アルミニウムである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の三相ACリアクトル。
【請求項11】
前記少なくとも三つの鉄心コイルの種類が、平角線、または、丸線、または、リッツ線である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の三相ACリアクトル。
【請求項12】
前記コイル延在部は、前記外周部鉄心の端面において前記少なくとも三つのコイルおよびそれらの内側に対応した領域内に配置されている、請求項1に記載の三相ACリアクトル。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の三相ACリアクトルを具備したモータ駆動装置。
【請求項14】
入出力端子台と、
前記入出力端子台の下部に配置される外周部鉄心と、
前記外周部鉄心の内面に接するか、または、該内面に結合され、鉄心及び該鉄心に巻回されたコイルから構成された少なくとも三つの鉄心コイルと、を備え、
前記少なくとも三つの鉄心コイルが、一つの鉄心コイルと隣の鉄心コイルとの間に磁気的に連結可能なギャップを形成する三相ACリアクトルの製造方法であって、
前記コイルの端部を基点として前記入出力端子台の接続点までコイルを延在させたコイル延在部を前記外周部鉄心の端面に対応した領域内に形成する工程を有する、
ことを特徴とする三相ACリアクトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相ACリアクトル及びその製造方法に関し、特に、巻回されたコイル端部を基点として入出力端子台の接続点まで延長されたコイル延在部を有する三相ACリアクトル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交流(AC)リアクトルは、インバータ等から発生する高調波電流を抑制するため、あるいは入力力率改善のため、さらにはインバータへの突入電流を軽減するために用いられる。ACリアクトルは、磁性材からなるコアと、コアの外周に形成されたコイルとを有する。
【0003】
図15に従来の三相ACリアクトルの構成を示す(例えば、特許文献1)。従来の三相ACリアクトル1000は、
図15に示した矢印の方向に直線上に配置された三相のコイル101a、101b、101cを備えている。また、各コイルには、出力端子210a、210b、210c及び入力端子220a、220b、220cが設けられている。
図15に示した従来の三相ACリアクトルにおいては、三相の各コイルが平行かつ直線的な配置関係(並置)であり、三相のコイル及び入出力端子が直線上に並んでいる。そのため、入出力端子が直線上に並んでいる汎用の入出力端子台を三相ACリアクトルの入出力端子に接続することは容易であった。
【0004】
しかしながら、近年、三相のコイルが平行かつ直線的(並置)な配置関係でない三相ACリアクトルも報告されている(例えば、特許文献2)。
図16(a)は、従来のリアクトル装置の斜視図であり、
図16(b)は、従来のリアクトル装置の平面図である。従来のリアクトル装置2000は、ヨーク鉄心911a、911bと、3つの磁脚鉄心931と、3つの零相用磁脚鉄心941と、3つのコイル921と、を備えている。例えば、3つのコイル921は、ヨーク鉄心911aの中心軸を中心にして、それぞれ120度ずつずらした位置に配置されている。
【0005】
このような三相ACリアクトルの場合、汎用の入出力端子台と接続するには、バスバーやケーブルでコイルエンドと入出力端子台を中継する必要があり、コイルエンドの位置が平行かつ直線的な配置関係(並置)とはなっていないために、汎用の入出力端子台との接続及び外部機器との接続が困難であった。また、製造の工数が増加したり、作業ミスが発生したりする虞もある。また、端子台との接続位置を変換するために、ショートバーやケーブルで中継する構造の場合、三相ACリアクトルの大きさに合わせた中継部材を数種類用意しておく必要もあり、管理の手間と費用を要するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−283706号公報
【特許文献2】国際公開第2012/157053号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、三相の各コイルが平行かつ直線的な配置関係(並置)でない場合であっても、外部機器との接続が容易な三相ACリアクトルを従来に比べて少ない工数で作製することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の三相ACリアクトルは、入出力端子台と、入出力端子台の下部に配置される外周部鉄心と、外周部鉄心の内面に接するか、または、該内面に結合され、鉄心及び該鉄心に巻回されたコイルから構成された少なくとも三つの鉄心コイルと、を備え、少なくとも三つの鉄心コイルが、一つの鉄心コイルと隣の鉄心コイルとの間に磁気的に連結可能なギャップを形成する三相ACリアクトルであって、コイルの端部を基点として入出力端子台の接続点まで延長した各相のコイル延在部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の三相ACリアクトルの製造方法は、入出力端子台と、入出力端子台の下部に配置される外周部鉄心と、外周部鉄心の内面に接するか、または、該内面に結合され、鉄心及び該鉄心に巻回されたコイルから構成された少なくとも三つの鉄心コイルと、を備え、少なくとも三つの鉄心コイルが、一つの鉄心コイルと隣の鉄心コイルとの間に磁気的に連結可能なギャップを形成する三相ACリアクトルの製造方法であって、コイルの端部を基点として入出力端子台の接続点までコイルを延在させたコイル延在部を形成する工程を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の三相ACリアクトル及び三相ACリアクトルの製造方法によれば、三相の各コイルが平行かつ直線的な配置関係(並置)でない場合であっても、外部機器との接続を容易に行うことが可能な三相ACリアクトルを従来に比べて少ない工数で作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する三相のコイル及び外周部鉄心の平面図及び斜視図である。
【
図2】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する入力端子台、コイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の斜視図である。
【
図3】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する入力端子台及び外周部鉄心の平面図である。
【
図4】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成するコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図である。
【
図5】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する三相の各コイル、コイル延在部及び外周部鉄心の平面図及び1つのコイルの斜視図である。
【
図6】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図である。
【
図7】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図及びコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図である。
【
図8】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成するコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の斜視図及び1つのコイルの斜視図である。
【
図9】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成するコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図である。
【
図10】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成するコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図である。
【
図11】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する入力端子台、コイル延在部、三相の各コイル、及び外周部鉄心の斜視図である。
【
図12】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する入力端子台、コイル延在部、三相の各コイル、及び外周部鉄心の組み立て前の斜視図である。
【
図13】本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する入力端子台、コイル延在部、三相の各コイル、及び外周部鉄心の組み立て後の斜視図である。
【
図14】コイル延在部の一部が交差する場合の三相ACリアクトルを構成するコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図及び斜視図である。
【
図15】三相のコイルが並置されている従来の三相ACリアクトルの斜視図である。
【
図16】三相のコイルが並置されていない従来の三相ACリアクトルの斜視図及び平面図である。
【
図17】三相のコイルが並置されていない三相ACリアクトルを構成する入力端子台、中継部材、及び三相の各コイルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る三相ACリアクトルについて説明する。まず、三相のコイルが平行かつ直線的(並置)な配置関係でない三相ACリアクトルに入出力端子台を中継部材を用いて接続する方法について説明する。
図17は、三相のコイルが並置されていない三相ACリアクトルを構成する入力端子台2、中継部材3、及び三相の各コイル(1a、1b、1c)の斜視図である。第1〜第3コイル(1a、1b、1c)は、外周部鉄心1の内部に設けられている。第1コイル(例えば、R相コイル)1aの出力端子13a、第2コイル(例えば、S相コイル)1bの出力端子13b、及び第3コイル(例えば、T相コイル)1cの出力端子13cは、並置されていない。同様に、第1コイル1aの入力端子14a、第2コイル1bの入力端子14b、及び第3コイル1cの入力端子14cは、並置されていない。以下、出力端子は、出力側コイルエンド(終端部)ともいい、入力端子は入力側コイルエンド(終端部)ともいう。
【0013】
図17に示すように、入出力端子台2は、入出力端子の接続点(21a、21b、21c、22a、22b、22c)が平行かつ直線的な配置関係(並置)にある。即ち、第1の出力端子の接続点21a、第2の出力端子の接続点21b、及び第3の出力端子の接続点21cが直線上に配置され、第1の入力端子の接続点22a、第2の入力端子の接続点22b、及び第3の入力端子の接続点22cが直線上に配置されており、かつ2つの直線は平行な配置関係(並置)にある。
【0014】
上記のようにコイル1a〜1cの入出力端子が並置されていない一方、入出力端子台2の入出力端子が並置されているため、両者を接続するための中継部材3が必要となる。しかしながら、中継部材3を設けることによって、製造コストが増大する。また、大きさが異なるコイルの増加に応じて中継部材の種類が増加する。さらに、中継部材を接続するための工数が増加する。
【0015】
本発明に係る三相ACリアクトルは上記の課題を解決するものであって、三相の各コイルが平行かつ直線的な配置関係(並置)でない場合であっても、外部機器との接続を容易に行うことが可能な三相ACリアクトルを従来に比べて少ない工数で作製するものである。
図1(a)に本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する三相のコイル及び外周部鉄心の平面図を示す。
図1(b)に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する三相のコイル及び外周部鉄心の斜視図を示す。
図2及び
図3に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する入力端子台、コイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の斜視図及び平面図をそれぞれ示す。
【0016】
本発明の実施例に係る三相ACリアクトル10は、入出力端子台2と、外周部鉄心1と、少なくとも三つの鉄心コイル(単に「コイル」ともいう)(1a、1b、1c)と、を有する。外周部鉄心1は、入出力端子台2の下部に配置される。少なくとも三つの鉄心コイル(1a、1b、1c)は、外周部鉄心1の内面に接するか、または、該内面に結合され、鉄心及び該鉄心に巻回されたコイルから構成されている。少なくとも三つの鉄心コイル(1a、1b、1c)が、一つの鉄心コイルと隣の鉄心コイルとの間に磁気的に連結可能なギャップを形成している。
【0017】
本発明の実施例に係る三相ACリアクトル10は、
図2に示すように、コイルの端部(コイルエンド)(13a、13b、13c、14a、14b、14c(
図1参照))を基点として入出力端子台の接続点(21a、21b、21c、22a、22b、22c)まで延長した各相のコイル延在部6を有する点を特徴としている。
【0018】
まず、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルに用いられるコイルの構成について説明する。
図1(a)及び
図1(b)においては、コイルエンドの位置を明確化するために、コイル延在部6を除去した構成を示している。
図1(a)に示すように、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルにおいては、三相の各コイル(1a、1b、1c)は、それぞれが平行かつ直線的な配置関係(並置)とはなっていない。
図1(b)に示す本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する三相の各コイル及び外周部鉄心の斜視図のように、三相の各相のコイル(1a、1b、1c)は、外周部鉄心1の内部に設けられている。第1コイル1aは、第1の出力側コイルエンド13a、及び第1の入力側コイルエンド14aを備えている。第2コイル1bは、第2の出力側コイルエンド13b、及び第2の入力側コイルエンド14bを備えている。第3コイル1cは、第3の出力側コイルエンド13c、及び第3の入力側コイルエンド14cを備えている。ここで、例えば、第1コイル1aをR相コイルとし、第2コイル1bをS相コイルとし、第3コイル1cをT相コイルとしてもよい。また、「コイルエンド」とは、コイルの端部をいう。ただし、本発明においては、各コイルエンドはコイル延在部6と一体化している。
【0019】
図2及び
図3に示すように、中継部材を使用せず、コイル延在部6により、直接、コイルを入出力端子台2と接続している。その結果、外部機器と入出力端子台の接続ミスを抑制することができ、中継部材(ショートバー等)が不要であるため製造コストを低減することが可能である。また、入出力端子台2を三相ACリアクトルの中央部に配置することができる。具体的には、
図3に示すように、外周部鉄心1の外周部1hの中心の位置に入出力端子台2を配置することができる。
【0020】
図2において、コイル延在部6は、三相ACリアクトルの場合、6つの部分に分けられる。61aは、R相コイル1aの出力側のコイル延在部であり、62aは、R相コイル1aの入力側のコイル延在部である。61bは、S相コイル1bの出力側のコイル延在部であり、62bは、S相コイル1bの入力側のコイル延在部である。61cは、T相コイル1cの出力側のコイル延在部であり、62cは、T相コイル1cの入力側のコイル延在部である。各コイル延在部(61a、62a、61b、62b、61c、62c)は、各コイルエンド(13a、14a、13b、14b、13c、14c(
図1参照))から延在している。
【0021】
図9及び
図12に示すように、コイル延在部62cは、T相コイルである第3コイル1cのコイルエンド14cと、入力端子台と接続するための端子(終端部)64cとの間に形成されている。他のコイル延在部も同様に各相のコイルエンドと入出力端子台との接続部の間に形成されている。
【0022】
各コイル延在部は各コイルを折り曲げることにより形成するようにしてもよい。即ち、
図2において点線で示したように、三相ACリアクトルの中心軸と並行に鉛直方向に伸びたコイルを直角方向に曲げ、さらに鉛直方向に曲げることにより各コイル延在部を形成することができる。このようにコイルを2回曲げる工程のうち、最初に曲げる工程を「第一の曲げ」と呼ぶこととする。そうすると、
図10に示すように、第一の曲げにより形成される平面上において、S相コイル1bのコイル延在部(61b、62b)の中心を通る第三の直線L3を基準として、コイル延在部6が線対称となっていることが好ましい。即ち、コイル延在部61aが61cと線対称であり、コイル延在部62aが62cと線対称となっていることが好ましい。さらに、各コイル延在部が同一平面上に形成されることが好ましい。
【0023】
また、各相のコイル延在部(61a、62a、61b、62b、61c、62c)が互いに交差しない形状であることが好ましい。
図9に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成するコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図を示す。このとき、コイルの2つある終端部は、入出力端子台の入力または出力の接続点のうち、どちらと接続するかが2つのコイルの終端部と、接続点間の距離の和が小さくなるようにして決められる(詳細については後述)。
【0024】
また、
図9に示すように、T相コイルの入力側のコイル延在部62cは、矢印で示すように、コイルエンド14cからコイル延在部の終端部64cに渡って、S相コイルの出力側のコイル延在部61bとは所定の距離だけ離隔するように形成されている。同様に、各コイル延在部は他のコイル延在部とは所定の距離だけ離隔するように形成されている。このような構成とすることにより、各コイル延在部間の絶縁距離を確保することが容易となる。
【0025】
次に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルにおける入出力端子台2と外周部鉄心1の位置関係について説明する。
図3に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する入力端子台2及び外周部鉄心1の平面図を示す。発明の実施例に係る三相ACリアクトルにおいては、入出力端子台2が外周部鉄心1の径方向内側に配置されていることが好ましい。即ち、
図3に示すように、外周部鉄心1の径方向内側である点線1hで示した領域内に入出力端子台2が配置されるように構成することが好ましい。このような構成とすることにより、入出力端子台を三相ACリアクトルの中央部に配置可能となり、三相ACリアクトルの横幅を抑制する事ができ、小型化が図れる。
【0026】
次に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルにおけるコイル延在部の終端部の位置関係について説明する。
図4に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成するコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図を示す。本発明の実施例に係る三相ACリアクトルにおいては、三つの入力側のコイル延在部の終端部(64a、64b、64c)が第一の直線L1上に配置され、三つの出力側のコイル延在部の終端部(63a、63b、63c)が第二の直線L2上に配置され、第一の直線L1と第二の直線L2が平行であることが好ましい。
図4に示すように、三つの入力側のコイル延在部の終端部(64a、64b、64c)は、破線64内において第一の直線L1上に配置されている。同様に、三つの出力側のコイル延在部の終端部(63a、63b、63c)は、点線63内において、第二の直線L2上に配置されている。さらに、第一の直線L1及び第二の直線L2は平行な位置関係にあることが好ましい。このような構成とすることにより、コイル延在部の終端部と入出力端子台の接続を容易に行うことができる。
【0027】
図5に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する三相の各コイル、コイル延在部及び外周部鉄心の平面図及び1つのコイルの斜視図を示す。本発明の実施例に係る三相ACリアクトルは、第一の直線L1及び第二の直線L2が、一つのコイルの巻回方向Dwと平行であることが好ましい。このような構成とすることにより、コイル延在部の曲げ工数を低減することができる。
【0028】
図6に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図を示す。本発明の実施例に係る三相ACリアクトルは、第一の直線L1及び第二の直線L2と平行なコイル1bの終端部(13b、14b)が、三相ACリアクトルの中心部Cと第三の直線L3上に配置されることが好ましい。このような構成とすることにより、コイル延在部6を入出力端子台2を中心に配置することが可能となる。
【0029】
図7(a)及び
図7(b)に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図、並びにコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図をそれぞれ示す。
図7(b)において、入出力端子台2(
図2参照)の出力側の接続点(21a、21b、21c)及び入力側の接続点(22a、22b、22c)の位置を点線で示している。本発明の実施例に係る三相ACリアクトルは、例えば、コイル1aは、コイル1aの2つある終端部(13a、14a)が、入出力端子台2の入力側の接続点22aまたは出力側の接続点21aのどちら側に接続するかが、2つのコイルの終端部(13a、14a)と接続点(21a、22a)との間の距離の和が小さくなるようにして決められることが好ましい。例えば、R相コイル1aの終端部14aから入力側の接続点22aまでの距離を(A−1)とし、コイルの終端部13aから入力側の接続点22aまでの距離を(A−2)とし、コイルの終端部14aから出力側の接続点21aまでの距離を(B−1)とし、コイルの終端部13aから出力側の接続点21aまでの距離を(B−2)とする。このとき、
図7(b)に示すように、コイルの終端部14aと入力側の接続点22aとの間にコイル延在部を設け、コイルの終端部13aと出力側の接続点21aとの間にコイル延在部を設けた場合には、端子間距離の合計は(A−1)+(B−2)となる。一方、コイルの終端部13aと入力側の接続点22aとの間にコイル延在部を設け、コイルの終端部14aと出力側の接続点21aとの間にコイル延在部を設けた場合には、端子間距離の合計は(A−2)+(B−1)となる。そこで、両者を比較し、合計値が小さくなるようにコイル延在部を設ける。S相コイル1b及びT相コイル1cについても同様にしてコイル延在部を設ける。このような構成とすることにより、コイル延在部の冗長な部分が減少するため、コイル延在部のコストを低減することが可能となる。
【0030】
図8(a)に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成するコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の斜視図を示し、
図8(b)に1つのコイルの斜視図を示す。本発明の実施例に係る三相ACリアクトルは、例えば、コイル延在部62cが、エッジワイズ曲げにより加工されていることが好ましい。ここで、「エッジワイズ曲げ」とは、
図8(b)の矢印で示したようにコイル延在部62cの厚みが大きい方向に曲げることをいう。このような構成とすることにより、コイル延在部の曲げ工数を低減することが可能となる。
【0031】
図9に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成するコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図を示す。本発明の実施例に係る三相ACリアクトルは、各相のコイル延在部がそれぞれ交差しない形状であることが好ましい。即ち、例えば、
図9に示すように、S相コイル1bのコイル延在部61bとT相コイル1cのコイル延在部62cは交差しないことが好ましい。他のコイル延在部(61a、62a、62b、61c)も同様に互に交差しないことが好ましい。このような構成とすることにより、コイル延在部の高さを抑制することが可能となり、各コイル延在部間の絶縁距離の確保が容易となる。
【0032】
図10に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成するコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図を示す。本発明の実施例に係る三相ACリアクトルは、第三の直線L3を基準とし、コイル延在部の終端部が線対称であることが好ましい。即ち、コイル延在部61aの終端部63aが、コイル延在部61cの終端部63cと線対称であることが好ましい。さらに、コイル延在部62aの終端部64aが、コイル延在部62cの終端部64cと線対称であることが好ましい。このような構成とすることにより、コイル延在部の曲げ加工をする設備の共通化が可能となる。
【0033】
次に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルにおけるコイルの材質及びコイルの種類について説明する。
図11に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトル10を構成する入力端子台2、コイル延在部6、三相の各コイル(1a、1b、1c)及び外周部鉄心1の斜視図を示す。本発明の実施例に係る三相ACリアクトルにおいては、三相の各コイルである少なくとも三つの鉄心コイル(1a、1b、1c)の材質が、銅、または、アルミニウムであることが好ましい。また、三相の各コイルである少なくとも三つの鉄心コイル(1a、1b、1c)の種類が、平角線、または、丸線、リッツ線であることが好ましい。上記のようにコイルの材質及びコイルの種類を選定することにより、高性能な三相ACリアクトルを低コストで製造することができる。
【0034】
以上説明した三相ACリアクトルをモータ駆動装置に具備するようにしてもよい。本発明の実施例に係るモータ駆動装置によれば、三相の各コイルが平行かつ直線的な配置関係(並置)でない場合であっても、外部機器との接続を容易に行うことが可能な三相ACリアクトルを具備したモータ駆動装置を得ることができる。
【0035】
次に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルの製造方法について説明する。
図12に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する入力端子台、コイル延在部、三相の各コイル、及び外周部鉄心の組み立て前の斜視図を示し、
図13に、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルを構成する入力端子台、コイル延在部、三相の各コイル、及び外周部鉄心の組み立て後の斜視図を示す。本発明の実施例に係る三相ACリアクトルの製造方法は、入出力端子台2と、入出力端子台2の下部に配置される外周部鉄心1と、外周部鉄心1の内面に接するか、または、該内面に結合され、鉄心及び該鉄心に巻回されたコイルから構成された少なくとも三つの鉄心コイル(1a、1b、1c)と、を備え、少なくとも三つの鉄心コイル(1a、1b、1c)が、一つの鉄心コイルと隣の鉄心コイルとの間に磁気的に連結可能なギャップを形成する三相ACリアクトルの製造方法であって、コイルの端部(13a、13b、13c、14a、14b、14c)を基点として入出力端子台の接続点(21a、21b、21c、22a、22b、22c)までコイルを延在させたコイル延在部(61a、61b、61c、62a、62b、62c)を形成する工程を有することを特徴とする。例えば、第3のコイルであるT相コイル1cの端部14cでコイルを水平方向に1回曲げる(第一の曲げ)ことにより、コイル延在部62cを形成する。次に、コイルをさらに鉛直方向に1回曲げる(第二の曲げ)により終端部64cを形成する。コイル延在部6の他の構成部分(61a、61b、61c、62a、62b(
図11参照))も同様の工程により形成することができる。
【0036】
図12及び
図13に示すように、本発明の実施例に係る三相ACリアクトルは、コイル延在部6と入出力端子台2の接続をネジ止めによって行うことができる。
図12はネジ止めする前の状態を示し、
図13はネジ止めした後の状態を示す。例えば、コイル延在部62cの終端部64cに設けた孔の位置と、入出力端子台2の第3の出力端子22cに設けた孔の位置を合わせて、ネジ52cでネジ止めすることができる。コイル延在部6の他の構成部分(61a、61b、61c、62a、62b(
図11参照))と入出力端子台2の入出力端子(21a、21b、21c、22a、22b)の接続もネジ(51a、51b、51c、52a、52b)によって行うことができる。また、入出力端子台2と外部機器との接続はネジ(53a、53b、53c、54a、54b、54c)によって行うことができる。
【0037】
以上の説明においては、コイル延在部が交差しない構成について説明した。しかしながら、コイル延在部が交差する構成としてもよい。
図14(a)及び
図14(b)に、コイル延在部の一部が交差する場合の三相ACリアクトルを構成するコイル延在部、三相の各コイル及び外周部鉄心の平面図及び斜視図をそれぞれ示す。
図14(a)及び
図14(b)において、一部が交差するコイル延在部60は、三相ACリアクトルの場合、6つの部分に分けられる。65aは、R相コイル1aの出力側のコイル延在部であり、66aは、R相コイル1aの入力側のコイル延在部である。65bは、S相コイル1bの出力側のコイル延在部であり、66bは、S相コイル1bの入力側のコイル延在部である。65cは、T相コイル1cの出力側のコイル延在部であり、66cは、T相コイル1cの入力側のコイル延在部である。各コイル延在部は、各コイルエンド(15a、16a、15b、16b、15c、16c)から延在している。
【0038】
図14(a)及び
図14(b)に示すように、コイル延在部65bは、他のコイル延在部65a及び66aと交差している。このように交差するコイル延在部の組み合わせの例は一例であって、他のコイル延在部が交差するようにしてもよい。
【0039】
本発明の実施例に係る三相ACリアクトルの製造方法によれば、自動化を前提とした非並置型コイルを具備するACリアクトルの製造工程において、コイル延在部の終端部と入出力端子の接続を容易に行うことができるため、同製造工程を自動化する事が容易となる。
【符号の説明】
【0040】
1 外周部鉄心
1a 第1コイル
1b 第2コイル
1c 第3コイル
2 入出力端子台
6 コイル延在部
10 三相ACリアクトル