【文献】
HAMSTER PUTATIVE PHOSPHOLIPASE B-LIKE 2(PLBD2) ELISA KIT,CATALOG CSB-EL018125HA FROM CUSABIO,2012年 4月28日,URL,http://www.hoelzel-biotech.com/en/cusabio-elisa-ha-csb-el018125ha-hamster-putative-phospholipase-b-like-2plbd2-elisa-kit.html
【文献】
Catherine EM Hogwood et al,Host cell protein dynamics in recombinant CHO cells,Bioengineered,2013年 9月 1日,vol.4 No.5,P288-291
【文献】
Lucas C et al,Enzyme-linked immunosorbent assays for the determination of contaminants resulting from the immunoaffinity purification of recombinant proteins,Journal of immunological methods,1988年10月 4日,vol.113, No.1,P113-122
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハムスターホスホリパーゼB様2に結合するモノクローナル抗体であって、配列番号15のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDRH2、及び配列番号17のアミノ酸配列を含むCDRH3を含む可変重鎖領域、並びに配列番号20のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号21のアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号22のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む可変軽鎖領域を含む可変領域を含む抗体。
ハムスターホスホリパーゼB様2に結合するモノクローナル抗体であって、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRH2、及び配列番号7のアミノ酸配列を含むCDRH3を含む可変重鎖領域、並びに配列番号10のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む可変軽鎖領域を含む可変領域を含む抗体。
生産物細胞株である組換えポリペプチド発現細胞株を、ハムスターPLBL2の発現についてスクリーニングする方法であって、生産物細胞株から得られる試料中のPLBL2を検出することを含む方法。
二以上の組換えポリペプチド発現細胞株から成る群より最適な組換えポリペプチド発現細胞株を選択する方法であって、二以上の組換えポリペプチド発現細胞株の各々は生産物細胞株であり、最適な組換えポリペプチド発現細胞株は最適な生産物細胞株であり、各生産物細胞株は同一の生産物を発現し、最適な生産物細胞株は低量のハムスターPLBL2及び大量の生産物を発現し、
(i)二以上の生産物細胞株の各々から生産物細胞株試料を得ること、
(ii)試料中のハムスターホスホリパーゼB様2タンパク質(PLBL2)を検出するためのイムノアッセイ方法に従って各宿主細胞株試料中のPLBL2の量を算出することであって、該方法が
(a)ハムスターPLBL2に結合する一次捕捉抗体を試料と接触させ、それにより試料−捕捉抗体結合材料を生成すること;
(b)ハムスターPLBL2に結合する二次検出抗体を試料−捕捉抗体結合材料と接触させること;
(c)試料−捕捉抗体結合材料に結合する二次抗体を検出すること;
(d)標準的な滴定曲線を使用して、結合した二次検出抗体のレベルを定量化すること;
(e)試料中に存在するハムスターPLBL2の量を、結合した二次検出抗体のレベルに基づいて算出すること
を含み、
(iii)生産物を検出し、各生産物細胞株試料中の生産物の量を定量化すること、
(iv)各生産物細胞株試料中のPLBL2の量を、その群の生産物細胞株試料の各々におけるPLBL2の量と比較すること、
(v)各生産物細胞株試料中の生産物の量を、その群の生産物細胞株試料の各々における生産物の量と比較すること、
(vi)その群の生産物細胞株試料の各々と比較して最低量のPLBL2且つ最高量の生産物を有する生産物細胞株試料を特定し、それにより、その群から特定された最低量のPLBL2且つ最高量の生産物を有する生産物細胞株を生成すること、及び
(vii)最適な生産物細胞株として(vi)の特定された生産物細胞株を選択すること
を含む方法。
二以上の組換えポリペプチド発現細胞株から成る群より最適な組換えポリペプチド発現細胞株を選択する方法であって、二以上の組換えポリペプチド発現細胞株の各々は生産物細胞株であり、最適な組換えポリペプチド発現細胞株は最適な生産物細胞株であり、各生産物細胞株は同一の生産物を発現し、最適な生産物細胞株は低量のハムスターPLBL2及び大量の生産物を発現し、
(i)二以上の生産物細胞株の各々から生産物細胞株試料を得ること、
(ii)試料中のハムスターホスホリパーゼB様2タンパク質(PLBL2)を検出するためのイムノアッセイ方法に従って各宿主細胞株試料中のPLBL2の量を算出することであって、該方法が
(a)ハムスターPLBL2に結合する一次捕捉抗体を試料と接触させ、それにより試料−捕捉抗体結合材料を生成すること;
(b)ハムスターPLBL2に結合する二次検出抗体を試料−捕捉抗体結合材料と接触させること;
(c)試料−捕捉抗体結合材料に結合する二次抗体を検出すること;
(d)標準的な滴定曲線を使用して、結合した二次検出抗体のレベルを定量化すること;
(e)試料中に存在するハムスターPLBL2の量を、結合した二次検出抗体のレベルに基づいて算出すること
を含み、
(iii)生産物を検出し、各生産物細胞株試料中の生産物の量を定量化すること、
(iv)各生産物細胞株試料について、生産物の量に対するPLBL2の量の比率を算出すること、
(v)各生産物細胞株試料について算出した該比率を、その群の生産物細胞株試料の各々と比較すること、
(vi)その群の最も低い該比率を有する生産物細胞株試料を特定し、それにより、その群から特定された、最低量のPLBL2且つ最高量の生産物を有する生産物細胞株を生成すること、及び
(vii)最適な生産物細胞株として(vi)の特定された生産物細胞株を選択すること
を含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994), 及びMarch, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4th ed., John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992)は、本願で使用される多くの用語に対する一般的な指針を当業者に提供する。
【0026】
特定の定義
本明細書の説明のために以下の定義を適用し、単数形で用いられる用語は、適切な場合は常に、複数形を含み、その逆の場合も同じである。以下に記載の如何なる定義も、参照により本明細書に援用される任意の文書と矛盾する場合には、以下に記載する定義が優先するものとする。
【0027】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを表していない限り複数の対象物を含む。したがって、例えば、「タンパク質」又は「抗体」への言及は、それぞれ複数のタンパク質又は抗体を含み、「細胞」への言及は、細胞の混合物等を含む。
【0028】
用語「検出(すること)」は、本明細書では最も広い意味で使用され、標的分子の定性的及び定量的測定の双方を含む。検出は、試料中の標的分子の単なる存在を特定するだけでなく、標的分子が検出可能なレベルで試料中に存在するかどうかを決定することを含む。
【0029】
「試料」は、大量の材料のごく一部を指す。通常、本明細書に記載の方法に従った試験は、試料上で実施される。試料は、通常、例えば、本明細書では「生産物細胞株」とも称される培養された組換えポリペプチド発現細胞株から、又は培養された宿主細胞から得られた組換えポリペプチド調製物から得られる。本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、目的の組換えポリペプチド又は生産物の発現のための遺伝子を含有しない。試料は、例えば、限定されないが、収集細胞培養液から、精製プロセスの特定の工程におけるインプロセスプールから、又は最終精製産物から得られうる。
【0030】
「捕捉抗体」は、試料中の標的分子に特異的に結合する抗体を指す。特定の条件下で捕捉抗体は、標的分子と複合体を形成し、その捕捉抗体‐標的分子複合体が試料の残りから分離されうる。特定の実施態様では、そのような分離は、捕捉抗体に結合しなかった試料中の物質又は材料を洗い流すことを含んでもよい。特定の実施態様では、捕捉抗体は、例えば、プレート又はビーズを含むがこれらに限定されない固体支持体に結合されてもよい。
【0031】
「検出抗体」は、試料中又は試料−捕捉抗体結合材料中の標的分子に特異的に結合する抗体を指す。特定の条件下で検出抗体は、標的分子と、又は標的分子−捕捉抗体複合体と複合体を形成する。検出抗体は、増幅することができる標識を介して直接的に、或いは、例えば、標識され且つ検出抗体に結合する別の抗体の使用を介して間接的に検出されることが可能である。直接標識の場合、検出抗体は通常、例えば、ビオチン又はルテニウムを含むがこれらに限定されない幾つかの手段によって検出可能な部分にコンジュゲートされている。
【0032】
用語「標識」又は「検出可能な標識」は、検出又は定量化すべき物質(例えば抗体)に結合することができる任意の化学基又は部分を指す。標識は通常、物質の高感度な検出又は定量化に適した検出可能な標識である。検出可能な標識の例は、限定されないが、発光標識(例えば、蛍光、リン光、化学発光、生物発光及び電気化学発光標識)、放射性標識、酵素、粒子、磁性体、電気活性種等を含む。或いは、検出可能な標識は、特異的結合反応に関与することにより、自身の存在を知らせることができる。そのような標識の例は、ハプテン、抗体、ビオチン、ストレプトアビジン、hisタグ、ニトリロ三酢酸、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、グルタチオン等を含む。
【0033】
用語「検出手段」は、その時アッセイで読み出されるシグナル報告を介して検出可能な抗体の存在を検出するために使用される部分又は技術を指す。検出は、通常、例えばマイクロタイタープレート上に捕捉された標識といったような固定化された標識(例:アビジン又はストレプトアビジン‐HRP)を増幅する試薬を用いることを意味する。
【0034】
「フォトルミネッセンス」は、材料による光の吸収(或いは電磁波放射と呼ばれる)の後、材料が発光する過程を指す。蛍光とリン光は、二つの異なる種類のフォトルミネッセンスである。「化学発光」過程は、化学反応による発光種の生成を必要とする。「電気化学発光」又は「ECL」は、例えば抗体等の種が、適切な周囲の化学的環境下で電気化学的エネルギーに曝露する際に発光する過程である。
【0035】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書においては、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために互換的に使用される。ポリマーは、直鎖状でも分枝状でもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸が割り込んでいてもよい。この用語はまた、自然に又は介入により修飾されているアミノ酸ポリマーを包含しており、その例として、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは修飾(例えば、標識化成分とのコンジュゲーション)が挙げられる。この定義には、例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等を含む)の一又は複数の類似体を含むポリペプチド、及び当該技術分野で知られている他の修飾も含まれる。本明細書で使用される用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、特に抗体を包含する。
【0036】
「精製された」ポリペプチド(例えば、抗体又はイムノアドヘシン)は、ポリペプチドが純度を増し、その天然の環境に存在するよりも、及び/又は実験室条件下で最初に合成及び/又は増幅された時よりも純粋な形態で存在することを意味する。純度は相対的な用語であって、絶対的な純度を必ずしも意味しない。
【0037】
目的の抗原に「結合する」抗体、例えば宿主細胞タンパク質は、抗体がアッセイ試薬として(例えば、捕捉抗体として、又は検出抗体として)有用なほどに十分な親和性で抗原に結合する抗体である。通常、そのような抗体は、他のポリペプチドと有意に交差反応しない。
【0038】
ポリペプチドの標的分子への結合に関して、「特異的結合」、又は特定のポリペプチド若しくは特定のポリペプチド標的上のエピトープと「特異的に結合する」又はそれに対して「特異的である」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、標的分子の結合をコントロール分子の結合との比較で決定することにより測定でき、コントロール分子は、一般に、結合活性を有さない類似構造の分子である。
【0039】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強度を指す。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1対1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載したものを含む、当該技術分野で知られている一般的な方法により測定することができる。
【0040】
用語「抗PLBL2抗体」及び「PLBL2に結合する抗体」は、抗体が、PLBL2を標的とする際に薬剤(例えば、本明細書に記載のアッセイにおける薬剤)として有用であるほどに十分な親和性でPLBL2(例えば、ハムスターPLBL2)を結合することが可能な抗体を指す。一実施態様において、無関係な非PLBL2タンパク質に対する抗PLBL2抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)で測定される場合、PLBL2に対する抗体の結合のおよそ10%未満である。特定の実施態様では、PLBL2に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば10
−8M以下、例えば10
−8Mから10
−13M、例えば10
−9Mから10
−13M)の解離定数(K
D)を有する。
【0041】
本明細書における用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含む。
【0042】
抗体は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子であり、すべてが免疫グロブリンフォールドに基づく。例えば、IgG抗体は二つの「重」鎖及び二つの「軽」鎖を持ち、それらはジスルフィド結合され機能的抗体を形成する。各重鎖及び軽鎖自体は、「定常」(C)及び「可変」(V)領域を含む。V領域は抗体の抗原結合特異性を決定し、C領域は免疫エフェクターとの非抗原特異的相互作用において構造的サポート及び機能を提供する。抗体の抗原結合特異性又は抗体の抗原結合断片は、特定の抗原に特異的に結合する抗体の能力である。
【0043】
抗体の抗原結合特異性は、可変すなわちV領域の構造的特性により決定される。用語「可変」とは、可変ドメインの特定の部分が、抗体間で広範に配列が異なり、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性に利用されることを指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均一に分布しているわけではない。可変性は、軽鎖及び重鎖可変ドメインの双方において、超可変領域と称される三つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存されている部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然型の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは四つのFRをそれぞれ含み、これらのFRは、主としてβシート構造をとり、三つの超可変領域によって結合されており、この三つの超可変領域は、βシート構造をつなぐループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖の超可変領域は、FRによって極めて近接して結合され、他の鎖の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、例えば抗体依存性細胞傷害性(ADCC)への抗体の関与等、種々のエフェクター機能を呈する。
【0044】
用語「超可変領域」は、本明細書において使用される場合、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」すなわち「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、V
Lのおよそ24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)周辺と、V
Hのおよそ31−35B(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3)周辺(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))及び/又は「超可変ループ」由来のアミノ酸残基(例えば、V
Lの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)と、V
Hの26−32(H1)、52A−55(H2)及び96−101(H3)(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含み得る。
【0045】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義している超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0046】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)
2及びFv断片;ダイアボディ;タンデムダイアボディ(taDb);直鎖状抗体(例えば、米国特許第5641870号、実施例2;Zapata et al., Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995));1アーム抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ、単鎖抗体分子;抗体断片から形成された多重特異性抗体(例えば、Db−Fc、taDb−Fc、taDb−CH3、(scFV)4−Fc、di−scFv、bi−scFv又はタンデム(di,tri)−scFvを含むがこれらに限定されない);及び二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を含む。
【0047】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれ、各々が単一の抗原結合部位を持つ二つの同一の抗体結合断片と、その名称が容易に結晶化する能力を反映している残りの「Fc」断片を生成する。ペプシン処理により、二つの抗原結合部位を持ち、抗原を尚も架橋可能なF(ab’)
2断片が得られる。
【0048】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体から成る。各可変ドメインの三つの超可変領域が相互作用してV
H−V
L二量体の表面に抗原結合部位を既定するのは、この構造においてである。合計で六つの超可変領域が抗原結合特異性を抗体に付与する。とはいえ、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な三つの超可変領域のみを含むFvの半分)であっても、全結合部位よりも低い親和性でではあるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
【0049】
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されている点でFab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一の遊離チオール基を有しているFab’に対するここでの命名である。F(ab’)
2抗体断片はもともと、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0050】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる二つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。
【0051】
抗体には、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なる「クラス」を割り当てることができる。インタクトな抗体には五つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらの幾つかは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IGA及びIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)に更に分かれる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構造はよく知られている。
【0052】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のV
Hドメイン及びV
Lドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。幾つかの実施態様では、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合にとって望ましい構造を形成するのを可能にするポリペプチドリンカーをV
HドメインとV
Lドメインの間に更に含む。scFvの概説については、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと。
【0053】
用語「ダイアボディ」は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、この断片は、同一ポリペプチド鎖(V
H−V
L)において軽鎖可変ドメイン(V
L)と連結した重鎖可変ドメイン(V
H)を含む。同じ鎖上のこの二つのドメイン間に対形成するには短すぎるリンカーを用いることにより、これらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を作り出す。ダイアボディは、例えば、EP404097号;国際公開第93/01161号;及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)に更に詳細に記載されている。
【0054】
用語「多重特異性抗体」は最も広い意味で用いられ、特にポリエピトープ特異性を有する(すなわち、一生体分子上の二以上の異なるエピトープに特異的に結合することができるか、又は二以上の異なる生体分子上のエピトープに特異的に結合することができる)抗原結合ドメインを含む抗体を包含する。幾つかの実施態様では、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)の抗原結合ドメインは二つのVH/VLユニットを含み、第一のVH/VLユニットは第一のエピトープに特異的に結合し、第二のVH/VLユニットは第二のエピトープに特異的に結合し、各VH/VLユニットは重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。このような多重特異性抗体は、完全長抗体、二以上のVL及びVHドメインを有する抗体、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ及びトリアボディ(triabody)、共有結合又は非共有結合した抗体断片を含むがこれらに限定されない。少なくとも重鎖定常領域の一部及び/又は少なくとも軽鎖定常領域の一部を更に含むVH/VLユニットは、「ヘミマー」又は「半抗体」と呼ばれることもある。「ポリエピトープ特異性」とは、同じか異なる標的(複数可)上の二以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。「単一特異性」は唯一つのエピトープに結合する能力を指す。一実施態様によると、多重特異性は、5μMから0.001pM、3μMから0.001pM、1μMから0.001pM、0.5μMから0.001pM、又は0.1μMから0.001pMの親和性で各エピトープと結合するIgG抗体である。
【0055】
「二重特異性抗体」とは、一生体分子上の二の異なるエピトープに特異的に結合することができるか、又は二の異なる生体分子上のエピトープに特異的に結合することができる抗原結合ドメインを含む多重特異性抗体である。本明細書において二重特異性抗体は、「二重特異性」を有する、又は「二重特異的」である、とも言われる。
【0056】
「単一ドメイン抗体」(sdAb)又は「単一可変ドメイン(SVD)抗体」なる表現は、単一可変ドメイン(VH又はVL)が抗原結合を付与することができる抗体を一般に指す。言い換えると、単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために別の可変ドメインと相互作用する必要がない。単一ドメイン抗体の例は、ラクダ科(ラマ及びラクダ)及び軟骨魚類(例えばコモリザメ)に由来するもの、並びにヒト及びマウス抗体に由来し、組換え法から得られるものを含む(Nature(1989)341:544-546;Dev Comp Immunol(2006)30:43-56;Trend Biochem Sci(2001)26:230-235;Trends Biotechnol(2003):21:484-490;国際公開第2005/035572号;国際公開第03/035694号;Febs Lett(1994)339:285-290;国際公開第00/29004号;国際公開第02/051870号)。
【0057】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち一般的に少量で存在しうる突然変異体等の、モノクローナル抗体の生成中に生じる可能性のある突然変異体を除いて、集団を構成する個々の抗体が同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。モノクローナル抗体は、その特異性に加えて、他の免疫グロブリンが混入していないという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で作製しなければならないことを意味するものではない。例えば、本明細書において提供される方法に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製されてもよく、又は組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号参照)により作製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)に記載されている技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0058】
本明細書においてモノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同であるが、鎖(複数可)の残りの部分が別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びに、所望の生物活性を呈する限りはそのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号;及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。本明細書において、目的のキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル、カニクイザル等の旧世界サル)に由来する可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5693780号)。
【0059】
本明細書の目的のためには、「インタクトな抗体」は重及び軽可変ドメイン並びにFc領域を含む抗体である。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体でありうる。好ましくは、インタクトな抗体は、一又は複数のエフェクター機能を有する。
【0060】
「天然抗体」は、通常、二つの同一の軽(L)鎖及び二つの同一の重(H)鎖から成る、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有している。各重鎖は一端に可変ドメイン(VH)を有し、それに続いて複数の定常ドメインがある。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V
L)を、他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと平行に並び、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと平行に並んでいる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の境界面を形成すると考えられる。
【0061】
「ネイキッド抗体」は、検出部分又は標識等の異種分子とコンジュゲートされていない抗体(本明細書に定義されている)である。
【0062】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含み、継代の数に関係なく、それに由来する初代形質転換細胞及び子孫を包含する。子孫は、親細胞と核酸含量が完全に同一でなくてもよく、変異を含有していてもよい。本明細書には、最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされたか又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する突然変異体子孫が含まれる。
【0063】
用語「夾雑物」及び「不純物」は本明細書では互換的に使用され、所望のポリペプチド産物とは異なる材料又は物質を指す。夾雑物は、CHOP等の宿主細胞材料;浸出プロテインA;核酸;所望のポリペプチドの変異体、断片、凝集体又は誘導体;他のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス夾雑物;細胞培養培地成分等を含むがこれらに限定されない。幾つかの例において、夾雑物は、例えば、大腸菌細胞等の細菌細胞、昆虫細胞、原核細胞、真核細胞、酵母細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞等の哺乳動物細胞I、鳥類細胞、真菌細胞であるがこれらに限定されない。
【0064】
「単離された」核酸とは、その自然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、核酸分子を通常含有する細胞中に含まれる核酸分子を含むが、その核酸分子は、染色体外又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在している。
【0065】
「抗PLBL2抗体をコードする単離された核酸」とは、抗体重鎖及び軽鎖をコードする一又は複数の核酸分子(又はその断片)指し、単一のベクター又は別々のベクター中のそのような核酸分子(複数可)、及び宿主細胞中の一又は複数の位置に存在するそのような核酸分子を含む。
【0066】
参照ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、最大の配列同一性パーセントを得るために必要ならば間隙を導入した後、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用する、当業者の技量の範囲内の種々の方法で達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長にわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメーターを決定することができる。特定の実施態様では、アミノ酸配列同一性%の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用することによって生成される。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社により著作され、そのソースコードが米国著作権庁(Washington D.C.,20559)に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN−2は、ジェネンテック社(South San Francisco,California)から公的に入手可能であり、又はそのソースコードからコンパイルすることもできる。ALIGN−2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標)のV4.0Dを含むUNIX(登録商標)オペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルされる。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN−2プログラムによって設定され、変動しない。
【0067】
アミノ酸配列比較にALIGN−2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対するアミノ酸配列同一性%(或いは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対してある程度の%のアミノ酸配列同一性を持つか又は含む、与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
100×分率X/Y
【0068】
上式中、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN−2のA及びBのアライメントによって完全一致を記録したアミノ酸残基の数であり、Yは、B中の全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限り、本明細書で使用されるすべてのアミノ酸配列同一性%の値は、ALIGN−2コンピュータプログラムを使用し、直前の段落で説明したようにして得られる。
【0069】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然型抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は通常、各々が四つの保存されたフレームワーク領域(FR)と三つの超可変領域(HVR)とを含む類似構造を有する。(例えば、Kindt et al., Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照されたい。)単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分でありうる。更に、特定の抗原を結合する抗体は、相補性VL又はVHドメインそれぞれのライブラリーをスクリーニングするために、抗原に結合する抗体からのVH又はVLドメインを用いて単離されてもよい。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照のこと。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、それが結合している別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及びそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、自身が作動可能に結合している核酸の発現を指令することができる。本明細書でこのようなベクターは、「発現ベクター」と称される。
【0071】
本明細書中の「およそ」の値又はパラメーターへの言及は、その値又はパラメーター自体に関する変動を含む(記載する)。例えば、「およそX」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0072】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを表していない限り複数の対象物を含む。本明細書に記載される本発明の態様及び変形形態は、態様及び変形形態「から成る」及び/又は「から本質的に成る」ことを含む。
【0073】
アッセイ法
本明細書に提供されるのは、ハムスターPLBL2の検出及び定量化のためのイムノアッセイ法である。該方法が、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞等の宿主細胞中で産生された組換えポリペプチド調製物中のハムスターPLBL2の検出及び定量化のために使用されうる。幾つかの実施態態様では、該方法は、本明細書に記載の捕捉及び検出用抗PLBL2抗体を使用する。幾つかの実施態態様では、抗体は、サンドイッチアッセイ、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、電気化学的アッセイ(ECL)、磁気イムノアッセイを含むがこれらに限定されない、当該技術分野で知られている任意のイムノアッセイ法において使用される。特定の実施態様では、方法は、抗PLBL2抗体のハムスターPLBL2への結合を許容する条件下で、本明細書に記載の抗PLBL2抗体と組換えポリペプチド調製物の試料を接触させることと、抗PLBL2抗体とハムスターPLBL2との間に複合体が形成されているか否かを検出することとを含む。
【0074】
特定の実施態様では、標識された抗PLBL2抗体が提供される。標識は、限定されないが、直接的に検出される標識又は部分(例えば、蛍光、化学発光及び放射性標識)、及び、例えば酵素反応若しくは分子相互作用を通して間接的に検出される酵素又はリガンドのような部分を含む。標識の例は、限定されないが、放射性同位体32P、14C、125I、3H及び131I、フルオロフォア(例えば、希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体)、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン類、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化させる酵素(例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ又はミクロペルオキシダーゼ)と結合した複素環式オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカル等を含む。
【0075】
特定の実施態様では、捕捉用抗PLBL2抗体は固相に固定化されている。幾つかの実施態様では、固定化に使用される固相は、例えば、表面、粒子、多孔性マトリックス、ビーズ等の形態の支持体を含めて、本質的に非水溶性であり、且つイムノメトリックアッセイにおいて有用である任意の不活性支持体又は担体である。一般的に使用される支持体の例は、小シート、SEPHADEX(登録商標)、ゲル、ポリ塩化ビニル、プラスチックビーズ、及びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等から製造されたアッセイプレート又は試験管(96ウェルマイクロタイタープレートを含む)、並びに紙、アガロース、架橋デキストラン及び他の多糖類等の粒子状材料を含む。或いは、米国特許第3969287号、同第3691016号、同第4195128号、同第4247642号、同第4229537号及同第4330440号に記述されている反応性非水溶性マトリックス、例えば臭化シアン活性化炭水化物及び反応基質が、捕捉試薬固定化に好適に用いられる。幾つかの実施態様では、固定化されている捕捉試薬は、一度に複数の試料を分析するために使用することができるマイクロタイタープレート上に被覆されている。 マイクロタイタープレートの例は、限定されないが、MICROTEST(登録商標)、MAXISORP(登録商標)、NUNC MAXISORB(登録商標)及びIMMULON(登録商標)を含む。固相は上記の捕捉試薬で被覆され、この試薬は、必要に応じて非共有結合性若しくは共有結合性相互作用又は物理的結合によって結合されうる。結合のための技術は、米国特許第4376110号及びそこに引用されている文献に記載のものを含む。共有結合性の場合、プレート又は他の固相は、例えば室温で1時間というような当該技術分野で周知の条件下で、捕捉試薬及び架橋結合剤と共にインキュベートされる。幾つかの実施態様では、プレートはアッセイ自体にかなり先んじて積み重ねて被覆され、その後、手動、半自動、又はロボットを使用するなどした自動的な形式で幾つかの試料に対して同時にアッセイが実施される。
【0076】
幾つかの実施態様では、遊離リガンドがプレートのウェル上の過剰部位に望ましくない結合をするのを防止するために、結合部位に非特異的に結合して結合部位を飽和させるブロッキング剤で被覆プレートを処理する。この目的に適したブロッキング剤の例は、限定されないが、例えば、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、卵アルブミン、カゼイン及び脱脂乳を含む。一般的に、ブロッキング処理は、一定の期間、通常およそ1〜4時間、周囲温度の条件下で実施される。
【0077】
幾つかの実施態様では、被覆及びブロッキングの後、分析される試料は適切に希釈され、固定化相に添加される。この目的のために希釈用に使用されうるバッファーの例は、限定されないが、(a)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であって、0.5%BSA、0.05%TWEEN 20(登録商標)洗剤(P20)、0.05%PROCLIN(登録商標)300抗生物質、5mMのEDTA、0.25%の3−((3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ)−1−プロパンスルホナート(CHAPS)界面活性剤、0.2%ベータ−ガンマグロブリン及び0.35MのNaClを含有するもの;(b)PBSであって、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.05%P20及び0.05%PROCLIN(登録商標)300を含有するもの、pH7;(c)PBSであって、0.5%BSA、0.05%P20、0.05%PROCLIN(登録商標)300、5mM EDTA及び0.35MのNaClを含有するもの、pH6.35;(d)PBSであって、0.5%BSA、0.05%P20、0.05%PROCLIN(登録商標)300、5mMのEDTA、0.2%ベータ−ガンマグロブリン及び0.35MのNaClを含有するもの;並びに(e)PBSであって、0.5%BSA、0.05%P20、0.05%PROCLIN(登録商標)300、5mMのEDTA、0.25%CHAPS及び0.35MのNaClを含有するものを含む。
【0078】
試料と固定化捕捉試薬のインキュベーション条件は、アッセイの感度を最大にし、解離を最小にするように、且つ(例えば、ハムスターPLBL2等)試料中に存在する任意の目的の分析物が固定化捕捉試薬に結合することを確実にするように選択される。任意選択的に、試料は、捕捉されていない材料を除去するために固定化捕捉試薬から(例えば、洗浄によって)分離される。洗浄に使用される溶液は、一般に、バッファー(例えば、「洗浄バッファー」)である。また、捕捉された目的の材料が次の工程である程度解離する懸念があれば、現在結合されている目的材料(例えば、ハムスターPLBL2)が捕捉試薬に共有結合されるように、架橋剤又は他の適切な薬剤をこの段階で添加してもよい。
【0079】
現在結合されている任意の目的材料と共に固定化されている捕捉試薬を、検出用抗PLBL2抗体と接触させる。幾つかの実施態様では、検出用抗体はビオチン化されている。幾つかの実施態様では、ビオチン化標識の検出手段は、アビジン又はストレプトアビジン−HRPである。幾つかの実施態様では、検出手段の読み出しは、蛍光定量的又は比色定量的である。
【0080】
現在捕捉試薬に結合されている試料から遊離している任意の目的材料(例えば、ハムスターPLBL2)のレベルは、検出用抗体の検出手段を用いて測定又は定量化される。幾つかの実施態様では、この測定又は定量化は、上記の工程の結果として起きる反応を検量線と比較し、既知の量と比較された目的材料(例えば、ハムスターPLBL2)のレベルを決定することを含む。
【0081】
固定化捕捉試薬に添加された抗体は、直接的に標識されるか、又は一次抗体の動物種のIgGに対する標識二次抗体の過剰モルを、過剰な一次抗体から洗い落とした後に添加することにより間接的に検出される。後者の間接アッセイでは、標識抗体をin situで産生するために、一次抗体に対する標識された抗血清が試料に添加される。
【0082】
一次又は二次抗体の何れかに使用される標識は、遊離している目的材料(例えば、ハムスターPLBL2)の、一次又は二次抗体への結合を妨害しない任意の検出可能な機能性である。適切な標識の例は、上で列挙した標識のような、イムノアッセイでの使用が知られているものを含む。
【0083】
従来の方法は、タンパク質又はポリペプチドにこれらの標識を共有結合させるのに利用可能である。例えば、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、ビス−イミダート、ビス−ジアゾ化ベンジジン等のカップリング剤は、上記の蛍光、化学発光及び酵素標識で抗体にタグをつけるのに使用されうる。例えば、米国特許第3940475号(蛍光分析)及び 米国特許第3645090号(酵素);Hunter et al., Nature 144:945 (1962);David et al., Biochemistry, 13:1014-1021 (1974); Pain et al., J. Immunol. Methods 40:219-230 (1981);並びにNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407-412 (1982)を参照のこと。幾つかの実施態様では、標識はビオチンであり、検出手段にストレプトアビジン−HRPを用いる。
【0084】
酵素を含むこのような標識の抗体へのコンジュゲーションは、イムノアッセイ技術分野の当業者にとっては標準的な操作法である。例えば、Methods in Enzymology, ed. J. J. Langone and H. Van Vunakis, Vol. 73 (Academic Press, New York, N.Y., 1981), pp. 147-166の、O’Sullivan et al. 「Methods for the Preparation of Enzyme-antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay」を参照のこと。
【0085】
最後の標識抗体を添加した後、結合した抗体の量は、結合していない過剰な標識抗体を洗浄により除去し、次いで標識に適した検出方法を用いて結合した標識の量を測定又は定量化し、測定量を生体試料中の目的の抗体の量と関連づけることにより決定される。例えば、酵素の場合、発色及び測定された色の量は、目的抗体の存在量の定量化を可能にする直接的な測定値となる。一実施態様では、HRPは標識であり、その色は、490nmの吸光度で基質OPDを用いて検出される。
【0086】
一例では、非標識一次抗体に対する酵素標識二次抗体が固定化相から洗浄された後、色又は化学発光は、固定化された捕捉試薬を酵素の基質と共にインキュベートすることにより発色及び測定される。次いで、目的材料(例えばハムスターPLBL2)の濃度は、同時に行われる標準試験により生成される色又は化学発光と比較することにより算出される。
【0087】
ポリペプチド
例示的な抗ハムスターPLBL2抗体
本明細書に記載の任意のアッセイ法で使用するためのポリペプチドが提供される。一態様では、ハムスターPLBL2を結合する単離された抗体が提供される。幾つかの実施態様では、抗PLBL2抗体は、(a)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDRH1;(b)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDRH2;(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDRH3;(d)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDRL1;(e)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDRL2;及び(f)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDRL3から選択される、少なくとも一、二、三、四、五又は六のCDRを含む。幾つかの実施態様において、抗PLBL2抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を含む可変重鎖領域を含む。幾つかの実施態様において、抗PLBL2抗体は、配列番号19のアミノ酸配列を含む可変軽鎖領域を含む。幾つかの実施態様において、抗PLBL2抗体(「19C10」)は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。別の実施態様において、抗体は、配列番号13及び配列番号18のCDR配列と95%以上同一であるCDR配列を含む。
【0088】
別の態様において、抗PLBL2抗体は、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVH 配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗PLBL2抗体はPLBL2に結合する能力を保持する。特定の実施態様において、合計1から10のアミノ酸が、配列番号14において置換、挿入又は欠失されている。特定の実施態様において、置換、挿入又は欠失はCDRの外部の領域(すなわち、FR内)で起こる。場合によって、抗PLBL2抗体は、配列番号14におけるVH配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、包含する。
【0089】
別の態様において、 配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗PLBL2抗体が提供される。特定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗PLBL2抗体はPLBL2に結合する能力を保持する。特定の実施態様において、合計1から10のアミノ酸が、配列番号19において置換、挿入又は欠失されている。特定の実施態様において、置換、挿入又は欠失はCDRの外部の領域(すなわち、FR内)で起こる。場合によって、抗PLBL2抗体は、配列番号19におけるVL配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、包含する。
【0090】
特定の実施態様では、抗PLBL2抗体は、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDRH1;(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRH2;(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDRH3;(d)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDRL1;(e)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDRL2;及び(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDRL3から選択される、少なくとも一、二、三、四、五又は六のCDRを含む。幾つかの実施態様において、抗PLBL2抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含む可変重鎖領域を含む。幾つかの実施態様において、抗PLBL2抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む可変軽鎖領域を含む。幾つかの実施態様において、抗PLBL2抗体(「15G11」)は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。別の実施態様において、抗体は、配列番号3及び配列番号8のCDR配列と95%以上同一であるCDR配列を含む。
【0091】
別の態様において、抗PLBL2抗体は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗PLBL2抗体はPLBL2に結合する能力を保持する。特定の実施態様において、合計1から10のアミノ酸が、配列番号4において置換、挿入又は欠失されている。特定の実施態様において、置換、挿入又は欠失はCDRの外部の領域(すなわち、FR内)で起こる。場合によって、抗PLBL2抗体は、配列番号4におけるVH配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、包含する。
【0092】
別の態様において、 配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗PLBL2抗体が提供される。特定の実施態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗PLBL2抗体はPLBL2に結合する能力を保持する。特定の実施態様において、合計1から10のアミノ酸が、配列番号9において置換、挿入又は欠失されている。特定の実施態様において、置換、挿入又は欠失はCDRの外部の領域(すなわち、FR内)で起こる。場合によって、抗PLBL2抗体は、配列番号9におけるVL配列を、その配列の翻訳後修飾を含めて、包含する。
【0093】
別の態様では、上に提供されている実施態様の何れにあるようなVH及び上に提供されている実施態様の何れにあるようなVLを含む抗PLBL2抗体が提供される。
【0094】
更なる態様では、本明細書に記載の抗PLBL2抗体と同じエピトープに結合する抗体も提供される。例えば、特定の実施態様では、配列番号14のVH配列及び配列番号19のVL配列を含む抗PLBL2抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。例えば、特定の実施態様では、配列番号4のVH配列及び配列番号9のVL配列を含む抗PLBL2抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。
【0095】
本発明の更なる態様では、上記実施態様の何れに記載の抗PLBL2抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。一実施態様において、抗PLBL2抗体は、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ又はF(ab’)2断片等の抗体断片である。別の実施態様において、抗体は、例えば、インタクトなIgG1抗体、又は本明細書に記載の他の抗体クラスすなわちアイソタイプ等の完全長抗体である。別の実施態様では、抗体は、多重特異性抗体、二重特異性抗体、半抗体又は抗体断片である。
【0096】
例示的組換えポリペプチド
組換えポリペプチド及びその調製物も提供されており、その試料は本明細書に記載の方法によりアッセイされうる。このような組換えポリペプチドの例は、限定されないが、免疫グロブリン、イムノアドヘシン、抗体、酵素、ホルモン、融合タンパク質、Fc含有タンパク質、イムノコンジュゲート、サイトカイン及びインターロイキン、哺乳類タンパク質(例えば、レニン);ホルモン;成長ホルモン(ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む);成長ホルモン放出因子;甲状腺傍ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ−1−抗トリプシン;インシュリンA鎖;インシュリンB鎖;プロインシュリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体ホルモン;グルカゴン;凝固因子(要子VIIIC、要子IX、組織因子及びフォン・ヴィレブランド因子等);抗凝固因子(プロテインC等);心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;プラスミノゲン活性剤(ウロキナーゼ又はヒトの尿又は組織タイプ・プラスミノゲン活性剤(t−PA));ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子−アルファ及び−ベータ;エンケファリナーゼ;RANTES;(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトのマクロファージ炎症タンパク質(MIP−1−アルファ);血清アルブミン(ヒト血清アルブミン等);Muellerian−阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;酵素;微生物タンパク質(ベータ−ラクタマーゼ等);DNase;IgE;T−リンパ球関連抗原(CTLA)(CTLA−4等);インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモン受容体又は増殖因子受容体;プロテインA又はD;リューマチ因子;神経栄養因子(骨由来の神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、又は−6(NT−3、NT−4、NT−5、又はNT−6等)、或いは神経成長因子(NGF−b等);血小板由来増殖因子(PDGF);線維芽細胞増殖因子(aFGF及びbFGF等);上皮細胞増殖因子(EGF);形質転換増殖因子(TGF)(TGF−アルファ、及びTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4又はTGF−β5を含むTGFベータ等);インスリン様増殖因子−I及び−II(IGF−I及びIGF−II);デス(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP);サイトカイン;CDタンパク質(CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20等);エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;融合ポリペプチド、すなわち二以上の異種ポリペプチド又はその断片で構成され、組換え核酸によりコードされているポリペプチド;Fcg含有ポリペプチド、例えば、第二のポリペプチドに融合した、免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質又はその断片;イムノコンジュゲート;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン(インターフェロン−アルファ、−ベータ及び−ガンマ等);コロニー刺激因子(CSF)(例えばM−CSF、GM−CSF及びG−CSF);インターロイキン(IL)、例えば、IL−1からIL−10;スーパーオキシド・ジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊加速因子;ウイルスの抗原(例えば、AIDSエンべロープの一部);輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン(CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4及びVCAM等);腫瘍関連抗原(CA125(卵巣がん抗原)又はHER2、HER3若しくはHER4受容体等);イムノアドヘシン;並びに、タンパク質(例えば、上に列挙した任意のタンパク質を含む)を結合する抗体(抗体断片を含む)の他に、上に列挙した任意のタンパク質の断片及び/又は変異体を含む。
【0097】
幾つかの実施態様では、本明細書に記載のアッセイ法のいずれにも使用されるポリペプチド調製物は目的の抗体を含有する。すなわち、宿主細胞が産生する組換えポリペプチドは抗体である。
【0098】
このような抗体のための分子標的は、例えば、限定されないが、(i)CD3、CD4、CD8、CD19、CD11a、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)及びCD79β(CD79b);(ii)EGF受容体、HER2、HER3又はHER4受容体等のErbB受容体ファミリーのメンバー;(iii)LFA−1、Mac1、p150,95、VLA−4、ICAM−1、VCAM及びαv/β3インテグリン(それらのアルファ又はベータサブユニット(例えば、抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体)を含む)等の細胞接着分子;(iv)VEGF;IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA−4;タンパク質C、BR3、c−met、組織因子、β7等の増殖因子、及び(v)米国特許第7521541号に記載されているもののような細胞表面及び膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)といったCDタンパク質及びそのリガンドを含む。
【0099】
他の例示的抗体は、限定されないが、抗エストロゲン受容体抗体、抗プロゲステロン受容体抗体、抗p53抗体、抗HER−2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗カテプシンD抗体、抗Bcl−2抗体、抗Eカドヘリン抗体、抗CA125抗体、抗CA15−3抗体、抗CA19−9抗体、抗c−erbB−2抗体、抗P−糖タンパク質抗体、抗CEA抗体、抗網膜芽細胞腫タンパク質抗体、抗−ras腫瘍性タンパク質抗体、抗LewisX抗体、抗Ki−67抗体、抗PCNA抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD9/p24抗体、抗CD10抗体、抗CD11a抗体、抗CD11c抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD35抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗LCA/CD45抗体、抗CD45RO抗体、抗CD45RA抗体、抗CD39抗体、抗CD100抗体、抗CD95/Fas抗体、抗CD99抗体、抗CD106抗体、抗ユビキチン抗体、抗CD71抗体、抗c−myc抗体、抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗HPVタンパク質抗体、抗カッパ軽鎖抗体、抗ラムダ軽鎖抗体、抗メラノソーム抗体、抗前立腺特異的抗原抗体、抗S−100抗体、抗タウ抗原抗体、抗フィブリン抗体、抗ケラチン抗体及び抗Tn抗原抗体から選択されるものを含む。
【0100】
ポリクローナル抗体
幾つかの実施態様では、抗体は、ポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原及びアジュバントの複数回にわたる皮下(sc)又は腹腔内(ip)注入により動物内で産生される。二官能性剤又は誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介した)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、又はR1N=C=NR(式中、RとR
1は異なるアルキル基である)を用いて、免疫化される種において免疫原性であるポリペプチド(例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又はダイズトリプシン阻害因子)に関連抗原をコンジュゲートすることは有益でありうる。
【0101】
動物は、例えば、ポリペプチド又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を3体積の完全フロイントアジュバントと合わせ、この溶液を複数部位に皮内注入することにより、抗原、免疫原性コンジュゲート又は誘導体に対して免疫される。一か月後、該動物は、完全フロイントアジュバント中のペプチド又はコンジュゲートを初期量の1/5から1/10用いて複数部位に皮下注入することにより、追加免疫される。7から14日後、該動物は採血され、抗体価について血清がアッセイされる。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫される。幾つかの実施態様では、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なるポリペプチドにコンジュゲートされたコンジュゲート、及び/又は異なる架橋試薬によってコンジュゲートされたコンジュゲートで、該動物を追加免疫する。また、コンジュゲートは、ポリペプチド融合体として組換え細胞培養液中で作製されてもよい。また、免疫応答を高めるために、ミョウバン等の凝集剤が適切に使用される。
【0102】
モノクローナル抗体
幾つかの実施態様において、抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち一般的に少量で存在しうる突然変異体等の、モノクローナル抗体の生成中に生じる突然変異体を除いて、集団を構成する個々の抗体が同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。したがって、修飾語「モノクローナル」は、別々の抗体の混合物(すなわちポリクローナル抗体)ではないという抗体の性質を示す。
【0103】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製されてもよく、又は組換えDNA法(米国特許第4816567号)により作製されてもよい。
【0104】
ハイブリドーマ法では、マウス又は他の適切な宿主動物を本明細書に記載のように免疫し、免疫化に用いられたポリペプチドと特異的に結合する抗体を産生するか又は産生可能なリンパ球を誘発する。或いは、リンパ球はインビトロで免疫化されてもよい。次いで、ポリエチレングリコールのような適切な融剤を用いて骨髄腫細胞とリンパ球を融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。
【0105】
このように調製されたハイブリドーマ細胞を、非融合の親骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含有する適切な培地中に播種し、増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠くならば、ハイブリドーマの培地は、通常、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含むことになり、これらの物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨げる。
【0106】
幾つかの実施態様では、該骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベルの産生を助け、HAT培地等の培地に対して感受性な細胞である。この内、幾つかの実施態様において、骨髄腫細胞株は、マウス骨髄腫細胞株(例えば、米国カリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerから入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍、並びに米国メリーランド州ロックビルにあるAmerican Type Culture Collectionから入手可能なSP−2又はX63−Ag8−653細胞から誘導されるもの)である。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株もまた記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0107】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。幾つかの実施態様では、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法又はインビトロ結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着法(ELISA)によって決定される。
【0108】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson et al., Anal. Biochem. 107:220 (1980)に記載のスキャッチャード解析により決定され得る。
【0109】
ハイブリドーマ細胞が所望の特異性、親和性及び/又は活性の抗体を産生することが確認された後、そのクローンを、限界希釈法によりサブクローニングしてもよく、標準的な方法により培養してもよい(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。この目的のための好適な培地は、例えばD−MEM又はRPMI−1640培地を含む。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物の腹水腫瘍としてインビボで増殖させてもよい。
【0110】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばポリペプチドA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーのような従来の免疫グロブリン精製手順によって、培地、腹水又は血清から適切に分離される。
【0111】
該モノクローナル抗体をコードするDNAは容易に単離され、一般的な手順を用いて(例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定される。幾つかの実施態様では、該ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの供給源となる。DNAを単離して、発現ベクター中に配置し、次いで、この発現ベクターを、 別の方法では免疫グロブリンポリペプチドを生成することのない、大腸菌細胞、サルCOS細胞、ヒト胎児性腎臓(HEK)293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞のような宿主細胞にトランスフェクトし、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得る。抗体をコードするDNAの、細菌における組換え発現に関する総説は、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol. 5:256-262 (1993)及びPluckthun, Immunol. Revs., 130:151-188 (1992)を含む。
【0112】
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)に記載の技術を使用して作成される抗体ファージライブラリーから分離されうる。Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用したマウス抗体及びヒト抗体の単離をそれぞれ記述している。それに続く刊行物は、鎖シャッフリングによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992))、及び非常に大きなファージライブラリーを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換えを記述している(Waterhouse et al., Nuc. Acids. Res. 21:2265-2266 (1993))。したがって、これらの技術はモノクローナル抗体の単離に関する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法の実行可能な代替法である。
【0113】
DNAはまた、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を相同マウス配列の代わりに置換することにより(米国特許第4816567号;Morrison et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 81:6851 (1984))、又は非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合させることにより修飾され得る。
【0114】
通常、このような非免疫グロブリンポリペプチドは抗体の定常ドメインを置換し、又は抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインを置換して、抗原に対する特異性を有する一つの抗原結合部位と、異なる抗原に対する特異性を有するもう一つの抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作り出す。
【0115】
本明細書に記載の任意の方法の幾つかの実施態様において、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG又はIgMである。幾つかの実施態様において、抗体は、IgGモノクローナル抗体である。
【0116】
抗体断片
幾つかの実施態様において、抗体は、抗体断片である。抗体断片を生産するために様々な技術が開発されてきている。伝統的には、こうした断片は、インタクトな抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan et al., Science 229:81 (1985)を参照)。しかし、こうした断片は、現在では組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリーから単離されうる。或いは、Fab’−SH断片を大腸菌から直接回収し、化学的に結合させてF(ab’)
2断片を形成することができる(Carter et al., Bio/Technology 10:163-167 (1992))。他のアプローチ法では、F(ab’)
2断片を組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。抗体断片の生産のための他の技術は当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号、米国特許第5571894号及び米国特許第5587458号を参照のこと。抗体断片は、例えば、米国特許第5641870号に記載されるように「直鎖状抗体」であってもよい。このような直鎖状抗体断片は、単一特異性又は二重特異性であり得る。
【0117】
幾つかの実施態様では、本明細書に記載の抗体の断片が提供される。幾つかの実施態様において、抗体断片は抗原結合断片である。幾つかの実施態様において、抗原結合断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)
2断片、scFv、Fv及びダイアボディから成る群より選択される。
【0118】
ポリペプチド変異体及び修飾
本明細書に記載の抗体を含むポリペプチドのアミノ酸配列修飾は、本明細書に記載のポリペプチド調製物(例えば、抗体)をアッセイする方法において使用されうる。
【0119】
変異体ポリペプチド
「ポリペプチド変異体」とは、ポリペプチドの完全長天然配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、(シグナルペプチドを伴うか又は伴わない)ポリペプチドの細胞外ドメイン)と、少なくともおよそ80%のアミノ酸配列同一性を有する、本明細書に定義されているポリペプチド、例えば活性ポリペプチドを意味する。このようなポリペプチド変異体は、例えば完全長天然アミノ酸配列のN末端又はC末端に、一又は複数のアミノ酸残基が付加されているか又は欠失しているポリペプチドを含む。通常、ポリペプチド変異体は、完全長天然配列ポリペプチド配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、ポリペプチドの(シグナルペプチドを伴うか又は伴わない)細胞外ドメインに対して、少なくともおよそ80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくともおよそ85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の何れかのアミノ酸配列同一性を有するであろう。場合によっては、変異体ポリペプチドは、天然ポリペプチド配列と比較して一以下の保存的アミノ酸置換、或いは天然ポリペプチド配列と比較して約2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の何れか以下の保存的アミノ酸置換を有する。
【0120】
変異体ポリペプチドは、例えば完全長天然ポリペプチドと比較した場合、N末端又はC末端で切断されているか、又は内部残基を欠如しうる。特定の変異体ポリペプチドは、所望の生物活性に必須ではないアミノ酸残基を欠如しうる。切断、欠失及び挿入を有するこれらの変異体ポリペプチドは、多くの一般的な技術の何れかにより調製されうる。所望の変異体ポリペプチドは化学的に合成されうる。別の好適な技術は、所望の変異体ポリペプチドをコードする核酸断片を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により単離及び増幅させることを含む。核酸断片の所望の終端を定めるオリゴヌクレオチドは、PCRにおいて5’及び3’プライマーで用いられる。好ましくは、変異体ポリペプチドは、少なくとも一つの生物及び/又は免疫活性を本明細書に開示の天然ポリペプチドと共有する。
【0121】
アミノ酸配列挿入は、 長さが1残基から、100以上の残基を含むポリペプチドの範囲のアミノ末端融合及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基を有する抗体又は細胞傷害性ポリペプチドへ融合した抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体の血清半減期を延長させる酵素又はポリペプチドに対する抗体のN末端又はC末端への融合を含む。
【0122】
例えば、ポリペプチドの結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することができれば望ましい。ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、抗体核酸への適切なヌクレオチド変化の導入により、又はペプチド合成により調製されるこのような修飾は、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はそのような残基への挿入、及び/又はそのような残基の置換を含む。最終コンストラクトが所望の特性を有する限り、欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせが、最終コンストラクトに到達するためになされる。アミノ酸変化はまた、ポリペプチド(例えば抗体)の翻訳後プロセスを変更し得、例えばグリコシル化部位の数又は位置を変化させる。
【0123】
どのアミノ酸残基が、所望の活性に悪影響を及ぼすことなく挿入、置換又は欠失されうるか決定するためのガイダンスは、ポリペプチドの配列を、相同の既知ポリペプチド分子の配列と比較し、高相同性の領域に為されるアミノ酸配列変化の数を最小限にすることによって見出されうる。
【0124】
突然変異誘発に好ましい位置であるポリペプチド(例えば抗体)の特定の残基又は領域の同定のための有用な方法は、Cunningham及びWells (1989) Science, 244:1081-1085により記載されているように、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的となる残基又は残基群が同定され(例えば、Arg、Asp、His、Lys及びGluのような荷電残基)、中性の、又は負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)で置換され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を与える。次いで、更なる又は他の変異体を置換部位において又は置換部位に対して導入することにより、置換に対する機能的感受性を示しているアミノ酸位置を精緻化する。よって、アミノ酸配列差異を導入する部位は予め決定されるが、突然変異自体の性質は予め決まっている必要はない。例えば、所与の部位での変異能力を分析するために、標的コドン又は領域においてalaスキャニング突然変異誘発又はランダム突然変異誘発を実施し、発現した抗体変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
【0125】
別のタイプの変異体は、アミノ酸置換変異体である。こうした変異体は、抗体分子中に、異なる残基で置換される少なくとも一のアミノ酸残基を有する。置換突然変異誘発について最も目的とする部位は超可変領域を含むが、FR改変もまた考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して以下の表1に示される。このような置換が生物活性の変化をもたらす場合、表1で「例示的置換」と称されているか又は以下にアミノ酸クラスに関して更に記載されている、より実質的な変化を導入し、その生成物をスクリーニングしてもよい。
【0126】
ポリペプチドの生物学的特性の実質的な修飾は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の、例えばシート又はへリックス構造としての構造(b)標的部位における分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩の維持に及ぼす効果が有意に異なる置換を選択することにより達成される。アミノ酸は、その側鎖の特性の類似性に従ってグループ化されうる(A. L. Lehninger, Biochemistry second ed., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、 Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
【0127】
或いは、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて以下の群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0128】
非保存的置換は、これらのクラスのメンバーの一つと別のクラスとの交換を伴うであろう。
【0129】
抗体の適切な構造の維持に関与していない任意のシステイン残基も、分子の酸化的安定性を改善して異常な架橋を防ぐために、一般にセリンと置換されうる。逆に、システイン結合をポリペプチドに付加して、その安定性を改善してもよい(特に抗体がFv断片等の抗体断片である場合)。
【0130】
置換変異体の一例は、親抗体(例えばヒト化抗体)の一又は複数の超可変領域残基の置換を含む。一般に、得られた変異体で更なる開発のために選択されるものは、それらが作製された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有するであろう。そのような置換変異体を作製するための簡便な方法は、ファージディスプレイを使用する親和性成熟を含む。簡潔に言えば、幾つかの超可変領域部位(例えば、6−7部位)を突然変異させて、各部位においてすべての可能なアミノ置換を生じさせる。こうして作製された抗体変異体は、各粒子内にパッケージされたM13の遺伝子III産物への融合体として、繊維状ファージ粒子から一価の様式で提示される。次いで、ファージディスプレイされた変異体は、本明細書に開示されているようなそれらの生物活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングされる。修飾の候補となる超可変領域部位を識別するために、アラニンスキャニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を特定することができる。代替的又は追加的に、抗原−抗体複合体の結晶構造を解析して、抗体と標的との接点を特定することが有益である場合もある。そのような接触残基及び隣接残基は、本願明細書において詳しく述べられている技術による置換の候補である。そのような変異体がひとたび作製されると、変異体のパネルが本明細書に記載のようにスクリーニングに供され、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体が更なる開発のために選択される。
【0131】
ポリペプチドの他のタイプのアミノ酸変異体は、抗体の元のグリコシル化パターンを改変する。ポリペプチドは、非アミノ酸部分を含みうる。例えば、ポリペプチドはグリコシル化されうる。このようなグリコシル化は、宿主細胞又は宿主生物においてポリペプチドの発現中に自然に生じてもよく、又はヒトの介入から生じる故意の修飾であってもよい。改変とは、ポリペプチドに見出される一又は複数の炭水化物部分の欠失、及び/又はポリペプチドに存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。
【0132】
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的にはN結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列のアスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニン(ここで、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。よって、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列の何れかの存在が、潜在的なグリコシル化部位をつくる。O結合グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、糖類N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースの一つが結合することを指すが、5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリジンもまた用いられうる。
【0133】
ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、一又は複数の上記トリペプチド配列(N結合グリコシル化部位の場合)を含むようにアミノ酸配列を改変することによって簡便に達成される。この改変は、元の抗体の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれらによる置換によってもなされうる(O結合グリコシル化部位の場合)。
【0134】
ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に、或いはグルコシル化の標的となるアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換により達成されうる。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、種々のエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼを用いることにより達成されうる。
【0135】
他の修飾には、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、並びに任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
【0136】
キメラポリペプチド
本明細書に記載のポリペプチドは、他の異種ポリペプチド配列又はアミノ酸配列に融合したポリペプチドを含むキメラ分子を形成するように修飾されうる。幾つかの実施態様では、キメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとのポリペプチドの融合を含む。エピトープタグは一般的に、ポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシル末端に置かれる。ポリペプチドのこのようなエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出されうる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他のタイプのアフィニティーマトリックスを使用する親和性精製により、ポリペプチドが容易に精製されるのを可能にする。
【0137】
アッセイ法での使用のためのポリペプチドの入手
本明細書に記載のアッセイ法において使用されるポリペプチドは、組換え法を含む当該技術分野で周知の方法を用いて得ることができる。以下のセクションは、これらの方法に関するガイダンスを提供する。
【0138】
(A)ポリヌクレオチド
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。
【0139】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、限定されないが、ポリペプチドmRNAを保有し検出可能なレベルでそれを発現すると信じられている組織から調製されるcDNAライブラリーを含む、任意の供給源から得られうる。従って、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリーから簡便に得ることができる。ポリペプチドをコードする遺伝子はまた、ゲノムライブラリーから、又は既知の合成手順(例えば、自動核酸合成)によって得ることができる。
【0140】
例えば、ポリヌクレオチドは、軽鎖又は重鎖のような全免疫グロブリン分子鎖をコードしうる。完全な重鎖は、重鎖可変領域(VH)だけでなく重鎖定常領域(CH)も含み、重鎖定常領域は通常、三つの定常ドメイン、CH1、CH2及びCH3、並びに「ヒンジ」領域を含む。幾つかの状況では、定常領域の存在が望ましい。
【0141】
ポリヌクレオチドによってコードされうる他のポリペプチドは、抗原結合抗体断片、例えば単一ドメイン抗体(「dAbs」)、Fv、scFv、Fab’及びF(ab’)
2及び「ミニボディ」を含む。ミニボディは(通常)CH1及びCK又はCLドメインが切り取られた二価抗体断片である。ミニボディは一般的な抗体より小さいので、それらは臨床/診断用途では良好な組織浸透を達成するはずであるが、dAbsのような一価抗体断片よりも高い結合親和性を保持しなければならない二価である。したがって、内容が矛盾しない限り、本明細書で使用される「抗体」なる用語は抗体分子全体だけではなく、上で述べたタイプの抗原結合抗体断片も包含する。好ましくは、コードされたポリペプチド中に存在する各フレームワーク領域は、対応するヒトアクセプターフレームワークに対して少なくとも一つのアミノ酸置換を含む。よって、例えば、フレームワーク領域は、アクセプターフレームワーク領域に対して、合計で3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15のアミノ酸置換を含みうる。
【0142】
適切には、本明細書に記載のポリヌクレオチドは単離及び/又は精製されうる。幾つかの実施態様では、ポリヌクレオチドは単離されたポリヌクレオチドである。
【0143】
用語「単離されたポリヌクレオチド」は、分子がその通常の若しくは自然の環境から除去され又は分離されており、或いはそれがその通常の又は自然の環境では存在しないような形で製造されたことを示すものである。幾つかの実施態様では、ポリヌクレオチドは精製されたポリヌクレオチドである。精製されたという用語は、少なくとも幾らかの汚染分子又は物質が除去されたことを示すものである。
【0144】
適切には、ポリヌクレオチドは、組成物中に存在する優勢な(すなわち、最も豊富な)ポリヌクレオチドを構成するように、十分に精製される。
【0145】
(B)ポリヌクレオチドの発現
下記の説明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することによるポリペプチドの生成に主に関する。当然、当該技術分野でよく知られている代替的方法を用いてポリペプチドを調製することも考えられる。例えば、適切なアミノ酸配列又はその一部が、固相技術を用いて直接ペプチド合成により生成されうる(例えば、Stewart et al., Solid-Phase Peptide Synthesis W.H. Freeman Co., San Francisco, Calif. (1969); Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154 (1963)を参照のこと)。インビトロタンパク質合成は、手動技術を用いるか、又は自動操作により実施されうる。自動化合成は、例えば、Applied Biosystems Peptide Synthesizer(Foster City,Calif.)を用いて、製造者の指示を用いて達成されうる。ポリペプチドの種々の部分を別々に化学的に合成し、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて所望するポリペプチドを生成させてもよい。
【0146】
本明細書に記載のポリヌクレオチドは、ポリペプチドの生成のために発現ベクターに挿入される。用語「制御配列」は、特定の宿主生物において操作可能に結合されたコード配列の発現のために必要なDNA配列を指す。制御配列は、限定されないが、プロモーター(例えば、天然に会合したプロモーター又は異種プロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント及び転写終結配列を含む。
【0147】
ポリヌクレオチドが他のポリヌクレオチド配列と機能的な関係に配置されている場合、「操作可能に結合」されている。例えば、プレ配列又は分泌リーダーの核酸は、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現されるならば、そのポリペプチドの核酸に操作可能に結合されており;プロモーター又はエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に操作可能に結合されており;又はリボソーム結合部位は、それが翻訳を容易にするような位置にあるならば、コード配列と操作可能に結合されている。通常、「操作可能に結合された」とは、結合される核酸配列が近接していること、また、分泌リーダーの場合には、近接しており且つ読み取り相(reading phase)にあることを意味する。しかし、エンハンサーは近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、慣行に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
【0148】
抗体の場合、軽鎖及び重鎖は、同じか又は異なる発現ベクター中でクローニングされうる。免疫グロブリン鎖をコードする核酸セグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を確実にする発現ベクター中の制御配列に操作可能に結合されている。
【0149】
ポリヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、可変重鎖及び/又は可変軽鎖をコードする配列、並びに任意選択の発現制御配列)は、細胞宿主のタイプに応じて異なる周知の方法によって宿主細胞に導入されうる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは一般に原核細胞に利用され、一方、リン酸カルシウム処理、エレクトロポレーション、リポフェクション、微粒子銃又はウイルスベースのトランスフェクションは他の細胞宿主に用いられうる。(一般的にはSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press, 2nd ed., 1989を参照)。哺乳動物細胞を形質転換するために使用される他の方法は、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーション及びマイクロインジェクションの使用を含む。トランスジェニック動物の作製のためには、導入遺伝子を、受精卵母細胞にマイクロインジェクションするか、又は胚性幹細胞のゲノムに組み込むことができ、また、胚性幹細胞の核を除核された卵母細胞に導入することができる。
【0150】
(C)ベクター
用語「ベクター」は、 発現ベクター及び形質転換ベクター及びシャトルベクターを含む。
【0151】
用語「発現ベクター」は、インビボ又はインビトロ発現ができるコンストラクトを意味する。
【0152】
用語「形質転換ベクター」は、一つの実体から別の実体に導入され得るコンストラクトを意味し、別の実体は同一種であるか、又は異なる種であってもよい。コンストラクトが、一つの種から別のものに‐例えば、大腸菌プラスミドからバチルス属等の細菌に‐導入されうる場合、形質転換ベクターは時として「シャトルベクター」と称される。シャトルベクターは、大腸菌プラスミドから植物に対するアグロバクテリウム属に導入することができるコンストラクトでもありうる。
【0153】
ベクターは、ポリペプチドの発現を提供するために、以下に記載されるように適切な宿主細胞に形質転換されうる。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子又はファージの形態であってもよい。適切な核酸配列は、種々の手順によりベクターに挿入されうる。一般に、DNAは、当該該分野で既知の技術を用いて、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。一又は複数のこれらの構成要素を含む適切なベクターの構築は、当業者に周知の標準的なライゲーション技術を用いる。
【0154】
ベクターは例えば、複製起点、任意選択的に前記ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、及び任意選択的にプロモーターの制御因子を備えたプラスミド、ウイルス又はファージベクターであってもよい。ベクターは、当該技術分野でよく知られている一又は複数の選択マーカー遺伝子を含有してもよい。
【0155】
これらの発現ベクターは、エピソームとして、又は宿主染色体DNAの不可欠な部分として、宿主生物中で典型的に複製可能である。
【0156】
(D)宿主細胞
宿主細胞は、例えば、細菌、酵母又は他の真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、又は哺乳動物細胞であってもよい。通常、宿主細胞は、ポリペプチドをコードする外因性核酸を含有しうるが、目的の組換えポリペプチド又は生産物をコードする外因性核酸は含有せず、ポリペプチドの発現は、例えば抗生物質耐性を付与するポリペプチドをコードする核酸といった特定の条件下で望ましい特性を細胞に付与する。
【0157】
トランスジェニック多細胞宿主生物が、ポリペプチドを生成するために使用されうる。該生物は、例えば、トランスジェニック哺乳動物生物(例えば、トランスジェニックヤギ又はマウス株)でありうる。
【0158】
適切な原核生物は、限定されないが、真正細菌(例えば大腸菌のような腸内細菌科等のグラム陰性生物又はグラム陽性生物)を含む。大腸菌K12株 MM294(ATCC 31,446);大腸菌X1776(ATCC 31,537);大腸菌株W3110(ATCC 27,325)及びK5 772(ATCC 53,635)等、様々な大腸菌株が公的に入手可能である。他の適切な原核生物宿主細胞は、腸内細菌科(例えば、大腸菌属(例:大腸菌)、エンテロバクター属、エルウイニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属(例:ネズミチフス菌)、セラチア属(例:セラチア・マルセサンス)及びシゲラ属)並びにバチルス属(例えば、枯草菌及びバチルス・リケニフォルミス(例:バチルス・リケニフォルミス41P)、シュードモナス属(例えば、緑膿菌)及びストレプトミセス属を含む。これらの例は、限定ではなく例示である。株W3110は、組換えポリヌクレオチド生産物発酵の一般的な宿主株であるため、特に好ましい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、株W3110は、内因性ポリペプチドをコードする遺伝子における遺伝子突然変異を宿主にもたらすために修飾されうる。そのような宿主の例としては、完全な遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110 株1A2、完全な遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4、完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF−lac)169 degP ompT kan’を有する大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244)、完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF−lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kan’を有する大腸菌W3110株37D6、非カナマイシン耐性degP欠失変異を持つ37D6株である大腸菌W3110株40B4、及び変異周辺質プロテアーゼ.を有する大腸菌株を含む。或いは、クローニングのインビトロ法、例えばPCR又は他の核酸ポリメラーゼ反応等が適切である。
【0159】
これらの原核生物宿主において、宿主細胞と適合性の発現制御配列(例えば、複製開始点)を典型的に含む発現ベクターを作製することができる。更に、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータ−ラクタマーゼプロモーター系又はファージラムダからのプロモーター系等の、多種多様なよく知られているプロモーターが存在するであろう。プロモーターは通常、場合によってはオペレーター配列と共に発現を制御し、また転写及び翻訳を開始及び完了するためのリボソーム結合部位配列等を有する。
【0160】
真核微生物が発現のために使用されうる。糸状菌又は酵母等の真核微生物は、ポリペプチドをコードするベクターのための好適なクローニング宿主又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。他に、分裂酵母;クルイベロミセス属宿主例えば、クルイベロミセス ラクチス(MW98−8C、CBS683、CBS4574)、クルイベロミセス フラジリス(ATCC12424)、クルイベロミセス ブルガリカス(ATCC16045)、クルイベロミセス ウィッカーラミ(wickeramii)(ATCC24178)、クルイベロミセス ワルティー(waltii)(ATCC56500)、クルイベロミセス ドロソフィラルム(drosophilarum)(ATCC36906)、クルイベロミセス サーモトレランス及びクルイベロミセス マルキシアナス(marxianus)等;ヤロウィア属(EP402226);ピキア パストリス(EP183070);カンジダ属;トリコデルマ リージア(Trichoderma reesia)(EP244234);アカパンカビ;シュワンニオミセス(Schwanniomyces属、例えば、シュワンニオミセス オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis);並びに糸状菌、例えば、アカパンカビ属、アオカビ属、トリポクラディウム属(Tolypocladium)及びアスペルギルス属(例えば、為巣性麹菌及びクロカビ)の宿主を含む。メチロトローフ酵母は、本明細書では好適であり、限定されないが、ハンゼヌラ、カンジダ、クロエケラ、ピキア、サッカロミセス、トルロプシス及びロドトルラから成る属から選択される、メタノール上での増殖が可能な酵母を含む。サッカロミセス属は好ましい酵母宿主であり、所望に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列等を有する適切なベクターを伴う。代表的なプロモーターは、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ及び他の解糖酵素を含む。誘導可能な酵母プロモーターは、とりわけ、アルコール脱水素酵素、イソシトクロムC、並びにマルトース及びガラクトース利用を担う酵素由来のプロモーターを含む。
【0161】
微生物に加えて哺乳動物組織細胞培養も、本明細書に記載のポリペプチドを発現させ生成するために使用することができ、場合によっては好ましい(Winnacker, From Genes to Clones VCH Publishers, N.Y., N.Y. (1987)参照)。幾つかの実施態様の場合、異種ポリペプチド(例えは、インタクトな免疫グロブリン)を分泌することができる多くの好適な宿主細胞株が当該技術分野で開発されているため、真核細胞が好ましく、それは、CHO細胞株、種々のCos細胞株、HeLa細胞、好ましくは骨髄腫細胞株又は形質転換されたB−細胞若しくはハイブリドーマを含む。幾つかの実施態様において、哺乳動物宿主細胞はCHO細胞である。
【0162】
幾つかの実施態様において、 宿主細胞は脊椎動物宿主細胞である。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓株(懸濁培養における増殖のためにサブクローニングされた293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズマムスター卵巣細胞−DHFR(CHO又はCHO−DP−12系);マウスセルトリ細胞;サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸がん細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞;MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝がん系(Hep G2)である。
【0163】
組換え法
本明細書において生産物(例えば、抗体)とも称される目的の組換えポリペプチドは、例えば米国特許第4816567号に記載されているように、組換え法と組成物を使用して製造されうる。幾つかの実施態様では、抗体等の組換えポリペプチドをコードする単離された核酸が提供される。このような核酸は、抗体(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)のVLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列をコードしうる。幾つかの実施態様では、このような核酸を含む一又は複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。幾つかの実施態様では、宿主細胞は、組換えポリペプチド発現細胞又は生産物細胞を生成するために、形質転換又は形質移入される。このような一実施態様において、組換えポリペプチド発現細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクター及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター第二のベクターを含む(例えば、これらで形質転換されている)。
【0164】
幾つかの実施態様では、宿主細胞は真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。幾つかの実施態様では、生産物をコードする核酸を含む組換えポリペプチド細胞を、生産物の発現に適した条件下で、上述のように培養することと、場合によって、細胞(又は細胞培地)から生産物を回収することとを含む、組換えポリペプチドの製造方法が提供される。
【0165】
製造品
本明細書に記載の方法において使用されるポリペプチドは、製造品内に含まれていてもよい。製造品はポリペプチドを収容する容器を含んでもよい。幾つかの実施態様では、製造品は、(a)容器内に、本明細書に記載のポリペプチドを含む組成物を含む容器、及び(b)アッセイ法においてポリペプチドを使用するための使用説明書を伴う添付文書を含む。
【0166】
製造品は、容器と、容器上の又は容器に付随するラベル又は添付文書とを含む。好適な容器は、例えば、ボトル、バイアル、試験管等を含む。容器は、ガラス又はプラスチック等の種々の材料から形成されうる。容器は、ポリペプチド組成物を入れるか又は収容する。組成物中の少なくとも一の活性剤はポリペプチドである。ラベル又は添付文書は、本発明の組成物のアッセイでの使用を、量及びインキュベーション時間に関する具体的なガイダンスで示している。製造品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルターを含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含んでもよい。
【0167】
本明細書中で開示されたすべての特徴は、任意の組み合わせで組み合わされてもよい。本明細書中で開示された各特徴は、同一、同等又は類似の目的を果たす代替の特徴により置き換えられてもよい。したがって、特に明記しない限り、開示された各特徴は、同等又は類似の一般的な一連の特徴の一例にすぎない。
【実施例】
【0168】
以下は本発明の方法及び組成物の実施例である。上に提供された一般的な説明を前提として、他の様々な実施態様が実施されうる。
【0169】
下記の実施例及び本明細書の他の箇所で使用される「PLB2」及び「PLBL2」及び「PLBD2」は、互換的に用いられ、酵素「ホスホリパーゼB様2」又はその同意語である「ホスホリパーゼBドメイン様2」を指す。
【0170】
実施例1-一般的な方法
MAbフィードストック
すべての実施例のためのMAbのフィードストックは、ジェネンテック社(South San Francisco,CA,U.S.A.)での、産業用、試験的又は小規模の細胞培養バッチから選択された。細胞培養発酵期間の後、該細胞を分離し、特定の場合には清澄液(収集細胞培養液、HCCF)をプロテインAクロマトグラフィー、並びに下記の実施例に記載の一又複数の追加のクロマトグラフィー工程及び濾過工程により精製した。精製の様々な工程でのHCCF又はインプロセスプールを、実施例3及び5に記載のELISAアッセイの性能を調べるために使用した。実施例3のELISAアッセイの使用結果は実施例4に記載されており、実施例5のELISAアッセイの使用結果は実施例6に記載されている。
【0171】
MAb定量化のための分光光度法
抗体の濃度は、UV可視分光光度計(8453モデルG1103A;Agilent Technologies;Santa Clara,CA,U.S.A.)又はNanoDrop 1000モデルND−1000(Thermo Fisher Scientific;Waltham,MA,U.S.A.)を用いて280と320nmの吸光度により測定した。抗体以外の種(すなわち、不純物)は濃度が低すぎて、UV吸光度に大した影響はなかった。必要に応じて、試料は、0.1から1.0吸光度単位の範囲内の適切な非干渉希釈剤で希釈した。試料調製及びUV測定は反復で実施し、平均値を記録した。mAbの吸光係数は、1.42から1.645/mg・ml・cmの範囲であった。
【0172】
生産物定量化のためのアフィニティークロマトグラフィー/HPLC法(生産物濃度アッセイ)
生産物濃度アッセイは、プロテインAに結合するポリペプチドの測定のためのアフィニティークロマトグラフィー法である。該方法は、アフィニティークロマトグラフィーを実施するための手段としてHPLCを用いてもよい。 このアッセイによって測定することができる生産物は、任意のFc含有ポリペプチドを含み、例えば、限定されないが、モノクローナル抗体、二重特異性又は多重特異性抗体、半抗体を含む抗体断片及びイムノアドヘシンを含む。固定化されたプロテインA(約1mg)を含有で容量約0.1mLのアフィニティークロマトグラフィーカラム(直径2.1mmx長さ30mm、粒径20μm)を、該方法において使用した。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムは、当該技術分野で既知の方法により作成することができ、また、例えばLife Technologiesから商業的に入手可能である。リン酸緩衝生理食塩水のローディングバッファー中、試料及び異なるIgG濃度の4つの標準物質をカラム(20μLの標準的な注入量)に適用した。典型的に、試料は収集細胞培養液(HCCF)であり、生産物は流速2mL/分で2%酢酸/100mMグリシン(pH2.5)でカラムから溶出された。分析産物(product analyte)の量を算出するために、溶出された物質のピーク面積を、適切な 生成物の吸光係数を用いて、4点IgG検量線のピーク面積と比較した。該アッセイの範囲は、典型的に0.025mg/mLから4.0mg/mLであった。生産物濃度を、次式に従って決定した:mg/mL IgG=HPLC値(mg/mL)x(標準物質の吸光係数/供試材の吸光係数)。
【0173】
トータルCHO宿主細胞タンパク質(CHOP)定量化
ELISAを、CHOPと呼ばれるトータル宿主細胞タンパク質のレベルを定量化するために使用した。生産物中のCHOタンパク質を検出するために用いたELISAは、サンドイッチELISAフォーマットに基づいていた。アフィニティー精製されたCHOPに対するポリクローナル抗体を、96ウェルマイクロタイタープレート上に被覆した。次いで、標準物質、コントロール及び試料を別々のウェルに2つ組で充填した。CHOPは、試料中に存在する場合には、被覆抗体(ポリクローナル抗CHOP)に結合する。インキュベーション工程の後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗CHOPポリクローナル抗体をプレートに添加した。最後の洗浄工程の後、KPL(Kirkegaard & Perry Laboratories,Inc.,Gaithersburg,MD,カタログ番号53−00−03)よりSUREBLUE RESERVE
TMとして入手可能でもある、テトラメチルベンジジン(TMB)の溶液(HRPによりこの溶液に作用すると、酵素が比色標識を発生させる)を添加することによって、CHOPを定量化した。450nmでの光学濃度(OD)を各ウェルにおいて測定した。5−パラメーターカーブフィッティングプログラム(SOFTMAX(登録商標)Pro,Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して検量線を作成し、試料CHOPの濃度を検量線から算出した。トータルCHOP ELISAのアッセイ範囲は、5から320ng/mlであった。CHOP濃度(単位ng/mL)は、キャリブレーターとしてCHOP標準物質を使用する試料中のCHOPの量を指す。CHOP比率(単位ng/mg又はppm)は、生産物濃度に対するCHOP濃度の算出比率を指し、場合によっては、試験方法用の報告値であった。トータルCHOP ELISAは、試料中のトータルCHOPのレベルを定量化するために使用されうるが、個々のタンパク質の濃度は定量化しない。
【0174】
市販のPLBL2 ELISAアッセイキット
本発明者らは、PLBL2を検出する目的のために市販されている二つのキットが、組換え抗体調製物中のPLBL2を検出することができるかどうか、また、もし検出できるのであれば、十分な定量化を提供するのか否かを試験した。最初に試験したキットは、USCN Life Science Inc.のヒトホスホリパーゼB(PLB)E92048Hu用のELISA Assay Kitであった。このキットは、ヒト組織ホモジネート及び他の生体液におけるPLBのインビトロ定量測定用のサンドイッチELISAとされている。このアッセイで試験した試料は、PLBL2不純物のレベルが質量分析アッセイ(更に後述する)を用いて約300ng/mgと決定されている、既知であり陽性の、ハムスターPLBL2の供給源(CHO細胞から精製した組換え抗体調製物)を含む。CHO細胞から精製し、検出可能なPLBL2を持たないことが知られている第二の組換え抗体調製物も試験された。0.3から20ng/ml(
図1A)の範囲で本キットに含まれるヒトPLBL2標準物質の検出を示す検量線が作成されたが、試験試料の反応性は検出されなかった。抗体調製物は双方とも、10mg/mL(陽性試料中のPLBL2約3,000ng/mLに相当)で、10mg/mLから約1.3mg/mLまでの4回の2倍段階希釈液(陽性試料中のPLBL2 375ng/mLに相当)中で試験された。抗体調製物は双方とも、すべての希釈液で同じ結果、すなわち(例えばバックグラウンドの)ODがおよそ0.1AUがであった。ハムスターPLBL2を含有するとわかっている試料と、この不純物を含まないことがわかっている試料との間に差異はなかった。試料希釈の関数としての差異は存在せず、本発明者らの試料中のハムスターPLBL2を定量化する能力がないことを示した。本発明者らは、このキットの抗体が本発明者らの試料中のハムスターPLBL2不純物を認識しなかったと結論づけた。
【0175】
試験した他のキットは、CUSABIO社のカタログCSB−EL018125Haの、ハムスター推定ホスホリパーゼB様2(PLBD2)ELISAキットであった。このキットは、血清、血漿、組織ホモジネート、細胞溶解物中のハムスター推定ホスホリパーゼB−様(PLBD2)濃度の定量的な決定を提供するとしている。USCN Life Science Inc.社のキットで試験されたのと同じ試料が、このキットでもアッセイされた。0.12から8ng/ml(
図1B)の範囲での、本キットに含まれるハムスターPLBL2標準物質の検出を示す検量線が作成されたが、試験試料の反応性は検出されなかった。上記の通り、抗体調製物は双方とも、10mg/mL(陽性試料中、およそ3,000ng/mLPLBL2に相当)で、10mg/mLからおよそ625μg/mLまで5回の2倍段階希釈液(陽性試料中、188ng/mLのPLBL2に相当)中で試験された。抗体調製物は双方とも、すべての希釈液で同じ結果、すなわち(例えばバックグラウンドの)ODがおよそ0.1AUがであった。ハムスターPLBL2を含有するとわかっている試料と、この不純物を含まないことがわかっている試料との間に差異はなかった。試料希釈の関数としての差異は存在せず、本発明者らの試料中のハムスターPLBL2を定量化する能力がないことを示した。本発明者らは、このキットの抗体が本発明者らの試料中のハムスターPLBL2不純物を認識しなかったと結論づけた。
【0176】
したがって、本発明者らは、これらの市販のアッセイは、ハムスターPLBL2に陽性であることがわかっている試料中のハムスターPLBL2を定量化しなかったと結論づけた。一つの説明としては、これらのアッセイにおける抗PLBL2抗体が本発明者らの試料中で見られるハムスター(CHO)−PLBL2に対して低親和性であるということである。別の説明としては、本発明者らの試料のような組換えヒトIgGを高レベルで含有する試料マトリックス中にCHO−PLBL2が出現した場合に、抗PLBL2抗体はCHO−PLBL2を検出することができなかったということである。これらの結果は、本発明者らの組換え抗体調製物中のPLBL2不純物の検出と正確な定量化を可能にするために、新しい抗PLBL2抗体と新しいアッセイ条件を開発することの必要性を示した。そうした試みは下記の実施例に記されている。
【0177】
実施例2-ハムスターPLBL2に結合する抗体の生成
抗体調製物中の不純物としてのPLBL2の識別は、遺伝子を合成し、次いで発現させ、ハムスターPLBL2を精製することに本発明者らを向かわせた。PLBL2に関する文献は、約66kDの分子量のリソソーム酵素としてPLBL2を説明している(F. Deuschl et al., FEBS Lett 580:5747-5752 (2006))。他のリソソーム酵素と同様に、このタンパク質は、マンノース−6−リン酸に対する複数の翻訳後修飾を含み、元々プレプロ酵素として合成される。プロセシングの間、リーダー配列が切り取られ、タンパク質切断が生じ、その結果タンパク質は、SDS−PAGEゲル上で3つのバンド、すなわち、インタクトなPLBL2(MW 66kD)、N末端ドメイン(28kD)及びC末端ドメイン(40kD)として現れる。切断は、酸性pHレベルで生じる。NドメインとCドメインはSDS−PAGE上で分離しているが、本発明者らは強力な溶媒(例えば、尿素、グアニジン又はエタノール)が断片を分離するために必要とされることを観察したことから、これらの断片はおそらく未変性条件下では分離しない。更に、結晶学的研究のためにPLBL2を精製している他の研究所もこの切断を観察しており、クロマトグラフ法で切断されたタンパク質からインタクトなタンパク質を分離することはできていない(F. Deuschl et al., FEBS Lett 580:5747-5752 (2006); A. Jensen et al., Biochem Journal 402, 449-458 (2007), F. Lakomek et al., BMC Structural Biology 9:56 (2009))。
【0178】
可溶性ハムスター(チャイニーズハムスター)PLBL2をコードするDNAを公的に入手可能な配列情報(例示的な核酸及びアミノ酸配列については、下記の配列表を参照)から合成し、ヒスチジン(his)タグの付加を含む当該技術分野で周知の典型的な方法を用いて、標準的な哺乳動物発現ベクターへとクローニングした。可溶性PLBL2は、CHO−K1細胞(ATCC(登録商標)CRL9618
TM)中に一過性発現された。細胞培養上清を収集し(HCCFと呼ばれる)、以下の方法を使用してPLBL2を精製した。
【0179】
収集細胞培養液(HCCF)を、10kDaの分子量カットオフ(MWCO)膜を使用するタンジェント流濾過(TFF)により10倍に限外濾過(UF)した。UF HCCFを、10容量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、NaClバッファーに対してダイアフィルトレーション(DF)した。UF/DF HCCFを、Ni−NTA固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)カラム(QIAGEN、カタログ番号30622)に適用し、イミダゾールの上昇勾配で溶出した。硫酸ナトリウム含有バッファーでNi−NTAプールを調整し、次いでオクチル−セファロースCL−4B疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラム(GE Healthcare Life Sciences、製品番号17−0790−01)に適用した。オクチル−セファロースカラムを、硫酸ナトリウムの下降勾配で溶出した。オクチル−セファロースプールを、Ni−NTAカラム上で再度クロマトグラフィーにかけ、高濃度のイミダゾールで段階溶出した。Ni−NTA再クロマトグラフィープールを、10kDaの分子量カットオフ膜(Millipore)を備えた遠心濾過ユニットを用いて濃縮した。濃縮されたNi−NTA再クロマトグラフィープールを、Superdex200サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラム(GE Healthcare Life Sciences、製品番号17−1043−02)上で作成した。Superdex 200カラムからの画分を回収し、ドデシル硫酸ナトリウム ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)及びウェスタンブロット法(トータルチャイニーズハムスター卵巣タンパク質、CHOPに対する抗体(Genentech,Inc.)と、ホスホリパーゼB2に対する市販の抗体を使用)により分析し、純度を決定した。
【0180】
モノクローナル抗体を生成するために、5匹のBalb/cマウス(Charles River Laboratories International,Inc.,Hollister,CA)を、代謝可能なスクアレン(4%v/v)、Tween80(0.2%v/v)、トレハロース6,6−ジミコレート(0.05%w/v)及びモノホスホリルリピドA(0.05%w/v;全成分は米国のSigma Aldrich社から入手)含有アジュバント中の精製した組換え可溶性PLBL2を用いて3−4日おきに各足蹠及び腹腔内に免疫した。6回の注射後、標準的な酵素結合免疫吸着法(ELISA)により血清力価を評価し、PLBL2に対する陽性血清力価を有するマウスを特定した。最も高い力価を示した二匹のマウスの脾臓及びリンパ節からのB細胞を、電気融合(Hybrimune;Harvard Apparatus,Inc.,Holliston,MA)によりマウス骨髄腫細胞と融合させた。7日後、Clonepix−FL(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して、ハイブリドーマ培地含有96ウェル組織培養プレートに約5000個のコロニーを採取した。ハイブリドーマ上清を収集し、直接ELISAによりPLBL2特異的抗体生成についてスクリーニングした。ELISAによりPLBL2タンパク質への特異的結合を示した25個のクローンが、 OCTET(登録商標)(ForteBio,Inc.,Menlo Park,CA)によって測定される親和性に基づき更にランク付けされた。マウスハイブリドーマ上清を、カイネティックス(kinetics)バッファー(ForteBio,Inc.,Menlo Park,CA)中5μ/mlに希釈するか又は(濃度が5mg/ml未満であれば)希釈せずに、抗マウスIgG(Fv)センサーチップ(ForteBio,Inc.,Menlo Park,CA)上に捕捉し、続いて10μ/mlで該センサーをPLBL2タンパク質に浸した。会合及び解離反応速度測定は、ForteBioデータ分析ソフトウェアを用いて決定した。25個のクローンをすべて、C末端、N末端及びPLBL2全体への結合についてウェスタンブロットにより更に特徴づけた。C若しくはN末端又はインタクトなPLBL2タンパク質の何れかに免疫結合を示すクローン1.26G6、1.20B5、1.19C10、1.15G11、1.4E2、1.39C10及び1.30F3のハイブリドーマ上清を、アフィニティークロマトグラフィー(MabSelect SuRe;GE Healthcare Bio−Sciences,Piscataway,NJ)により精製し、滅菌濾過し、PBSに4℃で保存した。7抗体から高収率の4抗体をビオチン化のために選択した。ビオチン化抗体と非ビオチン化抗体双方の結合活性をOctetにより確認した。次いで精製抗体を、ELISAアッセイの開発における使用可能性について評価した。二の抗体(1.19C10と1.15G11)が、ELISAアッセイの開発用に選択された。
【0181】
抗体1.19C10と1.15G11の双方を、Isostrip Mouse mAb Isotyping Kit(Roche Applied Biosciences,Indianapolis,IN)を用い、IgG1、カッパであると判定した。これらの抗体の各々をコードするDNAをクローニングし、293細胞又はCHO細胞の何れかにおいて一過性に発現させた。CHO細胞における一過性発現のためのクローン1.15G11及び1.19C10由来の抗体可変配列を得るために、cDNAの5’末端の迅速増幅(5’RACE)法が使用されたが、この方法は、上述した方法に基づいている(例えば、Nature Methods 2, 629 - 630 (2005)、及びMolecular Cloning: A Laboratory Manual (eds. Sambrook, J. & Russell, D.W.)第8章 Protocol 9, 8.54-8.60 (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, USA, 2001)の「Rapid amplification of 5’ cDNA ends」 参照)。トータルRNAを、RNeasy Plusキット(Qiagen,Valencia,CA)を用いて培養したハイブリドーマ細胞(少なくとも106細胞)から抽出し、SMARTer RACE cDNA増幅キット(Clontech Inc.,Mountain View,CA)を用いてcDNAを調製した。重鎖及び軽鎖の可変領域を増幅するために、cDNAの5’末端のオリゴを標的とするユニバーサルライマーAミックス(SMARTer RACE cDNA増幅キットに含められている)、及びマウスIgG重鎖の定常領域とカッパ軽鎖を標的とするリバースプライマーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)においてそれぞれ使用した。PCR条件は次のように設定した:1μLのcDNA、5μL10倍のユニバーサルプライマーミックス、1μL10μMのリバースプライマー、45μLPCRプレミックス(Life Technologies Inc.Foster City,CA);94℃で2分、続いて94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で30秒を30サイクル、そして72℃で10分。PCR産物は、DNAのアガロースゲル上で分解され、期待されるサイズ(重鎖が700bp、及び軽鎖が500bp)を有するPCR産物を配列解析用ゲルから精製し、重鎖及び軽鎖(VH及びVK)の可変領域のDNA配列を決定した。
【0182】
上記のVH/VK領域を抗体発現ベクターへとクローニングするために、本発明者らはIn−Fusion(登録商標)クローニング法(Clontech Inc.)及び次のプライマーを使用した:1.15G11重鎖、フォワードプライマー 5’−ACT GGA GCG TAC GCT GAA GTG AAG CTT GAG GAG TCT−3’(配列番号23)、リバースプライマー 5’−AAG ACC GAT GGG CCC TTG GTG GAG GCT GAG GAG ACG GTG ACT GAG GTT C−3’(配列番号24);1.19C10重鎖、フォワードプライマー 5’−ACT GGA GCG TAC GCT GAG GTG CAG CTT CAG GAG TCA−3’(配列番号25)、リバースプライマー 5’−AAG ACC GAT GGG CCC TTG GTG GAG GCT GAG GAG ACT GTG AGA GTG GTG C−3’(配列番号26)。1.15G11と1.19C10双方の軽鎖については、フォワードプライマー 5’−GCA ACT GCA ACC GGT GTA CAT TCA GAC ATT GTG ATG ACC CAG TCT−3’(配列番号27)、リバースプライマー 5’−GGT GCA GCC ACG GTC CGC TTC AGC TCC AGC TTG GTA CC−3’(配列番号:28)を使用した。1μLのcDNAを、前述したのと同じ条件下でPCRの鋳型として使用した。次いでPCR産物を、抗体発現ベクターへのサブクローニング用のPCRクリーンアップキット(Qiagen Inc.)を用いて精製した。マウスIgG1発現ベクターをBsiWI及びApaI消化により線状化し、マウスカッパ発現ベクターをAgeI及びBssHIIを用いて消化した。In−Fusion(登録商標)クローニング反応のために、50ngの線状化ベクターDNA及び50ngのVH又はVK PCR産物を、5倍In−Fusion(登録商標)酵素と共に混ぜ合わせ、次いで50℃で15分間インキュベートした。3μLのIn−Fusion(登録商標)反応液を、形質転換及びカルベニシリン(50μg/mL)選択LB寒天プレート上でのプレーティングのために使用した。プラスミドDNA精製のために単一コロニーを採取し、培養した。インフレームVH又はVKインサートを有するクローンを配列解析で同定した。
【0183】
組換え抗体を、上記のように精製し、直接ELISAとOCTET(登録商標)(ForteBio,Inc.,Menlo Park,CA)の双方により(上記の通りにアッセイし)精製ハイブリドーマ由来の抗体と比較して同等のものであることがわかった。上記のように生成される組換え抗体は、それぞれ19C10及び5G11と称される。19C10及び5G11のアミノ酸配列情報は、配列表中に提供される。
【0184】
ポリクローナル抗体を生成するために、血清病原体フリーのメスのニュージーランド白ウサギ三羽(Antibody Solutions,Mountain View,CA)を、ヒドロゲル及びムラミルジペプチド(MDP)含有アジュバント中の(上述の通りに)精製された組換えPLBL2を用いて、2週間おきに首の皮下に免疫した。各注射は、精製組換え可溶性PLBL2を150ug含有していた。0日目、21日目、49日目、63日目、84日目及び112日目の計6回注射が施された。抗体価を調べるために、各ウサギを、42日目、70日目、77日目、91日目、98日目、119日目及び126日目の計7回採血した。これらのウサギを134日目に失血させた。コントロールとして、注射前0日目に、各ウサギから免疫前血清を採取した。
【0185】
PLBL2に対する抗体の反応性を決定するために、溶液相捕捉法(solution phase capture method)において抗血清を使用した。溶液相捕捉法では、三羽の異なるウサギ(ウサギA、B及びC)からの免疫前抗血清を、1/1000の初期希釈から連続的に希釈した。希釈した血清を、非結合96ウェルプレートに2時間3μg/mLで、固定濃度のビオチン化PLBL2と共にインキュベートした。次いで、その溶液を、Superblock Blockingバッファー(Pierce 製品#15129)をと共にPierce NeutrAvidin Coated Clear 96ウェルプレートに移し、ビオチン化PLBL2を捕捉するために1時間インキュベートした。インキュベーション工程の後、非結合材料を、Wash Buffer(0.05%Polysorbate 20/PBS[Corning Cellgro カタログ番号99−717−CM])を用いて洗い流した。ペルオキシダーゼコンジュゲートAffiniPureヤギ抗ウサギIgG(Jackson Immunoresearch カタログ番号111−035−144)を、希釈因子1/20000でAssay Diluent中に希釈し、マイクロタイタープレートのウェルに添加した。2時間の室温でのペルオキシダーゼコンミュゲートヤギ抗ウサギIgGを用いたインキュベーション工程の後、(上記の)Wash Bufferでの最終洗浄工程を実施した。次に、TMBの溶液(50μl/ウェル)(メリーランド州ゲイサーズバーグのKPL(Kirkegaard & Perry Laboratories,Inc.)社のSUREBLUE RESERVE
TM、カタログ番号53−00−03)を添加することにより色を発色させ、続いて10〜20分間室温でインキュベーションした。検出は、Molecular Devices社SpectraMax M5eを使用し、各ウェルにおいて450nmの光学密度(OD)を評価することにより実施された。5−パラメーターカーブフィッティングプログラム(SoftMax Pro v5.2 rev C)を使用してデータを処理した。
【0186】
上述の溶液相捕捉実験に基づいて、三羽すべてのウサギからの抗血清がPLBL2に対する良質の抗体を持つことが判明した。三羽すべてのウサギの免疫前血清は、PLBL2に対して親和性を持たなかった。三羽すべてのウサギがPLBL2に対して類似した応答曲線を示したため、三羽すべてのウサギからの全採血抗血清を、ポリクローナルPLBL2 ELISAアッセイ(下記の実施例5に記載)のために単一ロットにまとめた。
【0187】
60%硫酸アンモニウムを用い、プールされたウサギ抗血清を最初に分画し、次いで血清中のすべての抗体を沈殿させた。PLBL2に対して産生された抗体を選択するために、アフィニティークロマトグラフィーを使用した。PLBL2をグリセリル−CPG上に固定化させ、ゲルをクロマトグラフィーカラムに充填した。60%硫酸アンモニウムペレットをPBSに溶解させ(pH7.2)、PLBL2−CPGカラムに充填した。充填完了後、カラムをPBS+0.02%NaN
3(pH7.2)で洗浄した。PLBL2に対する抗体を、PBS(pH2.0)を用いてアフィニティーカラムから溶出させ、溶出プールを1.0Mトリス(pH7.5〜8.0)溶液中に回収した。 最後に、精製された抗PLBL2抗体を濃縮し、サイズ排除クロマトグラフィーを使用してバッファーをPBS+0.02%NaN
3(pH7.2)に交換した。下記の実施例5に記載のポリクローナルPLBL2 ELISAにおいて、アフィニティー精製されたウサギポリクローナル抗体を使用した。
【0188】
実施例3-マウスモノクローナル抗ハムスターPLBL2 ELISAアッセイ
組換えポリペプチド試料(例えば組換え抗体又はイムノアドヘシン調製物)中のCHOP不純物であるPLBL2を検出し定量化するためのELISAアッセイを開発した。手順は以下の通り。マウスモノクローナル抗体19C10を、炭酸バッファー(0.05Mの炭酸ナトリウム、pH9.6)中0.5μ/mLの濃度で、96ウェルマイクロタイタープレートの半分に一晩2〜8℃で被覆した。被覆後、タンパク質の非特異的な付着を防ぐために、Blocking Buffer(0.15MのNaCl、0.1Mリン酸ナトリウム、0.1%魚ゼラチン、0.05%ポリソルベート20、0.05%Proclin(登録商標)300[Sigma−Aldrich];Assay Diluentとも称される)を用いて該プレートをブロックした。標準物質、コントロール及び試料を、Assay Diluent(0.15M NaCl、0.1M リン酸ナトリウム、0.1%魚ゼラチン、0.05%ポリソルベート20、0.05%Proclin(登録商標)300 [Sigma−Aldrich])に希釈し、次いで別々のウェルに二つ組で充填し、室温(22〜27℃)で2時間インキュベートした。PLBL2は、試料中に存在する場合、被覆(本明細書では捕捉とも言われる)抗体に結合するであろう。上記のインキュベーション工程の後、Wash Buffer(0.05%ポリソルベート20/PBS[Corning cellgro カタログ番号99−717−CM])を用いて未結合材料を洗い流し、ビオチンコンジュゲート15G11抗PLBL2マウスモノクローナル抗体をAssay Diluentに濃度0.03125μ/mLまで希釈し、マイクロタイタープレートのウェルに添加した。
【0189】
ビオチンコンジュゲーションを以下の通り実施した。Pierce Thermo Scientific社からビオチン化キット(P/N 20217,E−Z Link NHS−Biotin)を、またJackson Immuno社からストレプトアビジン−HRP(SA−HRP)(カタンログ゛番号016−030−084)を購入した。Pierceのキットの説明書に従った。簡潔に述べれば、IgGをPBS(pH7.4)に透析し、ビオチンをそのタンパク質に添加し、室温で1時間混合した。次いで、過剰ビオチンを除去するためにPBS(pH7.4)に対して標識抗体を透析し、濾過し、A280によりタンパク質濃度を決定した。
【0190】
室温でのビオチン化15G11との2時間のインキュベーション工程の後、ストレプトアビジンHRP(Assay Diluentに1:200000希釈)をマイクロタイタープレートウェルに添加した。(上記の)Wash Bufferを用いた最終洗浄工程の後、TMBの溶液(50μ/ウェル)(メリーランド州ゲイサーズバーグのKPL(Kirkegaard & Perry Laboratories,Inc.)社のSUREBLUE RESERVE
TM、カタログ番号53−00−03)を添加することにより(PLBL2の定量化のために)色を発色させ、続いて、室温で10〜20分間のインキュベーションをした。検出は、Molecular Devices社SpectraMax M5eを使用し、各ウェルにおいて450nmの光学密度(OD)を評価することにより実施された。4−パラメーターカーブフィッティングプログラム(SoftMax Pro v5.2 rev C)を使用して検量線を作成し、試料PLBL2濃度を検量線の直線範囲から算出した。
【0191】
図2に示すように、19C10及び15G11モノクローナル抗体を用いるPLBL2アッセイは、4−ptパラメーターフィットを用いてS字形曲線を示した。名目上のPLBL2(ng/mg又はppm)を算出するために、検量線の直線範囲の値を用いた。直線範囲は、プレートによってわずかに変化し、約EC10‐EC85又は1.5−40ng/mLであった。このELISAを用いて得られたPLBL2についての値は、他の方法(例えば、LC−MS/MS、ポリクローナルPLBL2 ELISA、又はアッセイのLOQまで希釈した場合はトータルCHOP ELISA[表3及び4参照])による推定値と同等であった。
【0192】
実施例4-モノクローナルPLBL2 ELISAアッセイ使用結果
上の実施例3で述べたハムスターPLBL2 ELISAアッセイを使用して、本発明者らは、異なる条件下でPLBL2の混入量を定量化するために、CHO細胞中で産生された種々のモノクローナル抗体(mAb)調製物を評価した。本発明者らは、未精製の収集細胞培養液(HCCF)のみならず精製調製物の複数回の試験を評価した。場合によっては、比較のために、本発明者らはLC−MS/MSによりPLBL2ペプチドの量も定量化した。LC−MS/MS法は以下の通り実施された。
【0193】
LC−MS/MSによるPLBL2の定量化のために、Waters Acquity H−Class Bio UPLC及びAB Sciex TripleTOF 56000+質量分析計を用いた。試料及びキャリブレーション標準物質(マウスNS0細胞株から得られた組換えヒト化モノクローナル抗体調製物にスパイクされた組換えPLBL2[該NS0細胞株は、ハムスターPLBL2を含有しない])が減少し、トリプシンにより消化された。合計40μgの消化された試料は、Waters BEH300 C18カラム、粒径1.7μmを使用してUPLCに注入された。アセトニトリルの直線勾配を、300μl/分の流速及び60℃のカラム温度で、ペプチドを溶出するために使用した。
【0194】
UPLCから溶出するペプチドは、ポジティブイオン化モードでのエレクトロスプレーイオン化により、質量分析計に導入された。5500vのIonSpray電圧でイオン源温度を400℃に、デクラスタリング電位を76vに設定した。選択されたペプチドイオンの断片化のために衝突エネルギー設定32を使用した。質量分析計は、4つの特定のPLBL2ペプチド及びそれらの断片イオン遷移を用いる、多重反応モニタリング高解像度(MRMHR)モードで操作した。親イオンは、1.2amuの質量電荷比(m/z)選択ウィンドウを備える四重極質量分析計により選択された。各親イオンの断片イオンを、飛行時間型質量分析計により分離し、0.025amuの選択ウィンドウで定量化ポストデータ収集のために選択した。
【0195】
試料中のPLBL2の濃度は、四つの遷移の特異的なシグナルレスポンスを測定すること、線形フィットを用いて2から500ppmの範囲で、標準物質のシグナルレスポンスによってキャリブレーションされることにより決定された。以下の表2は、LC−MS/MSによりモニターされたPLBL2ペプチドのリストを示す。LC−MS/MSによりモニターされた各ペプチドの代表的な検量線を
図3に示す。
【0196】
以下の表3及び4は、二つの異なるmAb調製物(mAb A及びmAb B)の、実施例3に記載のLC−MS/MS及びハムスターPLBL2 ELISAアッセイの双方により決定された種々の精製試験でのPLBL2比率を示す。正確には上述のCHOPの比率は、PLBL2比率がng/mg又はパーツ・パー・ミリオン(ppm)として提供され、生産物(mAb)濃度に対するPLBL2濃度の算出比率を表す。表3及び4に示された結果は、PLBL2 ELISAアッセイが広範囲にわたり異なる精製プロセス下で(各試験番号は異なる精製プロセスを示す)、二の異なるmAb調製物中のPLBL2レベルを定量化することができたことを表す。
【0197】
本発明者らはまた、実施例3に記載のPLBL2 ELISAアッセイの、未精製HCCF中に混入しているPLBL2のレベルを決定する能力を、多くのmAb調製物(そのうちの幾つかはIgG1で、幾つかはIgG4であった)について評価した。結果は
図4に示されている。
図4でわかるように、このPLBL2 ELISAアッセイは、HCCF中の広範囲のPLBL2を定量化することができた。PLBL2のレベルは異なるmAb HCCF試料間で大きく異なるものの、複製HCCF調製物(試験)の再現性は、どのmAbでも良好であった。アイソタイプ(IgG1又はIgG4)とHCCF中のPLBL2レベルとの間に明確な相関関係は見られなかった(データは示さない)。
【0198】
更に、本発明者らは、実施例3に記載のモノクローナルPLBL2 ELISAアッセイを使用し、mAb Gの最終的な限外濾過/ダイアフィルトレーション(UFDF)工程を伴う3カラムクロマトグラフィー精製プロセスによってPLBL2のクリアランスを評価した。結果を
図5に示す。PLBL2レベルはHCCF中で最も高く、該精製プロセスは最終的なmAb G調製物からPLBL2を取り除くのに有効であった。モノクローナルPLBL2 ELISAアッセイは、良好な感度及び特異性を実証し、未精製HCCF中のPLBL2レベルを精製の各段階で定量化するのに有効であった。本発明者らは、モノクローナルPLBL2 ELISAアッセイがトータルCHOPアッセイで見られた「抗原過剰」問題の対象ではないことを示す、様々な生産物希釈度での直線性を認めた。
【0199】
実施例5‐ウサビポリクローナル抗ハムスターPLBL2 ELISAアッセイ
組換え抗体又はイムノアドヘシン調製物といった組換えポリペプチド試料中のCHOP不純物であるPLBL2を検出し定量化するためのELISAアッセイが開発された。手順は以下の通り。アフィニティー精製ウサギポリクローナル抗体を、炭酸バッファー(0.05Mの炭酸ナトリウム、pH9.6)中0.5/mLの濃度で、96ウェルマイクロタイタープレートの半分に一晩2〜8℃で被覆した。被覆後、タンパク質の非特異的な付着を防ぐために、Blocking Buffer(0.15M NaCl、0.1Mリン酸ナトリウム、0.1%魚ゼラチン、0.05%Polysorbate20、0.05%Proclin(登録商標)300[Sigma−Aldrich])を用いて該プレートをブロックした。標準物質、コントロール及び試料を、Assay Diluent(0.15MのNaCl、0.1Mのリン酸ナトリウム、0.1%魚ゼラチン、0.05%Polysorbate20、0.05%Proclin(登録商標)300[Sigma−Aldrich])中に希釈し、次いで別々のウェルに二つ組で充填し、室温(22〜27℃)で2時間インキュベートした。PLBL2が試料中に存在する場合、被覆抗体(本明細書では捕捉抗体とも称される)に結合させる。上記のインキュベーション工程の後、Wash Buffer(0.05%Polysorbate20/PBS[Corning Cellgro カタログ番号99−717−CM])を用いて未結合材料を洗い流し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートアフィニティー精製ウサギポリクローナル抗体をAssay Diluentに濃度40ng/mLまで希釈し、マイクロタイタープレートのウェルに添加した。
【0200】
HRPコンジュゲーションを以下の通り実施した。HRPコンジュゲーションキットをPierce Thermo Scientificより購入した(製品番号31489、E−Z Link Plus Activated Peroxidase and Kit)。Pierceのキットの説明書に従った。簡潔に述べれば、IgGをCarbonate−Bicarbonateバッファー(pH9.4)に透析し、EZ−Link Plus Activated Peroxidaseをそのタンパク質に添加し、室温で1時間混合した。次にシアノ水素化ホウ素ナトリウム及びグエンチングバッファーを添加し、コンジュゲーションを安定させ反応をクエンチした。次いで、PBS(pH7.4)に対して標識抗体を透析し、濾過し、A280によりタンパク質濃度を決定した。
【0201】
2時間の室温でのHRPコンジュゲートウサギポリクローナル抗体とのインキュベーション工程の後、(上に記載の)Wash Bufferでの最終洗浄工程を実施した。その後、TMBの溶液(50μl/ウェル)(メリーランド州ゲイサーズバーグのKPL(Kirkegaard & Perry Laboratories,Inc.)社のSUREBLUE RESERVE
TM、カタログ番号 53−00−03)を添加することにより、(PLBL2定量化に対して)色を発色させ、続いて10〜20分間室温でインキュベーションした。検出は、Molecular Devices社SpectraMax M5eを使用し、各ウェルにおいて450nmの光学密度(OD)を評価することにより実施された。5−パラメーターカーブフィッティングプログラム(SoftMax Pro v5.2 rev C)を使用して検量線を作成し、試料PLBL2の濃度を検量線の直線範囲から算出した。
【0202】
図6に示すように、アフィニティー精製ウサギポリクローナル抗体を用いるPLBL2アッセイは、5−ptパラメーターフィットを用いてS字形曲線を示した。名目上のPLBL2(ng/mg又はppm)を算出するために、検量線の直線範囲の値を用いた。このアッセイの定量範囲は0.5‐50ng/mLであった。このELISAを用いて得られたPLBL2についての値は、他の方法(例えば、マウスモノクローナルPLBL2 ELISA、LC−MS/MS又はアッセイのLOQまで希釈した場合はトータルCHOP ELISA)によってなされた推定値と同等であった。
【0203】
実施例6-ポリクローナルPLBL2 ELISAアッセイ使用結果
本発明者らは、実施例5に記載のポリローナルPLBL2 ELISAアッセイを使用し、mAb Gの最終的な限外濾過/ダイアフィルトレーション(UFDF)工程を伴う3カラムクロマトグラフィー精製プロセスによってPLBL2のクリアランスを評価した。結果を
図7に示す。モノクローナルPLBL2 ELISAアッセイで見られたように、PLBL2レベルはHCCF中で最も高く、該精製プロセスは最終的なmAb G調製物からPLBL2を取り除くのに有効であった。ポリクローナルPLBL2 ELISAアッセイは、良好な感度及び特異性を実証し、未精製HCCF中のPLBL2レベルを精製の各段階で定量化するのに有効であった。本発明者らは、PLBL2 ELISAアッセイがトータルCHOPアッセイで見られた「抗原過剰」問題の対象ではないことを示す、様々な生産物希釈度での直線性を認めた。
【0204】
更に、本発明者らは、モノクローナルアッセイを使用して検出されたPLBL2の量を、異なる七回のmAb A試験(表5に示すように、精製の様々な段階を含む)及び一回のmAb Bの試験でのポリクローナルアッセイを用いて検出されたPLBL2の量とを比較した。結果を表5に示す。見てわかるように、各アッセイを使用して得られた結果の間の相対的差異%は、二つのアッセイが同等の結果をもたらすことを示している。
【0205】
結論
まとめると、これらのデータは、本明細書に記載のモノクローナル及びポリクローナルPLBL2 ELISAアッセイの各々が強固で特異的且つ高感度であることを示している。各アッセイが、様々な精製条件下で広範囲のPLBL2レベルを有する多数の異なるMAb調製物に混入しているハムスターPLBL2 CHOPを正確に定量化できることを本発明者らは示した。本発明者らはまた、PLBL2 ELISAアッセイが、不純物クリアランスをモニターするために精製プロセスの各工程中に使用されうることも示した。したがって、本明細書に記載のモノクローナル及びポリクローナルPLBL2 ELISAアッセイの各々は、最終産物中のPLBL2レベルを定量化するためのみならず、精製プロセス進行中のクリアランスをモニターするための有効なツールである。
【0206】
実施例7‐細胞株をスクリーニング又は選択するためのPLBL2 ELISAアッセイの使用
上記及び
図4に示した通り、本発明者らは、異なるmAb産生細胞株間で、HCCF中のPLBL2レベルに大きな差異(幾つかの細胞株は他と比較して20倍のPLBL2レベルを有した)があることを認めた。このような大きな差異は、例えば下流の精製プロセスの負荷を削減するために、HCCF中に低レベルのPLBL2を生成する生産物細胞株、更に場合によっては宿主細胞株(すなわち、如何なる生産物も生成しない宿主細胞)を特定することが望まれることを示唆している。生産物細胞株に関して、大量の生産物と低量のPLBL2を同時に生成する株を特定することが望ましい。重要な問題は、大量の生産物と低量のPLBL2を生成するクローンを選択するために、生産物細胞株の異なるクローンをスクリーニングすることが可能であるどうかである。
【0207】
下記の結果を生む前には、本発明者らは、このようなクローン選択法が実行可能とは考えなかった。なぜなら、異なる生産株間で認められるPLBL2レベルの差(
図4参照)は、生成された生産物(例えば、Mab)特有の特徴であるとの仮説を立てたからである。例えば、本発明者らは、MAb A株のすべてのクローンはほぼ同じレベルのPLBL2を生成し、そのレベルはMAb G株のすべてのクローンにより生成されるPLBL2のレベルよりかなり高いだろうと予想した(
図4参照)。この仮説は、様々なMAb産生細胞株での本発明者らの過去の経験と矛盾するものではなく、その経験では、特定のMAb産生細胞株は異なるMAbを産生する株と比較して高レベルのMAbを産生すること、すなわちMAb産生は、産生されるMAbの特性に左右されるようであることが認められた。更に、本発明者らは、高増殖及び生存率プロファイルを有する細胞株は相対的に効率的なタンパク質生成機構を有し、ゆえに特定のMAbレベルに関してのみならずPLBL2レベルに関しても、より生産性が高いであろうと予想した。要するに、本発明者らは、ある特定の細胞株の種々のクローン中の生産物に対するPLBL2の比率はクローン間で比較的一致するであろうと予想した。
【0208】
低PLBL2/高生産物濃度クローン選択法の実現可能性を探るために、本発明者らは、上に記載の方法を使用して、6の異なる組換えタンパク質生産物CHO細胞株(生産物J、生産物K、生産物L、生産物M、生産物N及び生産物O)の複数のクローン株からの14日目のHCCF試料におけるPLBL2レベル、トータルCHOPレベル及び生産物濃度を測定した。各クローン細胞株の重複2Lバイオリアクター培養物から得られた結果は、
図8に示されている。予想されたように、特定の生産物細胞株のクローン中の生産物濃度はクローンによって大きな差はなく、特定の生産物細胞株のクローン中の生産物濃度の平均レベルは生成される生産物に左右されるものであった。例えば、生産物N(
図8E)を一番多く生成するものは、生産物L(
図8C)を一番多く生成するものより少なくと1.5倍の生産物濃度を有した。
【0209】
しかし、驚くべきことに、上記の生産物濃度に関する所見は、PLBL2レベルには当てはまらなかった。
図8に見られるように、特定の生産物細胞株の異なるクローン間でのPLBL2レベルにはかなりばらつきがあり、このクローン間のばらつきは6の異なる生産物の各々で見られた。別の言い方をすれば、生産物濃度とPLBL2レベルとの間に強い相関関係はなかった。例えば、
図8E(生産物N)に見られるように、生産物N細胞株の各クローン1〜4は、およそ3.5〜4.5g/Lの範囲の同程度の生産物濃度を生じたが、5倍以上(およそ0.75mg/Lからおよそ4.5mg/Lの範囲)異なるPLBL2濃度を生じた。
図8Eに示した結果から、生産物N細胞株3番は、他のすべての生産物N細胞株と比較して最も低いPLBL2レベル及び最も高い生産物濃度を生じ、こうした望ましい特性を有する生産物クローンを選択することの実現可能性を示していることは明らかである。更に、これらの結果は、PLBL2濃度及び生産物濃度を評価すること、及び低PLBL2レベル及び高生産物濃度を生ずる生産物クローンを選択することから成るこの選択法の汎用性を示す。
【0210】
本選択法を実施することの有用性は、例えば、生産物Lクローン細胞株の結果(
図8C)を検討ことにより理解される。クローン細胞株はすべて、生産物の生成が相対的に少ないが、PLBL2のレベルには大きな差異がある。生産物濃度がスクリーニングされる唯一の特性であれば、生産物L細胞株6番が選択されるであろう。なぜなら、それが最も高い生産物濃度を生じるからである。しかし、生産物L細胞株6番はまた、他のすべてのクローンよりもかなり高いレベル(場合によっては3倍以上)のPLBL2を生成した。スケールアップ及び更なる開発作業のために選択される生産物細胞株中のPLBL2レベルを最小にすることが望ましい状況では、それゆえにPLBL2レベルの追加的スクリーニングが重要であり、且つ低PLBL2と高生産物濃度を兼ね備えた望ましい特性を有する生産物細胞株の選択を可能にする。
【0211】
図8に示されたデータを分析するための別の方法は、生産物濃度に対するPLBL2レベルの比率を算出することである。
図8に関して上述した各細胞株について該比率を算出し、
図9に示すようにプロットした。
図9に示したデータにより明らかな通り、特定の生産物細胞株からのクローン細胞株は、2倍から10倍も異なるPLBL2/生産物濃度比率を生じた。
【0212】
このような分析は、特定の生産物細胞株の複数のクローン細胞にわたって望まれる特性の迅速な比較、及び最も低い比率(すなわち最低レベルのPLBL2と最高レベルの生産物濃度)を有する株の簡便な選択を可能にする。例えば、生産物Lについて、
図8Cのデータからは、何番の細胞株が最低レベルのPLBL2と最高レベルの生産物濃度を生じたか明らかではなかった。しかし、PLBL2/生産物濃度の比率を表す
図9Cのデータは、生産物L細胞株1番が最も低い比率、したがって望まれる特性の最適な組み合わせを有することがはっきりと示している。
【0213】
特定の生産物細胞株の複数のクローン細胞株にわたるばらつきの程度を更に調べるために、本発明者らは、生産物Pを発現する48の異なる組換えCHO細胞株を分析した。生産物Pの48の細胞株の各々のPLBL2/生産物比率を
図10に示す。これらの48の異なる生産物P細胞株にわたるPLBL2/生産物比率には、10倍も差があった。更に、
図10に示したデータを概観すると、生産物P細胞株34番が最も低い比率を有し、ゆえに低PLBL2と高生産物濃度という所望の特性を有する生産物細胞株を選択する容易さを明確に示している。
【0214】
次に、本発明者らは、上述の48の生産物P細胞株の振盪フラスコ培養物からの14日目のHCCF試料におけるトータルCHOP、PLBL2及び生産物の濃度レベルを測定することにより、PLBL2濃度と生産物濃度の間に一見したところ相関関係がないことを調査した。一つの生産物に関するこのかなり膨大なデータセットで、より正確にこれらの3つの測定値間の相関関係を定量化することができた。
図11Aは、PLBL2濃度と生産物濃度の間に弱い線形相関があったこと、すなわち、線形回帰に関連付けられた決定係数(R
2)が低かった(<0.12)ことを示す。この弱い相関関係は、他の細胞株と比較して、高い組換えタンパク質生産力及び低いPLBL2レベルという所望の特性を有する細胞株を選択することの実現可能性を実証する。対照的に、
図11Bは、トータルCHOP濃度と生産物濃度との間に適度に強い線形相関があったことを示している(R2>0.45)。この相関関係は、所望の生産物について高い生産力を有する細胞株は、かなり増殖し、高い生存率を維持し、また強力なタンパク質生産機構を有することが予想されるために、宿主細胞タンパク質一般についても高い生産力を有する可能性が高いという本発明者らの元々の仮説と一致している。
図11Cに示した、PLBL2濃度とトータルCHOP濃度との間の強い線形相関の欠如(R2<0.29)は、驚くべき知見である。PLBL2は単一のCHOP種であるため、より多くのトータルCHOPを生成する細胞株はPLBL2も多く生成し、トータルCHOPに対するPLBL2の比率は異なる細胞株にわたって比較的一貫性が維持されるだろうと、本発明者らは予想していた。48細胞株にわたるHCCF中のPLBL2レベルとトータルCHOPレベルとの間の強い正の相関関係のこの予想外の欠如は、トータルCHOP測定値をPLBL2測定値の代わりとして当てにできないことを実証している。したがって、低いトータルCHOPレベルを有する細胞株はPLBL2レベルも低いだろうと推測することはできない。ゆえに、HCCF中のPLBL2の直接測定値は、低PLBL2レベルを有する細胞株の選択のために重要である。
【0215】
異なるCHO宿主細胞株が異なるレベルのPLBL2を生じるかどうかを決定するため、また、そのようなPLBL2レベルの差異を、細胞培養における組換えタンパク質のPLBL2レベルに対する影響と区別するために、本発明者らはPLBL2 ELISAを使用し、如何なる生産物遺伝子(product gene)も発現しない三つの異なるCHO宿主細胞株―宿主1、宿主2及び宿主3―の2Lバイオリアクター培養物におけるPLBL2レベルを測定した。これらのバイオリアクター培養物(何の生産物も生成されないため、空試験ともいう)を、Vi−Cell XR(カタログ番号731050, Beckman Coulter,Inc.,Brea,CA,USA)を使用して、生細胞密度及び生存率について分析した。また、細胞増殖は、KIMAX目盛付き沈殿管(カタログ番号45225−10,Kimble Chase,Vineland,NJ,USA)中の培養試料を遠心(820g、10分)することにより、血中血球容積(PCV)に基づいて培養期間中を通して評価された。本発明者らは、これらの空試験のために、HCCF及び全細胞培養液(WCCF)の双方においてPLBL2レベルを測定した。WCCF試料は、細胞とHCCFの双方から成る。したがって、WCCF試料中で測定されるPLBL2レベルは、培養物中のPLBL2の総細胞内及び細胞外濃度の組み合わせを反映している。PLBL2 ELISAアッセイを用いて、本発明者らは、HCCF(
図12A)とWCCF(
図12B)の双方におけるPLBL2プロファイルに関する、三つのCHO宿主細胞株にわたる差異を定量化した。このようにして、本発明者らは、宿主1が、HCCFとWCCFの双方において最高レベルのPLBL2を生成したことを確認した。対照的に、本発明者らは、宿主3が収集の時点(14日目)で最低レベルのPLBL2を生成するCHO細胞株であることを確認した。
【0216】
宿主3は、HCCFとWCCFの双方において全体的に最低レベルのPLBL2を生成したが、三つのCHO宿主細胞株はすべて、異なる増殖プロファイルを示した(データは示さない)。したがって、PLBL2レベルに対する細胞増殖の差異の影響を打ち消すために、本発明者らは、PLBL2生成を生細胞体積に対して日ごとに正規化することによって、これらの三つの細胞株を更に分析した。宿主1、宿主2及び宿主3における細胞特異的PLBL2生産力を算出するために、本発明者らは、対応する積算生存血中血球容積(IVPCV)に対してPLBL2濃度をプロットした。随伴性細胞溶解に起因する細胞死及びPLBL2放出によって複雑になるのを最小限に抑えるため、本発明者らは使用するデータを、70%を超える培養生存率のデータに限定した。線形回帰から得られた結果としての傾きは、細胞特異的PLBL2生産力の推定値を、日ごと単位生細胞体積当たりのPLBL2をmg単位で提供した。
図13に示すように、線形回帰の傾きは宿主1で最も大きく、宿主3で最も小さかった。これは、測定値がHCCF(
図13A)を使用して得られたものであろうと、WCCF(
図13B)を使用して得られたものであろうと、宿主3が平均で日ごと単位生細胞体積当たり数分の1のPLBL2を生成したことを更に実証している。これらの知見に基づいて、生産物細胞株を生成するための安定したトランスフェクション用のCHO親宿主として、例えば宿主3のような、低PLBL2生成宿主を優先的に選択することができる。このようなアプローチはまた、他のCHO宿主細胞に基づく組換え細胞株と比較してもより低いPLBL2レベルを示す、安定的にトランスフェクトされた組換え細胞株をもたらしうる。
【0217】
上述の結果は、本明細書に記載のPLBL2 ELISAアッセイは、複数の組換え生産物CHO細胞株及び複数のCHO宿主細胞株にわたってPLBL2レベルを評価するために使用することができ、したがって、低PLBL2濃度、また、組換え生産物CHO細胞株の場合には、高生産物濃度といった所望の特性を有する組換え株又は宿主株の選択を可能にする。細胞株選択に対するこのようなアプローチは組換え製造プロセスの最適化にとって重要であり、例えば、下流の精製プロセスの負荷を軽減する。
【0218】