(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンの回転に伴って動作するオイルポンプ及び該オイルポンプによってオイルを供給される機器とを接続するメイン油路から分岐する分岐路と、該分岐路に接続されたアキュームレータと、を有する油圧制御装置において、制御ソレノイドと、基準油圧室と制御油圧室と、バランス弁体及び該バランス弁体を開口側に付勢する開口圧縮ばねを備えるバランスバルブユニットと、を有し、前記分岐路の内、前記アキュームレータへのオイル流入路には逆流防止の逆止弁が設けられ、前記アキュームレータからのオイル吐出路には前記バランスバルブユニットが設けられてなり、前記制御ソレノイドを操作して、前記制御油圧室に高圧オイルを導入して、該高圧オイルの油圧で前記バランス弁体の開口を抑止することを特徴とする油圧制御装置。
請求項1又は請求項2に記載の油圧制御装置において、前記制御ソレノイドはA路、B路及びC路の3つのオイル入出口を有して、該B路と前記A路間で連通して該B路と前記C路間を遮断するAモードと、該B路と前記C路間で連通して該B路と前記A路間を遮断するCモードを切替えられる電磁制御バルブであって、前記制御ソレノイドのA路と、前記基準油圧室及び、前記オイル流入路の逆止弁の下流側は直接若しくは前記アキュームレータを介して接続され、前記制御油圧室と前記制御ソレノイドのB路が接続される構成にして、前記オイルポンプが加圧動作しているときと停止しているときは、前記制御ソレノイドをAモードとして、前記制御油圧室に高圧オイルを導入して、該高圧オイルの油圧で前記バランス弁体の開口を抑止することで前記オイル吐出路を閉鎖する一方で、前記エンジンの再始動命令直後は、前記制御ソレノイドをCモードとして、前記高圧オイルを排出して前記制御油圧室の油圧を低下させることにより、前記開口圧縮ばねの反発力で前記バランス弁体を開口側に位置させて前記オイル吐出路を開放させることを特徴とする油圧制御装置。
請求項3に記載の油圧制御装置において、前記オイル流入路は、該オイル流入路間に設けられた前記逆止弁を境として、前記メイン油路寄りを流入上流路と称し、前記アキュームレータ寄りを流入下流路と称し、前記オイル吐出路は、該オイル吐出路間に設けられた前記バランスバルブユニットを境として、前記アキュームレータ寄りを吐出上流路と称し、前記メイン油路寄りを吐出下流路と称し、前記流入下流路と前記吐出上流路を一の油路で共通化し、前記流入上流路と前記吐出下流路を一の油路で共通化し、前記オイル流入路に備えられた前記逆止弁を前記基準油圧室に内蔵し、前記バランス弁体は前記基準油圧室と前記制御油圧室間の挿通孔を挿通する構成にして、前記バランス弁体の側部には、Oリングが設けられ、前記開口圧縮ばねが前記バランス弁体を前記基準油圧室側に移動させることにより前記逆止弁を開口する構成にして、更に、前記制御油圧室内に存在する方の前記バランス弁体の端部及びその近傍にはピストンが設けられ、該ピストンに油圧を受けて前記バランス弁体を前記制御油圧室側に移動させる構成にして、前記オイルポンプが加圧動作しているときと停止しているときは、前記制御ソレノイドをAモードとして、前記制御油圧室にオイルを導入して、該オイルの油圧が前記ピストンを前記制御油圧室側に移動させて前記逆止弁が開口するのを抑止し、前記エンジン再始動命令直後は、前記制御ソレノイドをCモードとして前記制御油圧室の高油圧を排除することにより、前記開口圧縮ばねの反発力で前記逆止弁を開口して前記オイル吐出路を開放させることを特徴とする油圧制御装置。
請求項4に記載の油圧制御装置において、前記ピストンに設けられた円筒型中空部は前記開口圧縮ばねの端部を収納し、若しくは、前記ピストンの端部に設けられた小径凸部が前記開口圧縮ばねに挿入されていることを特徴とする油圧制御装置。
請求項4又は請求項5に記載の油圧制御装置において、前記逆止弁は、押戻し弁体と、該押戻し弁体を前記アキュームレータへのオイル流入方向とは逆向きに付勢する圧縮付勢ばねで構成され、一方、前記基準油圧室内に存在する方の前記バランス弁体の端部は突出部として形成されて前記押戻し弁体に当接する構成にして、前記押戻し弁体は、前記突出部よりも高硬度に形成されていることを特徴とする油圧制御装置。
エンジンの回転に伴って動作するオイルポンプ及び該オイルポンプによってオイルを供給される機器とを接続するメイン油路から分岐する分岐路と、該分岐路に接続されたアキュームレータと、を有する油圧制御装置において、制御ソレノイドと、基準油圧室と制御油圧室と、バランス弁体及び該バランス弁体を開口側に付勢する開口圧縮ばねを備えるバランスバルブユニットと、を有し、前記分岐路の内、前記アキュームレータへのオイル流入路には逆流防止の逆止弁が設けられ、前記アキュームレータからのオイル吐出路には前記バランスバルブユニットが設けられてなり、前記制御ソレノイドを操作して、前記制御油圧室に高圧オイルを導入して、該高圧オイルの油圧で前記バランス弁体の開口を抑止することを特徴とする油圧制御方法。
請求項7又は請求項8に記載の油圧制御方法において、前記制御ソレノイドはA路、B路及びC路の3つのオイル入出口を有して、該B路と前記A路間で連通して該B路と前記C路間を遮断するAモードと、該B路と前記C路間で連通して該B路と前記A路間を遮断するCモードを切替えられる電磁制御バルブであって、前記制御ソレノイドのA路と、前記基準油圧室及び、前記オイル流入路の逆止弁の下流側は直接若しくは前記アキュームレータを介して接続され、前記制御油圧室と前記制御ソレノイドのB路が接続される構成にして、前記オイルポンプが加圧動作しているときと停止しているときは、前記制御ソレノイドをAモードとして、前記制御油圧室に高圧オイルを導入して、該高圧オイルの油圧で前記バランス弁体の開口を抑止することで前記オイル吐出路を閉鎖する一方で、前記エンジン再始動命令直後は、前記制御ソレノイドをCモードとして、前記高圧オイルを排出して前記制御油圧室の油圧を低下させることにより、前記開口圧縮ばねの反発力で前記バランス弁体を開口側に位置させて前記オイル吐出路を開放させることを特徴とする油圧制御方法。
請求項9に記載の油圧制御方法において、前記制御ソレノイドを制御するコントローラを有し、該コントローラのメモリに、前記エンジン若しくは前記オイルポンプの動作と停止の状態を記録する現在フラグと過去フラグを設け、該過去フラグは予めビットセットしておき、前記制御ソレノイドは予めAモードにセットされていて、前記エンジン若しくは前記オイルポンプの動作を確認するたびに、該現在フラグを更新するものとし、前記エンジン若しくは前記オイルポンプが動作中の場合は前記現在フラグにビットセットして停止中の場合はビットリセットし、前記過去フラグがビットリセット且つ前記現在フラグがビットセットされていれば、前記制御ソレノイドをCモードに設定して前記吐出路を開放する一方で、前記過去フラグがビットリセット且つ前記現在フラグがビットセットされている状態でなければ、前記制御ソレノイドをAモードに設定して前記吐出路を閉鎖し、再び前記エンジン若しくは前記オイルポンプの動作を確認する前に、現在フラグの内容で過去フラグを更新することを特徴とする油圧制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のエンジン自動停止始動装置は、オイルポンプが停止しても該オイルポンプにオイルが戻らないように逆止弁が設けられているが、AT油圧ユニット(クラッチ用油圧ユニット)を含めた油路の油圧保持が不十分である。そこで、これを補うためにアキュームレータが設けられているが、該アキュームレータと前記油路間に閉鎖弁が無いために蓄圧の効率が悪いという課題がある。
【0007】
また、同文献には前記アキュームレータの代わりにバッテリーの電力で動作する電動オイルポンプを設ける構成も記載されている。しかし、前記オイルポンプに加えて、電動オイルポンプを設けると、装置が大きく重くなるうえに製造コストが増すという課題がある。更に、前記電動オイルポンプを駆動させるため燃費が悪化するという課題もある。
【0008】
特許文献2に記載の車両エンジン再始動の制御装置のアキュームレータと油路の間にはソレノイド式切換弁が設けられている。そこで、オイルポンプ停止時(エンジン停止時)は該切換弁でアキュームレータへの分岐路を閉鎖すれば該アキュームレータに効率的に蓄
圧できる。しかし、この構成でアキュームレータへの流量を増やすには、実効断面積の大きい切換弁が必要となる。このように実効断面積の大きな切換弁をソレノイド式で行うと、大型で高価なソレノイド弁が必要になるという課題がある。特に、大きな蓄圧油量が必要な中型以上の車両では深刻な課題となる。
【0009】
図7は特許文献2に記載されているアキュームレータを使った蓄圧構成の概念図である。オイルポンプからミッションへ向かう油路の途中で分岐してアキュームレータが設けられている。
図7(A)はオイルポンプの定常動作中、すなわちエンジンの回転によりオイルポンプが動作している期間の油圧の状態を表している。アキュームレータへの分岐路にはソレノイドバルブが設けられているが、該バルブは開かれているため、オイルポンプからの油圧がアキュームレータに蓄積される。
【0010】
アイドリングストップによりエンジンが停止すると、オイルポンプも停止し、前記ミッションへの油路の油圧は低下する。しかし、エンジン又はオイルポンプの停止と共に、前記ソレノイドバルブは閉鎖されるので、前記アキュームレータ内には、高油圧のオイルが保持されている。
【0011】
エンジンが再始動すると、前記オイルポンプも再始動し、前記ミッションへ向かう油路の油圧も回復し始める。しかし、前記ミッションを動作させるに足る油圧に至るには数百ミリ秒を要する。そこで、エンジン再始動のタイミングに従って前記ソレノイドバルブを開口して、蓄積されていた高圧オイルを前記ミッションへの油路に供給する。この動作により、前記エンジン始動と同時にクラッチがつながることとなり、前記ミッションの動作が可能となる。
【0012】
このようにソレノイドバルブの開閉操作でアキュームレータのオイルの吐出を制御する方式は、前記アキュームレータ内の全オイルは前記ソレノイドバルブを介して吐出される。したがって、短時間で大量のオイルを吐出する場合には実効断面積の大きなソレノイドバルブを適用しなければならないという課題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的すなわち、解決しようとする技術的課題は、ソレノイド弁の実効断面積を大きくしなくても、アキュームレータへの大容量オイルの蓄圧及び吐出が可能な、油圧制御装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、請求項1の発明を、エンジンの回転に伴って動作するオイルポンプ及び該オイルポンプによってオイルを供給される機器とを接続するメイン油路から分岐する分岐路と、該分岐路に接続されたアキュームレータと、を有する油圧制御装置において、制御ソレノイドと、基準油圧室と制御油圧室と、バランス弁体及び該バランス弁体を開口側に付勢する開口圧縮ばねを備えるバランスバルブユニットと、を有し、前記分岐路の内、前記アキュームレータへのオイル流入路には逆流防止の逆止弁が設けられ、前記アキュームレータからのオイル吐出路には前記バランスバルブユニットが設けられてなり、前記制御ソレノイドを操作して、前記制御油圧室に高圧オイルを導入して、該高圧オイルの油圧で前記バランス弁体の開口を抑止することを特徴とする油圧制御装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0015】
また、請求項2の発明を、請求項1に記載の油圧制御装置において、前記オイルを供給される機器はミッションであることを特徴とする油圧制御装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は請求項2に記載の油圧制御装置において、前記制御ソレノイドはA路、B路及びC路の3つのオイル入出口を有して、該B路と前記A路間で連通して該B路と前記C路間を遮断するAモードと、該B路と前記C路間で連通して該B路と前記A路間を遮断するCモードを切替えられる電磁制御バルブであって、前記制御ソレノイドのA路と、前記基準油圧室及び、前記オイル流入路の逆止弁の下流側は直接若しくは前記アキュームレータを介して接続され、前記制御油圧室と前記制御ソレノイドのB路が接続される構成にして、前記オイルポンプが加圧動作しているときと停止しているときは、前記制御ソレノイドをAモードとして、前記制御油圧室に高圧オイルを導入して、該高圧オイルの油圧で前記バランス弁体の開口を抑止することで前記オイル吐出路を閉鎖する一方で、前記エンジンの再始動命令直後は、前記制御ソレノイドをCモードとして、前記高圧オイルを排出して前記制御油圧室の油圧を低下させることにより、前記開口圧縮ばねの反発力で前記バランス弁体を開口側に位置させて前記オイル吐出路を開放させることを特徴とする油圧制御装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0016】
請求項4の発明を、請求項3に記載の油圧制御装置において、前記オイル流入路は、該オイル流入路間に設けられた前記逆止弁を境として、前記メイン油路寄りを流入上流路と称し、前記アキュームレータ寄りを流入下流路と称し、前記オイル吐出路は、該オイル吐出路間に設けられた前記バランスバルブユニットを境として、前記アキュームレータ寄りを吐出上流路と称し、前記メイン油路寄りを吐出下流路と称し、前記流入下流路と前記吐出上流路を一の油路で共通化し、前記流入上流路と前記吐出下流路を一の油路で共通化し、前記オイル流入路に備えられた前記逆止弁を前記基準油圧室に内蔵し、前記バランス弁体は前記基準油圧室と前記制御油圧室間の挿通孔を挿通する構成にして、前記バランス弁体の側部には、Oリングが設けられ、前記開口圧縮ばねが前記バランス弁体を前記基準油圧室側に移動させることにより前記逆止弁を開口する構成にして、更に、前記制御油圧室内に存在する方の前記バランス弁体の端部及びその近傍にはピストンが設けられ、該ピストンに油圧を受けて前記バランス弁体を前記制御油圧室側に移動させる構成にして、前記オイルポンプが加圧動作しているときと停止しているときは、前記制御ソレノイドをAモードとして、前記制御油圧室にオイルを導入して、該オイルの油圧が前記ピストンを前記制御油圧室側に移動させて前記逆止弁が開口するのを抑止し、前記エンジン再始動命令直後は、前記制御ソレノイドをCモードとして前記制御油圧室の高油圧を排除することにより、前記開口圧縮ばねの反発力で前記逆止弁を開口して前記オイル吐出路を開放させることを特徴とする油圧制御装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0017】
請求項5の発明を、請求項4に記載の油圧制御装置において、前記ピストンに設けられた円筒型中空部は前記開口圧縮ばねの端部を収納し、若しくは、前記ピストンの端部に設けられた小径凸部が前記開口圧縮ばねに挿入されていることを特徴とする油圧制御装置。としたことにより、上記課題を解決した。
【0018】
請求項6の発明を、請求項4又は請求項5に記載の油圧制御装置において、前記逆止弁は、押戻し弁体と、該押戻し弁体を前記アキュームレータへのオイル流入方向とは逆向きに付勢する圧縮付勢ばねで構成され、一方、前記基準油圧室内に存在する方の前記バランス弁体の端部は突出部として形成されて前記押戻し弁体に当接する構成にして、前記押戻し弁体は、前記突出部よりも高硬度に形成されていることを特徴とする油圧制御装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0019】
請求項7の発明を、エンジンの回転に伴って動作するオイルポンプ及び該オイルポンプによってオイルを供給される機器とを接続するメイン油路から分岐する分岐路と、該分岐路に接続されたアキュームレータと、を有する油圧制御装置において、制御ソレノイドと、基準油圧室と制御油圧室と、バランス弁体及び該バランス弁体を開口側に付勢する開口圧縮ばねを備えるバランスバルブユニットと、を有し、前記分岐路の内、前記アキュームレータへのオイル流入路には逆流防止の逆止弁が設けられ、前記アキュームレータからのオイル吐出路には前記バランスバルブユニットが設けられてなり、前記制御ソレノイドを操作して、前記制御油圧室に高圧オイルを導入して、該高圧オイルの油圧で前記バランス弁体の開口を抑止することを特徴とする油圧制御方法としたことにより、上記課題を解決した。
【0020】
請求項8の発明を、請求項7に記載の油圧制御方法において、前記オイルを供給される機器はミッションであることを特徴とする油圧制御方法としたことにより、上記課題を解決した。請求項9の発明を、請求項7又は請求項8に記載の油圧制御方法において、前記制御ソレノイドはA路、B路及びC路の3つのオイル入出口を有して、該B路と前記A路間で連通して該B路と前記C路間を遮断するAモードと、該B路と前記C路間で連通して該B路と前記A路間を遮断するCモードを切替えられる電磁制御バルブであって、前記制御ソレノイドのA路と、前記基準油圧室及び、前記オイル流入路の逆止弁の下流側は直接若しくは前記アキュームレータを介して接続され、前記制御油圧室と前記制御ソレノイドのB路が接続される構成にして、前記オイルポンプが加圧動作しているときと停止しているときは、前記制御ソレノイドをAモードとして、前記制御油圧室に高圧オイルを導入して、該高圧オイルの油圧で前記バランス弁体の開口を抑止することで前記オイル吐出路を閉鎖する一方で、前記エンジン再始動命令直後は、前記制御ソレノイドをCモードとして、前記高圧オイルを排出して前記制御油圧室の油圧を低下させることにより、前記開口圧縮ばねの反発力で前記バランス弁体を開口側に位置させて前記オイル吐出路を開放させることを特徴とする油圧制御方法としたことにより、上記課題を解決した。
【0021】
請求項10の発明を、請求項9に記載の油圧制御方法において、前記制御ソレノイドを制御するコントローラを有し、該コントローラのメモリに、前記エンジン若しくは前記オイルポンプの動作と停止の状態を記録する現在フラグと過去フラグを設け、該過去フラグは予めビットセットしておき、前記制御ソレノイドは予めAモードにセットされていて、前記エンジン若しくは前記オイルポンプの動作を確認するたびに、該現在フラグを更新するものとし、前記エンジン若しくは前記オイルポンプが動作中の場合は前記現在フラグにビットセットして停止中の場合はビットリセットし、前記過去フラグがビットリセット且つ前記現在フラグがビットセットされていれば、前記制御ソレノイドをCモードに設定して前記吐出路を開放する一方で、前記過去フラグがビットリセット且つ前記現在フラグがビットセットされている状態でなければ、前記制御ソレノイドをAモードに設定して前記吐出路を閉鎖し、再び前記エンジン若しくは前記オイルポンプの動作を確認する前に、現在フラグの内容で過去フラグを更新することを特徴とする油圧制御方法としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0022】
請求項1及び請求項2の発明では、前記制御ソレノイドを介して、前記制御油圧室の油圧を制御することで前記バランスバルブユニットを開閉して前記アキュームレータ内のオイル吐出を制御する。したがって、前記アキュームレータ内のオイルを直接ソレノイドバルブで制御するよりも小さな実効断面積のソレノイドバルブを、前記制御ソレノイドとして適用することができる。よって、ソレノイドバルブの小型化によって、油圧制御装置をコンパクト且つ低コストに製造することができる効果がある。請求項3の発明では、前記ソレノイドをAモードとCモードを有する構成とし、該両モードを、前記オイルポンプの動作状態と連動させるという簡単な制御方法で油圧を制御できる効果がある。
【0023】
請求項4の発明では、前記オイル流入路の逆止弁を前記基準油圧室に内蔵したことにより、コンパクトな油圧制御装置を提供できる効果がある。また、前記開口圧縮ばねによって前記バランス弁体を移動させて前記逆止弁を開口させて前記オイル吐出路を開放する構成である。よって、前記アキュームレータ内の油圧が低下しても前記開口圧縮ばねの反発力で安定して、前記吐出路を開口し続けることができる。また、前記オイル吐出路を閉鎖する場合には前記圧縮ばねの反発力を若干弱めるだけのオイルを前記制御油圧室へ導入すればよいので、前記制御ソレノイドが制御するオイル量を更に減じることができる。したがって、前記制御ソレノイドの実効断面積を更に小さくすることができるという効果がある。
【0024】
請求項5の発明では、本発明に係る油圧制御装置の製造工程において、前記開口圧縮ばねの、前記バランス弁体への組み付け能率が上がるという効果がある。すなわち、前記開
口圧縮ばねを前記バランス弁体のピストンにねじ止めや接着等の固着手段を採らなくても、該ピストンに設けられた前記円筒型中空部に前記圧縮ばねをはめ込むだけで組み付けられるという効果がある。若しくは、前記小径凸部を前記開口圧縮ばねに挿入するだけで組み付けられるという効果がある。
【0025】
請求項6の発明では、少なくとも前記バランス弁体の突出部よりも、前記押戻し弁体を高硬度に形成することで、逆止弁のシール性能の耐久性と信頼性を向上させることができる。延いては同油圧制御装置の耐久性と信頼性を向上させる効果がある。また、請求項7及び請求項8の発明では、前記制御油圧室に高圧オイルを導入及び排出を行うことで、前記アキュームレータに蓄圧された大容量高圧オイルを制御できる効果がある。
【0026】
請求項9の発明では、前記制御ソレノイドのモードを切り替えるだけで、前記アキュームレータに蓄圧された大容量高圧オイルを制御できる効果がある。請求項10の発明では、前記エンジン若しくは前記オイルポンプの動作と停止の状態を記録する現在フラグと過去フラグを管理することにより前記制御ソレノイドのモードを適切に切り替え制御できるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
図1〜
図6に基づいて、本発明に係る油圧制御装置の例として実施形態を説明する。
図2は本発明の油圧制御装置のブロック図である。本発明の油圧制御装置は、エンジン81の回転によって動作するオイルポンプ1と、該オイルポンプが作り出す油圧が掛かったオイルをミッション82に伝達するメイン油路11と、前記オイルポンプ1とミッション82の間の分岐路12の先に設けられた蓄圧部2と、該蓄圧部2に含まれる制御ソレノイド21を制御するコントローラ3を有してなる。前記蓄圧部2にはアキュームレータ22も含まれる。
【0029】
コントローラ3にはCPU31と、メモリ32及びI/Oインタフェース33が含まれる。これらの要素はデータバスで電気信号的に接続されている。メモリ32はCPUに演算を行わせるためのプラグロムを保持するプログラム領域と、演算処理に必要な作業領域を有している。I/Oインタフェース33は、少なくとも、エンジン81若しくはオイル
ポンプ1の定常動作状態とアイドリングストップ状態及び再始動のタイミングを表すエンジン81若しくはオイルポンプ1の状態信号811をCPU31に入力し、制御ソレノイド21を制御する制御信号331を出力するためのインタフェースである。また、前記制御ソレノイド21は、電磁石によりバルブを開閉制御する電磁制御バルブである。
【0030】
図1は本発明の油圧制御装置の第1実施形態であって、(A)はその構成及びオイルポンプの定常動作中の油圧の状態を示す図、(B)は同構成とアイドリングストップ時の油圧の状態を示す図、(C)は同構成とエンジンおよびエンジン再始動命令直後の油圧の状態を示す図である。ただし、エンジン81とコントローラ3の表記は省略している。
【0031】
以後、説明において、油路が接続しているとは、油路としての管が接合されているという意味で、連通しているとは、弁体等で流通が遮られることなしにオイルが連なっている状態を意味するものとする。また、アキュームレータ22、メイン油路11、分岐路12、流入路121、吐出路122、基準油圧室41及び制御油圧室42において、斜線で示した部分は、オイルポンプ1若しくはアキュームレータ22に蓄圧されているオイルによって、高油圧を保持している領域である。高油圧は概ね圧力Pであるとする。また、低油圧は概ね圧力P0であるとする。
【0032】
図1(A)〜(C)に基づいて、本発明の油圧制御装置の第1実施形態の構成を説明する。同油圧制御装置は、エンジン81の回転に伴って動作するオイルポンプ1と、該オイルポンプ1とミッション82を接続するメイン油路11と、該メイン油路11から分岐する分岐路12に接続されたアキュームレータ22を有する油圧制御装置である。分岐路12は流入路121(流入上流路121a、流入下流路121b)と、吐出路122(吐出上流路122a、吐出下流路122b)で構成される。蓄圧部2は、前記アキュームレータ22と、逆止弁5を備えた前記流入路121と、バランスバルブユニット4(以後、BBU4と表記する。)を備えた前記吐出路122と、制御ソレノイド21で構成される。同図において、斜線を付した油路の圧力は高圧力で、概ね圧力Pであるとする。また、斜線を付していない油路は低圧力で概ね圧力P0であるとする。
【0033】
逆止弁5はオイルの逆流を防止する弁である。例えば、オイル流れの順方向の逆向きに、圧縮付勢ばね52で付勢された押戻し弁体51(
図1(B)参照)で流路を閉鎖する構成とすることができる。この構成にして、逆流オイルに対しては前記押戻し弁体51が流路を塞いで逆流を防止する。順方向のオイルについては、押戻し弁体51の下流側の油圧と、圧縮付勢ばね52の反発力(gとする。)の合計よりも強い力を発生する油圧が掛かっていれば、流路を確保することができる(
図1(B)参照)。
図1では、前記押戻し弁体51を球体で表しているがこれに限るものではない。
【0034】
同油圧制御装置の例では、流入路121と吐出路122が合流してからアキュームレータ22に接続している。更に詳しくは、流入下流路121bと吐出上流路122aが合流した状態でアキュームレータ22に接続している。また、流入路121はオイル流入路とも称し、吐出路122はオイル吐出路と称することもある。これらの流入下流路121bと吐出上流路122aはそれぞれ別々にアキュームレータ22に接続してもよい。オイルポンプ1で加圧されたオイルはメイン油路11と、流入路121を経由してアキュームレータ22に流入する。このときの圧力でピストン222は前記アキュームレータ22の容積を拡大する方向へ移動し、蓄圧用圧縮ばね221を押し縮める。該蓄圧用圧縮ばね221の反発力としてアキュームレータ22に蓄圧される。
【0035】
アキュームレータ22とメイン油路11の間には流入路121と吐出路122が存在する。流入路121の間に設けられた逆止弁5を境として、アキュームレータ22寄りを流入下流路121b、メイン油路11寄りを流入上流路121a(
図1(B)参照)と命名
する。また、吐出路122は間に設けられたBBU4を境として、アキュームレータ22寄りを吐出上流路122a、メイン油路11寄りを吐出下流路122bと命名する。
【0036】
BBU4は基準油圧室41と制御油圧室42を有してバランス弁体43を内蔵している。そして、制御ソレノイド21にはオイルの出入り口たるA路、B路及びC路を有していて、コントローラ3の制御により、B路とA路を連通してB路とC路を遮断するAモードと、B路とA路を遮断してB路とC路を連通するCモードの、少なくも2種類のモードに切り替えることができる。コントローラ3は制御ソレノイド21を操作して、制御油圧室42の油圧を増減させる。例えば、制御ソレノイド21をAモードとして、前記B路とA路を連通して前記B路とC路を遮断して、制御油圧室42に高圧オイルを導入することができる。
【0037】
また、制御ソレノイド21をCモードとして、前記B路とC路を連通して前記B路とA路を遮断して、制御油圧室42内の高圧オイルを排出することができる。バランス弁体43は開口圧縮ばね433cでBBU4を開口する位置に移動するように付勢されている。そして、前記高圧オイルであって、制御油圧室42内に導入された高圧オイルはバランス弁体43を閉鎖側、すなわち、基準油圧室41側へ移動させる作用をする。これはバランス弁体43の開口を抑止することになる。
【0038】
具体的には、アキュームレータ22、逆止弁5の下流側、基準油圧室41及び制御ソレノイド21のA路が接続している。そして、制御油圧室42は制御ソレノイド21のB路に接続している。また、制御ソレノイド21のC路の先はオイル戻り83に通じている。オイルポンプ1の上流側、ミッション82からの戻り油路もオイル戻り83に通じている。これら、オイル戻り83に通じている油路には、オイルポンプ1によって加圧された油圧は存在しないと見做すことができる。該オイル戻り83に通じている油路にオイルが存在していたとしてもその圧力はP0と低圧力となっている。
【0039】
以上の構成にすると、基準油圧室41の油圧は定常的には、アキュームレータ22の油圧に一致する。一方、制御油圧室42の油圧は制御ソレノイド21の状態をAモード若しくはCモードに選択することにより制御することができる。まず、制御ソレノイド21をAモードとすると、前記A路と前記B路を通じて原理的には、制御油圧室42の油圧は基準油圧室41の油圧と同等になる。一方、制御ソレノイド21をCモードとすると、前記B路と前記A路は遮断され、前記B路と前記C路が連通されることにより、制御油圧室42の油圧は排出され、基準油圧室41に対して低油圧となる。このように制御ソレノイド21を操作することによって、制御油圧室42の油圧を、高圧にしたり低圧にしたりすることができる。例えば、高油圧Pにしたり、低油圧P0にしたりすることができる。
【0040】
[第1実施形態:オイルポンプの定常動作中]
まず、オイルポンプ1の定常動作中、すなわちオイルポンプ1が稼働してオイルに加圧している時の動作を
図1(A)に基づいて説明する。オイルポンプ1の定常動作中は制御ソレノイド21をAモードとする。この制御により、制御油圧室42にも高圧オイルが導入されて、該制御油圧室42の油圧は基準油圧室41の油圧とほぼ同油圧となる。バランス弁体43は基準油圧室41と制御油圧室42間を移動可能に挿通しているが、Oリング432でお互いのオイルが混合しないようにシールされている。
【0041】
基準油圧室41と制御油圧室42の油圧は共にPである。バランス弁体43を基準油圧室41側へ移動させる力は、制御油圧室42の油圧Pに由来して面431bに係る力Fbである。この面431bの実効断面積をSbとすると、Fb=P×Sbである。一方、バランス弁体43を逆に移動させる力は、開口圧縮ばね433cの反発力Gと、基準油圧室41の油圧Pに由来して面431aに係る力Faである。面431aの実行断面積をSa
とすると、Fa=P×Saである。このバランス弁体43を制御油圧室側へ移動させる力はGとFaの合力であって、G+Fa=G+P×Saである。
【0042】
図1(A)のように、開口圧縮ばね433cを押し縮めて、バランス弁体43が基準油圧室41側に移動させられている状態を維持するには、G+P×Sa<P×Sbなる関係を満たす必要がある。この式から、面431bの実効断面積Sbは、面431aの実行断面積Saよりも十分に大きな断面積を有している必要がある。すなわち、反発力Gも含めて抗し得るように、SbはSaよりも十分に大きく構成されている必要がある。この条件が満たされていれば、Fb−Fa−G=P×(Sb−Sa)−Gなる力で、バランス弁体43はBBU4を閉鎖する位置に留まることができて、その結果、吐出路122の閉鎖が維持される。
【0043】
一方、オイルポンプ1で加圧されたオイルが逆止弁5の球状の押戻し弁体51を押し移動させるので、流入路121は流入面積が確保されている。以上の構成にして、アキュームレータ22には上限となる圧力までオイルが流入して蓄圧される。尚、制御ソレノイド21のCに×印されているのは、C路はB路から遮断されていることを表している。
【0044】
[第1実施形態:アイドリングストップ時]
次に、アイドリングストップ時の動作を
図1(B)に基づいて説明する。エンジンが一時的に停止するとオイルポンプ1の加圧動作も停止するので、原理的には、メイン油路11内の油圧は大気圧に向けて低下していく。逆止弁5は前記圧縮付勢ばね52の反発力とアキュームレータ22内の圧力に伴う力が作用して流入路121を閉鎖している。また、制御ソレノイド21の制御は、オイルポンプの定常動作中と同一であって、A路とB路が連通して、C路は遮断されたままである。これにより、制御油圧室42の油圧が基準油圧室41と同等の油圧に保持され、上記と同様のバランス弁体43の動作によって、吐出路122の閉鎖状態が維持される。その結果、アキュームレータ22には、オイルポンプの定常動作中に蓄圧されたオイルが圧力と共に保持される。尚、制御ソレノイド21のCに×印されているのは、C路はB路から遮断されていることを表している。
【0045】
[第1実施形態:エンジンへの再始動命令直後]
次にエンジン81への再始動命令直後の動作を
図1(C)で説明する。エンジン再始動に伴ってオイルポンプ1も再始動するが、始動命令から数100ミリ秒オーダーの直後では、まだ、メイン油路11の油圧が上昇していない。このとき、コントローラ3で制御ソレノイド21をCモードとして、B路をA路から遮断して、B路とC路が連通する。その結果、制御油圧室42の高圧オイルがオイル戻り83へ排出される。
【0046】
そうすると、前述のバランス弁体43に作用する力のうち、GとFaが優勢になって、バランス弁体43は制御油圧室42側へ移動し、BBU4は開口する。この動作によって、吐出下流路122bが開放される。この結果、開放された吐出路122を通じて、アキュームレータ22に蓄積されていた高油圧オイルがメイン油路11に吐出され、オイルポンプ1による加圧の不足を補う。尚、制御ソレノイド21のAに×印されているのは、A路はB路から遮断されていることを表している。
【0047】
[第1実施形態:再びオイルポンプの定常動作中]
以上は、エンジン81への再始動命令から数100ミリ秒の状況であって、その後はオイルポンプ1による加圧オイルが供給され、オイルポンプ1の定常動作中の状態に戻る。このとき、コントローラ3の制御により、制御ソレノイド21はAモードとなる。すなわち、B路はC路を遮断して、A路と連通される。その結果、バランス弁体43を基準油圧室41側へ移動させる力Fbが優勢になり、バランス弁体43はBBU4を閉鎖する。これにより、吐出下流路122bが閉鎖される。そうすると、
図1(A)に示す、オイルポ
ンプ1の定常動作中の状態に戻り、オイルポンプ1で加圧されたオイルが、流入路121を通してアキュームレータ22に蓄積される。
【0048】
[第1実施形態:コントローラによる処理フロー]
次に、以上の動作を為すためのコントローラ3の処理を説明する。上述のように、コントローラ3はCPU31を有していて、該CPU31が
図4に示す処理フローに従って、制御ソレノイド21を制御する。自動車の電気系統のスイッチが接続されると、コントローラ3も稼動を開始する。電源投入時の誤作動を防止するために、エンジン又はポンプ動作に関する“過去フラグ”をビットセットする(Step1)。“過去フラグ”とは、エンジンが動作しているか停止しているかの状態を記録するフラグであって、少なくともビットセットとリセットの1ビットをメモリ32の作業領域に確保しておけばよい。
【0049】
“過去フラグ”がビットセットされているとは、先に、エンジン81若しくはオイルポンプ1の動作状況を確認したときに動作していたことを示すフラグである。しかし、ここでは初期設定なので、便宜上、ビットセットしていることとする。そして、制御ソレノイド21をAモードとする。すなわち、B路とA路を連通し、B路とC路を遮断する(Step2)。これは、制御油圧室42の油圧を基準油圧室41の油圧と一致させる操作である。その他、必要な初期設定を行う(Step3)。
【0050】
コントローラ電源のチェックをする(Step4)。その結果電源が切られていたら(OFFだったら)、‘真’として、終了処理に分岐する(Step5)。電源が切られていなければ、‘偽’としてStep6以降の処理をする。
【0051】
エンジン状態信号811を介してエンジン81が動作しているか停止しているかをチェックする。動作していれば、エンジン動作に関する“現在フラグ”をビットセットし、停止していればリセットする。“現在フラグ”も、前記“過去フラグ”同様に、少なくともセットとリセットの1ビットをメモリ32の作業領域に確保しておけばよい(Step6)。続いて、前記“過去フラグ”がセットであるかリセットであるかをチェックする(Step7)。
【0052】
“過去フラグ”と“現在フラグ”を参照して、「過去フラグがリセット」かつ、「現在フラグがセット」であるときは、‘真’としてStep9に進み、それ以外のときは‘偽’としてStep10に進む(Step8)。Step8は、エンジン再始動命令直後の状態を検出する処理例である。
【0053】
Step8の条件分岐で‘真’の場合は、エンジン再始動命令直後の状態であるので、Step9に進んで、制御ソレノイド21をCモードとする。すなわち、B路をA路から遮断し、B路とC路を連通する。これは制御油圧室42の高圧オイルを、C路を通じて排出することとなり、制御油圧室42の油圧が低下するので、バランス弁体43は吐出路122の閉鎖を解除する。その結果、アキュームレータ22に蓄圧されていた高圧オイルがメイン油路11に吐出される。
【0054】
一方、Step8の条件分岐で‘偽’の場合は、定常動作中又はアイドリングストップ時であるので、Step10に進んで、制御ソレノイド21のAモードを維持する。すなわち、B路をC路から遮断し、B路とA路を連通する。ここでの動作により、吐出路122の閉鎖を維持することとなる。
【0055】
オイルポンプ1の定常動作中とアイドリングストップ時は共にStep10の処理となる。すなわち、吐出路122は閉鎖状態を維持し、流入路121は逆止弁5で制御される。オイルポンプ1の定常動作中はオイルポンプ1の動作によりメイン油路11の油圧に
う力で逆止弁5の押戻し弁体51を下流側へ移動させて、アキュームレータ22へオイルが流入する。アイドリングストップ時はオイルポンプ1の停止によりメイン油路11及び流入上流路121aの油圧が低下するので、流入路121も閉鎖されて、アキュームレータ22内の蓄圧とオイルがそのまま保持される。
【0056】
Step9又はStep10を実行した後はStep11で“現在フラグ”の値で、“過去フラグ”を上書き更新して、Step4のコントローラ電源チェックに戻る。以後、コントローラ3の電源が切られるまで、Step4〜Step11を繰り返す。以上、
図4に示したフロー図は基本的な処理を示したもので、Step4〜Step11の間に、例えば、アキュームレータ22に蓄圧されたオイルの吐出が完了するまでの時間を確保するなど、時間を調節するための待ち時間処理を入れることも可能である。
【0057】
図3に、エンジンの動作状態、制御ソレノイド21のモード及び油路の連通状態、基準油圧室41と制御油圧室42の両油圧室の油圧差及びBBU4による吐出路122の閉鎖・開放状態の関係をまとめる。まず、左欄のオイルポンプの動作状態は、オイルポンプ1の定常動作中、アイドリングストップ時及び、エンジン再始動命令直後の3通りである。
【0058】
このうち、オイルポンプ1の定常動作中とアイドリングストップ時における制御ソレノイド21は、コントローラ3によって、Aモードとなって、B路とA路が連通されてB路とC路が遮断される。これにより、基準油圧室41と制御油圧室42の油圧差はゼロ若しくは小さくなる。そうすると前述のように、バランス弁体43を閉鎖側に移動させる力Fbが優勢になって、吐出路122は閉鎖される。これはバランス弁体43の開口を抑止することになる。
【0059】
エンジン再始動命令直後は、コントローラ3によって、制御ソレノイド21はCモードとなる。すなわち、B路とA路が遮断されて、B路とC路が連通される。これにより制御油圧室42の油圧は低下し、基準油圧室41との油圧差は大きくなる。そうすると、開口圧縮ばね433cの反発力Gにより、バランス弁体43は開口状態となる。その結果、吐出路122は開放される。
【0060】
第1実施形態に係るBBU4は基準油圧室41と制御油圧室42の油圧差に伴って生じる力の差および、開口圧縮ばね433cの反発力Gによってバランス弁体43を移動させて、吐出油路122の閉鎖と開放を行うものである。例えば、制御油圧室42の容量をアキュームレータ22の容量の1/5とする。そうすると、アキュームレータ22に蓄圧の高圧オイルを吐出するBBU4の実効断面積の1/5の実効断面積の電磁バルブで制御ソレノイド21を構成することができる。つまり、小断面積のソレノイド(制御ソレノイド21)を使って、実効的に5倍の断面積のバルブを制御できる効果がある。
【0061】
[第2実施形態]
次に
図5に基づいて、本発明の油圧制御装置に係る第2実施形態を説明する。ミッション82、オイル戻り83及びオイルポンプ1の形態は第1実施形態と共通なので図面上の表記と説明は省略する。同油圧制御装置では、流入路121の下流である流入下流路121bと吐出路122の上流である吐出上流路122aを一の油路で共通化し、流入路121の上流である流入上流路121aと吐出路122の下流である吐出下流路122bを一の油路で共通化している。
【0062】
逆止弁5を備えた流入路121は基準油圧室41D内に組み込まれている。そして、バランス弁体43Dは基準油圧室41Dと制御油圧室42Dの間の挿通孔46Dを挿通する構成である。バランス弁体43Dの側部には、Oリング432が設けられて基準油圧室41D内のオイルと制御油圧室42Dのオイルが混合しないように隔離されている。
【0063】
流入下流路121b(吐出上流路122a)はアキュームレータ22、基準油圧室41Dおよび制御ソレノイド21のA路と接続している。また、制御油圧室42Dは制御ソレノイド21のB路と接続している。ここで、制御油圧室42Dにおいて、流入した高圧オイルが制御油圧室側断面431bに作用することによって、バランス弁体43Dを制御油圧室42D側に移動させることができるような位置に、前記B路と結ぶ油路は、取り付けられている。
【0064】
また、バランス弁体43Dの端部であって、基準油圧室41D側の端部は細長い円柱状の突出部として形成されていて、押戻し弁体51に当接するようになっている。一方、バランス弁体43Dの制御油圧室42D側の端部にはピストン434Dが設けられていて、該ピストン434Dは制御油圧室42D内にあって、該制御油圧室42D内のオイル油圧を受ける構成である。
【0065】
そして、前記ピストン434Dと制御油圧室42Dの内壁の間には開口圧縮ばね433cが設けられている。該開口圧縮ばね433cの反発力Gで、バランス弁体43Dを基準油圧室41D側に移動させて、逆止弁5の押戻し弁体51を開口する動作をする。該逆止弁5の押戻し弁体51が開口されることで、吐出路122(122aと122b)を開放して、アキュームレータ22に蓄圧されているオイルをメイン油路11に吐出することができる。
【0066】
逆止弁5は、基準油圧室41D内の油圧P及び、押戻し弁体51を付勢する圧縮付勢ばね52の反発力gによって閉鎖される側に付勢されている。該押戻し弁体51に圧力の係る面を基準油圧室側断面431aとし、実効断面積Saとする。そうすると、逆止弁5が閉鎖される力は油圧Pに基づく力Faと前記反発力gである。すなわち、Fa+g=P×Sa+gとなる。
【0067】
[第2実施形態:オイルポンプの定常動作中]
図5(A)は、オイルポンプ1の定常動作中の状態である。このとき、制御ソレノイド21は、Aモードになっている。そうすると、B路とA路が連通してC路が遮断されているので、制御油圧室42Dにも基準油圧室41Dとほぼ同等な油圧Pのオイルが蓄えられている。このオイルによる油圧は、前記開口圧縮ばね433cの反発力Gに抗して、バランス弁体43Dを制御油圧室42D側へ移動させる力として作用する。
【0068】
一方、オイルポンプ1が定常動作することで流入上流路121aに対して十分に加圧されたオイルが作用すると、逆止弁5が開口されて加圧オイルが基準油圧室41Dに流入し、流入下流路121b(吐出上流路122aを兼ねている。)を通じて加圧オイルがアキュームレータ22に蓄積される。尚、制御ソレノイド21のCに×印されているのは、C路はB路から遮断されていることを表している。
【0069】
[第2実施形態:アイドリングストップ時]
次に、オイルポンプ1が、エンジンの一時停止に伴って停止するときの状態を
図5(B)で説明する。制御ソレノイド21は引き続きAモードであって、制御油圧室42Dに油圧Pのオイルが蓄積されている。該油圧Pが作用する制御油圧室側断面431bの実効断面積をSbとすると、それは、バランス弁体43Dを制御油圧室42D側へ移動させようとする力であって、Fb=P×Sbである。
【0070】
この力が、前記開口圧縮ばね433cの反発力Gに抗して、逆止弁5の開口を防いでおり、逆止弁5の閉鎖が維持されている。これにより、オイルポンプ1が停止してメイン油路11の油圧が低下しても、アキュームレータ22へ蓄圧されたオイルは保持される。尚
、前記Fbは前記Gよりも大きな力である必要はなく、Gを減じて、バランス弁体43Dを基準油圧室41D側へ移動できなくすれば十分である。
【0071】
この蓄圧保持の動作を実現するためのSbの条件式は次のように算出される。すなわち、左辺(逆止弁5を閉鎖しようとする力)=P×Sa+gと、右辺(開口しようとする力−減殺力)=G−P×Sbにおいて、開口を抑止できる条件は、左辺>右辺であり、
P×Sa+g > G−P×Sb となる。尚、制御ソレノイド21のCに×印されているのは、C路はB路から遮断されていることを表している。
【0072】
[第2実施形態:エンジンへの再始動命令直後]
図5(C)は同油圧制御装置において、エンジン81への再始動命令直後の動作を示している。ここでは、制御ソレノイド21はCモードに切り替えられている。すなわち、B路とA路は遮断され、該B路とC路が連通される。その結果、制御油圧室42Dに蓄圧されていた高圧オイルがB路とC路を通じてオイル戻り83へ排出される。これにより、制御油圧室42Dの油圧はP0と低下する。これに伴って、バランス弁体43Dを制御油圧室42D側へ移動させる力であって油圧に起因する力Fbは、P×SbからP0×Sbに著しく低下し、逆にバランス弁体43Dを基準油圧室41D側へ移動させる力Gが支配的となる。
【0073】
そうすると、開口圧縮ばね433cの反発力Gが逆止弁5を開口し、すなわち、吐出路122(122aと122b)が開放される。該吐出路122の開放により、アキュームレータ22に蓄圧されていたオイルがメイン油路11に吐出し、エンジン81への再始動命令直後の加圧不足を補う。尚、制御ソレノイド21のAに×印されているのは、A路はB路から遮断されていることを表している。
【0074】
このような条件下で開口圧縮ばね433cの反発力Gにより逆止弁5を開口するには、G>P×Sa+g+P0×Sb …(1)
なる条件式を満たしている必要がある。一方で、制御油圧室42Dの高油圧Pが導入されているときは、
G<P×Sa+g+P×Sb …(2)
なる条件式を満たして、逆止弁5の開口が抑止されていなければならない。この条件式(1)と条件式(2)を満たす、P、P0、Sa、Sb、g及びGが設定されればよい。この条件は、PとP0の差をある程度設けた上で、Sbを大きくすると、Gを選択する余地が増し、Gを選びやすくなる。
【0075】
ところで、制御油圧室側断面431bの実効断面積Sbを大きくすることは、制御油圧室42Dの容積を大きくすることになる。該制御油圧室42Dの容積を大きくすると、該制御油圧室42D内の高圧オイルを排出するために、制御ソレノイド21のB路とC路の実効断面積を大きくしなければならない。そうすると、前記制御ソレノイド21のバルブの実効断面積を小さくできるという本発明の効果が減少してしまう。そこで、Sbは、条件式(1)と(2)を満たすGを選択できる限りは小さい値になるように設定した方が良い。
【0076】
本発明の油圧制御装置に係る第2実施形態では、流入路121の逆止弁5を基準油圧室41Dに内蔵したことにより、コンパクトな油圧制御装置を提供できる効果がある。また、開口圧縮ばね433cによってバランス弁体43Dを移動させて逆止弁5を開口して吐出路122を開放する構成である。よって、吐出路122を閉鎖する場合には、前記開口圧縮ばね433cの反発力Gを若干弱めるだけの、最小限の高圧オイルを制御油圧室42Dへ導入すればよい。したがって、制御ソレノイド21が制御するオイル量を更に減じることができて、制御ソレノイド21の実効断面積をさらに小さくすることができるという効果がある。
【0077】
同油圧制御装置において、アキュームレータ22に蓄圧されたオイルが不用意にメイン油路11側に漏れないようにシール(密封)しているのは押戻し弁体51である。そして、逆止弁5の開口にあたり、バランス弁体43Dの突出部が前記該押戻し弁体51に当接して開口するものである。ここで、押戻し弁体51にバランス弁体43Dによる打撃痕などが付くとオイルのシールを確実にすることができなくなる。そこで少なくとも前記バランス弁体43Dの突出部よりも、前記押戻し弁体51を高硬度に形成することで、逆止弁5のシール性能の耐久性と信頼性を向上させることができる。延いては同油圧制御装置の耐久性と信頼性を向上させる効果がある。
【0078】
[第3実施形態]
次に
図6に基づいて、本発明の油圧制御装置に係る第3実施形態の構成を説明する。ミッション82、オイル戻り83及びオイルポンプ1の形態は第1実施形態と第2実施形態に共通なので図面上の表記と説明は省略する。同油圧制御装置は、基準油圧室41Eと、制御油圧室42Eと、制御ソレノイド21と、アキュームレータ22及び、これらを接続する油路の構成は前記第2実施形態と共通している。
【0079】
また、基準油圧室41Eと、制御油圧室42Eおよびバランス弁体43Eの構成も前記第2実施形態と共通している。すなわち、逆止弁5を備えた流入路121の部分は基準油圧室41E内に組み込まれている。そして、バランス弁体43Eは基準油圧室41Eと制御油圧室42Eの間の挿通孔46Eを挿通する構成である。バランス弁体43Eの側部には、Oリング432が設けられて基準油圧室41E内のオイルと制御油圧室42Eのオイルが混合しないように隔離されている。
【0080】
更に、バランス弁体43Eの端部であって、基準油圧室41E側の端部は細長い円柱状の突出部として形成されていて、押戻し弁体51に当接するようになっている。バランス弁体43Eの、制御油圧室42E側の端部にはピストン434Eが設けられている。該ピストン434Eは制御油圧室42E内にあって、該制御油圧室42E内の油圧を受ける構成である。そして、前記ピストン434Eには円筒型中空部434aが設けられ、その内部に開口圧縮ばね433cが嵌め込まれている。
【0081】
該開口圧縮ばね433cの他の一端は制御油圧室42Eの内壁に当接している。この構成にして、前記開口圧縮ばね433cが反発力Gを発揮することで、バランス弁体43Eが基準油圧室41Eに内蔵の逆止弁5を開口する動作をする。該逆止弁5の押戻し弁体51が開口されることで、吐出路122(流入路121を兼ねる。)を開放して、アキュームレータ22に蓄圧されているオイルをメイン油路11に吐出することができる。
【0082】
ここで、逆止弁5を開口するのに必要な力は第2実施形態で説明した通りである。すなわち、逆止弁5は、基準油圧室41E内の油圧P及び、押戻し弁体51を付勢する圧縮付勢ばね52の反発力gによって、閉鎖側に付勢されている。該押戻し弁体51に圧力の係る面を基準油圧室側断面431aとし、実効断面積Saとする。そうすると、逆止弁5が閉鎖される力は油圧に基づく力Faと前記反発力gである。
【0083】
すなわち、Fa+g=P×Sa+gとなる。更に、制御油圧室42E内の油圧がP0に低下したとしても、P0×Sbも逆止弁5を閉鎖する力として作用する。したがって、これらの力に抗して開口するには、前記開口圧縮ばね433cの反発力Gは、G>P×Sa+g+P0×Sbなる条件式を満たす必要がある。要するに条件式(1)と(2)を満たせばよい。
【0084】
[第3実施形態:オイルポンプの定常動作中]
図6(A)は、オイルポンプ1の定常動作中の状態である。このとき、制御ソレノイド21は、Aモードになっている。そうすると、B路とA路が連通してC路が遮断されているので、制御油圧室42Eにも基準油圧室41Eとほぼ同等な油圧Pのオイルが蓄えられている。このオイルによる油圧は、前記開口圧縮ばね433cの反発力Gに抗して、バランス弁体43Eを制御油圧室42E側に移動させる力として作用する。一方、オイルポンプ1が定常動作することで流入上流路121aに対して十分に加圧されたオイルが作用すると、逆止弁5が開口されて加圧オイルが流入し、流入下流路121b(吐出上流路122aを兼ねる。)を通じて加圧オイルがアキュームレータ22に蓄積される。尚、制御ソレノイド21のCに×印されているのは、C路はB路から遮断されていることを表している。
【0085】
[第3実施形態:アイドリングストップ時]
次に、オイルポンプ1が、エンジンの一時停止に伴って停止するときの状態を
図6(B)で説明する。制御ソレノイド21は引き続きAモードであって、制御油圧室42Eに油圧Pのオイルが蓄積されている。該油圧Pが作用する制御油圧室側断面431bの実効断面積をSbとすると、該油圧Pに起因する力はバランス弁体43Eを制御油圧室42E側へ移動させる力であって、Fb=P×Sbである。
【0086】
この力が、前記開口圧縮ばね433cの反発力Gに抗して、逆止弁5の開口を防いでおり、逆止弁5の閉鎖が維持されている。これにより、オイルポンプ1が停止してメイン油路11の油圧が低下しても、アキュームレータ22へ蓄圧されたオイルは保持される。尚、前記Fbは前記Gよりも大きな力である必要はなく、Gを減じて、バランス弁体43Eを基準油圧室41E側へ移動できなくすれば十分である。
【0087】
[第3実施形態:エンジンへの再始動命令直後]
図6(C)は同油圧制御装置において、エンジン81への再始動命令直後の動作を示している。ここでは、制御ソレノイド21はCモードに切り替えられている。すなわち、B路とA路は遮断され、該B路とC路が連通される。その結果、制御油圧室42Eに蓄圧されていた高圧オイルがB路とC路を通じてオイル戻り83に排出される。これにより、制御油圧室42Eの油圧はP0と低下する。これに伴って、バランス弁体43Eを制御油圧室42E側へ移動させる力であって油圧に起因する力Fbは、P×SbからP0×Sbに著しく低下し、逆に基準油圧室41E側へ移動させる力Gが支配的となる。
【0088】
開口圧縮ばね433cの反発力Gは、G>=P×Sa+g+P0×Sbなる条件式を満たしていて、逆止弁5を開口することができる。逆止弁5が開口することで、吐出路122(122aと122b)が開放され、アキュームレータ22に蓄圧されていたオイルがメイン油路11に吐出し、エンジン81への再始動命令直後の加圧不足を補う。尚、制御ソレノイド21のAに×印されているのは、A路はB路から遮断されていることを表している。
【0089】
[数値例]
同油圧制御装置において、例えば、圧縮付勢ばね52の反発力g=5(N)、Sa=55(mm2)、高油圧P=0.8(N/mm2)、低油圧P0=0.1(N/mm2)、開口圧縮ばね433cの反発力G=80(N)、Sb=75(mm2)として、定常動作中(
図6(A))と、アイドリングストップ時(
図6(B))と、エンジン81への再始動命令直後(
図6(C))の動作を説明する。
【0090】
[数値例:オイルポンプ1の定常動作中]
オイルポンプ1の定常動作中は次のようになる。逆止弁5を閉鎖する力は圧縮付勢ばね
52の反発力gであってg=5(N)である。一方、オイルポンプ1が加圧することで発生する高圧オイルの油圧はP=0.8(N/mm2)超の流入油圧であって、例えば、該流入油圧は1.0(N/mm2)であるとする。そうすると、逆止弁5の押戻し弁体51にかかる該流入油圧に由来する力は、1.0(N/mm2)×Sa=1.0(N/mm2)×55(mm2)=55(N)である。この流入油圧に由来する力55(N)は、逆止弁5を閉鎖する力である前記5(N)にやすやす打ち勝って、これを開口し、アキュームレータ22に高圧オイルが蓄圧される。
【0091】
やがて、アキュームレータ22内の油圧がP=0.8(N/mm2)まで上がると、逆止弁5を閉鎖する力は、圧縮付勢ばね52の反発力gに加えて、流入下流路121bの油圧Pに伴って押戻し弁体51にかかる力も強くなってくる。これは、P×Sa=0.8(N/mm2)×55(mm2)=44(N)である。圧縮付勢ばね52の反発力g=5(N)も加えると、49(N)となる。流入圧力55(N)に対して、逆止弁5を閉鎖しようとする力49(N)というように、両者の差が少なくなってくると、次第に流入量は減ってくる。しかし、結果的に、アキュームレータ22には油圧P=0.8(N/mm2)のオイルが蓄圧される。
【0092】
[数値例:アイドリングストップ時]
次に、アイドリングストップ時、すなわち、オイルポンプ1による加圧動作が停止した状態を説明する。逆止弁5を閉鎖しようとする力はP×Sa+g=49(N)である。一方、バランス弁体43Eを基準油圧室41E側に移動させて、逆止弁5を開口しようとする力は開口圧縮ばね433cの反発力G=80(N)である。しかし、バランス弁体43Eの制御油圧室側断面431bに作用する油圧に由来する力が前記Gを減殺している。
【0093】
制御油圧室側断面431bには油圧P=0.8(N/mm2)が作用し、その実効断面積はSb=75(mm2)である。よって、前記減殺する力は、P×Sb=0.8(N/mm2)×75(mm2)=60(N)である。この減殺分を考慮すると、逆止弁5を開口しようとする力は80−60=20(N)である。これは、逆止弁5を閉鎖しようとする力49(N)よりも小さいので、該逆止弁5は閉鎖されたままである。したがって、アキュームレータ22の蓄圧オイルはそのまま保持される。
【0094】
[数値例:エンジン81への再始動命令直後]
次にエンジン81への再始動命令直後の動作を説明する。制御油圧室42Eの高圧オイルは排出され、低油圧P0に由来する力が制御油圧室側断面431bにかかることとなる。この力は、P0×Sb=0.1(N/mm2)×75(mm2)=7.5(N)である。このようにバランス弁体43Eを制御油圧室42E側に移動させようとする力は、60(N)から7.5(N)まで低下する。G=80(N)であるから、低下したこのような力を考慮しても、逆止弁5を開口しようとする力は72.5(N)である。これは、逆止弁5を閉鎖しようとする力49(N)よりも大きいから、該逆止弁5は開口して、吐出路122は開放され、アキュームレータ22に蓄圧されていた高圧オイルはメイン油路11に吐出されることとなる。
【0095】
[数値例:再びオイルポンプ1の定常動作中]
再び、オイルポンプ1が定常的に加圧動作をするようになると、制御ソレノイド21も再び、Aモードになる。Aモードになって、制御油圧室42E内に油圧Pの高圧オイルが導入される。そうすると、開口圧縮ばね433cの反発力Gを打ち消す力はP×Sb=0.8(N/mm2)×75(mm2)=60(N)となる。そうすると、前記開口圧縮ばね433cは、逆止弁5を開口することはできない。代わって、前記流入油圧1.0(N/mm2)を有するオイルが、逆止弁5を開口し、アキュームレータ22への蓄圧を開始する。以上が具体的に数値をあてはめたときの、同油圧制御装置の動作例である。
【0096】
本発明の油圧制御装置に係る第3実施形態は第2実施形態と同様の効果を有する。更に、同油圧制御装置の製造工程において、開口圧縮ばね433cの、バランス弁体43Eへの組み付け能率が上がるという効果がある。すなわち、前記開口圧縮ばね433cをバランス弁体43Eのピストン434Eにねじ止めや接着等の固着手段を採らなくても、該ピストン434Eに設けられた円筒型中空部434aに前記開口圧縮ばね433cをはめ込むだけで組み付けられるという効果がある。
【0097】
同油圧制御装置において、アキュームレータ22に蓄圧されたオイルが不用意にメイン油路11側に漏れないようにシール(密封)しているのは、押戻し弁体51である。そして、逆止弁5の開口にあたり、バランス弁体43Eの突出部が前記該押戻し弁体51に当接して開口するものである。ここで、押戻し弁体51にバランス弁体43Eによる打撃痕などが付くとオイルのシールを確実にすることができなくなる。そこで少なくとも前記バランス弁体43Eの突出部よりも、前記押戻し弁体51を高硬度に形成することで、逆止弁5のシール性能の耐久性と信頼性を向上させることができる。延いては同油圧制御装置の耐久性と信頼性を向上させる効果がある。
【0098】
ところで、本発明の第2実施形態に係る油圧制御装置において、ピストン434Dと制御油圧室42Dの内壁の間には開口圧縮ばね433cが設けられていることは既に説明したとおりである(
図5)。ここで、ピストン434D端部に小径凸部434bを設けてこれが開口圧縮ばね433cの螺旋部に挿入された構成をしていてもよい〔
図5(D)〕。このようにすると、開口圧縮ばね433cが的確に反発力を発揮することができる。
【0099】
以上、本発明の油圧制御装置及びその制御方法について、オイルポンプ1とミッション82の間のメイン油路11から分岐するアキュームレータ22及びバランスバルブユニット4の例に基づいて説明した。しかし、同油圧制御装置及びその制御方法はミッションへのオイル供給のみに限定されるものでなく、エンジン、ブレーキまたはステアリングなど、油圧供給が必要な機器、すなわち、オイルポンプによってオイルを供給される機器への油路全般に適用可能な油圧制御装置及びその制御方法である。