特許第6546265号(P6546265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546265
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】移植リードの分析システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0428 20060101AFI20190705BHJP
   A61B 5/0452 20060101ALI20190705BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20190705BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20190705BHJP
   A61B 5/0492 20060101ALI20190705BHJP
   A61B 5/0402 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   A61B5/04 310B
   A61B5/04 312U
   A61B5/04 300J
   A61B5/04 310N
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-504699(P2017-504699)
(86)(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公表番号】特表2017-527342(P2017-527342A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】US2015042711
(87)【国際公開番号】WO2016019048
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2017年2月10日
(31)【優先権主張番号】62/030,388
(32)【優先日】2014年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マハジャン、ディーパ
(72)【発明者】
【氏名】パーシュバチャー、デイビッド エル.
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、アージュン ディ.
【審査官】 山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−523505(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0158089(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0203123(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0428
A61B 5/0402
A61B 5/0408
A61B 5/0452
A61B 5/0478
A61B 5/0492
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者生理学的データを検知するように構成される複数のセンサを有する移植可能な医療装置と、処理回路とを備えるシステムの作動方法であって、
前記処理回路は、
移植された前記医療装置のデータであって、第1のリード部分である第1のセンサにより少なくとも1日の時間期間にわたり検知された前記医療装置のデータと、第2のセンサにより前記時間期間にわたり検知された前記医療装置のデータとを受信する工程と、
前記第1のセンサにより検知された前記医療装置のデータに第1のノイズ検出基準を適用する工程と、
前記第1のノイズ検出基準に基づいて、前記時間期間にわたり前記第1のセンサにより検知された検出ノイズ事象数をカウントする工程と、
前記第2のセンサにより検知された前記医療装置のデータに第2のノイズ検出基準を適用する工程と、
前記第2のノイズ検出基準に基づいて、前記時間期間にわたり前記第2のセンサにより検知された検出ノイズ事象数をカウントする工程と、
前記第1のセンサにより検知された前記検出ノイズ事象数と前記第2のセンサにより検知された前記検出ノイズ事象数とを少なくとも用いて、前記時間期間にわたる平均の検出ノイズ事象数を計算する工程と、
前記第1のセンサにより検知された前記検出ノイズ事象数が、前記平均の検出ノイズ事象数を少なくとも5%上回る場合、前記第1のリード部分での潜在的なリード故障の判断を記録する工程
を含む工程を行う、
システムの作動方法。
【請求項2】
前記第1のセンサにより検知された前記検出ノイズ事象数が、前記平均の検出ノイズ事象数のマージン内にあり、且つ前記平均の検出ノイズ事象数が閾値を超える場合、潜在的な電磁干渉の判断を記録する工程を更に含む、請求項1に記載の作動方法。
【請求項3】
前記第1のノイズ検出基準は、第1の高速心拍閾値よりも高速である心拍が、第1の心拍閾値数あるか否かを判断する基準であり、前記第2のノイズ検出基準は、第2の高速心拍閾値よりも高速である心拍が、第2の心拍閾値数あるか否かを判断する基準であり、前記第2の高速心拍閾値は前記第1の高速心拍閾値と異なる、請求項1又は2に記載の作動方法。
【請求項4】
前記第1の心拍閾値数は、発現内で4心拍である、請求項3に記載の作動方法。
【請求項5】
前記時間期間は少なくとも2週間である、請求項1〜4の何れか一項に記載の作動方法。
【請求項6】
前記第2のセンサは第2のリード部分であり、前記方法は、
前記第2のセンサより検知された前記検出ノイズ事象数が、前記平均の検出ノイズ事象数を上回る場合、前記第2のリード部分での潜在的なリード故障の判断を記録する工程を更に含む、請求項1〜5の何れか一項に記載の作動方法。
【請求項7】
患者生理学的データを検知するように構成される複数のセンサを有する移植可能な医療装置であって、前記複数のセンサのうちの1つ以上のセンサは、1本のリードを備える、移植可能な医療装置と、
処理回路であって、
前記患者生理学的データを受信し、
前記複数のセンサのそれぞれにより検知される患者生理学的データにノイズ検出基準を適用して、各センサにより検知されたノイズ事象数をカウントし、
前記センサの全てからの平均の検知ノイズ事象数を計算し、
リードを備える前記1つ以上のセンサの各々により検知された前記ノイズ事象数を前記平均の検知ノイズ事象数と比較する
ように構成される、処理回路と、
前記処理回路と通信するユーザインタフェースであって、前記平均の検知ノイズ事象数を上回るノイズ事象数を検知したセンサのリードの潜在的なリード故障を表すアラートを表示するように構成されるユーザインタフェースと
を備える、システム。
【請求項8】
前記処理回路は、前記移植可能な医療装置内に配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理回路の部分は、前記移植可能な医療装置内に配置され、及び前記処理回路の別の部分は、前記移植可能な医療装置と通信するように構成される通信器に配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理回路は、異なるノイズ検出基準を前記センサのそれぞれに適用するように構成される、請求項7〜9の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記処理回路は、少なくとも2週間の時間期間にわたり検知された前記患者生理学的データを受信するように構成される、請求項7〜10の何れか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記ユーザインタフェースは、センサにより検知された検出ノイズ事象数が、前記平均のノイズ事象数のマージン内にあり、且つ前記平均の検出ノイズ事象数が閾値を超える場合、潜在的な電磁干渉のアラートを表示するように構成される、請求項7〜11の何れか一項に記載のシステム。
【請求項13】
リードを備える前記1つ以上のセンサは、右心房リードである第1のリードであり、前記処理回路は、110ミリ秒よりも高速である発現内の複数の検知心拍を検知することを含む第1のノイズ検出基準を第1のセンサにより検知される患者生理学的データに適用するように構成される、請求項7〜12の何れか一項に記載のシステム。
【請求項14】
リードを備える前記1つ以上のセンサは、右心室リードである第2のリードであり、前記処理回路は、275ミリ秒よりも高速である発現内の複数の検知心拍を検知することを含む第2のノイズ検出基準を第2のセンサにより検知される患者生理学的データに適用するように構成される、請求項7〜13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記ノイズ検出基準は、発現内の少なくとも4心拍が閾値よりも高速であることを必要とする、請求項7〜14の何れか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国企業であり、全ての国での認定のための出願人であるカーディアクペースメーカインク(Cardiac Pacemakers,Inc.)、全ての国での認定のための発明者であるインド市民のディーパ・マハジャン(Deepa Mahajan)、米国市民のデイビットL.パーシュバッシャー(David L.Perschbacher)、及び米国市民のアルジュンD.シャーマ(Arjun D.Sharma)の名義において2015年7月29日にPCT国際特許出願として出願中であり、2014年7月29日に出願された米国仮特許出願第62/030,388号明細書に対する優先権を主張するものであり、この米国仮特許出願の内容は全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
本明細書に開示される技術は、概して、移植リードに関する。より詳細には、本明細書に開示される技術は、移植リードを分析するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
移植可能な医療装置は、一般に、様々な病状の患者の治療及びモニタリングに使用されている。例えば、心臓の異常の治療及びモニタリングに使用される移植医療装置は、一般に、少なくとも電源及びプロセッサを保持するハーメチックシール筐体と、筐体から心臓内又は心臓周囲の場所に延びる1本又は複数のリードとを有する。各リードに沿った1つ又は複数の電極が、電気検知機能及び/又は筐体から心臓への刺激機能を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
時間の経過に伴い、耐久性及び環境に基づいてリードの摩滅があり得、これは、不正確な検知、不正確な治療等の機能的な問題を生じさせるおそれがある。したがって、問題のあるリードの「誤検出」識別を最小に抑えながら、介護者が、利用可能な情報を用いて問題のあるリードを正確に識別できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示される技術の一態様は、方法に関する。移植された医療装置のデータであって、少なくとも1日の時間期間にわたり、第1のリード部分及びセンサにより検知された医療装置データが受信される。第1のノイズ検出基準が、第1のリード部分により検知された医療装置データに適用される。第1のノイズ検出基準に基づいて、時間期間にわたり第1のリード部分により検知された検出ノイズ事象数がカウントされる。第2のノイズ検出基準が、センサにより検知された医療装置データに適用され、及び第2のノイズ検出基準に基づいて、時間期間にわたるセンサを介した検出ノイズ事象数がカウントされる。第1のリード部分及びセンサの時間期間にわたる検出ノイズ事象平均数が計算され、平均計算は、少なくとも、第1のリード部分により検知された検出ノイズ事象数及びセンサにより検知された検出ノイズ事象数を含む。時間期間にわたる第1のリードを介した検出ノイズ事象数が、ノイズ事象平均数を少なくとも5%上回る場合、第1のリードでの潜在的なリード故障の判断が記録される。特定の一例では、時間期間は少なくとも2週間である。
【0006】
本技術の一態様によれば、第1のノイズ検出基準は、第1の高速心拍閾値よりも高速である第1の心拍閾値数を定義し、及び第2のノイズ検出基準は、第2の高速心拍閾値よりも高速である第2の心拍閾値数を定義し、第2の高速心拍閾値は第1の高速心拍閾値と異なる。特定の一例では、第1の心拍閾値数は、発現内で4心拍である。本技術の別の態様
によれば、第1のリードを介した検出ノイズ事象数が、ノイズ事象平均数のマージン内にあり、且つノイズ事象平均数が閾値を超える場合、潜在的な電磁干渉の判断が記録される。本技術の更に別の態様によれば、時間期間にわたるセンサを介した検出ノイズ事象数が、平均ノイズ事象数を上回る場合、センサでの潜在的なリード故障を表す判断が記録される。
【0007】
本技術によれば、第1のリード部分及びセンサは、単一のリードに沿った異なる場所であるか、又は代替的には、第1のリード部分及びセンサは、異なるリードである。一例では、センサは右心室リードであり、及び第2の高速心拍閾値は160ミリ秒である。追加又は代替として、センサは左心室リードであり、及び第2の高速心拍閾値は275ミリ秒である。追加又は代替として、センサは右心房リードであり、及び第2の高速心拍閾値は110ミリ秒である。
【0008】
本明細書に開示される技術の別の態様は、移植可能な医療装置が、患者生理学的データを検知するように構成される複数のセンサを有するシステムに関する。複数のセンサは、少なくとも1本のリードを有することができる。処理回路は、患者生理学的データを受信し、及び複数のセンサのそれぞれにより検知される患者生理学的データにノイズ検出基準を適用して、各センサを介したノイズ事象数をカウントするように構成される。追加又は代替として、ノイズ検出基準は、発現内の少なくとも4心拍が閾値よりも高速であることを必要とする。処理回路は、センサの全てからのノイズ事象平均数を計算し、及び各リードからのノイズ事象数をノイズ事象平均数と比較するようにも構成される。
【0009】
追加又は代替として、一システム例は、処理回路と通信するユーザインタフェースであって、ノイズ事象平均数を上回るノイズ事象総数を有した各リードの潜在的なリード故障を表すアラートを表示するように構成されるユーザインタフェースを有する。追加又は代替として、ユーザインタフェースは、リードを介した検出ノイズ事象数が、ノイズ事象平均数のマージン内にあり、且つノイズ事象平均数が閾値を超える場合、潜在的な電磁干渉のアラートを表示するように構成される。
【0010】
ここで開示される技術の幾つかの態様では、処理回路は、移植可能な医療装置内に配置される。追加又は代替として、処理回路の部分は、移植可能な医療装置内に配置され、及び処理回路の別の部分は、移植可能な医療装置と通信するように構成される通信器に配置される。一例では、処理回路は、異なるノイズ検出基準をセンサのそれぞれに適用するように構成される。別の例では、処理回路は、少なくとも2週間の時間期間にわたり検知された患者生理学的データを受信するように構成される。
【0011】
本明細書の技術の一態様によれば、少なくとも1本のリードは、右心房リードである第1のリードを構成し、及び処理回路は、110ミリ秒よりも高速である発現内の複数の検知心拍を検知することを含む第1のノイズ検出基準を第1のリードに適用するように構成される。別の態様によれば、少なくとも1本のリードは、右心室リードである第2のリードを構成し、及び処理回路は、275ミリ秒よりも高速である発現内の複数の検知心拍を検知することを含む第2のノイズ検出基準を第2のセンサに適用するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本明細書に開示される技術による移植医療装置の実施例を示す。
図2】本明細書に開示される技術による一方法の高レベル概略図を示す。
図3】発現データ記録例の部分を示す。
図4】別の発現データ記録の部分を示す。
図5】本明細書に開示される技術に関連付けられた概略例を示す。
図6図5に開示される技術に関連付けられた別の概略例を示す。
図7】センサのノイズ分析に関連付けられた概略例を示す。
図8】本明細書に開示される技術の少なくとも1つの実装形態による心調律管理システム例を示す。
図9】本明細書に開示される技術の少なくとも1つの実装形態による患者管理システムの概略図を示す。
図10】本明細書に開示される技術の幾つかの実施形態による様々な構成要素を示す。
図11】例示的な移植可能医療装置の幾つかの構成要素の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、添付図面と併せて本発明の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することでより詳細に理解及び認識することができる。
本明細書に開示される技術の一態様は、方法に関する。移植された医療装置のデータであって、少なくとも1日の時間期間にわたり、第1のリード部分及びセンサにより検知された医療装置データが受信される。第1のノイズ検出基準が、第1のリード部分により検知された医療装置データに適用される。第1のノイズ検出基準に基づいて、時間期間にわたり第1のリード部分により検知された検出ノイズ事象数がカウントされる。第2のノイズ検出基準が、センサにより検知された医療装置データに適用され、及び第2のノイズ検出基準に基づいて、時間期間にわたるセンサを介した検出ノイズ事象数がカウントされる。第1のリード部分及びセンサの時間期間にわたる検出ノイズ事象平均数が計算され、平均計算は、少なくとも、第1のリード部分により検知された検出ノイズ事象数及びセンサにより検知された検出ノイズ事象数を含む。時間期間にわたる第1のリードを介した検出ノイズ事象数が、ノイズ事象平均数を少なくとも5%上回る場合、第1のリードでの潜在的なリード故障の判断が記録される。特定の一例では、時間期間は少なくとも2週間である。
【0014】
本技術の一態様によれば、第1のノイズ検出基準は、第1の高速心拍閾値よりも高速である第1の心拍閾値数を定義し、及び第2のノイズ検出基準は、第2の高速心拍閾値よりも高速である第2の心拍閾値数を定義し、第2の高速心拍閾値は第1の高速心拍閾値と異なる。特定の一例では、第1の心拍閾値数は、発現内で4心拍である。本技術の別の態様によれば、第1のリードを介した検出ノイズ事象数が、ノイズ事象平均数のマージン内にあり、且つノイズ事象平均数が閾値を超える場合、潜在的な電磁干渉の判断が記録される。本技術の更に別の態様によれば、時間期間にわたるセンサを介した検出ノイズ事象数が、平均ノイズ事象数を上回る場合、センサでの潜在的なリード故障を表す判断が記録される。
【0015】
本技術によれば、第1のリード部分及びセンサは、単一のリードに沿った異なる場所であるか、又は代替的には、第1のリード部分及びセンサは、異なるリードである。一例では、センサは右心室リードであり、及び第2の高速心拍閾値は160ミリ秒である。別の例では、センサは左心室リードであり、及び第2の高速心拍閾値は275ミリ秒である。更に別の例では、センサは右心房リードであり、及び第2の高速心拍閾値は110ミリ秒である。
【0016】
本明細書に開示される技術の別の態様は、移植可能な医療装置が、患者生理学的データを検知するように構成される複数のセンサを有するシステムに関する。複数のセンサは、少なくとも1本のリードを有することができる。処理回路は、患者生理学的データを受信し、及び複数のセンサのそれぞれにより検知される患者生理学的データにノイズ検出基準を適用して、各センサを介したノイズ事象数をカウントするように構成される。一例によれば、ノイズ検出基準は、発現内の少なくとも4心拍が閾値よりも高速であることを必要とする。処理回路は、センサの全てからのノイズ事象平均数を計算し、及び各リードから
のノイズ事象数をノイズ事象平均数と比較するようにも構成される。
【0017】
一システム例は、処理回路と通信するユーザインタフェースであって、ノイズ事象平均数を上回るノイズ事象総数を有した各リードの潜在的なリード故障を表すアラートを表示するように構成されるユーザインタフェースを有する。追加又は代替として、ユーザインタフェースは、リードを介した検出ノイズ事象数が、ノイズ事象平均数のマージン内にあり、且つノイズ事象平均数が閾値を超える場合、潜在的な電磁干渉のアラートを表示するように構成される。
【0018】
ここで開示される技術の幾つかの態様では、処理回路は、移植可能な医療装置内に配置される。追加又は代替として、処理回路の部分は、移植可能な医療装置内に配置され、及び処理回路の別の部分は、移植可能な医療装置と通信するように構成される通信器に配置される。一例では、処理回路は、異なるノイズ検出基準をセンサのそれぞれに適用するように構成される。別の例では、処理回路は、少なくとも2週間の時間期間にわたり検知された患者生理学的データを受信するように構成される。
【0019】
本明細書の技術の一態様によれば、少なくとも1本のリードは、右心房リードである第1のリードを構成し、及び処理回路は、110ミリ秒よりも高速である発現内の複数の検知心拍を検知することを含む第1のノイズ検出基準を第1のリードに適用するように構成される。別の態様によれば、少なくとも1本のリードは、右心室リードである第2のリードを構成し、及び処理回路は、275ミリ秒よりも高速である発現内の複数の検知心拍を検知することを含む第2のノイズ検出基準を第2のセンサに適用するように構成される。
【0020】
図1は、心調律管理装置である移植医療装置(IMD:implanted medical device)110の実施例を示す。IMD110の例は、限定ではなく、ペースメーカ、除細動器、心臓再同期療(CRT:cardiac resynchronization thrapy)装置、又はそのような装置の組合せを含む。システムは通常、無線周波(RF:radio frequency)又は他のテレメトリ信号を使用することによる等、IMD110と無線信号190を通信するIMDプログラマ又は他の外部装置170も含む。
【0021】
一実施形態では、外部装置170は、スケジュールされた間隔でIMDと通信して、情報をIMDからダウンロードする。一例では、外部装置170は、IMDと24時間毎に1回、通信する。通信セッション中、IMDは、患者及び前の通信セッションから時間間隔中に送達された任意の治療についての情報をアップロードする。ダウンロードされる情報は、時間間隔中に発生した任意の発現又はそれらの発現のサブセットの概要を含むことができ、概要は、発現でショックが送達されたか否か並びにIMDからの通知及びアラートを含むことができる。ダウンロードされる情報は、発現中に測定された生理学的データの大部分を反映したより詳細な発現データであることもでき、本明細書では、発現は、IMDに記憶されたアルゴリズムに従って特定することができる特に関心のある時間期間として定義される。リード分析中に特に関心がある発現の一例は、頻脈発現であり、IMDアルゴリズムは、患者の心臓が異常に早く拍動していることを示す。
【0022】
IMD110は一般に、患者生理学的データを検知するように構成される複数のセンサを有する。センサは、心臓105に結合される1本又は複数のリード108A〜108Cを含む。心臓リード108A〜108Cは、IMD110に結合される基端部と、1つ又は複数の電極により心臓105の1つ又は複数の部分に結合される先端部とを含む。電極は通常、電気的除細動、除細動除去、ペーシング、再同期療法、又はそれらの組合せを心臓105の少なくとも1つの心腔に送達する。電極は、センス増幅器に電気的に結合されて、電気心信号を検知し得る。本願では、本明細書に開示されるリード及び電極は一般に
、センサと呼ばれる。
【0023】
心臓105は、右心房100A、左心房100B、右心室105A、左心室105B、及び右心房100Aから延びる冠状静脈洞を有する。心房リード108Aは、心臓105の右心房100Aに配置されて、信号を検知するか、ペーシング治療を送達するか、又は両方を右心房100Aに対して行う電極(リング電極125及びチップ電極130等の電気接点)を含む。
【0024】
心室リード108Bは、信号を検知するか、ペーシング治療を送達するか、又は信号検知及びペーシング治療送達の両方を行う、チップ電極135及びリング電極140等の1つ又は複数の電極を含む。リード108Bは任意選択的に、心房電気的除細動、心房除細動除去、心室電気的除細動、心室除細動除去、又はそれらの組合せ等を心臓に対して行う追加の電極も含む。そのような電極は通常、除細動除去に関わるより大きいエネルギーを扱うために、ペーシング電極よりも広い表面積を有する。リード108Bは任意選択的に、再同期治療を心臓105に提供する。
【0025】
IMD110は、ヘッダ155を通してIMD110に取り付けられる第3の心臓リード108Cを含み得る。第3の心臓リード108Cは、冠状静脈を介して左心室(LV:left ventricle)105Bの心外膜上にある冠状静脈内に配置されるリング電極160、165を含む。
【0026】
リード108Bは、右心室(RV:right ventricle)に配置されるために、チップ電極135及びリング電極140の近傍に配置される第1の除細動除去コイル電極175と、上大静脈(SVC:super vena cava)に配置されるために、第1の除細動除去コイル175、チップ電極135、及びリング電極140の近傍に配置される第2の除細動除去コイル電極180とを含み得る。幾つかの例では、高エネルギーショック治療が、第1の又はRVコイル175から第2の又はSVCコイル180に送達される。幾つかの例では、SVCコイル180は、ハーメチックシールIMD缶150に形成される電極に電気的に結ばれる。これは、心室筋にわたりより均一にRVコイル175から電流を送ることにより、除細動除去を改善する。幾つかの例では、治療は、RVコイル175からIMD缶150に形成された電極のみに送達される。
【0027】
他の形態のセンサとしては、心臓105の部分に適用し得るか、又は体の他の部位に移植されて、IMD110により生成される電流の「ステアリング」に役立ち得るメッシュ及びパッチが挙げられる。本方法及び本システムは、様々な構成で様々なセンサを用いて機能する。異なる組の電極間での検知は多くの場合、心信号の伝搬に関する方向情報を提供し、多くの場合、異なるベクトル間での検知と呼ばれる。例えば、単一腔ICDでは、右心室チップ電極135から右心室リング電極140への検知は、第1のベクトルであり、RVコイル175から缶150上の電極又はヘッダ155への検知は、第2のベクトルである。様々な電極構成を使用し得る。
【0028】
本明細書に記載されるシステム及び方法で使用されるセンサ構成では、複数のチャネルが使用可能でありながら、少なくとも右心室チャネル上の電位図(EGM:electrogram)を含む患者発現データを収集することができる。右心室EGM信号は、心室内又は心室近傍に移植された電極を用いて記録される。例えば、心室チャネル又はベクトルは、右心室チャネル用のチップ電極及びリング電極又は左心室チャネル用のリング電極を含み得る。ショックチャネル又はショックベクトルとして知られる別のチャネルも使用し得る。ショックチャネルは、これもまた高エネルギーショック治療の送達に使用される電極を使用して検知される。一例では、ショックチャネルは、RVに配置される電極を含む。
【0029】
図10を参照して説明するように、IMDは、処理回路を有するプロセッサと、通信モジュールによりアップロードされる患者発現データを記憶するメモリとを有する。IMDは、必要に応じてメモリを上書きして、新しい患者発現データを記憶することができる。
【0030】
当業者には理解されるように、患者の寿命にわたり、リード108A〜108Cは、リードの耐久性及び環境による影響を受ける一般的な摩滅を受け得る。そのような摩滅は、不正確な検知、不正確な処置等の機能的問題を生じさせるおそれがある。したがって、問題のあるリードの「誤検出」識別を最小に抑えながら、介護者が、利用可能な情報を用いて、問題のあるリードを正確に識別できることが望ましい。
【0031】
IMD110による信号の検知は、ノイズの影響を受けやすいことがある。一般的には、ノイズは、送信された電気信号に付随するが、電気信号の一部ではなく、電気信号を曖昧にし得る不規則変動を指す。異なる状況での信号ノイズの特定の技術的定義の多くの例がある。信号ノイズは、生理学的性質のものであってもよく、又は非生理学的性質のものであってもよい。ノイズは、IMDリードの破砕又はIMDリードの固定に使用される設定が不良なねじ若しくはアダプタに起因する等、装置それ自体に起因し得る。代替的には、信号ノイズは、電磁干渉(EMI:electromagnetic interference)と呼ぶことができるIMDリードにより捕捉される外部原因の電子「チャッタリング」に起因し得る。EMIのソースは、手術中の電気焼灼器、磁気共鳴撮像、砕石術処置、又は店の入口若しくはセキュリティゲートに見られる等の電子監視機器からの伝送を含む。信号ノイズの多くの他のソースも同様にある。EMIは、信号ノイズの最も一般的なソースの1つである。EMIに起因するノイズと、故障したリード等の装置に伴う問題に起因するノイズとの区別は、問題のあるリードの誤検出識別を最小に抑えることができる。
【0032】
図2は、本明細書に開示される技術によるノイズ分析200の高レベル概略図を示す。システムは、データを受信し(210)、リードから受信されるデータ(210)でのノイズの検知に基づいて、故障が疑われる任意のリードを識別する(220)。システムが、リードノイズの原因が電磁干渉であると判断し得る(230)場合、分析は終了する(250)。システムにより、リードノイズが電磁解消に起因しないと判断される(230)場合、システムは、潜在的に故障しているリードの判断を記録する(240)。一例では、システムは、潜在的に故障しているリードについてユーザに警告する。
【0033】
本明細書に記載される分析は一般に、処理回路を有する1つ又は複数の処理モジュールを用いて行われる。処理回路は、IMD内に配置されてもよく、IMDの外部にあってもよい。幾つかの実施形態では、処理回路は、例えば、IMD及び外部プログラマを含む幾つかのシステム構成要素にわたり分散する。実施形態例として、処理回路の部分は、移植可能な医療装置内に配置することができ、処理回路の別の部分は、移植可能な医療装置と通信するように構成される通信器内に配置される。様々な実施形態では、リードは、図1に示される移植された心調律管理装置に合致する移植リードである。
【0034】
アラートは一般に、患者及び/又は介護者システムインタフェース、電子メール等を通して当技術分野で既知のアラートに合致することができる。アラートは一般に、関連する処理回路を有する1つ又は複数のアラートモジュールにより達成される。分析が、アラートをプロンプトする外部装置内で実行される場合、アラートは一般に、分析の実行直後にリアルタイムで行われ、アラートをトリガーした発現のタイムスタンプを含む。システムは、通知及びタイムスタンプを記憶するように構成することもでき、タイムスタンプと、アラート記録と呼ぶことができる各アラートに関連付けられた他のデータとに基づいて、データを分析することができる。
【0035】
判断に繋がる分析又はアラートがIMDにより実行される場合、判断、アラート、又は両方は、通信セッション中に外部装置にダウンロードされる発現概要情報の部分であることができる。
【0036】
図3は、電位図(EGM)部分302と、関連するマーカ部分340とを有する特定の発現データ記録300を示す。一般に、ここに記載される技術によるIMDは、EGMデータ302内の心拍の位置を特定し、装置マーカ340である一群の装置識別の心拍位置を生成する。EGM部分302は一般に、患者の心活動のグラフ表現であり、マーカ部分340は、EGM部分302に対応する検出事象を記す。EGMデータ302は、本実施形態では、検知された心房データ310、検知された右心室データ320、検知されたショックチャネルデータ330、及びタイムスタンプ345を示す。他のデータのなかでも特に、マーカ部分340は、例として、心拍ゾーン342、心拍持続時間344、ペーシング治療(図示せず)、逸れたショック(図示せず)、及び事象検出等の心拍固有のデータを示すことができる。心拍ゾーンデータ342の例としては、心室頻脈(VT:ventricular tachycardia)、心室細動(VF:ventricular fibrillation)が挙げられる。当業者は、提供することができる他のタイプのマーカデータ340を認識する。
【0037】
EGMデータ302及びマーカ340は、IMDのメモリに記憶される。通信モジュールは、IMDからの発現の発現データ記録300の検索を開始することができる。次に、発現データ300は、図7を参照してより詳細に説明される図2のノイズ分析200において分析される。一実施形態では、ノイズ分析200は、発現データ記録のマーカ部分340を利用し、発現データ記録のEGM部分302を利用しない。一例では、ノイズ分析200は、発現データ記録のマーカ部分340及びEGM部分302の両方を利用する。一例では、ノイズ分析200は、発現データ記録のEGM部分302を利用し、発現データ記録のマーカ部分340は利用しない。
【0038】
図4は、心房チャネル410、右心室チャネル420、及びショックチャネル430に関連付けられたデータを伝えるEGM部分402を有する、例としての発現記録400を同様に示す。例としての発現記録400はタイムスタンプ444を含む。発現記録400は、EGM部分402からのデータをまとめたマーカ部分440も有する。
【0039】
発現データ記録300、400は両方とも、検知中の心調律から独立しているように見える信号の不規則変動があるため、EGM部分302、402に非生理学的ノイズの証拠を有する。訓練された観測者は、図3の発現データ記録300が電磁干渉の結果であると結論付け、その理由は、全てのEGMチャネルでノイズが存在するという証拠があるためである。訓練された観測者は、図4の発現データ記録400が、潜在的に故障している右心室リードを示す発現データ400を示すと結論付ける。EGM部分302において図3に示される発現データ300は一般に、心房チャネル310、心室チャネル320、及びショックチャネル330のそれぞれにわたり実際の患者の生理機能測定に合致しないように見える。実際に、発現データ記録300のマーカ部分340は、心房マーカチャネル346及び右心室マーカチャネル348で検知された複数の心拍が、生理学的に可能であると一般に見なされるよりも高速であることを反映している。しかし、図4では、発現データ記録400のEGM部分402は一般に、心房チャネル410及びショックチャネル430に沿った実際の患者の生理学的心拍に合致したEGMデータを示すが、右心室チャネル420に沿って、EGMデータは、実際の生理学的反応に合致しないように見える。したがって、引き出すことができる1つの結論は、右心室リードが故障しており、交換する必要があり得るというものである。
【0040】
本明細書に開示される技術によるシステムは一般に、図3及び図4に示される状況を区別するように構成される。特に、システムは、ノイズ分析を通して故障の疑いがあるリードを識別するように構成され、これには、ノイズが電磁干渉から検出される場合に生じる誤検出を低減するという技術的効果がある。
【0041】
図5は、本明細書に開示される技術の実施形態に関連付けられた概略例を示す。データは、IMDセンサから受信され(510)、各センサからのノイズ事象がカウントされる(520)。全てのセンサにわたり検出されたノイズ事象平均数が計算される(530)。次に、各センサからのノイズ事象のカウントは、平均と比較される(540)。少なくとも1つのセンサは、リード又はリードの部分である。センサがリード又はリードの部分であり、そのセンサが、ノイズ事象数を有し、平均よりも大きい場合(542)、システムは、潜在的なリード故障の判断を生成する(550)。一例では、システムは、潜在的なリード故障のアラートを生成する。ノイズ事象数が平均とほぼ等しい場合(544)、システムは、分析を行い、平均が閾値を超えるか否かを判断し(560)、平均が閾値を超える場合、システムは電子環境の判断を生成する(570)。一例では、システムは、電磁干渉のアラートを生成する。ノイズ事象数が平均未満である場合(546)、又は平均が閾値を超えない場合(560)、分析は終了する。
【0042】
受信された(510)IMDデータは一般に、複数の医療装置センサのそれぞれにより検知された患者生理学的データである。医療装置データは一般に、一実施形態では、少なくとも1日、別の実施形態では少なくとも2週間、更に別の実施形態では少なくとも30日間である時間期間にわたり、センサにより検知される。「センサ」という用語は、患者の電気生理機能測定値を検知することができる様々な医療装置構成要素を記述するために使用されるが、一般に、潜在的な故障について分析されるセンサはリードである。非リード電極等の他のセンサも、ノイズについて分析することができるが、分析中のリードと比較するためのベースとしてである。非リード電極は、IMDの外面又は他の位置に位置決めすることができる。異なるセンサは、単一のリードの異なる部分であってもよく、又は全体的に異なるリードであってもよい。「センサ」という用語は、本明細書で使用される場合、電位のセンサを指す。
【0043】
システムの処理回路は一般に、図6を参照して後述するように、特定の時間期間にわたり各センサにより検知された医療装置データにノイズ検出基準を適用することにより、各センサ520でのノイズ事象Cをカウントするように構成される。文字「n」は、ノイズ事象のカウントに使用されるセンサの数を示し、したがって、Cは、時間期間中に第1のセンサでカウントされたノイズ事象を示し、Cは、時間期間中、第2のセンサでカウントされたノイズ事象を示し、Cは、時間期間中、第3のセンサでカウントされたノイズ事象を示し、以下同様である。センサの総数は、わずか2つであってもよい。一例では、ノイズ事象のカウントに使用される3つのセンサがある。別の例では、ノイズ事象のカウントに使用される4つのセンサがある。一般に、各センサは、そのセンサからの検知生理学的測定をそのセンサからの検知非生理学的ノイズからどのように区別し得るかに応じて、特定のセンサに適用される特定のノイズ検出基準を有することができる。各センサにより検知されるノイズ事象総数Cを使用して、時間期間にわたり全てのセンサにわたるノイズ事象平均数μを特定し(530)、ここで、ノイズ事象平均数の計算(530)は一般に、当業者により理解される。全てのセンサにわたる平均を計算するために、各センサで検出される時間期間にわたるノイズ事象数は、一緒に加算され、次に、ノイズ事象が検出されたセンサの総数で除算される。
【0044】
システムは、リードが、特定の閾値量分だけノイズ事象平均数μを上回る、時間期間にわたる検出ノイズ事象数Cを有する場合、例えば、ノイズ事象数Cは、平均μの5%、10%、又は20%を上回る場合、潜在的なリード故障の判断を記録する。少なくとも
1つの実施形態では、特定の閾値量は、特定のリードの構成に応じて可変である。判断は一般に、ノイズ事象平均数μよりも大きいノイズ事象総数Cを有した特定のリードの潜在的なリード故障を表すことができる。幾つかの例では、判断が記録された後、潜在的なリード故障のアラートが生成される。アラートは、本明細書に記載したように、システム処理回路と通信するユーザインタフェースを通して表示することができる。
【0045】
一般に、検知ノイズ事象数Cがノイズ事象平均数μのマージン以内である場合、リードにより検知されるノイズ事象数Cは平均μにほぼ等しく(544)、ここで、マージンは、平均μの少なくとも15%、10%、又は5%であることができる。そのような状況では、検出されたノイズはノイズ事象平均数μの範囲内にあるため、リードが故障している可能性は低いことがあり、したがって、引き出すことができる結論は、EMIの外部ソースが、全てのセンサで同様レベルのノイズを生じさせているというものである。ノイズ事象平均数μが複数のリードにわたり特に高い場合、すなわち、ノイズ事象平均数がEMI閾値を超える場合(560)、システムは、潜在的なEMI570の判断を生成し、記録するように構成される。一例では、システムは、潜在的な電磁干渉のアラートを生成するように構成される。多数のノイズ事象を心房リードデータ310及び右心室リードデータ320で識別可能な図3に再び注目する。
【0046】
リードのノイズ事象数Cが平均未満(マージン外)の場合(546)又は平均μがEMIノイズ閾値を超えない場合(560)、分析は一般に終了する。特に、ノイズ事象平均数μ未満であるノイズ事象数Cを検知したリードは一般に、リード故障に関連付けられた特徴を示していない。更に、平均μがEMIノイズ閾値を超えない場合(560)、医療装置システムは一般に、顕著な量又は相当量の電磁干渉に露出されていない。したがって、システムの分析は終了する(580)。
【0047】
図6は、図5からの各センサ520でのノイズ事象数をカウントする一例を示す。例では、医療装置は少なくとも第1のセンサ、第2のセンサ、及び第3のセンサを有する。処理回路は、時間期間にわたり第1のセンサ521により検知された医療装置データに第1のノイズ検出基準を適用し、次に、ノイズ検出基準に基づいて、第1のセンサ522により検知された検出ノイズ事象数C521をカウントするように構成される。処理回路は、時間期間にわたり第2のセンサ523により検知された医療装置データに第2のノイズ検出基準を適用し、第2のノイズ検出基準523に基づいて、第2のセンサにより検知された検出ノイズ事象数C524をカウントするようにも構成される。同様に、処理回路は、時間期間にわたり第3のセンサ525により検知された医療装置データに第3のノイズ検出基準を適用し、第3のノイズ検出基準525に基づいて、第3のセンサにより検知された検出ノイズ事象数C526をカウントするようにも構成される。追加のセンサ又はより少数のセンサからのデータもシステムにより処理することができる。
【0048】
一般に、第1のセンサ、第2のセンサ、及び第3のセンサのうちの少なくとも1つは、システムにより故障について分析中のリードである。そのような実施形態では、リードは特に、システムにより分析中のリードの部分である。幾つかの実施形態では、別のセンサは、同じリードに沿って異なる場所であってもよく、又は異なるリードの部分であってもよい。図7を参照してより詳細に説明するように、第1のノイズ検出基準は第1の閾値を定義することができ、第2のノイズ検出閾値は第2の閾値を定義することができ、第3のノイズ検出基準は第3の閾値を定義することができる。処理回路は一般に、使用されるセンサのタイプ応じて閾値を適用し、したがって、第1の閾値、第2の閾値、及び第3の閾値は、必ずしも同じである必要はない。実際には、少なくとも1つの実施形態では、第1の閾値、第2の閾値、及び第3の閾値はそれぞれ異なる。
【0049】
図7は、センサからのノイズ事象のカウントに関連付けられた概略例を示し、この特定
のプロセスは、各センサからの各事象に使用される。検索された(610)各発現の発現データが処理されて、その発現中、ショックが送達されたか否かが識別される(620)。ショックが識別される場合(620)、ノイズはカウントされず、分析は終了する(632)。システムは、抗頻脈ペーシング(ATP:anti−tachycardia pacing)が投与されたか否か、又はショックが送達されたか否かも考慮する(640)。投与又は送達された場合、事象後のデータは無視され(642)、高速心拍閾値テストが事象前データに適用される(644)。発現データが高速心拍閾値基準を満たす場合(644)、事象はノイズ事象総数にカウントされる(650)。ATPが投与されないか、又はショックが送達されなかった場合(640)、事象データは調べられて、事象が持続したか否かを識別する(630)。持続した場合、高速心拍閾値テストが適用され(644)、発現データが高速心拍閾値テストを満たす場合、発現はノイズ事象総数にカウントされる(650)。その他の場合、発現はカウントされず、分析は終了する(632)。同様に、発現が持続しなかった場合(630)、発現はノイズ事象総数にカウントされず、その事象の分析は終了する(632)。
【0050】
一般に、ショックが投与された(620)発現データは、ノイズ事象総数に考慮されない。様々なシステムにおいて、患者へのショックの投与(620)を生じさせる発現には、ここで、患者へのショックの高影響及び患者が受けた潜在的に危険な生理学的状態に基づいて比較的高レベルの精査が提供される。更に、患者への不適切なショック処置の投与は通常、発生後に急いで調べられる。したがって、ショック処置に繋がる発現に関連付けられたノイズの分析は多くの場合、冗長であり得る。しかし、代替の一実施形態では、ショックが投与された発現は、ノイズ分析で考慮することができる。
【0051】
ATP640の識別は、ATPを示すマーカについて、発現データからのEGMマーカを考慮することを含むことができる。同様に、ショック送達640の識別も、ショック送達を示すマーカについて、発現データからのEGMマーカを考慮することを含むことができる。幾つかの実施形態では、ATP又はショック送達を有する発現は、ATP又はショック送達を生じさせる事象検出を記す発現データ内のマーカにより識別される。事象検出マーカ又は「検出に見合った」マーカは、IMDにより、IMDのプログラムされた基準に従い、幾つかのタイプの治療が患者に適用されることを必要とする心臓事象が発生したと判断されたことを示す。患者に提供することができる治療の例としては、特にショック又はATPが挙げられる。幾つかの状況では、ショックの基準は、検知された生理学的データにより満たされ、事象検出マーカが生成され、IMDは、ショック送達のための充電を開始するが、IMDは、ショックの非送達を決定し、したがって、ショックを迂回する。幾つかの実施形態では、これらの発現は、ショックが送達されたことを示すマーカを有することになる。
【0052】
発現データが、ATP又はショック送達640のマーカを含む場合、事象検出後の発現データを無視したノイズ分析が行われる(642)。様々な場合、投与される治療は、システムにより「ノイズ」として解釈し得る特定の高速心拍を生じさせることがある。したがって、そのようなデータを無視するように、システムの予測値を改善し得る。更に、ショック送達が必要な事象検出をトリガーする生理学的データに焦点を合わせることにより、システムユーザはシステム分析を改善することができる。
【0053】
本実施形態では、システムは、持続した発現(630)のみを分析し、ノイズ事象としてカウントするように構成される。実際には、様々なシステムでは、非持続発現は、ノイズ分析600に考慮されず、IMD電池寿命及び処理帯域幅等のシステムリソースを保存する。これは、非持続発現が一般に、持続発現と比較した場合、比較的高頻度で生じるためである。本願では、「持続発現」は、最小時間要件を満たす発現として定義される。例えば、「持続発現」は、一実施形態では、10の心拍のうち8つが、プログラムされたレ
ート閾値よりも高速であり、及び次に10の心拍のうちの6つが、プログラムされたレート閾値よりも高速なままであり、それがプログラムされた時間長にわたり維持される場合として定義し得る。
【0054】
一般に、プログラムされる時間長は、約1秒〜約60秒の範囲であることができ、プログラムされるレート閾値は、毎分約160心拍(bpm:beats per minute)〜約200bpmの範囲であることができる。様々な実施形態では、プログラムされる時間長は、約1秒〜約2.5秒の範囲である。幾つかの実施形態では、プログラムされる時間長は1秒である。幾つかの実施形態では、プログラムされる時間長は2秒である。幾つかの実施形態では、プログラムされる時間長は、最高で60秒である。幾つかの実施形態では、プログラムされるレート閾値は160bpmである。幾つかの実施形態では、プログラムされるレート閾値は180bpmである。幾つかの実施形態では、プログラムされるレート閾値は200bpmである。プログラムされるレート閾値は、分析中の特定のセンサに依存することができ、一般に、これより説明する高速心拍閾値とは異なる。
【0055】
高速心拍閾値テスト644は、発現をノイズ発現としてカウントすべきである(650)か否かを判断するノイズ検出基準を発現が満たすか否かを判断する。特に、高速心拍閾値分析644は、それぞれが心拍長(ノイズ)閾値644よりも高速である閾値数の心拍があるか否かを判断する。少なくとも1つの実施形態では、閾値数の心拍は4である。本明細書に開示されるシステムの処理回路は一般に、分析中のセンサに応じて異なるノイズ検出基準を適用するように構成される。特に、心拍長閾値は一般に、使用される特定のセンサに依存する。一実施形態では、心房リードの高速心拍閾値は、約110ミリ秒であり、左心室リードでは約275ミリ秒であり、右心室リードでは約160ミリ秒である。
【0056】
したがって、左心室リードを使用する一例では、ノイズ検出基準644は、システムが、長さ160ms以下である少なくとも4つの心拍を識別する場合、満たされる。代替の心拍長閾値で生じる他の数の心拍も、リードからのノイズの正確な予測子であり得ることを当業者は認識する。
【0057】
非処置持続発現630の分析は、発現データが評価されて、閾値心拍長よりも高速である閾値数の心拍を識別する(644)という点で、ATP又はショック送達640を有する発現の分析と同様である。閾値基準が満たされて(644)、発現がノイズであったことを示す場合、発現は、時間期間内のノイズ事象のカウントCに加えられる。
【0058】
様々な実施形態では、システムは、検索された発現データ記録にノイズ検出基準を適用することに関連付けられた結果を記憶するように構成される。なお、図7は、ノイズ事象を検出する一実施形態例を示し、患者の生理学的センサデータからノイズ事象を検出する様々な他の手法があることを当業者は認識する。本明細書に開示される技術の範囲から逸脱せずに、図7に示されるプロセスに対する更なる多くの変更形態をなし得る。
【0059】
本技術に関連する方法の一実施形態では、システムは、第1の時間において、第1のノイズ検出基準を第1のリードからの第1の発現データと比較し、比較の結果として、第1のリードでのノイズを識別するように構成される。システムは、第2の時間において、第2のノイズ検出基準を第2のリードからの第2の発現データと比較するようにも構成され、第2のノイズ検出基準は、第1のノイズ検出基準と異なることができる。ノイズが両リードで識別される場合、ノイズは両リードの影響を及ぼす要因(電磁干渉等)に起因する可能性が高いため、潜在的なリード故障はシステムにより除外することができる。ノイズが一方のリードで識別されるが、別のリードでは検出されない場合、システムは、ノイズが識別されたリードの潜在的なリード故障の判断を生成することができる。例えば、システムが、第2のノイズ検出基準を第2の発現データと比較した結果として、第2のリード
にノイズがないことが識別する場合、システムは、第1のリードの潜在的なリード故障の判断を記録することができる。様々な実施形態では、システムは、第1のリードの潜在的なリード故障を表すアラートを生成するように更に構成することができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、第2の時間は第1の時間と異なることができ、第1のリードでのノイズ及び第2のリードでのノイズが、潜在的な電磁干渉を識別し、それにより、潜在的なリード故障を除外するために、システムと同期される必要がないことを意味する。しかし、潜在的な電磁干渉を識別するために、第1のリードでのノイズ及び第2のリードでのノイズが確実に同期可能であることを当業者は認識する。幾つかの実施形態では、第1の時間及び第2の時間は、互いの5秒以内、互いの2秒以内、又は互いの1秒以内であることができる。
【0061】
本明細書に記載される他の実施形態と同様に、第1の基準及び第2の基準は、関連するリードにわたるノイズを識別するのに適切であることができる。したがって、第1の基準及び第2の基準は、リードのタイプ及びリードの心臓位置に応じて異なる基準であることができる。幾つかの実施形態では、第1の基準は第1の高速心拍閾値であり、第2の基準は第2の高速心拍閾値であることができる。第1及び第2の高速心拍閾値の特定の値は、本明細書に上述したものと同様であることができ、閾値よりも高速である閾値数の連続検知心搏を必要とすることができる。オフライン検知アルゴリズム等のリードでのノイズを識別する他の手法を使用することも可能である。少なくとも1つの実施形態では、システムは、反復分析を行い、これもまた電磁干渉のインジケータであることができる各リードにわたるノイズの規則性をチェックすることができる。
ハードウェアシステムの説明
上述した方法は、プログラマ上、患者管理システム、又は他の計算装置等の様々なハードウェアシステムで実施することができる。
【0062】
図8は、例示的な心調律管理(CRM:cardiac rhythm management)システム1300の概略図である。システム1300は、患者1312内に配置されるIMD1314を含むことができる。IMD1314は、ペーシング機能を含むことができる。IMD1314は、例えば、ペースメーカ、心臓除細動器−除細動器、心臓再同期装置、心調律モニタリング装置等の様々なタイプの装置であることができる。IMD1314は、患者の心臓1326内又は心臓1326の近傍に配置される1本又は複数のリード1322を含む。
【0063】
IMD1314は、外部インタフェース装置1316と通信することができる。幾つかの実施形態では、IMD1314と外部インタフェース装置1316との通信は、IMD1314の近傍で患者1312の外部に保持されるワンド1310を通しての誘導通信を介するものであることができる。しかし、他の実施形態では、通信は、無線周波、伝送音響的伝送等を介して実行することができる。IMD1314からの、患者データを含むデータを検索するように構成される特定の装置は一般に、「通信モジュール」と呼ばれる。
【0064】
IMD1314は、患者1312に関するデータを収集するために移植された1つ又は複数のセンサを含むことができる。例えば、IMD1314は、活動レベルセンサ、呼吸センサ、心音センサ、血圧センサ、インピーダンスセンサ、又は他のセンサを含むことができる。IMD1314を使用して収集されるデータは、任意のタイプの患者データであり得る。様々な実施形態では、上述したように、IMD1314は患者から電位図を収集する。患者データは、電位図内の心拍の位置に関するデータを更に含むことができる。このデータは、収集された各電位図の装置識別の心拍位置の群に集めることができる。
【0065】
IMD1314は一般に、ある時間期間にわたりデータを記憶し、外部インタフェース
装置1316と定期的に通信して、記憶されたデータの幾つか又は全てを送信するように構成される。
【0066】
外部インタフェース装置1316は、例えば、プログラマ、プログラマ/レコーダ/モニタリング装置、コンピュータ、患者管理システム、個人情報端末(PDA:personal digital assistant)等であることができる。本明細書で使用される場合、プログラマという用語は、移植された装置をプログラムし、移植された装置からのデータを記録し、移植された装置のモニタリングを可能にする装置を指す。例示的なプログラマ/レコーダ/モニタ装置としては、マサチューセッツ州ネイティックのボストン・サイエンティフィック・コーポレーション(Boston Scientific
Corporation)から入手可能なモデル3120プログラマが挙げられる。外部インタフェース装置1316は、キーボード1320及び/又はマウス1328等のユーザ入力装置を含むことができる。外部インタフェース装置1316は、ビデオ出力チャネルと、ビデオ出力を表示するビデオディスプレイ1318等のビデオ出力装置とを含むことができる。表示されるビデオ出力は、ユーザインタフェース画面を含むことができる。加えて、ビデオディスプレイ1318はタッチスクリーンを備えることもでき、ユーザ入力装置にも同様にすることができる。
【0067】
外部インタフェース装置1316は、チャート又はグラフ等でグラフィカルに、及びユーザインタフェース画面を通してテキストでリアルタイムデータ及び/又は記憶されたデータを表示することができる。加えて、外部インタフェース装置1316は、幾つかの応答選択肢と共にテキスト情報をユーザに提示することができる。外部インタフェース装置1316は、質問へのユーザの応答を入力して記憶することもでき、幾つかの実施形態では、ユーザのテキスト応答を記憶することができる。
【0068】
一実施形態では、外部インタフェース装置1316は、ユーザインタフェースと呼ぶこともでき、患者管理コンピュータシステム1332と通信する。ユーザインタフェース1316と患者管理コンピュータシステム1332との通信リンクは、電話回線、インターネット1330、又は任意の他のデータ接続を介し得る。ユーザインタフェース1316は、装置と通信していないが、患者管理コンピュータシステム1332と通信しているときのみ、使用することもできる。
【0069】
一実施形態では、外部インタフェース装置1316は、IMD1314の動作パラメータを変更することが可能であり、したがって、プログラマと呼ばれる。通常、プログラマは、臨床又は病院設定でCRM装置とインタフェースするために使用される。この状況では、外部インタフェース装置1316のユーザは医師又は訓練された技師である。
【0070】
本明細書に記載されるような分析を実行する構成要素は一般に、「処理回路」と呼ばれる。処理回路が、患者管理システム1332、外部インタフェース装置1316、他の装置の構成要素、及びそれらの組合せを含み得ることを当業者は理解する。同様に、本明細書に開示される技術により通知を生成するシステムの構成要素は一般に、本願では、まとめて「通知モジュール」と呼ばれる。様々な実施形態では、処理回路及び通知モジュールは通信し、幾つかの実施形態では、処理回路及び通知モジュールは、相互の構成要素を有する。
【0071】
図9は、本発明の一実施形態による患者管理システムの概略図である。患者管理システムは、コンピュータ記憶媒体を使用して発現データベースを維持することが可能である。なお、発現データベースは、移植可能な装置又は移植された装置に存在してもよい。コンピュータ記憶媒体は、データの配置、保持、及び検索に使用される、装置及び材料を含む任意の技術である。コンピュータ記憶媒体の例としては、ランダムアクセスメモリ(RA
M:random access memory)、ネットワーク接続記憶装置、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置、光ディスク、及び独立ディスク冗長アレイ(RAID:redundant array of independent discs)が挙げられる。
【0072】
患者管理システム1400は一般に、1つ又は複数の装置1402、1404、及び1406、1つ又は複数外部インタフェース装置1408、通信システム1410、1つ又は複数の遠隔周辺機器1409、並びにホスト1412を含む。ホスト1412は、プログラマ又は他の患者管理装置等の単一の計算装置であり得る。幾つかの実施形態では、ホスト1412は、1つ又は複数の装置1402、1404、及び1406と直接通信し、別個の外部インタフェース装置1408を使用する必要がない外部装置である。幾つかの実施形態では、ホストは外部装置であり、外部データベース1480からEGMデータ等のデータを受信する。
【0073】
患者管理システム1400の各構成要素は、通信システム1410を使用して通信することができる。幾つかの構成要素は、互いと直接通信することもできる。本明細書に示される例としての患者管理システム1400の様々な構成要素について以下に説明する。患者管理システム1400は、単一の装置であってもよく、又は複数の装置を備えてもよい。一実施形態では、患者管理システム1400は、単一の外部計算装置である。
【0074】
データ生成装置1402、1404、及び1406は、患者に対して以下の機能のうちの1つ又は複数を提供し得る移植可能な装置又は外部装置であることができる:(1)検知、(2)データ分析、及び(3)治療。例えば、一実施形態では、装置1402、1404、及び1406は、電気的手段、機械的手段、及び/又は化学的手段を使用して、患者の様々な生理学的状況、主観的状況、及び環境状況を測定するのに使用される移植装置又は外部装置である。様々な実施形態では、装置1402、1404、及び1406のうちの少なくとも1つはIMDである。
【0075】
装置1402、1404、及び1406は、データを自動的に収集するように構成されるか、又は患者若しくは別の人物による手動介入を必要とすることができる。装置1402、1404、及び1406は、生理学的測定及び/又は主観的測定に関連するデータを記憶し、及び/又は詳細に後述する様々な方法を使用して、通信システム1410にデータを送信するように構成することができる。3つの装置1402、1404、及び1406が、示される実施形態例に示されているが、はるかに多くの装置を患者管理システムに結合することができる。一実施形態では、装置1402、1404、及び1406のそれぞれは、異なる患者を受け持つ。一実施形態では、2つ以上の装置が1人の患者を受け持つ。
【0076】
装置1402、1404、及び1406は、測定データを分析し、分析されたデータに基づいて動作するように構成することができる。例えば、装置1402、1404、及び1406は、データの分析に基づいて、治療を変更するか、又はアラームを提供するように構成することができる。したがって、様々な実施形態では、装置1402、1404、及び1406のうちの1つ又は複数は、上述した処理回路の構成要素であることができる。
【0077】
一実施形態では、装置1402、1404、及び1406は治療を提供する。治療は、自動的に、又は外部通信に応答して提供することができる。装置1402、1404、及び1406は、装置1402、1404、及び1406と患者管理システム1400の他の構成要素との通信により、検知、治療(例えば、持続時間及び間隔)、又は通信の特性を変更することができるという点で、プログラム可能である。装置1402、1404、
及び1406は、セルフチェックを実行するか、又は通信システム1410により問い合わせられて、装置が適宜機能していることを確認することもできる。装置1402、1404、及び1406の異なる実施形態の例が本明細書に提供される。
【0078】
体内に移植される装置は、治療を検知し、通信し、提供する能力を有する。移植可能な装置は、患者コンプライアンスの必要を最小に抑えながら、限定ではなく、上述したような電気心臓活動、物理的な運動、体温、心拍数、活動、血圧、呼吸パターン、駆出率、血液粘度、血液化学、血糖レベル、及び他の患者固有の臨床生理学的パラメータを含め、体の特性の直接測定を提供することができる。導出される測定は、移植可能な装置センサ(例えば、睡眠センサ、機能的能力インジケータ、自律神経系緊張インジケータ、睡眠品質インジケータ、咳インジケータ、不安インジケータ、及び患者の全体的な健康及び幸せを定量化する生活の質インジケータを計算する心血管健康インジケータ)から特定することもできる。
【0079】
装置1402、1404、及び1406は、外部装置、すなわち、生理学的データの測定に使用される、人体に移植されない装置(例えば、体温計、血圧計、又は血液特性、体重、物理的強度、メンタルの激しさ、食習慣、心臓特性、及び相対的な地理的位置の測定に使用される外部装置)であることもできる。
【0080】
患者管理システム1400は、有線又は無線技術を使用して、通信システム1410及び/又はホスト1412と通信する1つ又は複数の遠隔周辺機器1409(例えば、セルラ電話、ページャ、PDA装置、ファクシミリ、リモートコンピュータ、プリンタ、ビデオ及び/又はオーディオ装置)を含むこともできる。
【0081】
データベースモジュール1414は、患者データを記憶するメモリを備える。患者データは、電位図データの装置により識別される心拍位置群を含む電位図データを含むことができる。このデータは、移植可能な医療装置等の患者装置から受信してもよく、又は別のデータベース1480から検索してもよい。例としてのデータベースモジュール1414としては、更に以下に説明する患者データベース1440及び発現データベース1442が挙げられる。患者データベース1440は、電位図データ等の装置1402、1404、及び1406により取得されるデータ並びに患者の医療記録及び病歴情報を含め、患者固有のデータを含む。発現データベース1442は、発現データを提供する装置1402、1404、及び1406から生成される複数の異なる発現に関する発現データを有する。発現データベース1442は、分析モジュール1416により分析されたデータを記憶することもできる。
【0082】
情報は、外部データベース1480等の外部ソースから提供することもできる。例えば、外部データベース1480は、患者に処方された薬剤のタイプに関する情報を提供する等の第三者により維持される外部医療記録又は別の例では、不整脈発現データの閲覧をユーザに認可した患者群からの認可データを含むことができる。外部データベース1480は、移植可能な装置又は外部医療装置により前に取得された患者データを記憶することもできる。外部データベース1480に記憶された患者データの一例は、電位図データである。
【0083】
外部分析モジュール1416は、患者分析モジュール1450及び装置分析モジュール1452を含み、これらはそれぞれ、本明細書に開示される「処理回路」の構成要素と呼ぶことができる。患者分析モジュール1450は、患者管理システム1400により収集された情報及び他の関連ソースについての情報を利用して、患者に関連するデータを分析し、患者の福祉の適時で予測的な評価を提供し得る。装置分析モジュール1452は、装置1402、1404、及び1406並びに外部インタフェース装置1408からのデー
タを分析して、装置の問題又は故障を予測し、特定する。例えば、装置分析モジュール1452は、電位図データを分析して、1つ又は複数のチャネル上の心拍の一を特定し得る。装置分析モジュール1452は、装置識別の心拍及び心拍位置をマルチパス方法を使用して特定された心拍及び心拍位置と更に比較することができる。装置分析モジュール1452は次に、比較を実行して、ノイズの存在を発見することができる。
【0084】
分析モジュール1416は、判定プロセッサ1458、発現プロセッサ1460、及び上書きプロセッサ1462を更に含み、各プロセッサ1458、1460、1462は、本明細書に開示される「処理回路」の構成要素と見なすことができる。一実施形態では、判定プロセッサは、少なくとも発現データベース1442に動作的に接続され、異なる発現のうちの1つに関する発現データを入力として受信するように構成される。
【0085】
発現プロセッサ1460は、判定データベースの処理を実行して、リポート、患者アラート、又はプログラミング推奨を提供する。上書きプロセッサ1462は、発現データベース1442及び患者管理システム1400の他の部分から提供されるデータを分析して、発現データベースからの発現の1つの発現データの特定のどの部分をユーザに表示すべきかを判断することができる。上書きプロセッサ1462は、後述する通知モジュール1418を通して、データ生成装置により生成され、発現データベースに記憶されたデータ等の患者の発現に関連する不整脈発現データから選択されるデータの部分をグラフィカルに表示する手段を提供することができる。
【0086】
上書きプロセッサ1462は、ユーザから、判定プロセッサにより決定された特徴データの任意の変更も要求し、発現を特徴付けるユーザ入力要求を発することができる。要求は、ユーザへの直接的な質問、ユーザに提供される一連の選択肢、又は単純に、ユーザ入力に対応するように構成されたユーザインタフェース上の空白スペースであり得る。上書きプロセッサ1462は、個々のユーザの上書き履歴を記憶することもできる。
【0087】
判定プロセッサ1458及び発現プロセッサ1460等の分析モジュール1416の1つ又は複数の部分は、患者管理システム1400の他の部分からリモートに配置し得る。データ生成装置のマイクロプロセッサも、幾つかの実施形態では、判決プロセッサとして機能し得る。
【0088】
通知モジュール1418は、ホスト1412により実行される分析に基づいて、リポート、患者アラート、又はプログラミング推奨の送出を調整する。例えば、装置から収集され、ホスト1412により分析されたデータに基づいて、通知モジュール1418は、例えば、外部インタフェース装置1408に提供されるディスプレイを使用して、情報を介護者、ユーザ、又は患者に送出することができる。データ生成装置から独立したユーザインタフェース装置1490を情報の送出に使用することもできる。外部インタフェース装置1408及びユーザインタフェース装置1490は、複数の実施形態により、リポート、アラート、又はプログラミング推奨を表示し、ユーザから上書き情報をユーザから受信し、他のデータをユーザから受信するようにも構成される。上述したように、表示されるデータは、発現プロセッサ1460、上書きプロセッサ1462、及び通知モジュール1418により決定することができる。
【0089】
プログラマ/レコーダ/モニタ等の情報を表示する外部インタフェース装置1408は、多くの計算装置に共通する構成要素を含むことができる。ユーザからの受信情報を表示するユーザインタフェース装置1490は、多くの計算装置に共通する構成要素を含むこともできる。これより図10を参照して、本発明の幾つかの実施形態による様々な構成要素の図を示す。しかし、外部インタフェース装置が図10に示される全ての構成要素を有する必要はない。
【0090】
一実施形態では、外部インタフェース装置は、中央演算処理装置(CPU:central processing unit)1505又はプロセッサを含み、CPU1505又はプロセッサは、従来のマイクロプロセッサ、情報を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)1510、及び情報を永続的に記憶する読み取り専用メモリ(ROM:read only memory)1515を含み得る。メモリコントローラ1520が提供されて、システムRAM1510を制御する。バスコントローラ1525が提供されて、データバス1530を制御し、割り込みコントローラ1535が使用されて、他のシステム構成要素から様々な割り込み信号を受信し、処理する。
【0091】
大容量記憶装置は、コントローラ1540によりバス1530に接続されるディスケットドライブ1541、コントローラ1545によりバス1530に接続されるCD−ROMドライブ1546、及びコントローラ1550によりバス1530に接続されるハードディスクドライブ1551により提供することができる。プログラマシステムへのユーザ入力は、幾つかの装置により提供し得る。例えば、キーボード及びマウスをキーボード及びマウスコントローラ1555によりバス1530に接続することができる。DMAコントローラ1560が提供されて、システムRAM1510への直接メモリアクセスを提供する。視覚的表示が、ビデオディスプレイ1570を制御するビデオコントローラ1565又はビデオ出力により生成される。外部システムは、外部システムが移植可能な医療装置とインタフェースし、データを交換できるようにするテレメトリインタフェース1590又はテレメトリ回路を含むこともできる。幾つかの実施形態が、図10に示される様々な要素を欠いてもよいことが理解される。
【0092】
これより図11を参照して、例示的なIMD1600の幾つかの構成要素を概略的に示す。IMD1600は、メモリ1612と通信するマイクロプロセッサ1610で構成されたコントローラを含むことができ、メモリ1612は、プログラム記憶用のROM(読み取り専用メモリ)と、データ記憶用のRAM(ランダムアクセスメモリ)とを含み得る。コントローラは、状態機械型の設計を使用して他のタイプの論理回路(例えば、離散構成要素又はプログラマブル論理アレイ)により実施することができるが、マイクロプロセッサベースのシステムが好ましい。コントローラは、幾つかのプログラムモードでIMD1600を動作可能であり、プログラムモードは、事象検知及び時間間隔切れに応答してペーシングパルスがどのように出力されるかを定義する。
【0093】
外部プログラマ1675と通信するために、テレメトリインタフェース1680が提供される。外部プログラマは、IMD1600に問い合わせ、記憶データを受信し、ペースメーカの動作パラメータを調整することができる。コントローラ1677を有するコンピュータ化装置である。
【0094】
IMD1600は、リング電極1633A、チップ電極1633B、センス増幅器1631、パルス生成器1632、及びマイクロプロセッサ1610のポートと双方向通信する心房チャネルインタフェース1630を有する心房検知/ペーシングチャネルを有する。装置は、同様に、リング電極1643A及び1653A、チップ電極1643B及び1653B、センス増幅器1641及び1651、パルス生成器1642及び1652、並びに心室チャネルインタフェース1640及び1650を含む2つの心室検知/ペーシングチャネルも有する。チャネル毎に、電極は、リードによりIMD1600に接続され、検知及びペーシングの両方に使用される。マイクロプロセッサにより制御されるMOS切り替えネットワーク1670を使用して、電極をセンス増幅器の入力からパルス生成器の出力に切り替える。ショックチャネルも提供され、ショックチャネルは、除細動又は他の頻脈が検出される場合、装置が除細動除去ショックを心臓に送達できるようにするショックパルス生成器1690並びにショック電極1691A及び1691Bを備える。IMD
1600は誘発反応検知チャネルも有し、このチャネルは、誘発反応チャネルインタフェース1620及びセンス増幅器1621を備え、センス増幅器1621は、切り替えネットワーク1670を通して単極電極1623及び装置筐体又は缶1660に接続された差動入力を有する。誘発反応検知チャネルは、ペーシングパルスが従来通りに心臓の捕捉を達成したことを確認するため、又は後述するように誘発反応電位図を記録するために使用し得る。
【0095】
チャネルインタフェースは、センス増幅器からの検知信号入力をデジタル化するアナログ/デジタル変換器、センス増幅器の利得及び閾値を調整するために書き込むことができるレジスタ、及び心室及び心房チャネルインタフェースの場合、パルス振幅又はパルス幅を変更することにより、ペーシングパルスの出力を制御し、及び/又はペーシングパルスのエネルギーを調整するレジスタを含む。マイクロプロセッサ1610は、メモリに記憶されるプログラム命令に従って装置の全体動作を制御する。IMD1600の検知回路は、電極により検知される電圧が指定の閾値を超える場合、心房及び心室検知信号を生成する。次に、コントローラは、検知チャネルからの検知信号を解釈し、プログラムされたペーシングモードに従ってペースの送達を制御する。図11のIMD1600の任意の検知チャネルからの検知信号は、コントローラによりデジタル化され記録され、テレメトリリンク1680を介して外部プログラマ1675に送信されるか、又は後で送信するために記憶することができる電位図を構成することができる。したがって、患者の心臓活動をリアルタイムで、又は選択された過程期間にわたり観測し得る。
【0096】
上述した方法は定期的に、移植されたリードの分析を開始することができる。収集データは、不整脈判定等の他の装置機能への入力として使用し得る。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」が、文脈により明らかに別のことが示される場合を除き、複数形を含むことに留意されたい。「又は」という用語が一般に、文脈により明らかに別のことが示される場合を除き、「及び/又は」を含む意味で利用されることにも留意されたい。
【0097】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「構成される」という語句が、特定のタスクを実行するか、又は特定の構成を利用するように構築又は構成されるシステム、装置、又は他の構造を記述することにも留意されたい。「構成される」という語句は、「配置される」、「配置され構成される」、「構築され配置される」、「構築される」、「製造され配置される」等の他の同様の語句と同義で使用することができる。
【0098】
本発明の様々な実施形態に関して本明細書に示され記載されるモジュール、回路、及び方法が、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せを使用して実施可能であることを当業者は理解する。したがって、示され及び/又は記載されたモジュール及び回路は、ソフトウェア実装形態、ハードウェア実装形態、並びにソフトウェア及びハードウェア実装形態を包含することが意図される。
【0099】
本明細書における全ての刊行物及び特許出願は、本願が関連する技術分野での通常レベルのスキルを示す。全ての刊行物及び特許出願は、あたかも個々の各刊行物又は特許出願が特に個々に参照により示されているかのような程度と同じ程度で、参照により本明細書に援用される。
【0100】
本願は、本主題の改造形態又は変形形態を包含することが意図される。上記説明が、限定ではなく例示を意図されることを理解されたい。本主題の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそのような特許請求の範囲が権利を有する全範囲の均等物を参照して決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11