(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図12及び
図13を参照し、特許文献1で開示されたブレース31について説明する。
図12に示したブレース31の全体構造について説明する。
図12に示したブレース31は、鋼管部32の内部に材軸方向に貫通した状態で配置された鋼板製の芯材33との間にコンクリート部34が充填され、コンクリート部34が固化して鋼管部32に結合し、芯材33から鋼管部32及びコンクリート部34より材軸方向の両側に延びた鋼板製の取付部35が鋼管部32及びコンクリート部34より外側に配置され、取付部35に鋼板製のリブ部36が取付部35の板面とリブ部36の板面とを互いに交差する態様で固定され、取付部35に取付孔部37が設けられている。取付孔部37は、ブレース31を図示のされていないラーメン構造物の取付金具に取り付けるボルト部材又はリベット部材等の固定具を通す部分である。
【0003】
図13に示したブレース31の一端部の内部構造について説明する。芯材33及びリブ部36とコンクリート部34との間に合成樹脂製のシートのような非結合部38を用い、鋼管部32とコンクリート部34とに軸力としての材軸方向の力が加わらないようになっている。又、リブ部36のコンクリート部34に対応する端面部は、合成樹脂スポンジ又はゴムからなる変形吸収用弾性材39が接着剤等により固定されている。
【0004】
しかしながら、
図12及び
図13に示したように、ブレース31は、鋼管部32とコンクリート部34とが互いに結合し、芯材33及びリブ部36とコンクリート部34との間に非結合部38を用い、鋼管部32とコンクリート部34とに軸力が加わらない、耐力を重視した構造になっている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図5を参照し、発明を実施するための形態1に係るブレース1について説明する。
【0011】
図1及び
図2に示したように、ブレース1は、鋼管部2と鋼管部2の内部に充填されたコンクリート部3との間に非結合部4を備える。鋼管部2は、断面が円形の中空断面に形成された、材軸方向に長い鋼材を例示したが、断面が角形の中空断面に形成された、材軸方向に長い鋼材であっても適応可能である。コンクリート部3は、鋼管部2の内壁面に非結合部4が介在した状態で固化されている。コンクリート部3は、図示のされていない鉄筋や補強繊維等の引張り応力を負担する材料がコンクリート部内に配置、混入された構造である。非結合部4は、合成樹脂製のシートから筒状に形成されたり、離型剤の塗布やアンボンド処理が行われた構成であり、鋼管部2とコンクリート部3との接触を防ぎ、鋼管部2とコンクリート部3の接触による摩擦力を低減した箇所となっている。
【0012】
鋼管部2とコンクリート部3との材軸方向の両端部には、鋼板製の取付部5が設けられ、取付部5は鋼管部2とコンクリート部3と取付部5との間に空間部6を形成するように設置された構成である。この場合、取付部5から鋼管部2に材軸方向荷重(軸力)が入力された際に、コンクリート部3への材軸方向荷重は軽減されるので、ブレース1が材軸方向に弧状に撓む場合、コンクリート部3は曲げモーメントのみを負担することとなり、変形能力が向上及び安定する。なお、本実施形態では取付部5は逆台形の鋼板より成る。この形状は他の形状であってもよい。
【0013】
ブレース1が図示されていないラーメン構造物の補強をするために用いられる形には、ラーメン構造物に対し、1本のブレース1が斜めに使用される場合、2本のブレース1がたすき掛けに交差させて使用される場合、2本のブレース1がV字形になるように使用される場合がある。
【0014】
具体的には、ブレース1が図示されていないラーメン構造物の補強をするために、ラーメン構造物に対し、1本のブレース1が斜めに使用された場合、2本のブレース1がたすき掛けに交差させて使用された場合、2本のブレース1がV字形、または逆V字形になるように使用された場合において、ラーメン構造物が鉛直荷重又は水平荷重により変形するのに伴い、ラーメン構造物の取付金具から取付部5を経由してブレース1は圧縮力と引張力とを交互に受けることにより、例えば、ブレース1の両端部より材軸方向の中心部が鋼管部2の横方向に膨らむように
図1に仮想線7で示したような弧状に撓んだ場合に、鋼管部2とコンクリート部3は曲げモーメントのみを負担することとなり、変形能力が向上し安定する。
【0015】
上記のように、鋼管部2とコンクリート部3と取付部5との間に空間部6が設けられたので、取付部5からコンクリート部3に材軸方向荷重が加わらないため、コンクリート部3の変形の働きが鋼管部2と取付部5とに影響されることがない。よって、変形能力が改善され、エネルギー吸収能力が高くなる。
【0016】
又、取付部5が空間部6を形成するように設置された部分では、コンクリート部3が鋼管部2の内側に接触した非結合部4と取付部5との間にも充填されているので、コンクリート部3による材軸方向荷重の伝達が更に低減されて、変形能力が良くなり、エネルギー吸収能力が一層高くなる。なお、ブレース1に材軸方向荷重が加わった際に、鋼管部2とコンクリート部3の縁が切れれば、鋼管部2とコンクリート部3が接触した状態でも構わない。
【0017】
又、空間部6が存在することにより、コンクリート部3は圧縮力を負担しない。よって、鋼管部2が座屈後に変形しても、コンクリート部3は曲げモーメントのみを負担することになる。コンクリート部3が軸力負担から解放されるため、復元力特性は安定し、鋼管部2の座屈後の耐力低下は緩和される。
【0018】
鋼管部2の取付部5と対応する部分にもコンクリート部3が存在することにより、その部分の鋼管部2の局部変形が抑止され、鋼管部2の座屈後の変形能力向上に寄与する。
【0019】
図3に示したように、本実施形態では逆台形状の取付部5の鋼管部2より外側に突出した端部には、取付孔部8が複数個設けられている。取付孔部8は、ブレース1をラーメン構造物の取付金具に取り付けるボルト部材又はリベット部材等の固定具を通す部分である。
【0020】
つぎに、
図1乃至
図5を参照し、取付部5が、鋼管部2とコンクリート部3との材軸方向の両端部に、鋼管部2とコンクリート部3と取付部5との間に空間部6を形成するように設置される工程について説明する。
【0021】
先ず、
図4及び
図5に示したように、鋼管部2とコンクリート部3との材軸方向の両端部には、溝部9が設けられる。溝部9は、鋼管部2とコンクリート部3の端部を横断する方向、即ち、鋼管部2の外周の所定箇所の側面11から鋼管部2とコンクリート部3の中心部を経由し、鋼管部2の前記所定箇所に対極する側面11を貫通する一点鎖線で示した直線12上で鋼管部2とコンクリート部3との内部に窪み、鋼管部2とコンクリート部3との端面10と鋼管部2の側面11とに開口している。
【0022】
そして、
図1に示したように、溝部9に取付部5を挿入し、取付部5の挿入した際の先端面となる一端部5aと、溝部9の底面となる奥部9aとの間に所定の間隔を隔てた空間部6が形成されように、取付部5が溝部9に嵌め合わされた状態において、
図1及び
図2に示したように、取付部5の板面と鋼管部2の側面11とが互いに溶接14で結合される。これによって、
図1に示したブレース1では、取付部5が、鋼管部2とコンクリート部3との材軸方向の両端部に、鋼管部2とコンクリート部3と取付部5との間に空間部6を形成したように、設置される。
【0023】
図6乃至
図8を参照し、発明を実施するための形態2に係るブレース1の一端部について説明する。
【0024】
図6に示したように、取付部5には、リブ部15が設けられている。具体的には、鋼板製の取付部5と鋼板製のリブ部15とが、それぞれの板面を互いに交差して十字形になる態様で固定されている。つまり、取付部5とリブ部15とが互いに固定されたものを矢印D方向から見た場合に、取付部5とリブ部15とが十字形を構成している。又、鋼管部2とコンクリート部3との材軸方向の一端部には、溝部9と溝部16とが鋼管部2とコンクリート部3との中心部で交差した十字形に設けられる。
【0025】
具体的には、溝部9は、鋼管部2とコンクリート部3との一端部を横断する方向、即ち、鋼管部2の外周の所定箇所の側面11から鋼管部2とコンクリート部3の中心部を経由し、鋼管部2の前記所定箇所に対極する側面11を貫通する一点鎖線で示した直線12上で鋼管部2とコンクリート部3との内部に窪み、鋼管部2とコンクリート部3との端面と鋼管部2の側面とに開口している。溝部16は、鋼管部2とコンクリート部3との一端部を溝部9と十字形に交差するように横断する方向、即ち、鋼管部2の外周の上記所定箇所と違う位置の所定箇所の側面11から鋼管部2とコンクリート部3の中心部を経由し、鋼管部2の前記所定箇所と違う位置の所定箇所に対極する側面11を貫通する一点鎖線で示した直線17上で鋼管部2とコンクリート部3との内部に窪み、鋼管部2とコンクリート部3との端面10と鋼管部2の側面11とに開口している。つまり、鋼管部2とコンクリート部3とを矢印D方向から見た場合に、溝部9と溝部16とが、取付部5とリブ部15との十字形と同形の十字形を構成している。
【0026】
そして、
図7に示したように、溝部9と溝部16とからなる十字形の溝部に取付部5とリブ部15とからなる十字形の部材を挿入する。具体的には、溝部9に取付部5を挿入し、取付部5の挿入した際の先端面となる一端部5aと溝部9の底面となる奥部9aとの間に所定の間隔を隔てた空間部6が形成されるように、取付部5が溝部9に嵌め合わされ、溝部16にリブ部15を挿入し、リブ部15の挿入した際の先端面となる一端部15aと溝部16の底面となる奥部16aとの間に所定の間隔を隔てた空間部18が形成されように、リブ部15が溝部16に嵌め合わされる。その状態において、
図8に示したように、鋼管部2の外側面と取付部5の板面とが互いに溶接14で結合され、鋼管部2の外側面とリブ部15の側面とが互いに溶接19で結合される。これによって、
図7に示したブレース1の一端部では、取付部5とリブ部15とが、鋼管部2とコンクリート部3との材軸方向の一端部に、鋼管部2とコンクリート部3と取付部5との間に空間部6を形成し、鋼管部2とコンクリート部3とリブ部15との間に空間部18を形成するように設置される。これにより、ブレース1の一端部では、取付部5とリブ部15とが十字形に設けられたので、リブ部15が取付部5の補強になり、取付部5の剛性が高くなる。
【0027】
取付部5には、取付孔部8が複数個設けられている。なお、リブ部15にも取付孔部8を設けて取付部5を兼用してもよい。
図示は省略したが、ブレース1の他端部でも、段落0024乃至段落0026における一端部5a以外の一端部を他端部と読み替えることにより、
図6乃至
図8で示した取付部5とリブ部15とからなる十字形の部材を用いることは可能になる。
【0028】
図9乃至
図11を参照し、発明を実施するための形態3に係るブレース1の一端部について説明する。
【0029】
図9に示したように鋼板製の取付部5と鋼板製のリブ部15とが、それぞれの板面を互いに交差して十字形になる態様で固定されている。取付部5の一端部5aとリブ部15の一端部15aとのそれぞれには、鋼管部2の一端部の外側に嵌め込まれる凹部21,22が設けられる。凹部21は、取付部5の端面5bから取付部5の他端部の側の内部に窪み、取付部5の端面5bと2つの板面とに開口している。凹部22は、リブ部15の端面15bからリブ部15の他端部の側の内部に窪み、リブ部15の端面15bと2つの板面とに開口している。そして、凹部21,22が鋼管部2の一端部の外側に嵌め込まれる場合、凹部21において対峙する2つの内面21aと凹部22において対峙する2つの内面22aとが鋼管部2の一端部の側面11に接触するか又は接触する程度になっている。又、コンクリート部3と非結合部4とが鋼管部2の端面10よりも鋼管部2の内部に凹んだ状態になっている。このコンクリート部3と非結合部4との鋼管部2の内部に凹んだ端面と鋼管部2の端面10との間の距離が鋼管部2に対するコンクリート部3と非結合部4との深さになっている。尚、凹部21,22の端面5b,15bからの深さは、鋼管部2に対するコンクリート部3と非結合部4との深さはよりも深くなっている。(凹部21,22の端面5b,15bからの深さ>鋼管部2に対するコンクリート部3と非結合部4との深さ)。
【0030】
そして、鋼管部2の一端部を取付部5の凹部21とリブ部15の凹部22とに挿入し、鋼管部2の端面10が凹部21,22の底面となる奥部21b,22bに接触し、凹部21の2つの内面21aと凹部22の2つの内面22aとが鋼管部2の一端部の側面11に接触するか又は接触する程度になるように、取付部5とリブ部15が
図10に示したように鋼管部2の一端部の外側に嵌め合わされた状態において、鋼管部2の側面11と取付部5の板面とが互いに溶接14で結合され、鋼管部2の側面とリブ部15の板面とが互いに溶接19で結合される。尚、溶接14,19は、
図8に示したように、合計で8箇所設けられるのがよい。
【0031】
前記のように取付部5とリブ部15が鋼管部2の一端部の外側に嵌め合わされて溶接14,19で鋼管部2の一端部に結合された場合、
図11に示したように、取付部5とリブ部15が、鋼管部2と一端部の内部に、凹部21,22の奥部21b,22bとコンクリート部3の端面23との間に空間部24を形成したように設置される。よって、鋼管部2とコンクリート部3との材軸方向の両端部に溝が無く、ブレース1の先端面となる鋼管部の端面10と取付部5並びにリブ部15との間に空間部24を設けたことにより、取付部5並びにリブ部15の設置構造が簡単になるうえ、コンクリート部3は圧縮力を負担しない。よって、鋼管部2が座屈後に変形しても、コンクリート部3は曲げモーメントのみを負担することになる。コンクリート部3が軸力負担から解放されるため、復元力特性は安定し、鋼管部2の座屈後の耐力低下は緩和される。
【0032】
又、
図11に示したように、鋼管部2の側面11と取付部5並びにリブ部15とに溶接14,19が空間部24を鋼管部2の材軸方向の中央部の側に越えて成されているので、鋼管部2の取付部5と対応する部分にもコンクリート部3が存在することにより、その部分の鋼管部2の局部変形が抑止され、鋼管部2の座屈後の変形能力向上に寄与する。
なお、取付部5には、取付孔部8が複数個設けられているが、リブ部15にも取付孔部8を設けて取付部5を兼用してもよい。
【0033】
尚、図示は省略したが、ブレース1の他端部でも、段落0029乃至段落0031における一端部5a以外の一端部を他端部と読み替えることにより、
図9乃至
図11で示した取付部5とリブ部15とからなる十字形の部材を用いることは可能になる。
【0034】
図9乃至
図11において、リブ部15を除去してもよい。なお、鋼管部2の端面10と、取付部5の凹部21,22の底面となる奥部21b,22bを接触させず間隔をあけて溶接してもよい。その場合、鋼管部2内のコンクリート部は鋼管部2の端面10まで充填してもよい。
【0035】
図1に示した取付部5をブレース1の一端部に設置し、
図6又は
図9に示した取付部5とリブ部15とからなる十字形の部材をブレース1の他端部に設置してもよい。又、
図6に示した取付部5とリブ部15とからなる十字形の部材をブレース1の一端部に設置し、
図9に示した取付部5とリブ部15とからなる十字形の部材をブレース1の他端部に設置してもよい。
【0036】
図1乃至
図8に図示されていない鋼材からなるキャップ部が鋼管部2とコンクリート部3との端面10を塞ぐように取付部5に設けられ、キャップ部と鋼管部2との合わせ部、キャップ部と取付部5との合わせ部のそれぞれを溶接で密封するように結合してもよい。又、
図9乃至
図11に図示されていない鋼材からなるキャップ部が鋼管部2の端面10を塞ぐように取付部5に設けられ、キャップ部と鋼管部2との合わせ部、キャップ部と取付部5との合わせ部のそれぞれを溶接で密封するように結合してもよい。