(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2のように多層構造とすることで、芯材によって強度を確保し、表側の被覆層によって良好な意匠性を実現することができるので、軽量で見栄えのよい洗面ボウルとすることができる。
【0006】
しかしながら、例えば特許文献2の多層構造の洗面ボウルの場合、オーバーフロー口は表側の被覆層、芯材層、裏側の被覆層を貫通するように形成することになる。このため、使用者から見たときに色が異なる3つの層がオーバーフロー口の内周面に見えることになるので見栄えが悪い。このことに対し、オーバーフロー口の周囲を覆うための別部材からなるカバーを洗面ボウルの表面に取り付けることが考えられるが、こうすると、カバーと洗面ボウル表面との境界部分に汚れが溜まり易くなり、使用者の掃除の手間が増える。また、カバーを取り付ける構造の場合は部品点数が増加するとともに、組立工数が増えるという問題もある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、洗面ボウルを多層構造としてオーバーフロー口を設ける場合に、オーバーフロー口の周囲の見栄えを良好にするとともに、汚れが溜まり難くして手入れを簡単にし、しかも、洗面ボウルを構成する部品点数を少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、表面層の材料でオーバーフロー口の内周面を形成し、その表面層の材料が洗面ボウルの裏側に達するようにした。
【0009】
第1の発明は、
基材と、該基材の表側に設けられた表面層とを備え、
底部に排水口が形成され、該排水口よりも上側にオーバーフローを防止するためのオーバーフロー口が形成された洗面ボウルにおいて、
上記基材(10a)の裏側には、上記オーバーフロー口(12)を囲むように延びる凹条部(14c)が形成され、
上記表面層(10b)の材料は、上記オーバーフロー口(12)の内周面を形成して上記洗面ボウル(1)の裏側に達して
おり、
上記洗面ボウル(1)の裏側に達する上記表面層(10b)の材料の端部(15a)は上記凹条部(14c)に入っていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、表面層の材料がオーバーフロー口の内周面を形成しているので、基材のうち、オーバーフロー口を形成する部分が表面層を構成する材料で覆われることになる。これにより、使用者がオーバーフロー口を見たときには基材が見えなくなるので、基材と表面層の色や質感が相違していても見栄えが良好になる。また、オーバーフロー口の周囲を覆うカバーを設けなくても見栄えが良好になるので、オーバーフロー口の周囲に汚れが溜まりに難くなり、手入れが簡単になる。また、カバーが不要になることで部品点数が少なくなる。
【0011】
また、洗面ボウルの裏側に達する表面層の材料の端部が凹条部に入っているので、表面層の成形時に表面層の材料が基材の凹条部の外側へはみ出るようになるのを抑制することが可能になる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、
上記洗面ボウルには、上記洗面ボウルの裏側に達する上記表面層の材料によって上記オーバーフロー口の周囲の裏面側に連続するシール面部が形成され、上記オーバーフロー口に接続されるオーバーフロー管と上記シール面部との間にシール部材が配設されていることを特徴とする。
【0013】
すなわち、表面層の材料は高い意匠性を得ることができる材料であるため、高い成形精度を持っている材料である。この表面層の材料によってシール面部を形成することで、シール面部の成形精度が高まるのでシール部材との密着性が向上し、シール部材によるシール性が良好になる。
【0014】
第3の発明は、第1または2の発明において、
上記基材における上記オーバーフロー口の周囲には、他の部位に比べて厚肉な厚肉部が形成され、
上記厚肉部には、上記オーバーフロー口に接続されるオーバーフロー管を締結する締結部材がねじ込まれていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、オーバーフロー管を洗面ボウルの裏側に配設する場合に、締結部材を基材の厚肉部にねじ込むことでオーバーフロー管を基材に対して強固に、かつ、容易に締結することが可能になる
。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、洗面ボウルの表面層の材料がオーバーフロー口の内周面を形成し、洗面ボウルの裏側に達しているので、見栄えを良好にできるとともに、オーバーフロー口の周囲に汚れが溜まりに難くなり、手入れを簡単にすることができ、しかも、オーバーフロー口の周囲を覆うためのカバーが不要になることで部品点数を少なくすることができる。
【0017】
また、基材の裏側にオーバーフロー口を囲むように延びる凹条部を形成し、洗面ボウルの裏側に達する表面層の材料の端部が凹条部に入っているので、表面層の成形時に表面層の材料が基材の凹条部の外側へはみ出るようになるのを抑制することができるとともに、基材と表面層とを強固に一体化することができる。
【0018】
第2の発明によれば、表面層の材料によってオーバーフロー口の周囲に連続するシール面部を形成したので、シール面部の成形精度を高めることができ、シール部材によるシール性を良好にすることができる。
【0019】
第3の発明によれば、基材におけるオーバーフロー口の周囲に厚肉部を形成し、この厚肉部に、オーバーフロー管を締結する締結部材をねじ込むようにしたので、オーバーフロー管を基材に対して強固に締結でき、オーバーフロー管とオーバーフロー口との間のシール性を高めることができる。また、オーバーフロー管の締結作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る洗面ボウル1を使用者側から見た斜視図である。洗面ボウル1は、洗面ボウル本体2と、排水管部3と、オーバーフロー管4とを備えており、例えば住宅の洗面所等に設置される洗面台(図示せず)に取り付けられて使用される。尚、この実施形態では、洗面ボウル1を使用者から見たときに奥となる側を単に「奥」といい、手前となる側を単に「手前」といい、使用者から見て右側を単に「右」といい、使用者から見て左側を単に「左」というものとする。
【0023】
洗面ボウル本体2は、全体として下方へ窪み、かつ、上方に開放する凹形状のボウル部10と、ボウル部10の上端部に一体成形された上板部20とを有しており、
図2に示すように、ボウル部10及び上板部20の全体が基材10aと表面層10bとの積層体で構成されている。上板部20は、ボウル部10の上端部から手前側、奥側、左側及び右側にそれぞれ略水平に延びる水平板部21と、水平板部21の奥側の端部から上方へ延びる縦板部22とで構成されている。尚、この実施形態では、ボウル部10と上板部20とを一体成形しているが、これに限らず、ボウル部10と上板部20とを別々に成形した後、接合して一体化するようにしてもよい。また、上板部20は省略してもよい。
【0024】
ボウル部10は左右方向に長い形状である。ボウル部10の略中央部が最も下に位置しており、この最も下に位置する底部には、排水口11が該底部を構成する基材10a及び表面層10bを上下方向に貫通するように形成されている。従って、排水口11は、基材10aの裏面に開口するとともに、表面層10bの表面にも開口する。この排水口11には、図示しないがカバーを取り付けることができる。
【0025】
排水管部3は、ボウル部10の下方に配設されている。排水管部3の上流端部が排水口11に接続されている。排水管部3は、ボウル部10内の水を外部に排水するためのものである。
【0026】
ボウル部10の周壁部は、上記底部から該ボウル部10の周縁部に行くほど上に位置するように滑らかに湾曲している。ボウル部10の周壁部における奥側の部分は上下方向に延びており、この奥側の部分において排水口11よりも上側には、オーバーフロー口12が該周壁部を構成する基材10a及び表面層10bを厚み方向に貫通するように形成されている。オーバーフロー口12は、排水口11が例えば栓や異物等によって閉塞されている状態でボウル部10に水が流入して水位が上昇した際に、ボウル部10から水がオーバーフローするのを防止するための補助的な排水口である。オーバーフロー口12は左右方向に長く延びる形状とされているが、円形等であってもよい。
【0027】
基材10aは、ボウル部10の裏側から上板部20の裏側に亘って形成されており、ボウル部10及び上板部20の裏面層を構成している。一方、表面層10bは、ボウル部10の表側から上板部20の表側に亘って形成されており、洗面ボウル本体2の使用者から見える部分は全て表面層10bで覆われている。表面層10bは、単色で着色してもよいし、いわゆる人工大理石調に着色してもよい。
【0028】
基材10aは、例えばポリノルボルネン系樹脂の成形体からなるものであり、厚みは、約2mm〜7mm程度とされている。基材10aの厚みは、洗面ボウル本体2に要求される強度によって変更することが可能であり、上記範囲に限られるものではない。
【0029】
本実施形態では、ポリノルボルネン系樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン(DCPD)を主原料としたオレフィン系架橋タイプの熱硬化性樹脂を挙げることができる。ジシクロペンタジエンの線膨張係数は、JIS K7197による測定法で、8.0×10
−5mm/mm・Kである。
【0030】
基材10aとしては、JIS K7197による測定法で得られた線膨張係数が、8.0×10
−5mm/mm・K以外のジシクロペンタジエンで成形したものであってもよい。例えば、ガラス繊維や、充填材をジシクロペンタジエンに配合することで、線膨張係数を低くすることが可能であり、その数値としては、例えば4.0×10
−5mm/mm・K程度であってもよい。
【0031】
本実施形態で使用可能なノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン環を有するものであればよく、上記したものに限られるものではない。
【0032】
表面層10bの材料は、BMC(バルクモールディングコンパウンド)又はSMC(シートモールディングコンパウンド)である。表面層10bの厚みは、基材10aよりも薄くすることが可能であり、例えば、約1mm〜5mm程度とされている。表面層10bの厚みは、洗面ボウル本体2に要求される強度や見栄え等によって変更することが可能であり、上記範囲に限られるものではない。
【0033】
BMCは、例えば、ビニルエステル樹脂(エポキシアクリレート樹脂)、硬化剤、紫外線吸収剤、内部離型剤、低収縮剤、樹脂チップ、増粘剤、有機繊維、充填剤等を混合してなるものであるが、これら全てを混合させなくてもよく、所望の性能を得ることができれば任意のものを省略することもできる。
【0034】
BMCのトータルの重量を例えば382部としたとき、ビニルエステル樹脂は100部を占めている。ビニルエステル樹脂は、靱性があるとともに、耐汚染性が高いので、洗面ボウル本体2の表面層10bの材料として好ましい。
【0035】
硬化剤は2部を占めている。紫外線吸収剤は1部を占めている。内部離型剤は、5部を占めている。低収縮剤は、5部を占めている。樹脂チップは、樹脂を細かく砕いたものであり、6部を占めている。増粘剤は、2部を占めている。有機繊維は、例えばビニロン等であり、11部を占めている。充填剤は、例えば水酸化アルミニウム等であり、250部を占めている。BMCには、表に示したもの以外にも、例えば、トナーや重合禁止剤等も混合されている。尚、上記した配合量は、あくまでも一例であり、変更することは可能である。
【0036】
有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、フェノール繊維、ポリビニルアルコール繊維、ナイロン繊維等がある。有機繊維の長さは、例えば1mm以上26mm以下に設定されている。有機繊維の長さを短くすれば、成形時のBMCの流動性が高まる反面、長い場合に比べて強度が低下するので、表面層10bの材料としては、上記範囲とするのが成形性と強度を両立できて好ましい。また、有機繊維の直径は、例えば、10μm程度が好ましい。
【0037】
増粘剤としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム等が挙げられる。
【0038】
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、バーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、アルミニウム、ガラスフリット、アルミナ微粉等であってもよい。
【0039】
上記BMCの線膨張係数は、JIS K7197による測定法で、4.4×10
−5mm/mm・Kである。また、上記BMCは硬化が進むことによって収縮する。これを本明細書では硬化収縮という。この収縮率(硬化収縮率)は、0.52%である。硬化収縮率とは、BMCを所定の型で成形した際、型の内寸をH1とし、成形後の製品の外寸をH2とした際、(H1−H2)/H1×100で算出される値である。
【0040】
BMCを成形する際には、成形型における成形面温度が100℃以上の高温とされるので、BMCには、硬化が進む過程で、成形面温度の低下による線膨張係数に対応した収縮と、上記硬化収縮との2つの収縮が起こる。これら2つの収縮を合わせたものを成形時収縮という。上記BMCの場合、成形時収縮の値は、11.40×10
−5mm/mm・Kとなる。
【0041】
BMCの成形時収縮の値をYとし、基材4の線膨張係数をXとしたとき、Y/Xは0.75以上1.25以下となるようにX及びYが設定されている。このため、成形時における表面層10bの収縮度合いと基材10aの収縮度合いとの差が小さくなる。従って、洗面ボウル1の変形量を小さくでき、よって、洗面ボウル1の見栄えを良好にできる。
【0042】
成形時収縮の値、線膨張係数、硬化収縮率は、BMCの各成分の配合割合や配合物によって変更することが可能である。
【0043】
図3や
図4に示すように、洗面ボウル本体2の表面層10bの材料によってオーバーフロー口12の内周面が形成されている。すなわち、表面層10bの材料は、オーバーフロー口12の開口部をその表側から裏側へ通って洗面ボウル1の裏側に達するように成形されており、表面層10bの材料によって基材10aにおけるオーバーフロー口12が形成された部分が覆われている。これにより、使用者が洗面ボウル1を表側から見たときに、オーバーフロー口12の内周面は表面層10bの色及び質感となり、基材10aがオーバーフロー口12の内部に見えることはない。
【0044】
基材10aにおけるオーバーフロー口12の周囲には、他の部位に比べて厚肉な厚肉部14が形成されている。厚肉部14は、基材10aの肉厚を裏側へ向けて拡大させることによって基材10aにおける例えば下側の部位に比べて厚くなっている。従って、基材10aの裏側には厚肉部14を形成したことによる段差ができるが、基材10aの表側には段差ができないようになっている。これにより、厚肉部14の形成が表側の意匠に影響を与えない。
【0045】
厚肉部14の外形状は、洗面ボウル本体2を奥側から見たときに略矩形状となる。厚肉部14の下縁部は、オーバーフロー口12の下縁部から下方へ離れて左右方向に延びている。厚肉部14の左縁部及び右縁部は、オーバーフロー口12の左縁部及び右縁部からそれぞれ左右方向に離れて上下方向に延びている。厚肉部14の上側は、基材10aにおける上板部20を構成する部位と一体化している。これにより、厚肉部14によって上板部20の補強を行うこともできる。尚、厚肉部14の形成範囲は上記した範囲に限られるものではなく、厚肉部14の上側は上板部20から離れていてもよい。
【0046】
基材10aの厚肉部14の裏側には、オーバーフロー口12を囲むように段部14bが形成されている。段部14bの深さは、表面層10bの厚みと略同程度とされている。また、基材10aの厚肉部14の裏側には凹条部14cが形成されている。凹条部14cは、段部14bの周縁部に位置しており、段部14bよりも一段深く形成されている。凹条部14cは、オーバーフロー口12を囲むように環状に延びている。
【0047】
洗面ボウル1の裏側には、表面層10b材料が洗面ボウル1の裏側に達することによってシール面部15が形成されている。シール面部15は、オーバーフロー口12における洗面ボウル1の裏側の開口の周囲に連続する環状に形成されており、段部14b内に位置している。シール面部15と、基材10aにおける厚肉部14とは、略同一面上に位置するようになっている。シール面部15は、略上下方向に延びる略平面で構成されている。表面層10bの材料は基材10aの材料に比べて高い成型精度を得ることができるものであり、この表面層10bの材料によってシール面部15を成形することで、シール面部15の成形精度が高まる。
【0048】
シール面部15の外端部15aは、洗面ボウル1の裏側に達する表面層10bの材料の端部であり、この外端部15aは凹条部14cに入るように形成されている。シール面部15の外端部15aが凹条部14cに入っていることで、表面層10bが基材10aと強固に一体化する。
【0049】
また、シール面部15の外端部15aにおける裏面には、断面が略V字またはU字状の溝16が形成されている。溝16は、シール面部15を囲む環状に延びている。溝16は、凹条部14cに対応する部位に位置しており、後述するスライド型101によって表面層10bの材料を成形する際にできたものである。
【0050】
図2に示すように、厚肉部14には、オーバーフロー管4を締結する締結部材6がねじ込まれる孔部14aが2つ形成されている。孔部14aの深さは、基材10aを貫通しないように設定されている。孔部14aは、溝16の外側において右側と左側とにそれぞれ配置されている。締結部材6としては例えばタッピングスクリュー等を挙げることができる。
【0051】
オーバーフロー管4は、樹脂製で、略上下方向に延びており、上流端部である上端部はオーバーフロー口12に接続され、下流端部である下端部は排水管部3に接続されている。オーバーフロー口12から流出した水はオーバーフロー管4を通って排水管部3に流れるようになっている。
【0052】
オーバーフロー管4の上端部には、左右方向に延びるフランジ41が設けられている。フランジ41の左右両側には、締結部材6が挿通する挿通孔41aがそれぞれ形成されている。挿通孔41aは、厚肉部14の孔部14aと一致するように配置されている。また、オーバーフロー管4の上端部には、左右方向に膨出する膨出部42、42が形成されている。
【0053】
図3に示すように、オーバーフロー管4のフランジ41と、基材10aのシール面部15との間にはシール部材45が配設されている。シール部材45は、オーバーフロー口12を囲む環状に形成されたゴム等の弾性部材からなるものであり、オーバーフロー管4のフランジ41と、基材10aのシール面部15とによって押圧されて弾性変形し、フランジ41及びシール面部15に密着している。
【0054】
次に、上記洗面ボウル1の製造要領について説明する。はじめに、図示しない基材成形装置を用いてジシクロペンタジエンを例えばレジンインジェクションモールディング(RIM)工法によって成形し、基材10aを得る。その後、
図5や
図6に示すような表面層成形型100と裏側成形型102とスライド型101とを用意し、表面層10bを成形する。表面層成形型100の成形面は全体として凸状をなしており、この成形面によって洗面ボウル本体2のボウル部10及び上板部20の表面が成形される。また、スライド型101は、裏側成形型102に設けられていて、
図5に示す進出状態と、
図6に示す後退状態とに切り替えられるものであり、例えば図示しない型駆動装置によって進退方向に駆動される。スライド型101は、進出方向先端面の中央部が進出方向へ突出するように形成されており、その突出方向先端面101aは、表面層成形型100の成形面に当接する面であり、また、外周面101bは、オーバーフロー口12の内周面を成形する面である。
【0055】
スライド型101における進出方向先端部側には、外周面101bよりも外側にシール面部成形面101cが形成されている。このシール面部成形面101cは、スライド型101の進出方向に対して略直交する方向に延びており、シール面部15を成形するための面である。さらに、シール面部成形面101cには、溝成形用突条部101dが形成されている。溝成形用突条部101dは、溝16を成形するためのものであり、環状に延びている。また、表面層成形型100には、成形面の温度を制御する加熱装置が設けられており、任意の温度に調整することができるようになっている。成形面の温度は、例えば、120℃〜150℃程度の高温に設定可能となっている。裏側成形型102も表面層成形型100と同様に、高温に設定可能となっている。
【0056】
まず、スライド型101を後退させた状態で、裏側成形型102に基材10aを投入(インサート)した後、スライド型101を進出状態にする。その後、BMCを基材10aの上に置き、さらに、
図5に示すようにスライド型101を進出状態で表面層成形型100と裏側成形型102を型締め状態にする。型締め完了後に、スライド型101の先端面101aは表面層成形型100の成形面に接する直前まで接近しているが、該成形面には当接しない状態としており、これにより、先端面101aと表面層成形型100の成形面との間にBMCが若干しか流入しないようになっている。つまり、スライド型101の先端面101aと表面層成形型100の成形面との間には、若干の隙間があって、BMCが薄いバリを形成する程度だけ、その隙間にはみ出す。スライド型101の先端面101aと表面層成形型100の成形面との間の隙間はできるだけ小さい方が好ましい。また、スライド型101の外周面101bと、基材10aのオーバーフロー口12となる開口部の内周面との間には、BMCが流入する隙間が形成される。さらに、スライド型101のシール面部成形面101cと、基材10aの段部14bとの間にもBMCが流入する隙間が形成される。
【0057】
そして、表面層成形型100と裏側成形型102を型締めすることによってBMCが基材10aに押し付けられることでBMCが表面層成形型100の成形面によってインサート成形され、表面層成形型100の成形面と基材10aとの間を流動して広がっていく。BMCは、スライド型101の外周面101bと、基材10aのオーバーフロー口12となる開口部の内周面との間に流入し、スライド型101のシール面部成形面101cと、基材10aの段部14bとの間にも流入する。
【0058】
このようにしてBMCによってオーバーフロー口12の内周面が形成されるとともに、基材10aの裏側へ達してシール面部15が成形される。シール面部15の外端部15aは、基材10aの凹条部14cに入った状態で成形される。そして、BMCは、固化することによって基材10aに接着する。この接着は化学的結合によるものである。従って、成形後には、基材10aと表面層10bとは界面剥離しない。
【0059】
スライド型101を進出させた状態で、スライド型101の溝成形用突条部101dの外周面101eが基材10aの厚肉部14に接触して溝成形用突条部101dの周囲がシールされた状態にある。表側から裏側へ流動したBMCが溝成形用突条部101dによって外端部15aよりもさらに外側へ流れるのが抑制される。その結果、成形不良となる確率を低減することができる。
【0060】
BMCが固化すると洗面ボウル本体2が得られる。洗面ボウル本体2を脱型した後、洗面ボウル本体2に排水管部3を取り付けるとともに、オーバーフロー管4を取り付けることで洗面ボウル1となる。オーバーフロー管4を洗面ボウル本体2に取り付ける際には、
図3に示すようにシール部材45をオーバーフロー管4のフランジ41に形成された溝部41aにセットし、基材10aのシール面部15との間に挟むように配置し、
図2に示すように締結部材6、6をオーバーフロー管4のフランジ41の挿通孔41a、41aに挿通した後、基材10aの厚肉部14の孔部14aにねじ込む。締結部材6、6をねじ込む部位が厚肉部14であるので、ねじ込み量を十分に確保することができる。また、厚肉部14は強度が高いので、締結部材6、6を強くねじ込むことができる。これらのことにより、オーバーフロー管4のフランジ41を基材10aに強固に締結することができるので、シール部材45をオーバーフロー管4のフランジ41と、基材10aのシール面部15とによって十分な力で押圧することができ、シール部材45によるシール性を高めることができる。さらに、厚肉部14が変形し難い部分となっているので、シール部材45をシール面部15に押し付けた際に、シール面部15の変形を抑制することができ、このことによってもオーバーフロー口12の周囲を確実にシールすることができる。
【0061】
また、締結部材6としてタッピングスクリューを用いたことにより、締結部材6をねじ込むだけで締結作業を完了することができるので、オーバーフロー管4の締結作業を容易に行うことができる。このとき、厚肉部14に締結部材6をねじ込むようにしているので、表側の意匠面に影響を与えることなく、締結部材6のねじ込み量を十分に確保することができる。
【0062】
以上説明したように、この実施形態に係る洗面ボウル1の排水構造によれば、洗面ボウル1の表面層10bの材料がオーバーフロー口12の内周面を形成するとともに、洗面ボウル1の表側から裏側に達している。これにより、基材10aのうち、オーバーフロー口12を形成する部分が表面層10bを構成する材料で覆われることになるので、オーバーフロー口12の周囲を覆うためのカバーを設けなくても洗面ボウル1の見栄えを良好にできる。しかも、オーバーフロー口12の周囲を覆うためのカバーが不要になることでオーバーフロー口12の周囲に汚れが溜まりに難くなり、手入れを簡単にすることができ、さらに、部品点数を少なくすることができる。
【0063】
また、表面層10bの材料によってオーバーフロー口12の周囲の裏面側に連続するシール面部15を形成したので、シール面部15の成形精度を高めることができ、シール部材45によるシール性を良好にすることができる。
【0064】
また、基材10aにおけるオーバーフロー口12の周囲に厚肉部14を形成し、この厚肉部14に、オーバーフロー管4を締結する締結部材6をねじ込むようにしたので、オーバーフロー管4を基材10aに対して強固に締結でき、オーバーフロー管4とオーバーフロー口12との間のシール性を高めることができる。
【0065】
また、基材10aの裏側にオーバーフロー口12の周囲に連続する凹条部14cを形成し、洗面ボウル1の裏側に達する表面層10bの材料の外端部15aが凹条部14cに入るようにしている。これにより、表面層10bの成形時に表面層10bの材料が基材10aの凹条部14cの外側へはみ出るようになるのを抑制することができるとともに、基材10aと表面層10bとを強固に一体化することができる。
【0066】
尚、上記実施形態では、基材10aの厚肉部14に締結部材6をねじ込む孔部14aを形成しているが、これに限らず、図示しないが、基材10aにボスを形成し、このボスに締結部材6をねじ込むようにしてもよい。
【0067】
また、基材10aの厚肉部14に図示しないインサートナットを埋め込んでもよく、このインサートナットに締結部材6をねじ込むようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、洗面ボウル1が2層構造である場合について説明したが、これに限らず、例えば裏面層を有する3層構造であってもよいし、4層以上の層を有する構造であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、基材10aをジシクロペンタジエンで成形し、表面層10bをBMCまたはSMCで成形しているが、基材10a及び表面層10bの材料はこれらに限られるものではなく、従来から洗面ボウル1の成形に用いられている各種の材料で基材10a及び表面層10bを成形することができる。例えば、基材10aの材料としてジシクロペンタジエンをレジンインジェクションモールディング(RIM)工法を用いて成形し、同じ成形型の表面層成形型100と基材10aとの隙間に、表面層10bの材料として補強繊維が無いかまたは若干の短補強繊維を含有した高流動性の(低粘性の)BMCまたはSMCをインモールコーティング(IMC)工法で成形することもできる。基材10aの材料は、収縮率が大きい為、成形後に収縮して金型内に隙間ができる。この隙間に表面層10bとなる高流動性の(低粘性の)BMCまたはSMCをインモールコーティング(IMC)工法で成形するものである。また、表面層10bをインモールコーティング(IMC)するときに、型締め圧を開放させたり、金型をコアバックさせることもできる。
【0070】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。