(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546468
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】冷蔵ショーケース
(51)【国際特許分類】
F25D 17/04 20060101AFI20190705BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20190705BHJP
F25D 25/02 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
F25D17/04 305
F25D11/00 101C
F25D25/02 P
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-134923(P2015-134923)
(22)【出願日】2015年7月6日
(65)【公開番号】特開2017-15356(P2017-15356A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 公一
(72)【発明者】
【氏名】小池 泰英
(72)【発明者】
【氏名】川上 憂将
(72)【発明者】
【氏名】山崎 真
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 伸二
【審査官】
山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06779357(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0307065(US,A1)
【文献】
米国特許第03407016(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/04
F25D 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口を有する断熱箱体からなり、内部を冷蔵室とする本体と、
前記開口に開閉可能に取り付けられ、前記冷蔵室の内部を視認可能な扉と、
前記冷蔵室内に上下に並べて多段式に取り付けられる複数の棚板と、
前記本体の背面壁に配設される冷却パイプと、を備える冷蔵ショーケースにおいて、
前記棚板は、一方の板面側から他方の板面側への空気の流通を許容しないものであって、前記棚板の後端と前記本体の背面壁との間に隙間が形成されない態様で前記冷蔵室内に取り付けられ、
前記冷却パイプは、一の閉ループ状の冷媒循環経路を構成するものであって、前記複数の棚板によって前記冷蔵室が上下に仕切られて形成される複数の貯蔵スペースに跨る前記背面壁の内部に、水平方向に延びる直線部分が上下に並んだ蛇行状に配設され、
前記冷却パイプの前記直線部分は、前記貯蔵スペースの各々について1本以上配置され、
前記棚板の取り付け高さは、変更可能とされていることを特徴とする冷蔵ショーケース。
【請求項2】
前記冷却パイプは、前記本体の背面壁のみに配設されることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵ショーケース。
【請求項3】
前記複数の棚板の前端と、前記扉の後面との距離が10mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷蔵ショーケース。
【請求項4】
前記複数の棚板が、棚板支持部材を介して前記冷蔵室内に取り付けられるものであって、
前記棚板支持部材は、前記本体の背面壁に当接するように取り付けられて、前記複数の棚板の後端と前記本体の背面壁との間を閉塞することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の冷蔵ショーケース。
【請求項5】
前記棚板支持部材が、前記本体の背面壁に当接する後端部と、前記棚板が載置される支持部との間に、前記支持部よりも下方に配される受部を有することを特徴とする請求項4に記載の冷蔵ショーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、内部を冷蔵室とする断熱箱体を備えた冷蔵ショーケースに関し、特に冷蔵室内に複数の棚板が多段式に取り付けられる冷蔵ショーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
寿司店の厨房等において、調理台の近傍に冷蔵ショーケースが設置されることがある。冷蔵ショーケース内の冷蔵室には、寿司ネタとなる生鮮魚介類等の食材(収納物)が収納され、必要に応じて調理人が前面の扉を開けて食材を取り出し、調理台で調理を行う。
このような用途に用いられる冷蔵ショーケースでは、調理上の利便性を考慮して、食材が剥き出しの状態で冷蔵室内に収納されることも想定される。よって、食材を乾燥から守り、循環冷気との接触による食材の鮮度低下を防止するため、一般的な冷却貯蔵庫のように庫内ファンを用いて強制的に冷気を庫内循環させるのではなく、温度差等に基づく対流によって冷気を循環させる自然冷却式とすることが望ましい。
また、厨房等に設置される冷蔵ショーケースは、寿司店の客席前に設置されるような冷蔵ショーケースとは異なり、美観性よりも利便性や収納力が重視されるのに加え、食材の出し入れも頻繁に行われる。よって、冷蔵室内に複数の棚板を多段式に設置して、多くの食材を収納可能とすることが好ましい。
【0003】
自然冷却式の冷蔵ショーケースの一例として、下記特許文献1に記載のようなものが知られている。この冷蔵ショーケースでは、冷却器を庫内天面に設置して、冷気が下方の庫内に下降するようにされている。また、自然冷却式のその他の例として、特許文献2に縦型冷凍庫が開示されている。この縦型冷凍庫では、断熱箱体の内箱の外面、すなわち天面壁、背面壁、側面壁、および底面壁に冷凍装置の蒸発パイプ(冷却パイプ)を蛇行状に配設する、いわゆるパイプオンシート冷却方式によって庫内が冷却されており、さらに庫内を上下に仕切る棚板にも蒸発パイプが配設されている。
他方、冷蔵室内に複数の棚板を上下に並べて取り付けた冷蔵庫等は、家庭用冷蔵庫等として広く用いられている。こうした多段式の冷蔵庫では、背面壁に配置した冷却パイプによって背面壁の庫内側表面に生じた結露水を流下させること等を目的として、棚板の後端と冷蔵室の背面壁との間に隙間が形成されるような態様で、棚板が取り付けられるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−6671号公報
【特許文献2】特開平3−158683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように冷却器を庫内天面に設置した場合、結露対策が必要となって製品のコストアップを招くのに加え、製品の高さ寸法も大きくならざるを得ない。また、特許文献2のような構成とした場合、冷蔵室の天面や棚板に配設された蒸発パイプによって生じた結露が棚板や収納物に滴下する虞があり、特に、食材が剥き出しのまま収納される可能性がある冷蔵ショーケースに適用することは難しい。そこで、背面および底面のみに蒸発パイプを配設し、一般的な冷蔵庫のように冷蔵室の背面との間に隙間を形成させた状態で複数の棚板を上下多段式に取り付けた冷蔵ショーケースを試作して、冷蔵室内の温度分布の流体解析等を行ったところ、冷蔵室内の上段と下段とでかなりの温度差が生じ、上段に対して下段の方が過剰に冷却されていることが明らかになった。
【0006】
本明細書は、上記状況に鑑み、収納物の乾燥を防止しつつ、冷蔵室内の温度分布の均質化が図られた冷蔵ショーケースを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される冷蔵ショーケースは、前面に開口を有する断熱箱体からなり、内部を冷蔵室とする本体と、前記開口に開閉可能に取り付けられ、前記冷蔵室の内部を視認可能な扉と、前記冷蔵室内に上下に並べて多段式に取り付けられる複数の棚板と、前記本体の背面壁に配設される冷却パイプと、を備え、前記棚板は、一方の板面側から他方の板面側への空気の流通を許容しないものであって、前記棚板の後端と前記本体の背面壁との間に隙間が形成されない態様で前記冷蔵室内に取り付けられることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、多段式の棚板により利便性と収納力が確保された冷蔵ショーケースにおいて、本体の背面壁に冷却パイプを配設することにより、収納物の乾燥を抑制しつつ、自然対流を利用して冷蔵室内が冷却される。ここで、冷蔵室内に取り付けられる棚板を、板面を通した空気の流通が許容されないものとし、かつ、当該棚板の後端と本体の背面壁との間に隙間を形成しない態様で冷蔵室内に取り付けることで、背面壁に配された冷却パイプで冷却された冷気が、棚板自体を通って、或いは棚板の背面側の隙間を通って、下段に下降することがなくなり、冷気の下降によって冷蔵室の下段側が過剰に冷却されることが抑制される。同時に、各棚板によって上下に仕切られた複数の各貯蔵スペース内を循環するような対流が生じ易くなって、冷蔵室内の温度分布の均質化が図られる。この結果、どの段においても安定した適正温度で食材等の収納物を保冷可能となり、利用者は食材ごとにどの段に収納するべきかを検討する必要がなくなって、利便性が向上する。また、冷蔵室温度を検知して冷凍装置の運転を制御するためのサーミスタを冷蔵室内に取り付ける際には、取り付け位置選定の自由度も高くなる。さらに、冷蔵室内を所定温度に維持するための冷凍装置の負荷が軽減されて、より出力が小さく安価な圧縮機等を使用可能となる結果、製品コストの削減を図ることができる。
【0009】
本明細書によって開示される冷蔵ショーケースにおいて、前記冷却パイプは、前記本体の背面壁のみに、水平方向に延びる直線部分が上下に並んだ蛇行状に配設され、前記冷却パイプの前記直線部分は、前記複数の棚板によって前記冷蔵室が上下に仕切られて形成される各貯蔵スペースについて1本以上が配置されていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、複数の棚板によって上下に並んで区画形成される貯蔵スペースのそれぞれについて、1本以上の冷却パイプを配することで、貯蔵スペースごとの冷却が可能となり、この結果、冷蔵室全体の温度分布を均質に調整できる。また、冷却パイプを背面壁のみに配設することで、下段が過剰に冷却される虞を低減するとともに、冷却パイプを底面にも配設する構成と比較して加工組立工数を減らして、製品の製造コストを削減することができる。
【0011】
また、本明細書によって開示される冷蔵ショーケースにおいて、前記複数の棚板の前端と、扉の後面との距離は、10mm以下であることが好ましい。
【0012】
上記構成のように、棚板の前端と、扉の後面との距離を10mm以下とすれば、冷蔵室の前面側において複数の貯蔵スペース間を縦断するような冷気の移動が低減され、各貯蔵スペース内で冷気が自然対流する。この結果、冷蔵室全体の温度分布の一層の均質化を図ることができる。
【0013】
また、本明細書によって開示される冷蔵ショーケースにおいて、前記複数の棚板は、棚板支持部材を介して前記冷蔵室内に取り付けられるものであって、前記棚板支持部材は、前記本体の背面壁に当接するように取り付けられて、前記複数の棚板の後端と前記本体の背面壁との間を閉塞することが好ましい。
【0014】
冷却パイプが配設された本体の背面壁に、棚板自体を当接させた場合、背面壁に生じた結露水や付着したゴミ等が、そのまま棚板上に導かれることとなり、不衛生となる懸念がある。また、複数の棚板を、好みの高さに調整できるように脱着可能に取り付ける場合には、着脱用のクリアランスが必要となるため、棚板の後端と冷蔵室の背面との間を、常に閉塞した状態に維持することは困難である。さらに、背面に当接した棚板の後端が結露水と共に凍り付き、棚板の脱着に不具合を生じる懸念がある。
そこで、上記構成のように、棚板の後端と本体の背面壁との間に棚板支持部材を配すれば、結露水等が棚板上に直接流下することがなくなり、棚板や収納物を衛生的に保つことができる。また、棚板支持部材によって、棚板と本体の背面壁との間を安定的に閉塞した状態に保持できる。さらに、棚板の凍結が回避されるため、冷凍装置の運転中でも棚板の脱着が可能となって、利便性が向上する。
【0015】
本明細書によって開示される冷蔵ショーケースにおいて、前記棚板支持部材は、前記本体の背面壁に当接する後端部と、前記棚板が載置される支持部との間に、前記支持部よりも下方に配される受部を有することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、本体の背面壁に生じた結露水を、棚板支持部材の受部で受容することができる。さらに受部上面の傾斜を適宜調整して、受容した水を冷蔵室の左右側面に導流して背面隅部において流下させるようにすれば、棚板や収納物の汚損を回避しつつ、結露水を底面から排出できる。
【発明の効果】
【0017】
本明細書によって開示される技術によれば、収納物の乾燥を防止しつつ、冷蔵室内の温度分布の均質化が図られた冷蔵ショーケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る冷蔵ショーケースの一部切欠き外観正面図
【
図4】
図2における後棚板支持部材と本体背面壁との当接部分の拡大図
【
図6】
図5における後棚板支持部材の取り付け部分の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、一実施形態について、
図1から
図7に基づいて説明する。なお、以下では、
図1における左側を左(右側を右)、紙面手前側を前側(奥側を背面側または後側)、上側を上(下側を下)とする。
【0020】
まず、本実施形態の冷蔵ショーケース10の全体構造について、
図1および
図2を参照しつつ説明する。
図1に示すように、冷蔵ショーケース10は、横長形状に形成された前面開口型の断熱箱体からなる本体1と、本体1の略中央部に上置きされた箱体からなる機械室2と、を備えている。機械室2の前面には、ステンレス製フィルターを備えた外気取入口21、電源スイッチ22、庫内温度調節機23等が設置され、機械室2の内部には、冷媒配管によって接続された圧縮機、凝縮器等(図示しない)が収容されている。
【0021】
本体1の内部は、冷蔵室3とされている。本体1の前面の開口4は、中央に鉛直方向に設置された柱11によって左右2つの出入口に仕切られ、各出入口に2枚ずつ合計4枚の扉40(40A,40B,40C,40D)が取り付けられている。本実施形態では、扉40はガラス製であって、扉40を閉めた状態でも冷蔵室3内を視認可能となっている。開口4の上下縁には前後2本のレールが設けられており、左右の出入口について柱11寄りの部分を閉鎖する2枚の扉40B,40Cが前側のレールに、外側寄りの部分を閉鎖する2枚の扉40A,40Dが後側のレールに装着されて、引き違い式にスライド開閉可能となっている。このように、スライド式扉を採用したことで、搖動開閉扉を装着した場合のように本体1の前方に扉の開閉空間を確保する必要がなくなり、冷蔵ショーケース10の前方の空間を有効に活用できる。また、冷蔵室3内部には、
図2にも示されているように、収納物を載置するための3枚の棚板50が、上下に離間するように着脱可能に取り付けられて、冷蔵室3内に上下4段の貯蔵スペース31が区画形成されている。棚板50の配設構造については、後に詳述する。
【0022】
図2に示すように、本体1の背面壁12の内部における冷蔵室3寄りの部分には、冷却パイプ60が蛇行状に配設されており、背面壁12は冷蔵室3内の背面側の空気を冷却する冷却壁面として機能する。冷却パイプ60は、水平方向に延びる直線部分61が上下に並んだ蛇行状に配設されており、背面壁12内のその他の部分には、断熱材が発泡充填されている。冷却パイプ60は、本体1を構成する壁面のうち、天面壁13、側面壁14、底面壁15には配されず、背面壁12のみに配設されている。
図2に示すように、冷却パイプ60の直線部分61は、前述のように冷蔵室3内に区画形成される4段の貯蔵スペース31それぞれについて、1本以上が配置される。本実施形態では、後述する棚板50の平板部51の設置面を基準として、各貯蔵スペース31について2本の直線部分61が配設されている。なお、冷却パイプ60の両端は、本体1の上方に設けられた機械室2内に引き込まれ、前述の圧縮機、凝縮器等を接続する冷媒配管に接続されて、閉ループ状の冷媒循環経路を備えた周知の冷凍装置が構成されている。
【0023】
続いて、棚板50の配設構造について、
図2ないし
図7を参照しつつ説明する。
図2等に示すように、本体1の左右両側面壁14には、鉛直方向に延びる2本の棚柱70(70F,70R)が固着されている。以下、側面壁14の前寄りの部分に取り付けられる棚柱を前棚柱70F、後寄りの部分に取り付けられる棚柱を後棚柱70Rとする。棚柱70は、何れも側面壁14にネジ止めされているが、後棚柱70Rをネジで固着するためのネジ孔71は、ネジ7の脚部断面に合わせた略真円形状ではなく、水平方向にやや長い扁平形状に形成されており、後棚柱70Rの位置を前後方向に調整しながら固着可能となっている。棚柱70の中央には、冷蔵室3の庫内側に突出するレール部72が設けられており、このレール部72に、一定間隔で上下に配列された複数の装着孔73が開孔され、所望の高さの装着孔73に棚受80を取り付けできるようになっている。
【0024】
図7に拡大して示すように、棚受80は、前面視で略くの字型をなすように折り曲げられた金属板材であって、棚柱70(
図7では70R)に取り付けられた状態で、略水平に保持されて棚板50を載置する棚受部81と、棚受部81の下面の前側から後下がりに延びて棚柱70に対して突っ張り支持する支持部82とを備える。棚受部81の上面からは、係止爪83が上方に突設されている。
【0025】
図6および
図7等に示すように、棚受80上に棚板支持部材90(90R,90F)が載置される。棚板支持部材90は、金属板材を、
図3に示すような鉤針様の断面形状をなすように成形加工した長尺状の部材であって、左右両端部が棚受80の上面に載せられて、冷蔵室3内に支持される。
図2および
図5に示すように、左右の前棚柱70Fに取り付けられた2個の棚受80上には前棚板支持部材90Fが、左右の後棚柱70Rに取り付けられた2個の棚受80上には後棚板支持部材90Rが、載置される。
図3に示すように、棚板支持部材90は棚板50を載置する載置部91と、載置部91前側の端部が下方に曲げられた後に後方に略直角に折り返された補強部92と、載置部91後側の端部が下方に曲げられた後に後方に略直角に曲げ形成された受部93とを備えている。受部93の水平部分の上面と、載置部91の上面との高さの差は、背面壁12に生じる結露水Wを受け止めるのに十分な大きさとなるように寸法設定され、本実施形態では約12mmとされている。
図6および
図7に示すように、本実施形態では、補強部92の左右両側端部には切欠94が形成されて、棚受80上に棚板支持部材90を載せやすくなっている。
図6に示すように、載置部91の左右両側端寄りの部分には、左右方向に長径を有する楕円形状の係止孔95が開孔されており、この係止孔95内に前述の棚受80の係止爪83が嵌合係止されることで、棚板支持部材90の前後方向へのスライド移動が規制される。また、前述のように、楕円形のネジ孔71を活用して後棚柱70Rの前後位置を調整することにより、後棚板支持部材90Rは、受部93の後端部を本体1の背面壁12に隙間なく当接させた状態で取り付けられる。ここで、受部93の水平部分を、左右方向において両側が中央よりも低くなるように(中央から左右両側面側に向けて下降するように)、また載置部91側が後端部よりも低くなるように(背面側に向けて下降するように)、傾斜させてもよい。このようにすれば、
図6に示すように、受部93で受容した背面壁12の結露水W等を、背面壁12手前の左右隅部に向けて容易に導流できる。後棚柱70Rの背面壁12側で後棚板支持部材90Rの側面壁14側、すなわち冷蔵室3の背面側の左右隅部には、隙間Sが形成されており、この隙間Sを通じて結露水W等を冷蔵室3の底面壁15まで流下させることで、棚板50や収納物の汚損を回避しつつ、結露水W等を本体1の底面から排出できる。なお、底面壁15は、
図2に示すように前下がりに傾斜しており、この上面には底面板16が装着されている。
【0026】
図5等に示すように、前後2本の棚板支持部材90F,90Rの間を架け渡すようにして、5枚の棚板50が取り付けられる。なお、
図5は、左右両端の棚板50を取り外した状態を表している。本実施形態では、5分割された棚板50を使用することによって、棚板50の脱着が容易に行えるようになっている。棚板50は、
図2等に示すように、収納物を載置するための平板部51と、平板部51の前端部および後端部が下方に向けて傾斜するように屈曲された前端傾斜部52および後端傾斜部53と、を備える。棚板50としては、スノコや網等のように棚板自体を空気が通過できるようなものでない限り、樹脂板やガラス板、金属板等を適宜選択して使用できる。
図4等に示すように、棚板50は、その後端と背面壁12との間に若干のクリアランスが形成され、平板部51の後寄りの部分が後棚板支持部材90Rの載置部91上に支持されて、後端傾斜部53が受部93上に位置するように取り付けられる。このように、背面壁12に隙間なく当接するように取り付けられた後棚板支持部材90Rが、棚板50の下方に重なった状態となることで、棚板50の後端と、背面壁12との間のクリアランスが閉塞される。他方、棚板50の前部は、
図2等に示すように、平板部51の前寄りの部分が前棚板支持部材90Fの載置部91上に支持され、前端傾斜部52が前棚柱70F等よりも前面側に突出するように取り付けられる。各部材は、棚板50が取り付けられた状態において、前端傾斜部52の前端と、開口4の前側のレールに取り付けられた扉40B,40Cの後面との距離が10mm以下となるように寸法調整されている。
【0027】
続いて、
図2を参照しつつ、冷蔵室3内における冷気の循環について説明する。
冷蔵室3内において、前述のように冷却壁面として機能する本体1の背面壁12付近で冷却された空気は下降して各貯蔵スペース31内の背面側に下降流を生じる。下降した冷気は、各貯蔵スペース31の下方に取り付けられた棚板50(最下段の貯蔵スペース31については本体1の底面板16)にぶつかることで方向転換し、下方の棚板50(最下段の貯蔵スペース31では底面板16)に沿って前方に向かう冷却流を生じる。貯蔵スペース31内の空気および収納物を冷却しつつ前面側に移動した冷気は、扉40にぶつかることで前方への移動が妨げられると同時に、断熱材を備えない扉40を通して冷蔵室3内に入熱する外部熱によって温められ、各貯蔵スペース31内の前面側に上昇流を生じる。上昇した空気は、各貯蔵スペース31の上方に取り付けられた棚板50(最上段の貯蔵スペース31については本体1の天面壁)にぶつかって方向転換し、上方の棚板50に沿って後方に流れる回帰流を生じる。貯蔵スペース31の上寄りの部分を移動してきたこの空気は、再び背面壁12近傍で冷却されて下降流を生じる。このようにして、各貯蔵スペース31内において、背面側を下降する下降流、前方に向かって下寄りの部分を移動する冷却流、前面側で上昇する上昇流、後方に向かって上寄りの部分を移動する回帰流からなる自然対流に基づいた冷気の循環流路が完成され、ファン等を設けなくとも各貯蔵スペース31内が効率的に冷却される。
【0028】
本実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
本実施形態では、庫内ファン等を用いて冷蔵室3内の冷気を強制的に循環させるのではなく、本体1の背面壁12に冷却パイプ60を配設した、いわゆるパイプオンシート方式により冷蔵室3内を冷却し、自然対流によって冷気を循環させる構成としているため、収納物の乾燥を抑制しつつ、自然対流を利用して冷蔵室3内を冷却することができる。
【0029】
また、本実施形態では、棚板50を、板面を通した空気の流通を許容しない板材で形成し、かつ、当該棚板50の後端と本体1の背面壁12との間に隙間が形成されない態様で冷蔵室3内に取り付けた。これにより、背面壁12に配された冷却パイプ60で冷却された冷気が、棚板50自体を通って、或いは棚板50の背面側の隙間を通って、棚板によって上下に仕切られた複数の貯蔵スペース31間を縦断して下降することがなくなる。よって、冷蔵室3の下段側が過剰に冷却されることが抑制されると同時に、各貯蔵スペース31内で冷気が自然対流する結果、冷蔵室3内の温度分布の均質化が図られる。
さらに、本実施形態では、棚板50の前端と、扉40の後面との距離を10mm以下と狭めたため、冷蔵室3の前側において、複数の貯蔵スペース31間を縦断して移動する冷気の流れが低減される。よって、冷蔵室3内全体の温度分布の一層の均質化が図られる。
上記の結果、どの段においても安定した適正温度で収納物を保冷可能となり、利用者は食材ごとにどの段に収納するべきかを検討する必要がなくなって、利便性が向上する。また、冷蔵室3の温度を検知して冷凍装置の運転を制御するためのサーミスタを、冷蔵室3内に取り付ける際の位置選択の自由度も高くなる。さらに、冷蔵室3内を所定温度に維持するための冷凍装置の負荷が軽減されて、より出力が小さく安価な圧縮機等を使用可能となる結果、冷蔵ショーケース10の製品コストの削減を図ることができる。
【0030】
また、本実施形態では、複数の棚板50によって区画形成される貯蔵スペース31のそれぞれについて、冷却パイプ60の直線部分61を2本ずつ配することで、貯蔵スペース31ごとの冷却が可能となり、冷蔵室3全体の温度分布を調整することができる。また、冷却パイプ60を背面壁12のみに配設したため、冷却パイプ60を底面壁15にも配設する構成と比較して加工組立工数が低減され、冷蔵ショーケース10の製造コストを削減できる。
【0031】
また、本実施形態では、棚板50の後端と本体1の背面壁12との間のクリアランスを、後棚板支持部材90Rで閉塞する構成としている。よって、背面壁12に生じた結露水W等が棚板上に直接流下することがなくなり、棚板50や収納物を衛生的に保つことができる。本実施形態では、結露水W等を後棚板支持部材90Rの受部93で受け止められるようにしている。さらに受部上面の傾斜を適宜調整して、受容した水を冷蔵室の左右側面に導流して背面隅部において流下させるようにすれば、棚板や収納物の汚損を回避しつつ、結露水を底面から排出できる。
本実施形態では、一旦、後棚柱70Rの前後方向の取り付け位置を適切に調整して後棚板支持部材90Rを設置すれば、メンテナンス等により棚板50を取り外した場合であっても、棚板と本体の背面壁との間を閉塞した状態に保持できる。さらに、棚板の凍結が回避されるため、冷凍装置の運転中でも棚板の脱着が可能となって、利便性が向上する。
【0032】
<その他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は、上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0033】
(1)本体前面の開口に取り付けられる扉は、スライド式の扉に限定されるものではない。例えば、開口の左右縁または上下縁を軸として搖動開閉可能に取り付けられる扉であってもよいし、跳ね上げ式の扉であってもよい。
(2)上記実施形態では、棚板の後端と本体の背面壁との間のクリアランスを、棚板支持部材で閉塞する構成について記載したが、これに限定されるものではない。要は、棚板が、その後端と背面壁との間に隙間が形成されない態様で冷蔵室内に取り付けられていればよく、例えば棚板の後端を背面壁に密着した状態で配置できる場合には、棚板支持部材を背面壁に隙間なく当接させた状態で取り付ける必要はない。また、上記実施形態では、冷蔵室における高さを適宜変更できるように脱着可能に取り付けた棚板支持部材について記載したが、これに限定されるものではなく、冷蔵室内の壁面に直接棚板支持部材を固着する等してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…本体、3…冷蔵室、4…開口、10…冷蔵ショーケース、12…背面壁、31…貯蔵スペース、40…扉、50…棚板、60…冷却パイプ、61…(冷却パイプの)直線部分、70…棚柱、80…棚受、90…棚板支持部材