特許第6546476号(P6546476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546476
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】局所換気装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/06 20060101AFI20190705BHJP
   F24F 13/075 20060101ALI20190705BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20190705BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   F24F13/06 A
   F24F13/075
   F24F13/02 D
   F24F7/08 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-161843(P2015-161843)
(22)【出願日】2015年8月19日
(65)【公開番号】特開2017-40419(P2017-40419A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】591224869
【氏名又は名称】クリフ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598169011
【氏名又は名称】有限会社 隆計画
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森 正夫
【審査官】 浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−266385(JP,A)
【文献】 特開2011−012932(JP,A)
【文献】 特開2001−174037(JP,A)
【文献】 特開2001−124381(JP,A)
【文献】 特開平8−075208(JP,A)
【文献】 特開平8−061735(JP,A)
【文献】 特開平5−157306(JP,A)
【文献】 特開2001−317785(JP,A)
【文献】 特開2005−317205(JP,A)
【文献】 特開平6−313599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/06
F24F 7/08
F24F 13/02
F24F 13/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の下面中央に排気ダクトを通じて室内空気を外部に排気するための空気吸込口を備えるとともに、前記空気吸込口の外周側に同心円状に給気ダクトを通じて供給された空気を同一周回方向の斜め下方に向けて吹き出す空気吹出口を備えた局所換気装置において、
前記局所換気装置は、前記排気ダクト及び給気ダクトが接続されるとともに、下面に前記空気吸込口と空気吹出口とが設けられた平面視で円筒形状を成す外ケーシングと、該外ケーシング内部の下側に配設され、前記外ケーシングとの間に所定の高さ範囲に亘り全周方向に環状の給気用流路空間を形成するとともに、排気流路を画成する平面視で円筒形状を成す内ケーシングと、前記内ケーシング上面の中央部と排気ダクトとを接続する排気ダクト接続管とを有し、前記外ケーシング内の前記排気ダクト接続管周りの環状空間が給気チャンバとされ、
前記環状の給気用流路空間において、全周に亘って円周方向に所定間隔で傾斜方向に沿った風向板が多数並設されることにより断面矩形の斜め流路が並列形成され、これら並列形成された斜め流路を一つ置きに塞ぐとともに、塞がれていない斜め流路の少なくとも先端部に室内に開口を臨ませて円形管材を配設したことを特徴とする局所換気装置。
【請求項2】
前記給気チャンバ内において、上段側に前記排気ダクト接続管の外面を基端として外方側に突出するドーナツ状の第1整流板を配設するとともに、その下段位置に外ケーシングの内面を基端として内方側に突出するドーナツ状の第2整流板を配設した請求項1記載の局所換気装置。
【請求項3】
前記外ケーシングの直径はφ300〜600mmである請求項1,2いずれかに記載の局所換気装置。
【請求項4】
前記環状の給気用流路空間の高さ方向寸法は150〜250mmであり、幅方向寸法は20〜50mmである請求項1〜3いずれかに記載の局所換気装置。
【請求項5】
前記風向板の傾斜角度は35〜55°、水平方向間隔は35〜55mmで配設されている請求項1〜4いずれかに記載の局所換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工的に螺旋状の吸引旋回流を生起せしめることにより局所的な換気を効果的に行うための局所換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、調理加熱によって発生する熱や汚染空気、タバコの煙など、特定の発生源の空気を局所的に換気するための局所換気装置が知られている。この局所換気装置として、近年は人工的に竜巻を生じせしめ効果的に排気を行うものがある。機構的には、給気側において旋回気流により遠心力を生じせしめると同時に、中心部に吸引負圧を発生させることにより、吸引方向に細長い負圧コアが形成され、この負圧コア部に対する求心力と遠心力がバランスする範囲の旋回気流が渦流となって収束されながら吸引方向に向けて人工的に竜巻が発生するようにしたものである。
【0003】
具体的にこの種の換気装置としては、例えば下記特許文献1に、給気ダクトからの流入空気が旋回方向に導入される給気チャンバーと、この給気チャンバーの内側に同心状に設けられ、排気ダクトを介して空気を排出する排気チャンバーと、この排気チャンバーと上記給気チャンバーとの間に形成され、上記給気ダクトから導入された空気を旋回状態で流す流路長の長い還流型の通風路と、該還流型の通風路中に設けられ、旋回状態で流れる空気流を整流する整流板と、上記給気チャンバーの下端側開口面に設けられ、旋回流生成ステータを介して旋回方向に空気を吹き出す空気吹出口と、上記排気チャンバーの下端側開口面に設けられ、上記排気チャンバー内に所定局所領域の空気を旋回渦流状態で吸引する空気吸込口とを備えてなる換気装置が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2に、換気領域の上方に設けられ、装置本体の中央部側空気吸込口から上記換気領域における空気を吸込んで外部に排気する一方、外部から導入した空気を、上記装置本体の外周部側空気吹出口から上記換気領域の外周囲を覆ってエアカーテン状に吹き出す換気装置であって、上記装置本体の外周部側空気吹出口から吹き出される空気を、上方側から下方側に次第に旋回半径を拡大しながら下降する螺旋状の旋回気流に形成するとともに、上記装置本体の中央部側空気吸込口から吸込まれる空気をそれに対応して下方側から上方側に次第に旋回半径を縮小する螺旋状の旋回気流とした換気装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3327247号公報
【特許文献2】特開2001−317785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
病院などの医療施設や介護施設においては、患者のおむつ交換などの処置を行う間、臭気が拡散しないように局所換気装置が設置されるケースが増加してきているが、この種の局所換気装置は各ベッド毎に天井面に埋め込んで設置されることが多い。従って、装置の小型化が要求されることになる。
【0007】
しかしながら、前記特許文献1や特許文献2に係る換気装置の場合は、同文献に記載されるように、一般家庭の台所や業務用の厨房等における加熱調理器具の上方に設置されたり、工場の汚染粉塵発生箇所に設置されるものであり、装置自体の寸法が大型化してしまう傾向にある。
【0008】
本発明者らの実験等により局所換気装置が大きい場合は効果的に螺旋状の吸引旋回流を生起させ易いことは実証済みであるが、装置が小型化するに伴い螺旋状の吸引旋回流を生起させ難くなることが知見された。
【0009】
具体的には、前記特許文献1記載の換気装置は、チャンバ内部で気流に対して旋回方向のベクトルを与える旋回流生成ステータ(斜め方向の風向板)を多数配設するようにしているが、装置を小型化した場合、吹出口からの気流が互いに干渉しあって効果的に螺旋状の吸引旋回流を生起させることができないことが知見された。また、前記特許文献2記載の換気装置の場合は、所定の通路長さを有して全周方向に連続して環状に開口されており、その上方側から下方側に向けて開口径が拡大する所定の傾斜角で斜めに形成されている。そして、そのような空気吹出通路部分に、それぞれ螺旋方向下方に所定の傾斜角(ラジアル角)を有した多数の旋回流生成ステータ(旋回流生成手段)が全周方向に所定の間隔を保って並設されている構造を採用しているものであるが(段落[0024]参照)、この場合も装置を小型化した場合、吹出口からの気流が互いに干渉しあって効果的に螺旋状の吸引旋回流を生起させることができないことが知見された。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、装置の小型化が可能であり、かつ装置を小型化した場合であっても、螺旋状の吸引旋回流を確実に生起することが可能な局所換気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、装置本体の下面中央に排気ダクトを通じて室内空気を外部に排気するための空気吸込口を備えるとともに、前記空気吸込口の外周側に同心円状に給気ダクトを通じて供給された空気を同一周回方向の斜め下方に向けて吹き出す空気吹出口を備えた局所換気装置において、
前記局所換気装置は、前記排気ダクト及び給気ダクトが接続されるとともに、下面に前記空気吸込口と空気吹出口とが設けられた平面視で円筒形状を成す外ケーシングと、該外ケーシング内部の下側に配設され、前記外ケーシングとの間に所定の高さ範囲に亘り全周方向に環状の給気用流路空間を形成するとともに、排気流路を画成する平面視で円筒形状を成す内ケーシングと、前記内ケーシング上面の中央部と排気ダクトとを接続する排気ダクト接続管とを有し、前記外ケーシング内の前記排気ダクト接続管周りの環状空間が給気チャンバとされ、
前記環状の給気用流路空間において、全周に亘って円周方向に所定間隔で傾斜方向に沿った風向板が多数並設されることにより断面矩形の斜め流路が並列形成され、これら並列形成された斜め流路を一つ置きに塞ぐとともに、塞がれていない斜め流路の少なくとも先端部に室内に開口を臨ませて円形管材を配設したことを特徴とする局所換気装置が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明において、本発明に係る局所換気装置は、排気ダクト及び給気ダクトが接続されるとともに、下面に前記空気吸込口と空気吹出口とが設けられた平面視で円筒形状を成す外ケーシングと、該外ケーシング内部の下側に配設され、前記外ケーシングとの間に所定の高さ範囲に亘り全周方向に環状の給気用流路空間を形成するとともに、排気流路を画成する平面視で円筒形状を成す内ケーシングと、前記内ケーシング上面の中央部と排気ダクトとを接続する排気ダクト接続管とを有し、前記外ケーシング内の前記排気ダクト接続管周りの環状空間が給気チャンバとされる。
【0013】
そして、前記環状の給気用流路空間において、全周に亘って円周方向に所定間隔で傾斜方向に沿った風向板が多数並設されることにより断面矩形の斜め流路が並列形成され、これらの斜め流路を一つ置きに塞ぐとともに、塞がれていない斜め流路の少なくとも先端部に室内に開口を臨ませて円形管材を配設してある。
【0014】
前記環状の給気用流路空間において、全周に亘って円周方向に所定間隔で傾斜方向に沿った風向板が多数並設されることにより断面矩形の斜め流路が並列形成された構造は、前記特許文献2と同様の吹出流路構造とされるが、このような吹出流路構造では、隣接する吹出口からの吹出空気同士が微妙に干渉しあって給気による旋回流が拡散する傾向にあるため、臭気発生源まで届いていなかったり、給気による旋回流が臭気発生源まで届いたとしても給気の旋回流が拡散する影響により排気の渦流が拡散する傾向にあることが知見された。
【0015】
そこで本発明では、並列形成された斜め流路を一つ置きに塞ぐとともに、塞がれていない斜め流路の少なくとも先端部に室内に開口を臨ませて円形管材を配設するようにした。並列形成された斜め流路を一つ置きに塞ぐことにより、隣接する吹出口からの吹出空気同士が微妙に干渉し合うことが防止され給気の旋回流が拡散するのを防止できるようになる。また、吹出口の断面形状が矩形のままの場合は、流路の周方向に粘性係数が一様ではないため吹出口から噴出される空気が4隅部分で抵抗となり拡散が大きくなる傾向にある。これに対して、吹出口の断面形状を円形流路とした場合は、周方向に粘性係数が一様であるため、吹出口から噴出される空気の拡散が抑えられるようになる。なお、上記本発明で採用した構成の効果については、後述の実験例で詳述する。
【0016】
請求項2に係る本発明として、前記給気チャンバ内において、上段側に前記排気ダクト接続管の外面を基端として外方側に突出するドーナツ状の第1整流板を配設するとともに、その下段位置に外ケーシングの内面を基端として内方側に突出するドーナツ状の第2整流板を配設した請求項1記載の局所換気装置が提供される。
【0017】
上記請求項2記載の発明では、整流板を上下二段に亘って配設するようにしたものである。これによって、給気チャンバ内での旋回流を安定させることができるとともに、給気風速の均等化が図れるようになり、排気効率が向上できるようになる。
【0018】
請求項3に係る本発明として、前記外ケーシングの直径はφ300〜600mmである請求項1,2いずれかに記載の局所換気装置が提供される。
【0019】
上記請求項3記載の発明では、前記外ケーシングの外径寸法を規定したものである。本発明は特に小型化された局所換気装置に対して好適に適用されるものであるが、従来型の中型装置や大型装置に対しても同様に適用が可能である。
【0020】
請求項4に係る本発明として、前記環状の給気用流路空間の高さ方向寸法は150〜250mmであり、幅方向寸法は20〜50mmである請求項1〜3いずれかに記載の局所換気装置が提供される。
【0021】
上記請求項4記載の発明では、前記環状の給気用流路空間の寸法を規定したものであり、上記数値範囲とすることにより装置を小型化した場合であっても、螺旋状の吸引旋回流を確実に生起することが可能になる。
【0022】
請求項5に係る本発明として、前記風向板の傾斜角度は35〜55°、水平方向間隔は35〜55mmで配設されている請求項1〜4いずれかに記載の局所換気装置が提供される。
【0023】
上記請求項5記載の発明では、風向板の配置態様について規定したものであり、これにより装置を小型化した場合であっても、螺旋状の吸引旋回流を確実に生起することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、装置の小型化が可能であり、かつ装置を小型化した場合であっても、螺旋状の吸引旋回流を確実に生起することが可能な局所換気装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る局所換気装置1を配置した室内の外観図である。
図2】局所換気装置1を示す、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図3】局所換気装置1の断面図である。
図4図3のIV−IV線矢視図である。
図5図3のV−V線矢視図(底面図)である。
図6】給気用流路空間の斜め流路12部分の構造を示す内ケーシング外観図である。
図7】排気状態検証実験のための実験室を示す、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
図8】排気状態検証実験で使用する局所換気装置20の基本構造図である。
図9】試験体(グループI)を示す局所換気装置の側面図である。
図10】試験体(グループIIのケース1)を示す吹出口状態図である。
図11】試験体(グループIIのケース2)を示す吹出口状態図である。
図12】試験体(グループIIのケース3)を示す、(A)は側面図、(B)は底面図である。
図13】試験体(グループIII〜V)を示す側面図である。
図14】効果が見られた改良案の組み合わせに係る試験体を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0027】
本発明に係る局所換気装置1は、例えば図1に示されるように、病院などの医療施設や介護施設などにおいて、各ベッドの上方の天井面にそれぞれ局所換気装置1を設け、ベッド上で患者のおむつ交換などの処置を行う間、そのベッドに対応する局所換気装置1から旋回流Nを吹き出すと同時に室内空気を吸い込むことによって局所換気装置1の下空間に局所換気装置1に向かう渦流Tを形成し、排泄物などの臭気を室内に拡散させないよう個別的な局所換気を行うためのものである。なお、本局所換気装置1は、従来より使用されている調理加熱器具の使用時に発生する熱や汚染空気の換気用、タバコの煙の排煙用としても同様に使用することが可能である。
【0028】
前記局所換気装置1は、図2に示されるように、装置本体の下面中央に排気ダクト6を通じて室内空気を外部に排気するための空気吸込口8を備えるとともに、前記空気吸込口8の外周側に同心円状に給気ダクト5を通じて供給された空気を同一周回方向の斜め下方に向けて吹き出す空気吹出口7を備えるものである。
【0029】
具体的には前記局所換気装置1は、前記排気ダクト6及び給気ダクト5が接続されるとともに、下面に前記空気吸込口8と空気吹出口7とが設けられた平面視で円筒形状を成す外ケーシング2と、該外ケーシング2内部の下側に配設され、前記外ケーシング2との間に所定の高さ範囲に亘り全周方向に環状の給気用流路空間9を形成するとともに、排気流路を画成する平面視で円筒形状を成す内ケーシング3と、前記内ケーシング3上面の中央部と排気ダクト6とを接続する排気ダクト接続管4とを有し、前記外ケーシング2内の前記排気ダクト接続管4周りの環状空間が給気チャンバ11とされる。
【0030】
そして、前記環状の給気用流路空間9において、詳細には図3に示されるように、全周に亘って円周方向に所定間隔で傾斜方向に沿った風向板10,10…が多数並設されることにより断面矩形の斜め流路12,12…が並列形成され、これら並列形成された斜め流路12,12…を一つ置きに塞ぐとともに、塞がれていない斜め流路12、12…の少なくとも先端部に室内に開口を臨ませて円形管材14を配設している。
【0031】
以下、更に具体的に詳述する。
【0032】
前記外ケーシング2は、下面に前記空気吸込口8と空気吹出口7とが設けられた平面視で円筒形状を成す下面が開口した函体であり、上部側側面に給気ダクト5と排気ダクト6とが夫々接続されている。前記給気ダクト5は、図2(A)に示されるように、給気チャンバ11内に供給された空気が排気ダクト接続管4周りを周回する旋回流となるように、中心位置から外側に偏心させた位置に接続されるようになっている。前記排気ダクト6が前記給気ダクト2に対して直交する位置であって中心に向かう位置に接続されている。前記外ケーシング2の直径はφ300〜600mm、好ましくは300〜400mmとされる。
【0033】
前記内ケーシング3は、前記外ケーシング2の内部の下側に同心状に配置された平面視で円筒形状を成す下面が開口した函体であり、前記外ケーシング2との間に所定の高さ範囲に亘りかつ全周方向に沿って環状の給気用流路空間9が形成される。前記環状の給気用流路空間9の高さ方向寸法Hは150〜250mm、好ましくは180〜220mmであり、幅方向寸法Bは20〜50mm、好ましくは20〜30mmとされる。なお、内ケーシング3の高さ寸法は、前記環状の給気用流路空間9の高さ方向寸法Hと同じであるため、150〜250mm、好ましくは180〜220mmとされる。前記内ケーシング3上面の中央部と排気ダクト6とを接続する排気ダクト接続管4が設けられており、内ケーシング3の上部側であって前記外ケーシング1内の前記排気ダクト接続管4周りの環状空間が給気チャンバ11となっている。この内ケーシング3の下面にはガラリが設けられており(図示せず)、空気吸込口8を形成している。
【0034】
前記環状の給気用流路空間9においては、詳細には図3図5に示されるように、全周に亘って円周方向に所定間隔Pで傾斜方向に沿った風向板10,10…が多数並設されることにより断面矩形の斜め流路12,12…が並列形成されている。前記斜め流路12の先端開口が前記空気吹出口7を構成する。
【0035】
前記風向板10は内ケーシング3の外面を基端として外側に突出するように固設されているが、外ケーシング2の内面を基端として内側に突出するように固設されてもよい。また、前記風向板10は、傾斜角度θが35〜55°、好ましくは40〜50°で、水平方向間隔Pが35〜55mm、好ましくは40〜50mmで配設されている。
【0036】
そして、本局所換気装置1では前記並列形成された斜め流路12,12…を一つ置きに塞ぎ板13により塞ぐとともに、塞がれていない斜め流路12,12…の少なくとも先端部に、室内に開口を臨ませて円形管材14を配設している。図示例では、斜め流路12の先端部(斜め流路の出口)に塞ぎ板13を溶接付け等により固設し斜め流路を塞いでいるが、塞ぎ板13の配設位置は斜め流路への入口又は中間に配設するようにしてもよい。また、前記円形管材14は、各断面矩形の斜め流路12に1:1の関係で、矩形断面の斜め流路12に内接する外径寸法のものを単独配置するのがよい。配設位置は斜め流路12の流路長に対して比較的短い(10〜30%長さ)のものを室内に開口を臨ませるように先端部(出口部分)に配置するようにするのがよい。また、前記矩形断面の斜め流路12内に円形管材14を内接状態で設置した際、四隅に僅かに隙間ができることになるが、この隙間は塞いでもよいし、塞がなくてもよい。
【0037】
一方、前記給気チャンバ11内においては、図2(B)及び図3に示されるように、上段側に前記排気ダクト接続管4の外面を基端として外方側に突出するドーナツ状の第1整流板15を配設するとともに、その下段位置に外ケーシング2の内面を基端として内方側に突出するドーナツ状の第2整流板16を配設するのがよい。整流板15,16を上下二段でに亘って配設することにより、給気チャンバ11内での旋回流を安定させることができるとともに、給気風速の均等化が図れるようになり、排気効率が向上できるようになる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明に係る局所換気装置を開発するために行った排気状態検証実験について詳述する。
【0039】
(1)実験環境条件
図7に示されるように、病室を想定し、実験空間をW4000mm×D6000mm×H2700mmの空間とし、中央の天井面に局所換気装置20を設置し、その下方にベッド21を設置した。ベッド21のサイズは1800mm×900mmとし、高さを500mmとした。臭気を可視化するためにベッド21の下方に煙発生器22(機器名:スモークマシーン[MODEL:Z1000II])を設置し、ベッド21の中央から煙を発生させるようにした。
【0040】
前記局所換気装置20の基本構造は、図8に示される構造、すなわち図2図6に示される本発明に係る局所換気装置1と対比すると、第1整流板15及び第2整流板16を無くし、かつ斜め流路12の塞ぐことなくすべての流路を有効とし、円形管材14を省略した構造とした。寸法は、外ケーシング2の直径をφ375mm、給気ダクト5及び排気ダクト6の直径をφ175mm、環状の給気用流路空間9は高さ方向寸法は200mm、幅方向寸法は25mmとし、風向板10は傾斜角度45°、水平方向間隔は45mmとした。
【0041】
(2)基本構造の局所換気装置20による排気状況
先ず、図8に示される基本構造の局所換気装置20により、給排気送風量を種々変化させて、煙の排気状態を確認した。結果を下表1に示す。
【表1】
表1に示されるように、条件No.1〜6については、煙が真上に上昇せずに拡散した。これは、給気の回転エネルギーがトルネード現象を発生させるベッドまで届いていないため煙が淀んでしまうことに原因していると思われる。また、条件No.7〜9については、煙が大きな回転で上昇するが、ほとんど拡散した。これは、給気の回転エネルギーがベッド上までほぼ届いているが、給気の吹出風が排気の範囲にも影響を及ぼしているため、上昇した煙を拡散させてしまうためと思われる。
【0042】
以上のように、図8に示される基本構造の局所換気装置20では、給排気送風量を種々変化させても理想的な排気を達成することはできなかった。
【0043】
(3)基本構造に対する改良
そこで、図8に示される基本構造の局所換気装置20に対して各種の改良案を試み、排気性能を検証した。
【0044】
改良案は、グループI〜Vに分けた。グループIは、給気風速の均等化に関する改良案、グループIIは給気風の安定化のために吹出部構造に関する改良案、グループIIIは給気風の安定化のための案内板の取付に関する改良案、グループIVはトルネード換気の補助のために排気プロペラファンの取付に関する改良案、グループVは排気風速向上のために排気小口径管の取付に関する改良案である。これらの改良案の具体的内容を下表2に示す。
【表2】
グループIケース(1)の整流板を上下二段で二重にで配置するというのは、図9に示されるように、基本構造の局所換気装置20に対して本願発明のように上下二段で整流板を取り付けた試験体である。グループIケース(2)は整流板をパンチング板とした場合の試験体である。グループIIケース(1)は図10に示されるように、吹出口7の内周側半分を塞いた試験体である。グループIIケース(2)は、図11に示されるように、斜め流路12を一つ置きに塞いだ試験体であり、グループIIケース(3)は図12に示されるように、斜め流路を一つ置きに塞ぐとともに、塞がれていない斜め流路の先端部に室内に開口を臨ませてパイプを配置した試験体である。グループIII〜Vについては、纏めて図13に示す。グループIIIケース(1)は空気吹出口7の内側に給気案内板を取り付けた試験体であり、グループIIIケース(2)は空気吹出口7の外側に給気案内板を取り付けた試験体であり、グループIVは排気の補助のために排気口内部にプロペラファンを取り付けた試験体であり、グループVは排気風速向上のために排気口に小口径管を取り付けた試験体である。
【0045】
これらグループI〜Vの各試験体に対して排気状態検証実験を行った結果を下表3に示す。
【表3】
以上の結果より、排気性能に効果が見られたのは、グループIケース(1)、グループIIケース(2)及びケース(3)であった。そこで、これらを組み合わせた図14に示される局所換気装置によって排気状態の検証を行った。その際の給気風量:300m3/h、排気風量:500m3/hとした。トルネード(排気旋回流)は拡散することなく煙が回転しながら上昇して綺麗に排気された。また、トルネードが安定して形成されるようになり排気が安定した。
【符号の説明】
【0046】
1…局所換気装置、2…外ケーシング、3…内ケーシング、4…排気ダクト接続管、5…給気ダクト、6…排気ダクト、7…空気吹出口、8…空気吸込口、9…環状の給気用流路空間、10…風向板、11…給気チャンバ、12…斜め流路、13…塞ぎ板、14…円形管材、15…第1整流板、16…第2整流板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14