特許第6546498号(P6546498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東海化成工業株式会社の特許一覧 ▶ 住友理工株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6546498-断熱材およびそれを用いた断熱ボックス 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546498
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】断熱材およびそれを用いた断熱ボックス
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/02 20060101AFI20190705BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20190705BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20190705BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20190705BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20190705BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20190705BHJP
【FI】
   F16L59/02
   C08G18/00 K
   B65D81/38 P
   C08L75/04
   C08K3/08
   C08G101:00
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-192574(P2015-192574)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-66258(P2017-66258A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219668
【氏名又は名称】東海化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】星川 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 充夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 宏治
(72)【発明者】
【氏名】片山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】村尾 浩二
(72)【発明者】
【氏名】熊本 貴之
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−278860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/02
B65D 81/38
C08G 18/00
C08K 3/08
C08L 75/04
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ポリウレタンフォームからなる基材と、上記基材中に分散された金属粒子とを有する、硬質ポリウレタンフォーム断熱材であって、上記金属粒子が、マンガニン合金からなる粒子、およびステンレス鋼からなる粒子から選ばれた少なくとも一つであり、上記断熱材の熱容量(100mm×100mm×厚み20mm当たり)および熱伝導率が、下記の式(1)および(2)に示した条件を満たすことを特徴とする断熱材。
熱容量≧35J/K ……(1)
熱伝導率≦0.039W/m・K ……(2)
【請求項2】
上記金属粒子の熱容量(10g当たり)が、4.0J/K以上である、請求項1記載の断熱材。
【請求項3】
上記金属粒子の含有量が、断熱材全体の40〜60重量%の範囲である、請求項1または2記載の断熱材。
【請求項4】
上記断熱材の厚みが10mm以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の断熱材からなる基層と、金属板層と、が積層されてなる断熱材。
【請求項6】
箱状に構成された断熱ボックスの壁材が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の断熱材からなることを特徴とする断熱ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材およびそれを用いた断熱ボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、クーラーボックス等の断熱ボックスの構成部材として使用される断熱材には、熱伝導率の低い発泡ウレタン等が使用される(例えば、特許文献1または2参照)。クーラーボックスにおいて、その機能を高めるには、内部の温度上昇を遅らせることが有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−354277公報
【特許文献2】特開平6−313091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発泡ウレタンからなる断熱材は、断熱性が高い反面、熱マス(熱容量)が小さいことから、自身が温まりやすい性質を示す。そのため、例えば、屋外での使用が多い自動車の車室内に上記クーラーボックスを設置した場合、車室内の温度上昇に伴いクーラーボックス自体の温度も上昇傾向となり、クーラーボックス内部の温度上昇につながるといった懸念がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、断熱性に優れ、高温環境下でも自身の温度上昇を抑えることができる、断熱材およびそれを用いた断熱ボックスの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、硬質ポリウレタンフォームからなる基材と、上記基材中に分散された金属粒子とを有する、硬質ポリウレタンフォーム断熱材であって、上記金属粒子が、マンガニン合金からなる粒子、およびステンレス鋼からなる粒子から選ばれた少なくとも一つであり、上記断熱材の熱容量(100mm×100mm×厚み20mm当たり)および熱伝導率が、下記の式(1)および(2)に示した条件を満たす断熱材を第一の要旨とする。また、本発明は、箱状に構成された断熱ボックスの壁材が、上記第一の要旨の断熱材からなる断熱ボックスを第二の要旨とする。
熱容量≧35J/K ……(1)
熱伝導率≦0.039W/m・K ……(2)
【0007】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、本発明者らは、ウレタンに金属粒子を添加し、発泡成形することにより、発泡ウレタンの持つ低熱伝導率を維持しつつ、発泡ウレタンの密度を増加させて熱容量を増加させることを想起した。そして、硬質ポリウレタンフォームからなる基材中に金属粒子を分散させてなる断熱材の、熱容量および熱伝導率が、本発明に規定の範囲内となるよう構成した結果、外部からの熱の流入に対する断熱材自身の温まりやすさが解消されるようになることを突き止めた。また、上記断熱材からなるパネルを箱組みして断熱ボックスを作製したところ、ウレタン単体のウレタンフォームパネルで作製した断熱ボックスと比較して、ボックス内部の温度上昇を抑えることができた。本発明者らは、このようにして所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
なお、上記のように金属粒子を添加すれば熱伝導率は高くなると考えるのが技術常識であるが、その技術常識に反し、上記のように金属粒子を添加しても、本発明の断熱材では、発泡ウレタンの持つ低熱伝導率を維持することができる。その理由は、発泡成形された硬質ポリウレタンフォームの骨格内部に金属粒子が分散され、さらに上記のように硬質ポリウレタンフォームが採用されていることから、その発泡成形による気泡が独立気泡として維持され、その気泡内の空気により断熱効果が保持されるためと考えられる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の断熱材は、硬質ポリウレタンフォームからなる基材と、上記基材中に分散された金属粒子とを有する、硬質ポリウレタンフォーム断熱材であって、上記断熱材の熱容量および熱伝導率が、特定の範囲を示すものである。そのため、断熱性に優れ、高温環境下でも自身の温度上昇を抑えることができる。また、箱状に構成された断熱ボックスの壁材が上記断熱材からなる、本発明の断熱ボックスは、その断熱材の特性により、例えば屋外での使用が多い自動車の車室内に設置した場合であっても、ボックス内部の温度上昇を抑えることができる。このことから、車室内用クーラーボックス等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の断熱材の断面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
本発明の断熱材は、図1に示すように、硬質ポリウレタンフォームからなる基材1と、上記基材1中に分散された金属粒子2とを有する、硬質ポリウレタンフォーム断熱材である。そして、上記断熱材の熱容量(100mm×100mm×厚み20mm当たり)および熱伝導率が、先に述べたように、下記の式(1)および(2)に示した条件を満たしている。なお、図1に示すように、基材1中(発泡成形された硬質ポリウレタンフォームの骨格内部)には金属粒子2が分散されているとともに、発泡成形により気泡3が形成されている。
熱容量≧35J/K ……(1)
熱伝導率≦0.039W/m・K ……(2)
【0013】
上記式(1)に示す熱容量は、下記の式(3)より導き出すことができる。なお、下記の式(3)において、Cp(比熱容量)は、定圧比熱であって、その測定は、例えば、SETARAM社製のカルベ式熱量計C−80により行われる。また、本発明では、上記熱容量が、100mm×100mm×厚み20mm当たりの断熱材サンプルの熱容量を規定していることから、下記の式(3)に示すV(体積)は、この断熱材サンプルの体積を示す。そして、上記熱容量は、高温環境下での自身の温度上昇抑制の観点から、好ましくは、60J/K以上の範囲である。
熱容量(J/K)=断熱材のCp(比熱容量:J/g・K)×ρ(密度:g/cm3)×V(体積:cm3) ……(3)
【0014】
上記式(2)に示す熱伝導率は、例えば、英弘精機社製のHC−110に代表される熱伝導率測定装置により、測定することができる。そして、上記熱伝導率は、断熱性の観点から、0.037W/m・K以下であることが好ましく、より好ましくは、0.030W/m・K以下である。なお、上記熱伝導率は、硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率に依存し、金属粒子2による影響は小さい。
【0015】
本発明の断熱材における基材1である硬質ポリウレタンフォームとしては、その硬度(金属粒子2を含まないときの発泡成形体の硬度)が75以上のものが用いられる。なお、上記硬度は、高分子計器社製のC型硬度計により測定することができる。また、金属粒子2を含まないときの上記硬質ポリウレタンフォームの密度は、通常、0.01〜0.2g/cm3の範囲である。
【0016】
そして、上記硬質ポリウレタンフォームの材料としては、ポリオールと、ポリイソシアネートとが用いられ、必要に応じ、可塑剤、アミン触媒等の触媒、水等の発泡剤、整泡剤、鎖延長剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、補強材等を適宜に配合しても差し支えない。
【0017】
上記ポリオールとしては、例えば、グリセリン、スクロース、エチレンジアミン、ソルビトール、トリレンジアミン、モノエタノールアミン等にエチレンオキサイド,プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを開環付加重合して得られるポリエーテルポリオール類、アジピン酸,コハク酸等の多塩基酸とエチレングリコール,プロピレングリコール等のポリヒドロキシ化合物との重縮合反応或いはラクトン類の開環重合によって得られるポリエステルポリオール類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、耐加水分解性及び所望の硬度を備えた硬質ポリウレタンフォームを形成する観点から、ポリエーテルポリオール類が好ましく用いられる。
【0018】
そして、上記ポリオールとしては、その数平均分子量(Mn)が4000以下であることが好ましく、より好ましくは数平均分子量(Mn)200〜1000の範囲である。すなわち、このような数平均分子量のポリオールを用いることにより、先に述べたような硬度を示す硬質ポリウレタンフォームを良好に作製することができるからである。なお、上記数平均分子量(Mn)は、ゲル透過クロマトグラフィー測定等により求めることができる。
【0019】
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族系、脂環族系、脂肪族系のポリイソシアネート、及びそれらのウレタン変性体、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体等の変性ポリイソシアネートがあげられる。
【0020】
上記芳香族系ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(以下、場合により「TDI」と略称する。)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、場合により「MDI」と略称する。)、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(以下、場合により「XDI」と略称する。)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、場合により「TMXDI」と略称する。)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(以下、場合により「P−MDI」と略称する。)等があげられる。なお、これらの芳香族系ポリイソシアネートは、それぞれ各種異性体の単品及び混合物を含むものである。また、前記脂環族系ポリイソシアネートとしては、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加MDI、水素添加TDI、水素添加XDI、水素添加TMXDI等があげられる。さらに、脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等があげられる。また、これらのポリイソシアネートは、単独でもしくは二種以上併せて用いることができる。
【0021】
そして、上記ポリイソシアネートの、ポリオールに対する配合割合は、そのNCOインデックス[イソシアネート中のNCO基と、ポリオール中の水酸基との当量比(NCO基/OH基)×100]が100〜250の範囲となるよう配合することが、所望の硬度・断熱性等の観点から好ましい。
【0022】
一方、本発明の断熱材における基材1に分散されている金属粒子2としては、その熱容量(10g当たり)が4.0J/K以上のものが好ましく、より好ましくは、その熱容量(10g当たり)が12.0J/K以上のものである。すなわち、このような金属粒子を用いることにより、本発明の断熱材の熱容量を、先に述べたような範囲に規定することを実現することが容易となるからである。また、上記金属粒子2としては、具体的には、マンガニン合金、ステンレス鋼(SUS)、ベリリウム、アルミニウム等からなる粒子が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なお、上記熱容量は、比熱容量(J/g・K)×重量(g)で算出することができ、上記規定では、重量10gのときの熱容量が規定されている。
【0023】
そして、上記金属粒子2の平均粒子径(メディアン径)は、1〜100μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜20μmの範囲である。なお、上記金属粒子2の平均粒子径は、たとえば、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装社製、MT−3300EX)により測定することができる。
【0024】
上記金属粒子2の含有量は、断熱材全体の40〜60重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜60重量%の範囲である。すなわち、上記金属粒子2の含有量が少なすぎると、本発明の断熱材における所望の効果が充分に得られず、逆に、上記金属粒子2の含有量が多すぎると、断熱材の成形が困難となるからである。
【0025】
そして、本発明の断熱材は、前記硬質ポリウレタンフォームの材料と、上記金属粒子2とを混合し、発泡成形することにより作製することができる。なお、上記混合の手段としては、例えば、真空ホモミキサー、ディスパー、プロペラミキサー、ニーダー、高圧ホモジナイザー等の各種混合器を用いて混合処理することがあげられる。また、ポリイソシアネート以外の材料を先に混合した後、ポリイソシアネートを混合し、発泡成形するようにしてもよい。
【0026】
そして、上記のようにして得られた本発明の断熱材は、断熱性等の観点から、その厚みが10mm以上であることが好ましく、より好ましくは、その厚みが20mm以上である。
【0027】
また、本発明の断熱材は、例えば、クーラーボックス,自動車用シートアンダートレイボックス等の断熱ボックス、断熱ボード、住宅用天井・外壁・床パネル等の構成部材(断熱材)として用いられる。特に、本発明の断熱材の特性から、自動車の車室内用クーラーボックスの構成部材として好適に用いることができる。上記断熱ボックスは、詳しくは、箱状に構成されたものであって、その構成部材である壁材が、上記断熱材からなるものである。このような断熱ボックスは、例えば、上記断熱材からなるパネルを箱組み等したり、金型成型等により上記断熱材からなるボックスを一体成形したりすることにより、作製することができる。
【0028】
上記用途に際し、本発明の断熱材をパネルに形成する場合、それのみからなる単層構造のパネルであってもよいが、用途に応じ、より断熱性等の機能性を高めるために、その断熱材からなる基層と、金属板層と、が積層されてなる積層パネルとなるようにしてもよい。なお、上記金属板層としては、ステンレス鋼、マンガニン合金、ベリリウム、銅等の金属からなる、厚み1〜2mmの層とすることが好ましい。
【実施例】
【0029】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
【0030】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す金属粒子a〜cを準備した。なお、下記に示す金属粒子の熱容量は、比熱容量(J/g・K)×重量(g)で算出した値であり、その比熱容量は、SETARAM社製のカルベ式熱量計C−80により測定し、算出した。また、下記に示す金属粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装社製、MT−3300EX)により測定した。
・金属粒子a:10g当たりの熱容量が17.2J/Kのマンガニン合金からなる金属粒子(平均粒子径:14μm)
・金属粒子b:10g当たりの熱容量が4.6J/Kのステンレス鋼(SUS410L)からなる金属粒子(平均粒子径:11μm)
・金属粒子c:10g当たりの熱容量が1.3J/Kの鉛からなる金属粒子(平均粒子径:15μm)
【0031】
[実施例1〜5、比較例2〜6]
Mn(数平均分子量)が400の3官能ポリオール(ADDITIVE NZ D0137、BASF INOAC ポリウレタン社製)を50重量部と、Mnが1000の3官能ポリオール(TP−1000、BASF INOAC ポリウレタン社製)を50重量部と、架橋剤としてジエタノールアミン(三井化学社製)を2重量部と、発泡剤として水を4重量部と、樹脂化触媒(カオーライザーNo.31、花王社製)を0.8重量部と、泡化触媒(カオーライザーNo.12、花王社製)を0.2重量部とを、ホモディスパー(プライミクス社製)を用いて混合処理し、ポリオール混合物を調製した。このようにして得られたポリオール混合物と、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(P−MDI)とを、NCOインデックスが100となるよう配合し、ホモディスパー(プライミクス社製)を用いて混合処理することにより、硬質ポリウレタン組成物を調製した。すなわち、上記ポリウレタン組成物を、モールド成形により発泡成形させてなる発泡成形体の硬度(高分子計器社製のC型硬度計により測定)は、硬度80〜85の高硬度を示した。そして、上記硬質ポリウレタン組成物調製時に、上記金属粒子a〜cのいずれかを、後記の表1および表2に示す重量割合で加え、それをホモディスパー(プライミクス社製)により混合処理し、発泡成形することにより、断熱材サンプル(発泡成形体)を作製した。
【0032】
[比較例1]
金属粒子を加えなかった。それ以外は、上記実施例および比較例と同様にして、断熱材サンプル(発泡成形体)を作製した。
【0033】
[比較例7]
Mn(数平均分子量)が6000の3官能ポリオール(アクトコールEP−828、三井化学社製)を80重量部と、Mnが7900のポリマーポリオール(サンニックスKC−900、三洋化成工業社製)を20重量部と、架橋剤としてジエタノールアミン(三井化学社製)を2重量部と、発泡剤として水を3.6重量部と、樹脂化触媒(カオーライザーNo.31、花王社製)を0.8重量部と、泡化触媒(カオーライザーNo.12、花王社製)を0.2重量部とを、ホモディスパー(プライミクス社製)を用いて混合処理し、ポリオール混合物を調製した。このようにして得られたポリオール混合物と、フォームライト110B(BASF INOAC ポリウレタン社製)とを、NCOインデックスが80となるよう配合し、ホモディスパー(プライミクス社製)を用いて混合処理することにより、軟質ポリウレタン組成物を調製した。すなわち、上記ポリウレタン組成物を、モールド成形により発泡成形させてなる発泡成形体の硬度(高分子計器社製のC型硬度計により測定)は、硬度26の低硬度を示した。そして、上記軟質ポリウレタン組成物調製時に、前記金属粒子bを、後記の表2に示す重量割合(60重量%)で加え、それをホモディスパー(プライミクス社製)により混合処理し、発泡成形することにより、断熱材サンプル(発泡成形体)を作製した。
【0034】
上記のようにして得られた実施例および比較例の断熱材サンプルに対し、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1および表2に併せて示した。
【0035】
〔熱容量〕
下記の式(3)に従い、100mm×100mm×厚み20mm当たりの断熱材サンプルの熱容量(J/K)を測定した。なお、下記の式(3)に示される、断熱材サンプルのCp(比熱容量:J/g・K)は、SETARAM社製のカルベ式熱量計C−80により測定し算出した値であり、断熱材サンプルのρ(密度:g/cm3)は、単位体積当たりの重量を測定した値である。また、下記の式(3)に示されるV(体積:cm3)は、上記の通り、100mm×100mm×厚み20mmを計算した値である。
熱容量(J/K)=断熱材のCp(比熱容量:J/g・K)×ρ(密度:g/cm3)×V(体積:cm3) ……(3)
【0036】
〔熱伝導率〕
熱伝導率測定装置(英弘精機社製、HC−110)を用い、断熱材サンプルの熱伝導率(W/m・K)を測定した。
【0037】
〔断熱性〕
厚み20mmの断熱材サンプル6枚を組み立てて、外寸135mm×180mm×高さ135mmの直方体の試験箱を作製した。そして、上記試験箱内の空間の中心部に熱電対を設け、外部から試験箱内部温度を測定することができるようにした。また、試験箱外の恒温槽内の雰囲気温度を測定するための熱電対も設けた。さらに、恒温槽内の雰囲気温度と、試験箱内部温度を30℃になる様に調整した。そして、この恒温槽内に試験箱を設置した状態で、恒温槽内の雰囲気温度が80℃になるまで昇温させ、80℃の雰囲気温度を保ったまま、試験箱内部温度の推移を観測した。その結果、雰囲気温度が80℃に達してから10分後、試験箱内部温度が55℃以下のものを○、試験箱内部温度が55℃を超えたものを×と評価した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
上記結果から、実施例の断熱材は、本発明に規定された熱容量および熱伝導率を満たすものであり、断熱性評価において所望の断熱効果が得られていることがわかる。
【0041】
これに対し、比較例1の断熱材は、金属粒子を含まず、熱容量が低いことから、断熱性評価において所望の断熱効果が得られない結果となった。また、比較例2〜5の断熱材は、金属粒子を含むものの、本発明に規定された熱容量に達しておらず、やはり、断熱性評価において所望の断熱効果が得られない結果となった。比較例6では、金属粒子を多量に含有し、断熱材として成形できなかったため、測定・評価ができなかった。比較例7の断熱材は、ポリウレタン組成物として軟質ポリウレタン組成物を使用しており、熱伝導率が高いことから、断熱性評価において所望の断熱効果が得られない結果となった。
【0042】
なお、先の断熱性評価のために用いた試験箱の作製方法に準じ、実施例の断熱材サンプルの厚みを変え、内寸が98mm×98mm×高さ98mmの直方体の試験箱を作製した。そして、上記と同様の断熱性評価を行った結果、断熱材サンプルの厚みが10mm以上で、上記実施例と同様の断熱効果が得られることが実験の結果認められた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の断熱材は、クーラーボックス,自動車用シートアンダートレイボックス等の断熱ボックス、断熱ボード、住宅用天井・外壁・床パネル等の構成部材(断熱材)として用いられる。特に、本発明の断熱材は、その特性から、自動車の車室内用クーラーボックスの壁材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1:基材
2:金属粒子
3:気泡
図1