(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
浴槽壁部に貫通状態に組み付けられ、かつ前面に吸引口が設けられた槽内突出部を有するアダプター本体を備え、浴槽内の湯水をノズル部材を介して前記槽内突出部の吸引口に吸引させるようにした浴槽用給湯アダプターであって、
前記ノズル部材は、背面に取付口を有しその取付口を前記吸引口に臨ませた状態で前記槽内突出部に取り付けられ、かつ下端開口が下向きに配置されるノズル本体と、下端開口が下向きに配置された状態で上端開口が前記ノズル本体の下端開口に着脱可能な延長ノズルと、前記ノズル本体の下端開口または前記延長ノズルの下端開口に着脱可能なフィルター部材とを備え、
前記ノズル部材は、前記ノズル本体の下端開口に前記フィルター部材が取り付けられた非延長形態と、前記ノズル本体の下端開口に前記延長ノズルの上端開口が取り付けられ、かつ前記延長ノズルの下端開口に前記フィルター部材が取り付けられた延長形態とのいずれの形態においても使用可能に構成されていることを特徴とする浴槽用給湯アダプター。
前記ノズル本体は、前記取付口の周縁部に沿って設けられ、かつ前記槽内突出部の前面外周縁部に対向して配置される周縁シール部と、前記槽内突出部の周側面を覆うように配置される周側壁部とを備え、
前記周縁シール部が前記槽内突出部の前面外周縁部にリング状の水密パッキンを介して圧接した状態で、前記ノズル本体が前記槽内突出部に取り付けられている請求項1に記載の浴槽用給湯アダプター。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の吸引ノズル付給湯アダプターは、吸引ノズルの長さが一定であるのに対し、浴槽は、腰掛け浴槽やノーマル浴槽のように給湯アダプターの取付高さが異なる場合がある。このため例えば給湯アダプターの取付高さが高いにもかかわらず、給湯アダプターの吸引ノズルが短いような場合、吸引ノズルの下端が底面から上方に離れた位置に配置されるため、残り湯を最後まで十分に吸引できず、残り湯の有効利用を図ることができなくなってしまう。逆に給湯アダプターの取付高さが低いにもかかわらず、給湯アダプターの吸引ノズルが長いような場合には、吸引ノズルが浴槽底面に干渉してしまうため、吸引ノズル付きのフィルター部材を取り付けることができず、残り湯を十分に吸引できなくなってしまう。
【0007】
以上のように従来の吸引ノズル付きの給湯アダプターにおいては、アダプター本体の取付高さによって、十分に残り湯を吸引できない場合があるという課題を抱えている。
【0008】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、アダプター本体の取付高さにかかわらず、残り湯を十分に吸引することができる浴槽用給湯アダプターおよびそのノズル部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を要旨とする。
【0010】
[1]浴槽壁部に貫通状態に組み付けられ、かつ前面に吸引口が設けられた槽内突出部を有するアダプター本体を備え、浴槽内の湯水をノズル部材を介して前記槽内突出部の吸引口に吸引させるようにした浴槽用給湯アダプターであって、
前記ノズル部材は、背面に取付口を有しその取付口を前記吸引口に臨ませた状態で前記槽内突出部に取り付けられ、かつ下端開口が下向きに配置されるノズル本体と、下端開口が下向きに配置された状態で上端開口が前記ノズル本体の下端開口に着脱可能な延長ノズルと、前記ノズル本体の下端開口または前記延長ノズルの下端開口に着脱可能なフィルター部材とを備え、
前記ノズル部材は、前記ノズル本体の下端開口に前記フィルター部材が取り付けられた非延長形態と、前記ノズル本体の下端開口に前記延長ノズルの上端開口が取り付けられ、かつ前記延長ノズルの下端開口に前記フィルター部材が取り付けられた延長形態とのいずれの形態においても使用可能に構成されていることを特徴とする浴槽用給湯アダプター。
【0011】
[2]前記ノズル本体は、前記取付口の周縁部に沿って設けられ、かつ前記槽内突出部の前面外周縁部に対向して配置される周縁シール部と、前記槽内突出部の周側面を覆うように配置される周側壁部とを備え、
前記周縁シール部が前記槽内突出部の前面外周縁部にリング状の水密パッキンを介して圧接した状態で、前記ノズル本体が前記槽内突出部に取り付けられている前項1に記載の浴槽用給湯アダプター。
【0012】
[3]前記ノズル本体の周側壁内面にスライド突起が設けられるとともに、
前記槽内突出部の周側面に前記スライド突起に対応して固定溝が設けられ、
前記固定溝は、軸心方向に沿って延び、かつ前端が前方に向けて開口する軸方向溝と、前記軸方向溝の後端に一端が連通し、かつ略周方向に沿って延びる周方向溝とを備え、
前記スライド突起が前記軸方向溝に収容された状態で、前記ノズル本体が前記アダプター本体に対し捻回操作されて、前記スライド突起が前記軸方向溝から遠ざかるように前記周方向溝に沿って移動することによって、前記ノズル本体が前記アダプター本体に取り付けられるように構成され、
前記周方向溝の前側縁部に、前記軸方向溝から遠ざかるに従って次第に後方に位置するように斜めに形成されたカムが設けられ、
前記捻回操作時に前記スライド突起が前記カムによって後方に移動することにより、前記ノズル本体が前記アダプター本体側に引き寄せされて、前記周縁シール部が前記槽内突出部に圧接するように構成されている前項2に記載の浴槽用給湯アダプター。
【0013】
[4]前記フィルター部材の外周に、片持ち構造で弾力性を有するつまみ片が設けられるとともに、そのつまみ片の外面に挿入突起が設けられ、
前記ノズル本体の下端部に前記挿入突起に対応して固定孔が形成される一方、
前記延長ノズルの下端部に前記挿入突起に対応して固定孔が形成され、
前記フィルター部材をそのつまみ片をその固定端を支点として内側に弾性変形させた状態で、前記ノズル本体の下端開口または前記延長ノズルの下端開口に挿入して、前記つまみ片を弾性復帰させることにより、前記挿入突起が前記固定孔に挿入されて前記フィルター部材が前記ノズル本体または前記延長ノズルに取り付けられるよう構成され、
前記つまみ片は、その固定端から自由端にかけて水平に配置されるように横向きに設定されている前項1〜3のいずれか1項に記載の浴槽用給湯アダプター。
【0014】
[5]浴槽壁部に貫通状態に組み付けられた給湯口アダプターにおける槽内突出部前面の吸引口に浴槽内の水を吸引させるためのノズル部材であって、
背面に取付口を有しその取付口を前記吸引口に臨ませた状態で前記槽内突出部に取り付けられ、かつ下端開口が下向きに配置されるノズル本体と、
下端開口が下向きに配置された状態で上端開口が前記吸引ノズルの下端開口に着脱可能な延長ノズルと、
前記ノズル本体の下端開口または前記延長ノズルの下端開口に着脱可能なフィルター部材とを備え、
前記ノズル本体の下端開口に前記フィルター部材が取り付けられた非延長形態と、前記ノズル本体の下端開口に前記延長ノズルの上端開口が取り付けられ、かつ前記延長ノズルの下端開口に前記フィルター部材が取り付けられた延長形態とのいずれの形態においても使用可能に構成されていることを特徴とする浴槽用給湯アダプターのノズル部材。
【発明の効果】
【0015】
上記[1]の発明の浴槽用給湯アダプターによれば、ノズル部材を非延長形態と延長形態とのいずれの形態でも使用できるため、使用形態を適宜選択することによって、浴槽に対するアダプター本体の取付高さにかかわらずノズル部材の下端位置を浴槽底面付近の低い位置に配置でき、残り湯をほとんど残さずに十分に取り出して有効に利用することができる。
【0016】
上記[2]の発明の浴槽用給湯アダプターによれば、ノズル部材における取付口の周縁シール部をパッキンを介して槽内突出部の前面外周縁部に圧接するようにノズル部材をアダプター本体に取り付けるものであるため、簡単な構成でアダプター本体およびノズル部材間の水密を確実に図ることができる。
【0017】
上記[3]の発明の浴槽用給湯アダプターによれば、槽内突出部周側面のL字状固定溝にノズル部材のスライド突起を挿入してノズル部材を捻回操作するだけでノズル部材をアダプター本体に圧接した状態に固定できるため、水密を確実に図りつつ、ノズル部材をアダプター本体に簡単に取り付けることができる。
【0018】
上記[4]の発明の浴槽用給湯アダプターによれば、フィルター部材のつまみ片を横向きに形成しているため、つまみ片に形成される挿入突起の位置を低くでき、挿入突起が挿入される固定孔の高さも低く設定することできる。つまり水密を保つことが困難な固定孔の位置を低くでき、その分、ノズル部材により吸込可能な水位を低くできる。従って残り湯を低位まで確実に吸い込むことができ、残り湯をより一層有効に利用することができる。
【0019】
上記[5]の発明の浴槽用給湯アダプターのノズル部材によれば、上記と同様に浴槽に対するアダプター本体の取付高さにかかわらずノズル部材の下端位置を浴槽底面付近の低い位置に配置でき、残り湯をほとんど残さずに十分に取り出して有効に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜
図5はこの発明の実施形態である給湯アダプターを示す図である。これらの図に示すように、本実施形態の給湯アダプターは、浴槽の側壁(壁部)Wに貫通状態に取り付けられるアダプター本体Pと、アダプター本体Pの槽内突出部40に取り付けられるノズル部材5とを備えている。なお、本明細書の説明においては、給湯アダプターの軸心方向に沿って浴槽に対して内側(
図2および
図3の左側)を「前側」または「正面側」とし、浴槽に対して外側(
図2および
図3の右側)を「後側」「裏面側」または「背面側」として説明する。
【0022】
アダプター本体Pは、槽外取付部材1と、管路部材2と、雄ねじ部材3と、流路仕切部材4とを備えている。
【0023】
槽外取付部材1は、前面側が開放され、かつ後面側が閉塞された円筒形状の外筒部12と、その外筒部12の内部に同軸心上に配置される円筒形状の内筒部11と、外筒部12の前端外周に設けられた平板リング状のフランジ部15とを備えている。外筒部12の後端部における上下両側には流入口1aおよび流出口1bが設けられており、流入口1aが内筒部11の内部に連通接続されるとともに、流出口1bが内筒部11および外筒部12間の環状部に連通接続されている。内筒部11の内部は、後述する内側流路Aの一部を構成するものであり、内筒部11および外筒部12間の環状空間は、後述する外側流路Bの一部を構成するものである。
【0024】
なお外筒部12の内周面には雄ねじ部材3をねじ込んで固定するための雌ねじが刻設されている。
【0025】
管路部材2には、その後部に往き管接続口2aおよび戻り管接続口2bが設けられている。さらに管路部材2には、一端側が槽外取付部材1の流入口1aに連通接続され、かつ他端側が往き管接続口2aに連通接続された往き管路21aが設けられるとともに、一端側が槽外取付部材1の流出口1bに連通接続され、かつ他端側が戻り管接続口2bに連通接続された戻り管路21bが設けられている。
【0026】
さらに管路部材2における戻り管路21bには分岐管路21cが設けられるとともに、その分岐管路21cには残り湯取出口2cが設けられている。
【0027】
また管路部材2における往き管路21aと戻り管路21bとの間には逆止弁22aが設けられている。この逆止弁22aは、戻り管路21b側から往き管路21a側に流動する湯水の流れは許容し、かつその逆方向の流れを制止するように構成されている。
【0028】
さらに管路部材2における戻り管路21bには、分岐管路21cよりも戻り管接続口2b側寄りの位置に逆止弁22bが設けられている。この逆止弁22bは、戻り管路21b内を槽外取付部材1の流出口1b側から戻り管接続口21b側に流動する湯水の流れは許容し、かつその逆方向の流れを制止するように構成されている。
【0029】
また分岐管路21cには逆止弁22cが設けられている。この逆止弁22cは、戻り管路21b側から残り湯取出口2c側に流動する湯水の流れは許容し、かつその逆方向の流れを制止するように構成されている。
【0030】
雄ねじ部材3は、前後両端が開放された円筒体の前端外周に平板リング状のフランジ部35が一体に形成された鍔付き円筒形状に形成されている。
【0031】
雄ねじ部材3の外周側面には、上記槽外取付部材1における外筒部12の雌ねじに対応して雄ねじが刻設されている。
【0032】
そして、管路部材2付きの槽外取付部材1のフランジ部15が、浴槽の外壁面における取付孔の周縁部に沿うように配置された状態で、雄ねじ部材3のフランジ部35が、浴槽内壁面における取付孔の周縁部に圧接されるようにして、雄ねじ部材3が取付孔を通じて、槽外取付部材1の外筒部12にねじ込まれて固定される。これにより両部材1,3のフランジ部15,35によって、浴槽側壁Wにおける取付孔周縁部が挟持されて、管路部材2付きの槽外取付部材1と雄ねじ部材3とが浴槽側壁Wに組み付けられる。
【0033】
図5〜
図8に示すように流路仕切部材4は、軸心方向(前後方向)に延びる細長い円筒形状の円筒部45と、その円筒部45の前端部に設けられた略円盤状の槽内突出部40とを有している。
【0034】
円筒部45は、後述するように槽外取付部材1の内筒部11に接続されるものであり、円筒部45の内部と、それに連通する槽外取付部材1における内筒部11の内部とによって、内側流路Aが形成される。さらに円筒部45は、後述するように雄ねじ部材3の内部に配置されるものであり、円筒部45および雄ねじ部材3間の環状空間と、それに連通する槽外取付部材1における内筒部11および外筒部12間の環状空間とによって、外側流路Bが形成される。
【0035】
槽内突出部40の前壁における上部両側には、多数の小孔によってそれぞれ構成される吸引口41が左右に並んで形成されるとともに、外周壁における下側部には、吐出口42が形成されている。
【0036】
図8および
図9に示すように槽内突出部40の周側面には、後に詳述するノズル部材5を固定するための固定溝46が形成されている。
図9に示すようにこの固定溝46は、側面視L字状に形成されており、周方向に適宜間隔をおいて複数形成されている。この固定溝46は、軸心方向に沿って前後方向に延び、かつ前端が前方に向けて開口する軸方向溝47と、軸方向溝47の後端に一端が連通し、かつ周方向に沿って延びる周方向溝48とを備えている。さらに周方向溝48の前側縁部における軸方向溝47の近傍が、軸方向溝47から遠ざかるに従って次第に後方に位置するように斜めに形成され、その傾斜部がカム49として構成されている。
【0037】
なお本実施形態において、給湯アダプターおよびアダプター本体Pの軸心方向は前後方向に相当し、ノズル部材5の軸心方向は上下方向(垂直方向)に相当する。
【0038】
図3および
図5に示すようにこの構成の流路仕切部材4における円筒部45が雄ねじ部材3に前方から挿入されて槽外取付部材1の内筒部11に連通接続され、その状態で流路仕切部材4における槽内突出部45の裏面側外周が雄ねじ部材3のフランジ部35に周知のロック手段によって着脱自在に取り付けられる。
【0039】
こうして流路仕切部材4を雄ねじ部材3および槽外取付部材1に組み付けた状態では、槽内突出部40における吸引口41の少なくともいずれか一方が、槽内突出部40内に設けられた流路(図示省略)を介して外側流路B内に連通されるとともに、吐出口42の少なくともいずれか一方が、槽内突出部40内に設けられた流路を介して、内側流路Aに連通されている。
【0040】
この構成のアダプター本体Pにおいて、管路部材2の往き管接続口2aは、室外給湯機(図示省略)の給湯口に往き管25aを介して連結され、戻り管接続口2bは、室外給湯機の吸引口に戻り管25bを介して連結されている。さらに残り湯取出口2cには、洗濯機の吸引ポンプに残り湯取出管25cを介して連結されている。
【0041】
そして追い焚き時に戻り側の回路においては、給湯機による吸引作用によって戻り管25b、戻り管路21b、外側流路Bおよび吸引口41が負圧に設定される。その吸引力によって湯水が吸引口41から外側流路Bに導入されて、槽外取付部材1の流出口1bから管路部材2の戻り管路21b内に導入されて、逆止弁22b、戻り管接続口2bおよび戻り管25bを介して給湯機に戻される。一方、往き側の回路においては、給湯機から供給される湯水が往き管25aを通って管路部材2の往き管接続口2aから往き管路21a内に導入され、さらにその湯水は槽外取付部材1の流入口1aから内側流路Aに導入されて、槽内突出部40の吐出口42から吐出される。
【0042】
また浴槽内の残り湯を取り出す際には、洗濯機の吸引ポンプによって残り湯取出管25c内が負圧となりその吸引力によって、湯水が槽内突出部40の吸引口41から外側流路Bに導入されて、槽外取付部材1の流出口1bから管路部材2の戻り流路21b内に導入された後、逆止弁22cを通って分岐管2cに導入される。さらにその湯水は残り湯取出管25cを通って洗濯機に供給されて洗濯水として利用される。
【0043】
なお本実施形態において、湯はり時にはダブル搬送によって湯水が供給される。すなわち給湯機から湯水が往き管25aおよび戻り管25bの双方に供給され、往き管25a側の湯水は管路部材2の往き管接続口2aを介して往き管路21a内に導入される。その一方、戻り管25b側の湯水は管路部材2の戻り管接続口2bから導入され、逆止弁22aを通って往き管路21aに導入されて、上記往き管25aからの湯水と合流する。こうして合流した湯水は往き管路21aを通って、槽外取付部材1の流入口1aから内側流路Aに導入されて、槽内突出部40の吐出口42から吐出される。
【0044】
アダプター本体Pの槽内突出部40には、ノズル部材5が取り付けられる。
図6、
図7、
図11および
図12に示すようにノズル部材5は、ノズル本体6と、延長ノズルとしてのアタッチメント7と、フィルター部材8とを備えている。
【0045】
ノズル本体6は、前壁が湾曲形成され、かつ水平断面が矩形状の略ボックス型の形状を有している。ノズル本体6の後壁にはアダプター本体Pの槽内突出部40に対応して取付口60が形成されるとともに、下端は開放されてその下端開口部が下向きに開口されている。
【0046】
ノズル本体6における取付口60の周縁部には、槽内突出部40の前面外周縁部に対向する円環状(リング状)の周縁シール部61が一体に形成されており、その周縁シール部61の槽内突出部40との対向面(シール面)は平坦面に形成されている。さらにノズル本体6における周縁シール部61の外周には、後方に突出し、かつ周方向の連続する周側壁部62が一体に形成されている。さらにこの周側壁部62には、アダプター本体Pの槽内突出部40における周側面の吐出口42に対応して吐出用開口64が形成されている。この周側壁部62はその内部に槽内突出部40を嵌め込むことができるようになっている。
【0047】
ノズル本体6における周側壁部62の内面には、槽内突出部40の各固定溝46にそれぞれ対応して、スライド突起63がそれぞれ一体に形成されている。そして
図6および
図7に示すようにノズル本体6の周縁シール部61にリング状の水密パッキン51を配置した状態で、ノズル本体6の周側壁部62を槽内突出部40に外嵌し、
図9(a)に示すように各スライド突起63を各固定溝46の軸方向溝47に沿って後端まで挿入した後、
図9(b)に示すようにノズル本体6をアダプター本体Pの軸心回りに捻回操作することによって、スライド突起63を周方向溝48に沿って一端側(軸方向溝47側)から他端側(閉塞端部)まで移動させる。これによりスライド突起63が周方向溝48の側縁部に係合することによってノズル本体6のアダプター本体Pに対する前後方向の移動が阻止されて、ノズル本体6の抜け止めが図られるようになっている。さらにノズル本体6を捻回操作する際には、スライド突起63が周方向溝48の前側縁部のカム49に沿って後方に移動するため、ノズル本体6が槽内突出部40側に強く引き寄せられる。これによりノズル本体6の周縁シール部61がパッキン51を介して槽内突出部40の前面外周縁部に強圧で密着し、パッキン51が圧縮変形する。これにより
図6に示すように槽内突出部40の吸引口41の外周において、アダプター本体Pとノズル本体6との間で水密が図られる。
【0048】
またノズル本体6を捻回操作してアダプター本体Pに固定した状態では、ノズル本体6がその軸心(下端開口の開口軸)が垂直に配置されるように構成されている。
【0049】
またノズル本体6をアダプター本体Pの槽内突出部40に固定した状態では、ノズル本体6の周側壁部62が槽内突出部40の周側面を外側から覆うように配置される。さらにこの状態においては、槽内突出部40の吸引口41がノズル本体6の取付口60に臨むように配置されるとともに、槽内突出部40の吐出口42がノズル本体6の吐出用開口64に臨むように配置されている。
【0050】
なおノズル本体6をアダプター本体Pから取り外す場合には、ノズル本体6を上記とは逆方向に捻回操作すれば、スライド突起63が周方向溝48から軸方向溝47に移動するため、その状態でノズル本体6をアダプター本体Pに対し前方へ離間させるように抜き取ることにより、ノズル本体6を取り外すことができる。
【0051】
図4および
図10に示すようにノズル本体6の両側壁下端には、下向きに開口する切欠部66が形成されている。さらにノズル本体6の両側壁下端における切欠部66の後方には、ノズル本体6の側壁を貫通する態様に固定孔67が形成されている。
【0052】
図4、
図10および
図11に示すようにアタッチメント7は、上下両端が開口された水平断面矩形状の略ボックス型の形状を有している。アタッチメント7の上端部は、一回り小さく形成されて嵌入部70が形成されており、上記ノズル本体6の下端内部に嵌め込むことができるように構成されている。さらにアタッチメント7の嵌入部70の両側外面には、ノズル本体6の固定孔67に対応して挿入突起71が形成されている。
【0053】
図3に示すようにこのアタッチメント7は、その嵌入部70における挿入突起71よりも上方にパッキン72を装着した状態で嵌入部70をノズル本体6の下端部に嵌め込むと、挿入突起71が固定孔67内に係合して、アタッチメント7がノズル本体6に取り付けられる。この取付状態においては、パッキン72によってノズル本体6とアタッチメント7との間の水密が図られている。
【0054】
図4等に示すようにアタッチメント7の下端部は、上記ノズル本体6の下端部と同様に構成されている。すなわちアタッチメント7の両側壁下端には、下向きに開口する切欠部76が形成されるとともに、切欠部76の後方には、アタッチメント7の側壁を貫通する態様に固定孔77が形成されている。
【0055】
図10〜
図12に示すようにフィルター部材8は、平面視矩形状の外枠80を備えており、その枠内に多数の小孔によって構成されたフィルター本体(ストレーナ本体)85が設けられている。
【0056】
外枠80の両側外面には、後端が外枠80の前側コーナー部に固定され、かつ前端が自由端となる片持ち構造の棒状のつまみ片82が一体に形成されている。さらにつまみ片82の外面には、その固定端側に外方(側方)に突出するように挿入突起81が形成されるとともに、つまみ片82の外面における自由端側に外方(側方)に突出し、かつ上方に延びる押込操作部83が一体に形成されている。つまみ片82は弾力性を有しており、つまみ片82の押込操作部83を指で摘まんでつまみ片82を内側に押し込むと、つまみ片82は固定端を支点として自由端側が内側に弾性変形するようになっている。さらに弾性変形した状態のつまみ片82に対し押込操作を解除すると、弾性復元力によってつまみ片82が外側に開いて元の状態に復帰するようになっている。
【0057】
なおつまみ片82は、その固定端側から自由端側にかけて水平方向に配置されるように横向きに形成されている。
【0058】
またフィルター部材8は、押込操作部83を除いて、上記ノズル本体6の下端部およびアタッチメント7の下端部に適合状態に挿入できる大きさに形成されている。
【0059】
図13に示すようにこのフィルター部材8を例えばアタッチメント7に取り付ける場合には、つまみ片82を摘まんで内側に弾性変形させた状態で、フィルター部材8をその押込操作部83をアタッチメント7の切欠部76に挿入させつつ、アタッチメント7の下端部に挿入する。その後つまみ片82の押込操作を解除すると、つまみ片82が外側に開いてつまみ片82の挿入突起81がアタッチメント7の固定孔77に挿入される。これによりアタッチメント7の下端部にその下端開口を閉塞するようにフィルター部材8が取り付けられる。
【0060】
なおアタッチメント7からフィルター部材8を取り外す場合には、フィルター部材8の押込操作部83を指で押し込んでつまみ片82を内側に弾性変形させる。これにより挿入突起81がアタッチメント7の固定孔77から抜き取られるため、フィルター部材8をアタッチメント7の下端部から取り外すことができる。
【0061】
ところで上記
図2に示す給湯アダプターのノズル部材5においては、ノズル本体6にアタッチメント7を介してフィルター部材8を取り付けた延長形態(ロングバージョン)に設定されているが、
図14に示すように本実施形態のノズル本体5においては、アタッチメント7を用いずにフィルター部材8をノズル本体6に直接取り付けた非延長形態(ショートバージョン)に設定することもできる。
【0062】
図14に示すように非延長形態では、アタッチメント7が取り付けられていないノズル部材5に対し、フィルター部材8をそのつまみ片を内側に弾性変形させた状態で、押込操作部83をノズル本体6の切欠部66に挿入させつつ、ノズル本体6の下端部に挿入して、つまみ片82を元の状態に弾性復帰させる。これにより、つまみ片82の挿入突起81がノズル本体6の固定孔67に挿入されて、フィルター部材8がノズル本体6に取り付けられる。なお取り外す場合には、押込操作部83を内側に弾性変形させて、挿入突起81を固定孔67から抜き取れば、フィルター部材8をノズル本体6から取り外すことができる。
【0063】
このように本実施形態の給湯アダプターは、ノズル部材5が長い延長形態とノズル部材5が短い非延長形態とのいずれの形態でも使用することができる。
【0064】
以上の構成の給湯アダプターにおいて追い焚きを行う場合には、給湯機の吸引作用によって、槽内突出部40の吸引口41が負圧となってノズル部材5の内部も負圧となる。これにより浴槽内の湯水がノズル部材5の下端からフィルター部材8を通ってノズル部材5の内部に吸引され、さらにその湯水がノズル部材5の取付口60を介して槽内突出部40の吸引口41から吸い込まれる。こうして槽内突出部40内に吸い込まれた湯水は、既述した通り給湯機に吸引される。また給湯機に吸引された湯水はそこで再加熱されて給湯機から吐出され、その湯水が既述した通り、槽内突出部40の吐出口42から吐出され、さらにノズル本体6の周側壁部62における吐出用開口64を通って浴槽内に吐出される。
【0065】
また浴槽内の湯水(残り湯)を洗濯水として利用する場合には、洗濯機の吸引ポンプを作動させる。これにより槽内突出部40の吸引口41が負圧となってノズル部材5の内部も負圧となり、浴槽内の湯水がノズル部材5の下端から吸引され、さらにその湯水がノズル部材5の取付口60を介して槽内突出部40の吸引口41から吸引される。こうして槽内突出部40内に吸い込まれた湯水は、既述した通り残り湯取出管25cを通って洗濯機に供給される。
【0066】
なお湯はりを行う場合には、既述した通り給湯機から往き管25aおよび戻り管25bの双方に供給された湯水が途中で合流して槽内突出部40の吐出口42から吐出されて、ノズル本体6の吐出用開口64を介して浴槽内に吐出されることとなる。
【0067】
以上のように本実施形態の給湯アダプターによれば、ノズル部材5を長くした延長形態と、ノズル部材5を短くした非延長形態のいずれの形態でも使用することができる。このため例えば浴槽壁部Wに対するアダプターの取付高さが高いような浴槽では、ノズル部材5を延長形態とすることによって、ノズル部材5の下端を浴槽底面付近に配置することができる。このため浴槽内の残り湯をほとんど残さずに十分に取り出して洗濯水等として利用することができ、残り湯の有効利用を確実に図ることができる。
【0068】
またアダプターの取付高さが低い浴槽においては、ノズル部材5を非延長形態とすることによって、ノズル部材5の下端を浴槽底面に干渉させずに底面付近に確実に配置することができる。このため浴槽底面との干渉によりノズル部材5が取り付けられない等の不具合を確実に防止しつつ、上記と同様、残り湯を残さずに十分に取り出すことができて、残り湯の有効利用を確実に図ることができる。
【0069】
また本実施形態においては、ノズル部材5における取付口60の周縁部に、アダプター本体Pにおける槽内突出部40の前面外周縁部に対応する周縁シール部61を形成し、この周縁シール部61をパッキン51を介して槽内突出部40の前面外周縁部に圧接するようにノズル部材5をアダプター本体Pに取り付けるものであるため、簡単な構造でノズル部材5およびアダプター本体P間の水密を確実に図ることができる。
【0070】
特に本実施形態においては、槽内突出部40の周側面にL字状固定溝46を形成し、ノズル部材5の周側壁部62にスライド突起63を形成し、スライド突起63を固定溝46に挿入してノズル部材5を捻回操作するだけで、ノズル部材5をアダプター本体Pに圧接した状態に固定できるため、水密を確実に確保しつつ、ノズル部材5を簡単にアダプター本体Pに取り付けることができる。
【0071】
なお本実施形態では、スライド突起63を固定溝46に挿入することによってノズル部材5をアダプター本体Pに取り付けるようにしているが、それだけに限られず、本発明においてはノズル部材5の周側壁部内面に雌ねじを刻設するとともに、アダプター本体Pの槽内突出部周側面に雄ねじを刻設しておき、ノズル部材5をアダプター本体Pにねじ込んで(捻回操作して)取り付けるようにしても良い。
【0072】
また本実施形態の給湯アダプターのノズル部材5においては、
図10等に示すようにフィルター部材8のつまみ片82を横向きに設定しているため、以下に説明するようにノズル部材5の下端位置まで確実に水密を図ることができる。
【0073】
すなわちフィルター部材8をアタッチメント7の下端に着脱自在に取り付けるための取付手段としては
図15に示すように、フィルター部材8の両側に、上端が固定端となり、かつ下端が自由端となる縦向きの弾性つまみ片182を形成するのが通例である。そしてその縦向きのつまみ片182をその下端部を指でつまんで内側に弾性変形させた状態で、アタッチメント7の下端部に挿入した後、つまみ片182を外側に開くように弾性復帰させて、つまみ片182の上端部外面の挿入突起181を、アタッチメント7の固定孔177に挿入することによって、フィルター部材8をアタッチメント7に取り付けるものである。ところでこのような構成においては、固定孔177によって水密を保つことが困難であるため、その水密確保が困難な固定孔177の位置を可能な限り低い位置に形成して、吸引可能な水位を低くするのが好ましい。しかしながら同図に示すようにつまみ片182を縦向きに形成すると、つまみ片182の上端に形成される挿入突起181の位置も高くなるため、アタッチメント7の下端から固定孔177までの高さH2が高くなり、高い位置まで水密を確保できなくなってしまい、低水位の湯水を吸い込むことが困難になり、残り湯を十分に取り出すことができなくなってしまう。
【0074】
そこで
図10および
図12に示すように本実施形態のノズル部材5においては、フィルター部材8のつまみ片82を横向きに形成しているため、つまみ片82に形成される挿入突起81の位置を高くする必要がなく低い位置に設定することができる。このためアタッチメント7の下端から固定孔77までの高さH1も低くでき、水密を確保できる位置を低くできるためその分、低水位まで湯水を確実に吸い込むことができ、残り湯を十分に取り出すことができる。
【0075】
以上の説明は、ノズル本体6に取り付けたアタッチメント7にフィルター部材8を取り付ける場合(延長形態)を例に挙げて説明したが、ノズル本体6にフィルター部材8を直接取り付ける場合(非延長形態)であっても、上記と同様、ノズル本体6の固定孔67を低い位置に設定でき、低位置まで効率良く湯水を吸い込むことができる。
【0076】
もっとも本発明においては、
図15に示すフィルター部材の取付構造を採用することも可能である。
【0077】
なお上記実施形態においては、本発明の給湯アダプターを用いて浴槽内の残り湯を洗濯水等として利用する場合を例に挙げて説明したが、本発明の給湯アダプターの使用用途は特に限定されるものではない。例えば帰宅途中の屋外等からインターネット回線等を利用して浴槽に湯はりを行う際に、湯はりに先立って浴槽内の残り湯を排水するような場合にも、本発明の給湯アダプターを適用することができる。この場合、浴槽内の残り湯をノズル部材を介してアダプター本体に吸引し、その吸引した残り湯を給湯機等で排出することになるが、その場合であっても浴槽内の残り湯を十分に排出できて、湯はりを支障なく行うことができる。
【0078】
また本発明は、槽内突出部の前面の吸引口を有する給湯アダプターであれば、どのようなアダプターにも適用することができ例えば、無極性のアダプターであっても、有極性のアダプターであっても適用できるとともに、逆止弁付きのアダプターであっても、弁無しタイプのアダプターであっても適用することができる。