【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するために為されたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0013】
本発明に係る酸素製造システムの一態様は、
窒素製造装置及び酸素製造装置を組み合わせた酸素製造システムであって、
前記酸素製造装置は、
冷却された加圧空気が導入される容器(A)と、
下部に凝縮−蒸発器(B)を有する精留塔(C)と、
を備えており、
前記容器(A)底部に貯液された液体を導出する第1流路と、
前記第1流路から導出された前記液体の一部を前記精留塔(C)上部に導入するための第2流路と、
前記窒素製造装置から酸素リッチ液化空気の少なくとも一部を導出し前記精留塔(C)中間段に導入するための第3流路と、
前記第1流路から分岐した、前記液体の少なくとも一部を前記窒素製造装置に寒冷源として導入するための第4流路と、
前記精留塔(C)底部側からの理論段数が5〜10段の範囲内の位置から、前記凝縮−蒸発器(B)において液化空気の凝縮熱により気化した酸素ガスを導出する第5流路と、を備える。
【0014】
このような酸素製造システムによれば、既存の窒素製造プロセスへの影響を小さく抑え、高純度の酸素ガス及び高純度の液体酸素の少なくとも一方を効率的に製造することができる。
【0015】
単独の窒素製造装置では、典型的には約30%以上の酸素を含む酸素リッチ液化空気が余剰となり得る。本発明に係る酸素製造システムでは、係る酸素リッチ液化空気を酸素製造装置の原料として利用する。すなわち、本発明に係る酸素製造システムでは、係る原料
を酸素製造装置に供給して高純度の酸素ガス及び高純度の液体酸素の少なくとも一方を製品として得ることができる。さらに、本発明に係る酸素製造システムでは、酸素製造装置で余剰となった液化空気を窒素製造装置に寒冷源として供給する。これにより、窒素製造装置のパフォーマンスの低下を抑え、エネルギー及び排出ガスの無駄を小さく抑えて高純度の酸素ガス及び高純度の液体酸素の少なくとも一方を効率的に製造することができる。
【0016】
本発明に係る酸素製造システムにおいて、
前記気化した酸素ガスが液化される酸素液化部(D)と、
前記第1流路から分岐した、前記液体の少なくとも一部を前記酸素液化部(D)に寒冷源として導入するための第6流路と、
前記酸素液化部(D)の内部に配設され、前記気化した酸素ガスが前記第5流路を介して導入される酸素凝縮器(E)と、
前記酸素凝縮器(E)内において生成した液体酸素を導出するための第7流路と、
を備えてもよい。
【0017】
このような酸素製造システムによれば、酸素製造装置において余剰となる低温の液体の一部を、酸素を液化するための寒冷源として利用することができる。これにより、酸素を液化するための寒冷を発生させるためのエネルギーを削減することができる。そのため、例えば、従来では液体窒素等の冷媒を供給していたところ、これを不要とすることができる。
【0018】
本発明に係る酸素製造システムにおいて、
前記精留塔(C)上段から廃ガスが導出される第8流路と、
前記酸素液化部(D)上段からガス化した前記液体が導出される第9流路と、
を備えてもよい。
【0019】
このような酸素製造システムによれば、第8流路により、精留塔(C)内で発生した廃ガスを精留塔(C)外に導出することができ、精留塔(C)内の圧力を適切に保つことができる。また同様に第9流路により、酸素液化部(D)内で熱交換によりガス化した液体を系外に放出することができ、酸素液化部(D)内の圧力を適切に保つことができる。
【0020】
本発明に係る酸素製造システムにおいて、
前記第8流路と、前記第9流路とが合流することにより形成される第10流路と、
前記第10流路を流れる前記廃ガス及び前記ガス化した前記液体の混合ガスが加熱される熱交換器(G)と、
前記加熱された混合ガスが前記第10流路を介して導入される第1加圧手段と、
を備えてもよい。
【0021】
このような酸素製造システムによれば、第10流路を流れる混合ガスが熱交換器(G)にて加熱された後に第1加圧手段に導入される。これにより、廃ガス及びガス化した液体に対して、第1加圧手段をそれぞれ設ける必要がない。また、係る第1加圧手段は、低温仕様の圧縮機等ではなく常温仕様の圧縮機等を用いれば足りるので、例えば、設備コストを小さく抑えることができる。
【0022】
本発明に係る酸素製造システムにおいて、
前記第1加圧手段により加圧された前記混合ガスを前記熱交換器(G)に導入する第11流路と、
前記熱交換器(G)内にて冷却された前記混合ガスを前記容器(A)に導入する第12流路と、
を備えてもよい。
【0023】
このような酸素製造システムによれば、第1加圧手段により加圧された混合ガスが熱交換器(G)内にて冷却され、容器(A)に導入される。これにより、製品酸素(高純度の酸素ガス及び高純度の液体酸素の少なくとも一方)の回収率の向上を図ることができる。
【0024】
本発明に係る酸素製造システムにおいて、
前記第7流路を介して前記液体酸素が導入される第2加圧手段と、
前記第2加圧手段により加圧された前記液体酸素を前記熱交換器(G)に導入する第13流路と、
前記熱交換器(G)内にて加熱され、ガス化された酸素を導出する第15流路と、
を備えてもよい。
【0025】
このような酸素製造システムによれば、液体酸素が第2加圧手段によって加圧された後に、熱交換器(G)内にて加熱される。これにより、加圧された酸素ガスを得ることができる。また、加圧された液体酸素が熱交換器内で加熱されて蒸発するが、本発明に係る酸素製造システムでは、得られる液体酸素におけるメタン等の炭化水素の濃度が非常に低く抑えられる。そのため、熱交換器(G)内にて炭化水素類が固化しにくく、熱交換器(G)内にメタン等の炭化水素類が蓄積しにくいため、より安全に高純度の酸素ガスを製造することができる。
【0026】
本発明に係る酸素製造方法の一態様は、
冷却された加圧空気が導入される容器(A)と、下部に凝縮−蒸発器(B)を有する精留塔(C)と、を備えている酸素製造装置を、窒素製造装置に組み合わせて用いる酸素製造方法であって、
前記容器(A)底部に貯液された液体を第1流路を介して導出する工程と、
前記導出された液体の一部を、前記精留塔(C)上部に第2流路を介して導入する工程と、
前記窒素製造装置から酸素リッチ液化空気の少なくとも一部を導出し、第3流路を介して前記精留塔(C)中間段に導入する工程と、
第4流路を介して、前記液体の少なくとも一部を前記窒素製造装置に寒冷源として導入する工程と、
前記精留塔(C)底部側からの理論段数が5〜10段の範囲内の位置から、前記凝縮−蒸発器(B)において液化空気の凝縮熱により気化した酸素ガスを第5流路を介して導出する工程と、
を有する。
【0027】
このような酸素製造方法によれば、既存の窒素製造プロセスへの影響を小さく抑え、高純度の酸素ガス及び高純度の液体酸素の少なくとも一方を効率的に製造することができる。
【0028】
本発明に係る酸素製造方法において、
前記酸素製造装置は、酸素液化部(D)と、酸素凝縮器(E)と、を備え、
第6流路を介して前記液体の少なくとも一部を前記酸素液化部(D)に寒冷源として導入する工程と、
前記気化した酸素ガスを、前記第5流路を介して前記酸素凝縮器(E)に導入する工程と、
前記酸素凝縮器(E)内において生成した液体酸素を、第7流路を介して導出する工程と、
を有してもよい。
【0029】
このようにすれば、酸素製造装置において余剰となる低温の液体の一部を、酸素を液化するための寒冷源として利用することができる。これにより、酸素を液化するための寒冷を発生させるためのエネルギーを削減することができる。そのため、例えば、従来では液体窒素等の冷媒を供給していたところ、これを不要とすることができる。
【0030】
本発明に係る酸素製造方法において、
前記精留塔(C)上段から第8流路を介して廃ガスを導出する工程と、
前記酸素液化部(D)上段から第9流路を介してガス化した前記液体を導出する工程と、
を有してもよい。
【0031】
このようにすれば、第8流路により、精留塔(C)内で発生した廃ガスを精留塔(C)外に導出することができ、精留塔(C)内の圧力を適切に保つことができる。また同様に第9流路により、酸素液化部(D)内で熱交換によりガス化した液体を系外に放出することができ、酸素液化部(D)内の圧力を適切に保つことができる。
【0032】
本発明に係る酸素製造方法において、
前記酸素製造装置は、熱交換器(G)と、第1加圧手段と、を備え、
前記第8流路と、前記第9流路とを合流させる第10流路を流れる前記廃ガス及び前記ガス化した前記液体の混合ガスを、前記熱交換器(G)において加熱する工程と、
前記加熱された混合ガスを前記第10流路を介して前記第1加圧手段に導入する工程と、
を有してもよい。
【0033】
このようにすれば、第10流路を流れる混合ガスが熱交換器(G)にて加熱された後に第1加圧手段に導入される。これにより、廃ガス及びガス化した液体に対して、第1加圧手段をそれぞれ設ける必要がない。また、係る第1加圧手段は、低温仕様の圧縮機等ではなく常温仕様の圧縮機等を用いれば足り、例えば、設備コストを小さく抑えることができる。
【0034】
本発明に係る酸素製造方法において、
前記第1加圧手段により加圧された前記混合ガスを、第11流路を介して前記熱交換器(G)に導入し、前記熱交換器(G)内にて冷却する工程と、
前記冷却された混合ガスを、第12流路を介して前記容器(A)に導入する工程と、
を有してもよい。
【0035】
このようにすれば、第1加圧手段により加圧された混合ガスが熱交換器(G)内にて冷却され、容器(A)に導入される。これにより、製品酸素(高純度の酸素ガス及び高純度の液体酸素の少なくとも一方)の回収率の向上を図ることができる。
【0036】
本発明に係る酸素製造方法において、
前記酸素製造装置は、第2加圧手段を備え、
前記液体酸素を、前記第7流路を介して前記第2加圧手段に導入する工程と、
前記第2加圧手段により加圧された前記液体酸素を、第13流路を介して前記熱交換器(G)に導入する工程と、
前記熱交換器(G)内にて加熱されガス化された酸素を、第15流路を介して導出する工程と、
を有してもよい。
【0037】
このようにすれば、液体酸素が第2加圧手段によって加圧された後に、熱交換器(G)
内にて加熱される。これにより、加圧された酸素ガスを得ることができる。また、加圧された液体酸素が熱交換器内で加熱されて蒸発するが、本発明に係る酸素製造方法では、得られる液体酸素におけるメタン等の炭化水素の濃度が非常に低く抑えられる。そのため、熱交換器(G)内にて炭化水素類が固化しにくく、熱交換器(G)内にメタン等の炭化水素類が蓄積しにくいため、より安全に高純度の酸素ガスを製造することができる。