特許第6546512号(P6546512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546512
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20190705BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   H01L21/26 J
   H01L21/265 602B
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-216334(P2015-216334)
(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公開番号】特開2017-92095(P2017-92095A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】青山 敬幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】河原▲崎▼ 光
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅志
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−246061(JP,A)
【文献】 特開平02−216818(JP,A)
【文献】 特開2004−140318(JP,A)
【文献】 特開2006−278802(JP,A)
【文献】 特開2012−151389(JP,A)
【文献】 特開昭63−002318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内に設けられ、基板を載置して支持する支持部と、
前記チャンバーの開口部を閉塞する石英窓と、
前記チャンバーの外部に設けられ、前記石英窓を介して前記支持部に支持された基板に光を照射する光照射部と、
を備え、
前記石英窓の前記支持部に対向する対向面に、前記光照射部から前記チャンバー内に照射する光を減光させる減光部を設け
前記石英窓の前記対向面とは反対側の面に、前記光照射部から前記石英窓に入射する光の光量を調整する円形の光量調整部をさらに備え、
前記減光部は、前記光量調整部よりも小さな円形状であることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記支持部を昇降させる昇降部をさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の熱処理装置において、
前記減光部は、前記石英窓の前記対向面の中央部に設けられることを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記減光部は、前記対向面に形成された凹凸を有する粗面であることを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の熱処理装置において、
前記粗面は、前記減光部の設けられる領域の一部に形成されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記光照射部は、フラッシュ光を照射するフラッシュランプを含むことを特徴とする熱処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記光照射部はハロゲンランプを含むことを特徴とする熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、不純物導入は半導体ウェハー内にpn接合を形成するための必須の工程である。現在、不純物導入は、イオン打ち込み法とその後のアニール法によってなされるのが一般的である。イオン打ち込み法は、ボロン(B)、ヒ素(As)、リン(P)といった不純物の元素をイオン化させて高加速電圧で半導体ウェハーに衝突させて物理的に不純物注入を行う技術である。注入された不純物はアニール処理によって活性化される。この際に、アニール時間が数秒程度以上であると、打ち込まれた不純物が熱によって深く拡散し、その結果接合深さが要求よりも深くなり過ぎて良好なデバイス形成に支障が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するアニール技術として、近年フラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、不純物が注入された半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0004】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。このため、キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
フラッシュランプを使用した熱処理装置においては、半導体ウェハーの周縁部の温度が中心部よりも相対的に低くなる問題が生じやすい。このような温度分布の不均一が生じる原因としては、半導体ウェハーの周縁部からの熱放射、或いは半導体ウェハーの周縁部から比較的低温の石英サセプターへの熱伝導などが考えられる。
【0006】
一方、半導体デバイスの微細化および半導体ウェハーの大口径化にともなって、半導体製造装置にはより厳しいプロセスの均一性が要求されており、フラッシュランプアニール装置においても加熱処理時の温度分布の均一性向上が強く求められている。フラッシュランプアニール装置における温度分布の不均一を解決するための種々の方法が検討されており、例えば特許文献1には、フラッシュランプと半導体ウェハーを保持する保持部との間に設けられた石英窓の上に半導体ウェハーの直径よりも小さい径を有する照度調整板を載置することが提案されている。半導体ウェハーの内側部分に到達する光の光量が照度調整板によって低下する一方、半導体ウェハーの周縁部に到達する光の光量は低下しないため、相対的に半導体ウェハーの中心部の温度が低くなり、結果として半導体ウェハーの面内温度分布の均一性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−278802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来より典型的にはフラッシュランプアニール装置は概ね常圧で加熱処理を行っていたが、近年フラッシュランプアニールを不純物の活性化以外(例えば、高誘電率ゲート絶縁膜の熱処理)にも適用する試みが検討されているのと相まって、フラッシュランプアニール装置のチャンバー内を減圧雰囲気とする必要性が生じている。チャンバー内を減圧雰囲気とするためには、チャンバー構造を耐圧構造とする必要があり、フラッシュランプからのフラッシュ光を透過する石英窓の厚さを、従来の常圧仕様のものよりも厚くしなければならない。
【0009】
板厚の厚い石英窓に特許文献1に開示されるような照度調整板を載置した場合、照度調整板の側方から石英窓に入射した光が石英窓の上面と下面とで多重反射を繰り返して照度調整板の下方に位置する半導体ウェハーの中心部近傍にも照射されるという現象が生じる。そうすると、照度調整板によって半導体ウェハーの中心部近傍に到達する光の光量を低下させることが妨げられ、加熱処理時における半導体ウェハーの面内温度分布の均一性が損なわれるという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、石英窓の厚さにかかわらず、基板の面内温度分布の均一性を向上させることができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内に設けられ、基板を載置して支持する支持部と、前記チャンバーの開口部を閉塞する石英窓と、前記チャンバーの外部に設けられ、前記石英窓を介して前記支持部に支持された基板に光を照射する光照射部と、を備え、前記石英窓の前記支持部に対向する対向面に、前記光照射部から前記チャンバー内に照射する光を減光させる減光部を設け、前記石英窓の前記対向面とは反対側の面に、前記光照射部から前記石英窓に入射する光の光量を調整する円形の光量調整部をさらに備え、前記減光部は、前記光量調整部よりも小さな円形状であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記支持部を昇降させる昇降部をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る熱処理装置において、前記減光部は、前記石英窓の前記対向面の中央部に設けられることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記減光部は、前記対向面に形成された凹凸を有する粗面であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る熱処理装置において、前記粗面は、前記減光部の設けられる領域の一部に形成されることを特徴とする。
【0017】
また、請求項の発明は、請求項1から請求項のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記光照射部は、フラッシュ光を照射するフラッシュランプを含むことを特徴とする。
【0018】
また、請求項の発明は、請求項1から請求項のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記光照射部はハロゲンランプを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1から請求項の発明によれば、石英窓の支持部に対向する対向面に、光照射部からチャンバー内に照射する光を減光させる減光部を設けるため、厚い石英窓に入射して多重反射を繰り返した光をも減光することができ、石英窓の厚さにかかわらず、基板の面内温度分布の均一性を向上させることができる。また、石英窓の対向面とは反対側の面に、光照射部から石英窓に入射する光の光量を調整する光量調整部をさらに備えるため、光照射部からの光をより効果的に減光することができる。
【0020】
特に、請求項2の発明によれば、支持部を昇降させる昇降部をさらに備えるため、減光部による基板上の減光範囲を調整する自由度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
図2】チャンバーの平面図である。
図3】サセプターの断面図である。
図4】受渡部の平面図である。
図5】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
図6】上側チャンバー窓に設けられた減光部および光量調整部を示す図である。
図7】上側チャンバー窓を下面側から見た平面図である。
図8】減光部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには高誘電率膜が形成されており、熱処理装置1による加熱処理によって高誘電率膜の成膜後熱処理(PDA:Post Deposition Annealing)が実行される。なお、図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0025】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0026】
図2は、チャンバー6の平面図である。チャンバー6は、平面視で略矩形の筒状のチャンバー側壁部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側壁部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口部には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口部には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー側壁部61は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0027】
チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された板状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された板状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64およびチャンバー側壁部61によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0028】
また、チャンバー側壁部61の(+X)側には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、図示省略のゲートバルブによって開閉可能とされている。ゲートバルブが搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブが搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0029】
また、熱処理装置1は、チャンバー6内部の熱処理空間65に処理ガスを供給するためのガス供給部80と、チャンバー6から排気を行う排気部85と、を備える。ガス供給部80は、ガス供給管81にガス供給源82と供給バルブ83とを備える。ガス供給管81の先端側はチャンバー6内の熱処理空間65に連通され、基端側はガス供給源82に接続される。ガス供給管81の経路途中に供給バルブ83が介挿されている。ガス供給源82は、ガス供給管81に処理ガスを送出する。供給バルブ83を開放することによって、熱処理空間65に処理ガスが供給される。なお、ガス供給源82としては、熱処理装置1内に設けられた気体タンクと送給ポンプとで構成するようにしても良いし、熱処理装置1が設置される工場の用力を用いるにようにしても良い。ガス供給源82が供給する処理ガスとしては、窒素(N)アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性ガス、または、酸素(O)、水素(H)、塩素(Cl)、塩化水素(HCl)、オゾン(O)、二酸化窒素(NO)、一酸化窒素(NO)、フッ化水素(HF)、フッ素(F)、三フッ化窒素(NF)、アンモニア(NH)などの反応性ガスが例示され、安全が許す範囲でこれらの混合ガスであっても良い。
【0030】
排気部85は、ガス排気管86に排気装置87と排気バルブ88とを備える。ガス排気管86の先端側はチャンバー6内の熱処理空間65に連通され、基端側は排気装置87に接続される。排気装置87を作動させつつ、排気バルブ88を開放することによって、熱処理空間65の雰囲気が排気される。排気装置87としては、真空ポンプや熱処理装置1が設置される工場の排気ユーティリティを用いることができる。
【0031】
ガス供給部80からチャンバー6への処理ガスの供給を行うことなく、排気部85によってチャンバー6内の熱処理空間65の雰囲気を排気すると、チャンバー6内を大気圧未満に減圧することができる。チャンバー6は、内部を減圧することが可能な耐圧構造とされており、石英の上側チャンバー窓63および下側チャンバー窓64の厚さは常圧仕様のフラッシュランプアニール装置の石英窓よりも厚い。
【0032】
また、熱処理装置1は、サセプター70および昇降駆動部20を備える。サセプター70は、処理対象となる半導体ウェハーWを載置して支持する。サセプター70は、石英にて形成された略矩形の平板状部材である。サセプター70の縦および横の長さは、処理対象となる半導体ウェハーWの径よりも大きい(例えば、半導体ウェハーWの径がφ450mmであれば、サセプター70の縦および横の長さは450mmよりも大きい)。その一方、図2に示すように、サセプター70の平面サイズはチャンバー6内の熱処理空間65の平面サイズよりも小さい。
【0033】
図3は、サセプター70の断面図である。図2および図3に示すように、サセプター70の上面中央にはウェハーポケット71が形設されている。ウェハーポケット71は、円形の凹部であり、その径は半導体ウェハーWの径よりも若干大きい。また、ウェハーポケット71の周縁部はテーパ面とされている(図3)。
【0034】
ウェハーポケット71の底面には支持ピン72が立設されている。本実施形態においては、円形のウェハーポケット71と同心円の周上に沿って30°毎に計12本の支持ピン72が立設されている。12本の支持ピン72を配置した円の径(対向する支持ピン72間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さい。それぞれの支持ピン72は石英にて形成されている。なお、複数の支持ピン72とサセプター70とを一体に加工するようにしても良いし、別に形成した支持ピン72をサセプター70に溶着するようにしても良い。
【0035】
半導体ウェハーWは、ウェハーポケット71に立設された複数の支持ピン72によって点接触にて支持されてサセプター70に載置される。支持ピン72の高さよりもウェハーポケット71の深さの方が大きい。従って、支持ピン72によって支持された半導体ウェハーWの位置ずれはウェハーポケット71周縁部のテーパ面によって防止される。
【0036】
また、サセプター70には8個の貫通孔73が穿設されている。それぞれの貫通孔73は、サセプター70を上下に貫通するように設けられている。8個の貫通孔73のうちの4個はウェハーポケット71の底面に設けられ、残る4個はウェハーポケット71よりも外側に設けられている。貫通孔73は、後述する受渡部10の受け渡しピン12が貫通するための孔である。
【0037】
本発明に係る熱処理装置1においては、サセプター70が昇降駆動部20によってチャンバー6内にて昇降される。昇降駆動部20は、チャンバー6の(−Y)側および(+Y)側にそれぞれ1個ずつ設けられている。すなわち、本実施形態では、2個の昇降駆動部20によってサセプター70を両持ちで支持して昇降させるのである。
【0038】
各昇降駆動部20は、駆動モータ21、支持板22および支持軸23を備える。支持板22は、金属製の板であり、その先端部はサセプター70の端部とボルトおよびナットによって締結されている。支持板22の下面には支持軸23が連結されている。駆動モータ21は、支持軸23を昇降させることによって、支持板22を鉛直方向(Z軸方向)に沿って昇降させる。駆動モータ21が支持軸23を昇降させる機構としては、例えば支持軸23の下端に連結される部材に螺合するボールネジを駆動モータ21が回転させるボールネジ機構などを用いることができる。駆動モータ21としては、正確な位置決め制御が可能なパルスモータを用いるのが好ましい。また、サセプター70の高さ位置を検出するために、駆動モータ21にエンコーダを付設するのが好ましい。
【0039】
図1に示すように、昇降駆動部20は、支持板22の先端の一部を除いてチャンバー6のチャンバー側壁部61よりも外側に設けられている。支持板22は、チャンバー側壁部61の(−Y)側および(+Y)側に形成された開口部を貫通するように設けられている。熱処理空間65の気密性を維持するために、支持板22が貫通するチャンバー側壁部61の両端開口部は筐体24によって覆われており、その筐体24の内側に昇降駆動部20が収納されている。このため、熱処理装置1外部と熱処理空間65とは雰囲気遮断されている。なお、昇降駆動部20自体の発塵によって生じたパーティクルが熱処理空間65に流入するのを防止するために、支持軸23等を蛇腹によって覆っておくことが好ましい。
【0040】
本実施形態では、チャンバー6の(−Y)側および(+Y)側に設けられた2個の昇降駆動部20の駆動モータ21が同期して支持板22を昇降させる。従って、サセプター70は、チャンバー6内にて水平姿勢(法線が鉛直方向に沿う姿勢)のまま、2個の昇降駆動部20によって鉛直方向に沿って昇降されることとなる。
【0041】
また、熱処理装置1は、サセプター70に対して半導体ウェハーWの受け渡しを行うための受渡部10をチャンバー6内に備える。図4は、受渡部10の平面図である。受渡部10は、2本のアーム11を備える。それぞれのアーム11には、2本の受け渡しピン12が立設されている。よって、受渡部10は計4本の受け渡しピン12を有する。各アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対のアーム11をサセプター70に対して半導体ウェハーWの受け渡しを行う受渡動作位置(図4の実線位置)とサセプター70に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図4の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13は、チャンバー6の(−X)側に設けられている。水平移動機構13としては、個別のモータによって各アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対のアーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0042】
4本の受け渡しピン12は、水平移動機構13によって水平方向(XY平面内)にて移動されるが、鉛直方向に沿って昇降されることはない。すなわち、チャンバー6内における4本の受け渡しピン12の高さ位置は固定されている。
【0043】
一対のアーム11が閉じられて受渡動作位置に位置しているときに、昇降駆動部20によってサセプター70が下降すると、4本の受け渡しピン12がウェハーポケット71に穿設された貫通孔73を通過し、受け渡しピン12の上端がサセプター70の上面から突き出る。このときに、サセプター70のウェハーポケット71に半導体ウェハーWが保持されていると、その半導体ウェハーWは4本の受け渡しピン12によって突き上げられて支持される。また、サセプター70の上面よりも突き出た4本の受け渡しピン12に半導体ウェハーWを支持した状態でサセプター70が上昇すると、ウェハーポケット71に当該半導体ウェハーWが保持されることとなる。このようにして、4本の受け渡しピン12とサセプター70との間での半導体ウェハーWの授受が行われる。
【0044】
一方、一対のアーム11が開かれて退避位置に位置しているときに、昇降駆動部20によってサセプター70が下降すると、4本の受け渡しピン12がウェハーポケット71よりも外側に設けられた貫通孔73を通過し、受け渡しピン12の上端がサセプター70の上面から突き出る。このときには、サセプター70のウェハーポケット71に半導体ウェハーWが保持されていたとしても、その半導体ウェハーWはサセプター70に保持されたままである。
【0045】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0046】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が水平方向に沿って互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0047】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0048】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0049】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。
【0050】
図5は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が水平方向に沿って互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0051】
また、図5に示すように、上段、下段ともにサセプター70に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0052】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0053】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0054】
また、本実施形態においては、チャンバー6の上側開口部を閉塞する石英窓である上側チャンバー窓63の下面に減光部68を形設するとともに、上側チャンバー窓63の上面に光量調整部69を設けている。すなわち、上側チャンバー窓63のサセプター70と対向する対向面に減光部68を形設するとともに、その対向面と反対側の面に光量調整部69を設けているのである。
【0055】
図6は、上側チャンバー窓63に設けられた減光部68および光量調整部69を示す図である。図7は、上側チャンバー窓63を下面側から見た平面図である。本実施形態の減光部68は、微細な凹凸を有する粗面である。従って、上側チャンバー窓63の下面のうち減光部68が形設された領域は、いわゆる擦りガラス(または曇りガラス)状となる。
【0056】
図7に示すように、減光部68は、上側チャンバー窓63の下面の中央部に円形状に設けられる。減光部68の円形領域の直径は半導体ウェハーWの径よりも小さい。例えば、半導体ウェハーの径がφ300mmであれば、減光部68の円形領域の直径は約200mmである。また、減光部68の円形領域の中心軸は、サセプター70に支持された半導体ウェハーWの中心軸と一致する。よって、減光部68は、サセプター74に支持された半導体ウェハーWの周縁部を除く中央側領域と対向することとなる。
【0057】
減光部68は、擦りガラスを形成するための公知の種々の手法によって形成すれば良く、例えば図7に示す上側チャンバー窓63の円形領域にサンドブラスト処理を施すことによって形成される。減光部68の粗面の平均表面粗さは0.1μm以上10μm以下である。
【0058】
このような微細な凹凸を有する粗面である減光部68は光を散乱させる性質を有する。フラッシュランプFLから放射されて上側チャンバー窓63に入射した光のうち減光部68に到達した光は微細な凹凸を有する粗面によって散乱されることにより光量が減光されてチャンバー6内に出射されることとなる。すなわち、減光部68は、フラッシュランプFLからチャンバー6内に照射される光を減光させる。
【0059】
一方、上側チャンバー窓63の上面に設けられた光量調整部69は不透明石英等で形成された遮光板である。不透明石英は微小な気泡を有する石英である。本実施形態にて光量調整部69として使用される遮光板は、完全に光を遮断(透過率0%)するものではなく、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の波長域においてある程度の光を透過させる。光量調整部69の透過率は、素材である不透明石英に含まれる気泡の含有率および光量調整部69の板厚によって規定される。光量調整部69の形状および大きさは特に限定されるものではないが、本実施形態では減光部68よりも若干大きな円形とされる。光量調整部69の中心軸は、サセプター70に支持された半導体ウェハーWの中心軸と一致する。よって、光量調整部69も、サセプター74に支持された半導体ウェハーWの中央側領域と対向することとなる。光量調整部69は、フラッシュランプFLから光量調整部69を透過して上側チャンバー窓63に入射する光の光量を調整する。その調整の程度は、光量調整部69の透過率によって定まる。
【0060】
また、制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0061】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー側壁部61には水冷管(図示省略)が設けられている。ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。また、チャンバー6には、サセプター70に支持された半導体ウェハーWの温度を測定する温度センサー(例えば、非接触で温度測定する放射温度計)が設けられている。さらに、チャンバー6には、熱処理空間65の圧力を測定する圧力センサーが設けられている。
【0062】
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWは、ゲート絶縁膜として高誘電率膜が例えばALD(Atomic Layer Deposition)等の手法によって成膜された半導体基板である。成膜直後の高誘電率膜中には多数の欠陥が存在しているため、熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)によって欠陥を消滅させる。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0063】
まず、チャンバー6の搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して高誘電率膜成膜後の半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。このときには、受渡部10の一対のアーム11が受渡動作位置に位置するとともに、サセプター70が下降して4本の受け渡しピン12がウェハーポケット71に穿設された貫通孔73を通過し、受け渡しピン12の上端がサセプター70の上面から突き出ている。
【0064】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWはサセプター70のウェハーポケット71の直上位置にまで進出して停止する。そして、搬送ロボットが下降することにより、半導体ウェハーWが搬送ロボットから4本の受け渡しピン12に渡されて載置される。このときには、受け渡しピン12に載置された半導体ウェハーWとアーム11との間の高さ位置にサセプター70が位置することとなる。
【0065】
半導体ウェハーWが受け渡しピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、搬送開口部66がゲートバルブによって閉鎖される。そして、昇降駆動部20によってサセプター70が受け渡しピン12よりも上方に上昇することにより、受け渡しピン12に載置されていた半導体ウェハーWはサセプター70に受け渡される。サセプター70は、受け渡しピン12から受け取った半導体ウェハーWをウェハーポケット71内に載置して支持する。半導体ウェハーWは、高誘電率膜が形成された表面を上面としてサセプター70に支持される。
【0066】
サセプター70に半導体ウェハーWが受け渡された後、一対のアーム11は水平移動機構13によって退避位置に移動する。また、ガス供給部80および排気部85によってチャンバー6内の雰囲気置換が行われる。具体的には、まず、ガス供給部80からチャンバー6への処理ガスの供給を行うことなく、排気部85によってチャンバー6内の熱処理空間65の雰囲気を排気することにより、チャンバー6内を一旦大気圧未満にまで減圧する。続いて、排気部85による排気を継続しつつ、ガス供給部80からアンモニアと希釈ガスとしての窒素との混合ガスを処理ガスとして供給することにより、チャンバー6内の熱処理空間65にアンモニア雰囲気を形成する。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65が大気雰囲気からアンモニア雰囲気へと置換される。チャンバー6内を一旦減圧してから処理ガスを供給することにより、置換効率を高めることができる。なお、半導体ウェハーWの搬入にともなう外部雰囲気の流入を最小限に抑制すべく、搬送開口部66を開放する前からチャンバー6内への窒素ガス供給を開始するようにしても良い。
【0067】
次に、制御部3が昇降駆動部20を制御してサセプター70を所定の熱処理位置に移動させる。この熱処理位置についてはさらに後述するが受け渡しピン12の上端より下方であっても良い。本実施形態では、サセプター70が半導体ウェハーWを受け取った後に、一対のアーム11が退避位置に移動しているため、サセプター70が受け渡しピン12の上端より下方にまで下降したとしても、4本の受け渡しピン12はウェハーポケット71よりも外側に設けられた貫通孔73を通過することとなる。このとき、受け渡しピン12がサセプター70の上面よりも突き出ることとなるが、その受け渡しピン12によって半導体ウェハーWが突き上げられることは無く、半導体ウェハーWはサセプター70に保持された状態が維持される。
【0068】
半導体ウェハーWを保持するサセプター70が熱処理位置に到達して停止した後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプター70を透過して半導体ウェハーWの裏面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、受渡部10の一対のアーム11は、半導体ウェハーWと重ならない退避位置に移動しているため、ハロゲンランプHLによる予備加熱の障害となることは無い。
【0069】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が図示省略の温度センサーによって測定されている。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、温度センサーによる測定結果に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御するのである。予備加熱温度T1は、300℃以上600℃以下であり、本実施形態では450℃である。
【0070】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、温度センサーによって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点で制御部3がハロゲンランプHLの出力を制御して半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0071】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階にて生じる半導体ウェハーWの面内温度分布の不均一をある程度緩和することができる。
【0072】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点でフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLから閃光を照射することによるフラッシュ加熱処理を実行する。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0073】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。高誘電率膜が成膜された半導体ウェハーWの表面にフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することによって、高誘電率膜を含む半導体ウェハーWの表面は瞬間的に処理温度T2にまで昇温して成膜後熱処理(PDA)が実行される。フラッシュ光照射によって半導体ウェハーWの表面が到達する最高温度(ピーク温度)である処理温度T2は600℃以上1200℃以下であり、本実施形態では1000℃である。
【0074】
アンモニア雰囲気中にて半導体ウェハーWの表面が処理温度T2にまで昇温して成膜後熱処理が実行されると、高誘電率膜の窒化が促進されるとともに、高誘電率膜中に存在していた点欠陥等の欠陥が消滅する。なお、フラッシュランプFLからの照射時間は0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の短時間であるため、半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度T1から処理温度T2にまで昇温するのに要する時間も1秒未満の極めて短時間である。フラッシュ光照射後の半導体ウェハーWの表面温度は処理温度T2からただちに急速に下降する。
【0075】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。また、一対のアーム11が水平移動機構13によって退避位置から受渡動作位置に移動し、サセプター70が下降する。サセプター70は、上述した搬送ロボットから受け渡しピン12に半導体ウェハーWが渡されるときのサセプター70の高さ位置にまで下降する。一対のアーム11が受渡動作位置に位置した状態でサセプター70が下降するため、4本の受け渡しピン12はウェハーポケット71に設けられた貫通孔73を通過することとなる。その結果、サセプター70に保持されていた半導体ウェハーWは4本の受け渡しピン12によってサセプター70から突き上げられて支持される。
【0076】
その後、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、チャンバー6の搬送開口部66が開放され、受け渡しピン12に載置されている半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットによりチャンバー6から搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。なお、チャンバー6の搬送開口部66を開放する前に、排気部85によってチャンバー6内を再び大気圧未満にまで減圧してアンモニア雰囲気を排出した後に、ガス供給部80からチャンバー6内に窒素ガスを供給して熱処理空間65を復圧しておくのが好ましい。
【0077】
本実施形態においては、上側チャンバー窓63の下面に減光部68を形設するとともに、その上面に光量調整部69を設けている。上記のフラッシュ加熱処理時に、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光のうち光量調整部69に到達した光は、光量調整部69を透過するときに光量が減光されてから上側チャンバー窓63に入射することとなる。また、上側チャンバー窓63に入射した光のうち減光部68に到達した光は、減光部68を透過するときに光量が減光されて上側チャンバー窓63から下方に向けて出射されることとなる。減光部68および光量調整部69は、いずれもサセプター74に支持された半導体ウェハーWの中央側領域と対向して設けられているため、減光部68および光量調整部69によってフラッシュ光の光量が減光された結果、半導体ウェハーWの周縁部を除く中央側領域に照射されるフラッシュ光の光量が相対的に減光されることとなる。
【0078】
上述したように、ハロゲンランプHLによる予備加熱時には、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向があり、フラッシュ加熱時に均一な照度でフラッシュ光を照射したとしても、到達表面温度は中央部よりも周縁部が低くなることがあった。本実施形態では、減光部68および光量調整部69によってフラッシュランプFLから半導体ウェハーWの中央側領域に照射されるフラッシュ光の光量を相対的に減光することにより、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーWの周縁部の表面温度と中央部の表面温度との温度差を低減して面内温度分布の均一性を向上させることができる。
【0079】
ところで、本実施形態の熱処理装置1のチャンバー6は減圧可能な耐圧構造とされており、石英の上側チャンバー窓63および下側チャンバー窓64の厚さは常圧仕様の従来のフラッシュランプアニール装置のものより厚い。上側チャンバー窓63の厚さが厚くなると、図6に示すように、光量調整部69の側方から上側チャンバー窓63に入射したフラッシュ光が上側チャンバー窓63の上面と下面との間で多重反射を繰り返してサセプター74に支持された半導体ウェハーWの中央側領域と対向する位置にまで到達することがある。このようなフラッシュ光がそのまま上側チャンバー窓63の下面から半導体ウェハーWに向けて出射されると、半導体ウェハーWの中央側領域に照射されるフラッシュ光の減光が妨げられることとなり、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーWの表面温度の面内温度分布均一性を向上させることが阻害される。
【0080】
本実施形態においては、上側チャンバー窓63の下面の中央部に減光部68が設けられているため、光量調整部69の側方から上側チャンバー窓63に入射して多重反射を繰り返したフラッシュ光がサセプター74に支持された半導体ウェハーWの中央側領域と対向する位置にまで到達したとしても、そのようなフラッシュ光は減光部68によって光量が減光されて出射されることとなる。その結果、半導体ウェハーWの中央側領域に照射されるフラッシュ光の光量が確実に減光され、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布の均一性を向上させることができる。すなわち、上側チャンバー窓63の下面に減光部68を設けることにより、上側チャンバー窓63の厚さにかかわらず、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布の均一性を向上させることができるのである。
【0081】
また、本実施形態においては、半導体ウェハーWを支持するサセプター70を昇降駆動部20によって自在に昇降させることができ、半導体ウェハーWの加熱処理に際しては昇降駆動部20がサセプター70を所定の熱処理位置に移動させている。サセプター70の高さ位置に応じて、サセプター70に支持された半導体ウェハーWの表面上におけるフラッシュ光の減光領域(つまり、減光部68の影となる領域)の大きさが異なる。サセプター70の高さ位置が高くなるほど、サセプター70に支持された半導体ウェハーWが減光部68に近づくため、半導体ウェハーWの表面上における減光領域の大きさは大きくなる。逆に、サセプター70の高さ位置が低くなるほど、サセプター70に支持された半導体ウェハーWが減光部68から遠ざかるため、半導体ウェハーWの表面上における減光領域の大きさは小さくなる。
【0082】
従って、減光部68による減光領域の大きさが最適となる高さ位置に昇降駆動部20がサセプター70を移動させることにより、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布の均一性をさらに向上させることができる。そして、そのような最適なサセプター70の高さ位置を上述した熱処理位置とすれば良い。一例として、予備加熱時に相対的な温度低下が認められる半導体ウェハーWの周縁部を除く中央部と減光部68による減光領域とが一致するサセプター70の高さ位置を熱処理装置とするのが好ましい。
【0083】
上側チャンバー窓63の下面に形設した減光部68による減光と昇降駆動部20によるサセプター70の昇降とを組み合わせることにより、半導体ウェハーWの表面上に照射されるフラッシュ光の光量を減光する減光領域の調整の自由度が高まり、容易に好適な減光領域の範囲を設定することができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、上側チャンバー窓63の下面に減光部68を形設するとともに、上面に光量調整部69を設けていたが、少なくとも下面の減光部68が設けられていれば、光量調整部69の側方から上側チャンバー窓63に入射して多重反射を繰り返した後に半導体ウェハーWの中央側領域に向かうフラッシュ光をも減光することができるため、光量調整部69は必ずしも必須の要素ではない。もっとも、光量調整部69を併せて設けておいた方がフラッシュランプFLから直接に半導体ウェハーWの中央側領域に向かうフラッシュ光をより効果的に減光することができる。
【0085】
また、上記実施形態においては、減光部68を微細な凹凸を有する粗面としていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュ光の光量を減光できる構成であれば良い。例えば、減光部68としては、メッシュや有孔板であっても良いし、光量調整部69と同様の不透明石英等の遮光板を上側チャンバー窓63の下面に貼付するようにしても良い。
【0086】
また、逆に、上側チャンバー窓63の上面に設けられた光量調整部69を減光部68と同様の粗面としても良い。減光部68または光量調整部69として、不透明石英等の遮光板を用いる場合には、遮光板を積層構造とするようにしても良い。遮光板を積層構造とすることにより、遮光板を透過する光の光量を自由に調整することができる。
【0087】
また、上記実施形態においては、減光部68が形設される領域の全面が粗面とされていたが、当該領域の一部が粗面とされていても良い。図8は、減光部68の他の例を示す図である。図8に示す例では、上側チャンバー窓63の下面のうちの減光部168が設けられる領域に格子状に粗面が形成されている。すなわち、減光部168が設けられる領域の一部に粗面が形成されていても良い。このようにしても減光部168全体としては、減光部168を透過するフラッシュ光の光量を減光することができる。また、減光部168が設けられる領域のうちの粗面が形成される面積比率によって減光部168全体の減光率を調整することもできる。
【0088】
また、チャンバー6の下側開口部を閉塞する石英窓である下側チャンバー窓64にも、上側チャンバー窓63と同様の減光部68を設けるようにしても良い。下側チャンバー窓64の場合には、その上面に減光部68を形設する。すなわち、上側チャンバー窓63および下側チャンバー窓64のいずれであっても、サセプター70と対向する対向面に減光部68を形設するのである。下側チャンバー窓64の上面に減光部68を設けることにより、予備加熱時に半導体ウェハーWの中央側領域に照射される光の光量が減光され、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布の均一性を向上させることができる。
【0089】
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
10 受渡部
12 受け渡しピン
20 昇降駆動部
63 上側チャンバー窓
64 下側チャンバー窓
68 減光部
69 光量調整部
70 サセプター
71 ウェハーポケット
80 ガス供給部
85 排気部
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8