特許第6546552号(P6546552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546552
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】建築板
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20190705BHJP
【FI】
   C04B38/00 301A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-55557(P2016-55557)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-171508(P2017-171508A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(72)【発明者】
【氏名】山本 智久
(72)【発明者】
【氏名】城本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】古宮 隆史
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−82013(JP,A)
【文献】 特開昭58−94445(JP,A)
【文献】 特開2006−265063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−111/94
B28B 1/00− 23/22
B32B 1/00− 43/00
E04C 1/00− 5/20
E04F 10/00− 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性無機質材料を含む成形材料の硬化物であるコア層と、
水硬性無機質材料を含む成形材料の硬化物であり、前記コア層を覆うスキン層とを備え、
前記コア層の飽和係数と前記スキン層の飽和係数が0.85以下であり、かつ、前記コア層の飽和係数が前記スキン層の飽和係数よりも小さいことを特徴とする建築板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、建築板に関し、詳細には水硬性無機質材料を主成分とする成形材料から形成され、コア層と、このコア層を覆うスキン層とを有する建築板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントや石膏等の材料製の建築板は、建築物の外壁等、種々の建材用途として利用されている。このような建築板は、種々の材料から、種々の構造に形成される。例えば、特許文献1には、セメント系無機材料とケイ酸含有物質とを主成分とする基材層と、セメント系無機材料とケイ酸含有物質を主成分とし、基材層の上に形成される表面層とからなる無機質板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−123399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、無機質系の建築板を、外壁等の用途で使用する場合、特に寒冷地では、建築板の内部で、結露等で吸収した水分の凍結融解が起こりやすい。凍結融解が繰り返される結果、水分の膨張・収縮によって生じる圧力の逃げ場がなくなり、ひび割れなどによる建築板の破壊や劣化という、いわゆる凍害現象が発生することがある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、コア層と、このコア層を覆うスキン層からなる構造を有しながら、吸収した水分による凍結融解が繰り返されることで生ずる破損等の劣化を抑制し、耐凍害性に優れる建築板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る建築板は、水硬性無機質材料を含む成形材料の硬化物であるコア層と、
水硬性無機質材料を含む成形材料の硬化物であり、前記コア層を覆うスキン層とを備え、
前記コア層の飽和係数と前記スキン層の飽和係数が0.85以下であり、かつ、前記コア層の飽和係数が前記スキン層の飽和係数よりも小さいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、スキン層と、このコア層を覆うスキン層からなる構造を有しながら、吸収した水分による凍結融解が繰り返されることで生ずる破損等の劣化を抑制し、耐凍害性に優れる建築板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る建築板の一例を示す断面図である。
図2】本発明に係る建築板の変形例を示す断面図である。
図3】本発明に係る建築板の製造に用いる押出成形機、及び押出成形機に備えられた金型の概略の平面図である。
図4図4図3に示す金型の概略の断面図である。
図5図5Aは本発明で用いる中空形成体の概略の平面図である。図5B図5Aで示す中空形成体の概略の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下の説明において、飽和係数とは、JIS R1250:2011の規定に準拠して、算出される値である。飽和係数は基材の煮沸吸水率に対する吸水率の比で表される。吸水率、及び煮沸吸水率もJIS R1250:2011の規定に基づいて測定され、算出される値である。なお、本明細書中では、煮沸吸水率のことを飽和吸水率ということもあるが、同等の意味で用いている。
【0010】
本実施形態に係る建築板1は、水硬化性無機質材料を含む成形材料の硬化物であるコア層2と、このコア層2を覆う、水硬化性無機質材料を含む成形材料の硬化物であるスキン層3を備える(図1、及び2参照)。コア層2の飽和係数、及びコア層2を覆うスキン層3の飽和係数は0.85以下であり、コア層2の飽和係数はスキン層3の飽和係数よりも小さい。なお、本明細書中で「覆う」とは、建築板1の表面全体を覆うものは勿論のこと、例えば、平面視矩形状の板状の建築板1において短辺側に位置する両端面を除く四面が覆われている場合も含むものである。
【0011】
このため、本実施形態に係る建築板1は、コア層2とスキン層3を有しながら、吸収した水分による凍結融解が繰り返されることで生ずる破損等の劣化を抑制することができる。すなわち、建築板1は高い耐凍害性を有する。
【0012】
本実施形態に係る建築板1が高い耐凍害性を有する理由は、次の通りであると考えられる。
【0013】
飽和係数は、物質が吸水した場合の、物質内に残存する水分を収容し得る空隙の量の指標であるとも言える。
【0014】
飽和係数が大きい物質が吸水した場合、物質内に、余分な水分が入り込める空隙が少ないことになる。このため、寒冷下で、物質内の水分が凝固して、その体積が膨張したときに、物質内に体積の膨張分を収容できる空間を確保できない。このため、物質内の水分の凍結融解により、物質内に応力がかかりやすくなり、破損等の劣化が起こりやすいと考えられる。
【0015】
これに対して、飽和係数が小さい物質が吸水した場合、物質内に、余分な水分が入り込むための空隙が多い。このため、寒冷下で、物質内の水分が凝固し、その体積が膨張しても体積の膨張分を収容できる空間を確保できる。このため、物質内の水分が凍結融解しても、それによって、物質内に応力がかかりにくく、そのため、物質内に破損などの劣化が起こりにくい。
【0016】
本実施形態では、飽和係数が0.85以下であるコア層2内とスキン層3内には、ともに吸水していても、水分が収容されていない十分な空隙が存在する。このため、水分の凍結融解が生じても建築板1の破損等の劣化が抑制される。
【0017】
さらに、建築板1の表面から建築板1内に水分が浸入する場合、本実施形態のようにコア層2の飽和係数がスキン層3の飽和係数よりも小さいと、スキン層3からコア層2への水分の移動が促進されるためスキン層3内の水分が低減できる。また、スキン層3内の水分が膨張した場合、膨張分がコア層2内の空間に収容されやすくなる。このため、建築板の破損等の劣化が抑制される。
【0018】
コア層2とスキン層3の飽和係数は0.80未満であればより好ましい。スキン層3の飽和係数とコア層2の飽和係数の差は0.10以上であることが好ましい。この場合、建築板1の耐凍害性が更に向上する。
【0019】
本実施形態に係る建築板1の構成、及び成形材料について説明する。
【0020】
建築板1の形状は特に限定されないが、例えば、平面視矩形状である。建築板1には、必要に応じて他の建築板1と嵌合するための嵌合部が設けられていてもよい。
【0021】
建築板1は、図1に示すように、コア層2と、コア層2を覆うスキン層3とを備える。このスキン層3の厚みは、例えば、1mm〜建築板1全体の厚みの1/3の範囲内であることが好ましい。
【0022】
コア層2は、水硬性無機質材料を含む成形材料から形成される。本明細書では、コア層2の形成に用いる成形材料をコア材料という。このコア材料は、例えば、無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、補強繊維、及び水を含有することができる。コア材料は、更に添加剤を含んでもよい。
【0023】
スキン層3は、水硬性無機質材料を含む成形材料から形成される。本明細書では、スキン層3の形成に用いる成形材料をスキン材料という。このスキン材料は、例えば、無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、補強繊維、及び水を含有することができる。スキン材料は、更に添加剤を含んでもよい。
【0024】
次に、建築板を形成するコア材料、及びスキン材料に含まれる成分について説明する。
【0025】
無機質系主材は、ケイ素とカルシウムのうち少なくとも一方を含む化合物からなる。無機質系主材は、水硬性無機質材料であるセメントを主成分とする。無機質系主材は、更に、フライアッシュ、シリカヒューム、ケイ石粉、スラグ、ケイ砂等からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0026】
無機質系混和材は、例えば、マイカ、ワラストナイト、ケイ酸ソーダ等を含有することができる。
【0027】
有機質系混和材は、例えば、メチルセルロース、有機質系発泡粒子が含まれる。有機質系発泡粒子は、例えば、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、及びアクリロニトリル系樹脂からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0028】
補強繊維は、例えば、パルプ、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維等を含有することができる。
【0029】
コア材料、及びスキン材料には、上記の原料以外に、更に無機質系発泡体が含まれていてもよい。無機質系発泡体は、例えば、パーライト、フライアッシュバルーン、及びバーミキュライト、ガラスバルーン等からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0030】
コア層2とスキン層3の飽和係数を制御するために、コア材料、及びスキン材料が下記のような組成を有することが好ましい。
【0031】
コア材料に含まれる各物質の割合は特に限定されないが、例えば、コア材料に無機質系主材が73〜97重量%の範囲内、無機質系混和材が1〜20重量%の範囲内、有機質系混和材が1〜3.5質量%の範囲内、補強繊維が1〜3.5重量%の範囲内で含まれていることが好ましい。
【0032】
スキン材料に含まれる各物質の割合は特に限定されないが、例えば、スキン材料に無機質系主材が69.5〜97.5重量%の範囲内、無機質系混和材が1〜20重量%の範囲内、有機質系混和材が1〜3.5重量%の範囲内、補強繊維が1〜7重量%の範囲内で含まれていることが好ましい。
【0033】
コア層2を形成するコア材料、及びスキン層3を形成するスキン材料に含まれる各材料、及び組成比は同一でないことが好ましい。それぞれの層を形成する成形材料が異なる組成比から成形されると、コア層2とスキン層3の間の飽和係数に差が生じる。このように、コア材料とスキン材料の組成を異ならせることによって、コア層2、及びスキン層3の飽和係数を制御することができる。
【0034】
上記のコア材料、及びスキン材料を成形することにより未硬化の成形体(グリーンシート)が作製される。この未硬化の成形体を養生して硬化させることにより、コア層2、及びスキン層3を備える建築板1が得られる。
【0035】
この未硬化の成形体を養生する工程では、例えば、常温養生、蒸気養生、オートクレーブ養生等からなる群から選択される一種以上の養生を行う。本実施形態では特に、オートクレーブ養生を行うことが好ましい。このオートクレーブ養生では、例えば、温度が150〜180℃の範囲内、気圧が0.5〜1.0MPaの範囲内の条件で、2〜10時間の範囲内で、未硬化の成形体を養生することが好ましい。この場合、セメントの結晶が安定化して、品質を安定させることができる。
【0036】
建築板1の構造は、図1に示すものに限られない。例えば、図2に示す建築板1のように、コア層2に複数の中空孔5が形成されていてもよい。すなわち、建築板1が中空構造を有していてもよい。建築板1が中空構造を有する場合、建築板1の更なる軽量化が可能となる。
【0037】
建築板1の表面、すなわちスキン層3の表面には、必要に応じて、表面仕上げのためのシーラー、及び塗料が塗布されていてもよい。
【0038】
以下、本実施形態の建築板1の製造方法について説明する。
【0039】
図1に示す建築板1は、例えば、コア材料、及びスキン材料を、押出成形機10で押出成形することで製造される。図3には、その押出成形機10の概略を示している。
【0040】
図3の押出成形機10は、第一押出機11、及び第二押出機12を備える。第一押出機11はスキン材料を押出すものであり、第二押出機12はコア材料を押出すものである。第一押出機11、及び第二押出機12は金型100に接続されている。
【0041】
図3に示すように、金型100は、その一端に流入口103を、他端に押出口104を備える。流入口103は第一押出機11と接続されている。このため、流入口103には第一押出機11からスキン材料が流れ込む。
【0042】
図4には、この金型100の概略の断面図が示されている。この金型100は上型101、下型102、中子105、流路106、流路107、及び流路108を備えている。上型101と下型102とは、上下に対向して重ねられている。
【0043】
金型100の内部には空洞が形成されている。この空洞内に中子105が設けられている。図4の断面図に現れる上型101の下面と、中子105の上面との間が、流路106であり、下型102の上面と、中子105の下面との間が、流路107である。流路106、及び流路107は、流入口103と繋がっている。このため、流路106、及び流路107には、スキン材料が流れる。
【0044】
また図4の断面図に現れるように、中子105は、その流入口103付近から流入口103に向かって厚みが徐々に大きくなっている。また、中子105の押出口104側の端部は、押出口104に向かって厚みが徐々に小さくなっている。中子105の押出口104側の先端は、押出口104と対向するように配置されている。中子105の先端部の上面は、先端に向かう平坦な傾斜面111として形成され、中子105の先端部の下面は先端に向かう平坦な傾斜面112として形成されている。
【0045】
図4の断面図に現れるように、中子105の内部に流路108が形成されている。この流路108は第二押出機12と接続されている。詳細には、中子105内の流路108は、第二押出機12と図3に示すパイプ17を介して連結している。このため、流路108には、第二押出機12で混練されたコア材料が流れ込む。また、中子105の先端には、流路108に通じる矩形の開口部110が形成されている。
【0046】
これらの流路106、流路107、及び流路108は、図4の断面図に現れるように、金型100内における流路106、及び流路107に対して押出口104側に設けられた合流部109で合流している。このため、押出口104は、流路106、流路107、及び流路108と接続している。
【0047】
以下、上記の押出成形機10によって建築板1が製造される手順を説明する。
【0048】
まず、図3に示す第一押出機11の投入口13にスキン材料を投入すると共に、図3に示す第二押出機12の投入口15にコア材料を投入する。スキン材料、及びコア材料は、それぞれ、第一押出機11内に設けられたスクリュー14、及び第二押出機12内に設けられたスクリュー16によって混練されながら搬送される。
【0049】
次に、コア材料は第二押出機12からパイプ17を介して流路108に流入する。また、スキン材料は第一押出機11から流入口103を通って流路106、及び流路107に流入する。
【0050】
次に、流路108を通ったコア材料が開口部110に達する。開口部110から吐出されるコア材料は、開口部110の形状に合わせて板状に成形される。また、流路106を通ったスキン材料と流路107を通ったスキン材料とが合流部109において合流する。これにより、板状に成形されたコア材料が、スキン材料によって包まれる。
【0051】
次に、コア材料がスキン材料によって包まれたまま、コア材料、及びスキン材料が押出口104から押し出される。このコア材料、及びスキン材料を任意の長さで切断することにより、未硬化の成形体(グリーンシート)が形成される。この未硬化の成形体を養生して硬化させることにより、コア層2とスキン層3とを備える建築板1が製造される。
【0052】
図2に示されるような中空構造を有する建築板1を製造する場合には、例えば図5A、及び図5Bに示す中空形成体300が使用される。中空形成体300は、本体部301と、複数の突出棒302とを備える。この複数の突出棒302は、所定の間隔をあけて一列に並ぶと共に、互いに平行に設けられている。複数の突出棒302の寸法はいずれも同じである。この中空形成体300は、流路109の内部に配置可能な寸法を有する。
【0053】
中空形成体300は、例えば、図4に示す中子105の流路108内に設けられる。この場合、複数の突出棒302の一部が開口部110から突出する。中空形成体300を流路108内に設けた中子105を金型100内に設け、この金型100を使用して押出成形することで成形体を作製し、この成形体を養生して硬化させることにより、図2に示すような中空構造を有する建築板1が製造される。
【0054】
本実施形態において、コア材料の組成、スキン材料の組成、押出成形条件、養生条件等を適宜選択することでコア層の飽和係数、及びスキン層の飽和係数を調整することができる。例えば、補強繊維を減らすことで、コア層の飽和係数を小さくすることができ、混練水量を増やすことで、コア層の飽和係数を大きくすることができる。また、有機質系発泡粒子を増やすことで、スキン層の飽和係数を小さくすることができ、混練水量を増やすことで、スキン層の飽和係数を大きくすることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0056】
(実施例1〜5)
無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、補強繊維、及び水を、下記の表1に示す割合で配合することで、コア材料、及びスキン材料を調製した。なお、表1中の水含有量は、コア材料、及びスキン材料の各々における全固形分に対する水の比率である。
【0057】
上記のコア材料、及びスキン材料を、第一押出機11、第二押出機12、及び図6に示す金型100を備える押出成形機10を使用して成形し、成形体を作製した。この成形体を、オートクレーブ内で160℃で養生して硬化させた後、更に乾燥機によって含水率を10%に調節することにより、幅200mm、厚み20mm、長さ500mmの寸法を有し、かつ、図1に示すようにコア層2とスキン層3とを備えた建築板1を製造した。この建築板1におけるスキン層3の厚みは2mmである。
【0058】
(比較例1〜3)
無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、補強繊維、及び水を、下記の表1に示す割合で配合することで、コア材料、及びスキン材料を調製した。なお、表1中の水含有量は、コア材料、及びスキン材料の各々における全固形分に対する水の比率である。
【0059】
上記のコア材料、及びスキン材料を、第一押出機11、第二押出機12、及び図6に示す金型100を備える押出成形機10を使用して成形し、成形体を作製した。この成形体をオートクレーブ内で、比較例1では160℃、比較例2では120℃で養生して硬化させた後、更に乾燥機によって含水率を10%に調節することにより、幅200mm、厚み20mm、長さ500mmの寸法を有し、かつ、図1に示すようにコア層2とスキン層3とを備えた建築板1を製造した。この建築板1におけるスキン層3の厚みは2mmである。
【0060】
(評価)
実施例1〜5、及び比較例1〜3の建築板1を構成するコア材料、及びスキン材料のそれぞれについて、飽和係数試験を行った。飽和係数試験は、JIS R1250:2011に規定される、吸水率試験、及び煮沸吸水率試験に準拠して行った。
【0061】
<吸水率試験>
各実施例、及び比較例のコア材料、スキン材料のサンプルを用いてJIS R1250:2011の規定に従って乾燥重量m1(g)、飽和質量m1A(g)を測定し、吸収率aを算出した。ここで、吸水率aは次のような計算式で算出される。
a=(m1A−m1)/m1 ×100
<煮沸吸水率試験>
各実施例、及び比較例のコア材料、スキン材料の上記の吸水率試験を終えたサンプルを用いて、JIS R 1250:2011の規定に従って乾燥重量m2(g)、飽和質量m2B(g)を測定し、煮沸吸水率bを算出した。ここで、煮沸吸水率bは次のような計算式で算出される。
b=(m2B−m2)/m2 ×100
<飽和係数>
各実施例、及び比較例の上記吸水率試験、及び煮沸吸水率試験によって算出されたa及びbを用いて、次のような計算式から飽和係数sを算出した。
s=a/b
他の実施例2〜5、及び比較例1〜3においても同様に吸水率試験、及び煮沸吸水率試験を行い、飽和係数を算出し、下記表1の結果を示した。
【0062】
<凍害試験>
実施例1〜5、及び比較例1〜3の建築板を、北海道札幌市内にて、建物の外壁として、施工した。この建築板を、建物内を湿度70%に維持した状態で、施工時から2年間放置した。建築板を施工してから2年間経過した時に、外観を評価した。その結果を、下記のように評価した。
◎ :基材外観において異常なし。
○ :基材外観において、基材表層部分に微小な劣化のある状態であった。
× :基材外観において、塗膜のはがれ、又は基材の欠けが全体の一割以上の範囲で起こっており、著しい劣化の状態であった。
【0063】
これらの評価結果を下記の表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、実施例1〜5の建築板1は施工してから2年間経過時の外観に著しい凍害劣化は見られなかった。これらはいずれも、コア層2の飽和係数とスキン層3の飽和係数は0.70〜0.79であり、コア層2の飽和係数が、スキン層3の飽和係数よりも小さい値であった。
【0066】
これらのことから、「コア層2の飽和係数とスキン層3の飽和係数が0.85以下であり、コア層2の飽和係数がスキン層3の飽和係数よりも小さい」という条件を満たす実施例1〜5の建築板1は、破損等の劣化が抑制されるため、これらの条件を満たしていない比較例1〜3の建築板1よりも水分の凍結融解による破損等の凍害が生じにくいことが理解できる。
【符号の説明】
【0067】
1 建築板
2 コア層
3 スキン層
図1
図2
図3
図4
図5