特許第6546558号(P6546558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546558
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】建設機械及び建設機械の較正方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20190705BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20190705BHJP
   G01B 21/22 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   G01C15/00 104Z
   E02F9/26 B
   G01B21/22
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-70141(P2016-70141)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181340(P2017-181340A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】森木 秀一
(72)【発明者】
【氏名】枝村 学
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博史
(72)【発明者】
【氏名】釣賀 靖貴
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−036243(JP,A)
【文献】 特開平06−322793(JP,A)
【文献】 特開2012−233353(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/137527(WO,A1)
【文献】 特開2006−194823(JP,A)
【文献】 特開2015−224875(JP,A)
【文献】 特開2012−202061(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/040726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
E02F 9/26
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に回転可能に支持された第1稼動部と、
前記第1稼動部に回転可能に支持された第2稼動部と、
前記第2稼動部に回転可能に支持された第3稼動部と、
前記第1稼動部に第1取付角度で取付けられ、前記第1稼動部の傾斜角度を検出する第1角度検出部と、
前記第2稼動部に第2取付角度で取付けられ、前記第稼動部の傾斜角度を検出する第2角度検出部と、
前記第3稼動部に第3取付角度で取付けられ、前記第稼動部の傾斜角度を検出する第3角度検出部と、
前記第1乃至第3取付角度、前記第1乃至第3角度検出部で各々検出された前記第1乃至第3稼動部の傾斜角度、及び前記第1乃至第3稼動部の寸法情報を基に、前記第3稼動部上の予め設定された位置を演算するように構成された演算装置とを有する建設機械の前記第1乃至第3取付角度を較正する、建設機械の較正方法において、
前記車体に対する前記第1稼動部の回転軸上にある第1計測点、前記第1稼動部に対する前記第2稼動部の回転軸上にある第2計測点、前記第2稼動部に対する前記第3稼動部の回転軸上にある第3計測点、及び前記第3稼動部上にある第4計測点を外部計測装置で計測する第1ステップと、
少なくとも前記第1ステップで計測された前記第1乃至第4計測点を基に、前記第1乃至第3稼動部の傾斜角度を前記演算装置によって演算する第2ステップと、
前記第2ステップで演算された前記第1乃至第3稼動部の傾斜角度、及び前記第1乃至第3角度検出部で検出された傾斜角度を基に、前記第1乃至第3取付角度を演算する第3ステップと
を備えたことを特徴とする建設機械の較正方法。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の較正方法において、
前記第3稼動部は、
前記第2稼動部に回転可能に支持された本体部と、
前記第2稼動部に一端が回転可能に支持された第1連結部と、
前記第1連結部の他端に一端が回転可能に支持され、前記本体部に他端が回転可能に支持された第2連結部とを有し、
前記第3角度検出部は、前記本体部に取付けられ、
前記第3計測点は、前記第2稼動部に対する前記第1連結部の回転軸上にあり、
前記第4計測点は、前記第1連結部に対する前記第2連結部の回転軸上にあることを特徴とする建設機械の較正方法。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械の較正方法において、
前記第1乃至第4計測点は、前記第1稼動部の回動平面と平行な同一平面上に配置されたことを特徴とする建設機械の較正方法。
【請求項4】
車体と、
前記車体に回転可能に支持された第1稼動部と、
前記第1稼動部に回転可能に支持された第2稼動部と、
前記第2稼動部に回転可能に支持された第3稼動部と、
前記第1稼動部に第1取付角度で取付けられ、前記第1稼動部の傾斜角度を検出する第1角度検出部と、
前記第2稼動部に第2取付角度で取付けられ、前記第稼動部の傾斜角度を検出する第2角度検出部と、
前記第3稼動部に第3取付角度で取付けられ、前記第稼動部の傾斜角度を検出する第3角度検出部と、
前記第1乃至第3取付角度、前記第1乃至第3角度検出部で各々検出された前記第1乃至第3稼動部の傾斜角度、及び前記第1乃至第3稼動部の寸法情報を基に、前記第3稼動部上の予め設定された位置を演算するように構成された演算装置とを有する建設機械において、
前記車体に対する前記第1稼動部の回転軸上にある第1計測点、前記第1稼動部に対する前記第2稼動部の回転軸上にある第2計測点、前記第2稼動部に対する前記第3稼動部の回転軸上にある第3計測点、及び前記第3稼動部上にある第4計測点のそれぞれに外部計測装置で計測可能な第1乃至第4マーカを備え、
前記演算装置は、少なくとも前記外部計測装置で計測された前記第1乃至第4計測点の三次元位置を基に、前記第1乃至第3稼動部の傾斜角度を演算し、前記第1乃至第3稼動部の傾斜角度、及び前記第1乃至第3角度検出部で検出された傾斜角度を基に、前記第1乃至第3取付角度を演算するように構成されたことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械において、
前記第3稼動部は、
前記第2稼動部に回転可能に支持された本体部と、
前記第2稼動部に一端が回転可能に支持された第1連結部と、
前記第1連結部の他端に一端が回転可能に支持され、前記本体部に他端が回転可能に支持された第2連結部とを有し、
前記第3角度検出部は、前記本体部に取付けられ、
前記第3計測点は、前記第2稼動部に対する前記第1連結部の回転軸上にあり、
前記第4計測点は、前記第1連結部に対する前記第2連結部の回転軸上にあることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械において、
前記第1乃至第4マーカは、前記第1稼動部の回動平面と平行な同一平面上に設置されたことを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項5に記載の建設機械において、
前記車体と前記第1稼動部との第1回転対偶部、前記第1稼動部と前記第2稼動部との第2回転対偶部、前記第2稼動部と前記第1連結部の第3回転対偶部、及び前記第1連結部と前記第2連結部との第4回転対偶部は、それぞれの回転軸を中心とするテーパ穴を有し、
前記第1乃至第4マーカは、前記第1乃至第4回転対偶部の各テーパ穴に嵌合するように形成された円すい部を有する治具を介して、前記第1乃至第4回転対偶部にそれぞれ取付けられることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の関節が連結された作業機構を有する建設機械のうち、特に作業機構の位置姿勢を計測するセンサを設けた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化施工への対応に伴い、建設機械においてブーム、アーム、バケットなどの作業機構の位置や姿勢をオペレータへ表示するマシンガイダンスや、目標施工面に沿って動くよう制御するマシンコントロールの機能を有するものがある。代表的なものとしては、油圧ショベルのバケット先端位置とバケット角度をモニタへ表示したり、バケット先端が目標施工面に近づくと、それ以上進まないように動作に制限をかけたりするものがある。このような機能を実現するためには、作業機構の位置姿勢を計測することが必要であり、計測精度が高いほど質の高い施工が実現できる。
【0003】
作業機構の位置姿勢を計測する技術の一例として、特許文献1には以下のように記載されている。特許文献1の発明では、被計測体(例えばブーム)に複数の傾斜センサを任意の位置に取付けるだけで、被計測体の重力方向に対する角度(傾斜角)を求めることができる。被計測体の傾斜角が求められれば、被計測体の長さは、設計上既知であるから、その先端(モニタポイント)の高さ等を演算によって容易に求めることもできる。
【0004】
特許文献1に記載の内容のように、ブーム、アーム、バケットなどの作業機構の各稼動体に傾斜センサを取付けることで、各稼動体の重力方向に対する角度、つまり絶対角度がわかり、各稼動体のリンク長(回転対偶部間距離)が既知であれば、絶対角度とリンク長から作業機構先端の位置を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−2842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、傾斜センサの出力から作業機構の各稼動部の絶対角度を求めるためには、各稼動部に傾斜センサがどのように取付けられているかという情報が必要である。例えば、傾斜センサが稼動部に対して相対的に30度ずれて取付けられていれば、稼動部の絶対角度が0であったときに傾斜センサの出力は30度となる。つまり、傾斜センサの取付角度を予め較正しておき、傾斜センサの出力から取付角度を減じなければ、稼動部の絶対角度は得られない。また、作業機先端の位置計測を高精度(例えば±20mm以内)に行うためには、取付角度の較正も高い精度(例えば±0.1°以内)で行うある必要がある。
【0007】
特許文献1では、この較正方法として、互いの位置関係が既知である複数の傾斜センサを用いて行う方法が書かれているが、一つの稼動部に複数の傾斜センサを取付けることはコストが高くなり望ましくない。
【0008】
また、一般的には稼動部を基準姿勢(水平、あるいは垂直など)に調整して、絶対角度を既知の状態とし、その時の傾斜センサの出力を取付角度として較正する方法が行われることがある。しかし、上述のように高い精度で較正を行う必要があるため、稼動部を±0.1°以内など精度良く基準姿勢に合わせなければならず、微操作の難しい建設機械などではこの基準姿勢合わせに多くの時間を要してしまう。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業機構の各稼動部に設置した傾斜センサの取付角度を高精度且つ容易に較正することが可能な建設機械及び建設機械の較正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、車体と、前記車体に回転可能に支持された第1稼動部と、前記第1稼動部に回転可能に支持された第2稼動部と、前記第2稼動部に回転可能に支持された第3稼動部と、前記第1稼動部に第1取付角度で取付けられ、前記第1稼動部の傾斜角度を検出する第1角度検出部と、前記第2稼動部に第2取付角度で取付けられ、前記第稼動部の傾斜角度を検出する第2角度検出部と、前記第3稼動部に第3取付角度で取付けられ、前記第稼動部の傾斜角度を検出する第3角度検出部と、前記第1乃至第3取付角度、前記第1乃至第3角度検出部で各々検出された前記第1乃至第3稼動部の傾斜角度、及び前記第1乃至第3稼動部の寸法情報を基に、前記第3稼動部上の予め設定された位置を演算するように構成された演算装置とを有する建設機械の前記第1乃至第3取付角度を較正する、建設機械の較正方法において、前記車体に対する前記第1稼動部の回転軸上にある第1計測点、前記第1稼動部に対する前記第2稼動部の回転軸上にある第2計測点、前記第2稼動部に対する前記第3稼動部の回転軸上にある第3計測点、及び前記第3稼動部上にある第4計測点を外部計測装置で計測する第1ステップと、少なくとも前記第1ステップで計測された前記第1乃至第4計測点を基に、前記第1乃至第3稼動部の傾斜角度を前記演算装置によって演算する第2ステップと、前記第2ステップで演算された前記第1乃至第3稼動部の傾斜角度、及び前記第1乃至第3角度検出部で検出された傾斜角度を基に、前記第1乃至第3取付角度を演算する第3ステップとを備えたものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、作業機構の各稼動部を基準姿勢に位置合わせせずとも、各稼動部の回転対偶部位置を計測することで各稼動部の絶対角度を知ることができるため、各稼動部は任意の姿勢でよく、較正に要する時間を大幅に短縮することができる。また、本較正方法では作業機構を動かす必要がないため、例えば工場内など狭い場所での較正が可能であり、作業機構を動かすための作業員も省くことが可能となる。上記以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルのブーム付近の側面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルのアーム付近の側面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルのバケット付近の側面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの較正方法を示す斜視図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの三面図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの模式的構成図である。
図8】本本発明の第1又は第2の実施形態に係る油圧ショベルのバケット付近の側面図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの作業機構に取付けるマーカ及び治具の断面図である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る油圧ショベルの三面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例1】
【0014】
本実施の形態では、建設機械として油圧ショベルを例に説明するが、本発明における建設機械は油圧ショベルに限定するものではない。以下、図1から図6を用いて第1の実施形態に係る油圧ショベル及び油圧ショベルの較正方法について説明する。
【0015】
図1は第1の実施の形態である油圧ショベルを示している。油圧ショベル1は、一般的な油圧ショベルと同様に、上部旋回体11、クローラを含む下部走行体12、掘削などの作業を行う作業機構を構成するブーム13、アーム14、バケット15、アーム14及びバケット15と共にリンク機構を構成する第1バケットリンク16a及び第2バケットリンク16b、ブーム13を駆動するブームシリンダ17、アーム14を駆動するアームシリンダ18、バケット15をバケットリンク16a,16bを含むリンク機構を介して駆動するバケットシリンダ19などから構成されている。
【0016】
上部旋回体11は、下部走行体12に回転可能に支持されており、旋回モータ(図示せず)によって下部走行体12に対して相対的に回転駆動される。ブーム13は、一端が上部旋回体11に回転可能に支持されており、ブームシリンダ17の伸縮に応じて上部旋回体11に対して相対的に回転駆動される。アーム14は、一端がブーム13の他端に回転可能に支持されており、アームシリンダ18の伸縮に応じてブーム13に対して相対的に回転駆動される。
【0017】
バケット15は、アーム14の他端に回転可能に支持されており、第1バケットリンク16aは、一端がアーム14に回転可能に支持されており、第2バケットリンク16bは、一端がバケット15に回動可能に支持され、他端が第1バケットリンク16aの他端に回動可能に支持されている。第1バケットリンク16aは、バケットシリンダ19の伸縮に応じてアーム14に対して相対的に回転駆動される。バケット15は、第1バケットリンク16aと連動して駆動される第2バケットリンク16bにより、アーム14に対して相対的に回転駆動される。このような構成である油圧ショベル1はブームシリンダ17、アームシリンダ18、バケットシリンダ19を適切な位置に駆動することにより、バケット15を任意の位置、姿勢に駆動し、所望の作業を行うことができる。
【0018】
油圧ショベル1は、ブーム13、アーム14、バケットリンク16aにそれぞれブーム傾斜センサ21、アーム傾斜センサ22、バケット傾斜センサ23が設置されている。本実施形態では、傾斜センサ21〜23は2軸又は3軸の加速度を測定し、重力方向に対する傾斜角度を検出するものとして説明する。油圧ショベル1は上部旋回体11に設置された車体傾斜センサ24を持ち、車体の左右方向の傾斜角度θ(ロール角度)と前後方向の傾斜角度θ(ピッチ角度)を検出可能な構成となっている。
【0019】
各傾斜センサ21〜24の信号は、上部旋回体11に設置された演算装置25に送られ、演算装置25内でバケット先端位置Pやバケット角度θbkを演算する。演算されたバケット先端位置Pやバケット角度θbkは、運転席内のモニタ26に表示することでガイダンス機能として運転者へ提供したり、作業機構の動作を制御するためのフィードバック情報として用いられる。
【0020】
以下、各傾斜センサ信号からバケット先端位置Pとバケット角度θbkを演算する方法について図1を用いて説明する。まず、演算に必要な各点P〜Pを定義する。
【0021】
点Pは、上部旋回体11とブーム13との回転対偶部の回転軸上にあり、上部旋回体11、ブーム13又は両者の回転対偶部に挿入されたピン(図示せず)のいずれかの構造物の右端とする。点Pは、ブーム13とアーム14との回転対偶部の回転軸上にあり、ブーム13、アーム14又は両者の回転対偶部に挿入されたピン(図示せず)のいずれかの構造物の右端とする。
【0022】
点Pは、アーム14とバケットリンク16aとの回転対偶部の回転軸上にあり、アーム14、バケットリンク16a又は両者の回転対偶部に挿入されたピン(図示せず)のいずれかの構造物の右端とする。
【0023】
点Pは、バケットリンク16aとバケットシリンダ19との回転対偶部の回転軸上にあり、バケットリンク16a、バケットシリンダ19又は両者の回転対偶部に挿入されたピン(図示せず)のいずれかの構造物の右端とする。
【0024】
点Pは、アーム14とバケット15との回転対偶部の回転軸上にあり、アーム14、バケット15又は両者の回転対偶部に挿入されたピン(図示せず)のいずれかの構造物の右端とする。
【0025】
点Pは、バケット15とバケットリンク16aとの間に挿入されるバケットリンク16bと、バケット15との回転対偶部の回転軸上にあり、バケット15、バケットリンク16b又は両者の回転対偶部に挿入されたピン(図示せず)のいずれかの構造物の右端とする。
【0026】
点Pは、バケット15の先端且つバケット15の右端とする。本実施形態では、バケット先端位置Pは、点Pに原点をもち、上部旋回体11の前方向にX軸(X)、左方向にY軸(Y)、上方向にZ軸(Z)を持つ車体座標系ΣBで表すものとする。
【0027】
点P〜PをX平面に投影した点をP’〜P’とし、線分P’の長さをLbm、線分P’P’の長さをLam、線分P’P’の長さをLbk、線分P’P’の長さをLp2、線分P’P’の長さをLbklとし、線分P’P’に対して線分P’P’の成す角度をリンクオフセット角度θp2とする。また、水平面と上部旋回体11とのY軸回りの角度を車体ピッチ角度θ(図示せず)、水平面と線分P’の成す角度をブーム角度θbm、水平面と線分P’P’の成す角度をアーム角度θam、水平面と線分P’P’の成す角度をバケットリンク角度θbkl、水平面と線分P’P’の成す角度をバケット角度θbkとすると、X平面に投影したバケット先端位置P’は下記の式で表される。
【0028】
【数1】
【0029】
ここで、P6’x、P6’zはそれぞれ座標系ΣBにおけるバケット先端位置PのX軸方向距離(X座標)、Z軸方向距離(Z座標)を示す。車体ピッチ角度θは車体傾斜センサ24によって検出される。ブーム角度θbmはブーム傾斜センサ21、アーム角度θamはアーム傾斜センサ22、バケット角度θbkはバケット傾斜センサ23によって得られるバケットリンク角度θbklとアーム角度θamから求めることができる。
【0030】
各傾斜センサ21〜23からの各角度の求め方を図2図4を用いて説明する。
【0031】
図2はブーム傾斜センサ21の出力からブーム角度θbmを求める方法を模式的に示した図である。ブーム傾斜センサ21は内部に少なくとも2軸の方向の加速度を検出する加速度センサを持っており、ブーム傾斜センサ21に固定され座標系ΣBのY軸と平行なY軸を持つ座標系をΣS1とすると、ΣS1のX軸(XS1)とZ軸(ZS1)の2軸方向の加速度を検出できる。ブーム傾斜センサ21のXS1軸方向の加速度検出値をax1、ZS1軸方向の加速度検出値をaz1とすると、ブーム傾斜センサ21の水平方向に対する傾斜角度θs1は、
【数2】
で求めることができる。ここで、XS1軸と線分P’との成す角、つまりブーム13に対するブーム傾斜センサ21の取付角度をθm1とすると、ブーム角度θbmは、
【数3】
で求めることができる。なお、本実施の形態では右側面から見て時計回りの回転を正方向としている。
【0032】
図3はアーム傾斜センサ22の出力からアーム角度θamを求める方法を模式的に示した図である。アーム傾斜センサ22もブーム傾斜センサ21と同様に内部に少なくとも2軸の方向の加速度を検出する加速度センサを持っており、アーム傾斜センサ22に固定され座標系ΣBのY軸と平行なY軸を持つ座標系をΣS2とすると、ΣS2のX軸(XS2)とZ軸(ZS2)の2軸方向の加速度を検出できる。アーム傾斜センサ22のXS2軸方向の加速度検出値をax2、ZS2軸方向の加速度検出値をaz2とすると、アーム傾斜センサ22の水平方向に対する傾斜角度θs2は、
【数4】
で求めることができる。ここで、XS2軸と線分P’P’との成す角、つまりアーム14に対するアーム傾斜センサ22の取付角度をθm2とすると、アーム角度θamは、
【数5】
で求めることができる。
【0033】
図4はバケット傾斜センサ23の出力とアーム角度θamからバケット角度θbkを求める方法を模式的に示した図である。バケット傾斜センサ23もブーム傾斜センサ21やアーム傾斜センサ22と同様に内部に少なくとも2軸の方向の加速度を検出する加速度センサを持っており、バケット傾斜センサ23に固定され座標系ΣBのY軸と平行なY軸を持つ座標系をΣS3とすると、座標系ΣS3のX軸(XS3)とZ軸(ZS3)の2軸方向の加速度を検出できる。バケット傾斜センサ23のXS3軸方向の加速度検出値をax3、ZS3軸方向の加速度検出値をaz3とすると、バケット傾斜センサ23の水平方向に対する傾斜角度θs3は、
【数6】
で求めることができる。ここで、XS3軸と線分P’P’との成す角、つまりバケットリンク16aに対するバケット傾斜センサ23の取付角度をθm3とすると、バケットリンク角度θbklは、
【数7】
で求めることができる。バケット角度θbkは、上述の通り求めたアーム角度θamとバケットリンク角度θbklから求めることができ、その関数をfとすると、
【数8】
で求めることができる。なお、関数fは、バケット15を駆動するリンク機構の各寸法(線分P’P’、線分P’P’、線分P’P’、線分P’P’の各長さ及びリンクオフセット角度θp2)に基づいて決定される。
【0034】
これまでの説明の通り、各傾斜センサの検出値からバケット先端位置Pやバケット角度を演算することができ、これらの演算は、演算装置25内で行われる。ただし、ブーム傾斜センサ21、アーム傾斜センサ22、バケット傾斜センサ23の取付角度θm1,θm2,θm3と、作業機構の各部寸法Lbm,Lam,Lbkは事前に把握しておかなければならない。各部寸法は設計情報から参照することができるが、取付角度は実際の車体毎に高精度に較正しなければならない。本発明は、この取付角度θm1,θm2,θm3を高精度且つ容易に較正する方法を提供するものである。
【0035】
なお、本実施形態では、車体傾斜センサ24は上部旋回体11に対して取付角度がゼロとなるように取付けられているとし、車体ピッチ角度θ及び車体ロール角度θは車体傾斜センサ24の検出値から直接得られるものとするが、車体傾斜センサに関しては、取付角度がバケット先端位置Pの演算に影響するほどの大きさであれば、180°旋回した時のセンサの検出値から取付角度を較正するなどの広く世の中で用いられている方法を活用すればよい。
【0036】
図5図7を用いて、本実施形態における本発明の内容である油圧ショベルの傾斜センサ較正方法を説明する。
【0037】
図5は較正方法を示す油圧ショベル1と外部計測装置3の斜視図である。外部計測装置3は例えばトータルステーションのような三次元空間上の任意の点の位置を計測可能なものである。外部計測装置3に固定の座標系をΣAとし、座標系ΣAのZ軸(Z)が重力方向に対して平行となるように外部計測装置3は設置される。つまり、座標系ΣAのX軸(X)とY軸(Y)を含む平面は水平面と等しくなる。本発明の較正方法は、油圧ショベル1の4つの点P,P,P,Pの三次元位置を外部計測装置3により計測し、得られた三次元位置から各傾斜センサ21〜23の取付角度θm1,θm2,θm3を求めるものである。
【0038】
図6は油圧ショベル1の右側面、上面、正面を示す三面図であり、図7図6の油圧ショベル1のリンク構造のみを模式的に示した三面図である。油圧ショベル1は、これらの図に示す通りX軸回りにロール角度θ傾いているとする。この場合、X平面とY軸との成す角がθとなる。また、点Pと点PのY軸方向距離をLbmy、点Pと点PのY軸方向距離をLp2y’、点Pと点PのY軸方向距離をLbklyとする。外部計測装置3によって計測される三次元位置は、座標系ΣAでの三次元座標となる。つまり、外部計測装置3によって計測される点Pの位置は、X軸方向にP0x、Y軸方向にP0y、Z軸方向にP0zとなる。点P〜Pも同様である。
【0039】
各傾斜センサの取付角度θm1,θm2,θm3は、ブーム角度θbm、アーム角度θam、バケットリンク角度θbkl、及びその時の各傾斜センサ21〜23の出力から得られる傾斜角度θs1,θs2,θs3を基に、算出することができる。ブーム角度θbm、アーム角度θam及びバケットリンク角度θbklは、外部計測装置3で計測された各点P,P,P,Pの三次元位置を基に、以下の式を用いて求めることができる。
【0040】
【数9】
【0041】
この時の各傾斜センサ21〜23の傾斜角度θs1,θs2,θs3を各傾斜センサ21〜23の検出値から求めることにより、以下の式で各センサの取付角度θm1,θm2,θm3を求めることができる。
【0042】
【数10】
【0043】
上記によって各傾斜センサ21〜23の取付角度θm1,θm2,θm3を得ることができ、このパラメータと傾斜センサ21〜23の検出値θs1,θs2,θs3からこれまでの説明の通りバケット先端位置P6’x ,P6’zを求めることができる。
【0044】
以上の説明からわかる通り、本実施形態の油圧ショベルの傾斜センサ較正方法は、作業機構の3つの稼動部(ブーム13、アーム14、バケットリンク16a)の回転対偶部の三次元位置を、外部計測装置3により計測する第1ステップと、第1ステップで得られた回転対偶部の三次元位置、及び作業機構の各部の寸法情報を基に、各稼動部の傾斜角度を演算する第2ステップと、各傾斜センサ21〜23から得られた検出値θs1,θs2,θs3、及び第2ステップで得られた各稼動部の傾斜角度θbm,θam,θbklを基に、各傾斜センサ21〜23の較正パラメータである取付角度θm1,θm2,θm3を演算する第3ステップとから成る。
【0045】
具体的には、油圧ショベル1を任意の姿勢に静止させ、外部計測装置3によって4つの点P,P,P,Pの三次元位置を計測する。その後、モニタ26を介して演算装置25へ較正パラメータ演算ステップの開始を指示し、計測によって得られた複数の三次元位置をモニタ26を介して演算装置25へ入力する。或いは、外部計測装置3とモニタ26もしくは演算装置25が、図示しない有線または無線通信装置により接続されており、外部計測装置3の計測によって得られた複数の三次元位置が通信により演算装置25へ送られる。演算装置25では、各傾斜センサ20〜23の検出値から車体ロール角度θと各傾斜センサ21〜23の傾斜角度θs1,θs2,θs3を取得し、入力された複数の三次元位置と車体ロール角度θから作業機構の各稼動部の傾斜角度θbm,θam,θbklを演算し、これらの演算結果と各傾斜センサ21〜23の傾斜角度θs1,θs2,θs3から各傾斜センサ21〜23の取付角度θm1,θm2,θm3を演算し、較正パラメータとして保存する。以降のバケット先端位置Pの演算には、保存された較正パラメータを用いる。
【0046】
較正パラメータとしての取付角度θm1,θm2,θm3の演算精度を確保するためには、外部計測装置3により、油圧ショベル1の作業機構の各回転対偶部の中心をできるだけ正確に計測する必要がある。一方、多くの油圧ショベル1では、外観からわかる回転対偶部は正確に中心を示す何らかの目印等があるわけではない。そのため、本実施形態では、図8に示す通り回転対偶部の中心を示す目印として、マーカ4を設けている。なお、図8ではバケット15付近のみ図示しているが、ブーム13やアーム14の回転対偶部に設けるマーカに関しても同様である。
【0047】
トータルステーション等の外部計測装置3はレーザ光を目標位置に照射し、距離や角度を計測する。このため、マーカ等の目印があれば、何もない場合に比べて精度良くレーザ光を目的の場所に照射することができ、得られる三次元位置の計測結果の精度が向上する。また、マーカ4の代わりにレーザ光を入射方向に反射するプリズム5(コーナーキューブ)等を用いれば、レーザ光による計測の精度が向上する。このため、図9に示す通りプリズム5を治具6を用いて回転対偶部に取付けてもよい。図9では、作業機構の回転対偶部に挿入されたピン27と、そのピン27に取付けるプリズム5と治具6を示している。この場合、作業機構の各回転対偶部にテーパ穴28を設け、治具はそのテーパ穴28に嵌合する円すい部61とマグネット62を備えることで、各回転対偶部の回転軸上に容易かつ精度良くプリズム5を取付けることができる。なお、マーカ4やプリズム取付治具6の構成は本実施形態に示すものに限るものではなく、同等の機能を有していればよいことは言うまでもない。
【0048】
本実施形態の油圧ショベルの較正方法は、次のような特徴を持つ。まず、油圧ショベル1の作業機構を動かす必要が無いため、狭い空間での較正作業が可能である。また、基準姿勢に位置合わせする必要もなく、最低4回の外部計測装置3による計測を行うのみでよいため、これまでの方法に比べて大幅に較正作業の時間を短縮することができる。加えて、車体や作業機構を動かすオペレータを必要としないため、外部計測装置3を用いる作業者1名のみで容易に較正作業を実施できる。
【実施例2】
【0049】
本発明の第2の実施形態における較正方法について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0050】
本実施形態における油圧ショベル1では、第1バケットリンク16aに代えてバケット15にバケット傾斜センサ23を設置し(図8中点線で示す)、点P,P1,,Pに代えて点P,P1,,Pの三次元位置を計測する。
【0051】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、各傾斜センサ21〜23の取付角度θm1,θm2,θm3を較正することができる。但し、本実施形態で各傾斜センサ21〜23の取付角度θm1,θm2,θm3を演算する際に使用する式は、以下のようになる。ただし、Lbkyは点Pと点PのY軸方向距離である。
【0052】
【数11】
【0053】
【数12】
【0054】
本実施形態によれば、傾斜センサ23をバケット15に直接設置し、点Pに代えてバケット先端位置Pの三次元位置を計測することにより、バケット15を駆動するリンク機構の寸法情報(第1の実施形態における関数f)を用いずに傾斜センサ23の取付角度θm3が求められるため、バケット傾斜センサ23の較正精度を向上させることが可能となる。
【0055】
また、第1バケットリンク16aの基端側の回転軸上にある点Pに代えてアーム14の先端側の回転軸上にある点Pの三次元位置を計測することにより、リンクオフセット角度θp2を用いずにアーム傾斜角度θamを求めることができるため、アーム傾斜センサ22の較正精度を向上させることが可能となる。
【実施例3】
【0056】
図10を用いて本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、4つのマーカ又はプリズムを取付治具を介して設置した点のみであり、それ以外の構成は同様であるため、重複する部分は説明を省略する。
【0057】
本実施形態の特徴は、4つのマーカ又はプリズム(4つの点P,P,P,P)がX平面(又はブーム13の回動平面)と平行な同一平面上に配置されるように構成した点にある。このように構成するために、本実施形態では上部旋回体11とブーム13との回転対偶部の回転軸上、ブーム13とアーム14との回転対偶部の回転軸上、アーム14とバケットリンク16aとの回転対偶部の回転軸上、バケットリンク16aとバケットシリンダ19との回転対偶部の回転軸上のそれぞれに、取付治具6a,6b,6c,6dを介してマーカ又はプリズムを設置している。
【0058】
取付治具6aのY軸上の長さをLとすると、取付治具6bのY軸上の長さはL+Lbmy、取付治具6cのY軸上の長さはL+Lp2y、取付治具6dのY軸上の長さはL+Lbklyとなる。このように構成することにより、作業機構の点Pに対する点P,P,PのY軸方向のオフセットLbmy,p2y,bklyが全て0となるため、計算が容易になるだけでなく、外部計測装置3での計測値である各部の三次元位置から寸法値Lbm,Lp2,Lbklも下記の式にて得られる。
【0059】
【数13】
【0060】
ブーム角度θbm、アーム角度θam、バケットリンク角度θblkは次式によって得られる。
【0061】
【数14】
【0062】
上記の演算結果を基に、第1の実施形態で説明した方法により各傾斜センサ21〜23の較正が可能となる。
【0063】
本実施形態によれば、4つの点P,P,P,Pの三次元位置から実機の作業機構の各部寸法Lbm,Lp2,Lbklが得られるため、製造誤差等の影響が考慮されたより精度の高い較正が可能となる。また、較正の際に得られた実機の作業機構の各部寸法Lbm,Lbklの値を保持しておき、以降のバケット先端位置Pの演算にも使用することにより、バケット先端位置Pの演算精度を向上させることも可能となる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施形態の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施形態の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…油圧ショベル(建設機械)、11…上部旋回体(車体)、12…下部走行体、13…ブーム(第1稼動部)、14…アーム(第2稼動部)、15…バケット(第3稼動部(本体部))、16a…第1バケットリンク(第3稼動部(第1連結部))、16b…第2バケットリンク(第3稼動部(第2連結部))、17…ブームシリンダ、18…アームシリンダ、19…バケットシリンダ、21…ブーム傾斜センサ(第1角度検出部)、22…アーム傾斜センサ(第2角度検出部)、23…バケット傾斜センサ(第3角度検出部)、24…車体傾斜センサ、25…演算装置、26…モニタ、27…ピン、28…テーパ穴、3…外部計測装置、4…マーカ、5…プリズム、6…治具、61…円すい部、62…マグネット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10