(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直動回転駆動装置の出力軸は、出力軸を支持する部品の公差などに起因して、基準とする軸線に対して傾斜することがある。ここで、回転位置検出部がホール素子などの磁気検出素子を径方向から回転スケールに対向させている場合には、出力軸の傾斜によって出力軸と同軸の回転スケールが傾斜すると、回転位置の検出精度が低下しやすいという問題がある。
【0007】
すなわち、回転スケールの周壁面は円弧形状に湾曲しているので、回転スケールと磁気検出素子との間のギャップは、回転スケールの周壁面の曲率に基づいて軸線回りで変化している。従って、出力軸および回転スケールが傾斜していない場合であっても、磁気検出素子は軸線回りのギャップの変化に起因する磁気強度分を検出してしまい、回転スケールが発生させる磁界の変化を正確に検出することは容易ではない。ここで、更に、回転スケールが傾斜した場合には、回転する回転スケールと磁気検出素子との間のギャップが変動するので、磁気強度分も変動する。従って、磁気検出素子によって回転スケールが発生させる磁界の変化を正確に検出することは、より、困難となる。これにより、回転位置検出部による回転位置の検出精度が低下しやすくなる。
【0008】
本発明の課題は、かかる点に鑑みて、出力軸などの移動体の傾斜によって移動体と同軸の回転スケールが傾斜した場合でも、移動体の回転位置を検出する検出精度が低下することを抑制できる直動回転検出器および直動回転検出ユニットを提供することにある。また
、このような直動回転検出器により出力軸の変位を検出する直動回転駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、軸線方向に直動するとともに軸線回りに回転する移動体の変位を検出する直動回転検出器において、前記軸線を囲んで径方向を向く周壁面を備え、前記周壁面にN極とS極とが着磁された直動位置検出用着磁パターンを備える直動スケール、および、前記径方向から前記直動位置検出用着磁パターンに対向して磁界の変化を検出する第1磁気検出素子を備える直動位置検出部と、前記軸線方向を向く平面を備え、前記平面にN極とS極とが着磁された回転位置検出用着磁パターンを備える回転スケール、および、前記軸線方向から前記回転位置検出用着磁パターンに対向して磁界の変化を検出する第2磁気検出素子を備える回転位置検出部と、を有し、前記直動スケールが前記移動体とともに前記軸線方向に移動し、前記回転スケールが前記軸線方向の所定の位置で前記移動体とともに当該移動体と同軸に回転することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、回転スケールは軸線方向に向く平面に回転位置検出用着磁パターンを備え、第2磁気検出素子は軸線方向から回転位置検出用パターン(回転スケール)に対向する。従って、回転スケールが傾斜したときに、回転する回転スケールと第2磁気検出素子との間のギャップが変動する変動量は、回転スケールが周壁面に回転位置検出用着磁パターンを備え、第2磁気検出素子が径方向から回転スケールに対向する場合する場合と比較して、抑制される。また、第2磁気検出素子が軸線方向から回転位置検出用パターン(回転スケール)に対向すれば、第2磁気検出素子が径方向から回転スケールに対向する場合する場合と比較して、第2磁気検出素子を軸線に近い位置に配置することが容易となる。ここで、第2磁気検出素子が軸線に近い位置に配置されれば、回転スケールが傾斜したときに、回転する回転スケールと第2磁気検出素子との間のギャップが変動する変動量を抑制できる。これにより、回転スケールが傾斜した場合でも、回転する回転スケールと第2磁気検出素子との間のギャップの変動に起因する磁気強度分の変動を抑制できる。よって、移動体の軸線の傾斜により移動体と同軸の回転スケールが傾斜した場合でも、移動体の回転位置を検出する検出精度が低下することを抑制できる。
【0011】
本発明において、回転位置検出用着磁パターンは、前記軸線回りにS極とN極とが交互に配列され、かつ、径方向にS極とN極とが交互に着磁された格子状のものであり、前記第2磁気検出素子は、前記回転位置検出用着磁パターンのS極とN極との境界部分に発生する回転磁界を検出するものとすることができる。このようにすれば、第2磁気検出素子からの出力に基づいて回転位置を示す正弦波成分を得ることができる。
【0012】
本発明において、前記回転位置検出用着磁パターンは、前記軸線回りにS極とN極とが交互に配列されたものであり、前記第2磁気検出素子は、前記回転位置検出用着磁パターンの強弱磁界を検出するものとすることができる。このようにしても、第2磁気検出素子からの出力に基づいて回転位置を示す正弦波成分を得ることができる。
【0013】
本発明において、前記回転スケールは、前記平面の前記回転位置検出用着磁パターンとは径方向で異なる部位にS極またはN極が着磁された着磁領域を備え、前記回転位置検出部は、前記軸線方向から前記平面に対向して前記着磁領域の磁界を検出可能な第3磁気検出素子を備えることが望ましい。このようにすれば、第3磁気検出素子からの出力に基づいて移動体(回転スケール)の軸線回りの原点位置を検出できる。
【0014】
本発明において、前記直動位置検出用着磁パターンは、前記軸線方向にS極とN極とが交互に配列され、かつ、前記軸線回りにS極とN極とが交互に着磁された格子状のものであり、前記第1磁気検出素子は、前記直動位置検出用着磁パターンのS極とN極との境界
部分に発生する回転磁界を検出するものとすることができる。このようにすれば、第1磁気検出素子からの出力に基づいて直動位置を示す正弦波成分を得ることができる。
【0015】
本発明において、前記直動位置検出用着磁パターンは、前記軸線方向にS極とN極とが交互に配列されたものであり、前記第1磁気検出素子は、前記直動位置検出用着磁パターンの強弱磁界を検出するものとすることができる。このようにしても、第1磁気検出素子からの出力に基づいて直動位置を示す正弦波成分を得ることができる。
【0016】
次に、本発明の直動回転検出器ユニットは、上記の直動回転検出器と、前記移動体に固定されたボールスプライン軸受と、を有し、前記ボールスプライン軸受は、前記移動体を前記軸線方向に移動可能に支持するとともに当該移動体と一体に回転し、前記回転スケールは、前記ボールスプライン軸受を介して前記移動体に取り付けられることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、直動回転検出器の回転スケールが軸線方向に向く平面に回転位置検出用着磁パターンを備え、第2磁気検出素子は軸線方向から回転位置検出用パターン(回転スケール)に対向する。従って、移動体を支持する部品の公差などに起因して、移動体が基準とする軸線に対して傾斜することにより移動体と同軸の回転スケールが傾斜した場合でも、移動体の回転位置を検出する検出精度が低下することを抑制できる。また、回転スケールは、移動体を軸線方向に移動可能に支持するボールスプライン軸受を介して移動体に取り付けられる。従って、回転スケールは、軸線方向の所定の位置で移動体とともに当該移動体と同軸に回転し、軸線方向に移動することがない。よって、移動体が軸線方向に移動したときに、軸線方向から回転スケールに対向する第2磁気検出素子と回転スケールとが衝突することがない。
【0018】
次に、本発明の直動回転駆動装置は、出力軸と、前記出力軸を軸線方向に移動させる直動駆動部と、軸線回りに回転するロータを備える回転駆動部と、前記出力軸に同軸に固定されて、前記出力軸を前記軸線方向に移動可能に支持するとともに前記出力軸と一体に回転するボールスプライン軸受と、前記出力軸の変位を検出する直動回転検出器と、を有し、前記ロータは、前記ボールスプライン軸受に固定され、前記直動回転検出器は、前記軸線を囲んで径方向を向く周壁面を備え、前記周壁面にN極とS極とが着磁された直動位置検出用着磁パターンを備える直動スケール、および、前記径方向から前記直動位置検出用着磁パターンに対向して磁界の変化を検出する第1磁気検出素子を備える直動位置検出部と、前記軸線方向を向く平面を備え、前記平面にN極とS極とが着磁された回転位置検出用着磁パターンを備える回転スケール、および、前記軸線方向から前記回転位置検出用着磁パターンに対向して磁界の変化を検出する第2磁気検出素子を備える回転位置検出部と、を有し、前記直動スケールは、前記出力軸に固定されて当該出力軸とともに前記軸線方向に移動し、前記回転スケールは、前記ロータに固定されて前記軸線方向の所定の位置で前記出力軸とともに当該出力軸と同軸に回転することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、直動回転検出器の回転スケールが軸線方向に向く平面に回転位置検出用着磁パターンを備え、第2磁気検出素子は軸線方向から回転位置検出用パターン(回転スケール)に対向する。従って、出力軸を支持する部品の公差などに起因して、出力軸が基準とする軸線に対して傾斜することにより出力軸と同軸の回転スケールが傾斜した場合でも、出力軸の回転位置を検出する検出精度が低下することを抑制できる。また、回転スケールは、出力軸を軸線方向に移動可能に支持するボールスプライン軸受に固定される。従って、回転スケールは、軸線方向の所定の位置で出力軸とともに同軸に回転し、軸線方向に移動することがない。よって、出力軸が軸線方向に移動したときに、軸線方向から回転スケールに対向する第2磁気検出素子が回転スケールと衝突することがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の直動回転検出器および直動回転検出器ユニットによれば、出力軸などの移動体の傾斜によって移動体と同軸の回転スケールが傾斜した場合でも、移動体の回転位置を検出する検出精度が低下することを抑制できる。また、本発明の直動回転駆動装置によれば、出力軸が基準とする軸線に対して傾斜することにより出力軸と同軸の回転スケールが傾斜した場合でも、出力軸の回転位置を検出する検出精度が低下することを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態の直動回転駆動装置を説明する。
【0023】
(直動回転駆動装置)
図1は本発明の直動回転検出器を備えた直動回転駆動装置の外観斜視図である。
図1に示すように、本例の直動回転駆動装置1は、出力軸(移動体)2と、出力軸2を駆動する出力軸駆動機構3と、出力軸駆動機構3を収納するケース4を備える。ケース4は、出力軸2の軸線Lに沿った軸線方向Xに延びる角筒状のケース本体5を備える。ケース本体5は軸線方向Xから見た場合の形状が矩形である。ケース本体5の一方の端部には、矩形板状のフランジ7が固定されている。フランジ7はケース本体5の他方の端において軸線Lと直交する方向に広がる。また、ケース本体5の他方の端部には矩形板6が固定されている。
【0024】
フランジ7の中心には出力側開口部8が設けられている。出力側開口部8からは出力軸2の出力側の端部分2aがケース4の外側に突出する。出力軸2にはスプライン溝9が設けられている。矩形板6の中心には反出力側開口部10(
図2参照)が設けられている。反出力側開口部10からは出力軸2の反出力側の端部分2bがケース4の外側に突出する。反出力側開口部10は、その内周面で出力軸2を軸線回りθに回転可能および軸線方向Xに直動可能に支持する軸受となっている。
【0025】
ケース本体5における軸線回りθの四方の側面のうちの一つの側面4aには、カバー13が取り付けられている。カバー13は軸線方向Xに長く延びる。カバー13とケース本体5との間に区画されたカバー13の内側の空間には、出力軸駆動機構3への給電制御を行うための回路基板14が収納されている。回路基板14には、当該回路基板14に電力を供給するためのケーブル15、16が接続されている。また、カバー13からは、出力軸2の変位を検出する直動回転検出器17からの検出信号を外部に取り出すためのケーブル18が接続されている。直動回転検出器17は、出力軸2の軸線回りθの回転位置を検出する回転位置検出部19と、出力軸2の軸線方向Xの直動位置を検出する直動位置検出部20とを備える。
【0026】
(内部構成)
図2は
図1の直動回転駆動装置1を、その軸線Lを含む面で切断した縦断面図である。
図2では直動回転駆動装置1を基準姿勢としている。基準姿勢は、出力軸2の出力側の端部分2aを下方に向け、出力軸2の軸線Lを鉛直方向に向けた姿勢である。以下では、
図2に示す基準姿勢における上下を直動回転駆動装置1の上下方向X(軸線方向)として説明する。また、以下では、基準姿勢としたときの上下方向における下方をX1、上方をX2とする。
【0027】
図2に示すように、出力軸駆動機構3は、出力軸2を軸線回りθに回転させるための回転駆動部21と、出力軸2を上下方向Xに移動させる直動駆動部22とを備える。回転駆動部21は上下方向Xで直動駆動部22の下方X1に位置する。回転駆動部21と直動駆動部22は同軸に構成されている。回転位置検出部19は、上下方向Xで回転駆動部21と直動駆動部22の間に位置する。直動位置検出部20は直動駆動部22の上方に位置する。
【0028】
図3は出力軸2および出力軸2に同軸に取り付けらえたボールスプライン軸受の斜視図である。
図2および
図3に示すように、出力軸2は、回転駆動部21および直動駆動部22を貫通して延びる出力軸本体25と、出力軸本体25の上側部分に同軸に固定された筒状の固定部材26を備える。
図2に示すように、出力軸本体25の下端部分(出力側の端部分2a)はケース4の出力側開口部8から下方X1に突出し、出力軸本体25の上端部分(反出力側の端部分2b)は反出力側開口部10を介してケース4から上方X2に突出する。出力軸本体25には上下方向Xに貫通する貫通孔27が設けられている。
【0029】
固定部材26は、
図3に示すように、下方X1から上方X2に向かって、大径筒部31と、大径筒部31と同軸で大径筒部31よりも外径寸法が小さい中径筒部32と、中径筒部32よりも外径寸法が小さい小径筒部33とをこの順に備える。大径筒部31の中心孔は中径筒部32および小径筒部33の中心孔よりも大きい。
図2に示すように、大径筒部31の中心孔と中径筒部32の中心孔との間には環状端面部34が設けられている。環状端面部34は下方X1を向く円環状端面である。固定部材26は、中径筒部32および小径筒部33の中心孔に出力軸本体25が圧入され、これにより固定部材26は出力軸本体25に固定されている。
【0030】
出力軸2の下側部分には、ボールスプライン軸受36が出力軸2と同軸に取り付けられている。出力軸2の下側部分に設けられたスプライン溝9には、ボールスプライン軸受36を構成するボール(図示省略)が転動可能に挿入される。ボールスプライン軸受36は、出力軸2を上下方向Xに移動可能に同軸に支持するとともに、出力軸2と一体に回転する。ボールスプライン軸受36は、筒状の軸受本体37と、焼き嵌めによって軸受本体37と一体とされた筒状のスリーブ38を備える。ボールスプライン軸受36は、上下方向Xから見た場合の輪郭形状が円形である。
【0031】
(回転駆動部)
図4は回転駆動部21および回転位置検出部19を拡大して示す部分断面図である。回転駆動部21は、回転モータである。
図4に示すように、回転駆動部21は、矩形枠形状のモータケース39と、モータケース39の内側に固定された環状のステータ40と、ステータ40の内周側に配置された環状のロータ41と、ロータ41の下端部分支持する第1軸受42と、ロータ41の上側部分を支持する第2軸受43とを備える。第1軸受42および第2軸受43はボールベアリングである。
【0032】
モータケース39は、ケース本体5の一部分を構成している。ステータ40は、径方向の内側へ突出する複数の突極(不図示)を有するステータコア44と、ステータコア44の突極に巻き回された複数の回転用駆動コイル45を備える。
【0033】
ロータ41は、筒状部材47と永久磁石48を備える。筒状部材47は、大径筒部49と、大径筒部49と同軸で大径筒部49よりも外径寸法の小さい中径筒部50と、中径筒部50と同軸で中径筒部50よりも外径寸法の小さい小径筒部51と、小径筒部51と同軸で小径筒部51よりも外径寸法の小さい回転スケール固定用筒部52とを備える。大径筒部49の中心孔は中径筒部50の中心孔よりも大きい。従って、大径筒部49の中心孔と中径筒部50の中心孔との間には、
図4に示すように、環状端面部50aが設けられている。環状端面部50aは、下方X1を向く円環状端面である。また、大径筒部49の内周面には、下方X1を向く環状面を備える段部53が設けられている。さらに、大径筒部49には、径方向に貫通する接着剤注入用孔54が複数設けられている。本例では、接着剤注入用孔54は、上下方向Xに配列された2つの接着剤注入用孔54の組が、軸線回りθの等角度間隔で4組設けられている。
【0034】
筒状部材47の中心孔には出力軸2が貫通している。出力軸2に取り付けられたボールスプライン軸受36は大径筒部49の内周側に位置する。ボールスプライン軸受36のスリーブ38は、上下方向Xの下方X1から大径筒部49の内周面の段部53に当接する。
【0035】
ボールスプライン軸受36は接着剤注入用孔54を介してロータ41の外周側から内周側に注入された接着剤によって大径筒部49に固定される。これにより、ボールスプライン軸受36に支持された出力軸2はロータ41と同軸とされる。また、ボールスプライン軸受36がロータ41に固定されることにより、出力軸2はロータ41と一体に回転するものとなる。換言すれば、ロータ41の回転がボールスプライン軸受36を介して出力軸2に伝達可能となる。
【0036】
永久磁石48は、筒状であり、中径筒部50の外周面に固定されている。永久磁石48は軸線回りθにN極とS極が交互に複数着磁されている。本例では、中径筒部50には、筒状のヨーク(不図示)が装着されており、永久磁石48はヨークを介して中径筒部50に固定されている。永久磁石48は、回転用駆動コイル45が巻き回されたステータコア44の突極と径方向で狭い間隔を開けて対向する。
【0037】
回転用駆動コイル45への給電によってロータ41は軸線回りθに回転する。ロータ41の回転はボールスプライン軸受36を介して出力軸2に伝達される。従って、出力軸2はロータ41と一体に回転する。
【0038】
回転位置検出部19は、回転スケール55と、回転位置検出用磁気センサ56を備える。回転スケール55は、円環状であり、その中心孔に回転スケール固定用筒部52が挿入された状態で、筒状部材47に同軸に固定される。これにより、回転スケール55は、筒状部材47およびボールスプライン軸受36を介して出力軸2に取り付けられる。従って、回転スケール55はロータ41と同軸であり、ロータ41と一体に回転する。また、ロータ41は出力軸2に同軸に固定されているので、回転スケール55は出力軸2と同軸であり、出力軸2と一体に回転する。回転スケール55の上面55aは平面であり、軸線Lと直交する方向に広がる。回転スケール55は、その上面に、回転位置検出用着磁パターン57を備える。
【0039】
上下方向Xで回転位置検出用着磁パターン57と対向する位置には、回転位置検出用磁気センサ56が配置されている。回転位置検出用磁気センサ56はケース4に固定されている。出力軸2の回転位置は回転位置検出用磁気センサ56から出力される検出信号に基づいて取得される。回転位置検出部19の詳細は後述する。
【0040】
(直動駆動部)
図5は直動駆動部22および直動位置検出部20を拡大して示す部分断面図である。直動駆動部22は、リニアモータである。直動駆動部22は、出力軸2に固定された複数の永久磁石71と、出力軸2を外周側から包囲する状態で上下方向Xに配列された複数の直動用駆動コイルユニット72を備える。複数の永久磁石71は固定部材26の大径筒部31の外周面に装着された筒状のヨーク73の外周面に固定されている。ヨーク73は一定の径寸法を備える。また、ヨーク73の上下方向Xの長さ寸法は大径筒部31の軸線方向の長さ寸法よりも長く、その上端側部分は、固定部材26の中径筒部32の外周側を当該中径筒部32の外周面との間に隙間を開けて上下方向Xに延びる。
【0041】
各永久磁石71は、環状であり、上下方向XにN極とS極とが着磁されている。複数の永久磁石71は、隣り合う2つの永久磁石71が上下方向Xで互いに同一の極を対向させている。本例では4個の永久磁石71がヨーク73を介して出力軸2に固定されている。
【0042】
直動用駆動コイルユニット72はケース本体5の内壁面に固定されている。各直動用駆動コイルユニット72は、上下方向Xに同軸に配列した3つの直動用駆動コイル75を樹脂により一体に固めて筒状としたものである。従って、直動駆動部22は9個の直動用駆動コイル75を備える。各直動用駆動コイルユニット72の上下方向Xの長さ寸法は、各永久磁石71の上下方向Xの長さ寸法の2倍程度である。
【0043】
ここで、直動駆動部22は3相のリニアモータであり、各直動用駆動コイルユニット72を構成する3つの直動用駆動コイル75は、リニアモータを駆動する際に、それぞれU相の駆動コイル、V相の駆動コイル、W相の駆動コイルとして機能する。
【0044】
回転駆動部21の第2軸受43と出力軸2の固定部材26との間には、弾性部材としてのコイルバネ78が配置されている。コイルバネ78は出力軸本体25を貫通させた状態で外周側から包囲している。コイルバネ78の下方X1の端(回転駆動部21の側の端)はロータ41に載置されている。また、コイルバネ78の上端部分は、固定部材26の大径筒部31の内周側に挿入されており、その上方X2の端が固定部材26の環状端面32aに当接する。コイルバネ78は、直動回転駆動装置1への給電(直動駆動部22への給電)を行っていない状態で直動回転駆動装置1を基準姿勢としたときに、出力軸2を上下方向Xの所定の位置に支持する。
【0045】
直動駆動部22は、電力を供給する直動用駆動コイル75を上下方向Xに移動させることにより、出力軸2を上下方向Xに移動させる。また、直動駆動部22は、直動用駆動コイル75への給電状態を維持することにより、上下方向Xに移動させた出力軸2を、その直動位置に維持する。
【0046】
直動位置検出部20は、直動スケール76と直動位置検出用磁気センサ77を備える。直動スケール76は、筒状であり、その中心孔に小径筒部33が挿入された状態で出力軸2に同軸に固定されている。これにより、直動スケール76は出力軸2と一体に直動する。回転スケール55において上下方向Xと直交する径方向の外側を向く円環状の周壁面76aには、直動位置検出用着磁パターン79が設けられている。
【0047】
直動位置検出用磁気センサ77は、径方向で直動位置検出用着磁パターン79と対向する位置に配置されている。直動位置検出用磁気センサ77はケース4に固定されている。出力軸2の直動位置は、直動位置検出用磁気センサ77から出力される検出信号に基づいて取得される。
【0048】
ここで、直動位置検出用磁気センサ77と、直動駆動部22との間にはシールド部材61が配置されている。シールド部材61は、径方向において出力軸2の中径筒部32とヨ
ーク73との間に位置する筒部62と、筒部62の上端縁から外周側に広がってケース本体5の内壁面に達する環状板部63を備える。筒部62は出力軸2が上方X2(反出力側)に移動したときに、出力軸2の中径筒部32とヨーク73の間に侵入する。シールド部材61は、直動駆動部22の永久磁石71の磁界が直動位置検出部20に影響を及ぼすことを防止或いは抑制する。
【0049】
(直動回転検出器)
次に、
図6ないし
図9を参照して、直動回転検出器17を詳細に説明する。
図6は直動回転検出器17の説明図である。
図6では直動回転駆動装置1から直動回転検出器17の要部および出力軸2を取り出して示す。
図7は回転位置検出用磁気センサ56の説明図である。
図7(a)は回転スケール55および回転位置検出用磁気センサ56を、軸線Lを含む面で切断した断面図であり、
図7(b)は回転位置検出用磁気センサ56を下方X1から見た場合の平面図であり、
図7(c)は
図7(b)のY-Y線における断面図である。
図7(c)では、センサ基板は、回転位置検出用磁気抵抗素子が形成されている側の面を上方に向けている。
図8は回転位置検出用磁気抵抗素子86の各磁気抵抗パターンSIN+、SIN−、COS+、COS−が構成する回路図である。
図9は直動位置検出用磁気センサ77の説明図である。
図9(a)は直動スケール76および直動位置検出用磁気センサ77を、軸線Lと直交する面で切断した断面図であり、
図9(b)は直動位置検出用磁気センサ77を軸線Lの側から見た場合の側面図であり、
図9(c)は
図9(b)のZ-Z線における断面図である。
図9(c)では、センサ基板は、直動位置検出用磁気抵抗素子が形成されている側の面を上方に向けている。
【0050】
(回転位置検出部)
図6に示すように、回転スケール55は、その上面55aに回転位置検出用着磁パターン57を備える。回転位置検出用着磁パターン57は、軸線回りθにS極とN極とが交互に着磁され、かつ、径方向にS極とN極とが交互に配列された格子状である。換言すれば、回転位置検出用着磁パターン57は、軸線回りθにS極とN極が交互に着磁された環状の第1磁気トラック81と、第1磁気トラック81の外周側において軸線回りθにS極とN極が交互に着磁された環状の第2磁気トラック82を備える。第1磁気トラック81と第2磁気トラック82とは径方向で隙間なく設けられている。第1磁気トラック81における各極の着磁ピッチは、第2磁気トラック82における各極の着磁ピッチと同一である。第1磁気トラック81と第2磁気トラック82とにおいて径方向で隣り合う着磁領域の極は異なる。
【0051】
また、回転スケール55は、上面55aにおける第2磁気トラック82の外周側に原点位置検出用着磁領域84を備える。原点位置検出用着磁領域84は、軸線回りθの一か所に設けられている。軸線回りθにおける原点位置検出用着磁領域84の幅は、第1磁気トラック81および第2磁気トラック82において各極の着磁領域のピッチよりも短い。また、軸線回りθにおける原点位置検出用着磁領域84の中心は、第2磁気トラック82においてS極とN極とが隣り合う原点位置検出用着磁領域84の境界部分の外周側に位置する。本例では、原点位置検出用着磁領域84はN極に着磁されている。なお、原点位置検出用着磁領域84はS極に着磁されていてもよい。
【0052】
図7(a)に示すように、回転位置検出用磁気センサ56は、上方X2から回転スケール55に対向するセンサ基板85を備える。センサ基板85は、回転スケール55に対向する基板表面85aに回転位置検出用磁気抵抗素子86(第2磁気検出素子)と原点位置検出用磁気抵抗素子(第3磁気検出素子)87とを備える。センサ基板85はガラス或いはシリコンからなる。回転位置検出用磁気抵抗素子86および原点位置検出用磁気抵抗素子87は、半導体プロセスによって基板表面85aに強磁性体NiFe等の磁性体膜を積層することによって形成される。
【0053】
回転位置検出用磁気抵抗素子86は、その感磁方向を軸線回りθに向けて、回転位置検出用着磁パターン57に対向する。
図7(b)に示すように、回転位置検出用磁気抵抗素子86の形成領域は、全体として、軸線Lを中心とする円弧形状である。センサ基板85上における回転位置検出用磁気抵抗素子86の形成領域の曲率は、第1磁気トラック81と第2磁気トラック82との境界部分(N極とS極とが隣り合う部分)の曲率と同一である。
【0054】
ここで、回転位置検出用磁気抵抗素子86は、第1磁気トラック81と第2磁気トラック82との境界部分(N極とS極とが隣り合う部分)で発生する回転磁界を検出する。また、回転位置検出用磁気抵抗素子86は磁気抵抗素子の飽和感度領域を利用して回転磁界を検出する。すなわち、回転位置検出用磁気抵抗素子86は、後述する磁気抵抗パターンに電流を流し、かつ、抵抗値が飽和する磁界強度を印加して、境界部分で面内方向の向きが変化する回転磁界を検出する。ここで、回転位置検出用磁気抵抗素子86により回転位置検出用着磁パターン57が発生させる回転磁界を検出すれば、回転スケール55と回転位置検出用磁気抵抗素子86とを接近させて配置した場合でも、回転位置検出用磁気抵抗素子86から正弦波成分を得ることができるので、回転位置検出部19を上下方向Xでコンパクトに構成できる。
【0055】
図7(b)に示すように、回転位置検出用磁気抵抗素子86は、互いに90°の位相差で回転スケール55の回転を検出するA相の第1磁気抵抗パターンSINおよびB相の第1磁気抵抗パターンCOSを備える。換言すれば、センサ基板85は、回転スケール55から得られる同一の波長を90°の位相差で検出可能な位置にA相の第1磁気抵抗パターンSINとB相の第1磁気抵抗パターンCOSを備える。
【0056】
また、A相の第1磁気抵抗パターンSINは、180°の位相差をもって回転スケール55の回転を検出する+a相の第1磁気抵抗パターンSIN+と−a相の第1磁気抵抗パターンSIN−とを備える。同様に、B相の第1磁気抵抗パターンCOSは、180°の位相差をもって回転スケール55の回転を検出する+b相の第1磁気抵抗パターンCOS+と−b相の第1磁気抵抗パターンCOS−とを備える。すなわち、+a相の第1磁気抵抗パターンSIN+と+b相の第1磁気抵抗パターンCOS+は、センサ基板85上において、回転スケール55から得られる同一の波長を90°の位相差で検出可能な位置に形成されている。また、−a相の第1磁気抵抗パターンSIN−と−b相の第1磁気抵抗パターンCOS−は、センサ基板85上において、回転スケール55から得られる同一の波長を90°の位相差で検出可能な位置に形成されている。
【0057】
本例では、A相の第1磁気抵抗パターンSIN(SIN+、SINー)とB相の第1磁気抵抗パターンCOS(COS+、COS−)をセンサ基板85上で2層に重ねている。
【0058】
より具体的には、
図7(c)に示すように、センサ基板85の基板表面85aに+b相の第1磁気抵抗パターンCOS+を形成し、その上に+a相の第1磁気抵抗パターンSIN+を積層している。また、センサ基板85の基板表面85a上に−a相の第1磁気抵抗パターンSIN−を形成し、その上に−b相の第1磁気抵抗パターンCOS−を積層している。ここで、1層目の各磁気抵抗パターンSIN−、COS+に重ねられる2層目の各磁気抵抗パターンCOS−、SIN+は、1層目の各磁気抵抗パターン上にSiO2等の無機絶縁層を形成し、この無機絶縁層の上に、強磁性体NiFe等の磁性体膜を積層することによって形成される。なお、+a相の第1磁気抵抗パターンSIN+と、+b相の第1磁気抵抗パターンCOS+の積層関係は逆でもよい。また、−a相の第1磁気抵抗パターンSIN−と−b相の第1磁気抵抗パターンCOS−の積層関係は逆でもよい。
【0059】
本例では、回転位置検出用磁気抵抗素子86を構成するA相の第1磁気抵抗パターンSINとB層の第1磁気抵抗パターンCOSとをセンサ基板85上で積層しているので、センサ基板85上におけるA相の第1磁気抵抗パターンSINとB層の第1磁気抵抗パターンCOSの配置の自由度が増す。従って、A相の第1磁気抵抗パターンSIN(SIN+、SINー)とB相の第1磁気抵抗パターンCOS(COS+、COS−)を積層せずにセンサ基板85上に形成した場合と比較して、回転位置検出用磁気抵抗素子86を軸線回りθで小さくできる。
【0060】
ここで、+a相の第1磁気抵抗パターンSIN+および−a相の第1磁気抵抗パターンSIN−は、
図8(a)に示すように、ブリッジ回路を構成しており、いずれも一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。また、+a相の第1磁気抵抗パターンSIN+の中点位置には、+a相が出力される端子+aが設けられ、−a相の第1磁気抵抗パターンSIN−の中点位置には、−a相が出力される端子−aが設けられる。従って、端子+a、端子−aからの出力を減算器に入力すれば歪の少ない正弦波の差動出力を得ることができる。
【0061】
同様に、+b相の磁気抵抗パターンCOS+および−b相の磁気抵抗パターンCOS−は、
図8(b)に示すように、ブリッジ回路を構成しており、いずれも一方端が電源端子(Vcc)に接続され、他方端がグランド端子(GND)に接続されている。+b相の磁気抵抗パターンCOS+の中点位置には、+b相が出力される端子+bが設けられ、−b相の磁気抵抗パターンCOS−の中点位置には、−b相が出力される端子−bが設けられる。従って、端子+b、端子−bからの出力を減算器に入力すれば歪の少ない正弦波の差動出力を得ることができる。
【0062】
次に、原点位置検出用磁気抵抗素子87は、その感磁方向を軸線回りθに向けている。原点位置検出用磁気抵抗素子87は、
図7(a)に示すように、回転スケール55が回転したときに、原点位置検出用着磁領域84の磁界を検出可能な位置に設けられている。原点位置検出用磁気抵抗素子87は、原点位置検出用着磁領域84が発生させる強弱磁界を検出する。
【0063】
(直動検出部)
図6に示すように、直動スケール76は、径方向を外側に向く周壁面76aに、直動位置検出用着磁パターン79を備える。直動位置検出用着磁パターン79は、上下方向XにS極とN極とが交互に配列され、かつ、軸線回りθにS極とN極とが交互に着磁された格子状である。
【0064】
直動位置検出用磁気センサ77は、軸線Lと平行な姿勢で径方向から直動スケール76に対向するセンサ基板90を備える。また、直動位置検出用磁気センサ77は、センサ基板90において直動スケール76に対向する基板表面90aに形成された直動位置検出用磁気抵抗素子(第1磁気検出素子)91を備える。センサ基板90はガラス或いはシリコンからなる。直動位置検出用磁気抵抗素子91は、半導体プロセスによって基板表面90aに強磁性体NiFe等の磁性体膜を積層することによって形成される。
【0065】
直動位置検出用磁気抵抗素子91は、その感磁方向を上下方向Xに向けている。従って、直動位置検出用磁気抵抗素子91は、直動スケール76の直動位置検出用着磁パターン79を、S極とN極とが交互に配列されて上下方向Xに延びる軸方向磁気トラック93を軸線回りθに複数列備えるものとして、直動スケール76が移動したときの磁界の変化を検出する。
【0066】
ここで、直動位置検出用磁気抵抗素子91は、複数の軸方向磁気トラック93において
、軸線回りθで隣り合う2つの軸方向磁気トラック93の境界部分(N極とS極とが隣り合う部分)で発生する回転磁界を検出する。また、直動位置検出用磁気抵抗素子91は磁気抵抗素子の飽和感度領域を利用して回転磁界を検出する。すなわち、直動位置検出用磁気抵抗素子91は、後述する磁気抵抗パターンに電流を流し、かつ、抵抗値が飽和する磁界強度を印加して、境界部分で面内方向の向きが変化する回転磁界を検出する。ここで、直動位置検出用磁気抵抗素子91により直動位置検出用着磁パターン79が発生させる回転磁界を検出すれば、直動スケール76と直動位置検出用磁気抵抗素子91を接近させて配置した場合でも、直動位置検出用磁気抵抗素子91から正弦波成分を得ることができるので、直動位置検出部20を径方向でコンパクトに構成できる。
【0067】
図9(b)に示すように、直動位置検出用磁気抵抗素子91は、互いに90°の位相差で直動スケール76の直動を検出するA相の第1磁気抵抗パターンSINおよびB相の第1磁気抵抗パターンCOSを備える。換言すれば、センサ基板90は、直動スケール76から得られる同一の波長を90°の位相差で検出可能な位置にA相の第1磁気抵抗パターンSINとB相の第1磁気抵抗パターンCOSを備える。
【0068】
また、A相の第1磁気抵抗パターンSINは、180°の位相差をもって直動スケール76の直動を検出する+a相の第1磁気抵抗パターンSIN+と−a相の第1磁気抵抗パターンSIN−とを備える。同様に、B相の第1磁気抵抗パターンCOSは、180°の位相差をもって直動スケール76の直動を検出する+b相の第1磁気抵抗パターンCOS+と−b相の第1磁気抵抗パターンCOS−とを備える。すなわち、+a相の第1磁気抵抗パターンSIN+と+b相の第1磁気抵抗パターンCOS+は、センサ基板90上において、直動スケール76から得られる同一の波長を90°の位相差で検出可能な位置に形成されている。また、−a相の第1磁気抵抗パターンSIN−と−b相の第1磁気抵抗パターンCOS−は、センサ基板90上において、直動スケール76から得られる同一の波長を90°の位相差で検出可能な位置に形成されている。
【0069】
本例では、A相の第1磁気抵抗パターンSIN(SIN+、SINー)とB相の第1磁気抵抗パターンCOS(COS+、COS−)をセンサ基板90上で2層に重ねている。
【0070】
より具体的には、
図9(c)に示すように、センサ基板90の基板表面90aに+b相の第1磁気抵抗パターンCOS+を形成し、その上に+a相の第1磁気抵抗パターンSIN+を積層している。また、センサ基板90の基板表面90a上に−a相の第1磁気抵抗パターンSIN−を形成し、その上に−b相の第1磁気抵抗パターンCOS−を積層している。ここで、1層目の各磁気抵抗パターンSIN−、COS+に重ねられる2層目の各磁気抵抗パターンCOS−、SIN+は、1層目の各磁気抵抗パターン上にSiO2等の無機絶縁層を形成し、この無機絶縁層の上に、強磁性体NiFe等の磁性体膜を積層することによって形成される。なお、+a相の第1磁気抵抗パターンSIN+と、+b相の第1磁気抵抗パターンCOS+の積層関係は逆でもよい。また、−a相の第1磁気抵抗パターンSIN−と−b相の第1磁気抵抗パターンCOS−の積層関係は逆でもよい。
【0071】
本例では、直動位置検出用磁気抵抗素子91を構成するA相の第1磁気抵抗パターンSINとB層の第1磁気抵抗パターンCOSとをセンサ基板90上で積層することにより、直動スケール76の軸線回りθに対応する方向の直動位置検出用磁気抵抗素子91の幅W1を、直動スケール76の上下方向Xに対応する方向の直動位置検出用磁気抵抗素子91の高さH1(
図9(b)上段参照)と比較して短くしている。また、本例では、直動位置検出用磁気抵抗素子91の幅方向の中心を、円筒状の直動スケール76の円周面に設けられた直動位置検出用着磁パターン79の曲率の頂点と対向する位置に配置している。
【0072】
ここで、直動位置検出用磁気抵抗素子91が磁界の変化を検出する直動位置検出用着磁
パターン79は、円筒状の直動スケール76の周壁面76aに設けられている。従って、センサ基板90を軸線Lと平行な姿勢として直動スケール76の周壁面76aに対向させたときに、直動位置検出用磁気抵抗素子91とセンサ基板90との間のギャップGは軸線回りθで変化する(
図9(a)参照)。従って、直動スケール76の軸線回りθに対応する方向の直動位置検出用磁気抵抗素子91の幅W1を短くすることにより、直動位置検出用磁気抵抗素子91からの出力について、直動スケール76とセンサ基板90との間の曲率に伴うギャップの変化に起因する磁気強度部分の影響を抑制できる。
【0073】
ここで、直動位置検出用磁気抵抗素子91は、回転位置検出用磁気抵抗素子86と同様の回路構成を備える。従って、直動位置検出用磁気抵抗素子91からから歪みの少ない正弦波成分を得ることが容易となる。なお、直動位置検出用磁気抵抗素子91の回路構成は、
図8に示すものと同様なので、その詳細な説明は省略する。
【0074】
(直動回転動作)
出力軸2を回転させる際には、回転駆動部21の回転用駆動コイル45に給電してロータ41を回転させる。ロータ41が回転すると、その回転はボールスプライン軸受36を介して出力軸2に伝達される。従って、出力軸2はロータ41と一体に回転する。また、出力軸が回転すると回転スケール55は出力軸2と一体に回転する。従って、回転位置検出用磁気センサ56の回転位置検出用磁気抵抗素子86からの検出信号に基づいて出力軸2の回転位置を取得できる。また、回転位置検出用磁気センサ56の原点位置検出用磁気抵抗素子87からの検出信号に基づいて出力軸2が軸線回りθの原点位置にあるか否かを取得できる。
【0075】
一方、出力軸2を上下方向Xに移動させる際には、直動駆動部22の直動用駆動コイル75に給電する。そして、直動用駆動コイル75への給電状態を維持することにより、上下方向Xに移動させた出力軸2を、移動後の直動位置に維持する。ここで、出力軸が上下方向Xに移動すると、直動スケールも出力軸2と一体に上下方向Xに移動する。従って、直動位置検出用磁気センサ77の直動位置検出用磁気抵抗素子91からの検出信号に基づいて出力軸2の直動位置を取得できる。
【0076】
(作用効果)
上記の直動回転駆動装置1では、出力軸2は、当該出力軸2を支持する部品の公差などに起因して出力軸2が基準とする軸線から傾斜することがある。
【0077】
ここで、出力軸2が傾斜することにより当該出力軸2と同軸の回転スケール55が傾斜したときに、回転位置検出部の構成が、回転スケールが径方向を向く周壁面に回転位置検出用着磁パターンを備え、回転位置検出用磁気抵抗素子が回転スケールに径方向から対向するものである場合には、回転位置検出部による回転位置の検出精度が低下しやすいという問題がある。
【0078】
すなわち、回転スケールの周壁面は円弧形状に湾曲しているので、回転位置検出用磁気抵抗素子が回転スケールに径方向から対向する構成では、回転スケールと回転位置検出用磁気抵抗素子との間のギャップは、回転スケールの周壁面の曲率に基づいて軸線回りで変化している。従って、出力軸2が傾斜しておらず回転スケールも傾斜していない場合であっても、回転位置検出用磁気抵抗素子は、ギャップの変化に起因する磁気強度分を検出してしまい、回転スケールが発生させる磁界の変化を正確に検出することは容易ではない。ここで、更に、回転スケールが傾斜した場合には、回転スケールと回転位置検出用磁気抵抗素子との間のギャップの変化量が変動するので、磁気強度分も変動する。従って、回転位置検出用磁気抵抗素子によって回転スケールが発生させる磁界の変化を正確に検出することは、より、困難となる。よって、回転位置検出部による回転位置の検出精度が低下し
やすくなる。
【0079】
このような問題に対して、本例の回転位置検出部19は、回転スケール55が上面55aに回転位置検出用着磁パターン57を備え、回転位置検出用磁気抵抗素子86が上方X2から回転位置検出用着磁パターン57(回転スケール55)に対向する。従って、出力軸2の傾斜によって回転スケール55が傾斜した場合に回転する回転スケール55と回転位置検出用磁気抵抗素子86との間のギャップが変動する変動量は、回転スケールが周壁面に回転位置検出用着磁パターンを備え、回転位置検出用磁気抵抗素子が回転スケールに径方向から対向する場合と比較して、抑制される。また、本例では、回転位置検出用磁気抵抗素子86が上方X2から回転位置検出用着磁パターン57(回転スケール55)に対向するので、回転位置検出用磁気抵抗素子を回転スケールに径方向の外側から対向させた場合と比較して、回転位置検出用磁気抵抗素子86を出力軸2の軸線Lに近い位置に配置することができる。ここで、回転位置検出用磁気抵抗素子86が軸線Lに近い位置にあれば、回転スケール55が傾斜したときに、回転する回転スケール55と回転位置検出用磁気抵抗素子86との間のギャップが変動する変動量を抑制できる。従って、回転スケール55が傾斜した場合でも、回転する回転スケール55と回転位置検出用磁気抵抗素子86との間のギャップの変動に起因する磁気強度分の変動を抑制できる。よって、出力軸2の傾斜により出力軸2と同軸の回転スケール55が傾斜した場合でも、回転位置検出用磁気抵抗素子86からの検出信号に位相ずれなどが発生すること抑制でき、出力軸2の回転位置を検出する検出精度が低下することを抑制できる。
【0080】
また、本例では、回転位置検出用磁気抵抗素子86を構成するA相の第1磁気抵抗パターンSINとB層の第1磁気抵抗パターンCOSとをセンサ基板85上で積層しているので、センサ基板85上におけるA相の第1磁気抵抗パターンSINとB層の第1磁気抵抗パターンCOSの配置の自由度が増す。これにより、回転位置検出用磁気抵抗素子86を構成するA相の第1磁気抵抗パターンSINとB層の第1磁気抵抗パターンCOSとをセンサ基板85上で積層しない場合と比較して、回転位置検出用磁気抵抗素子86の形成領域を軸線回りθで短くすることが容易となる。ここで、回転位置検出用磁気抵抗素子86の形成領域が軸線回りθで短くなれば、回転スケール55が傾斜した場合でも、回転する回転スケール55と回転位置検出用磁気抵抗素子86との間のギャップの変動量を抑制できるので、ギャップの変動に起因する磁気強度分の変動を抑制できる。よって、出力軸2の傾斜によって回転スケール55が傾斜した場合でも、出力軸2の回転位置を検出する検出精度が低下することを抑制できる。
【0081】
また、本例では、直動位置検出用磁気抵抗素子91を構成するA相の第1磁気抵抗パターンSINとB層の第1磁気抵抗パターンCOSとをセンサ基板90上で積層することにより、直動スケール76の軸線回りθに対応する方向の直動位置検出用磁気抵抗素子91の幅W1を、直動スケール76の上下方向Xに対応する方向の直動位置検出用磁気抵抗素子91の高さH1と比較して短くしている。これにより、出力軸2の傾斜によって直動スケール76が傾斜した場合でも、回転する直動スケール76と直動位置検出用磁気抵抗素子91との間のギャップGの変動量を抑制できるので、ギャップGの変動に起因する磁気強度分の変動を抑制できる。よって、出力軸2の傾斜により直動スケール76が傾斜した場合でも、出力軸2の直動位置を検出する検出精度が低下することを抑制できる。
【0082】
さらに、本例では、回転スケール55に原点位置検出用着磁領域84を備え、回転位置検出部19が原点位置検出用磁気抵抗素子87を備える。よって、出力軸2(回転スケール55)の軸線回りθの原点位置を検出できる。
【0083】
(変形例)
なお、センサ基板85上において、回転位置検出用磁気抵抗素子86の+a相の第1磁
気抵抗パターンSIN+、−a相の第1磁気抵抗パターンSIN−、+b相の第1磁気抵抗パターンCOS+、および、−b相の第1磁気抵抗パターンCOS−の全てを積層してもよい。このようにすれば、センサ基板85上で回転位置検出用磁気抵抗素子86の形成領域を軸線回りθでより短くすることができるので、回転スケール55が傾斜した場合に、回転する回転スケール55と回転位置検出用磁気抵抗素子86との間のギャップの変動量をより抑制できる。よって、出力軸2の傾斜により出力軸2と同軸の回転スケール55が傾斜した場合でも、出力軸2の回転位置を検出する検出精度が低下することをより抑制できる。
【0084】
また、センサ基板90上において、直動位置検出用磁気抵抗素子91の+a相の第2磁気抵抗パターンSIN+、−a相の第2磁気抵抗パターンSIN−、+b相の第2磁気抵抗パターンCOS+、および、−b相の第2磁気抵抗パターンCOS−の全てを積層してもよい。
【0085】
また、上記の例では、回転スケール55は原点位置検出用着磁領域84を備えるが、原点位置検出用着磁領域84は省略してもよい。ここで、原点位置検出用着磁領域84を省略する場合には、センサ基板85上の原点位置検出用磁気抵抗素子87を省略できる。
【0086】
図10は上記の直動回転検出器17に替えて直動回転駆動装置1に搭載可能な変形例の直動回転検出器17Aの説明図である。なお、変形例の直動回転検出器17Aは上記の直動回転検出器17と対応する構成を備えるので、対応する部分には同一の符号を付して説明する。
【0087】
本例の直動回転検出器17Aでは、回転位置検出部19Aを構成する回転スケール55は、その上面55aに、軸線回りθにS極とN極とが交互に配列された回転位置検出用着磁パターン57Aを備える。すなわち、回転スケール55は、回転位置検出用着磁パターン57Aとして第1磁気トラック81を備える。一方、回転位置検出部19Aを構成する回転位置検出用磁気センサ56は、センサ基板85に、回転位置検出用着磁パターン57の強弱磁界を検出する回転位置検出用磁気抵抗素子86Aを備える。回転位置検出用磁気抵抗素子86Aはセンサ基板85において回転位置検出用着磁パターン57に対向する位置に設けられる。このようにしても、回転位置検出用磁気抵抗素子86からの出力に基づいて回転位置を示す正弦波成分を得ることができる。
【0088】
さらに、本例の直動回転検出器17Aでは、直動位置検出部20Aを構成する直動スケール76は、その周壁面76aに、上下方向XにS極とN極とが交互に配列された直動位置検出用着磁パターン79Aを備える。上下方向Xに配列されたS極およびN極は、それぞれ直動スケール76の周壁面76aに環状に着磁されている。一方、直動位置検出部20Aを構成する直動位置検出用磁気センサ77は、センサ基板90に、直動位置検出用着磁パターン79Aの強弱磁界を検出する直動位置検出用磁気抵抗素子91Aを備える。直動位置検出用磁気抵抗素子91Aはセンサ基板90において直動位置検出用着磁パターン79Aに対向する位置に設けられている。このようにしても、直動位置検出用磁気抵抗素子91からの出力に基づいて直動位置を示す正弦波成分を得ることができる。
【0089】
ここで、直動回転検出器として、直動回転検出器17の回転位置検出部19と直動回転検出器17Aの直動位置検出部20を採用することもできる。また、直動回転検出器として、直動回転検出器17Aの回転位置検出部19と直動回転検出器17の直動位置検出部20とを採用することもできる。
【0090】
なお、回転位置検出部19および直動位置検出部20のそれぞれにおいて、磁気抵抗素子(回転位置検出用磁気抵抗素子86、原点位置検出用磁気抵抗素子87および直動位置
検出用磁気抵抗素子91)に替えて、ホール素子を用いることができる。