(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546570
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】防振ゴム組成物および防振ゴム
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20190705BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20190705BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20190705BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20190705BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20190705BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20190705BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08L15/00
C08L53/02
C08K3/06
C08K5/098
F16F15/08 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-169216(P2016-169216)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-35253(P2018-35253A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年3月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】笠井 誠司
(72)【発明者】
【氏名】村谷 圭市
(72)【発明者】
【氏名】木村 憲仁
【審査官】
水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−052200(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/120638(WO,A1)
【文献】
特開2013−014706(JP,A)
【文献】
特開2003−253056(JP,A)
【文献】
特開平10−219029(JP,A)
【文献】
特開平10−087883(JP,A)
【文献】
特開2015−089918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)成分を含有する防振ゴム組成物であって、下記の(A)および(B)成分の合計含有量に対する(B)成分の割合が5〜20重量%であることを特徴とする防振ゴム組成物。
(A)天然ゴム、または天然ゴムとブタジエンゴムとのブレンドゴム。
(B)水添率が10〜90%である水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体。
(C)硫黄系加硫剤。
(D)モノメタクリル酸亜鉛。
【請求項2】
上記(A)および(B)成分の合計含有量100重量部に対し、上記(C)成分の含有量が0.2〜1重量部の範囲である、請求項1記載の防振ゴム組成物。
【請求項3】
上記(B)成分が、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレンである、請求項1または2記載の防振ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物の加硫体からなることを特徴とする防振ゴム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車,電車等の車両等に用いられる防振ゴム組成物および防振ゴムに関するものであり、詳しくは、自動車等のエンジンの支持機能および振動伝達を抑制するためのエンジンマウント等に使用される防振ゴム組成物および防振ゴムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高減衰、低動倍率を両立させる部材として、液体封入式防振装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、液体封入式防振装置は、構造が複雑なために、小型化が困難であり、コストも高く、しかも、防振特性に方向依存性があるといった問題がある。そのため、液体を封入しないタイプの防振ゴムで、高減衰、低動倍率を両立させることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3603173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、液体を封入しないタイプの防振ゴムで高減衰性を高めようとすると、動倍率も大きくなり、逆に、動倍率を小さくすると減衰性も小さくなる。そのため、液体を封入しないタイプの防振ゴムでの高減衰性と低動倍率の両立は、従来においては困難であった。また、車のコンパクト化等で、従来よりもエンジンルーム内は高温になる傾向にあることから、防振ゴムの耐熱性も特に要求されるようになった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐熱性に優れるとともに、高減衰性と低動倍率との両立がなされた、防振ゴム組成物および防振ゴムの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)〜(D)成分を含有する防振ゴム組成物であって、
下記の(A)および(B)成分の合計含有量に対する(B)成分の割合が5〜20重量%である防振ゴム組成物を、第一の要旨とする。
(A)天然ゴム、または天然ゴムとブタジエンゴムとのブレンドゴム。
(B)
水添率が10〜90%である水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体。
(C)硫黄系加硫剤。
(D)モノメタクリル酸亜鉛。
【0007】
また、本発明は、上記第一の要旨の防振ゴム組成物の加硫体からなる防振ゴムを、第二の要旨とする。
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、防振ゴム組成物のポリマーとして、天然ゴム,または天然ゴムとブタジエンゴムとのブレンドゴム(A)とともに、
水添率が10〜90%である水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)
(以下、「水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)」と略することがある。)を特定量用いたところ、高減衰、低動倍率を両立することができることを突き止めた。さらに、モノメタクリル酸亜鉛(D)を含有させると、耐熱性を向上させることができることを突き止めた。なお、本発明では、上記のように水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)を用いているが、仮に、水素添加されていないスチレン−ブタジエンブロック共重合体を使用した場合、ブタジエンブロックの二重結合とモノメタクリル酸亜鉛が反応し、モノメタクリル酸亜鉛が老化防止剤として機能しないため、耐熱性の向上が見込めないこととなる。しかしながら、本発明で使用の水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)は、モノメタクリル酸亜鉛と部分的にしか反応しないため、反応せずに残ったモノメタクリル酸亜鉛が老化防止剤の機能を発現し、耐熱老化性が向上するようになる。その結果、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明の防振ゴム組成物は、天然ゴム,または天然ゴムとブタジエンゴムとのブレンドゴム(A)と、
水添率が10〜90%である水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)とをポリマーとし、硫黄系加硫剤(C)およびモノメタクリル酸亜鉛(D)を含有する。そして、上記のように水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)を特定の割合で含有するものである。そのため、耐熱性に優れるとともに、高減衰性と低動倍率との両立がなされる。そして、本発明の防振ゴム組成物の加硫体からなる防振ゴムは、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等の防振材料として、好適に用いられる。それ以外に、コンピューターのハードディスクの制振ダンパー、洗濯機等の一般家電製品の制振ダンパー、建築・住宅分野における建築用制震壁,制震(制振)ダンパー等の制震(制振)装置および免震装置の用途にも用いることができる。
【0010】
また、本発明の防振ゴム組成物のポリマーである上記(A)および(B)成分の合計含有量100重量部に対し、硫黄系加硫剤(C)の含有量が0.2〜1重量部の範囲であると、耐熱性等を損なうことなく、良好な加硫がなされるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
本発明の防振ゴム組成物は、先に述べたように、天然ゴム,または天然ゴムとブタジエンゴムとのブレンドゴム(A)と、
水添率が10〜90%である水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)とをポリマーとし、硫黄系加硫剤(C)およびモノメタクリル酸亜鉛(D)を含有するものである。そして、上記ポリマー((A)および(B)成分の合計)中の、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)の割合を、5〜20重量%とするものである。上記ポリマー中の水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)の割合は、好ましくは、10〜20重量%の範囲である。このようにすることにより、耐熱性に優れるとともに、高減衰性と低動倍率との両立がなされるようになる。なお、上記水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)の割合が少なすぎると、所望の高減衰性が達成されず、逆に、上記水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)の割合が多すぎると、所望の低動倍率化が達成されず、さらに圧縮永久歪みも悪くなる。
【0013】
なお、本発明の防振ゴム組成物に要求される特性を備える観点から、上記ポリマー((A)および(B)成分の合計)中の天然ゴムの割合は、50〜95重量%が好ましく、より好ましくは50〜70重量%の範囲であり、上記ポリマー中のブタジエンゴムの割合は、0〜40重量%が好ましく、より好ましくは10〜40重量%の範囲である。
【0014】
ところで、上記(B)成分である「水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体」とは、スチレン−ブタジエンブロック共重合体におけるブタジエンブロックの二重結合部分の一部が水素添加され、ブチレンブロック化したものである。そして、上記水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)の水添率(水素添加率)は
、10〜90%の範囲であり
、好ましくは30〜90%の範囲である。すなわち、上記範囲よりも水添率が少ないと、高減衰性と低動倍率との両立による所望の防振特性が得られず、逆に、上記範囲よりも水添率が多いと、上記水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)の架橋がしづらくなるからである。なお、上記水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(B)の水添率は、上記共重合体における、二重結合を持たないブロック構造の割合を示すものであり、
1H−NMRにより測定された各構造の割合をもとに算出されたものである。
【0015】
上記(A)および(B)成分のポリマーとともに用いられる硫黄系加硫剤(C)としては、例えば、硫黄、塩化硫黄等の硫黄(粉末硫黄,沈降硫黄,不溶性硫黄)や、2−メルカプトイミダゾリン、ジペンタメチレンチウラムペンタサルファイド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0016】
上記硫黄系加硫剤(C)の配合量は、上記ポリマー((A)および(B)成分の合計)100重量部に対し、0.2〜1重量部の範囲であることが好ましい。すなわち、上記加硫剤の配合量が少なすぎると、充分な架橋構造が得られず、動倍率、耐へたり性が悪化する傾向がみられ、逆に上記加硫剤の配合量が多すぎると、耐熱性が低下する傾向がみられるからである。
【0017】
また、上記ポリマーおよび硫黄系加硫剤とともに用いられるモノメタクリル酸亜鉛(D)の配合量は、上記ポリマー((A)および(B)成分の合計)100重量部に対し、0.5〜10重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1〜6重量部の範囲である。すなわち、モノメタクリル酸亜鉛の含有割合が上記範囲よりも少ないと、所望の耐熱老化防止効果が得られず、逆に上記範囲を超えると、ゴム組成物の架橋状態が変化し、防振性や耐へたり性が悪化するからである。
【0018】
また、本発明の防振ゴム組成物においては、上記(A)〜(D)成分とともに、更に無機フィラーを含有すると、より補強性に優れるようになるため、好ましい。上記無機フィラーとしては、白色充填剤やカーボンブラックがあげられるが、特に補強性に優れることから、カーボンブラックが好ましく用いられる。
【0019】
上記カーボンブラックとしては、例えば、SAF級,ISAF級,HAF級,MAF級,FEF級,GPF級,SRF級,FT級,MT級等の種々のグレードのカーボンブラックが用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0020】
そして、上記カーボンブラックの配合量は、上記ポリマー((A)および(B)成分の合計)100重量部に対し、10〜140重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは20〜70重量部の範囲である。すなわち、上記カーボンブラックの配合量が少なすぎると、一定水準の補強性を満足できなくなるからであり、逆に上記カーボンブラックの配合量が多すぎると、動倍率が高くなったり、粘度が上昇して加工性が悪化するといった問題が生じるからである。
【0021】
また、本発明の防振ゴム組成物には、上記各成分に加えて、プロセスオイル、老化防止剤、加工助剤、加硫促進剤、反応性モノマー、発泡剤等を必要に応じて適宜配合しても差し支えない。なお、本発明においては、先に述べたように、加硫助剤として、モノメタクリル酸亜鉛(D)を必須成分としているが、それと併用して、例えば、モノメタクリル酸亜鉛以外のモノメタクリル酸金属塩(アルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、ジメタクリル酸金属塩(亜鉛塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化マグネシウム等の加硫助剤を配合することも可能である。
【0022】
そして、上記加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系,スルフェンアミド系,チウラム系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,グアニジン系,チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、架橋反応性に優れる点で、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0023】
上記加硫促進剤の配合量は、前記ポリマー((A)および(B)成分の合計)100重量部に対して、0.5〜7重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0024】
なお、上記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、特に架橋反応性に優れる点で、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)が好適に用いられる。
【0025】
また、上記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(BBS)、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド等があげられる。
【0026】
また、上記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等があげられる。
【0027】
上記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0028】
そして、上記老化防止剤の配合量は、前記ポリマー((A)および(B)成分の合計)100重量部に対して、1〜10重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは2〜5重量部の範囲である。
【0029】
上記プロセスオイルとしては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0030】
そして、上記プロセスオイルの配合量は、前記ポリマー((A)および(B)成分の合計)100重量部に対して、1〜50重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは3〜30重量部の範囲である。
【0031】
ここで、本発明の防振ゴム組成物は、その必須材料である(A)〜(D)成分、および必要に応じて上記列記したその他の材料を用いて、これらをニーダー,バンバリーミキサー,オープンロール,2軸スクリュー式撹拌機等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
【0032】
本発明の防振ゴム組成物は、高温(150〜170℃)で5〜30分間、加硫することにより防振ゴム(加硫体)となる。この防振ゴムは、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等の防振材料として、好適に用いられる。それ以外に、コンピューターのハードディスクの制振ダンパー、洗濯機等の一般家電製品の制振ダンパー、建築・住宅分野における建築用制震壁,制震(制振)ダンパー等の制震(制振)装置および免震装置の用途にも用いることができる。
【実施例】
【0033】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0034】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0035】
〔NR〕
天然ゴム
【0036】
〔BR〕
ブタジエンゴム(ニポール1220、日本ゼオン社製)
【0037】
〔SEBS〕
エチレンブロックを有する水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SOE L609、旭化成社製)
【0038】
〔酸化亜鉛〕
酸化亜鉛2種、堺化学工業社製
【0039】
〔ステアリン酸〕
ルーナックS30、花王社製
【0040】
〔老化防止剤(i)〕
オゾノン6C、精工化学社製
【0041】
〔老化防止剤(ii)〕
ノンフレックスRD、精工化学社製
【0042】
〔加硫助剤〕
モノメタクリル酸亜鉛(PRO11542、サートマー社製)
【0043】
〔ワックス〕
サンノック、大内新興化学社製
【0044】
〔カーボンブラック〕
旭♯50U(平均粒子径:70nm、CTAB比表面積:27m
2/g)、旭カーボン社製
【0045】
〔オイル〕
ナフテン系オイル(ダイアナプロセスNM−280、出光興産社製)
【0046】
〔加硫促進剤(i) 〕
N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)(ノクセラーCZ、大内新興化学社製)
【0047】
〔加硫促進剤(ii)〕
テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)(サンセラーTT、三新化学工業社製)
【0048】
〔加硫剤〕
硫黄、軽井沢精錬所社製
【0049】
[実施例1〜8、比較例1〜4]
上記各材料を、後記の表1および表2に示す割合で配合して混練することにより、防振ゴム組成物を調製した。なお、上記混練は、まず、加硫剤と加硫促進剤以外の材料を、バンバリーミキサーを用いて140℃で5分間混練し、ついで、加硫剤と加硫促進剤を配合し、オープンロールを用いて60℃で5分間混練することにより行った。
【0050】
このようにして得られた実施例および比較例の防振ゴム組成物を用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表1および表2に併せて示した。そして、全ての評価が「○」であるものを、総合評価「○」と表記し、一つでも「×」の評価があるものを、総合評価「×」と表記した。また、「×」の評価は全くないが、全ての評価が「○」でないものを、総合評価「△」と表記した。
【0051】
≪初期物性≫
各防振ゴム組成物を、160℃×20分の条件でプレス成形(加硫)して、厚み2mmのゴムシートを作製した。そして、このゴムシートから、JIS5号ダンベルを打ち抜き、このダンベルを用い、JIS K 6251に準拠して、その破断強度(TB)、破断伸び(EB)を測定した。そして、TBが17MPa以上でありEBが400%以上であるものを「○」と評価した。
【0052】
≪熱老化後の破断伸び変化率≫
上記作製したゴムシートを、100℃雰囲気下で500時間熱老化させた後、上記と同様にして破断伸び(EB)を測定し、初期(熱老化させる前)のゴムシートの破断伸びに対する、熱老化後の破断伸びの減少度合(熱老化後の破断伸びの変化率)(%)を算出した。そして、その減少度合が50%を超える(熱老化後の破断伸びの変化率が−50%よりもマイナスである)のものを「×」と評価し、その減少度合が50%以下(熱老化後の破断伸びの変化率が0〜−50%)のものを「○」と評価した。
【0053】
≪圧縮永久歪み≫
各防振ゴム組成物を、160℃×30分の条件でプレス成形(加硫)し、テストピースを作製した。つぎに、JIS K 6262に従い、上記テストピースを25%圧縮させたまま、100℃×500時間後の圧縮永久歪みを測定した。そして、この圧縮永久歪みの値が50%以下であるものを「○」と評価し、50%より大きく、60%以下のものを「△」と評価した。
【0054】
≪減衰性≫
各防振ゴム組成物を、160℃×30分の条件でプレス成形(加硫)し、テストピースを作製した。つぎに、JIS K 6385に準じて、周波数15Hzでの損失係数(tanδ)を求めた。そして、この損失係数(tanδ)の値が0.060以上であるものを「○」と評価し、0.060未満のものを「×」と評価した。
【0055】
≪動倍率≫
各防振ゴム組成物を、160℃×30分の条件でプレス成形(加硫)し、テストピースを作製した。このテストピースの動ばね定数(Kd100)および静ばね定数(Ks)を、それぞれJIS K 6394に準じて測定した。その値をもとに、動倍率(Kd100/Ks)を算出した。そして、この値が2.50以下であるものを「○」と評価し、2.50を超えるものを「×」と評価した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
上記表の結果から、実施例のゴム組成物は、防振ゴム組成物としての初期物性(TB、EB)に優れ、熱老化後の破断伸びの変化率、圧縮永久歪み特性に優れることから、耐熱性にも優れている。しかも、高減衰性と低動倍率との両立がなされている。
【0059】
これに対し、比較例1のゴム組成物は、SEBSを含有しておらず、実施例のゴム組成物よりも減衰性に劣る結果となった。比較例2のゴム組成物は、SEBSの含有量が少なすぎ、充分な減衰性が得られておらず、比較例3のゴム組成物は、SEBSの含有量が多すぎ、圧縮永久歪みや動倍率が悪くなる結果となった。比較例4のゴム組成物は、モノメタクリル酸亜鉛を含有しておらず、熱老化後の破断伸びが悪くなる結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の防振ゴム組成物は、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等の形成材料として、好適に用いられる。それ以外に、コンピューターのハードディスクの制振ダンパー、洗濯機等の一般家電製品の制振ダンパー、建築・住宅分野における建築用制震壁,制震(制振)ダンパー等の制震(制振)装置および免震装置の形成材料にも用いることができる。