特許第6546581号(P6546581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6546581廃水からの窒素の生物学的除去のためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546581
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】廃水からの窒素の生物学的除去のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20060101AFI20190705BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20190705BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20190705BHJP
   C02F 3/28 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   C02F3/34 101A
   C02F3/34 101C
   B01D21/02 E
   B01D21/30 E
   C02F3/34 101D
   C02F3/28 Z
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-508919(P2016-508919)
(86)(22)【出願日】2014年4月3日
(65)【公表番号】特表2016-518976(P2016-518976A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】NL2014050204
(87)【国際公開番号】WO2014171819
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2017年3月10日
(31)【優先権主張番号】13163989.0
(32)【優先日】2013年4月16日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513005305
【氏名又は名称】パクス アイ.ピー. ビー.ヴィ.
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス,ティム ルーカス ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ロッティ,トンマソ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ルースドレクト,マリヌス コーネリス マリア
(72)【発明者】
【氏名】クルイト,ジャンズ
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−033785(JP,A)
【文献】 特開2006−055739(JP,A)
【文献】 特開2001−293494(JP,A)
【文献】 特表2012−501845(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/110905(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00− 3/34
B01D 21/00−21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水からの、窒素の生物学的除去のためのプロセスであって、以下の工程:
(a)アンモニウムを含む廃水流を提供する工程;
(b)廃水流を、アナモックス細菌の中核およびアンモニア酸化細菌の外縁を有する顆粒を含む粒状汚泥を含有するリアクターに連続的に供給する工程;
(c)リアクター中の廃水を、5〜25℃の範囲の温度、0.4mg/L〜4.0mg/Lの範囲の廃水中の溶存酸素の濃度、および0.5時間〜1.5日の範囲のリアクター中の廃水の水理学的滞留時間を含むアンモニウム酸化条件の下で、アンモニウム酸化に供して、窒素を含むガス流と、処理廃水中に粒状汚泥および非粒状汚泥の分散物とを得る工程;ならびに
(d)得られた分散物を、粒状汚泥を含む流れと、処理廃水および非粒状汚泥を含む流れとに連続的に分離し、そして粒状汚泥を含む流れをリアクターに再循環し、そして非粒状汚泥をプロセスから排出する工程を包含し、
工程(c)の間、または工程(c)と(d)との間に、または工程(d)の間に、剪断が汚泥顆粒に適用され、
ここで粒状汚泥は、水理学的滞留時間の少なくとも10倍の滞留時間をリアクター中で有し、そしてここでリアクター中の非粒状汚泥の滞留時間は、水理学的滞留時間に等しいか、または多くとも3倍であり、
工程(d)が、多数の平行傾斜板を備える傾斜板沈殿槽中で分散物を分離することを包含し、分散物が、3〜15m/hの範囲の上向き速度にて傾斜板間を流動される、
プロセス。
【請求項2】
工程(a)において提供される廃水流が、生物学的酸素要求量(BOD)および窒素含量を有し、BODおよび窒素含量の指数が2.0を下回る、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
非粒状汚泥の滞留時間が、水理学的滞留時間の1〜2倍の範囲にある、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
分散物が、4〜12m/hの範囲の上向き速度にて傾斜板間を流動される、請求項に記載のプロセス。
【請求項5】
50〜500s−1の範囲の剪断速度にて、剪断が適用される、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
剪断が、リアクター中の廃水を通して、ガスを流動させることにより、汚泥顆粒に適用される、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
3〜20m/hの範囲のガス空塔速度にて、廃水を通してガスを流動させる、請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
ガスが、リアクター中の廃水を通して、5〜15m/hの範囲のガス空塔速度にて流動される、請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
工程(c)において得られたガス流が、リアクターに再循環されて、廃水を通して流動されたガスの少なくとも一部分を形成する、請求項7または8に記載のプロセス。
【請求項10】
水理学的滞留時間が、1時間〜1日の範囲にある、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
工程(c)における溶存酸素の濃度が、1.0〜3.0mg/Lの範囲にある、請求項1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
リアクターが、5を下回る直径に対する高さの比を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
アンモニウムを含む廃水流が、産業または生活の廃水流からBODを除去することにより提供される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
産業または家庭の廃水から除去されたBODが、嫌気性消化に供されてバイオガスを得る、請求項13に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、25℃を下回る温度で、アナモックス(anammox)細菌の中核およびアンモニア酸化細菌の外縁を有する顆粒を含む粒状汚泥を含有するリアクターにおいて、廃水から窒素を生物学的に除去するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
廃水の硝化および嫌気性アンモニウム酸化(anaerobic ammonium oxidation(「anammox」))の組み合わせについてのプロセスは、当該分野において公知であり、そして、典型的に、中温にて、すなわち25〜40℃の範囲において、アンモニウムが豊富な廃水流を処理するために使用される。このプロセスにおいて、アンモニウムの半量は、以下の反応式に従って、アンモニア酸化細菌により先ず酸化されて、亜硝酸イオンを形成する:
【0003】
4NH+3O→2NH+2NO+4H+2HO (1)
【0004】
得られたアンモニウムおよび亜硝酸イオンは、次いで、以下の反応式に従って、アナモックス細菌により窒素ガスに変換される:
【0005】
NH+NO→N+2HO (2)
【0006】
単一のリアクターにおいて両方のプロセス工程が行われることが知られ、ここではアンモニア酸化細菌およびアナモックス細菌は、アナモックス細菌の中核およびアンモニア酸化細菌の外縁を有する密集した汚泥顆粒を形成する。このようなプロセスは、例えば、非特許文献1において記載される。
【0007】
アナモックス細菌は、増殖速度が遅く、そしてそれゆえ、廃水の硝化および嫌気性アンモニウム酸化の組み合わせが、約30℃の温度を有する廃水流に適用される。さらに、中温では、アンモニア酸化細菌の最大増殖速度は、亜硝酸酸化細菌の最大増殖速度よりも大きく、従って、亜硝酸から硝酸への所望されない酸化を回避する。
【0008】
しかし、廃水の硝化および嫌気性アンモニウム酸化の組み合わせが、より低い温度、すなわち25℃を下回る、好ましくは10と20℃との間にて行われ得る場合、生活廃水は典型的にこのようなより低い温度にて入手され得るので、これは有利であり得る。低い温度での、廃水の硝化および嫌気性アンモニウム酸化の組み合わせが提案されている。非特許文献1において、二ユニット構成および単一ユニット構成における、低い温度での、希釈廃水流の硝化および嫌気性アンモニウム酸化の組み合わせについての適切な条件が研究された。20℃で、単一のリアクターにおいて、硝化および嫌気性アンモニウム酸化の組み合わせを行うことが可能であるということが見出された。リアクターは、5.5の高さ/直径比を有した。適用されたプロセス条件下で、アナモックス細菌の中核およびアンモニア酸化細菌の外縁を有する密集した汚泥顆粒が形成される。非特許文献1において開示されるプロセスは、バッチ態様において操作される。
【0009】
特許文献1は、7と25℃と間の温度にて、低酸素濃度(1.0mg/L未満の溶存酸素)で、曝気タンクにおいてアンモニウム含有廃水を生物学的に精製するためのプロセスを開示し、ここでは25℃を上回る温度にて、曝気タンク中のアナモックス細菌の量を連続的に増加するために、汚泥水のアンモニア除去において形成された余剰な汚泥が、消化槽から曝気タンクに供給される。特許文献1のプロセスにおいて、汚泥の一部は、非粒状汚泥の除去を伴わずに、曝気タンクに再循環される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2011/110905号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.R.Vazquez−Padinら、Water Science&Technology(2011)、1282−1288頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当該分野において、産業規模にて行われ得る、低い温度での、硝化および嫌気性アンモニウム酸化の組み合わせについての、ならびに非希釈廃水流についての、改良プロセスが必要とされ、そしてここではアナモックス細菌の連続的な増加は必要とされない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
粒状汚泥の滞留時間が、水理学的滞留時間の少なくとも10倍であり、そしてリアクター中に形成される任意の非粒状顆粒汚泥の滞留時間が、水理学的滞留時間の多くとも3倍であり、ならびに水理学的滞留時間が0.5時間〜1.5日の範囲にあるような条件にて、アナモックス細菌およびアンモニア酸化細菌を伴う粒状汚泥を含む単一のリアクター中で、硝化および嫌気性アンモニウム酸化の組み合わせのプロセスを操作することにより、比較的低い直径に対する高さの比を備えるリアクターであっても、およびアナモックス細菌の増加を伴わなくても、プロセスは、25℃を下回る温度にて操作され得ることが見出された。粒状汚泥の滞留時間が、水理学的滞留時間よりも実質的に高く、および非粒状顆粒の滞留時間が、水理学的滞留時間よりもそれほど高くはないか、またはこれに類似する条件は、粒状汚泥を含み、および非粒状汚泥を含まないかまたは非常に少量を含む画分と、非粒状汚泥を含む画分とに、液体リアクター流出物を分離することによって得られる。このような分離は、例えば、傾斜板沈殿槽を使用し、そしてリアクター溶出物の比較的高い上向き速度で、沈殿槽を操作することにより得られる。分離された粒状汚泥はリアクターに再循環され、そして非粒状顆粒はプロセスから廃棄される。
【0014】
従って、本発明は、廃水からの窒素の生物学的除去のためのプロセスを提供し、以下の工程:
(a)アンモニウムを含む廃水流を提供する工程;
(b)廃水流を、アナモックス細菌の中核およびアンモニア酸化細菌の外縁を有する顆粒を含む粒状汚泥を含有するリアクターに連続的に供給する工程;
(c)リアクター中の廃水を、5〜25℃の範囲の温度、0.4mg/L〜4.0mg/Lの範囲の廃水中の溶存酸素の濃度、および0.5時間〜1.5日の範囲のリアクター中の廃水の水理学的滞留時間を含むアンモニウム酸化条件の下で、アンモニウム酸化に供して、窒素を含むガス流と、処理廃水中に粒状汚泥および非粒状汚泥の分散物とを得る工程;ならびに
(d)得られた分散物を、粒状汚泥を含む流れと、処理廃水および非粒状汚泥を含む流れとに連続的に分離し、そして粒状汚泥を含む流れをリアクターに再循環し、そして非粒状汚泥をプロセスから排出する工程を含み、
ここで粒状汚泥は、水理学的滞留時間の少なくとも10倍の滞留時間をリアクター中で有し、そしてここでリアクター中の任意の非粒状汚泥の滞留時間は、水理学的滞留時間に等しいか、または多くとも3倍である。
【0015】
本発明に従うプロセスの利点は、硝酸酸化細菌および従属栄養酸化細菌が、リアクターから選択的に除去されるが、アナモックス細菌およびアンモニア酸化細菌を伴う粒状汚泥の滞留時間は増加されることである。結果として、所望されない硝酸への亜硝酸の酸化は最小にされる。さらに、亜硝酸酸化細菌および従属栄養酸化細菌の選択的除去は、プロセスが、比較的高い溶存酸素濃度にて操作されることを許容し、このことは、硝化工程における変換速度に有利である。プロセスのさらなる利点は、任意の流入固体が典型的にまた、非粒状汚泥を有する液体リアクター溶出物から分離されることである。
【0016】
好ましくは、本発明に従うプロセスは、工程(c)のリアクターにおいて、高い剪断の条件下で操作される。このような高い剪断は、汚泥顆粒における非粒状の、すなわち綿毛状の、バイオマスの増殖が抑えられるか、または最小にされるという利点を有し、そしてそれとともに、工程(d)における粒状汚泥と非粒状汚泥との間の分離が有利である。あるいは、工程(c)におけるアンモニウム酸化リアクターからの液体流出物は、例えば、工程(c)と(d)との間に、または分離工程(d)の間に、リアクターの外側で剪断に供され得る。
【0017】
本発明に従うプロセスにおいて、アンモニウムを含む廃水流は工程(a)において提供される。提供された廃水流は、好ましくは、100mg/Lを下回る、より好ましくは25〜75mg/Lの範囲の窒素含量を有する。廃水流は、有機物質を含み、生物学的酸素要求量[Biological Oxygen Demand(BOD)]として表わされる。BODは、本明細書中で、20℃にて5日間のインキュべーションにわたって、好気性微生物により、廃水に存在する有機物質を分解するために必要とされる、廃水1リットル当たりの溶存酸素の量(mgにおける)として規定される。好ましくは、提供される廃水流は、多くとも100mg/L、より好ましくは多くとも70mg/L、さらにより好ましくは多くとも50mg/LのBODを有する。好ましくは、提供される廃水流は、BODおよび窒素含量の指数が、2.0を下回る、好ましくは1.5を下回る、より好ましくは0.5〜1.0の範囲であるような、BODおよび窒素含量を有する。
【0018】
工程(b)において、廃水流は、アナモックス細菌の中核およびアンモニア酸化細菌の外縁を有する顆粒を含む粒状汚泥を含有するリアクターに連続して供給される。
【0019】
工程(c)において、廃水は、次いで、リアクター中で、アンモニウム酸化条件下、アンモニウム酸化に供される。アンモニウム酸化条件は、5〜25℃の範囲の温度、0.4mg/L〜4.0mg/Lの範囲の廃水中の溶存酸素の濃度、および0.5時間〜1.5日の範囲の水理学的滞留時間を含む。これらの条件下で、アンモニウムの一部分は、アンモニア酸化細菌によって、式(1)に従って亜硝酸イオンに酸化され、そして形成された亜硝酸イオンは、アンモニウムと反応して窒素を形成する。これらの条件下で、典型的にまた、いくつかの亜硝酸酸化細菌が増殖し、これは亜硝酸の一部を硝酸に酸化し、そして従属栄養酸化細菌は、BODを二酸化炭素に酸化する。このアンモニウム酸化工程において、窒素、二酸化炭素、および酸素を含有するガス流、ならびに処理廃水中に粒状汚泥および非粒状汚泥の分散物が得られる。粒状汚泥は、アナモックス細菌の中核およびアンモニア酸化細菌の外縁を有する顆粒を含むのに対して、亜硝酸酸化細菌および従属栄養酸化細菌は、典型的に、非粒状の、すなわち綿毛状の汚泥として存在する。ガス流は、通常、リアクターにおいて、必要に応じてリアクター中に、またはリアクターのすぐ下流に組み込まれた気体/液体分離装置の手段によって、液相から分離する。ガス流はリアクターから廃棄される。
【0020】
さらなる工程(d)において、工程(c)において得られた処理廃水中の粒状汚泥および非粒状汚泥の分散物は、粒状汚泥を含む流れと、処理廃水および非粒状汚泥を含む流れとに連続的に分離される。このように得られた粒状汚泥を含む流れは、好ましくは、非粒状汚泥を含まないか、または少量のみを含み、より好ましくは、その流れ中の汚泥の総重量に基づいて、多くとも5重量%の非粒状汚泥、さらにより好ましくは、多くとも1重量%の非粒状汚泥、なおより好ましくは、多くとも0.5重量%を含む。粒状汚泥を含む流れは、粒状汚泥の比較的大きな滞留時間を維持するために、リアクターに再循環される。好ましくは、粒状汚泥を含む流れ全体がリアクターに再循環される。
【0021】
処理廃水および非粒状汚泥を含む流れは、好ましくは、粒状汚泥を含まないか、または少量のみを含む。より好ましくは、この流れは、流れの総容量に基づいて、5容量%未満、より好ましくは1容量%未満、さらにより好ましくは0.5容量%未満の粒状汚泥を含む。
【0022】
非粒状汚泥は、プロセスから、必要に応じて処理廃水および非粒状汚泥を含む流れから分離された後に、廃棄される。このような分離の場合において、本質的に非粒状汚泥がない処理廃水は、工程(c)に、または前処理工程、例えば、工程(a)において提供される廃水を前処理するための前沈殿工程に、部分的に再循環され得る。
【0023】
本発明に従うプロセスにおいて、工程(d)における分離および再循環は、粒状汚泥が、水理学的滞留時間の少なくとも10倍の滞留時間をリアクター中で有するように、およびリアクター中の任意の非粒状汚泥の滞留時間が、水理学的滞留時間に等しいか、または多くとも3倍であるように操作される。好ましくは、粒状汚泥の滞留時間は、水理学的滞留時間の少なくとも30倍、より好ましくは少なくとも50倍、さらにより好ましくは少なくとも100倍である。粒状汚泥の滞留時間は、水理学的滞留時間の200倍、またはさらに500倍以上であり得る。好ましくは、粒状汚泥の滞留時間は、10〜100日の範囲、より好ましくは20〜80日、さらにより好ましくは40〜60日の範囲にある。
【0024】
リアクターにおける非粒状汚泥の滞留時間は、好ましくは、水理学的滞留時間の1〜2倍の範囲、より好ましくは1.0〜1.5倍の範囲にある。最も好ましくは、非粒状汚泥の滞留時間は、可能な限り水理学的滞留時間に近似する。
【0025】
リアクター中での亜硝酸酸化細菌および従属栄養酸化細菌の過剰な増殖を回避するために、水理学的滞留時間は、1.5日よりも長くはなく、好ましくは1日よりも長くはなく、より好ましくは12時間よりも長くはない。十分な窒素除去を達成するために、水理学的滞留時間は、少なくとも0.5時間、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間である。好ましくは、水理学的滞留時間は、1時間〜1日、より好ましくは2時間から12時間の範囲にある。
【0026】
本明細書中で水理学的滞留時間への言及は、リアクター中での廃水の滞留時間に対してである。
【0027】
粒状汚泥および非粒状汚泥についての所望の滞留時間は、大部分の、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは99%の粒状汚泥がリアクターに再循環され得るが、大部分の、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは99重量%の非粒状汚泥がプロセスから廃棄されるように、工程(d)において粒状汚泥と非粒状汚泥との間の厳密な分離を生じることにより達成される。
【0028】
このような厳密な分離を生じるために、任意の適切な液体/固体分離装置が使用され得る。好ましくは、工程(d)における分離は傾斜板沈殿槽を使用して行われる。傾斜板沈殿槽は多数の平行傾斜板を備え、その間で液体が上方に流動する。液体中の固体は、傾斜した平行な板上に沈殿し、そして沈殿槽の底に配置された容器、例えばホッパーに滑り落ちることを許容される。工程(d)が、液体の比較的大きな上向き流動にて、傾斜板沈殿槽において行われる場合、粒状汚泥と非粒状汚泥との間の厳密な分離が達成されることが見出された。それゆえ、好ましくは、工程(d)は、多数の平行傾斜板を備える傾斜板沈殿槽中で分散物を分離することを包含し、ここで分散物は、3〜15m/h、より好ましくは4〜12m/h、さらにより好ましくは5〜9m/hの範囲の上向き速度で、傾斜板間を流動される。
【0029】
粒状汚泥と非粒状汚泥間との間の分離、ならびにそれとともに粒状汚泥および非粒状汚泥についての所望の滞留時間は、剪断を汚泥顆粒に適用することにより、さらに改良され得ることが見出された。このような剪断は、リアクター中で、すなわち工程(c)の間、分離工程(d)の間、または工程(c)と(d)との間、すなわち分離工程(d)の前に、リアクターの液体溶出物に対して適用され得る。好ましくは、剪断は、50〜500s−1、より好ましくは80〜300s−1、さらにより好ましくは100〜200s−1の範囲の剪断速度にて、汚泥顆粒に適用される。
【0030】
剪断は、工程(c)の間、例えば、リアクター中の廃水を通して、好ましくは上向き方向にガスを流動することにより、リアクター中の顆粒に適用され得る。好ましくは、剪断は、リアクター中の廃水を通して、3〜20m/h、より好ましくは5〜15m/h、さらにより好ましくは8〜12m/hの範囲のガス空塔速度にて、ガスを流動することにより、汚泥顆粒に適用される。廃水を通して流動されるガスは、例えば空気のような任意の適切なガス流であり得る。リアクターに供給される空気の量は、溶存酸素濃度に対する要件により制限されることが理解される。リアクター中で廃水を通してガスを流動することによって、所望の溶存酸素濃度を超えることなく所望の剪断を達成するために、工程(c)において得られたガス流の一部は、リアクターに再循環され得、廃水を通して流動される気体の少なくとも一部分を形成する。
【0031】
あるいは、剪断は、分離工程(d)の間に、より好ましくは工程(c)と(d)との間に、顆粒に適用され得る。剪断は、例えば、工程(c)と工程(d)との間に、工程(d)において分離装置に分散物を供給する前に、液体リアクター排出物、すなわち、処理廃水中の粒状汚泥および非粒状汚泥の分散物を通してガスを流動することによって適用され得る。工程(c)後に剪断が適用される場合、これは、溶存酸素の量がプロセスのこの段階において臨界ではないので、分散物を通して空気を流動することにより適切になされ得る。
【0032】
本発明に従うプロセスの利点は、リアクター中の亜硝酸酸化細菌および従属栄養酸化細菌の濃度が低く維持されることである。それゆえ、工程(c)における廃水中の溶存酸素の濃度は、例えば国際公開第2011/110905号のような、亜硝酸酸化細菌および従属栄養酸化細菌のより高い濃度を伴うプロセスにおけるよりも高くあり得る。工程(c)における溶存酸素の濃度は、0.4〜4.0mg/L、好ましくは0.5〜3.5mg/L、より好ましくは1.0〜3.0mg/L、さらにより好ましくは1.2〜2.5mg/Lの範囲にある。
【0033】
リアクターは、任意の適切な直径を有し得、好ましくは、リアクターは5を下回る、より好ましくは3を下回る、さらにより好ましくは1を下回る、直径に対する高さの比を有する。比較的低い直径に対する高さの比は、リアクターについての建設費用を削減し、そしてリアクターに供給される任意の空気について、より少ない圧力が必要とされる。
【0034】
アンモニウムを含む廃水流は、アンモニウムが除去されるべき任意の廃水流、例えば生活廃水または産業廃水であり得る。窒素が、例えば2.0を上回るまたは1.0を上回る比較的高いBOD/Nを伴う廃水流から除去される場合、プロセスは、アンモニウムを含有しおよびより低いBOD/Nを有する廃水を提供するために、例えば、前沈殿工程の手段により、BODをこのような流れから除去するための前処理工程を、好ましくはさらに含む。
【0035】
BOD除去のための前沈殿は当該分野において周知であり、および典型的に、1つ以上の水盤または集泥装置を廃水が通過することを包含し、ここで固体粒子は、水盤の底部に沈殿する。当該分野において公知の任意の適切な前沈殿プロセスが使用され得る。固体沈殿物は、前沈殿に供された廃水のBODの比較的大きな部分を含む。本発明に従うプロセスにおいて、固体沈殿物は、典型的に主要な汚泥として言及され、好ましくは嫌気性消化に供されて、バイオガスを得る。BOD除去工程を前処理として有するさらなる利点は、粒状汚泥の密度よりも高いか、またはこれに匹敵する密度を有する廃水流中の固体化合物がまた、アンモニウム酸化リアクターに廃水流を供給する前に除去されることである。