(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1に係る薄膜トランジスタの構造を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る比較例1の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図3】本発明の実施例1に係る比較例2の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図4】本発明の実施例1に係る比較例3の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図5】本発明の実施例1に係る比較例4の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図6】本発明の実施例1の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図7】本発明の実施例2に係る薄膜トランジスタの構造を示す図である。
【
図8】本発明の実施例2に係る比較例5の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図9】本発明の実施例2に係る比較例6の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図10】本発明の実施例2の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図11】本発明の実施例3に係る薄膜トランジスタの構造を示す図である。
【
図12】本発明の実施例3に係る比較例7の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図13】本発明の実施例3の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図14】本発明の実施例3の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線が削除される安定性のテスト結果である。
【
図15】本発明の実施例4に係る比較例8の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図16】本発明の実施例4の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図17】本発明の実施例4に係る薄膜トランジスタの構造を示す図である。
【
図18】本発明の実施例5に係る比較例9の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図19】本発明の実施例5の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図20】本発明の実施例5に係る比較例9の薄膜トランジスタの出力特性のテスト結果である。
【
図21】本発明の実施例5の薄膜トランジスタの出力特性のテスト結果である。
【
図22】本発明の実施例6に係る比較例10の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図23】本発明の実施例6に係る比較例11の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図24】本発明の実施例6の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図25】本発明の実施例7に係る比較例12の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図26】本発明の実施例7の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図27】本発明の実施例8に係る比較例14の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図28】本発明の実施例8の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図29】本発明の実施例9に係る比較例15の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図30】本発明の実施例9に係る比較例16の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図31】本発明の実施例9の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図32】本発明の実施例10に係る比較例17の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図33】本発明の実施例10の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図34】本発明の実施例11の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線のテスト結果である。
【
図35】本発明の実施例12に係るデジタル回路の構造を示す図である。
【
図36】本発明の実施例12に係る比較例18のデジタル回路の入力特性曲線及び出力特性曲線である。
【
図37】本発明の実施例12のデジタル回路の入力特性曲線及び出力特性曲線である。
【
図38】本発明の実施例12及び比較例18のデジタル回路は入力周波数が0.1KHzである時の周波数出力応答結果である。
【
図39】本発明の実施例12及び比較例18のデジタル回路は入力周波数が1KHzである時の周波数出力応答結果である。
【
図40】
図39の単一周期の周波数の出力波形を拡大する図である。
【
図41】本発明の実施例13のデジタル回路の構造を示す図である。
【
図42】本発明の実施例14のデジタル回路の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0013】
発明者は、マグネトロンスパッタリング法によって製造された酸化物を誘電層として得られたヒステリシス曲線と従来の誘電層を採用して得られたヒステリシス曲線との方向が相反することを発現した。本発明は、従来の誘電層の材料が正常のヒステリシス材料であり、マグネトロンスパッタリング法によって製造された酸化物が特異のヒステリシス材料であることを定義する。
【0014】
(実施例1)
図1を参照すると、本発明の実施例1は、薄膜トランジスタ100を提供する。薄膜トランジスタ100は、ボトムゲート型(Bottom Gate Type) 薄膜トランジスタであり、基板101、ゲート電極102、誘電層103、半導体層104、ソース電極105及びドレイン電極106を含む。ゲート電極102が基板101の表面に設置される。誘電層103が基板101に設置され、ゲート電極102を被覆する。半導体層104が誘電層103の基板101から離れる表面に設置される。ソース電極105及びドレイン電極106が誘電層103の基板101から離れる表面に間隔をあけて設置され、半導体層104とそれぞれ電気的に接続される。半導体層104の、ソース電極105とドレイン電極106との間に位置する領域に、チャンネルが形成される。
【0015】
基板101は、ゲート電極102、誘電層103、半導体層104、ソース電極105及びドレイン電極106を支持することに用いられる。基板101の形状及びサイズが制限されなく、実際の応用によって選択できる。基板101の材料は、ガラス、ポリマー、セラミックス、石英などの絶縁材料である。基板101も絶縁層が設置された半導体基板又は導電基板である。本実施例において、基板101は、二酸化珪素の絶縁層が設置されたシリコン基板である。
【0016】
誘電層103は、マグネトロンスパッタリング法によって製造された酸化物層であり、ゲート電極102と直接に接触される。誘電層103の厚さが10ナノメートル〜1000ナノメートルである。酸化物層の材料がAl
2O
3などの金属酸化物又は二酸化珪素などのシリコン酸化物である。本実施例において、誘電層103は、マグネトロンスパッタリングによって製造され、厚さが40ナノメートルである二酸化珪素層である。
【0017】
半導体層104は、複数のナノ半導体材料を含む。ナノ半導体材料は、グラフェン、カーボンナノチューブ、MOS
2、WS
2、MnO
2、ZnO、MoSe
2、MoTe
2、TaSe
2、NiTe
2、Bi
2Te
3などである。ナノ半導体材料は、成長、転移、沈積又は塗布などの方法によって、誘電層103の表面に形成される。半導体層104は、単層又は少ない層のナノ半導体材料であり、例えば、1層〜5層である。本実施例において、半導体層104は、単層のカーボンナノチューブを沈積することによって、形成された単層のカーボンナノチューブネットで製造される。
【0018】
ゲート電極102、ソース電極105及びドレイン電極106は、導電材料によって製造される。その製造方法は、化学蒸着法、電子ビーム蒸発法、熱沈積法又はマグネトロンスパッタリング法などである。ゲート電極102、ソース電極105及びドレイン電極106は、導電フィルムであることが好ましい。導電フィルムの厚さが0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。導電フィルムの材料は、金属、合金、酸化インジウムスズ(ITO)フィルム、酸化アンチモンスズ(ATO)、銀ペースト、導電重合体又は導電カーボンナノチューブなどである。金属は、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、ネオジム、パラジウム又はセシウムなどである。合金は、金属の合金である。本実施例において、ゲート電極102、ソース電極105及びドレイン電極106の材料は、チタン及び金の複合金属層であり、その厚さが40ナノメートルである。
【0019】
薄膜トランジスタ100の製造方法は、下記のステップを含む。
【0020】
ステップS11:基板101を提供する。
【0021】
ステップS12:基板101の表面にゲート電極102を沈積する。
【0022】
ステップS13:基板101の表面にマグネトロンスパッタリング法によって、酸化物層を製造し、酸化物層を誘電層103として、酸化物層がゲート電極102を被覆し、ゲート電極102と直接に接触される。
【0023】
ステップS14:誘電層103の表面に半導体層104を製造して、半導体層104が複数のナノ材料を含む。
【0024】
ステップS15:誘電層103の表面にソース電極105及びドレイン電極106を製造して、ソース電極105及びドレイン電極106が半導体層104と電気的に接続される。
【0025】
本実施例では、ステップS13において、基板101の表面にマグネトロンスパッタリング法によって、SiO
2層を製造する。マグネトロンスパッタリング法に用いられるスパッタリングターゲットとサンプルとの間の距離が50ミリメートル〜120ミリメートルであり、マグネトロンスパッタリングする前の真空度が10
−5Paより小さく、マグネトロンスパッタリングするパワーが150W〜200Wであり、キャリアガスがアルゴンガスであり、マグネトロンスパッタリングする圧力が0.2Pa〜1Paである。本実施例において、異なるプロセス変量を採用して、厚さが10ナノメートル、20ナノメートル、100ナノメートル、500ナノメートル、1000ナノメートルであるSiO
2層をそれぞれ製造し、これらのSiO
2層を誘電層103とする。これにより、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層は特異のヒステリシス材料であることが表明される。
【0026】
マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層が誘電層103とされることが、薄膜トランジスタ100のヒステリシス曲線にもたらす特異の影響を研究するために、本実施例が正常のヒステリシス材料を採用する比較例1〜4をそれぞれ提供する。比較例と本実施例の区別は、誘電層103の材料及び製造方法だけである。比較例1は、電子ビーム蒸発法によって製造され、厚さが20ナノメートルであるSiO
2層を誘電層103とする。比較例2は、電子ビーム蒸発法によって製造され、厚さが20ナノメートルであるAl
2O
3層を誘電層103とする。比較例3は、ALD法によって製造され、厚さが20ナノメートルであるAl
2O
3層を誘電層103とする。比較例4は、ALD法によって製造され、厚さが20ナノメートルであるHfO
2層を誘電層103とする。比較結果は表1を参照する。
【0027】
表1 実施例1と比較例のプロセス変量及びテスト結果の比較
【0028】
本実施例における薄膜トランジスタ100をテストする時には、半導体層104が空気の中に暴露される。比較例1〜4及び本実施例における薄膜トランジスタ100がP型である。
図2〜
図6を参照すると、それぞれ、比較例1〜4及び本実施例における薄膜トランジスタ100のヒステリシス曲線のテスト結果である。
図2〜
図5は、それぞれ、複数の比較サンプルのテスト結果である。更に表1を参照して、比較例1〜4における薄膜トランジスタ100のヒステリシス曲線は、反時計回り方向が表現され、本実施例における薄膜トランジスタ100のヒステリシス曲線は、時計回り方向が表現される。比較例1及び本実施例から、ボトムゲート型薄膜トランジスタ100において、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層を誘電層103とすると、特異のヒステリシス曲線を得ることが分かる。
【0029】
(実施例2)
図7を参照すると、実施例2は、薄膜トランジスタ100Aを提供する。薄膜トランジスタ100Aは、基板101、ゲート電極102、誘電層103、半導体層104、ソース電極105及びドレイン電極106を含む。半導体層104が基板101の表面に設置される。ソース電極105及びドレイン電極106が基板101の表面に間隔をあけて設置され、半導体層104とそれぞれ電気的に接続される。半導体層104の、ソース電極105とドレイン電極106との間に位置する領域に、チャンネルが形成される。誘電層103が半導体層104の基板101から離れる表面に設置され、半導体層104、ソース電極105及びドレイン電極106を被覆する。ゲート電極102は、誘電層103の基板101から離れる表面に設置される。
【0030】
実施例2における薄膜トランジスタ100Aの構造と実施例1における薄膜トランジスタ100の構造は基本的に同じであり、その区別は、薄膜トランジスタ100Aがトップゲート型(Top Gate Type)薄膜トランジスタであることである。
【0031】
薄膜トランジスタ100Aの製造方法は、下記のステップを含む。
【0032】
ステップS21:基板101を提供する。
【0033】
ステップS22:基板101の表面に半導体層104を製造し、半導体層104が複数のナノ材料を含む。
【0034】
ステップS23:基板101の表面にソース電極105とドレイン電極106を製造し、ソース電極105及びドレイン電極106を半導体層104と電気的に接続させる。
【0035】
ステップS24:半導体層104の基板101から離れる表面に、マグネトロンスパッタリング法によって、酸化物層を製造し、酸化物層を誘電層103として、酸化物層が半導体層104、ソース電極105及びドレイン電極106を被覆する。
【0036】
ステップS25:誘電層103の基板101から離れる表面に、ゲート電極102を製造し、ゲート電極102を誘電層103と直接に接触させる。
【0037】
マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層が誘電層103とされることが、薄膜トランジスタ100Aのヒステリシス曲線にもたらす特異の影響を研究するために、本実施例が正常のヒステリシス材料を採用する比較例5及び比較例6をそれぞれ提供する。比較例と本実施例の区別は、誘電層103の材料及び製造方法だけである。比較例5は、電子ビーム蒸発法によって製造され、厚さが20ナノメートルであるSiO
2層を誘電層103とする。比較例6は、熱酸化法によって製造され、厚さが20ナノメートルであるY
2O
3層を誘電層103とする。比較結果は表2を参照する。
【0038】
表2 実施例2と比較例のプロセス変量及びテスト結果の比較
【0039】
本実施例における薄膜トランジスタ100Aをテストする。比較例5、比較例6及び本実施例における薄膜トランジスタ100AがP型である。
図8及び
図9を参照すると、比較例5及び比較例6における薄膜トランジスタ100Aのヒステリシス曲線は、反時計回り方向が表現される。
図10を参照すると、本実施例における薄膜トランジスタ100Aのヒステリシス曲線は、時計回り方向が表現される。即ち、ヒステリシスが特異である。比較例5、比較例6及び本実施例から、トップゲート型薄膜トランジスタ100Aにおいて、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層を誘電層103とすると、特異のヒステリシス曲線を得、且つ薄膜トランジスタ100Aの極性が変化しないことが分かる。
【0040】
(実施例3)
図11を参照すると、本発明の実施例3は、薄膜トランジスタ100Bを提供する。薄膜トランジスタ100Bは、ボトムゲート型薄膜トランジスタであり、基板101、ゲート電極102、誘電層103、半導体層104、ソース電極105及びドレイン電極106を含む。ゲート電極102が基板101の表面に設置される。誘電層103が基板101に設置され、ゲート電極102を被覆する。半導体層104が誘電層103の基板101から離れる表面に設置される。ソース電極105及びドレイン電極106が誘電層103の基板101から離れる表面に間隔をあけて設置され、半導体層104とそれぞれ電気的に接続される。半導体層104の、ソース電極105とドレイン電極106との間に位置する領域に、チャンネルが形成される。
【0041】
実施例3における薄膜トランジスタ100Bの構造と実施例1における薄膜トランジスタ100の構造は基本的に同じであり、その区別は、誘電層103が二層の構造であり、積層して設置された第一サブ誘電層1031及び第二サブ誘電層1032を含むことである。第一サブ誘電層1031が特異のヒステリシス材料層であり、即ち、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層である。第二サブ誘電層1032が正常のヒステリシス材料層である。
【0042】
薄膜トランジスタ100Bの製造方法は、以下のステップを含む。
【0043】
ステップS31:基板101を提供する。
【0044】
ステップS32:基板101の表面にゲート電極102を沈積する。
【0045】
ステップS33:基板101の表面にマグネトロンスパッタリング法によって、SiO
2層を製造し、SiO
2層を第一サブ誘電層1031として、SiO
2層がゲート電極102を被覆し、ゲート電極102と直接に接触される。
【0046】
ステップS34:第一サブ誘電層1031の表面に正常のヒステリシス材料層を製造し、正常のヒステリシス材料層を第二サブ誘電層1032として、二層の構造を有する誘電層103を形成する。
【0047】
ステップS35:誘電層103の表面に半導体層104を製造し、半導体層104が複数のナノ材料を含む。
【0048】
ステップS36:誘電層103の表面にソース電極105及びドレイン電極106を製造し、ソース電極105及びドレイン電極106が半導体層104と電気的に接続される。
【0049】
本実施例において、第二サブ誘電層1032の正常のヒステリシス材料層がALD法によって沈積され、厚さが20ナノメートルであるAl
2O
3層である。マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2の特異のヒステリシス材料層が正常のヒステリシス材料層のヒステリシス曲線にもたらす影響を研究するために、実施例が比較例7を提供する。比較例7と本実施例の区別は、第一サブ誘電層1031がALD法によって沈積され、厚さが20ナノメートルであるAl
2O
3の正常のヒステリシス材料層であり、第二サブ誘電層1032が特異のヒステリシス材料層であることだけである。比較結果は表3を参照する。
【0050】
表3 実施例3と比較例のプロセス変量及びテスト結果の比較
【0051】
本実施例における薄膜トランジスタ100Bをテストする。比較例7及び本実施例における薄膜トランジスタ100BがP型である。
図12及び
図4を参照すると、比較例7における薄膜トランジスタ100Bのヒステリシス曲線は、比較例3における薄膜トランジスタのヒステリシス曲線と基本的に同じである。これによって、比較例7において、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2が薄膜トランジスタ100Bのヒステリシス曲線に影響をもたらさない。
図13を参照すると、実施例3における薄膜トランジスタ100Bのヒステリシス曲線が顕著に減少され、ひいては削除される。比較例7と実施例3を比較して、特異のヒステリシス材料層がゲート電極102と直接に接触し、チャンネルを調製する作用をもたらすことで、特異のヒステリシス材料層が特異のヒステリシス曲線を形成できることが分かる。実施例3において、特異のヒステリシス材料層の時計回り方向のヒステリシス曲線と正常のヒステリシス材料層の反時計回り方向のヒステリシス曲線とが互いに相殺するので、薄膜トランジスタのヒステリシス曲線を削除する作用をもたらす。
【0052】
更に、本発明は、実施例3の薄膜トランジスタ100Bのヒステリシス曲線が削除される安定性をテストする。
図14を参照すると、60日が経った後、実施例3の薄膜トランジスタ100Bのヒステリシス曲線がこの前のヒステリシス曲線と基本的に合う。これによって、この構造が薄膜トランジスタのヒステリシス曲線を安定的に削除できる。
【0053】
(実施例4)
実施例4の薄膜トランジスタ100Bの構造は、実施例3の薄膜トランジスタ100Bの構造と基本的に同じである。その区別は、第一サブ誘電層1031が特異のヒステリシス材料層であり、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層であり、第二サブ誘電層1032が正常のヒステリシス材料層であり、電子ビーム蒸発法によって製造されたSiO
2層であることである。
【0054】
本実施例は、比較例8を提供する。比較例8と本実施例との区別は、第一サブ誘電層1031が正常のヒステリシス材料層であり、第二サブ誘電層1032が特異のヒステリシス材料層であることだけである。比較結果は表4を参照する。
【0055】
表4 実施例4と比較例のプロセス変量及びテスト結果の比較
【0056】
本実施例における薄膜トランジスタ100Bを測量する。比較例8及び本実施例における薄膜トランジスタ100BがP型である。
図15を参照すると、比較例8における薄膜トランジスタが明らかなヒステリシス曲線を有する。
図16を参照すると、実施例4における薄膜トランジスタ100Bのヒステリシス曲線が顕著に減少され、ひいては削除される。本実施例、比較例1及び比較例8から、電子ビーム蒸発法によって製造されたSiO
2層が正常のヒステリシス材料であり、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層が特異のヒステリシス材料層であり、且つ特異のヒステリシス材料層がゲート電極102と直接に接触し、チャンネルを調製する作用をもたらすことで、特異のヒステリシス材料層が特異のヒステリシス曲線を形成できることが分かる。
【0057】
(実施例5)
図17を参照すると、実施例5は、薄膜トランジスタ100Cを提供する。薄膜トランジスタ100Cは、トップゲート型薄膜トランジスタであり、基板101、ゲート電極102、誘電層103、半導体層104、ソース電極105及びドレイン電極106を含む。半導体層104が基板101の表面に設置される。ソース電極105及びドレイン電極106が基板101の表面に間隔をあけて設置され、半導体層とそれぞれ電気的に接続される。半導体層104の、ソース電極105とドレイン電極106との間に位置する領域に、チャンネルが形成される。誘電層103が半導体層104の基板101から離れる表面に設置され、半導体層104、ソース電極105及びドレイン電極106を被覆する。ゲート電極102は、誘電層103の基板101から離れる表面に設置される。
【0058】
実施例5における薄膜トランジスタ100Cの構造と実施例2における薄膜トランジスタ100Aの構造は基本的に同じである。その区別は、誘電層103が二層の構造であり、積層して設置された第一サブ誘電層1031及び第二サブ誘電層1032を含むことである。第一サブ誘電層1031が特異のヒステリシス材料層であり、即ち、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層である。第二サブ誘電層1032が正常のヒステリシス材料層である。
【0059】
薄膜トランジスタ100Cの製造方法は、以下のステップを含む。
【0060】
ステップS51:基板101を提供する。
【0061】
ステップS52:基板101の表面に半導体層104を製造し、半導体層104が複数のナノ材料を含む。
【0062】
ステップS53:基板101の表面にソース電極105とドレイン電極106を製造し、ソース電極105及びドレイン電極106を半導体層104と電気的に接続させる。
【0063】
ステップS54:半導体層104の基板101から離れる表面に、正常のヒステリシス材料層を製造し、正常のヒステリシス材料層を第二サブ誘電層1032として、第二サブ誘電層1032が半導体層104、ソース電極105及びドレイン電極106を被覆する。
【0064】
ステップS55:第二サブ誘電層1032の基板101から離れる表面に、マグネトロンスパッタリング法によって、SiO
2層を製造し、SiO
2層を第一サブ誘電層1031として、第一サブ誘電層1031が第二サブ誘電層1032を被覆し、誘電層103を形成する。
【0065】
ステップS56:誘電層103の基板101から離れる表面に、ゲート電極102を製造し、ゲート電極102を第一サブ誘電層1031と直接に接触させる。
【0066】
本実施例において、第二サブ誘電層1032の正常のヒステリシス材料層が熱酸化法によって製造され、厚さが5ナノメートルであるY
2O
3である。マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2の特異のヒステリシス材料層が、正常のヒステリシス材料層のヒステリシス曲線にもたらす影響を研究するために、本実施例が比較例9を提供する。比較例9と本実施例の区別は、第一サブ誘電層1031が熱酸化法によって製造され、厚さが20ナノメートルであるY
2O
3の正常のヒステリシス材料であり、第二サブ誘電層1032が特異のヒステリシス材料層であることだけである。比較結果は表5を参照する。
【0067】
表5 実施例5と比較例のプロセス変量及びテスト結果の比較
【0068】
本実施例における薄膜トランジスタ100Cを測量する。比較例9及び本実施例における薄膜トランジスタ100CがP型である。
図18を参照すると、比較例9における薄膜トランジスタが明らかなヒステリシス曲線を有する。
図19を参照すると、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2の特異のヒステリシス材料層がゲート電極102と直接に接触する時には、薄膜トランジスタ100Cのヒステリシス曲線が顕著に減少され、ひいては削除される。
【0069】
更に、比較例9及び本実施例における薄膜トランジスタ100Cの出力特性をテストする。出力特性曲線は、ゲート電極の電圧VGによって、漏れ電流IDが漏れ電圧VDに従って変化する曲線である。
図20を参照すると、比較例9の薄膜トランジスタ100Cがヒステリシスを有するので、ゲート電極の電圧VGが0Vから−3Vまで走査する曲線と−3Vから0Vまで走査する曲線は、重なり合わない。
図21を参照すると、本実施例の薄膜トランジスタ100Cがヒステリシスを有しないので、ゲート電極の電圧VGの走査方向が異なっても、対応するID−VD曲線は、基本的に重なり合う。これは、薄膜トランジスタにおけるデジタル回路及びセンサーなどの方面の応用に対して、重要である。
【0070】
(実施例6)
実施例6における薄膜トランジスタ100Cの構造と実施例5における薄膜トランジスタ100Cの構造は基本的に同じである。その区別は、第一サブ誘電層1031が特異のヒステリシス材料層であり、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層であり、第二サブ誘電層1032が正常のヒステリシス材料層であり、ALD法によって製造されたAl
3O
2層であることである。空気を遮断し、及び固定電荷が混在するので、実施例6における薄膜トランジスタ100Cがバイポーラー薄膜トランジスタである。
【0071】
本実施例が比較例10及び比較例11を提供する。比較例10と本実施例の区別は、誘電層103が
図7に示すような単層構造であり、且つ誘電層103がALD法によって製造されたAl
3O
2層であることだけである。比較例11と本実施例の区別は、第一サブ誘電層1031が正常のヒステリシス材料層であり、第二サブ誘電層1032が特異のヒステリシス材料層であることだけである。比較結果は表6を参照する。
【0072】
表6 実施例6と比較例のプロセス変量及びテスト結果の比較
【0073】
本実施例における薄膜トランジスタ100Cを測量する。比較例10、比較例11及び本実施例における薄膜トランジスタ100Cがバイポーラー薄膜トランジスタである。
図22及び
図23を参照すると、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2の特異のヒステリシス材料層がゲート電極102と間隔をあけて設置される時には、薄膜トランジスタのヒステリシス曲線に影響をもたらさない。
図24を参照すると、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2の特異のヒステリシス材料層がゲート電極102と直接に接触して設置される時には、薄膜トランジスタ100Cのヒステリシス曲線が顕著に減少され、ひいては削除される。
【0074】
(実施例7)
実施例7における薄膜トランジスタ100Cの構造と実施例5における薄膜トランジスタ100Cの構造は基本的に同じである。その区別は、第一サブ誘電層1031が特異のヒステリシス材料層であり、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層であり、第二サブ誘電層1032が正常のヒステリシス材料層であり、PECVD法によって製造されたSi
3N
4層であることである。
【0075】
本実施例が比較例12及び比較例13を提供する。比較例12と本実施例の区別は、誘電層103が
図7に示すような単層構造であり、且つ誘電層103がPECVD法によって製造されたSi
3N
4層であることだけである。比較例13と本実施例の区別は、第一サブ誘電層1031が正常のヒステリシス材料層であり、第二サブ誘電層1032が特異のヒステリシス材料層であることだけである。比較結果は表7を参照する。
【0076】
表7 実施例7と比較例のプロセス変量及びテスト結果の比較
【0077】
本実施例における薄膜トランジスタ100Cを測量する。比較例12及び本実施例における薄膜トランジスタ100CがN型である。比較例13における薄膜トランジスタがバイポーラー薄膜トランジスタである。比較例13における薄膜トランジスタがN型の薄膜トランジスタではないので、本実施例の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線と比較例13の薄膜トランジスタのヒステリシス曲線とを比較する意義はない。P型の薄膜トランジスタとN型の薄膜トランジスタの種類が同じでないので、P型の薄膜トランジスタの正常のヒステリシスが反時計回り方向であり、N型の薄膜トランジスタの正常のヒステリシスが時計回り方向であるが、ヒステリシス曲線の本質が同じである。
図25及び
図26を参照すると、比較例12のPECVD法によって製造された単層のSi
3N
4の正常のヒステリシス材料層を誘電層103とする薄膜トランジスタと比べて、本実施例のマグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2の特異のヒステリシス材料層を第一サブ誘電層1031として、且つ特異のヒステリシス材料層がゲート電極102と直接に接触して設置される薄膜トランジスタ100Cのヒステリシス曲線が顕著に減少され、ひいては削除される。
【0078】
実施例8における薄膜トランジスタ100Cの構造と実施例5における薄膜トランジスタ100Cの構造は基本的に同じである。その区別は、第一サブ誘電層1031が特異のヒステリシス材料層であり、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層であり、第二サブ誘電層1032が正常のヒステリシス材料層であり、電子ビーム蒸発法によって製造されたSiO
2層であることである。
【0079】
本実施例が比較例14を提供する。比較例14と本実施例の区別は、第一サブ誘電層1031が正常のヒステリシス材料層であり、第二サブ誘電層1032が特異のヒステリシス材料層であることだけである。比較結果は表8を参照する。
【0080】
表8 実施例6と比較例のプロセス変量及びテスト結果の比較
【0081】
本実施例における薄膜トランジスタ100Cを測量する。比較例14及び本実施例における薄膜トランジスタ100CがP型である。
図27を参照すると、比較例14における薄膜トランジスタが明らかなヒステリシス曲線を有する。
図28を参照すると、実施例8の薄膜トランジスタ100Cのヒステリシス曲線が顕著に減少され、ひいては削除される。
【0082】
(実施例9)
実施例9における薄膜トランジスタ100Aの構造と実施例2における薄膜トランジスタ100Aの構造は基本的に同じである。その区別は、半導体層104が二硫化モリブデンという二次元のナノ材料で製造されることである。
【0083】
本実施例が比較例15及び比較例16を提供する。比較例15と本実施例の区別は、薄膜トランジスタ100の誘電層103が熱酸化法によって製造されたSiO
2層であることだけである。比較例16と本実施例の区別は、薄膜トランジスタ100の誘電層103がALD法によって製造されたAl
3O
2層であることだけである。比較結果は表9を参照する。
【0084】
表9 実施例9と比較例のプロセス変量及びテスト結果の比較
【0085】
本実施例における薄膜トランジスタ100Aを測量する。比較例15、比較例16及び本実施例における薄膜トランジスタ100AがN型である。
図29及び
図30を参照すると、比較例15及び比較例16の薄膜トランジスタ100Aの正常のヒステリシス曲線が時計回り方向である。
図31を参照すると、本実施例の薄膜トランジスタ100Aのヒステリシス曲線が反時計回り方向であり、即ち、特異のヒステリシス曲線である。これによって、他の低次元のナノ半導体材料のフィルムを半導体層としても、マグネトロンスパッタリング法によって製造された酸化物層を誘電層として、薄膜トランジスタが依然として特異のヒステリシス曲線を有する。
【0086】
(実施例10)
実施例10における薄膜トランジスタ100Cの構造と実施例5における薄膜トランジスタ100Cの構造は基本的に同じである。その区別は、第一サブ誘電層1031が特異のヒステリシス材料層であり、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2層であり、第二サブ誘電層1032が正常のヒステリシス材料層であり、ALD法によって製造されたAl
3O
2層であることである。
【0087】
本実施例が比較例17を提供する。比較例17と本実施例の区別は、第一サブ誘電層1031が正常のヒステリシス材料層であり、第二サブ誘電層1032が特異のヒステリシス材料層であることだけである。比較結果は表10を参照する。
【0088】
表10 実施例10と比較例のプロセス変量及びテスト結果の比較
【0089】
本実施例における薄膜トランジスタ100Cを測量する。比較例17及び本実施例における薄膜トランジスタ100CがN型である。
図32を参照すると、比較例17における薄膜トランジスタが明らかなヒステリシス曲線を有し、該ヒステリシス曲線が比較例16のヒステリシス曲線と基本的に同じである。
図33を参照すると、実施例10の薄膜トランジスタ100Cのヒステリシス曲線が顕著に減少され、ひいては削除される。
【0090】
(実施例11)
実施例11における薄膜トランジスタ100の構造と実施例1における薄膜トランジスタ100の構造は基本的に同じであり、その区別は、誘電層103がマグネトロンスパッタリング法によって製造されたAl
2O
3層であるだけである。本実施例が異なるマグネトロンスパッタリングのプロセス変量を採用して、厚さが10ナノメートル、20ナノメートル、100ナノメートル、500ナノメートル、1000ナノメートルであるAl
2O
3層をそれぞれ製造して、これらのAl
2O
3層を誘電層とする。その結果は、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたAl
2O
3層が特異のヒステリシス材料層であることが表明される。本実施例の薄膜トランジスタ100が比較例2及び比較例3の薄膜トランジスタと比較して、結果は表11を参照する。
【0091】
表11 実施例11と比較例のプロセス変量及びテスト結果の比較
【0092】
本実施例における薄膜トランジスタ100を測量する。本実施例における薄膜トランジスタ100がP型である。
図34、
図3及び
図4を参照すると、本実施例の薄膜トランジスタ100のヒステリシス曲線が時計回り方向であり、即ち、特異のヒステリシス曲線である。理解できることは、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたAl
2O
3層が特異のヒステリシス材料層であり、特異のヒステリシス材料層と他の正常のヒステリシス材料層が二層の誘電層103が形成され、ゲート電極102を特異のヒステリシス材料層と直接に接触させ、ヒステリシス曲線が減少され、ひいては削除される作用をもたらす。
【0093】
(実施例12)
図35を参照すると、実施例12は、ヒステリシス曲線が減少され、又は削除された薄膜トランジスタ100Cを採用するデジタル回路10を提供する。デジタル回路10は、二つのバイポーラートップゲート型薄膜トランジスタ100Cを含み、各薄膜トランジスタ100Cは、基板101、ゲート電極102、誘電層103、半導体層104、ソース電極105及びドレイン電極106を含む。誘電層103が二層の構造であり、積層して設置された第一サブ誘電層1031及び第二サブ誘電層1032を含む。二つのバイポーラーの薄膜トランジスタ100Cのゲート電極102が電気的に接続され、且つ二つのバイポーラーの薄膜トランジスタ100Cのソース電極105又はドレイン電極106が電気的に接続される。理解できることは、本実施例のデジタル回路10がインバーターであることである。
【0094】
具体的には、二つのバイポーラー薄膜トランジスタ100Cは、一つの基板101を共用し、一つのドレイン電極106を共用し、且つ一つのゲート電極102を共用する。二つバイポーラーの薄膜トランジスタ100Cの半導体層104は、連続するカーボンナノチューブ層をパターン化することによって製造される。二つバイポーラーの薄膜トランジスタ100Cの第一サブ誘電層1031又は第二サブ誘電層1032は、一回沈積することによって製造された連続する構造である。第一サブ誘電層1031は、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2の特異のヒステリシス材料層である。第二サブ誘電層1032は、ALD法によって製造されたAl
2O
3の正常のヒステリシス材料層である。
【0095】
本発明は、比較例18を提供する。比較例18と本実施例との区別は、第一サブ誘電層1031が正常のヒステリシス材料層であり、第二サブ誘電層1032が特異のヒステリシス材料層であることだけである。比較結果は表12を参照する。
【0096】
表12 実施例12と比較例のプロセス変量及びテスト結果の比較
【0097】
本実施例は、デジタル回路10の入力特性及び出力特性をテストする。
図36を参照すると、比較例18のデジタル回路10の転換閾値の差が1V以上である。
図37を参照すると、本実施例のデジタル回路10の転換閾値の差が0.1V程度である。
【0098】
本実施例は、デジタル回路10の周波数応答特性をテストする。比較例18及び本実施例のデジタル回路10の開態電流(On state current)が同じであり、各々の部品の移動度が同じであることを確保するようにする。これによって、ヒステリシスが周波数応答にもたらす影響を比較する。
図38は、入力周波数が0.1KHzである時の比較例18及び本実施例のデジタル回路10の出力応答である。
図39は、入力周波数が1KHzである時の比較例18及び本実施例のデジタル回路10の出力応答である。
図38から、入力周波数が0.1KHzである時には、比較例18のデジタル回路10は低レベルのもとで安定しないが、本実施例のデジタル回路10から出力する反相矩形波の性能が優れることが分かる。
図39から、入力周波数が1KHzである時には、本実施例のデジタル回路10は依然として正常に作動できるが、比較例18のデジタル回路10は低レベルで完全ではなく、立ち上がりエッジと立ち下りエッジの遅延時間が本実施例のデジタル回路10の立ち上がりエッジと立ち下りエッジの遅延時間より長いことが分かる。
【0099】
図40を参照すると、
図39の単一周期の周波数の出力波形を拡大することによって、本実施例のデジタル回路10の立ち上がりエッジと立ち下りエッジの遅延時間が比較例18のデジタル回路10の立ち上がりエッジと立ち下りエッジの遅延時間より短いことが分かる。カットオフ動作周波数の計算公式f=1/(2×max(tr,tf))によって、一つの部品の遅延時間が類似する時には、本実施例のデジタル回路10のカットオフ動作周波数は、比較例18のデジタル回路10のカットオフ動作周波数より、5倍近く高いことが得られる。上記の実験結果は、薄膜トランジスタのヒステリシスがデジタル回路の安定性及び周波数応答特性に大きな影響をもたらすことが説明される。従って、ヒステリシスを削除することが必要である。しかも、本発明は、ヒステリシスを削除することによって、デジタル回路10の電気性能を限り無く改善できる。
【0100】
(実施例13)
図41を参照すると、本実施例は、ヒステリシス曲線が減少され、又は削除された薄膜トランジスタ100Cを採用するデジタル回路10Aを提供する。デジタル回路10Aは、N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100C及びP型のボトムゲート型薄膜トランジスタ100Cを含む。N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cは、基板101、ゲート電極102、誘電層103a、半導体層104a、ソース電極105a及びドレイン電極106を含む。誘電層103aが二層の構造であり、積層して設置された第一サブ誘電層1031及び第二サブ誘電層1032aを含む。P型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cは、基板101、ゲート電極102、誘電層103b、半導体層104b、ソース電極105b及びドレイン電極106を含む。誘電層103bが二層の構造であり、積層して設置された第一サブ誘電層1031及び第二サブ誘電層1032bを含む。N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cのゲート電極102がP型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cのゲート電極102と電気的に接続され、N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cのソース電極105aが、P型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cのソース電極105bと電気的に接続され、或いはN型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cのドレイン電極106がP型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cのドレイン電極106と電気的に接続される。本実施例において、デジタル回路10もインバーターである。
【0101】
具体的には、N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100C及びP型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cが同じ平面に位置して、一つの基板101を共用して、一つのドレイン電極106を共用して、且つ一つのゲート電極102を共用する。N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100C及びP型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cの半導体層104は、連続するカーボンナノチューブ層をパターン化することによって製造できる。N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100C及びP型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cの第一サブ誘電層1031は、一回沈積することによって製造された連続する構造である。N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cの第二サブ誘電層1032aとP型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cの第二サブ誘電層1032bとが異なる正常のヒステリシス材料層を採用する。第一サブ誘電層1031は、マグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2の特異のヒステリシス材料層である。第二サブ誘電層1032aは、PECVD法によって製造されたSi
3N
4の正常のヒステリシス材料層である。第二サブ誘電層1032bは、熱酸化法によって製造されたY
2O
3の正常のヒステリシス材料層である。
【0102】
(実施例14)
図42を参照すると、本実施例は、ヒステリシス曲線が減少され、又は削除された薄膜トランジスタ100B及び薄膜トランジスタ100Cを採用するデジタル回路10Bを提供する。デジタル回路10Bは、N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100C及びP型のボトムゲート型薄膜トランジスタ100Bを含む。N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cは、基板101、ゲート電極102、誘電層103a、半導体層104a、ソース電極105a及びドレイン電極106aを含む。誘電層103aが二層の構造であり、積層して設置された第一サブ誘電層1031a及び第二サブ誘電層1032aを含む。P型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Bは、ゲート電極102、誘電層103b、半導体層104b、ソース電極105b及びドレイン電極106bを含む。誘電層103bが二層の構造であり、積層して設置された第一サブ誘電層1031b及び第二サブ誘電層1032bを含む。N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cのゲート電極102がP型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Bのゲート電極102と電気的に接続され、N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cのソース電極105aが、P型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Bのソース電極105bと電気的に接続され、或いはN型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cのドレイン電極106aがP型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Bのドレイン電極106bと電気的に接続される。本実施例において、デジタル回路10もインバーターである。
【0103】
具体的には、N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100C及びP型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Bが積層して設置され、一つの基板101を共用して、一つのゲート電極102を共用する。N型のトップゲート型薄膜トランジスタ100Cが直接に基板101の表面に設置される。誘電層103a及び誘電層103bがスルーホールを有して、ドレイン電極106bがスルーホールまで延伸し、ドレイン電極106aと電気的に接続される。P型の薄膜トランジスタ100Bが第一サブ誘電層1031aの表面に設置される。第一サブ誘電層1031a及び第一サブ誘電層1031bがマグネトロンスパッタリング法によって製造されたSiO
2の特異のヒステリシス材料層である。第二サブ誘電層1032aがPECVD法によって製造されたSi
3N
4の正常のヒステリシス材料層である。第二サブ誘電層1032bがALD法によって製造されたAl
2O
3の正常のヒステリシス材料層である。
【0104】
本発明は、下記のような優れた点を有する。第一に、マグネトロンスパッタリング法によって製造された酸化物を誘電層として、特異のヒステリシス曲線を有する薄膜トランジスタが得ることができる。第二に、正常のヒステリシス材料及び特異のヒステリシス材料である二層の誘電層を採用する薄膜トランジスタがヒステリシス曲線を減少し、ひいては削除することができる。第三に、ヒステリシス曲線が減少され、ひいては削除された薄膜トランジスタで製造されたデジタル部品は、優れた電気性能を有する。