特許第6546661号(P6546661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6546661生理学的測定におけるアーティファクトを除去するデバイス及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546661
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】生理学的測定におけるアーティファクトを除去するデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20190705BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   A61B5/02 310F
   A61B5/11 200
   A61B5/02ZDM
【請求項の数】40
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-534215(P2017-534215)
(86)(22)【出願日】2014年12月23日
(65)【公表番号】特表2018-500114(P2018-500114A)
(43)【公表日】2018年1月11日
(86)【国際出願番号】SG2014000615
(87)【国際公開番号】WO2016105275
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, シユン サニー
(72)【発明者】
【氏名】カサムソック, キティポング
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−016188(JP,A)
【文献】 特表2012−518515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの生理学的信号を取得するステップと、
前記ユーザーの動きを表し、ユーザーの生理学的信号に、時間的に対応する動きデータを取得するステップと、
前記動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出するステップと、
前記2つ以上の動きサイクルにそれぞれ対応する前記生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成するステップと、
前記雑音基準を用いて前記生理学的信号をフィルタリングするステップと、
を含む、生理学的測定におけるアーティファクトを除去する方法。
【請求項2】
前記動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、前記動きデータを帯域通過フィルタリングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、前記フィルタリングされた動きデータに対して微分を実行して、前記フィルタリングされた動きデータの導関数を計算することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、前記フィルタリングされた動きデータの前記導関数においてピーク又は谷を検出することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、2つのピーク又は谷の間の前記フィルタリングされた動きデータの前記導関数のセグメントをそれぞれの動きサイクルとして検出することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記それぞれのセグメントに関連付けられた前記2つのピーク又は谷は、1つおきの次の連続したピーク又は谷である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記生理学的信号の前記セグメントに基づいて前記雑音基準を作成することは、動きアーティファクトを強化することを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記生理学的信号の前記セグメントに基づいて前記雑音基準を作成することは、生理学的成分を抑制することを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記生理学的信号の前記セグメントに基づいて前記雑音基準を作成することは、前記生理学的信号の前記セグメントを時間において正規化することを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記生理学的信号の前記セグメントに基づいて前記雑音基準を作成することは、前記生理学的信号の前記正規化されたセグメントの平均を位相ロックアーティファクト成分として取得することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生理学的信号の前記正規化されたセグメントの前記平均を取得することは、前記生理学的信号の前記正規化されたセグメント間の異相成分を抑制することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生理学的信号の前記正規化されたセグメントの前記平均を取得することは、前記生理学的信号の前記正規化されたセグメント間の同相成分を強化することを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記生理学的信号の前記セグメントに基づいて前記雑音基準を作成することは、前記位相ロックアーティファクト成分を、前記生理学的信号の前記それぞれのセグメントに対応するように再スケーリングすることを更に含む、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記生理学的信号の前記セグメントに基づいて前記雑音基準を作成することは、それぞれの動きサイクルウィンドウに対応する前記それぞれの再スケーリングされた位相ロックアーティファクト成分をともに連結又はスティッチングすることを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記取得された対応する動きデータは、単軸動き信号、2軸動き信号又は多軸動き信号を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記2つ以上の動きサイクルを検出することは、前記単軸動き信号、前記2軸動き信号又は前記多軸動き信号のうちの1つ以上に基づいている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記雑音基準の前記作成のために検出される前記動きサイクルの数を設定することを更に含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記数を設定することはユーザー入力を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記数を前記設定することは、前記動きデータに基づいて前記動きの強度を求めることを含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記雑音基準を用いて前記生理学的信号をフィルタリングすることは、最小平均二乗(LMS)アルゴリズム、又は再帰的最小二乗(RLS)アルゴリズムを適用することを含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ユーザーの生理学的信号を取得する第1のセンサーと、
前記ユーザーの動きを表し、ユーザーの生理学的信号に、時間的に対応する動きデータを取得する第2のセンサーと、
前記動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出し、該2つ以上の動きサイクルにそれぞれ対応する前記生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成し、該雑音基準を用いて前記生理学的信号をフィルタリングするプロセッサと、
を備える、生理学的測定におけるアーティファクトを除去するデバイス。
【請求項22】
前記動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、前記動きデータを帯域通過フィルタリングすることを含む、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、前記フィルタリングされた動きデータに対して微分を実行して、前記フィルタリングされた動きデータの導関数を計算することを更に含む、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、前記フィルタリングされた動きデータの前記導関数においてピーク又は谷を検出することを更に含む、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、2つのピーク又は谷の間の前記フィルタリングされた動きデータの前記導関数のセグメントをそれぞれの動きサイクルとして検出することを更に含む、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記それぞれのセグメントに関連付けられた前記2つのピーク又は谷は、1つおきの次の連続したピーク又は谷である、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記生理学的信号の前記セグメントに基づいて前記雑音基準を作成することは、動きアーティファクトを強化することを含む、請求項21〜26のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項28】
前記生理学的信号の前記セグメントに基づいて前記雑音基準を作成することは、生理学的成分を抑制することを含む、請求項21〜27のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項29】
前記生理学的信号の前記セグメントに基づいて前記雑音基準を作成することは、前記生理学的信号の前記セグメントを時間において正規化することを含む、請求項21〜28のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項30】
前記生理学的信号の前記セグメントに基づいて前記雑音基準を作成することは、前記生理学的信号の前記正規化されたセグメントの平均を位相ロックアーティファクト成分として取得することを更に含む、請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
前記生理学的信号の前記正規化されたセグメントの前記平均を取得することは、前記生理学的信号の前記正規化されたセグメント間の異相成分を抑制することを含む、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記生理学的信号の前記正規化されたセグメントの前記平均を取得することは、前記生理学的信号の前記正規化されたセグメント間の同相成分を強化することを含む、請求項30又は31に記載のデバイス。
【請求項33】
前記生理学的信号の前記セグメントに基づいて前記雑音基準を作成することは、前記位相ロックアーティファクト成分を、前記生理学的信号の前記それぞれのセグメントに対応するように再スケーリングすることを更に含む、請求項30〜32のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項34】
前記生理学的信号の前記セグメントに基づいて前記雑音基準を作成することは、それぞれの動きサイクルウィンドウに対応する前記それぞれの再スケーリングされた位相ロックアーティファクト成分をともに連結又はスティッチングすることを更に含む、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記取得された対応する動きデータは、単軸動き信号、2軸動き信号又は多軸動き信号を含む、請求項21〜34のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項36】
前記2つ以上の動きサイクルを検出することは、前記単軸動き信号、前記2軸動き信号又は前記多軸動き信号のうちの1つ以上に基づいている、請求項35に記載のデバイス。
【請求項37】
前記雑音基準の前記作成のために検出される前記動きサイクルの数を設定するように構成された前記プロセッサを更に備える、請求項21〜36のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項38】
前記数を設定することはユーザー入力を含む、請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
前記数を前記設定することは、前記動きデータに基づいて前記動きの強度を求めることを含む、請求項37又は38に記載のデバイス。
【請求項40】
前記雑音基準を用いて前記生理学的信号をフィルタリングすることは、最小平均二乗(LMS)アルゴリズム、又は再帰的最小二乗(RLS)アルゴリズムを適用することを含む、請求項21〜39のいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、生理学的測定におけるアーティファクトを除去するデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理学的センサーは、一般に、動きアーティファクト(motion artifacts:モーションアーティファクト)に対して非常に高感度である。そのようなセンサーの一例は、フォトプレチスモグラフィ(photoplethysmography:光電式容積脈波記録法)(PPG)センサーである。PPGセンサーは、発光ダイオード及び光検出器に依拠して、心拍数及び血中酸素飽和レベル等の種々のパラメーターを監視するのに用いることができるPPG信号を生成する。したがって、測定ユニットが動きアーティファクトによって破損されるPPG信号を利用することは望ましくない。
【0003】
デバイスからのPPG信号内に動きアーティファクトを検出する1つの方法は、加速度計(ACC)センサー、好ましくは3軸ACCを組み込んで、動きが存在するか否かを検出することである。3軸ACCセンサーを用いると、デバイスは、動きが各軸にどのように沿っているのかをより具体的に検知することができ、したがって、ACCセンサーの出力は、PPG信号における動きアーティファクトを示す基準として用いることができるとともに、それに応じてPPG信号を補正するのに用いることができる。
【0004】
ACCによって捕捉された動き信号を用いた適応フィルタリングは、動きによって歪められたPPGデータからアーティファクトを除去する将来性のある方法を提供する。しかしながら、ACC信号がPPG歪みと相関しない場合があり、そのような場合に、PPGの信号品質は、ACC信号を雑音基準として用いてフィルタリングした後に悪化する。
【0005】
特許文献1は、心拍単位又は秒単位でACC信号から導出された対応する動き特性を用いてPPG信号を最初にラベル付けすることによるPPG信号動きアーティファクト除去の方法を開示している。この文献は、許容可能な動き特性を用いてラベル付けされたPPG測定値が、更なる処理のために選択され、最後に、動きを含んでいないとラベル付けされたPPGデータを平均することによって、動きを含んでいないPPG測定値が生成されることを更に開示している。
【0006】
特許文献2は、ユーザー入力又はACC信号による推論のいずれかを通じてユーザーの活動状態を最初に求めることによるPPG信号動きアーティファクト除去の方法を開示している。ユーザーが活動に従事している場合、適応フィルターが、ACC信号及びPPG信号の双方に共通の唯一の成分である動きアーティファクトに基づいて、ACC信号からPPG信号を予測する。
【0007】
特許文献3は、PPG心拍数モニターデバイスの第1の発光ダイオード(LED)を用いてPPG信号を捕捉することと、PPG心拍数モニターデバイスの第2のLEDを用いて基準信号を捕捉することであって、第2のLEDの波長は、第1のLEDの波長を補完するものであることと、この基準信号を用いてPPG信号から動き雑音を除去することであって、動き雑音が補償されたPPG信号が生成されることと、この動き雑音が補償されたPPG信号を用いて心拍数を推定することとによるPPG信号動きアーティファクト除去の方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2014020484号
【特許文献2】米国特許出願公開第20140276119号
【特許文献3】米国特許出願公開第20140213863号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態は、生理学的測定におけるアーティファクトを除去する少なくとも代替のシステム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、ユーザーの生理学的信号を取得するステップと、前記ユーザーの動きを表す対応する動きデータを取得するステップと、前記動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出するステップと、前記2つ以上の動きサイクルにそれぞれ対応する前記生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成するステップと、前記雑音基準を用いて前記生理学的信号をフィルタリングするステップとを含む、生理学的測定におけるアーティファクトを除去する方法が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、ユーザーの生理学的信号を取得する第1のセンサーと、前記ユーザーの動きを表す対応する動きデータを取得する第2のセンサーと、前記動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出し、該2つ以上の動きサイクルにそれぞれ対応する前記生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成し、該雑音基準を用いて前記生理学的信号をフィルタリングするプロセッサとを備える、生理学的測定におけるアーティファクトを除去するデバイスが提供される。
【0012】
本発明の実施形態は、当業者には、単に例示として、図面と併せて下記の記載からよりよく理解されるとともに容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一例示の実施形態による生理学的測定におけるアーティファクトを除去する方法を示すフローチャートである。
図2】例示の実施形態による生理学的測定におけるアーティファクトを除去する方法の詳細を示すフローチャートである。
図3】例示の実施形態による生理学的測定におけるアーティファクトを除去する方法の詳細を示すフローチャートである。
図4a)】例示の実施形態における取得された3軸ACC信号Ax、Ay及びAzを示すグラフである。
図4b)】例示の実施形態における3軸ACC信号と同時に記録される取得されたPPG信号を示すグラフである。
図5a)】例示の実施形態における動きサイクルの検出を示すグラフである。
図5b)】例示の実施形態におけるPPG信号のセグメント化を示すグラフである。
図6】例示の実施形態における位相ロック(phase-locked)アーティファクト成分を示すグラフである。
図7】例示の実施形態におけるそれぞれの動きサイクルに従って、再スケーリングされた位相ロックアーティファクト成分を連結したものを示すグラフである。
図8a)】一例示の実施形態における、腕の振りを歩行状態に類似するようにした装着者の手首から記録されたPPG信号を示すグラフである。
図8b)】従来技術の雑音基準としてACC信号を用いた適応フィルタリングによるアーティファクト除去後の図8a)のPPG信号を示すグラフである。
図8c)】一例示の実施形態に従って取得された雑音基準を用いたアーティファクト除去後の図8a)のPPG信号を示すグラフである。
図8d)】装着者の静止した他方の手の人差し指から記録されたPPG信号を示すグラフである。
図9】一例示の実施形態による腕時計の形態のウェアラブルデバイスを備えるアセンブリを示す概略図である。
図10】一例示の実施形態によるウェアラブルデバイスを備えるアセンブリを示す概略ブロック図である。
図11図9のウェアラブルデバイスの反射モードにおける測定の好ましいLED−PD構成を示す概略図である。
図12】1つの実施形態による、生理学的測定におけるアーティファクトを除去する方法を示すフローチャートである。
図13】1つの実施形態による、生理学的測定におけるアーティファクトを除去するデバイスを示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態は、適応フィルタリングのための、律動的な動きの下でPPGにおける動きアーティファクトと好ましくは良好に相関する雑音基準を求める方法及びシステムを提供する。
【0015】
換言すれば、本発明の実施形態は、律動的な身体の動きに起因した生理学的測定における不要なアーティファクトを取り除く方法を提供することができる。具体的に言えば、本発明の一実施形態は、統合された3軸ACCを有するウェアラブルセンサーからのPPG信号から動きアーティファクトを除去する方法に関する。ACC信号から、デバイスは、より具体的には、ユーザーの活動に基づいてユーザーの動きサイクルを検出し、PPGデータの位相ロックアーティファクト成分に基づいて雑音基準を作成することができ、このため、作成された雑音基準は、ユーザーの動きの或るレベルの基準とすることができ、それに応じてPPG信号を補正することができる。本発明のそのような一実施形態は、有利には、最適又は準最適な性能を達成することができるとともに計算的に安価である。
【0016】
本明細書は、上記方法の動作を実行する装置も開示し、この装置は、例示の実施形態では、ウェアラブルデバイスの内部及び/又は外部に存在することができる。そのような装置は、所要の目的で特別に構築することもできるし、コンピューターに記憶されたコンピュータープログラムによって選択的にアクティブ化又は再構成される汎用コンピューター又は他のデバイスを含むこともできる。本明細書に提示されるアルゴリズム及び表示は、本来的に、どの特定のコンピューターにも関係付けられていないし、それ以外の装置にも関係付けられていない。様々な汎用マシンを本明細書の教示によるプログラムとともに用いることができる。代替的に、必要とされる方法ステップを実行する、より特殊化された装置を構築することが適切である場合がある。従来の汎用コンピューターの構造は、以下の説明から明らかになる。加えて、本明細書において説明する方法の個々のステップをコンピューターコードによって実施することができることが当業者に明らかであるという点で、本明細書は、コンピュータープログラムも暗に開示している。このコンピュータープログラムは、どの特定のプログラミング言語及びその実施態様にも限定されないことが意図されている。様々なプログラミング言語及びこれをコード化したものを用いて、本明細書に含まれる開示の教示内容を実施することができることが理解されるであろう。さらに、コンピュータープログラムは、どの特定の制御フローにも限定されないことも意図されている。本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく異なる制御フローを用いることができるコンピュータープログラムの他の多くの変形形態が存在する。
【0017】
さらに、コンピュータープログラムのステップのうちの1つ以上は、逐次的ではなく並列に実行することができる。そのようなコンピュータープログラムは、任意のコンピューター可読媒体に記憶することができる。このコンピューター可読媒体は、磁気ディスク若しくは光ディスク、メモリチップ、又は汎用コンピューターとインターフェースするのに適した他の記憶デバイス等の記憶デバイスを含むことができる。コンピューター可読媒体は、インターネットシステムに例示されるようなハードワイヤード媒体、又はGSM(登録商標)移動電話システムに例示されるような無線媒体も含むことができる。コンピュータープログラムは、そのような汎用コンピューターにロードされて実行されると、好ましい方法のステップを実施する装置が効果的に得られる。
【0018】
本発明は、ハードウェアモジュールとしても実施することができる。より詳細に言えば、ハードウェアという意味で、モジュールは、他の構成要素又はモジュールとともに用いられるように設計された機能性ハードウェアユニットである。例えば、モジュールは、ディスクリート電子構成要素を用いて実施することもできるし、特定用途向け集積回路(ASIC)等の完全な電子回路の一部分を形成することもできる。非常に多くの他の可能性が存在する。当業者であれば、このシステムをハードウェアモジュール及びソフトウェアモジュールの組合せとして実施することもできることを理解するであろう。
【0019】
本明細書において説明する本発明の実施形態は、ACC及び/又はジャイロスコープ等の動きセンサーによってユーザーから取得された動き信号に基づいて、生理学的信号から動きアーティファクトを除去するウェアラブルデバイス及び方法に関する。
【0020】
1つの実施形態では、このデバイスは、発光ダイオード−光検出器(LED−PD)配置がPPG信号を取得することを可能にするほど十分な皮膚面積を有するユーザーの任意のロケーションに装着することができ、3軸ACCが動き信号を取得することを可能にする。
【0021】
図1は、一例示の実施形態による生理学的測定におけるアーティファクトを除去する方法を示すフローチャート100を示している。この方法は以下のステップを含む。
【0022】
ユーザーの生のPPGデータ及び3軸ACC信号を取得するステップ(ステップ102)。
【0023】
ACC信号に基づいてユーザーの2つ以上の動きサイクルを検出するステップ(ステップ104)。
【0024】
動きアーティファクトの位相ロックに基づいて雑音基準信号を作成するステップ(ステップ106)。
【0025】
位相ロックアーティファクト成分データに基づいて作成された雑音基準信号を用いてPPG信号からの適応雑音キャンセルを実行するステップ(ステップ108)。
【0026】
例示の実施形態による図1に示す方法の詳細を次に説明する。
【0027】
ACC信号に基づくユーザーの動きサイクルの検出(ステップ104、図1
ACC信号に基づいてユーザーの動きサイクルを検出する方法は、図2に示され、以下のものを含む。
【0028】
加速度計から生の動き信号を取得すること(ステップ202)。取得された3軸ACC信号Ax、Ay及びAz(ジャイロスコープの加速度計のx軸、y軸及びz軸にそれぞれ対応する)の一例は、図4a)の曲線402、404及び406に示されている。対応する取得されたPPG信号408は、図4b)に示されている。3軸ACC信号の場合、最も活動的な軸(すなわち、最大g力を有する軸)に沿ったACC信号が、この実施形態において動きサイクル検出のために選択される。一方、異なる実施形態では、動きサイクル検出のための動きデータを取得するのに、ACC信号のうちの1つ以上を用いることができる。
【0029】
動き信号に対して帯域通過フィルタリングを実行すること(ステップ204)。フィルターの通過帯域の好ましい範囲の一例は、0.5Hz〜8Hzである。
【0030】
フィルタリングされた動き信号に対して微分を実行して、導関数を計算すること(ステップ206)。
【0031】
フィルタリングされた動き信号の導関数のピーク及び谷を検出すること(ステップ208)。
【0032】
ステップ210において、ユーザーの動きサイクルが求められ、例えば、ユーザーの腕の前後の振りの動きが求められる。1つの動きサイクルは、例示の実施形態における図5a)に示すようなフィルタリングされた動き信号506の導関数の1つおきの次の連続した谷、例えば502、504、又はピークの間のウィンドウ、例えば500に対応する。
【0033】
動きアーティファクトの位相ロックに基づく雑音基準信号の作成(ステップ106、図1
例示の実施形態において雑音基準信号を作成する方法は、図3に示され、以下のものを含む。
【0034】
ステップ302において、図5b)に示すような、各動きサイクルウィンドウX、X、...、X、例えば500に基づくPPG信号508のセグメント化が行われる。
【0035】
ステップ304において、各動きサイクルウィンドウX’、X’、...、X’、例えば500内のPPG信号セグメント、例えば510を時間において正規化することが行われる。
【0036】
ステップ306において、正規化されたPPG信号セグメント、例えば510の、或る特定の数の動きサイクルにわたる平均を取得することが行われ、雑音基準の作成のための位相ロックアーティファクト成分Nが取得される。この例示の実施形態において、正規化されたPPG信号セグメント、例えば510を平均した結果、アーティファクト成分は強化される一方、実際のPPG成分S、S、...、Sは抑制される。これは、実際のPPG成分が、異なる正規化されたPPG信号セグメント、例えば510間で異相であると予想することができるからである。なぜならば、セグメント化は、実際のPPG特性(すなわち、心臓サイクル)と通常は同期していない検出された動きサイクルウィンドウ、例えば500に基づいているからである。他方、PPG信号内の動きアーティファクトは、異なる正規化されたPPG信号セグメント、例えば510間で同相であると予想することができるからである。したがって、PPGセグメントの取得された平均は、有利には、主としてPPG信号内の動きアーティファクト、好ましくはPPG信号内の動きアーティファクトのみを表すものと予想することができる。
【0037】
1つの例では、PPG信号セグメントの処理は、以下のアルゴリズムを用いて実行される。
a)時間における正規化:
サンプリング時点T=[t,t,...,t]を有する動きサイクルX=[xi,0,xi,1,...,、xi,M]に対応するPPGセグメントが与えられると、正規化プロセスは、以下のものを伴う。
i.Xのサンプリング時点を、0と1との間になるように線形に再スケーリングして、T’=[t’,t’,...,t’]を得ること。ここで、
【数1】
である。
ii.再スケーリングされたPPGセグメントを線形補間によって1/Nの間隔で再サンプリングして、X’=[x’i,0,x’i,1,...,x’i,N]、を得ること。ここで、
【数2】
である。
b)平均化:
L個の動きサイクルに対応する正規化されたPPGセグメントX’、X’、...、X’が与えられると、これらのPPGセグメントにわたる平均が以下のように取得される。
【数3】
【0038】
動きアーティファクトの信頼できる推定値を取得するのに十分な動きサイクルの数は、例えば、PPG信号内の動きアーティファクトのレベルに依存する。動きアーティファクトがPPGにおいて大きいとき、すなわち、動き強度が高いとき、少数の動きサイクル(2つのサイクルであっても)から動きアーティファクトの信頼できる推定値を取得することができることが本発明者らによって見出された。動き強度は、例えば、毎秒の動きサイクルの数又は動き信号の大きさに基づいて求めることができる。これによって、有利には、例示の実施形態が、高強度の律動的活動中の大きな動きアーティファクトを扱うことができることが可能になる。動きサイクルの数は、例えば、ユーザーが選択した活動について事前に設定することができ、及び/又は動き信号から求められた動き強度に従って自動的に設定することができる。
【0039】
ステップ308において、位相ロックアーティファクト成分600(図6)が、それぞれの動きサイクルウィンドウ、例えば500(図5)に適合するように時間において再スケーリングされ、その結果、位相ロックアーティファクト成分600のそれぞれの再スケーリングされたものは、それぞれの動きサイクルウィンドウ、例えば500に適合する。
【0040】
ステップ310において、それぞれの動きサイクルウィンドウ、例えば500に対応する位相ロックアーティファクト成分のそれぞれの再スケーリングされたものが、図7に示すように、ともに連結/スティッチングされて、雑音基準信号700が作成される。したがって、作成された雑音基準信号700は、時間において、取得されたPPG信号及び動き信号における動きサイクルウィンドウ、例えば500の同じシーケンスに対応する。例えば、図4を比較されたい。
【0041】
位相ロックアーティファクト成分に基づいて作成された雑音基準信号を用いたPPG信号からの適応雑音キャンセルの実行(ステップ108、図1
適応雑音キャンセルを実行する方法は、以下のものを含む任意の既存のアルゴリズムとすることができる。ただし、以下のものに限定されるものではない。
1.最小平均二乗(LMS)アルゴリズム。
2.再帰的最小二乗(RLS)アルゴリズム。
【0042】
図8a)〜図8d)は、一方の腕は歩行状態に類似するように振るとともに他方の腕は静止を維持した状態におけるPPG記録に基づく、一例示の実施形態によるアーティファクトの除去と、適応フィルタリングの雑音基準としてACC信号を用いる方法との比較を示している。図8a)は、動いている腕の手首から記録されたPPG信号800を示している。図8b)及び図8c)はそれぞれ、雑音基準としてACC信号を用いた適応フィルタリングによるアーティファクト除去後のPPG信号(信号802)、及び例示の実施形態における方法によるアーティファクト除去後のPPG信号(信号804)を示している。図8d)は、基準PPG信号806として静止した腕の人差し指から記録されたPPG信号を示している。見て取ることができるように、PPG信号804(図8c)の波形及びピーク位置の双方は、図8b)におけるPPG信号802のそれらと比較して、基準PPG信号806(図8d)にはるかに近い。これは、例示の実施形態における方法の改善された性能が、特に雑音基準としてACC信号を用いる方法を上回っていることと、基準PPG信号806(図8d)と密接に類似していることによって示されるように、性能が全体的に良好であることとを実証している。
【0043】
当業者によって理解されるように、主に説明した例示の実施形態に関与する計算は、費用を要しない簡単な微分処理、ピーク検出処理、平均化処理及び再スケーリング処理を含み、このため、これらの処理の時間遅延及び電力消費は無視することができる。
【0044】
図9は、一例示の実施形態による、腕時計901の形態のウェアラブルデバイスを備えるアセンブリ900を示している。異なる実施形態では、このデバイスは、ユーザーの腕、ウエスト、ヒップ又は足等のユーザーの身体の任意の部分に装着するのに適した他の任意の形態とすることもできることが理解されるであろう。腕時計901は、生理学的測定及び動きデータをユーザーから取得し、それらの生理学的測定におけるアーティファクトを除去し、データを処理して結果(複数の場合もある)を表示し、結果(複数の場合もある)を、移動電話902若しくは他のポータブル電子デバイス等のアセンブリ900の電気通信デバイス、又はデスクトップコンピューター、ラップトップコンピューター、タブコンピューター等の計算デバイスに無線で通信する。
【0045】
図10は、生理学的測定をユーザーから取得し、それらの生理学的測定におけるアーティファクトを除去する、一例示の実施形態によるウェアラブルデバイス1001を備えるアセンブリ1000の概略ブロック図を示している。デバイス1001は、ユーザーの動き情報を取得する加速度計又はジャイロスコープ等の第1の信号検知モジュール1002を備える。
【0046】
このデバイスでの使用に適合することができる好ましい加速度計の1つの非限定的な例は、Freescale Semiconductor, Inc社から入手できる3軸加速度計MMA8652FCである。この加速度計は、単一のパッケージを用いて3つの全ての方向で加速度を測定するという利点を提供することができる。代替的に、3軸検知を提供するように指向された幾つかの単軸加速度計を異なる実施形態において用いることができる。
【0047】
デバイス1001は、ユーザーの生理学的信号を取得するLED−PDモジュール等の第2の検知モジュール1003も備える。デバイス1001は、信号検知モジュール1002からの加速度情報と、測定モジュール1003からの生理学的信号とを受信して処理するように構成されたプロセッサ等のデータ処理計算モジュール1004も備える。デバイス1001は、結果をデバイス1001のユーザーに表示するとともにタッチスクリーン技術を介してユーザー入力を受信する表示ユニット1006も備える。この実施形態におけるデバイス1001は、アセンブリ1000の電気通信デバイス1010と無線で通信するように構成された無線送信モジュール1008を更に備える。電気通信デバイス1010は、ウェアラブルデバイス1001から信号を受信する無線受信機モジュール1012と、結果を電気通信デバイス1010のユーザーに表示するとともにタッチスクリーン技術を介してユーザー入力を受信する表示ユニット1014とを備える。
【0048】
図11は、腕時計1101の形態のウェアラブルデバイスの反射モードにおける測定用の好ましいLED−PD構成の概略説明図を示している。この測定は、2つのPD1102、1104に反射して戻されたLED1100による光の量に基づいている。このデバイスにおける使用に適合させることができる好ましいLED−PDモジュールの1つの非限定的な例は、1つ又は複数のPD、例えば周辺光センサーTEMD5510FX01とペアにされた1つのLED、例えばOneWhite Surface Mount PLCC−2 LED Indicator ASMT−UWB1−NX302から構成される。代替的に、LED−PDモジュールは、1つ又は複数のPDとペアにされた複数のLEDから構成することができる。
【0049】
図12は、1つの実施形態による、生理学的測定におけるアーティファクトを除去する方法を示すフローチャート1200を示している。ステップ1202において、ユーザーの生理学的信号が取得される。ステップ1204において、ユーザーの動きを表す対応する動きデータが取得される。ステップ1206において、動きデータにおける2つ以上の動きサイクルが検出される。ステップ1208において、雑音基準が、2つ以上の動きサイクルにそれぞれ対応する生理学的信号のセグメントに基づいて作成される。ステップ1210において、生理学的信号が、雑音基準を用いてフィルタリングされる。
【0050】
動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、動きデータを帯域通過フィルタリングすることを含むことができる。動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、フィルタリングされた動き信号に対して微分を実行して、フィルタリングされた動きデータの導関数を計算することを更に含むことができる。動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、フィルタリングされた動きデータの導関数においてピーク又は谷を検出することを更に含むことができる。動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、2つのピーク又は谷の間の動きデータのセグメントをそれぞれの動きサイクルとして検出することを更に含むことができる。それぞれのセグメントに関連付けられた2つのピーク又は谷は、1つおきの次の連続したピーク又は谷とすることができる。
【0051】
生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成することは、動きアーティファクトを強化することを含むことができる。
【0052】
生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成することは、生理学的成分を抑制することを含むことができる。
【0053】
生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成することは、生理学的信号のセグメントを時間において正規化することを含むことができる。生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成することは、生理学的信号の正規化されたセグメントの平均を位相ロックアーティファクト成分として取得することを更に含むことができる。生理学的信号の正規化されたセグメントの平均を取得することは、生理学的信号の正規化されたセグメント間の異相成分を抑制することを含むことができる。生理学的信号の正規化されたセグメントの平均を取得することは、生理学的信号の正規化されたセグメント間の同相成分を強化することを含むことができる。生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成することは、位相ロックアーティファクト成分を、生理学的信号のそれぞれのセグメントに対応するように再スケーリングすることを更に含むことができる。生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成することは、それぞれの動きサイクルウィンドウに対応するそれぞれの再スケーリングされた位相ロックアーティファクト成分をともに連結又はスティッチングすることを更に含むことができる。
【0054】
取得された対応する動きデータは、3軸動き信号を含むことができる。2つ以上の動きサイクルを検出することは、3軸動き信号のうちの1つ以上に基づくことができる。
【0055】
本方法は、雑音基準の作成のために検出される動きサイクルの数を設定することを更に含むことができる。数を設定することはユーザー入力に基づくことができる。数を設定することは、動きデータに基づいて動きの強度を求めることを含むことができる。
【0056】
雑音基準を用いて生理学的信号をフィルタリングすることは、最小平均二乗(LMS)アルゴリズム、再帰的最小二乗(RLS)アルゴリズム、又は同様のものを適用することを含むことができる。
【0057】
図13は、1つの実施形態による、生理学的測定におけるアーティファクトを除去するデバイス1300を示す概略ブロック図を示している。デバイス1300は、ユーザーの生理学的信号を取得する第1のセンサー1302と、ユーザーの動きを表す対応する動きデータを取得する第2のセンサー1304と、動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出し、これらの2つ以上の動きサイクルにそれぞれ対応する生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成し、この雑音基準を用いて生理学的信号をフィルタリングするプロセッサ1306とを備える。
【0058】
動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、動きデータを帯域通過フィルタリングすることを含むことができる。動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、フィルタリングされた動き信号に対して微分を実行して、フィルタリングされた動きデータの導関数を計算することを更に含むことができる。動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、フィルタリングされた動きデータの導関数においてピーク又は谷を検出することを更に含むことができる。動きデータにおいて2つ以上の動きサイクルを検出することは、2つのピーク又は谷の間の動きデータのセグメントをそれぞれの動きサイクルとして検出することを更に含むことができる。それぞれのセグメントに関連付けられた2つのピーク又は谷は、1つおきの次の連続したピーク又は谷とすることができる。
【0059】
生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成することは、動きアーティファクトを強化することを含むことができる。
【0060】
生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成することは、生理学的成分を抑制することを含むことができる。
【0061】
生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成することは、生理学的信号のセグメントを時間において正規化することを含むことができる。生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成することは、生理学的信号の正規化されたセグメントの平均を位相ロックアーティファクト成分として取得することを更に含むことができる。生理学的信号の正規化されたセグメントの平均を取得することは、生理学的信号の正規化されたセグメント間の異相成分を抑制することを含むことができる。生理学的信号の正規化されたセグメントの平均を取得することは、生理学的信号の正規化されたセグメント間の同相成分を強化することを含むことができる。生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成することは、位相ロックアーティファクト成分を、生理学的信号のそれぞれのセグメントに対応するように再スケーリングすることを更に含むことができる。生理学的信号のセグメントに基づいて雑音基準を作成することは、それぞれの動きサイクルウィンドウに対応するそれぞれの再スケーリングされた位相ロックアーティファクト成分をともに連結又はスティッチングすることを更に含むことができる。
【0062】
取得された対応する動きデータは、3軸動き信号を含むことができる。2つ以上の動きサイクルを検出することは、3軸動き信号のうちの1つ以上に基づくことができる。
【0063】
プロセッサ1306は、雑音基準の作成のために検出される動きサイクルの数を設定するように更に構成することができる。数を設定することはユーザー入力に基づくことができる。数を設定することは、動きデータに基づいて動きの強度を求めることを含むことができる。
【0064】
雑音基準を用いて生理学的信号をフィルタリングすることは、最小平均二乗(LMS)アルゴリズム、再帰的最小二乗(RLS)アルゴリズム、又は同様のものを適用することを含むことができる。
【0065】
当業者には、包括的に記載されている本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態において示されている本発明に対して数多くの変形及び/又は変更を行うことができることが理解される。したがって、本実施形態は、全ての観点において例示的であり限定的ではないと見なされる。また、本発明は、特徴又は特徴の組合せが特許請求の範囲又は本実施形態に明示的に記載されていなくても、任意の特徴の組合せ、特に、特許請求の範囲における任意の特徴の組合せを含む。
【0066】
例えば、手首装着式デバイスが幾つかの実施形態で説明されているが、上記デバイスは、ユーザーの腕、ヒップ、ウエスト又は足の任意の部分に装着することができる。
【0067】
また、本明細書では、律動的な動きに言及しているが、この用語は、動きが、2つ以上の実質的に反復する動きデータパターン又は動きに関連付けられたシグネチャからなること以外には、動きそれ自体に限定を課すことを意図するものではないことが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13