【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、黒鉛含有量が5質量%以下のマグネシアカーボンれんがの耐スポーリング性を向上するためにアルミニウムの含有量について種々検討を行ったところ、粗粒が多く微粉が少ないれんが組織にアルミニウム及び/又はアルミニウム合金を合量で1.5質量%以上4質量%以下の範囲で含有する場合には、使用時の受熱により弾性率が低下するという、従来の黒鉛含有量が多いマグネシアカーボンれんがとは逆の結果になることを知見した。その結果、黒鉛含有量が5質量%以下でも耐スポーリング性及び耐食性に優れるマグネシアカーボンれんがを得ることができた。
【0011】
すなわち、本発明の一観点によれば次のマグネシアカーボンれんがが提供される。
耐火原料配合物に有機バインダーを添加して混練し成形後、熱処理
するマグネシアカーボンれんが
の製造方法において、
耐火原料配合物は、
粒径1mm以上5mm未満のマグネシアを50質量%以上75質量%以下、
粒径0.075mm以上1mm未満のマグネシアを20質量%以上40質量%以下、
粒径0.075mm未満のマグネシアを1質量%以上10質量%以下、
並びに、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を合量で1.5質量%以上4質量%以下含有し、
黒鉛の含有量は5質量%以下(0を含む)である、
マグネシアカーボンれんが
の製造方法。
【0012】
以下、本発明の特徴である耐火原料配合物の構成について説明する。
【0013】
本発明では、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金(以下、総称して「アルミニウム金属・合金」という。)を耐スポーリング性向上及び耐食性向上の目的で使用するが、このうちアルミニウム金属・合金を添加することで耐スポーリング性が向上することは、従来の黒鉛含有量の多いマグネシアカーボンれんがとは逆の効果になっている。
【0014】
その理由として以下のメカニズムが考えられる。
まず、れんが中のアルミニウムは、使用時に熱を受けると一部が酸化されてアルミナとなりマグネシアと反応してスピネルを生成する。このスピネルは生成する際に、いわゆるスピネル膨張と呼ばれる体積膨張を生じる。
【0015】
従来のマグネシアカーボンれんがは、黒鉛を多く含むため低弾性な組織となっており、使用時の受熱によってスピネル膨張が生じた場合、この膨張をれんが組織中である程度吸収することができると考えられる。このため、使用時の受熱による弾性率の低下は少なく、むしろスピネルの焼結ボンドの発達によって組織の緻密化が進み弾性率が上昇し、耐スポーリング性が低下すると考えられる。
【0016】
これに対して、本発明のマグネシアカーボンれんがは、黒鉛が少なくしかも粗粒が多く微粉が少ないため高弾性な組織となっており、スピネル膨張をれんが組織中で吸収し難い。このため、スピネル膨張によってれんが組織が膨張する際に粗粒(骨材粒子)どうしの接触部が減少したり、組織中に気孔あるいは微亀裂が形成されることで弾性率が低下し、耐スポーリング性が向上すると考えられる。また、本発明のマグネシアカーボンれんがは、マトリクスを構成する微粉が少ないためれんが組織中のボンドが不足しがちであるが、アルミニウム金属・合金を1.5質量%以上4質量%以下と比較的多く含むことから使用中にアルミニウムを起因とするスピネル等のボンドが多く生成するため、強度が向上しかつ耐食性も向上するというメリットも得られる。
【0017】
以上のように、本発明のマグネシアカーボンれんがの耐火原料配合物(以下、単に「本発明の耐火原料配合物」という。)は、耐スポーリング性及び耐食性の向上を目的として、アルミニウム金属・合金を1.5質量%以上4質量%以下の範囲で含有する。アルミニウム金属・合金の含有量が1.5質量%未満ではスピネルの生成量が不足するため耐スポーリング性が不足し、耐食性も不足する。一方、アルミニウム金属・合金の含有量が4質量%を超えると、スピネル生成によるれんがの膨張が大きくなりすぎて使用中に迫割れが発生する問題がある。さらに、より耐スポーリング性及び耐食性が要求される場合にはアルミニウム金属・合金の含有量を2質量以上3量%以下とすることができる。
【0018】
また、本発明の耐火原料配合物は、耐スポーリング性を向上するために、微粉が少なく粗粒の多い粒度構成としている。すなわち、本発明の耐火原料配合物は、粒径1mm以上5mm未満のマグネシアを50質量%以上75質量%以下含有する。粒径1mm以上5mm未満のマグネシアが50質量%未満では組織が緻密化し過ぎて耐スポーリング性が不十分となり、75質量%を超えると組織がポーラスになり過ぎて強度及び耐食性が不十分となる。
【0019】
さらに本発明の耐火原料配合物では、前述の粒径1mm以上5mm未満のマグネシアの内訳として、粒径1mm以上3mm未満のマグネシアに対する粒径3mm以上5mm未満のマグネシアの質量比(以下「マグネシア質量比」という。)を0.8以上1.2以下とすることができる。このマグネシア質量比は耐スポーリング性に影響を与え、0.8未満では耐スポーリング性がやや不足し、1.2を超えると粗粒が多くなる結果、組織がポーラスになって強度及び耐食性がやや不十分となる。
【0020】
また、本発明の耐火原料配合物において、粒径0.075mm以上1mm未満のマグネシアの含有量は20質量%以上40質量%以下とする。粒径0.075mm以上1mm未満のマグネシアの含有量が20質量%未満では、組織がポーラスになり過ぎて強度及び耐食性が不足し、40質量%を超えると組織が緻密になり過ぎて耐スポーリング性が低下する。
【0021】
さらに、本発明の耐火原料配合物において、粒径0.075mm未満のマグネシアの含有量は1質量%以上10質量%以下とする。粒径0.075mm未満のマグネシアは使用時の受熱によりボンド(結合組織)の一部を形成するため、1質量%未満では組織がポーラスになり過ぎて強度及び耐食性が不十分となり、10質量%を超えると組織が緻密になり過ぎて耐スポーリング性が低下する。
【0022】
なお、本発明の耐火原料配合物においてマグネシアの合量は、より高い耐食性を得るためには93質量%以上とすることができる。
【0023】
ここで、本発明でいう粒径とは、耐火原料粒子を篩いで篩って分離したときの篩い目の大きさのことであり、例えば粒径0.075mm未満のマグネシアとは、篩い目が0.075mmの篩いを通過するマグネシアのことで、粒径0.075mm以上のマグネシアとは、篩い目が0.075mmの篩い目を通過しないマグネシアのことである。
【0024】
本発明の耐火原料配合物において黒鉛の含有量は5質量%以下(0を含む)とする。すなわち、本発明においては黒鉛を含有しない場合もあるが、黒鉛を含有しない場合でも、前述のとおりアルミニウム金属・合金を1.5質量%以上4質量%以下含有することで耐スポーリング性向上効果が得られる。したがって、本発明のマグネシアカーボンれんがは黒鉛を含有することができない用途でも使用することができる。さらに、黒鉛を5質量%以下で含有できる場合にも、アルミニウム金属・合金を1.5質量%以上4質量%以下含有することで耐スポーリング性向上効果が得られる。一方、黒鉛の含有量が5質量%を超えると耐食性が低下し、また、使用時にカーボンピックアップの問題が顕著になる。
【0025】
また、本発明のマグネシアカーボンれんががVOD等の二次精錬設備に使用される場合には、より耐スポーリング性を確保する点から黒鉛の含有量を0.5質量%以上とし、しかもよりカーボンピックアップを抑制する点から黒鉛の含有量を2質量%以下としたマグネシアカーボンれんがとすることもできる。さらに、カーボンピックアップの抑制効果を高める場合には、黒鉛の含有量を0.5質
量%以上とし、かつれんが中の固定炭素量を2質量%未満とすることもできる。れんが中の固定炭素量を2質量%未満とするためには、れんが中の固定炭素としては黒鉛以外に、ピッチ、カーボンブラック、フェノール樹脂等の有機バインダー等があるため、れんが中のこれらの固定炭素量と黒鉛含有量の合量が2質量%未満となるような耐火原料配合物及び有機バインダーを使用することができる。
【0026】
以上のとおり、本発明のマグネシアカーボンれんがは、黒鉛含有量が少なくしかも耐スポーリング性及び耐食性に優れるため、低炭素鋼が処理されるRHやVOD鍋の内張り用れんがとして好適に使用することができる。特に、スラグによる溶損が激しいVOD鍋のスラグラインあるいはRH下部槽に最適である。