(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記生分解性有機系繊維物質が添加された汚泥の一部を、前記嫌気性処理を経由せずに前記嫌気性処理の後段の固液分離処理へ迂回させることを特徴とする請求項1に記載の有機性廃水または汚泥の処理方法。
前記生分解性有機系繊維物質が、比重0.75〜1.15、繊維長6mm以下の繊維状物質を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機性廃水または汚泥の処理方法。
前記生分解性有機系繊維物質が添加された汚泥の一部を、前記嫌気性処理手段を経由せずに前記嫌気性処理手段の後段の前記固液分離手段へと迂回させる迂回ラインを備えることを特徴とする請求項5に記載の有機性廃水または汚泥の処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではなく、特に記載の無い限り本明細書中の「%」は質量%を意味するものとする。
【0024】
なお、以下においては、水処理系として標準活性汚泥処理を採用し、汚泥処理系として嫌気性消化処理と脱水処理をそれぞれ採用する一般的な下水処理場を一例として説明する。しかしながら、当業者であれば、有機性廃液または有機物を処理する施設として嫌気的処理を組み込む食品系廃水処理、し尿系廃水処理、生ごみや有機廃材系廃水処理等のあらゆる処理プロセスに適応または応用が可能であり、例示する下水処理に限定されるものではないことは勿論である。
【0025】
有機性廃水または汚泥を対象液とする処理プロセスにおいて、好気的水処理工程は処理対象液を、活性汚泥などの好気性微生物を多く含む汚泥と混合して曝気槽等に導入して微生物の働きにより有機成分をCO
2やH
2O等の形態に無機化する。活性汚泥は通常は曝気槽の液中に浮遊しており、最終的には最終沈澱池などで沈降分離した汚泥と上澄分離した処理水に分離される。ただし、流入水質や活性汚泥などの微生物活性等の状況変化によっては重力沈降方式では汚泥と処理水の固液分離性が悪化する場合がある。そのため、活性汚泥を浮遊させるのではなく、人工的に合成されたプラスチック製やポリエチレングリコール製等の固定ろ材や流動担体等に固定することで固液分離性能を安定させる方式が20年以上前より数多く提案されている。
【0026】
流動担体は固定ろ材と比較して流動していることから、流動担体表面に付着した微生物が取り込もうとする周囲の基質成分が一旦消費されても常に動いているために再び新たな基質成分に出会う確率が高いが、固定ろ材は表面付着微生物量が増加し過ぎて肥厚する場合もあり、ろ材近傍の流動性が低下した場合等は微生物周辺の基質成分が欠乏し、必要な酸素の供給が不十分になり微生物の活性が低下するリスクがある。これら固定ろ材や流動担体は、リアクター内の微生物濃度を高濃度に維持する場合や増殖速度が比較的小さい嫌気性微生物であるアンモニア酸化細菌や硝化菌等を一定量保持する場合に使用されることが多い。しかし、これら微生物保持用担体は一般的にコンクリート製や金属製のリアクター内を流動していることから長時間の運転により劣化、破損を免れることはできず、年間数十%程度の補充が必要となる場合が多い。また、スクリーン等でリアクターからの担体流出を防止しているが、スクリーンの目詰まりによるトラブル等も多く報告されており課題も多い。担体としての設計要素としては、素材、大きさ、形状、比重、表面の物理的処理方式や化学的処理方式等を選択して、担体の耐久性、流動性、基質浸透性、微生物の付着性、剥離性等を設計するのが一般的である。
【0027】
「生物担体特性」という評価軸で繊維物質の使用方法を検討する場合、本実施形態では、基本的には生分解性有機系繊維物質を一過性で使用する方式を提案する。「生分解性有機系繊維物質」としては、具体的には農産物収穫後のセルロース系残査、動植物を原料とする加工工場からのプロセス廃材及びそれら残査、あるいは廃材を破砕、表面処理、一部化学処理等を施して粒径、表面ぬれ性、比重等を整えたものを使用することができる。これら有機性廃材を「生物担体」として使用する最大の理由は供給コストが安いまたは有価で引き取れる点にある。このような有機性廃材の発生場所が処理施設に十分近く、輸送費や需給量が見合えばコストメリットはさらに大きくなる。
【0028】
活性汚泥微生物等をこれら有機性廃材である繊維物質表面に付着させて好気的環境下で水処理を行う場合、有機性廃材はSRT:3〜6日程度の好気的環境下において大幅に分解せずに生物担体としてある程度の期間維持し、加えて液側に農薬等の一部の有害な化学物質を溶出させない廃材を選択する必要がある。このような有機性廃材を好気性処理に用いる場合には、例えば、3日間の曝気試験を行い、繊維物質好気性分解率(以下「AD3」とも称する)を測定して添加方法を決定する。好気性条件下での繊維物質の分解率が非常に高い素材の場合は、好気性工程に投入する繊維物質量を小さくするかまたはゼロにし、後段の嫌気性処理工程以降のプロセスに導入する繊維物質添加量を増加させる方が有効な場合もある。
【0029】
廃水等の好気的処理において生成した微生物主体の余剰汚泥は初沈汚泥とともにメタン発酵等の嫌気性処理に導入される。嫌気性処理では投入された有機物が反応槽内で酸発酵、メタン発酵を経て分解され、CH
4ガス、CO
2ガス、H
2ガス等が生成される。一般的な下水処理における嫌気性消化処理では有機物の45〜60%程度がガス化され、残りの40〜55%は汚泥中に依然として有機物として残留する。本実施形態において好気処理工程に生物担体として添加される生分解性有機系繊維物質は、その種類によってメタン発酵槽内での分解率やCH
4ガス発生率に差がでるが、メタン発酵におけるガス発生量増加を特に重要視する場合は3〜6日程度のSRTの好気性処理では分解されにくいものの、20〜40日程度のSRTの嫌気性処理ではある程度分解される物質であることが望ましい。
【0030】
嫌気性処理における「可燃性ガス増量」という評価軸で添加する繊維物質の使用方法を検討する場合、添加する繊維物質の有機成分は嫌気性処理工程においてできるだけ分解しガス化することが望ましい。しかし添加する繊維物質の物性によっては嫌気的分解があまり進まない場合もあり、特に好気性処理工程において生分解性有機系繊維物質の大半が既に分解済みで嫌気性処理工程での更なる分解が望めない場合は、好気処理工程に導入した繊維物質とは別に添加繊維物質を直接嫌気性処理工程に更に導入する方が望ましい場合もある。また、繊維物質が好気的環境下では溶出しないが嫌気的環境下では溶出する金属イオン等が原因となりスケールや腐食等のプロセス障害を引き起こす可能性がある場合等は嫌気性処理工程またはその前段に投入する繊維物質を制限するか、もしくは繊維物質投入済みの好気性処理工程後の汚泥の一部に対して嫌気性処理工程を経由させずに後段の固液分離工程に導入する方法が望ましい場合もある。また、繊維物質を多く含む汚泥と繊維物質が少ない汚泥に分離することで、一方を嫌気性処理工程に、他方を固液分離工程に導入することでプロセス全体を効率化できる場合もある。好気性処理工程から排出される汚泥を添加した繊維物質が多い汚泥と繊維物質が少ない汚泥に分離する方法としては、遠心分離方式またはふるい体分級方式が有効である。繊維物質に付着した微生物群は通常の活性汚泥微生物と比べて比較的粒径が大きく密な集合体を形成していることが多くこれらを物理的に分離することは比較的容易である。以上のような検討項目を判断するために、添加する繊維物質に対して、あらかじめ7日間の嫌気的条件下のバイアル試験を行い、繊維物質嫌気性分解率(以下「DD7」とも称する)と繊維物質由来CH
4発生率(以下「=FG7」とも称する)を測定しておくことが望ましい。
【0031】
嫌気性処理工程を経た汚泥は固液分離工程に導入され、濃縮処理や脱水処理等が施される。脱水ケーキはそのまま搬出したり、乾燥処理や焼却処理まで行い焼却灰として搬出したりする場合もある。好気性処理工程や嫌気性処理工程で汚泥に投入された繊維物質由来の有機分と無機分は共に固液分離工程に流入する汚泥中にある程度残留しているが、それらはいずれも固液分離性能を向上させる場合が多く、特に繊維性が維持されている場合は脱水処理における圧搾工程等で繊維成分が分離水を固形物粒子の間隙をぬって系外に誘導するようにろ液ガイド管的役割をする場合が多く、有効な場合が多い。一般的に汚泥の脱水性はその汚泥の強熱原料物(VTS)と相関があり、VTSが低いほど汚泥の脱水性が良いとされている。嫌気性処理工程で生成する無機系微粒子としては一般的にリン酸マグネシウムアンモニウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、石膏、水酸化鉄、リン酸鉄等が挙げられるが、いずれも汚泥中に浮遊分散する微粒子状である限りにおいて、脱水性がやや向上するとされている。添加する繊維物質由来の生成無機物として、これら無機系微粒子の一部が生成される場合があるが、生成量が多すぎるとプラント内の配管内スケール、焼却時の煙道閉塞やクリンカの原因となることもあり、プロセス全体を考慮した繊維物質の選定と適正添加量には注意が必要である。
【0032】
「嫌気性処理前後の固液分離特性」という評価軸で添加する繊維物質の使用方法を検討する場合、前述したように繊維物質の存在により固液分離性が向上することから、嫌気性処理工程に導入する前の汚泥中の繊維物量が多いほど当該汚泥の濃縮性が高まり必要に応じて嫌気性処理工程に導入する汚泥濃度を高めることが可能になる。例えば、好気性処理工程に繊維物質を添加した場合、微生物を表面に付着させたこの繊維物質は、繊維分が依然としてある程度の強度を保ったまま好気性処理工程から排出される場合が多いことから、嫌気性処理の前段で汚泥を濃縮して消化槽に投入する場合等は、濃縮処理が比較的容易であり無薬注またはごく少量の薬注率で凝集濃縮が可能になる場合が多く、高濃度消化処理が低コストで可能となる上に消化槽のコンパクト化が可能となる。むろんこれは嫌気性処理工程投入汚泥に直接繊維物質を添加する場合も同様の効果が得られる。嫌気性処理工程後の固液分離工程においても同様に、汚泥中の繊維物量が大きいほど固液分離性(脱水性)を高めることから固液分離工程に投入される汚泥中の繊維物量が重要になる。繊維物量が大きいほど、固液分離時の凝集剤添加率が低下し、脱水ケーキの含水率が低下し、系外に搬出する廃棄物としての脱水ケーキ排出量が低下し、コスト面では薬品使用コストとケーキ処分コストが共に低下する。これらの検討項目を考慮して「嫌気性処理前後の固液分離特性」に関して定量的に把握すべく、あらかじめ嫌気性処理前汚泥または嫌気性処理後汚泥に残留する繊維物量に関して、先に示した3日間曝気試験後汚泥の繊維物量(以下「FI3」とも称する)、及び7日間嫌気的バイアル試験後汚泥の繊維物量(以下「FO7」とも称する)を用いて嫌気性処理工程前後の汚泥の固液分離性能を評価しておくことが望ましい。
【0033】
以上に示すように、汚泥に添加する繊維物質による「生物担体特性」、「可燃性ガス増量」、「嫌気性処理前後の固液分離特性」を定量的に把握した上でプロセス全体が最も効率的にバランス良く機能し、処理性能の安定化と低コスト化が実現できるよう設計するためには、プロセス構築前に上述のAD3:繊維物質好気性分解率(%:投入繊維VSあたり百分率)、DD7:繊維物質嫌気性分解率(%:投入繊維VSあたり百分率)、FG7:繊維物質由来CH
4発生率(%:投入繊維CODCr1gあたりCH
4発生量0.35NLを100%とした場合の比較百分率)、FI3:3日間曝気試験後汚泥の繊維物率(%:汚泥VSSあたりの74μm以上粗浮遊物百分率)、及びFO7:7日間嫌気的バイアル試験後汚泥の繊維物率(%:汚泥VSSあたりの74μm以上粗浮遊物百分率)を測定し、それらの結果を踏まえて総合的に判断して、繊維物質の添加位置、添加割合、汚泥移送ルートやその割合等について最適化を図ることが望ましい。
【0034】
本実施形態は水処理系や汚泥処理系に有機物としての繊維分を投入する方式であることから、本実施形態に係る処理を活用することにより、活性汚泥処理法の一種である長時間曝気法、OD法、嫌気好気法、嫌気無酸素好気法、ステップ流入法、膜分離活性汚泥、回分式活性汚泥法等の変法において、有機物処理以外のリン除去、窒素除去、汚泥減容化、等の評価項目を考慮した上での繊維物の添加位置と添加量の最適化を図ることも可能である。同様に、高濃度嫌気性消化、担体投入型嫌気性消化、乾式嫌気性消化等の嫌気性処理方式、ベルトプレス型、遠心型、スクリュー型、毛管現象利用型等の脱水処理方式等を考慮した、繊維物の添加位置と添加量の最適化を図ることも可能であることは勿論である。
【0035】
図1は、本発明の実施の形態に係る有機性廃水又は汚泥の処理方法の実施に好適な下水処理場の処理システムを表す概略図である。本処理システムは、有機性廃水または汚泥1を処理する最初沈澱池21、活性汚泥槽22、最終沈澱池23を含む水処理系2の処理設備と、最初沈澱池21で得られる初沈汚泥5及び最終沈澱池23で得られる余剰汚泥7を混合し、必要に応じて濃縮処理して混合生汚泥8とする混合槽31、混合生汚泥8を嫌気性処理する消化槽33及び消化槽33で得られる消化汚泥を固液分離する固液分離装置36を備える汚泥処理系3の処理設備とを備える。
【0036】
最初沈澱池21では、流入水である有機性廃水または汚泥1から有機酸を多く含む初沈汚泥5と流出水4とに分離される。流出水4は活性汚泥槽22において好気性微生物である活性汚泥を含む微生物と共に好気性処理が行われ、活性汚泥混合液6が得られる。活性汚泥混合液6は、最終沈澱池23において固液分離されて余剰汚泥7と処理水が得られる。
【0037】
最終沈澱池23で沈降分離した活性汚泥性微生物主体の余剰汚泥7は一部が活性汚泥槽22へ返送され、その他の余剰汚泥7と初沈汚泥5とが、混合槽31において混合されて混合生汚泥8が得られる。混合槽31で得られた混合生汚泥8は、消化槽33へ供給され、消化槽33において嫌気性微生物を用いた嫌気性処理が行われる。嫌気性消化処理により消化槽33から消化汚泥11が生成され、例えば脱水装置等の固液分離装置36において固液分離処理が行われ、脱水ケーキと濃縮液が得られる。濃縮液は最初沈澱池21へ循環される。なお、混合槽31は濃縮機能を有することができ、混合槽31における濃縮処理によって得られた濃縮分離水は最初沈澱池21へ返送される。
【0038】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水または汚泥の処理方法は、
図1に示すような、有機性廃水または汚泥を処理対象とし、微生物を利用して有機成分の処理を行う処理システムにおいて好適に用いられるものである。具体的には、本処理方法は、好気性微生物を用いた好気性処理を行う有機性廃水または汚泥、あるいは好気性処理後の有機性廃水または汚泥に対して生分解性有機系繊維物質を添加し、生分解性有機系繊維物質が添加された汚泥に対して嫌気性微生物を用いた嫌気性処理を行い、嫌気性処理の前段及び/又は後段において固液分離処理し、嫌気性処理及び固液分離処理の少なくとも1の処理に対して生分解性有機系繊維物質を更に添加することを含む。
【0039】
生分解性有機系繊維物質が添加された汚泥の一部を、嫌気性処理を経由せずに嫌気性処理の後段の固液分離処理へ迂回させてもよい。生分解性有機系繊維物質中に例えばカルシウムイオン、硫酸イオン等を含む場合には、嫌気性処理に投入されることにより硫酸イオンが硫化水素化し、排ガス中の脱硫処理における薬品使用量が増加したり、処理槽内に石膏スケールが発生したりしてトラブルが生じる場合がある。このような生分解性有機系繊維物質を使用する場合には、汚泥の一部を後段の固液分離処理へ迂回させることにより、処理システムのトラブルを低減しながら生分解性有機系繊維物質の添加による固液分離特性を向上させることができる。
【0040】
生分解性有機系繊維物質の物性に応じて、生分解性有機系繊維物質の添加位置及び添加率が調整されることが好ましい。以下において詳しく説明するが、生分解性有機系繊維物質の物性に応じて添加すべき量(添加率)や添加位置を調整することにより、処理プロセス全体の処理効率を向上することができる。
【0041】
生分解性有機系繊維物質の添加に際しては、有機性廃水または汚泥に生分解性有機系繊維物質を添加した場合における好気性処理、嫌気性処理、更には必要に応じて固液分離処理を模した試験を行い、試験の結果に基づいて、各添加位置における生分解性有機系繊維物質の添加率及び添加位置を調整することが好ましい。
【0042】
(好気性処理への繊維物質添加)
好気性微生物を用いた好気性処理を行う有機性廃水または汚泥、あるいは好気性処理後の有機性廃水または汚泥に対して生分解性有機系繊維物質を添加するために好適な添加位置としては、例えば、
図1に示す星印が付された4か所から添加することができる。即ち、(1)最初沈澱池21から越流した流出水4に添加する場合(
図1の添加位置1)、(2)活性汚泥槽22に添加する場合(
図1の添加位置2)、(3)最終沈澱池23において固液分離された余剰汚泥7のうち活性汚泥槽22に返送される返送汚泥に添加する場合(
図1の添加位置3)、(4)最終沈澱池23において固液分離された余剰汚泥7に添加する場合(
図1の添加位置4)などがある。
【0043】
なお、
図1の添加位置2に示す活性汚泥槽22に生分解性有機系繊維物質を添加する場合においては、活性汚泥槽22における処理として嫌気好気法等が採用される場合は、必要に応じて嫌気槽または好気槽のいずれかを選択して生分解性有機系繊維物質を添加することができる。
【0044】
(嫌気性処理への添加)
嫌気性処理に対して生分解性有機系繊維物質を添加するために好適な添加位置としては、例えば、
図2に示す星印が付された6か所から添加することができる。即ち、(1)流入原水である有機性廃水または汚泥1に添加する場合(
図2の添加位置1)、(2)最終沈澱池23において固液分離され、返送汚泥を引き抜いた後の汚泥処理系3の処理設備へと供給される余剰汚泥7に添加する場合(
図2の添加位置2)、(3)最終沈澱池23において固液分離された余剰汚泥7であって返送汚泥として活性汚泥槽22へ返送される汚泥を含む余剰汚泥7に添加する場合(
図2の添加位置3)、(4)混合槽31に添加する場合(
図2の添加位置4)、(5)混合槽31で混合され必要に応じて濃縮処理された濃縮汚泥に対して添加する場合(
図2の添加位置5)、(6)固液分離装置36で得られた分離水に添加する場合(
図2の添加位置6)などがある。
【0045】
図2の添加位置1で繊維物質が添加される場合、添加された繊維物質は最初沈澱池21で沈降し、混合槽31で混合及び必要に応じて濃縮処理されて、消化槽33へと供給される。
図2の添加位置2で繊維物質が添加される場合、繊維物質は混合槽31を経由して消化槽33へと供給される。
図2の添加位置3で繊維物質が供給される場合、繊維物質の一部が混合槽31を経由して消化槽33へと供給されるとともに、繊維物質の他の一部が水処理系2へと返送されることで好気性処理の処理効率の向上が期待できる。
図2の添加位置6で固液分離装置36から返流される分離水に対して繊維物質が供給される場合は、繊維物質の一部が最初沈澱池21、混合槽31を経て消化槽33へ供給されるとともに、繊維物質の他の一部が分離水の成分と一部反応することによって、水処理系2の設備の負荷を軽減する効果がある。
【0046】
(固液分離処理への添加)
固液分離処理に対して生分解性有機系繊維物質を添加するために好適な位置としては、例えば、
図3に示す星印が付された7箇所から添加することができる。即ち、(1)固液分離装置36へ投入される消化汚泥11へ添加する場合(
図3の添加位置1)、(2)脱水装置等の固液分離装置36に直接添加する場合(
図3の添加位置2)、(3)混合槽31で得られる混合生汚泥8を嫌気性処理を行う消化槽33を経由せずに嫌気性処理の後段の固液分離処理へ迂回させる迂回ライン37へ添加する場合(
図3の添加位置3)、(4)混合生汚泥8または混合槽31で濃縮処理された濃縮汚泥に対して添加する場合(
図3の添加位置4)、(5)混合槽31または混合槽31が備える濃縮機構へ添加する場合(
図3の添加位置5)、(6)最終沈澱池23から引き抜かれた余剰汚泥7へ添加する場合(
図3の添加位置6)、(7)流入原水である有機性廃水または汚泥1に添加する場合(
図3の添加位置7)などがある。
【0047】
図3の添加位置4及び5で繊維物質が添加される場合は、消化槽33での繊維物質の分解率に応じて固液分離工程で寄与する繊維物質変化量を考慮に入れることが好ましい。
図3の添加位置6で繊維物質が添加される場合は、余剰汚泥7の一部を返送汚泥として活性汚泥槽22へ返送することと、残りの汚泥を消化槽33で分解させることを考慮に入れることが好ましい。
図3の添加位置7で繊維物質が添加される場合、添加された繊維物質は最初沈澱池21で沈降し、混合槽31で混合及び必要に応じて濃縮処理されて、消化槽33へと供給されることを考慮に入れることが好ましい。
【0048】
これら好気性処理における「生物担体特性」、嫌気性処理における「可燃性ガス増量」、固液分離処理における「固液分離特性」をそれぞれ考慮した添加方法は、各処理施設の設置面積、レイアウト、水処理制御システム、制御盤容量、繊維物質搬入経路、繊維物質添加制御システム、維持管理作業上の動線及びそれらすべてを考慮した上での設備及び維持管理コストなどを考慮した上で、繊維物の最適添加位置を決定することが望ましい。
【0049】
特に、既設プラントの改造工事として本実施形態を採用する場合には、繊維物質の添加位置の選択は重要なポイントになるものであり、繊維物質の種類やプラントの状況に応じて
図1〜
図3に例示した添加位置を適宜組み合わせることができる。また、
図1〜
図3に例示した添加位置からも理解できるように、1の添加位置で「生物担体特性」、「可燃性ガス増量」及び「固液分離特性」の3つの効果のうち2つ以上の効果を同時に期待できる添加位置も存在するが、繊維物質の物性に応じて、以下に例示する5つの評価項目(AD3、DD7、FG7、FI3、FO7)に関する試験データを元にして判断することが望ましい。
【0050】
(生分解性有機系繊維物質)
生分解性有機系繊維物質としては、比重0.75〜1.15、更には0.96〜1.05、繊維長6.0mm以下、更には5.0mm以下の繊維を含む含水率15%以上の繊維物質が好適に利用される。具体的には、農産物系廃棄物を粉砕加工処理したセルロース系繊維状物(繊維物A)、食品加工系廃棄物を粉砕加工処理した果実系繊維状物(繊維物B)、木材加工系向上廃棄物を一部化学処理したセルロース、リグニン系繊維状物(繊維物C)などを用いることができる。
【0051】
繊維物Aとしては、含水率が15〜45%で、繊維長が50μm〜5.0mm、より典型的には75μm〜3.0mmの繊維状物質である。この繊維状物質は比重が0.75〜1.00であり、比重が0.85〜0.95である。繊維状物質を投入する水処理プロセスの中では、比重が小さすぎると浮上スカムとなる場合があり、逆に比重が大き過ぎると反応槽内で沈降する場合があり、いずれも繊維分に付着した微生物の反応性を低下させるリスクが生じる。なお、ここで表記した比重は含水率15%の時の気乾比重を示したものである。
【0052】
繊維物Bとしては、含水率が50〜85%で、繊維長が30μm〜4.0mm、より典型的には150μm〜3.0mmの繊維状物質である。この繊維状物は比重が0.85〜1.10であり、より典型的には比重が0.95〜1.05である。なお、ここで表記した比重は含水率50%の時の気乾比重を示したものである。
【0053】
繊維物Cとしては、含水率が40〜97%で固形状物や液状物等形態は様々であり、繊維長が30μm〜6.0mm、より典型的には40μm〜4.0mm、比重が0.75〜0.95、より典型的には比重が0.75〜0.90の繊維状物質を含む。なお、ここで表記した比重は含水率15%の時の気乾比重を示したものである。
【0054】
発生元が異なる3種類の繊維物A、B、Cに対して、それぞれ上述のAD3(繊維物質好気性分解率(%:投入繊維VSあたり百分率))、DD7(繊維物質嫌気性分解率(%:投入繊維VSあたり百分率))、FG7(繊維物質由来CH
4発生率(%:投入繊維CODCr1gあたりCH
4発生量0.35NLを100%とした場合の比較百分率))、FI3(3日間曝気試験後汚泥の繊維物率(%:汚泥VSSあたりの74μm以上粗浮遊物百分率))、及びFO7(7日間嫌気的バイアル試験後汚泥の繊維物率(%:汚泥VSSあたりの74μm以上粗浮遊物百分率))を測定した例を
図4に示す。
【0055】
図4に示すように、繊維物Aの場合、好気処理のAD3は13%と分解率は低いものの、嫌気処理のDD7は72%と分解率が高く、嫌気処理におけるCH
4化率FG7も64%と比較的高い。また、好気処理後の繊維物率FI3は18%と比較的高く、固液分離濃縮性は比較的良いと思われ、低薬注濃縮及び高濃度消化が可能であると推測できる。嫌気性消化処理後の繊維物率FO7は10%と比較的低く、固液分離性能は比較的悪いと推測される。
【0056】
図4に示す繊維物Aの評価項目の結果を鑑みてプラント全体のプロセスを設計した場合、好気性処理工程において繊維物Aを対汚泥MLSSあたり3〜30%の添加率、より好ましくは8〜22%の添加率で投入することが好ましい。嫌気性処理工程に導入する汚泥を例えば、無薬注機械濃縮とするか、または対汚泥SSあたり凝集剤を0.20%以下の薬注率凝集後2.0〜4.5倍、より好ましくは2.5〜3.5倍となるように濃縮し、約30日おこなうことを想定すると、嫌気性消化工程後の汚泥中には繊維分があまり残留しないため、嫌気性処理工程へ投入する対汚泥SSあたり3〜20%の添加率、より好ましくは5〜15%の添加率で繊維物Aを再添加して固液分離性を高めて固液分離処理(脱水処理)する。
【0057】
上記処理方式により得られるメリットとしては、低コスト高濃度消化処理により必要とする消化槽容量が小さくできる点、消化槽でのCH
4余剰ガス回収量の増加、脱水処理における薬注率軽減、脱水処理後の有料廃棄ケーキ発生量軽減等が挙げられる。
【0058】
繊維物Bの場合、好気処理のAD3は58%と分解率は高く、嫌気処理のDD7も83%と分解率は非常に高い。嫌気処理におけるCH
4化率FG7も69%と比較的高い。一方で、好気処理後の繊維物率を示すFI3は11%と比較的低く、この結果から、添加した繊維物がほとんど分解されてしまい、好気処理後に残留する量はわずかであることが分かる。よって、繊維物Bの場合、好気性処理を経た汚泥に対する固液分離濃縮性は比較的悪いと考えられ、このままでは低薬注濃縮及び高濃度消化は困難であると推測できる。嫌気性消化処理後の繊維物率を示すFO7も7%と比較的低く、このままでは消化汚泥の固液分離性能も比較的悪いと推測される。
【0059】
繊維物Bの評価項目の結果を鑑みてプラント全体のプロセスを設計した場合、好気性処理工程において繊維物Bは生物担体としての名目では好気性処理工程には多量には導入せず、必要に応じて水処理系の脱窒用水素供与体として適宜添加する方式とするか、好気性処理後の最終沈澱池23から得られる余剰汚泥7に添加する方式とし、その際の添加率としては対汚泥MLSSあたり2〜12%が好ましい。さらに、繊維物Bを好気性処理後の嫌気性処理工程に導入する直前の汚泥に対して、対汚泥MLSSあたり6〜30%の添加率、より好ましくは10〜20%で添加し、濃縮処理は行わずに嫌気性消化工程に導入する。30日の嫌気性消化工程後の汚泥中には繊維分がほぼ分解してあまり残留しないため、固液分離直前に対汚泥SSあたり3〜15%の添加率、より好ましくは5〜10%で繊維物Bを再添加して固液分離性を高めて脱水処理する。
【0060】
上記処理方式により得られるメリットとしては、消化槽でのCH
4余剰ガス回収量の増加、脱水処理における薬注率軽減、脱水処理後の有料廃棄ケーキ発生量軽減等が挙げられる。
【0061】
繊維物Cの場合、好気処理のAD3は7%、嫌気処理のDD7も24%と分解率はともに低く、嫌気処理におけるCH
4化率FG7も28%と比較的低い。好気処理後の繊維物率FI3は20%と比較的高く、添加した繊維物の多くが残留していることが分かる。そのため好気性処理を経た汚泥に対する固液分離濃縮性は比較的良いと考えられ、低薬注濃縮及び高濃度消化は容易であると推測できる。嫌気性消化処理後の繊維物率FO7は17%と比較的高く、消化汚泥の固液分離性能も比較的良いと推測される。
【0062】
繊維物Cの評価項目の結果を鑑みてプラント全体のプロセスを設計した場合、好気性処理工程において繊維物Cを対汚泥MLSSあたり2〜18%の添加率、より好ましくは5〜12%の添加率で活性汚泥中に投入し、嫌気性処理工程に導入する汚泥は無薬注または対汚泥SSあたり凝集剤を0.15%以下の薬注率凝集後1.5〜4.5倍、より好ましくは2.5〜3.5倍に機械濃縮することが効率的には良い。ただし、添加した繊維物からの余剰CH
4ガス回収量増加はあまり見込めないことから必要以上に好気性処理工程や嫌気性消化工程に導入する必要性はないと考えられる。
【0063】
また、繊維物Cはカルシウムイオンと硫酸イオンを比較的多く含むことから、好気性処理工程ではリン酸イオンとカルシウムイオンが結合したリン酸カルシウム粒子が比較的多く発生し、水処理系におけるリン除去に貢献することができる。一方で嫌気性消化工程では繊維物C由来と思われる硫酸イオンが硫化水素化し排ガス中の脱硫処理における薬品使用量増加と石膏スケールの発生により一部トラブルが見られる場合があることから、繊維物Cの好気性処理工程と嫌気性消化工程へ導入する量はそれらのデメリットが出にくい範囲内での調整が必要である。30日の嫌気性消化工程後の汚泥中には繊維分が多く残留しており、このままの汚泥でもケーキ含水率は比較的低いが、さらに対汚泥SSあたり1〜12%、より好ましくは3〜8%の添加率で繊維物Cを再投入することでさらなる脱水性向上が可能である。
【0064】
上記処理方式により得られるメリットとしては、水処理系におけるリン除去効果によるリン除去用薬品使用量軽減、低コスト高濃度消化処理により必要とする消化槽容量が小さくなる点、消化槽でのCH
4余剰ガス回収量の増加、脱水処理における薬注率軽減、脱水処理後の有料廃棄ケーキ発生量軽減等が挙げられる。
【0065】
(処理装置)
本発明の実施の形態に係る処理装置は、有機性廃水または汚泥に対して好気性微生物を用いた好気性処理を行う好気性処理手段と、有機性廃水または汚泥、あるいは好気性処理後の有機性廃水または汚泥に対して生分解性有機系繊維物質を添加する添加手段と、生分解性有機系繊維物質が添加された汚泥に対して嫌気性処理を行う嫌気性処理手段と、嫌気性処理の前段及び/又は後段において固液分離処理する固液分離手段と、嫌気性処理及び固液分離処理の少なくとも1の処理に対して、生分解性有機系繊維物質を更に添加する再添加手段とを備える。
【0066】
好気性処理手段としては、例えば、活性汚泥等の好気性微生物を用いて廃水または汚泥を処理するための
図1〜
図3に示す活性汚泥槽22が好適に用いられる。添加手段は、生分解性有機系繊維物質を所定の添加率で添加することが可能な装置であれば既知の任意の手段が使用できる。嫌気性処理手段としては、嫌気性微生物を用いて嫌気性処理を行い、メタンガス等のバイオガスを発生させるための処理装置であり、例えば
図1〜
図3の消化槽33が利用できる。嫌気性処理装置の前段には、汚泥を濃縮処理するための濃縮機等の固液分離手段を設けることができる。嫌気性処理装置の後段には、嫌気性処理によって発生した消化汚泥11を脱水処理するための脱水装置等の例えば
図1〜
図3の固液分離装置36を設けることができる。
【0067】
図3に示すように、生分解性有機系繊維物質が添加された汚泥の一部を、嫌気性処理手段である消化槽33を経由せずに消化槽33の後段の固液分離装置36へと迂回させる迂回ライン37を備えていてもよい。また、上述したように、添加される生分解性有機系繊維物質に対して好気性処理、嫌気性処理及び固液分離処理を模した試験を行い、試験により得られた生分解性有機系繊維物質の物性に基づいて、各添加位置における生分解性有機系繊維物質の添加率を調整する制御手段(不図示)を更に備えていても良い。
【実施例】
【0068】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0069】
F下水処理場に流入する原水を用いたパイロット試験として
図5に示す処理フローに基づいて、実施例1〜3の処理を行った。
図5の(1)は実施例1における繊維物質の添加位置、(2)は実施例2における繊維物質の添加位置、(3)は実施例3における添加位置をそれぞれ示す。
【0070】
水処理系は嫌気好気法を採用する活性汚泥処理法に準じた運転条件とした。評価項目と関連する運転条件としては、水処理系では活性汚泥処理のHRT:10時間、SRT:72時間とし、汚泥処理系では、初沈汚泥と余剰汚泥の混合生汚泥を消化槽に投入し、消化条件は35℃中温消化、消化槽水理学的滞留日数は25日、汚泥処理ではベルトプレス型脱水機を採用し、単価500円/kgの高分子凝集剤1液処理による脱水後、脱水ケーキを15,000円/tで場外搬送する方式とし、使用電力単価は15円/kwhとして評価した。
【0071】
実施例1〜3で添加する繊維物質の添加率と添加位置に関しては、上述した5つの評価項目(AD3、DD7、FG7、FI3、FO7)に関する物性データを基に添加率及び添加位置ともにそれぞれ適正値に設定して運転を行った。実施例1〜3におけるプロセスの評価項目は、すべて比較例1における処理対象流入下水処理量あたりの性能数値に対する比較百分率として表記し、項目としては「プラント動力費」「使用薬品費」「プラント設置面積」「余剰CH
4ガス回収量」「ケーキ処分費」の5項目とした。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例1では、繊維物Aを好気処理工程の対汚泥MLSSあたり15%の添加率で添加し、嫌気性処理工程に導入する汚泥に対して対汚泥SSあたり0.1%の高分子凝集剤添加後、スクリーン型機械濃縮機を用いて汚泥濃度を2.5倍に濃縮し、濃縮汚泥を滞留日数25日の嫌気性消化工程に導入し、嫌気性消化後の汚泥に対して汚泥SSあたり8%の添加率で繊維物Aを汚泥に再添加して固液分離(脱水工程)に導入し、高分子凝集剤を対汚泥SSあたり1.2%添加することで脱水ケーキを得る方法を採用した。
【0074】
その結果として、プラント動力費は12pt%削減できた。これは消化槽に投入する汚泥を2.5倍に濃縮したことから消化槽容量が比較例1の2/5に小さくなり、それに伴い攪拌機、ポンプ、加温設備等の付帯設備の動力が小さくなったことが主要因である。使用薬品は、汚泥濃縮用凝集剤として新たに使用したものの、脱水用凝集剤としては比較的低薬注率で良好な脱水が可能となったことから全体としては13pt%削減できた。プラント設置面積は消化槽容量が比較例1の2/5であるため全体としては15pt%減となった。
【0075】
消化槽でのCH
4余剰ガス回収量は有機物として新たに投入した繊維物A由来の発生ガスが追加となった他、消化槽容量が2/5となったことから消化槽加温用の回収CH
4燃焼熱エネルギー必要量が大幅に低下した分発電に回されるCH
4余剰ガス量が36pt%増加した。ケーキ処分費は13pt%減となった。これは汚泥が繊維物を多く含む脱水性の良い汚泥に変化したことからケーキ含水率が約75%まで低下し比較例1の82%のケーキ含水率と比較して7pt%低下し、ケーキ搬出量としては添加した繊維物Aによる固形物増加分を相殺して余りある効果が得られた。
【0076】
実施例2では、繊維物Bを通常時は好気処理工程には導入せず、嫌気好気法における嫌気槽での脱窒反応の水素供与体不足時のみ繊維物Bを必要量分のみ嫌気槽直前のラインに2〜5%(平均3%)添加する方式とした。繊維物Bは嫌気性処理工程に導入する汚泥に対しては対汚泥SSあたり23%の添加率で添加し、滞留日数25日の嫌気性消化工程に導入し、該嫌気性消化後の汚泥に対して汚泥SSあたり5%の添加率で繊維物Bを汚泥に再添加して脱水工程に導入し高分子凝集剤を対汚泥SSあたり1.4%添加することで脱水ケーキを得る方法を採用した。
【0077】
その結果として、プラント動力費及びプラント設置面積は装置点数増加によりそれぞれ2〜3%増加したものの、使用薬品は脱水用凝集剤が比較的低薬注率で良好な脱水が可能となったことから全体としては9pt%削減できた。消化槽でのCH
4余剰ガス回収量は有機物として新たに投入した繊維物Bが易分解性であったことから繊維物B由来の発生CH
4ガスが大幅に増加した結果CH
4余剰ガス量が43pt%増加した。ケーキ処分費は9pt%減となった。これは汚泥が繊維分を多く含む脱水性の良い汚泥に変化したことからケーキ含水率が約77%まで低下し比較例1の82%のケーキ含水率と比較して5pt%低下し、ケーキ搬出量としては添加した繊維物Bによる固形物増加分を相殺して余りある効果が得られた。
【0078】
実施例3では、繊維物Cを好気処理工程の対汚泥MLSSあたり11%の添加率で添加し、嫌気性処理工程に導入する汚泥に対して無薬注でスクリーン型機械濃縮機を用いて汚泥濃度を2.5倍に濃縮し、該濃縮汚泥を滞留日数25日の嫌気性消化工程に導入し、該嫌気性消化後の汚泥に対して汚泥SSあたり6%の添加率で繊維物Cを汚泥に再添加して脱水工程に導入し高分子凝集剤を対汚泥SSあたり1.1%添加することで脱水ケーキを得る方法を採用した。
【0079】
その結果として、プラント動力費は13pt%削減できた。これは消化槽に投入する汚泥を2.5倍に濃縮したことから消化槽容量が比較例1の2/5に小さくなり、それに伴い攪拌機、ポンプ、加温設備等の付帯設備の動力が小さくなったことが主要因である。使用薬品は、脱水用凝集剤としては比較的低薬注率で良好な脱水が可能となったことから全体としては17pt%削減できた。プラント設置面積は消化槽容量が比較例1の2/5であるため全体としては15pt%減となった。消化槽でのCH
4余剰ガス回収量は有機物として新たに投入した繊維物C由来の発生ガスが若干追加となった他、消化槽容量が2/5となったことから消化槽加温用の回収CH
4燃焼熱エネルギー必要量が大幅に低下した分発電に回されるCH
4余剰ガス量が22pt%増加した。ケーキ処分費は25pt%減となった。これは汚泥が繊維分を多く含む脱水性の良い汚泥に変化したことからケーキ含水率が約69%まで低下し比較例1の82%のケーキ含水率と比較して13pt%低下し、ケーキ搬出量としては添加した繊維物Cによる固形物増加分を相殺して余りある効果が得られた。
【解決手段】有機性廃水または汚泥を処理対象とし、微生物を利用して有機成分の処理を行う有機性廃水または汚泥の処理方法であって、好気性微生物を用いた好気性処理を行う有機性廃水または汚泥に対して、あるいは好気性処理後の有機性廃水または汚泥に対して、生分解性有機系繊維物質を添加し、生分解性有機系繊維物質が添加された汚泥に対して嫌気性微生物を用いた嫌気性処理を行い、嫌気性処理の前段及び/又は後段において固液分離処理し、嫌気性処理及び固液分離処理の少なくとも1の処理に対して生分解性有機系繊維物質を更に添加することを含む有機性廃水または汚泥の処理方法である。