特許第6546908号(P6546908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546908
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】密閉要素
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/447 20060101AFI20190705BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   F16J15/447
   F16J15/16 E
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-503544(P2016-503544)
(86)(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公表番号】特表2016-512870(P2016-512870A)
(43)【公表日】2016年5月9日
(86)【国際出願番号】DE2014100090
(87)【国際公開番号】WO2014146643
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年1月16日
(31)【優先権主張番号】202013101140.1
(32)【優先日】2013年3月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506320738
【氏名又は名称】パウル ミュラー ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー ウンターネーメンスベタイリグンゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100202016
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 喬
(72)【発明者】
【氏名】エルバッハー マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ラトケ アンドレアス
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04458957(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0002742(US,A1)
【文献】 実開昭55−137758(JP,U)
【文献】 実開昭61−085914(JP,U)
【文献】 特開平08−088950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/40−15/453
F16J 15/54−15/56
F16J 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の機械部材の円筒形状の内部面(13)及び第2の機械部材の円筒形状の外部面(8)を密閉するための密閉要素(1)にして、
前記密閉要素(1)が内輪(2)、前記内輪(2)に対して同軸に配設された外輪(3)及びシールギャップ(14)を有しており、当該シールギャップ(14)が、前記内輪(2)の外周面(7)及び前記外輪(3)の内周面(12)によって形成され、その際、前記シールギャップ(14)が、前記内輪(2)及び前記外輪(3)の共通の軸(A1)を通る軸方向断面で、少なくとも以下の異形体部分、つまり入口部分(15)、出口部分(20)及びメアンダー部分(16)、を備えた輪郭を有しており、
−前記入口部分(15)は、前記共通の軸(A1)に対する第1の半径を備えた、前記シールギャップ(14)の第1の端部部分であり、
−前記出口部分(20)は、前記共通の軸(A1)に対する第2の半径を備えた、前記シールギャップ(14)の第2の端部部分であり、その際前記第2の半径は、前記第1の半径よりも小さく、
−前記メアンダー部分(16)は、前記入口部分(15)に接続しており、また、単調に減少する半径を有しており、
その際、前記密閉要素(1)が更に前記シールギャップ(14)内で前記メアンダー部分(16)及び前記出口部分(20)の間に配設されたシールリング(18)を有している密閉要素(1)において、
前記シールギャップ(14)の前記輪郭が、前記メアンダー部分(16)及び前記シールリング(18)の間に、縮小部(17)を有していること
前記シールリング(18)が、前記シールギャップ(14)内において、前記シールリング(18)が前記内輪(2)のみに接触するか又は前記外輪(3)のみに接触するように、位置決めされていること、及び
前記シールギャップ(14)の前記輪郭が、前記シールリング(18)及び前記出口部分(20)の間に、拡張部を有していること
を特徴とする密閉要素。
【請求項2】
請求項1に記載の密閉要素において、
前記内輪(2)の前記外周面(7)及び/又は前記外輪(3)の前記内周面(12)が、ノッチ(19)を有しており、当該ノッチ(19)内に前記シールリング(18)が配設されていることを特徴とする密閉要素。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の密閉要素において、
前記メアンダー部分(16)が少なくとも、互いに平行に延伸する、前記内輪(2)及び前記外輪(3)の円錐状の部分面の第1ペア、並びに、互いに平行に延伸する、前記内輪(2)及び外輪(3)の円錐状の部分面の第2ペアから形成され、前記第1ペア及び前記第2ペアが互いに向い合って円錐状に形成されていることを特徴とする密閉要素。
【請求項4】
請求項に記載の密閉要素において、
前記第1ペアの円錐角及び前記第2ペアの円錐角が、大きさに関して、類似の値又は同一の値を有することを特徴とする密閉要素。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の密閉要素において、
前記外輪(3)が更に排水ノッチを有することを特徴とする密閉要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の機械部材の円筒形状の内部面及び第2の機械部材の円筒形状の外部面を密閉するための密閉要素(シーリング部材、シール部材)に関している。
【背景技術】
【0002】
所謂ギャップシール又はラビリンスシールとして形成されている密閉要素は以前より知られている。これらのギャップシール又はラビリンスシール内では、一般的なメアンダー形状で形成されたシーリングギャップを設けることによって、非接触の密閉(非接触シーリング)が行われている。しかしながら、このギャップ内へ周辺媒体(特には液体)が浸入することは可能である。ギャップシール又はラビリンスシールは従って、完全に密閉された状態ではなく、ある程度の周辺媒体の通過を可能にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、改善された密閉特性を備えた密閉要素を提供することである。
【0004】
この課題は、請求項1の特徴を有する密閉要素によって解決される。有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0005】
本発明に従う密閉要素は、第1の機械部材の円筒形状の内部面及び第2の機械部材の円筒形状の外部面を密閉するために利用される。本発明に従う密閉要素は、内輪(インナーレース)、内輪に対して同軸に配設された外輪(アウターレース)及びシールギャップを有しており、当該シールギャップは、内輪の外周面及び外輪の内周面によって形成される。シールギャップは、内輪及び外輪の共通の軸を通る軸方向断面で、少なくとも以下の異形体部分、つまり、入口部分、出口部分及びメアンダー部分、を備えた輪郭(プロフィール)を有している。入口部分は、共通の軸に対する第1の半径を備えたシールギャップの第1の端部部分である。出口部分は、共通の軸に対する第2の半径を備えたシールギャップの第2の端部部分である。第2の半径は、第1の半径よりも小さい。メアンダー部分は入口部分に続いておりまた単調に減少する半径を有している。
【0006】
単調に減少する、とはここでは数学的な意味で理解される、すなわち、入口部分から始まって共通の軸に対してのシールギャップの輪郭の間隔が減少する或いはこの間隔が同一のままである、と理解される。
【0007】
この様態では、入口側からシールギャップ内へ浸入する液体は、密閉されるべき機械部材の回転時には、入口部分に対する遠心力に基づき、逆方向へ搬送される。すなわち、所謂逆流が生じる。これもまた、密閉要素の密閉特性を改善する。
【0008】
メアンダー部分とは、シールギャップの一部分であって、その部分内でシールギャップがメアンダー形状の輪郭を有している部分、と理解される。この場合、メアンダー形状とは、輪郭のジグザク状の形成、特に、輪郭の矩形形状及び/又は三角形状の形での蛇行、そして同様に、輪郭の環状の形成、と理解される。
【0009】
シールギャップの上述の形成に基いて、密閉要素は大きな軸方向の遊びを有している。更に所謂、分離組み立て(内輪及び外輪の別々の組み立て)が可能である。従って、組み立ての容易さは向上される。
【0010】
有利な実施形態においては、密閉部材は更にシールリングを有しており、当該シールリングはシールギャップ内に配設されている。このシールリングによって、周囲媒体の流れは阻害される。特にシールリングは、密閉されるべき機械部材が静止した状態においても、すなわち、密閉されるべき機械部材の間で回転運動が行われず、また従って先の段落で記載された逆流が発生しない場合であっても、密閉特性を改善する。従って、本発明のこの実施形態は、密閉されるべき機械部材の回転状態においても、また同様に静止状態においても、改善された密閉特性を有している。
【0011】
有利な様態では、シールリングはこの際、シールギャップ内において、シールリングが内輪のみに接触するか又は外輪のみに接触するように、位置決めされている。この場合、シールリングを有するこの実施形態においても、密閉要素は非接触の密閉要素である。
【0012】
特に有利な様態では、シールリングは、メアンダー部分及び出口部分の間でシールギャップ内に配設されている。この様態では、入口部分の方向への、メアンダー部分の逆流は、シールリングが存在することによって、妨げられない。
【0013】
シールリングは、内輪の外周面(外側に存在する内輪の側面)のノッチ内、及び/又は、外輪の内周面(内側に存在する外輪の側面)のノッチ内、に位置決めされていてもよい。これは、格別に位置が安定し且つ正確な、シールリングの位置決めを可能にする。更に、密閉要素の駆動中の、シールリングの故意ではない(偶然の)脱落が効果的に防止される。
【0014】
更なる有利な実施形態においては、メアンダー部分及びシールリングの間におけるシールギャップの輪郭は、狭窄部(シールギャップ高さの減少部分)を有している。この狭窄部は、シールギャップ内へ浸入した周囲媒体にとっての更なる抵抗を発生させる。狭窄部に引き続いて配設されたシールリングとの組み合わせで、周囲媒体に対する密閉要素の透液性は更に減少されるので、密閉特性は更に改善される。
【0015】
更なる有利な実施形態においては、シールギャップの輪郭は、シールリング及び出口部分の間に、拡張部(シールギャップの拡大部、シールギャップ高さの増大部)を有している。出口部分の方向でシールリングに接続する拡張部によって、さもなければ場合によっては発生し得る毛細管力に、抵抗することが出来る。拡張部によって、入口部分からシールギャップ内へ浸入した周囲液体が、(毛細管力に基いて)シールリングを通りすぎて吸い込まれ得ることはない。
【0016】
有利な実施形態においては、メアンダー部分は少なくとも、互いに平行に延伸する、内輪及び外輪の円錐状の部分面(円錐の一部をなす面)の第1ペア、並びに、互いに平行に延伸する、内輪及び外輪の円錐状の部分面の第2ペアから形成される。第1ペア及び第2ペアはこの場合、互いに向い合って円錐状に形成されている。そのようなメアンダー部分は、一方では、改善された密閉性を導く大きなシールギャップ長さを可能にし、またもう一方では、浸入する周囲媒体の入口部分への妨げのない逆流を可能にする。
【0017】
格別に有利な様態では、第1ペアの円錐角及び第2ペアの円錐角は、大きさに関して、類似の(すなわち多くとも10%分しか変わらない)値又は同一の値を有する。この様態では、浸入した周囲媒体の格別に均質な逆流が達成される。
【0018】
外輪にドレン溝が存在することによって、侵入した周囲媒体の排水或いは逆流を、更に改良することが出来る。
【0019】
密閉要素は、金属性の原材料、特には鉄材又はアルミニウム材から製造されていてもよいし、同様にポリマー材料、特にはポリオキシメチレン(ポリアセタール)から製造されていてもよい。また、内輪及び外輪が異なる原材料から構成されていることも可能である。
【0020】
本発明は、実施例を用いて図中でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】密閉要素の側面図を示す。
図2図1のA−A切断面に沿った共通の軸を通る密閉要素の軸方向断面図を示す。
図3】密閉されるべき面が追加的に示された、図2の範囲Zの拡大された断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から図3に示されている密閉要素1は、内輪2及びこの内輪2に対して同軸に配設された外輪3を有している。内輪2及び外輪3は、共通の軸A1に対して同軸に配設されている。
【0023】
内輪2は、基本的に軸方向に延伸する内周面(内側に存在する周面)4、第1の側面(端面)5、第2の側面(端面)6、並びに外周面(外側に存在する周面)7を有している。内周面4は、機械部材の円筒状の外部面8に接続している。第1の側面5及び第2の側面6は基本的に円周方向に延伸している。第1の側面5は、第2の側面6よりも狭い幅を有している。
【0024】
外輪3は、基本的に軸方向に延伸する外周面9、第1の側面(端面)10、第2の側面(端面)11、並びに内周面12を有している。外周面9は、別の機械部材の円筒状の内部面13に接続している。第1の側面10及び第2の側面11は基本的に円周方向に延伸している。第1の側面10は、第2の側面11よりも広い幅を有している。
【0025】
外輪3の内周面12及び内輪2の外周面7は、それらの間にシールギャップ14を形成する。言い換えれば、外輪3の内周面12及び内輪2の外周面7は互いに接触していないだけでなく、リング形状のギャップ、すなわちシールギャップ14が存在している。
【0026】
図2及び図3に示されているシールギャップ14の輪郭は、また従ってシールギャップ14自体は、第2の側面6或いは11の範囲に、端部部分を有している。この端部部分は、以下においては、入口部分15と称される。この入口部分15は、共通の軸A1に対する間隔として、第1の半径の高さに間隔を有している。入口部分15は軸方向に延びるギャップとして形成されており、このギャップは入口領域に直接、縮小された高さ部を有している。入口領域直近のこの縮小された高さ部は、シールギャップ14の遮蔽をもたらし、また密閉要素の密閉特性を改善する。
【0027】
入口部分15には、メアンダー部分16が接続している。このメアンダー部分16は、単調に縮小する半径を有している。言い換えれば、シールギャップ14の間隔は、メアンダー部分16の範囲で共通の軸14に対して相対的に、単調に減少している。入口部分15側からシールギャップ14内へ浸入する周囲液体は、この様態では、密閉されるべき機械部分の回転の際に、逆流する。図2及び図3に示されているメアンダー部分16は、基本的に、外輪3の内周面12及び内輪2の外周面7の、互いに平行に延伸する円錐状の部分面の第1ペア、及び、外輪3の内周面12及び内輪2の外周面7の、互いに平行に延伸する円錐状の部分面の第2ペアによって構成されている。第1及び第2ペアは、互いに向かい合って円錐状に形成されているので、この部分には、シールギャップ14のジグザク状の輪郭がもたらされる。
【0028】
メアンダー部分16には、シールギャップ14の縮小部17が接続している。縮小部17は、浸入する周囲の液体に対する障壁部であり、また従って、密閉要素1の密閉特性を改善する。
【0029】
縮小部17には、シールリング18が接続している。シールリング18はシールギャップ14内に配設されている。より正確には、シールリング18は、内輪2に形成されたノッチ19内で位置決めされている。図示された実施例では、シールリング18はOリングとして形成されている。シールリング18は、シールギャップ14内へ浸入した周囲液体の流れを阻む。特に、シールリング18は、密閉されるべき機械部材が静止した状態においても、密閉特性を改善する、すなわち、密閉されるべき機械部材間の回転運動が行われない場合であっても、密閉特性を改善する。シールリング18及び外輪3の間にはギャップが存在するので、シールリング18及び外輪3の間の接触は生じない。それにより、密閉要素1は非接触シールリングとして形成されている。
【0030】
シールリング18には出口部分20が接続している。出口部分20は、第1側面5或いは10の範囲内のシールギャップ14の端部部分である。出口部分20は、軸方向に延伸する部分として形成されている。出口部分20は、共通の軸A1に対する間隔として、第2の半径の高さに間隔を有している。第2の半径は、第1の半径よりも小さい。出口部分20の範囲のシールギャップ14の高さはこの場合比較的大きい、すなわち少なくとも縮小部17の範囲のシールギャップ14の高さよりも大きい。それにより、浸入した周囲液体をシールリング18の周りへと導き得る毛細管力の作用に抵抗することが出来る。
【0031】
図中には、外輪3に配された排水ノッチは図示されていない。
【符号の説明】
【0032】
1 密閉要素
2 内輪(インナーレース)
3 外輪(アウターレース)
4 内周面
5 第1側面
6 第2側面
7 外周面
8 円筒形状の外部面
9 外周面
10 第1側面
11 第2側面
12 内周面
13 円筒形状の内部面
14 シールギャップ
15 入口部分
16 メアンダー部分
17 縮小部
18 シールリング
19 ノッチ
20 出口部分
A1 共通の軸
図1
図2
図3