(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546917
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】燃料電池スタック及び燃料電池スタックを製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20190705BHJP
H01M 8/023 20160101ALI20190705BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20190705BHJP
H01M 8/1004 20160101ALI20190705BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20190705BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M8/023
H01M8/0258
H01M8/1004
!H01M8/10 101
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-526163(P2016-526163)
(86)(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公表番号】特表2016-535398(P2016-535398A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】FR2014052683
(87)【国際公開番号】WO2015063392
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年9月27日
(31)【優先権主張番号】1360644
(32)【優先日】2013年10月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】エルリス ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ジャブール ララ
(72)【発明者】
【氏名】ロッシュ ジャン−セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン レミ
【審査官】
高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−153349(JP,A)
【文献】
特開2009−295342(JP,A)
【文献】
特開2007−048643(JP,A)
【文献】
特開2004−273392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86−4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン交換膜に固定されたカソードを備える膜電極アセンブリ(111、112、113)と、
空気流入口(125)と水流出口(126)との間に流路(106)を区切る導体プレート(102)と、
カソード(112)と前記導体プレート(102)との間に挿入され圧縮されて、前記流路をカバーするガス拡散浸透層(22)と、
を備え、
前記ガス拡散浸透層(22)は、第1の部分(24)及び第2の部分(25)を備え、
前記第1の部分と前記第2の部分とは、
2つの分けられた構成要素であり、インターフェースにおいて隣り合っており、相補的で非直線形な隣り合う縁部を有し、
異なる組成を有し、
前記圧縮の元で同じ厚さを有し、
前記第1の部分の前記組成の乾燥条件下における電流密度は、前記第2の部分の前記組成の乾燥条件下における電流密度より大きく、
前記第2の部分の前記組成の湿った条件下における電流密度は、前記第1の部分の前記組成の湿った条件下における電流密度より大きく、
前記第1の部分は、前記空気流入口から前記流路の長さの15%超過50%未満の間で延在しており、前記第2の部分は、前記水流出口から前記流路の長さの50%超過85%未満の間で延在していることを特徴とする、燃料電池スタック(2)。
【請求項2】
前記膜電極アセンブリに固定された補強材(132)を備え、
前記補強材(132)は、
前記ガス拡散浸透層の第1の部分(24)によって横切られる第1の中央開口(134)と、
前記ガス拡散浸透層の第2の部分(25)によって横切られる第2の中央開口(135)と、
前記第1の中央開口と前記第2の中央開口とを切り離し、前記ガス拡散浸透層(22)の前記第1の部分と前記第2の部分との間でインターフェースの上に重ねられる片状部材(133)と、を備える、請求項1に記載の燃料電池スタック(2)。
【請求項3】
前記片状部材(133)は、1mm超過2mm未満の幅を有する、請求項2に記載の燃料電池スタック(2)。
【請求項4】
ガス拡散浸透層(22)の異なる組成を有する第1の部分(24)と第2の部分(25)とを隣接させるステップと、
前記ガス拡散浸透層(22)で導体プレート(102)の流路(106)を覆うステップと、
膜電極アセンブリのカソードに対する前記第1の部分及び前記第2の部分のその後の処理の前に、補強材(132)を前記膜電極アセンブリに固定するステップと、
インターフェース(26)を片状部材(133)の上に重ねるステップと、
前記第1の部分(24)、前記第2の部分(25)を、それぞれ、第1の中央開口(134)、第2の中央開口(135)を横切るように、前記カソード(112)に対して処理するステップと、
前記第1の部分と前記第2の部分とが同じ厚さを有するように、前記ガス拡散浸透層の前記第1の部分(24)及び前記第2の部分(25)を前記導体プレート(102)と前記カソード(112)との間で圧縮するステップと、
を備え、
前記第1の部分と前記第2の部分とは、2つの分けられた構成要素であり、インターフェースにおいて隣り合っており、相補的で非直線形な隣り合う縁部を有し、前記第1の部分の前記組成の乾燥条件下における電流密度は、前記第2の部分の前記組成の乾燥条件下における電流密度より大きく、前記第2の部分の前記組成の湿った条件下における電流密度は、前記第1の部分の前記組成の湿った条件下における電流密度より大きく、
前記流路は、空気流入口(125)と水流出口(126)との間に延在しており、前記第1の部分は、前記空気流入口から前記流路の長さの15%超過50%未満の間で延在しており、前記第2の部分は、前記水流出口から前記流路の長さの50%超過85%未満の間で延在しており、
前記補強材(132)は、前記第1の中央開口(134)、前記第2の中央開口(135)、及び、前記第1の中央開口と前記第2の中央開口とを切り離す前記片状部材(133)を備える燃料電池スタック(2)を製造するプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関し、特に、プロトン交換膜(PEM)燃料電池スタックに関する。
【0002】
燃料電池スタックは、将来に大量生産される自動車に電気を供給するため、及び、多くの他のアプリケーションのためのシステムとして、構想されている。
燃料電池スタックは、化学エネルギーを電力に直接変える電気化学的装置である。ジハイドロゲン(二水素)は、燃料電池スタックの燃料として用いられる。ジハイドロゲンはスタックの電極において酸化されてイオン化され、空気からのジオキシゲン(二酸素)はスタックの他の電極において還元される。この化学反応は、酸素が還元されてプロトンと反応することによって、カソードにおいて水を生成する。燃料電池スタックの大きな長所は、発電サイトで大気の汚染物質の放出を妨げることである。
【0003】
プロトン交換膜(PEM)燃料電池スタックには、特に小型性の有利な特性を有する。それぞれのセルは、プロトンの通過のみを許し、電子の通過を許さない電解膜から成る。膜は、膜電極アセンブリ(MEA)を作るために、第1の面上のアノード及び第2の面上のカソードから成る。
【0004】
アノードにおいて、ジハイドロゲンは、膜を通過する陽子を生成するためにイオン化される。この反応によって生成される電子は、フロープレートの方へ移動して、電流を作るために、セルの外へ電気回路を通過する。カソードにおいて、酸素は還元されて、水を生成するために、プロトンと反応する。
【0005】
燃料電池スタックは、例えば、金属でできていて、お互いの上に積み重なった、いくつかのフロープレートから成ってもよい。膜は、2枚のフロープレートの間に位置する。フロープレートは、膜に出入りする反応物と産物を導くために、流路と開口部から成ってもよい。また、プレートは、アノードで発生する電子のためのコレクタを形成するために、電気伝導性である。ガス拡散浸透層は電極とフロープレートとの間に挿入されて、フロープレートと接触している。
【0006】
MEAは、空気及び水素の流路の長さに対して、異質であるか非均一な動作をする。
例えば、カソード側において、流路の入口(乾く状況)と出口(水浸しの状況)との間の気体の相対湿度の変化は、電流密度の異質性に影響を及ぼす。流路の入口における電流密度は、不十分な湿気のため、より低い。流路の出口の電流密度は、MEAを水浸しにする過度の湿気のため、より低い。電流密度のこの異質性は、例えば、カーボンの局所的な腐食又は触媒の成熟等の劣化現象を促進する。
【0007】
米国特許出願公開第2004/038808号明細書は、膜電極アセンブリ構造を開示している。この構造では、カソードの触媒濃度は、軸に沿った勾配によって変化する。当該文献は、均一なガス拡散浸透層を記載している。
【0008】
欧州特許出願公開第1176654号明細書は、同じ電極が触媒層とガス拡散浸透層とを結合する燃料電池スタック構造を開示している。そして、それの特性は様々な領域で変化する。
【0009】
米国特許第6933067号明細書は、空気の出口から空気の入口まで積載しているプラチナが増加されたカソードの作製を提案している。したがって、大量の水は、その電流密度を増やすために、当該流路の入口で発生する。しかし、このようなカソードは、産業のスケールで正しく生産することが比較的難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/038808号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1176654号
【特許文献3】米国特許第6933067号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、この問題点を解決し、この技術的問題に対する代わりの解決案を提案することを目的とし、同時に、ガス拡散浸透層の正確な位置決めを容易にすることを目的とする。したがって、本発明は、添付の請求項において規定されるように、燃料電池スタックに関するものである。添付の請求項において規定されるように、本発明も、燃料電池スタックを製造する方法に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の他の特徴および効果は、以下に、非限定的な具体例として、添付の図面を参照する以下の説明から明らかになる。
【
図1】
図1は、燃料電池スタックの一例の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、流路ルートの一例から成っているフロープレートの上面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態の一の実施例に係るカソードガス拡散浸透層の底面図である。
【
図4】
図4は、補強材を備えていて、
図3に示すガス拡散浸透層と結合されることを目的とする膜電極アセンブリの底面図である。
【
図5】
図5は、発明の実施形態の一の実施例に係る燃料電池スタックの1つのセルの断面図である。
【
図6】
図6は、先行技術に係る、及び、本発明の一実施形態に係る燃料電池スタックのそれぞれの性能を示すグラフである。
【
図7】
図7は、本発明に係る製造プロセスの一例の一連のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、燃料電池スタック2の多くのセル1の概略分解斜視図である。燃料電池スタック2は、いくつかの重ねられたセル1から成る。セル1は、プロトン交換膜タイプ又はポリマー電解質膜タイプである。
【0014】
燃料電池スタック2は、各々のセル1の入口にジハイドロゲンを供給している燃料源120から成る。燃料電池スタック2も、各々の電池の入口に空気を供給していて、オキシダントとして使われる酸素を含んでいる空気源122から成る。各々のセル1も、排気チャンネルから成る。各々のセル1は、冷却回路(
図2で例示されている)も備えていてもよい。
【0015】
各々のセル1は、膜電極アセンブリ110から成る。例示された燃料電池スタック2は、特に、いくつかの膜電極アセンブリまたはMEA110から成る。膜電極アセンブリ110は、電解質113、カソード112(
図1で例示されていない)とアノード111から成り、カソード112とアノード111は、この電解質の両側に置かれて、この電解質113に固定されている。
【0016】
隣接したMEAの各ペアの間に、一組のフローガイドが置かれている。各ペアのフローガイドは、二極式金属板103を形成するために、しっかりと配属されている。例えば、各々のフローガイドは、金属シート(通常ステンレス鋼でできている)から作られる。このように、二極式プレート103は、MEA110のカソードに向けられた金属シート102ともう一つのMEA110のアノードに向けられた金属シート101(
図1で例示されていない)から成る。金属シート101と102は、レリーフにおいて流路106(
図1で例示されていない)を定めている表面を有する。金属シート101と102は、溶接点104でしっかりと付けられている。
【0017】
当然知られている方法では、セル1の動作の間、空気はMEAと金属シート102との間で流れ、そして、ジハイドロゲンはMEAと金属との間を流れる。アノード111において、ジハイドロゲンは、MEAを通過するプロトンを産生するためにイオン化される。この反応によって生産される電子は、金属シート102によって集められる。それから、電流を作るために燃料電池スタック2に接続している電気的負荷に、産生された電子は、アプライされる。カソード112において、酸素は還元されて、水を形成するために、プロトンと反応する。アノード及びカソードの反応は、以下の通りに決定される。
アノードにおいて、
【化1】
カソードにおいて、
【化2】
【0018】
当該動作の間、その優れた触媒性能のために、燃料電池スタックの1つのセルは、通常、アノードとカソードとの間で1Vオーダーの直流電圧を発生させる。アノード111及びカソード112において用いられる触媒材はプラチナであことが、その優れた触媒特性のため、好ましい。
【0019】
図2は、燃料電池スタック2の金属シート102の一例を示す上面図である。金属シート102は、流路106を区切っている。流路106は、空気流入ダクト125と水流出ダクト126との間で延在している。金属シート102は、さらに、冷却液流ダクト124によって貫通されている。
【0020】
図3は、金属シート102と接触して置かれて、流路106をカバーしているガス拡散浸透層22の一例を示す底面図である。ガス拡散浸透層22は、第1の部分24と第2の部分25とから成る。第1の部分24は、流路106の一部を空気流入口125からカバーする。第2の部分は、流路106の一部を水流出口126からカバーする。ガス拡散浸透層22の部分24及び25は、隣接している。ここで、部分24及び25は、2つの分けられた構成要素であり、インターフェース26において過度に厚みを作ることを避けるために、重複することなく隣接していることが好ましい。
【0021】
部分24と25とは、異なる組成を有している。このように、部分24の組成の乾燥状況下における電流密度は、部分25の組成の乾燥状況下における電流密度より大きい。したがって、ごく少しの水が流路106で発生した、乾燥状況下で、部分24は、流路106の始まりである空気流入口の近くにおいて、より大きな電流密度を得ることができる。例えば、部分24は、空気流入口から流路106の長さの15%超過50%未満の間で延在している。部分25の組成の湿った状況下における電流密度は、部分24の組成の湿った状況下における電流密度より大きい。例えば、部分25は、水流出口から流路106の長さの50%超過85%未満の間で延在している。従って、流路106の中央部分(湿気レベルは中間である)は、部分25の組成から、このような利益を得る。
【0022】
均一なガス拡散浸透層21についての事前のテストにより、当業者は、セル1のスタックに位置する局所的な電流を得るための取得カードを有する流路106の長さに亘って部分24及び25の分布をより正確に決定できる。そのようなカードは、特に、部分25がどこまで延在しなければならないかについて決定するために、電流密度がより低い領域を決定することを可能にする。
【0023】
テストは、特に、20×24のマトリックスを有する電流取得カードを用いて行われた。マトリックスの各々の要素は、0.45cm
2の表面積を有する。
【0024】
部分24は、フロイデンベルクFCCT社製の製品番号H
2415−I
2−C
3のガス拡散浸透層から形成されてもよい。部分25は、SGLグループ社製の製品番号24BCのガス拡散浸透層から形成されてもよい。
図6は、燃料電池スタックR及びIのそれぞれの分極化カーブを比較するグラフである。燃料電池スタックRは、SGLグループ社製の製品番号24BCの、単独の及び1つの部分としての層から成るガス拡散浸透層を含む。燃料電池スタックIは、フロイデンベルクH
2415−I
2−C
3タイプの部分24とSGLグループ24BCタイプの部分25とを有するガス拡散浸透層を含む。動作状況に関わりなく、平均電流密度の相当な増大、及び、当該密度の均質化が、示されている。
【0025】
乾燥条件は、例えば、相対湿度20%に対して決定される。湿った条件は、例えば、相対湿度100%に対して決定される。
【0026】
第一の部分24と第二の部分25との間で十分に位置決めを容易にするために、
図3の一例で例示されるように、第一の部分24及び第二の部分25は、相補的で非直線形の縁部で隣接することが好ましい。
【0027】
図4は、発明の内容において特に有利な点を与える補強材132の一例の底面図である。補強材132は、膜電極アセンブリ110に固定されている。補強材132は、第1の中央開口134と第2の中央開口135から成る。これらの中央開口134及び中央開口135は、片状部材133によって切り離されている。中央開口134及び中央開口135は、一部のカソード112をあらわにする。補強材132は、吸気ダクト125、水流出口ダクト126、及び、冷却液流ダクトによって貫通されている。
【0028】
図5は、組み立てられた燃料電池スタック2の1つのセル1の断面図である。
【0029】
補強材131は、膜電極アセンブリに固定されている。補強材131は、アノード111の周辺を覆う内部の端から成る。内部の端は、アノード111にしっかりと貼り付けられている。補強材131はアノード111の周辺を超えて広がって、膜113の上に重複部分を形成する。補強材131は、膜113にしっかりと貼り付けられている。何れの好適な手段によって、例えば、熱プレスによって、又は、補強材131の上にアノード11を印刷することによって、アノード111への補強材131のしっかりとした貼り付け、及び、膜113への補強材131のしっかりとした貼り付けを達成することができる。補強材131は、中央開口から成る。この中央開口は、アノード111の中央部分をあらわにする。
【0030】
ガス拡散浸透層21は、アノード111と金属シート101の間で圧縮されている。ガス拡散浸透層21は、このように補強材131の中央開口を横切って、アノード111と接触している。
【0031】
補強材132は、膜電極アセンブリと補強材131とに固定されている。補強材132は、カソード112の周辺をおおう内部の端から成る。内部の端は、カソード112にしっかりと貼り付けられている。補強材132は、カソード112の周辺を超えて広がって、膜113の上に重複部分を形成する。補強材132は、膜113にしっかりと貼り付けられている。補強材131及び補強材132は、彼らの周辺にお互いに固定されている。
【0032】
ガス拡散浸透層22の部分24は、カソード112と金属シート102との間で圧縮されている。部分24は、このように補強材132の中央開口134を横切って、カソード112と接触している。ガス拡散浸透層22の部分25は、カソード112と金属シート102との間で圧縮されている。部分25は、このように補強材132の中央開口135を横切って、カソード112と接触している。部分24と部分25との間のインターフェース26は、開口134と開口135とを切り離している片状部材133の上に重なっている。潜在的にカソード112または膜113を損なっているか、突き通してさえいる部分24及び部分25の端に存在する凹凸の危険性は、このように避けられる。既に使用されている補強材132と共に、1つの部分として形成される片状部材133を用いて、セル1へのさらなる構成要素を避けることができる。
【0033】
補強材131と金属シート101との間のシーリング又は補強材132と金属シート102との間のシーリングを保証するために、シール23はガス拡散浸透層21及びガス拡散浸透層22のまわりに置かれるかもしれない。
【0034】
ガス拡散浸透層22は、カソード112と金属シート102との間で圧縮されている。この圧縮のもとで、ガス拡散浸透層22の第一の部分24及び第二の部分25は、同じ(セル1のスタックの変形と異質性を制限して、スタックの周辺で可能性がある密封問題を防ぐために適切な)厚みを有する。第一の部分24及び第二の部分25は、圧縮がない場合、異なる厚みを有していてもよく、第一の部分24及び第二の部分25がセル1の圧縮を受けるとき同じ厚みを有するように、第一の部分24及び第二の部分25の弾性率の関数として大きさが設定されてもよい。
【0035】
アセンブリ後の1MPaの圧縮により、部分24及び部分25は、約190μm±40μmの厚みを有することが好ましい。
【0036】
図7は、本発明の一実施形態に係る燃料電池スタック2の1つのセル1を製造する方法の一例の一連のいくつかのステップを例示する。
【0037】
補強材132は、ステップ301において提供される。補強材132は、平らであることが好ましい。例えば、補強材132は、形成される開口134と開口135と一致する輪郭を有するように前もってカットされる。また、当該輪郭が片状部材133によって切り離されている。
【0038】
ステップ302において、電子触媒インクは液相にデポジットされ、乾燥されてカソード112が形成される。カソード112を硬化する手段はどんな適当な手段であってもよい。形成されるカソード112は、前もってカットされた輪郭を越えて伸びている。このように、補強材132の内部の端とカソード112の周辺との間に重ね合せが形成される。その中央開口と一致するように前もってカットされた輪郭がある補強材131に関して、アノード111は同様の方法で作られてもよい。
【0039】
電子触媒材料は、実行される触媒反応にふさわしい触媒特性を有する。電子触媒材料は、金属原子を含んでいる粒子またはナノ粒子の形であってもよい。触媒材料は、特に、金属酸化物から成ってもよい。電子触媒材料は、金属(例えば、プラチナ、金、銀、コバルト又はルテニウム)であってもよい。
【0040】
ステップ303において、一方、補強材132とカソード112とを膜113の一方の面にしっかりと貼り付けることによって、及び、他の補強材131とアノード111を膜113の他方の面にしっかりと貼り付けることによって、膜電極アセンブリは生産される。補強材と電極は、同じ熱圧縮のステップにおいて、膜113にこのようにしっかりと貼り付けられてもよい。
【0041】
熱圧縮のステップの間、膜113への電極の粘着力を促進するために、膜113と電極は、同じポリマー材から成ることが好ましい。当該ポリマー材は、熱圧縮の温度以下のガラス転移温度を持つことが好ましい。このポリマー材を形成するのに用いられる重合性材料は、製品番号Nafion DE2020の販売されているイオノマーであってもよい。
【0042】
ステップ304において、補強材131及び補強材132の前もってカットされた輪郭の内側の部分は、取り出される。アノード111の中央部分及びカソード112の中央部分それぞれがあらわになるように、補強材131及び補強材132の中央開口は、このように形成される。補強材は、電子触媒インクのデポジットの支持部材からこのように形成された。
【0043】
ステップ305において、形成された層のスタックの周辺を貫通するようにカットすることによってダクト124、125及び126を作ることができる。
【0044】
ステップ306において、ガス拡散浸透層21及びガス拡散浸透層22が提供される。補強材131の開口を通って、ガス拡散浸透層21は、アノード111のあらわになっている部分と接触して、このように位置する。ガス拡散浸透層21の周辺は、補強材131の内部の端を覆う。開口134及び開口135を通って、ガス拡散浸透層22の部分24及び部分25は、カソード112のあらわになっている部分と接触して位置する。ガス拡散浸透層22の周辺は、補強材132の内部の端を覆う。
【0045】
ステップ307において、次いで、
図5において例示される燃料電池スタックセル1を得るために、ガス拡散浸透層21とガス拡散浸透層22とを備えている膜電極アセンブリは、2枚の金属フロー・ガイド・シート101、102の間で含まれてもよい。