(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546927
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】膜内の不純物を低減するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20190705BHJP
C23C 16/507 20060101ALI20190705BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20190705BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
H05H1/46 L
C23C16/507
C23C16/34
C23C16/50
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-546756(P2016-546756)
(86)(22)【出願日】2015年1月15日
(65)【公表番号】特表2017-509107(P2017-509107A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】AU2015050013
(87)【国際公開番号】WO2015106318
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2018年1月10日
(31)【優先権主張番号】2014900121
(32)【優先日】2014年1月15日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】307030577
【氏名又は名称】ガリウム エンタープライジズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マン、イアン
(72)【発明者】
【氏名】バリク、サティヤナーラーヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウィントルベール−フーケ、マリー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、ジョシュ
(72)【発明者】
【氏名】ダニガン、ポール
【審査官】
鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05698168(US,A)
【文献】
特表2009−521783(JP,A)
【文献】
特開2013−098172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01J 37/32
C23C 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の端部に形成されたガス入口および第2の端部に形成されたプラズマ出口を有するプラズマ管と、
(b)前記プラズマ管の第1の領域に隣り合って前記プラズマ管の第1の領域を画定し、該領域を電磁場に曝して活性プラズマ種を生成するイオン化源と、
(c)前記プラズマ管の第2の領域において前記プラズマ管の内壁を覆う熱分解窒化ホウ素ライナーと、
を備えるプラズマ発生器であって、前記熱分解窒化ホウ素ライナーは、前記第1の領域の長さの20%よりも大きい長さを超えて前記第1の領域にまで延びておらず、かつ前記イオン化源は前記ガス入口と前記熱分解窒化ホウ素ライナーとの間に実質的に配置されているプラズマ発生器。
【請求項2】
前記熱分解窒化ホウ素ライナーは、前記第1の領域の長さの10%よりも大きい長さを超えて前記第1の領域にまで延びていない、請求項1に記載のプラズマ発生器。
【請求項3】
前記熱分解窒化ホウ素ライナーは、前記イオン化源に隣り合うプラズマ管の内面の部分を覆わないように前記第1の領域にまで延びていない、請求項1または2に記載のプラズマ発生器。
【請求項4】
前記熱分解窒化ホウ素ライナーは、前記イオン化源から0mmよりも大きく約100mmまでの間隔をおいて設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマ発生器。
【請求項5】
前記熱分解窒化ホウ素ライナーが取り外し可能なライナーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマ発生器。
【請求項6】
前記イオン化源がRFコイルの形状である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマ発生器。
【請求項7】
前記プラズマ発生器がRPCVDプラズマ発生器である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプラズマ発生器。
【請求項8】
前記ガス入口が窒素の入口である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプラズマ発生器。
【請求項9】
前記プラズマ管の前記ガス入口、または前記第1の端部の近傍の前記プラズマ管の部分は、前記プラズマ管の残りの部分に対してくびれている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプラズマ発生器。
【請求項10】
第III族金属窒化物膜を基板上に蒸着するための装置であって、その装置は、
(a)窒素源から窒素プラズマを生成するプラズマ発生器と、
(b)第III族金属を含んだ試薬を前記窒素プラズマから得られる活性窒素種と反応させて、基板上に第III族金属窒化物を蒸着する成長室と、
(c)前記プラズマ発生器から前記成長室への窒素プラズマの通過を促すために前記成長室に設けられたプラズマ入口と、
を備え、前記プラズマ発生器は、
(i)第1の端部に形成されたガス入口および第2の端部に形成されたプラズマ出口を有するプラズマ管と、
(ii)前記プラズマ管に隣り合って前記プラズマ管の第1の領域を画定し、該領域を電磁場に曝して活性プラズマ種を生成するイオン化源と、
(iii)前記プラズマ管の第2の領域において前記プラズマ管の内壁に隣り合って設けられた熱分解窒化ホウ素ライナーと、
を備え、前記熱分解窒化ホウ素ライナーは、前記第1の領域の長さの20%よりも大きい長さを超えて前記第1の領域にまで延びておらず、かつ前記イオン化源は前記ガス入口と前記熱分解窒化ホウ素ライナーとの間に実質的に配置されている、装置。
【請求項11】
前記熱分解窒化ホウ素ライナーは、前記イオン化源に隣り合う前記プラズマ管の内面の部分を覆わないように前記第1の領域にまで延びていない、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記プラズマ発生器と前記成長室との間に設けられたシャワーヘッドをさらに備える、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記プラズマ発生器の前記プラズマ出口に対向する前記シャワーヘッドの上面と、少なくとも1つの側壁と、前記プラズマ発生器の前記プラズマ出口がそれを通って開口するシーリングとによって画定されるプラズマキャビティをさらに備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
プラズマを発生する方法であって、その方法は、
(a)プラズマ発生器を提供するステップであって、そのプラズマ発生器は、第1の端部に形成されたガス入口および第2の端部に形成されたプラズマ出口を有するプラズマ管と、前記プラズマ管に隣り合って前記プラズマ管の第1の領域を画定し、該領域を電磁場に曝して活性プラズマ種を生成するイオン化源と、前記プラズマ管の第2の領域において前記プラズマ管の内壁に隣り合って設けられた熱分解窒化ホウ素ライナーとを備えることと、前記熱分解窒化ホウ素ライナーは、前記第1の領域の長さの20%よりも大きい長さを超えて前記第1の領域にまで延びていないことと、前記イオン化源は前記ガス入口と前記熱分解窒化ホウ素ライナーとの間に実質的に配置されていることと、を含む、ステップと、
(b)前記ガス入口を通じてフィードガスを供給するステップと、
(c)前記第1の領域において前記ガスを電磁場に曝すステップと
を備えることでプラズマを発生する、方法。
【請求項15】
成長室内の成長圧力が約1〜約10トル(約133.322〜約1333.22Pa)である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、プラズマを使用したCVDプロセスによって成長する膜内の不純物、特にホウ素を低減するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ここでの背景技術への言及は、そのような技術がオーストラリアやその他の地域における一般常識を構成することを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0003】
窒化ガリウム(GaN)膜などの金属含有膜は、発光ダイオード(LED)から紫外線検出器やトランジスタ機器に至るまで幅広い装置に適用されている。
これらの膜は通常、分子線エピタキシー(MBE)、有機金属化学蒸着(MOCVD)、遠隔プラズマ励起化学蒸着(RPECVDまたはRPCVD)などの手法で作製される。RPCVDは、約1000℃〜1200℃の成長温度を伴うことの多いMOCVDよりも低温で高品質の膜を生産するのに使用されており、機器コストを低減し、温度に敏感な好適な基板を膜蒸着用に使用することができる。
【0004】
RPCVDは、窒素などの供給ガスをプラズマ化して有機金属試薬と反応させ、所望の材料を基板上に蒸着する。この手法では、プラズマ管であるプラズマ発生領域から反応室または成長室に供給される高エネルギー活性ガス種を一定の量に好適に維持することが重要である。
【0005】
高エネルギー活性ガス種を減少させる1つの道筋は、プラズマが生成されるプラズマ管の壁、およびおそらくは活性ガス種を成長室へ移送する導管の壁における表面再結合を通じてである。この表面再結合とは、原子または分子、たとえば窒素の再結合であり、有機金属試薬との反応に利用可能な活性原子窒素種または活性分子窒素種の数を減少させる。
【0006】
このため、特定の活性ガス種を生成するためには、固有の表面再結合特性が低い材料でプラズマ管を構成することが有効である。熱分解窒化ホウ素(PBN)は、窒素プラズマを生成する際、この目的に有効な材料である。しかし、PBNは比較的高価な材料であり、所望の仕様に機械加工することが困難であるため、プラズマ発生器の製造コストはPBNプラズマ管を含むことによって大幅に上昇する。さらに、本発明者らは、PBN管壁のスパッタリングによって、相当量のホウ素が不純物として成長膜へと持ち込まれることに気づいた。これは、膜の品質と特定の装置用途への適合性を低下させ、このアプローチにおける大きな欠点である。
【0007】
表面再結合による活性種の損失を低減でき、商業上許容可能な量を超えて成長膜に不純物を混入させることがないプラズマ発生器を提供することが有益であろう。
発明の概要
本発明の第1の態様によれば、
(a)第1の端部に形成されたガス入口および第2の端部に形成されたプラズマ出口を有するプラズマ管と、
(b)プラズマ管に隣り合ってプラズマ管の第1の領域を画定し、該領域を電磁場に曝して活性プラズマ種を生成するイオン化源と、
(c)プラズマ管の第2の領域においてプラズマ管の内壁を覆う熱分解窒化ホウ素ライナーと
を備えるプラズマ発生器が提供され、熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの20%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていない。
【0008】
一実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの10%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていない。
別の実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの5%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていない。
【0009】
一実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーは、イオン化源に隣り合うプラズマ管の内面の部分を覆わないように第1の領域にまで延びていない。
一実施形態において、プラズマ管のガス入口、または第1の端部の近傍のプラズマ管の部分は、プラズマ管の残りの部分に対してくびれている。
【0010】
好適には、くびれは、プラズマ管の第2の領域の直径に対し、ガス入口に属するか、またはプラズマ管の第1の領域の少なくとも一部に属するか、またはその両方に属する小径の領域の形を取る。
【0011】
一実施形態において、プラズマ発生器は、膜を形成するための装置の一構成要素である。該装置は、第III族金属窒化物膜を基板上に蒸着するためのものであってもよい。該装置は、反応物質としてプラズマを利用した膜形成装置であってもよい。一実施形態において、該装置はRPCVD装置であり、そのため、プラズマ発生器はRPCVDプラズマ発生器であってもよい。
【0012】
好適には、該装置は、第VA族プラズマの入口と、第IIIA族試薬の入口と、1つ以上の基板を支持するように構成されている基板ホルダーとを備える成長室をさらに備えていてもよい。
【0013】
一実施形態において、本発明は、第III族金属窒化物膜を基板上に蒸着するための装置に関し、該装置は、
(a)窒素源から窒素プラズマを生成するプラズマ発生器と、
(b)第III族金属を含んだ試薬を窒素プラズマから得られる活性窒素種と反応させて、基板上に第III族金属窒化物を蒸着する成長室と、
(c)プラズマ発生器から成長室内への窒素プラズマの通過を促すために成長室に設けられたプラズマ入口と
を備え、前記プラズマ発生器は、
(i)第1の端部に形成されたガス入口および第2の端部に形成されたプラズマ出口を有するプラズマ管と、
(ii)プラズマ管に隣り合ってプラズマ管の第1の領域を画定し、該領域を電磁場に曝して活性プラズマ種を生成するイオン化源と、
(iii)プラズマ管の第2の領域においてプラズマ管の内壁に隣り合って設けられた熱分解窒化ホウ素ライナーと
を備え、前記熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの20%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていない。
【0014】
一実施形態において、装置はRPCVD装置である。
一実施形態において、プラズマ発生器とRPCVD装置の成長室との間にはシャワーヘッドが設けられている。
【0015】
一実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの10%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていない。
別の実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの5%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていない。
【0016】
一実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーは、イオン化源に隣り合うプラズマ管の内面の部分を覆わないように第1の領域にまで延びていない。熱分解窒化ホウ素ライナーが第1の領域にまで延びない場合、熱分解窒化ホウ素ライナーとイオン化源との間の間隔は、プラズマ発生器について先に述べたどの大きさであってもよい。
【0017】
好適には、有機金属試薬はシャワーヘッドから成長室内へ放出される。
シャワーヘッドには少なくとも1つの貫通した開口を設けてもよく、プラズマ管のプラズマ出口から出るプラズマはその開口を通って成長室に入ることが可能である。
【0018】
一実施形態において、少なくとも1つの開口には熱分解窒化ホウ素のシースまたはコーティングが設けられている。
好ましくは、少なくとも1つの開口は、熱分解窒化ホウ素シースが大半に設けられた複数の開口である。一実施形態において、開口のほぼ全部には熱分解窒化ホウ素シースが設けられている。
【0019】
一実施形態において、プラズマ発生器のプラズマ出口に対向するシャワーヘッドの上面と、少なくとも1つの側壁と、プラズマ発生器のプラズマ出口がそれを通って開口するシーリングとによってプラズマキャビティが画定されている。
【0020】
好適には、シャワーヘッドの上面および少なくとも1つの側壁が熱分解窒化ホウ素で被覆されている。
一実施形態において、プラズマキャビティの全面は、一以上の熱分解窒化ホウ素ライナーで覆われており、この熱分解窒化ホウ素ライナーは、プラズマ発生器の熱分解窒化ホウ素ライナーとは別体であってもよいし、あるいは連続していてもよい。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、プラズマを発生する方法が提供され、該方法は、
(a)プラズマ発生器を提供するステップであって、そのプラズマ発生器は、第1の端部に形成されたガス入口および第2の端部に形成されたプラズマ出口を有するプラズマ管と、プラズマ管に隣り合ってプラズマ管の第1の領域を画定し、該領域を電磁場に曝して活性プラズマ種を生成するイオン化源と、プラズマ管の第2の領域においてプラズマ管の内壁に隣り合って設けられた熱分解窒化ホウ素ライナーとを備え、熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの20%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていないことと、
(b)ガス入口を通じてフィードガスを供給するステップと、
(c)第1の領域において前記ガスを電磁場に曝すステップと
を備えることでプラズマを発生する。
【0022】
プラズマ発生器の種々の構成要素は、第III族金属窒化物膜を基板上に蒸着するための装置の実施形態を含めて、第1の態様のいずれの実施形態に記載したようなものであってもよい。
【0023】
第3の態様において、本発明は、第2の態様のプロセスによって作製される第III族金属膜に関する。この膜は、第III族金属窒化物膜であってもよい。一実施形態において、この膜はGaN膜である。
【0024】
第4の態様において、本発明は、半導体装置における第3の態様の第III族金属膜の使用に関する。この膜は、第3の態様について記載したような膜であってもよい。
上記の各段落で言及している本発明の種々の特徴および実施形態は、他の段落にも適宜準用することができる。したがって、1つの段落に明記する特徴は、別の段落に明記する特徴と適宜組み合わせることができる。圧力、ガス流の条件と、第1の態様について説明した種々の装置構成要素の性質は、第2の態様にも同じように適用されるものであり、第2の態様に関しても十分に記載されていると見なされる。
【0025】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から自明になるであろう。
本発明を容易に理解して実用化することができるように、添付図面を参照して好適な実施形態を例示のために以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】部分的なPBNライナーを有するプラズマ管を採用して金属窒化物膜を基板上に蒸着する装置の一実施形態の斜視断面図。
【
図2】くびれたガス入口を採用して金属窒化物膜を基板上に蒸着する
図1の装置の斜視断面図。
【
図3】完全なPBNライナーと、RFコイルから10mmの間隔をおいて設けられた部分的なPBNライナーと、RFコイルから20mmの間隔をおいて設けられた部分的なPBNライナーとを用いて生成したGaN膜で検出される不純物としてのホウ素の量のSIMSグラフ分析。
【発明を実施するための形態】
【0027】
RFコイルに囲まれる、あるいはRFコイルに直に隣り合うプラズマ管の領域内にそれほど入り込まないようにPBNライナーを配置した場合、RPCVDによって生成される膜へ不純物としてのホウ素が望ましくなく混入することを、プラズマ発生器の反応管とも称されるプラズマ管におけるPBNライナーの低い表面再結合特性からの恩恵を受けつつ、大幅に低減することができるという知見に基づき、本発明は少なくとも部分的に予測されるものである。PBNライナーからRFコイルまでの距離が増大すると、ホウ素不純物の低減の点で、ある程度まではさらなる改善つながる。
【0028】
本明細書では、第1と第2、左と右、前と後、上と下などの形容詞は、当該形容詞によって説明されている具体的な相対位置または順序を必ずしも必要とせずに、ある要素または方法ステップと、他の要素または方法ステップとを定義するためだけに使用される。「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、または類似の文言は、非限定的な包含を意味することを意図しており、そのため、要素の列挙を含む方法、システム、または装置はそれらの要素のみを含むものではなく、列挙されない他の要素も含むことができる。
【0029】
別段の定義がない限り、本文書で使用するすべての技術的および科学的文言は、本発明の属する技術の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
「プラズマ」という用語は本文書では、プラズマ発生領域内でのガスのイオン化によって形成される種と、プラズマ管、プラズマキャビティ、シャワーヘッドを通過してRPCVD装置の反応室または成長室に入る種の両方を説明するために使用されるが、充填されるガス種は、プラズマ発生領域から成長室への移動中に大半が消失し得ると理解され、したがって、これらの領域での「プラズマ」という言及は、活性ガス種を指すとも理解される。
【0030】
本発明の第1の態様によれば、
(a)第1の端部に形成されたガス入口および第2の端部に形成されたプラズマ出口を有するプラズマ管と、
(b)プラズマ管に隣り合ってプラズマ管の第1の領域を画定し、該領域を電磁場に曝して活性プラズマ種を生成するイオン化源と、
(c)プラズマ管の第2の領域においてプラズマ管の内壁を覆う熱分解窒化ホウ素ライナーと
を備えるプラズマ発生器が提供され、熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの20%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていない。
【0031】
「熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの20%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていない」とは、PBNライナーが、第2の領域に主に位置するが、第2の領域を超えて、限定された延在領域のみにおいてイオン化源に隣り合うように第1の領域にまで延びていることを意図する。本実施形態における第1の領域への延在距離は、第1の領域(第1の領域は、直接隣り合うイオン化源を有するプラズマ管の部分である)の長さの20%であり、この長さは、動作中にプラズマ管を通るガス/プラズマ種の移動方向で測定されるものである。イオン化源全体がプラズマ管に隣り合う場合、第1の領域の長さはRFコイルなどのイオン化源の長さと同じになる。単なる例として、ガス/プラズマ種の移動方向の第1の領域の長さが5cmである場合、熱分解窒化ホウ素ライナーは、10mmを超えてイオン化源と重複するまで第1の領域内へは延びておらず、この長さは5cmの20%である。
【0032】
最適な結果を得るには、PBNライナーとイオン化源とが重複しないことが好ましいが、発明者らは、先に定義したように20%以下など比較的小さな重複が存在するときでも、ホウ素不純物を管理可能な量に維持できる間は、高エネルギーガス種の再結合を大幅に低減できることを見出した。
【0033】
一実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの10%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていない。
別の実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの5%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていない。
【0034】
一実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーは、前記イオン化源に隣り合うプラズマ管の内面の部分を覆わないように第1の領域にまで延びていない。これは、PBNライナーとイオン化源が重複しない、言い換えると、PBNライナーとイオン化源との間隔が維持される好適な実施形態である。
【0035】
PBNライナーがイオン化源に「隣り合う」プラズマ管の内面を覆わないという言及は、プラズマ管を通るガス/プラズマの移動方向としても定義することができるプラズマ管の長軸に沿って、いずれの地点でもPBNライナーとRFコイルとが重複しないことを意味する。
【0036】
一実施形態において熱分解窒化ホウ素ライナーは、イオン化源の下端から0mmよりも大きく約100mmまでの距離をおいて開始される。イオン化源の下端は、PBNライナーに最も近いイオン化源の点または面として定義することができる。たとえば、イオン化源がRFコイルである場合、PBNライナーの始まりとイオン化源との間の距離は、PBNライナーに最も近い最も下のコイルの下面から測定される。あるいは、同じ効果が達成されるが、イオン化源の下端は、移動するガスまたはプラズマが動作中にプラズマ管を出るまでの移動方向に通過する、イオン化源の最終地点の水準として定義することができる。以下の段落で述べる間隔は、この地点と、動作中にプラズマがその移動方向で相対するPBNライナーの最初の地点との距離を指す。
【0037】
一実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーは第1の領域にまで延びておらず、熱分解窒化ホウ素ライナーとイオン化源との間隔は0mmよりも大きく約100mmまでである。好ましくは、熱分解窒化ホウ素ライナーとイオン化源との間隔は約5〜約100mmである。一実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーとイオン化源との間隔は約10〜75mmである。別の実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーとイオン化源との間隔は約15〜50mmである。さらに別の実施形態において、熱分解窒化ホウ素ライナーとイオン化源との間隔は約20〜約30mmである。これらの範囲は、0mmよりも大きく100mmまで、0mmよりも大きく90mmまで、0mmよりも大きく80mmまで、0mmよりも大きく70mmまで、0mmよりも大きく60mmまで、0mmよりも大きく50mmまで、0mmよりも大きく40mmまで、0mmよりも大きく30mmまで、1〜100mm、1〜90mm、1〜80mm、1〜70mm、1〜60mm、1〜50mm、1〜40mm、1〜30mm、2〜100mm、2〜90mm、2〜80mm、2〜70mm、2〜60mm、2〜50mm、2〜40mm、2〜30mm、5〜100mm、5〜90mm、5〜80mm、5〜70mm、5〜60mm、5〜50mm、5〜40mm、5〜30mm、10〜100mm、10〜90mm、10〜80mm、10〜70mm、10〜60mm、10〜50mm、10〜40mm、10〜30mm、20〜100mm、20〜90mm、20〜80mm、20〜70mm、20〜60mm、20〜50mm、20〜40mm、20〜30mm、30〜100mm、30〜90mm、30〜80mm、30〜70mm、30〜60mm、40〜100mm、40〜90mm、40〜80mm、40〜70mm、40〜60mmの群、および約10mm、約20mm、約30mm、約40mm、約50mm、約60mm、約70mm、約80mm、約90mm、約100mmの個々の値を含み、この群や個々の値から選択してもよい。
【0038】
PBNライナーは、上で定義した地点から、プラズマ出口にほぼ隣り合う地点または両者の間の任意の地点にまで延びていてもよい。
発明者らは、上述したように、イオン化源の下端とPBNライナーの開始点との分離を維持することによって、驚くべきことに高エネルギー種の再結合を有効に低減しつつ、成長膜に組み込まれるホウ素の量を大幅に低減できることを見出した。特定の理論により限定されるものではないが、PBNライナーからのホウ素原子の放出は、活性窒素プラズマ種などの活性プラズマ種との接触時、スパッタリングまたはエッチングによって発生すると考えられ、その一方で、このスパッタリングまたはエッチングの程度は、イオン化源によって囲まれるプラズマ形成領域において直接に大きく上昇すると想定される。よって、PBNライナーをこの領域から引き下ろすか、あるいはPBNライナーのさらに上方に位置するようにイオン化源を実際に上昇させるかすると、ライナーから放出されるホウ素が減少する。当業界の理解に基づく限り、イオン化源によって囲まれるプラズマ管領域と離してPBNライナーを配置することは、プラズマ管の非PBNライナー部で発生する活性窒素種の表面再結合回数の増加により、膜の品質を劣化させると予測されよう。しかしながら、驚くべきことに、プラズマ管全体を覆うか、あるいは少なくともイオン化源に隣り合って存在するPBNライナーを用いた場合と同じプロセス条件で、すなわち、活性プラズマ種における損失を補償するためにガス流量またはイオン化源出力を増加させる必要なく、高品質の膜を形成できることが分かった。本文書における「部分的なPBNライナー」という言及は、ライナーとイオン化源のこのような分離が利用される構成を指すと理解される。
【0039】
好ましくは、熱分解窒化ホウ素ライナーは取り外しが可能なライナーである。ライナーを除去し、新たなPBNライナーと交換できる機能は、作業時における大きな利点である。第1に、比較のため、あるいはほぼホウ素が存在しない膜が所望されるときには、ライナーを使用せずにプロセスを実行するという柔軟性が提供される。第2に、既存のPBNライナーが摩耗または損傷したときに、最小のダウンタイムで簡単に交換することができるうえ、PBNが永久コーティングである場合に要求されるようなプラズマ管全体を交換する費用を回避できる。
【0040】
好適には、熱分解窒化ホウ素ライナーは、0.6mm〜1.3mmの厚さを有する。好ましくは、熱分解窒化ホウ素ライナーは、0.7mm〜1.1mmの厚さを有する。より好ましくは、熱分解窒化ホウ素ライナーの厚さは、0.75mm〜0.9mm、たとえば約0.8mmである。
【0041】
これらの範囲は、0.6mm〜1.2mm、0.6〜1.1mm、0.6〜1.0mm、0.6mm〜0.9mm、0.6〜0.8mm、0.7mm〜1.2mm、0.7〜1.1mm、0.7〜1.0mm、0.7mm〜0.9mm、0.7〜0.85mm、および約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1.0mm、約1.1mm、約1.2mm、約1.3mmの個々の値を含む。
【0042】
特定の実施形態において、プラズマ管は、窒化アルミニウム、石英、アルミナからなる群から選択される材料から形成される。この材料は、PBNライナーが置かれるプラズマ管の第1の領域の内面も形成する。つまり、イオン化源に隣り合うプラズマ管の領域は、第1の領域とも称されるが、PBNではないこれらの材料からなる内面を有しており、そのため、プラズマは、この内面と衝突する際にこれらの材料のうちの1つと衝突する。内壁/内面に隣り合ってPBNライナーが設けられるプラズマ管の領域であるプラズマ管の第2の領域では、プラズマ活性種は、プラズマ管の内面と衝突すると、PBNとの衝突によって、表面再結合の発生、ひいては活性プラズマ種の損失を低減する。
【0043】
好適な実施形態において、イオン化源は、無線周波数(RF)源またはマイクロ波源である。
好ましくは、イオン化源はRFコイルの形状である。他のイオン化源も当業者にとって知られているが、本文書では、特に図面と実施例に関連して、イオン化源としてRFコイルが言及されている。熟練した読み手であれば、本文書の教示を考慮し、本発明に標準的な変更のみを加えて、他のイオン化源を組み込むことができるだろう。
【0044】
一実施形態において、プラズマ発生器はRPCVDプラズマ発生器である。RPCVDは、別の成長プロセスで必要とされるとともにプラズマ発生プロセスに影響を及ぼす可能性のある成長条件とは大きく異なる成長条件を必要とする。たとえば、MBE成長条件は、特に成長圧力とガス流量の点でRPCVDの条件と非常に異なる。MBE成長は、ずっと低い成長圧力(1E〜4トル)で実行され、比較的低いプラズマガス流量(〜数sccm)を利用する一方、RPCVDはずっと高い圧力(〜数トル)で作用し、ずっと高いガス流量(数百〜数千sccm)を利用する。これらの違いのために、RPCVDの成長プロセス、室構成要素、プラズマの発生およびその送出は、MBEと直接比較することはできない。
【0045】
一実施形態において、本発明は、第III族金属窒化物膜を基板上に蒸着するための装置に関し、該装置は、
(a)窒素源から窒素プラズマを生成するプラズマ発生器と、
(b)第III族金属を含んだ試薬を窒素プラズマから得られる活性窒素種と反応させて、基板上に第III族金属窒化物を蒸着する成長室と、
(c)前記プラズマ発生器から前記成長室への窒素プラズマの通過を促すために前記成長室に設けられたプラズマ入口と
を備え、前記プラズマ発生器は、
(i)第1の端部に形成されたガス入口および第2の端部に形成されたプラズマ出口を有するプラズマ管と、
(ii)プラズマ管に隣りあってプラズマ管の第1の領域を画定し、該領域を電磁場に曝して活性プラズマ種を生成するイオン化源と、
(iii)プラズマ管の第2の領域においてプラズマ管の内壁に隣り合って設けられた熱分解窒化ホウ素ライナーと
を備え、熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの20%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていない。
【0046】
一実施形態において、前記装置はRPCVD装置である。
好適には、成長室は、VA族プラズマの入口、第IIIA族試薬の入口、1つ以上の基板を支持するように構成されている基板ホルダーを備える。好ましくは、ガスは窒素であり、そのため、VA族プラズマは活性窒素種を含む窒素プラズマである。好適には、プラズマ管のガス入口は窒素ガスの入口であり、プラズマ出口は窒素プラズマの出口である。
【0047】
好適には、第IIIA族試薬は第IIIA族有機金属試薬である。本装置および方法と共に使用可能な試薬、したがって、形成することのできる膜の性質は特に限定されない。本文書に記載の実施形態は通常、窒素プラズマと有機金属(通常はトリメチルガリウムまたはトリエチルガリウムなどの有機金属を含有するガリウム)を試薬として採用するが、本発明の用途はそのように限定されない。
【0048】
本文書におけるガス流量とプラズマの言及は窒素を指し、有機金属試薬の言及はトリメチルガリウム(TMG)またはトリエチルガリウム(TEG)を指し、その結果、GaN膜が生じることになる。
【0049】
一実施形態において、成長室内の成長圧力は約1〜約10トル、好ましくは約1.5〜約6トル、より好ましくは約2〜約5トル、たとえば約2.5トル、約3.0トル、約3.5トル、または約4.0トルである。
【0050】
提示する範囲は、1〜9トル、1〜8トル、1〜7トル、1〜6トル、1〜5トル、1〜4トル、2〜9トル、2〜8トル、2〜7トル、2〜6トル、2〜5トル、2〜4トルを含む。
【0051】
ガス入口を通ってプラズマに変換されるガスの流量は、蒸着面積の増大または基板の数の増加と共に増大する。適切な例示の流量は、約50sccm〜約5000sccm、好ましくは約500sccm〜約4000sccm、より好ましくは約1000sccm〜約3000sccm、たとえば約2500sccmであってもよい。しかしながら、必要とされる正確な流量は、成長室、蒸着面積、膜成長が実行される基板ウェハの数などの多数の要因に依存することが当業者によって理解されよう。たとえば、同様の室構造(すなわち、室の高さや形状など)を前提とすると、ウェハ数または成長面積が2倍になれば、固定成長速度と類似の膜特性の場合、流量も約2倍になるはずである。上記の流量範囲は、たとえば、膜蒸着が発生する2インチウェハを7つ採用した装置に適するかもしれない。
【0052】
図1は、部分的なPBNライナーを有するプラズマ管を採用して金属窒化物膜を基板上に蒸着する装置の一実施形態の斜視断面図である。
装置100はRPCVD装置であり、プラズマ発生器200、シャワーヘッド300、プラズマキャビティ400、成長室500を備える。プラズマ発生器200はプラズマ管205を備え、これは図示する実施形態では円筒形である。プラズマ管205は、好ましくは窒化アルミニウムから形成されるが、石英とアルミナも適する。プラズマ管205は、本文書で第2の領域と称される内面の一部に隣り合うPBNライナー210を有する。プラズマ管は、上端では、ガス入口215が開口する第1の端部を形成する。図示していないが、ガス入口215は、窒素供給源などのガス供給源に接続される。プラズマ管205の下端すなわち第2の端部には、図示する実施形態では、単にプラズマ管205の開放端であるプラズマ出口220が設けられているが、この出口は、出ていくプラズマ種を絞り、制御するためのくびれ領域または部分フィルタなどの様々な形状を取ることもできる。このようなプラズマ出口の設計は、当業界において既に知られている。本文書で第1の領域と称されるプラズマ管205の部分は、RFコイル225と直接に隣り合うか、あるいはRFコイル225に囲まれて、該領域を電磁場に曝し、プラズマ発生区域を形成する。PBNライナー210は第1の領域まで延在しないため、RFコイル225に縦方向に並ぶ、あるいは直接に隣り合うプラズマ管205の内面の部分を覆わないと理解される。すなわち、RFコイル225の下端230とPBNライナー210の始まりは、縦方向に空間的に分離される。混入するホウ素の低減による高品質膜の作製という本文書に記載する利点は、これら2つの構成要素の分離、および2つの相対位置または相対点によって提供されるものである。すべての場合において、分離は縦方向でなくてもよく、すなわち、プラズマ管はこの装置自体の内部に水平に配置されてもよく、それでも分離の原理は維持されると理解される。
【0053】
シャワーヘッド300は、一連の開口を備えた上面305を有する。プラズマキャビティを通ってプラズマ出口220から成長室500内へと活性窒素プラズマを送り込むことのできる複数のプラズマ開口310が図示されている。
【0054】
一実施形態において、プラズマ開口310には、熱分解窒化ホウ素のシースまたはコーティングが設けられている。好ましくは、プラズマ開口310の大半、より好ましくは略全部には、熱分解窒化ホウ素シースが設けられている。このPBNシースは、シャワーヘッド300の通過の際に発生する活性窒素原子の表面再結合の回数を低減するのに役立つ。
【0055】
シャワーヘッド300は、内部に有機金属送出チャネル315が設けられている。これらのチャネル315は、トリメチルガリウム(TMG)またはトリエチルガリウム(TEG)を送出するために、シャワーヘッド300の下側に形成される複数の箇所で成長室500へと開口する。追加の開口320がシャワーヘッド300の上面に形成されて貫通している。これらの開口は、プラズマキャビティ上面410の覗き窓と組み合わせて、温度を監視する高温計や、シャワーヘッド300を通って成長室500に入る膜厚を監視するフィルメトリクスなどの原位置分析機器の動作を可能にする。
【0056】
一実施形態において、プラズマキャビティ400は使用時に活性ガス種を含み、プラズマ発生器のプラズマ出口に対向するシャワーヘッド300の上面と、少なくとも1つの壁すなわち側壁405と、プラズマ発生器200のプラズマ出口220が開口するシーリング410とによって画定される。好適には、シャワーヘッド300の上面305と少なくとも1つの側壁405とが熱分解窒化ホウ素で覆われている。一実施形態において、プラズマキャビティ400の全面は、アルミニウムまたはPBNで被覆すなわちコートされており、それはプラズマ発生器200のPBNライナー210と別体であってもよいし、あるいは連続していてもよい。このような面を被覆すなわちコートするために、アルミニウムとPBNに加えて、活性プラズマ種の表面再結合を低減することができるその他の材料を選択してもよい。
【0057】
成長室500は、当該技術において周知である標準的な設計を有する。成長室は、多数の基板510が配置される基板ホルダー505を備える。基板ホルダー505はターンテーブル設計であってもよく、蒸着プロセス全体を通じて高速で回転させることができる。廃棄物は出口(図示せず)を通じて排除される。
【0058】
図2は、くびれたガス入口215または延長部を採用して金属窒化物膜を基板上に蒸着する
図1の装置の斜視断面図である。
図2の実施形態は、1つの構成要素を追加した他は
図1の実施形態とほぼ同様であるため、関連部分のみを以下に説明する。しかし、
図1に関するすべてのコメントは
図2にも同じように適用されると理解される。
【0059】
図示する実施形態では、プラズマ管のガス入口215すなわち第1の端部の近傍のプラズマ管205の部分は、プラズマ管205の残りの部分に対してくびれている。
図2に示す実施形態では、インサート600はプラズマ管205の上部に配置されており、使用時にガス入口215と位置合わせされる貫通開口605が設けられている。これにより、制限されたガス流が、プラズマ発生のためにRFコイル225に隣り合うプラズマ管205の第1の領域に導入される。ガスの速度と流路の形状により、ガスは、プラズマ管205の壁と最小限に接触しながら、プラズマ管205の第1の領域を通過する。これは特に有益な実施形態であって、この機構の低減にPBNライナーが利用できない場合、第1の領域におけるプラズマ管205の壁との再結合による活性窒素原子の損失は流量制御によって大幅に最小化されて、面衝突を防止する。この面衝突の低減は、PBNライナーにおけるホウ素スパッタリング効果も低下させることによって、このくびれ形状を用いて、成長したGaN膜内のホウ素不純物の低減にもつながる。よって、第1の端部のくびれは、本文書に記載する部分的なPBNライナーと協働して、最適な結果を生む機構である。
【0060】
上述したように、好適には、くびれは、プラズマ管205の第2の領域の直径に対し、ガス入口215に属するか、あるいはプラズマ管205に属する小径の領域の形を取る。ただし、第2の領域で許容される流量容積に対して、プラズマ発生領域を通過するガス流を制限するどの手段でも同じ効果を達成することができると理解される。
【0061】
本発明の第2の態様によれば、プラズマを発生する方法が提供され、該方法は、
(a)プラズマ発生器を提供するステップであって、そのプラズマ発生器は、第1の端部に形成されたガス入口および第2の端部に形成されたプラズマ出口を有するプラズマ管と、プラズマ管に隣り合ってプラズマ管の第1の領域を画定し、該領域を電磁場に曝して活性プラズマ種を生成するイオン化源と、プラズマ管の第2の領域においてプラズマ管の内壁に隣り合って設けられた熱分解窒化ホウ素ライナーとを備え、熱分解窒化ホウ素ライナーは、第1の領域の長さの20%よりも大きい長さを超えて第1の領域にまで延びていないことと、
(b)ガス入口を通じてフィードガスを供給するステップと、
(c)第1の領域において前記ガスを電磁場に曝すステップと
を備えることでプラズマを発生する。
【0062】
一実施形態において、前記ガスは、窒素、水素、アンモニア、ヘリウム、またはその他の不活性ガスからなる群から選択される。好ましくは、前記ガスは窒素である。
該方法は、第1の態様と
図1および
図2に関して説明されるプラズマ発生器を用いて実行される。よって、第1の態様に関して述べたプロセス条件、装置、プラズマ発生器の構成要素はすべて第2の態様にも同じように適用され、第2の態様に関しても完全に説明されたとみなすべきである。
【0063】
実験
概要
以下の実験では、RPCVD条件下でGaN膜を成長させるために、3つの異なるPBNライナー構成を採用した。各ケースで全く同一のプロセス条件を使用したため、唯一の変数はPBNライナーの位置と相対的な長さである。
【0064】
プロセス条件
3.5トルで有機金属の投入量1600sccm水素という条件で、RPCVD膜を成長させた。120sccmの流量でトリエチルガリウム(TEG)を有機金属試薬として使用した。プラズマ窒素流量は2500sccmであった。13.56MHzで動作する2.0kWのRF源を用いてプラズマを生成した。プラズマ源とウェハとの間にシャワーヘッドを配置せずに成長を実行した。結果として生じた成長速度は0.6μm/時であった。
【0065】
複数の実験において、まず、AINプラズマ管の全長を覆う完全な標準PBNライナーを用いて実行した(
図3では「959ホウ素」実行と表示)。次の実験は、RFコイルの下側すなわち下端と、PBNライナーの上側すなわち上部との間の距離が10mmに設定された部分的なPBNライナーを用いた(
図3では「1050ホウ素」実行と表示)。最後の実験も、部分的なPBNライナーではあるが、RFコイルの下端と下端に最も近いPBNライナーの部分との間の距離が20mmに設定された部分的なPBNライナーを用いた。これは、1050実行の際にRFコイルをとらえて、それをPBNライナーに対してさらに10mm上昇させることによって達成した。この実験は、
図3では「1052ホウ素」実行と表示した。
【0066】
結果
図3は、上述したように、PBN長さとRFコイルの端部までの相対位置とに関して、3つの実験条件下で生成したGaN膜で検出される不純物としてのホウ素の量をSIMSグラフ分析した図である。本発明の装置と方法を用いて、すなわち、RFコイルの下端を部分的なPBNライナーから次第に離して成長させたGaN膜中のホウ素原子の濃度は、全く同一の条件にも関わらず、プラズマ管の内面全体を覆う完全なPBNライナーを用いて成長させたGaN膜中のホウ素原子濃度よりも大幅に低いことが明確に見て取れる。
【0067】
具体的には、完全なPBNライナー(
図3において、0.5μmの深さで最も上側の線)を用いた実験では、他の2つの実験よりも大幅に大量のホウ素不純物を含有するGaN膜となった。純度の差異は、所望とする成果であるホウ素の削減により、膜の品質に影響を及ぼす。PBNライナーとRFコイルの間に20mmの間隔を採用する実行1052では、10mmの間隔である実行1050よりも最終の膜内の不純物であるホウ素の量が低かった。したがって、ある点までは、ライナーとコイルの間の間隔を増大させることが望ましい。部分的なPBNライナーを採用している両方の膜(実行1050および1052)は、そうでなくても高品質であり、標準的なGaN膜用途での使用に適する。
【0068】
このSIMS分析が示すとおり、上述し、
図1および
図2に示すように、PBNライナーとイオン化源を分離させることで、成長した膜に混入するホウ素の量が驚くほど低減される。ホウ素不純物は膜の品質、ひいては膜の性能に悪影響を及ぼし得るため、このような制御のレベルは超高品質の膜を作製するために極めて望ましい。
【0069】
本発明の各種の実施形態についての上記の説明は、当業者に対する説明のために提示する。この説明は網羅的であり、すなわち本発明を単独の開示する実施形態に限定することを意図していない。前述したように、本発明の多数の代替および変形は、上で教示する分野の当業者にとって自明であろう。本特許明細書は、本発明の代替、変更、変形をすべて包含することを意図している。