(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のパラメータを測定するステップが、前記締付バンドと前記被験者の皮膚の一部との間に配置された2つのセンサを使用するステップを含む、請求項3に記載の方法。
前記第1のパラメータを測定するステップが、前記被験者の皮膚の一部と、前記締付バンドの対向端部の外側とに配置された2つのセンサを使用するステップを含むか、または、
前記第1のパラメータを測定するステップが、前記締付バンドの内部に埋め込まれた超音波センサを使用するステップを含む、請求項3に記載の方法。
前記第1のパラメータを測定するステップが、前記設定位置において20cm未満の範囲にわたって測定するステップを含み、前記一連の逆圧が、各々、前記範囲に沿って加えられる、請求項1に記載の方法。
前記第1のパラメータを測定するステップが、2つのセンサ間の脈拍の通過時間を測定するために、前記動脈に沿って範囲によって分離された前記2つのセンサを使用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
前記第1のパラメータが、眼圧測定、超音波、核磁気共鳴、電磁波の伝播特性、光学測定、および生体電気インピーダンスからなるグループから選択された技術を使用して測定される、請求項1に記載の方法。
前記モデルが、前記動脈の所定の応力-歪み関係、Bramwell-Hill式、指数モデル、および双線形モデルからなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
被験者の動脈の推定脈波伝播速度を決定するための動作をプロセッサに実行させるように構成されたプロセッサ実行可能命令をその上に記憶している非一時的プロセッサ可読記憶媒体であって、前記動作が、
加圧デバイスを用いて前記動脈に対して前記被験者上の設定位置において一連の逆圧を加える動作であって、前記一連の逆圧の各々が、互いに異なり、前記設定位置において加えられ、ゼロと前記被験者の拡張期圧との間である、動作と、
前記一連の逆圧の各々が加えられたとき、脈波伝播速度に関する第1のパラメータを測定する動作と、
前記一連の逆圧の各々で測定された前記第1のパラメータに対するモデルの最良適合に基づいて、前記モデルの所定のセットから前記モデルを選択する動作と、
前記一連の逆圧の各々に対する測定された前記第1のパラメータの関係を確立する前記モデルで第2のパラメータを推定する動作と、
前記モデルにおける前記推定された前記第2のパラメータと逆圧に対するゼロ値とを用いて、前記推定脈波伝播速度を決定する動作と
を備え、
前記第2のパラメータを推定するとき、前記一連の逆圧の中で、より高い逆圧が、より低い逆圧よりも重く重み付けされる、非一時的プロセッサ可読記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
様々な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。可能な限り、同じ参照番号は、同じまたは同様の部分を指すために図面全体を通じて使用される。特定の例および実施態様になされた参照は、例示の目的のためであり、本発明または特許請求の範囲の範囲を限定することを意図していない。
【0014】
様々な実施形態は、ローカルPWVを決定するために使用される従来の方法よりも不確実性が少ないPWVを推定する方法を含む。様々な実施形態によれば、多ステップ処理は、動脈の比較的短いまたは長い部分についてPWVのより正確な推定を導出するために使用されてもよい。様々な実施形態による推定PWVは、動脈系の状態の指標を提供するために使用されてもよい。
【0015】
様々な実施形態は、被験者の動脈内で逆圧を加えずに推定PWVを決定する方法を含む。方法は、被験者の動脈に対して一連の逆圧を加えることを含んでもよい。脈波伝播速度に関するパラメータは、一連の逆圧の各々が加えられたときに測定されてもよい。加えて、方法は、選択モデルにおける未知のパラメータを計算するステップと、決定された未知のパラメータに基づいて推定PWVを決定するステップとを含んでもよい。一連の逆圧の各々は、同じ位置において同じ加圧デバイスによって加えられてもよいが、一連の逆圧内の個々の逆圧は、異なる大きさを有してもよい。加えて、一連の逆圧の各々は、同じ設定位置において加えられてもよい。また、逆圧は、ゼロと被験者の拡張期圧との間であってもよい。未知のパラメータは、逆圧に対するパラメータの関係を確立する選択モデルにおいて計算されてもよい。
【0016】
本明細書で使用される場合、「逆圧」という用語は、加えられた加圧力または加えられた加圧力の影響が測定および/または評価され得る方法でなにかが動脈の外壁を加圧するまたは押すときに加えられる加圧力を指す。本明細書で使用される場合、「加圧力」という用語は、一般的な方向を有してもよい所与の圧力に関連付けられた力を指す。逆圧は、外部の加圧力から得られてもよく、被験者の皮膚の一部に加えられてもよく、下に存在する動脈を加圧する。逆圧からの加圧力は、動脈の長手方向に対してほぼ垂直であってもよい。
【0017】
本明細書で使用される場合、「モデル」という用語は、少なくとも1つの未知のパラメータを計算するために使用されてもよいシステムまたはプロセスの状態の数学的表現を指す。適切なモデルまたは最良適合モデルが選択されてもよいように、いくつかの異なるモデルが比較のために利用可能であってもよい。
【0018】
PWVは、しばしば、動脈のより長い範囲(たとえば、頸動脈から大腿動脈まで)にわたって測定される。脈拍について長い伝播経路を使用することは、脈拍の時間的位置の不確実性の影響を低減することができる。しかしながら、脈拍の形状は、長い伝播経路にわたって変化する傾向があり、これは、長い伝播経路にわたって測定された場合、従来の方法のPWVを使用して推定されたローカルPWVの不確実性を増加させる。
【0019】
被験者の測定された脈拍の収縮期部分は、典型的には、約0.1秒の持続時間を有してもよい。末梢系における伝播速度は、たとえば、10m/秒であることがあるが、大動脈における伝播速度は、たとえば、5m/秒であることがある。したがって、脈拍の(脈拍の収縮期部分の)空間的な長さは、典型的には、大動脈の近くでは約0.5mであり、末梢系では約1mである。連続する脈拍間の時間は、典型的には、1秒よりもわずかに短く、したがって、1つの脈拍の開始と次の脈拍の開始との間に末梢系を通る距離は、典型的には約10メートルである。これは、単一のパルスが典型的には比較的長い範囲にわたってアクティブであることを意味する。末梢系が、一定の直径、薄い壁、および一定の弾性率を有する仮想的に無限に長い管としてモデル化された場合、脈拍の伝播は、比較的単純な物理的現象としてモデル化され得る。そのようなモデルでは、系を通過する2つの脈拍間の距離を測定することは、比較的簡単であろう。
【0020】
しかしながら、動脈系は、一般に非常に複雑で、高度に非線形であるので、単純な線形モデルは、不適切である。たとえば、動脈は、一般にテーパ状であり、それらの壁厚は、直径と比較して小さくなく、個々の脈拍の空間的長さは、肢内の動脈の特性長さに匹敵する。さらに、典型的には、動脈系内の分岐において、多数の不連続性に遭遇することがある。動脈系における不連続性は、脈拍の空間的長さよりも短い、または脈拍の任意の関連するスペクトル成分の波長よりも小さい長さスケールにおける動脈特性の変化を含む。典型的な脈拍の結果として生じる形状は、したがって、動脈系を通って伝播するにつれて変化することがある。たとえば、伝播速度は、管の寸法ならびに管の弾性率に依存するので、伝播速度は、変化することがある。動脈の直径は、心臓からの距離とともにより小さくなる傾向があり、管の弾性率は、管の膨張に依存する。加えて、脈拍の形状は、脈波が管の幾何学的形状における不連続性に遭遇したときに生じる反射の影響から変化することがある。
【0021】
図9は、1秒または複数秒で測定され得る、縦軸が任意の単位を使用する動脈断面積を反映し、横軸が時間を表す、典型的な脈拍形状のグラフを示す。脈拍検出が実行される動脈系内の位置は、測定された脈拍の形状を決定することができる。さらに、脈拍形状は、測定値を提供する被験者の状態に依存することがある。そのような変数は、時間的な脈拍の位置の推定における不確実性に寄与することがある。したがって、一貫性を高めるために、拡張期の終了直後の脈拍の開始が「トリガマーク」として使用されてもよい。新しいパルスの開始時(
図9中で「1」として示されている)、動脈内の圧力は、急速に上昇し始め、これは、血管の膨張(すなわち、血管の断面積の増加)を引き起こす。脈拍のピーク(
図9中で「2」として示されている)は、収縮期血圧を反映する。その後、脈拍の終了時(
図9中で「3」として示されている)、圧力は、再び拡張期圧に低下する。より低い圧力の期間後の圧力の急速な上昇(すなわち、拡張期と収縮期との間の遷移)は、脈拍の特徴的な部分である。そのように、トリガマークは、脈拍を測定するときにより一貫して識別され得る。このトリガマークは、脈拍間の時間間隔を測定するために使用されてもよい。
【0022】
従来の技術を使用してなされたPWVの測定は、典型的には、かなりの不確実性を有する。具体的には、測定値は、脈拍の収縮期部分の特徴的な空間的長さよりも短い範囲にわたって末梢系で測定されたとき、かなりの不確実性を有する。加えて、脈拍の低周波部分は、一般に、高周波部分とは異なる速度で伝播する。さらに、高周波部分の伝播速度は、特に血管生理学に関連することがある。そのように、低周波成分をフィルタ除去し、高周波部分を維持するハイパスフィルタを、脈拍を識別するために使用される測定値に適用することが有利であることがある。たとえば、脈圧拍の初期の急速な上昇は、高周波成分であり、これは、フィルタリング後に維持され、強調され得る。加えて、時間的勾配が最大であるとき、信号のこれらの部分からインスタンスを決定することが有利であることがある。
【0023】
図1は、様々な実施形態による、被験者5の動脈内の推定PWVを決定するように構成された装置10を示す。装置10は、逆圧を加えるための加圧デバイス100と、第1のパラメータを測定するためのセンサ110と、加圧デバイスおよびセンサに結合された、データを処理するための制御ユニット120とを含んでもよい。
【0024】
様々な実施形態では、加圧デバイス100は、測定されている被験者5上の設定位置(すなわち、被験者の身体の選択部分)を覆ってもよい。たとえば、加圧デバイス100は、肢の一部を覆い、肢のその部分に圧力を加えることができる、膨張可能なカフなどの締付バンドであってもよい。加圧デバイス100は、被験者5の肢の周りに完全に巻き付いてもよい。
図1では、加圧デバイス100は、断面で示されており、一部は、被験者5の肢の反対側に示されている。追加のタイプの加圧デバイスは、様々な実施形態に従って使用されてもよい。
【0025】
加圧デバイス100によって加えられる圧力レベルと、センサ110からの測定値とを登録する制御ユニット120が含まれてもよい。圧力およびセンサ測定値からの値は、メモリ122に記憶されてもよい。加えて、制御ユニット120は、加圧デバイス100によって適用されるタイミングおよび/または圧力レベルを調整および/または制御してもよい。さらに、制御ユニットは、PWV推定に関する中間のおよび/または最終的な計算および決定を行うように構成された1つまたは複数のプロセッサを含んでもよい。制御ユニット120は、単一のユニットとして示されているが、複数の制御ユニットが設けられてもよい。加えて、接続部105、115は、ワイヤード接続部として示されているが、制御ユニット120は、1つまたは複数のワイヤレストランシーバおよびアンテナを使用するなどのワイヤレス接続部を含んでもよい。
【0026】
センサ110は、第1の位置11に配置された1つのセンサ110、および第2の位置12に配置された別のセンサ112などの、2つ以上のセンサを含んでもよい。第1および第2の位置11、12は、被験者5の動脈25の経路に沿って概ね整列されるように選択されてもよい。2つのセンサ110、112は、2つの位置11、12に配置されてもよく、脈圧または流速拍のいずれかに比例する信号を提供するように構成される。加圧デバイス100として締付バンドを使用することによって、2つのセンサ110、112は、加圧デバイス100と被験者5の皮膚との間に配置されてもよい。この構成は、脈拍の通過時間が測定される間隔がほぼ均一な逆圧を有することになるので、望ましいことがある。代替的に、センサ110、112は、締付バンドの外側および対向端部(すなわち、締付バンドの外側、直前、および直後の皮膚)に配置されてもよい。この代替案は、使用されるセンサのタイプに応じて、加圧デバイス100の直下にセンサを配置することができないことがある、特定の構成で有用である場合がある。
【0027】
様々な実施形態は、生体電気インピーダンスの変動を利用するセンサを含む。生体電気インピーダンスの変動を利用するセンサを使用することの利点は、センサ自体が比較的「平坦」で柔軟であってもよいということである。このようにして、そのようなセンサは、領域に加えられている逆圧を大幅に変更することなく、被験者の皮膚上で、締付バンドの下に容易に配置され得る。さらに、被験者は、締付バンドが膨張可能なカフであり、完全に膨張したときであっても、そのようなセンサによる不快感をほとんどまたはまったく経験しない可能性がある。
【0028】
装置10は、被験者5に一連の逆圧を加えてもよい。加圧デバイス100は、加えられている逆圧を制御し、適切に変化させてもよい。締付バンドに加えて、加圧デバイス100は、圧力計、張力付与デバイス、および/または圧送デバイスを含んでもよい。代替的に、圧力計、張力付与デバイス、および/または圧送デバイスは、制御ユニット120の一部であってもよい。様々な実施形態では、逆圧は、ゼロから測定が実行される被験者の拡張期圧までの範囲で変化させられてもよい。第1の接続部105は、特定の時間に被験者5に加えられている圧力のレベルを記録するために、加圧デバイス100またはその構成要素を制御ユニット120に結合してもよい。第1の接続部105は、被験者5に加えられている圧力の適切な指標を制御ユニット120に提供するように構成されたワイヤおよび/またはチューブであってもよい。加えて、制御ユニット120は、圧送デバイスを、したがって、測定値が取られるときに加えられる圧力の量を制御するためのプロセッサを含んでもよい。
【0029】
装置10は、脈波伝播速度に関連するパラメータである、2つのセンサ110、112の間を移動するときの脈拍の通過時間を測定してもよい。脈拍が2つのセンサ110、112の間を通過するのにかかる時間は、脈拍の通過時間の測定値であってもよく、これは、心臓の左心室の収縮と関連する。第1の位置11と第2の位置12との間の距離は、一連の逆圧が様々な実施形態に従って加えられる既知の長さであってもよい。第2の接続部115は、2つのセンサ110、112を制御ユニット120に結合してもよい。このようにして、測定された2つのセンサ110、112の間の通過時間は、制御ユニット120によって測定され、および/または記録されてもよい。そのような通過時間の測定値は、一連の異なる逆圧にわたって記録されてもよい。一連の逆圧は、一定量(たとえば、10〜20mmHg)または他の増分によって変化してもよい。様々な実施形態では、逆圧は、ゼロから被験者の拡張期圧までの範囲であってもよい。経壁圧が、脈拍の一部について動脈を崩壊させる可能性があるゼロを下回る可能性があるので、被験者の拡張期血圧よりも高い逆圧は、望ましくない。崩壊するまたは不安点な動脈は、動脈をモデル化する際に使用される仮定を弱体化する可能性があり、したがって、PWVに関連する任意の決定の信頼性を低くする可能性がある。しかしながら、拡張期血圧をわずかに上回る逆圧値は、信頼できる測定値をもたらすことがある。
【0030】
図2は、様々な実施形態による、被験者5の動脈内の推定PWVを決定するように構成された装置20を示す。装置20は、逆圧を加えるための加圧デバイス200と、生体電気インピーダンスを使用して1つまたは複数のパラメータを測定するための第1のセンサ211および第2のセンサ212と、加圧デバイスおよびセンサに結合された、データを処理するための制御ユニット220とを含んでもよい。第1のセンサ211は、第1の外側検出電極211aと、第1の内側検出電極211bとを含んでもよい。同様に、第2のセンサ212は、第2の外側電極212aと、第2の内側電極212bとを含んでもよい。検出電極211a、211b、212a、212bは、加圧デバイス200の下およびすぐ外側で、腕23の皮膚の一部の上に配置されてもよい。このようにして、外側の2つの検出電極211a、212aは、加圧デバイス200の対向端部のすぐ外側に配置されてもよく、内側の2つの検出電極211b、212bは、加圧デバイス200の下に配置されてもよい。加えて、2つの励起電極215、216はまた、外側の2つの検出電極211a、212aよりも加圧デバイス200のさらに外側で、腕23の皮膚に適用されてもよい。具体的には、2つの励起電極215、216は、動脈25が腕23に埋設された深さよりもかなり大きい分離距離dだけ離間されてもよい。離間距離dは、たとえば、手首から肘まで、前腕を越えて延びてもよい(たとえば、約10cm)。代替的に、離間距離dは、大部分の肢の長さのように、さらに延びてもよい。
【0031】
図3は、
図2中の装置のセンサ配置の仕組みの概略図を示す。いくつかの実施形態では、電流発生器225は、特定の周波数で発振する電流を生成してもよい。電流発生器225は、被験者(図示せず)の近く、または制御ユニット(たとえば、
図2中の220)の内部に配置されてもよい。電流発生器225からの電流は、励起電極215、216を介して被験者内(たとえば、腕23の中)に向けられてもよい。電流発生器225からの電流は、10kHzから10MHz以上までの範囲内の周波数であってもよい。電流の大きさは、たとえば、0.005mAから10mAまでの範囲内であってもよい。励起電極215、216は、長方形、楕円形、または環状を含むほぼ任意の形状であってもよい。加えて、励起電極215、216は、それらが適用され得る身体の部分の大きさに合せられてもよい。たとえば、励起電極215、216は、約5mm〜20mmの全径を有してもよい。様々な実施形態では、動脈の正確な経路は、未知である(たとえば、一方の側または別の側に変位している)ことがあるので、励起電極215、216は、動脈の長手方向における長さよりも長い、下にある動脈に対して垂直な幅を有してもよい。電流発生器225からの振動電流は、皮膚の近くで皮膚表面に実質的に垂直に延びることになる励起場線219を生成することができる。皮膚および皮下脂肪は、低い導電率を有するので、励起場線219は、皮膚から離れて延び、血液は、より高い導電率を有するので、励起場線219は、動脈25の長手方向により整列されるようになる。したがって、動脈25の近くまたは内部では、励起場線219は、動脈25内部の血液の方向と整列されるようになる。
【0032】
外側検出電極211a、212aは、動脈25の予想される塹壕(entrenchment)深さに匹敵する距離(すなわち、動脈があることが予想される皮膚の下の深さにほぼ等しい距離)だけ、それらの対応する対の内側検出電極211b、212bから離間されてもよい。たとえば、第1の外側検出電極211aと第1の内側検出電極211bとの間の間隔は、被験者上の位置と、特定の被験者の特定の解剖学的構造とに応じて、数ミリメートルから5センチメートルまでであってもよい。同様の間隔は、第2の外側検出電極212aと第2の内側検出電極212bとの間に確立されてもよい。検出電極211a、211b、212a、212bは、励起電極215、216について上述した形状およびサイズと同様に、長方形、楕円形、または環状を含むほぼ任意の形状であってもよく、それらが適用され得る身体の部分の大きさに合せられてもよい。たとえば、検出電極211a、211b、212a、212bは、約1mm〜20mmの全径を有してもよい。センサ211、212はまた、励起場線219と重なってもよい仮想場線213、214を生成してもよい。仮想場線213、214および励起場線219の重なりは、そこからインピーダンス変動がセンサ211、212によって測定され得る有効検出領域を定義することができる。センサ211、212からの信号は、制御ユニット(たとえば、220)内に含まれるものなどのプロセッサ30によって記録および分析されてもよい。装置20では、検出のために使用されるセンサ211、212のみが、逆圧が加圧デバイス(たとえば、200)によって加えられる領域内に配置される。
【0033】
センサ211、212からの信号の復調は、直交検波によって行われてもよい。直交検波では、検出された信号は、被験者5の腕23に励起信号を提供するのと同じ発振器によって得られた基準信号の直交成分と混合されてもよい。一般に、復調された信号の同相部分は、典型的には、検出されたインピーダンスの実数部が支配しているという事実を反映する支配的な部分であり得る。しかしながら、直交成分はまた、検出され得、同相成分および直交成分の重み付けされた二次の合計は、それぞれ、インピーダンスの虚数部が重要であると考えられる場合に検出効率を高めるために用いられ得る。虚数部は、通常、皮膚、脂肪、筋肉、および血液によって構成される、関連する組織の比誘電率の実数部に関連付けられ得る。信号は、有利には、ノイズの影響を最小にするだけでなく、タイミングのために最も重要である信号のこれらの部分、すなわち大きい時間的な勾配を有するこれらの部分を強化するためにフィルタリングされ得る。センサ211、212のためのフィルタは、通過時間の推定値における任意の偏りを避けるために、同一の位相特性を有してもよい。位相特性は、それらのサンプリング周波数(たとえば、5kHz)により正確に制御され得るので、デジタル有限インパルス応答フィルタが使用されてもよい。
【0034】
センサ211、212からの信号の出力は、2つのセンサ位置における動脈の膨張を反映することができ、一般に、任意のフィルタリングの影響を含む、経時的な脈拍形状を示すことになる。2つ以上の時間(すなわち、異なるタイムスタンプ)における測定は、脈拍形状を反映することができる。詳細な較正は、センサ出力に行われていないと仮定すると、センサの出力は、直接膨張に等しい可能性があるが、膨張に比例する可能性もある。関心があるのは、脈拍のタイミングであるので、膨張の直接の示度は、必要ではないことがある。それにもかかわらず、センサ出力から直接膨張を測定するために、較正が行われてもよい。
【0035】
一実施形態では、脈拍形状がセンサ211、212によって測定された信号の復調によって得られたら、通過時間は、単一の脈拍のタイミングに基づいて決定され得る。一実施形態では、脈拍の時間的な開始は、ハイパスフィルタリングされた信号がゼロレベルを通過する時間によって定義され得る。別の実施形態では、脈拍の時間的な開始は、膨張の最大の上り勾配が検出された時間によって定義されてもよい。第3の実施形態では、脈拍の時間的な開始は、最小の膨張が生じる時間に最大の膨張ポイントのまでの時間の半分を加えた時間として定義される(最大/最小)。3つの実施形態のすべては、同様の結果をもたらす。しかしながら、最大/最小法は、広帯域ノイズの影響を受けにくいと思われるが、ゼロクロス法は、収縮期の最後の部分に影響を与える反射および/または拡張期に影響を与える反射による影響を受けにくい。セロクロス法は、最大勾配法よりも実施するのが簡単である。しかしながら、最大勾配法は、広帯域ノイズが無視できる場合、わずかにより良好な脈拍位置の推定をもたらす。
【0036】
別の実施形態では、通過時間は、フィルタリングされた信号の短期相互相関から推定されてもよい。この方法は、堅牢であり得、信号の効率的な検証に適していることがある。しかしながら、個々の確認された脈拍に対して実行されるタイミングは、動脈系における脈拍の反射の影響を克服または最小化するために、かつ、心拍に関連しない被験者の動きによって生じる誤脈拍測定値を拒絶するために好ましいことがある。反射および動きは、しばしば、脈拍の形状にかなり影響を与える。加えて、脈拍の最初の部分、収縮期の上り工程の最初の部分に対する反射の影響は、一般に小さいと仮定されるが、様々な実施形態は、反射の影響が以前に考えられていたよりも大きい影響を有する可能性があることを実証するために使用され得る。
【0037】
様々なタイプのデバイスは、圧力が被験者に加えられている間、脈波伝播速度に関連するパラメータを測定するために使用され得る。いくつかの例は、眼圧測定、超音波、核磁気共鳴、伝播する電磁波、光検出、および/または生体電気インピーダンスなどの技術を用いるデバイスを含む。眼圧測定は、局所的な血管圧力などの流体圧力を測定する。超音波は、動脈壁の膨張または流速を測定するために使用されてもよい(すなわち、ドップラー速度測定)。核磁気共鳴はまた、膨張を測定するために使用されてもよい。他の技術は、電磁波の伝播特性を検出することができる様々なデバイスを含む。加えて、光学機器は、膨張(たとえば、フォトプレチスモグラフィ)または流速を検出および測定するために使用されてもよい。
図2および
図3に関連して上記で説明したように、生体電気インピーダンスは、特に、膨張または流速が生体電気インピーダンスの変動から検出され得る装置において測定されてもよい。脈波伝播速度に関連する1つまたは複数のパラメータを測定するのに適した追加のデバイスは、様々な実施形態に従って使用されてもよい。
【0038】
図4は、様々な実施形態による、被験者5の動脈25内の推定PWVを決定するように構成された装置40を示す。装置40は、逆圧を加えるための加圧デバイス400と、パラメータを測定するためのセンサ410と、加圧デバイス400およびセンサ410にワイヤレスに結合された、データを処理するための制御ユニット420とを含んでもよい。装置40は、加圧デバイス400内にセンサ410を組み込んでいる。
【0039】
センサ410は、超音波、眼圧測定、光検出、生体電気インピーダンス、または他の感知原理を使用してもよい。加圧デバイス400は、センサ410がカフのブラダー内部に配置された膨張可能なカフであってもよい。このようにして、加圧デバイス400は、カフの内部と加圧デバイス400が取り付けられた腕23上の皮膚との間にセンサ410を挟むことなく膨張させられ得る。センサ410は、皮膚を押圧する加圧デバイス400の内部外面内に組み込まれてもよい(すなわち、装着時に被験者の皮膚に直面するように構成されてもよい)。このようにして、皮膚とセンサとの間のしっかりとした均一な係合が維持され得る。加えて、センサ410は、被験者に不快感を引き起こすことのないかさばるセンサであってもよい。
【0040】
図5は、様々な実施形態による、被験者5の動脈内の推定PWVを決定するように構成された装置50を示す。装置50は、逆圧を加えるための加圧デバイス500と、パラメータを測定するための手動で操作されるセンサ510と、加圧デバイスおよびセンサに結合された、データを処理するための制御ユニット520とを含んでもよい。
【0041】
センサ510は、超音波、眼圧測定、光検出、または他の感知原理を使用してもよい。センサ510は、腕23上の1つの設定位置から別の設定位置に容易に移動され得る手動で操作される(すなわち、ハンドヘルド)デバイスであってもよい。センサ510は、プロセッサと、メモリと、センサ510の機能をサポートする追加の構成要素とを有するテザード(tethered)コンソール512を含んでもよい。センサ510は、テザードコンソール512を介して、センサ測定値に関するデータを通信するための制御ユニット520に直接結合されてもよい。
【0042】
加圧デバイス500は、様々なレベルのきつさに締められ得る、被験者5の腕23の周りに適用される1つまたは複数の織物スリーブの形態の締付バンドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数のスリーブは、加圧デバイス500のすべてまたは一部を形成するように互いの上に積層されてもよい。加圧デバイス500は、圧力測定要素(たとえば、歪みゲージ)、および被験者5に加えられる圧力の値を示すディスプレイで構成されてもよい。そのような示された圧力値は、センサ510によって取られた任意の測定値との相関のために制御ユニット520に手動で入力されてもよい。代替的に、ワイヤードまたはワイヤレス接続部(図示せず)は、加圧デバイス500と制御ユニット520との間で圧力値を通信するために設けられてもよい。締付バンド内の圧力測定要素は、動脈25に向かっておよび/または動脈25に対して加えられる押圧力である、逆圧とは異なるその中の張力を測定してもよい。それにもかかわらず、締付バンド内の張力は、単調関数または比例関数を介して逆圧に関連する可能性がある。たとえば、逆圧Pcは、1つまたは両方のスリーブによって加えられる張力Tに定数K1を乗算したものに等しい可能性がある(すなわち、Pc=K1×T)。定数K1は、加圧デバイス500の特性と、被験者5に係合する方法とに依存し得る。そのような定数K1は、先験的に決定または推定され得、瞬時の張力Tの示度を逆圧Pcの示度に変換するために使用され得る。逆圧を加えるための他のデバイスは、様々な実施形態に従って使用されてもよい。
【0043】
代替的には、加圧デバイス500の締付バンドによって加えられる逆圧は、即時には知られなくてもよい(すなわち、加圧デバイス500または制御ユニット520によって直接測定されなくてもよい)。これは、したがって、推定PWVの決定のために使用される未知のパラメータを計算するために選択されたモデル内の2つ以上の未知のパラメータ(すなわち、未知のパラメータのセット)を提示してもよい。さらなる代替として、選択されたモデルが経験的なモデルである場合、歪みゲージの指標は、逆圧の代わりに直接使用されてもよい。さらなる代替として、選択されたモデルが物理的原理に基づいている場合、歪みゲージの指標は、他の推定技術を介して逆圧に変換されてもよい。
【0044】
図6は、様々な実施形態による、被験者5の動脈内の推定PWVを決定するように構成された装置60を示す。装置60は、逆圧を加えるための加圧デバイス600と、1つまたは複数のパラメータを測定するための、核磁気共鳴機械602の形態のセンサ610とを含んでもよい。たとえば、核磁気共鳴機械602は、動脈における膨張および/または流れる脈拍を測定してもよい。制御ユニット(図示せず)は、核磁気共鳴機械602内に組み込まれてもよく、もしくは核磁気共鳴機械602の一部であってもよく、または別個のデバイスであってもよい。
【0045】
加圧デバイス600は、被験者5の脚の上に縛り付けられて示されている。このようにして、脚と加圧デバイス600の両方は、機械の動作中、核磁気共鳴機械602の内部にある。加圧デバイス600は、核磁気共鳴機械の内部に直接接続されてもよい。加えて、加圧デバイス600は、核磁気共鳴機械602の内部で使用されるために、特別な互換性要件を満たすように構成されてもよい。
【0046】
様々な実施形態では、1つまたは複数の加圧デバイス(たとえば、100、200、400、500、600)、センサ(たとえば、110、211、213、410、510)、および制御ユニット(たとえば、120、220、420、520)は、単一のデバイス内に組み込まれてもよく、または複数のデバイスに分離されてもよい。たとえば、膨張可能なカフは、内側係合面上に固定された検出電極または他のセンサが設けられ、センサを別々に取り付ける必要性を回避してもよい。
【0047】
様々な実施形態では、加圧デバイス、センサ、および/または制御ユニットは、1つまたは複数のプロセッサを含んでもよい。そのようなプロセッサは、上記で説明した様々な実施形態の機能を含む様々な機能を実行するようにソフトウェア命令(アプリケーション)によって構成され得る任意のプログラマブルマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、または複数のプロセッサチップであってもよい。いくつかのデバイスでは、センサ読取りもしくは圧力読取り、計算、または通信機能専用の1つのプロセッサ、および他のアプリケーションを実行するための専用の1つのプロセッサなどの、複数のプロセッサが設けられてもよい。典型的には、ソフトウェアアプリケーションは、それらがアクセスされ、プロセッサ内にロードされる前に、内部メモリ(たとえば、
図1中の122)内に記憶されてもよい。プロセッサは、アプリケーションソフトウェア命令を記憶するのに十分な内部メモリを含んでもよい。多くのデバイスでは、メモリは、揮発性メモリ、またはフラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、または両方の混合物であってもよい。この説明の目的のため、メモリへの全体的な参照は、内部メモリ、または制御ユニットに差し込まれたリムーバブルメモリを含む、プロセッサによってアクセス可能なメモリ、およびプロセッサ自体の中のメモリを指す。
【0048】
図7は、被験者に加えられた一連の逆圧の値に対応するデータを、これらの逆圧の各々において測定された通過時間(すなわち、測定されたパラメータ)に対して示すグラフである。得られたデータ点(グラフ上で円として示す)はまた、{tt,Pc}などの、データセットにおける通過時間および逆圧の対応する値のセットとして表されてもよい。様々な実施形態では、測定されたパラメータおよび対応する逆圧のデータセットと一致するモデルが選択されてもよい。
【0049】
様々な実施形態では、選択されたモデルは、一般に、以下のようにBramwell-Hill式に基づくモデルのように、ローカルPWV値を計算することに関連付けられてもよい。
【0051】
ここで、vは、動脈内のローカルPWVであり、Aは、動脈の断面積であり、ρは、血液密度であり、Pは、経壁圧であり、dP/dAは、面積に対する経壁圧の導関数である。
【0052】
動脈壁の弾性特性は、高度に非線形である可能性がある。それにもかかわらず、生物の典型的な圧力範囲内で有効な一般的な応力-歪み関係は、経壁圧および動脈断面積に関する以下の非線形方程式によって表され得る。
【0054】
ここで、Pは、経壁圧であり、P
0およびA
0は、測定されている被験者に依存するパラメータであり、Aは、測定されている動脈の断面積であり、P
0およびA
0は、それぞれ、無負荷状態下の動脈の圧力および断面積である。動脈の弾性特性は、経時的に変化し得るので、パラメータP
0およびA
0は、特定の時点での検討されている動脈の特定の弾性特性によって与えられてもよい。経壁圧Pは、動脈の壁の内側と外側との間の圧力差から決定されてもよい。
【0055】
断面積Aに対して式2を微分すると、以下の式を提供することができる。
【0057】
断面積Aについて式2を解くと、以下の式を提供することもできる。
【0059】
式3および式4を式1に代入すると、パラメータP
0および経壁圧Pに基づき得るローカルPWVvについての式を提供することができる。関係v=l/ttを使用すると、ここでlは、センサ間の間隔であり、ttは、通過時間であり、経壁圧Pと移動時間ttとの間の以下の関係が導出され得る。
【0061】
経壁圧Pと通過時間ttとの間の関係は、式5に表されるように、動脈の面積に関連する断面積AまたはパラメータA
0のいずれをも含まない。
【0062】
加えて、経壁圧Pは、以下の式に従って、逆圧P
cに関連し得る。
P=MAP-P
c 式6
【0063】
式6では、MAPは、どのような逆圧も加えられていない平均動脈圧力を表す。MAPは、当該技術分野で公知の様々な非侵襲的デバイスを用いて決定されてもよく、または、さらなる未知のパラメータとみなされてもよい。
【0064】
式6を式5に挿入すると、以下の式をもたらすことができる。
【0066】
式7は、加えられた逆圧P
c(すなわち、既知の入力)との通過時間tt(すなわち、測定されたパラメータ)の関係を確立するモデルとして選択されてもよい。間隔lおよびMAPは、式7中の変数であってもよいが、間隔lは、測定を行う装置の設定(たとえば、2つのセンサ間の間隔)から先験的に知られてもよい。加えて、MAPは、他の技術から得られてもよい。さらに、密度ρのような変数はまた、前もって既知であってもよい(たとえば、約1060kg/m
3の値は、平均密度ρとして使用されてもよい)。このようにして、通過時間ttおよび対応する逆圧P
cを提供するデータセットは、決定する1つの未知のパラメータP
0を残すことがある。式7がフィッティング手順の後に使用されるべきモデルとして選択された場合、未知のパラメータP
0は、様々な実施形態に従って、推定され、推定PWVを決定するために使用されてもよい。
【0067】
式7に例示したモデルは、動脈の生理学的な仕組みの物理学的な理解を反映し、したがって、様々なデータセットによく適合し得る。式7に例示したモデルは、指数関数(たとえば、式2)である動脈における所定の応力-歪み関係に基づいている。代替的には、双線形応力-歪み関係が、加えられた逆圧との測定されたパラメータの関係を確立するわずかに異なるモデルを導出するために使用されてもよい。式7のそのような代替変形例、上記の式7の変形例、および他のモデルは、様々な実施形態による、少なくとも1つのパラメータを推定し、推定PWVを決定するために使用され得るモデルの所定のセットの一部であってもよい。
【0068】
様々な実施形態では、経験的なモデルは、モデルの所定のセットの一部として使用されてもよい。経験的なモデルは、動脈内で生じる生理学的プロセスに密接に基づくものではない可能性があるが、特定の状況では、経験的なモデルは、収集され使用されるデータセットに基づく最良適合または他の点で好ましいモデルである可能性がある。別のモデルは、被験者における測定から導出されたデータ点に主にまたは純粋に基づき得る。たとえば、データ点のグラフィカルマッピングは、未知のパラメータを決定するためのモデルとして適切であり得る方程式に変換され得る。
【0069】
以下の式8および式9は、測定値から収集されたデータのパターンを説明するのに適し、したがって、未知のパラメータを推定するのに適した他のモデルの例である。
【0071】
tt=a+bP
c+c(P
c)
2 式9
式8および式9では、通過時間ttおよび逆圧P
cは、よく知られた変数であるが、変数K1、K2、a、b、およびcは、決定され得る他の未知のパラメータである。追加の式は、本明細書の様々な実施形態に従って適切なモデルとして開発され、使用され得る。
【0072】
様々な実施形態は、選択モデルにおける1つまたは複数の未知のパラメータを推定するが、モデルは、データフィッティング手順に基づいて選択されてもよい。データフィッティング手順は、特定のモデルが利用可能なデータセットにどれくらいよく適合するのかを決定するための技術を使用してもよい。このようにして、データフィッティング手順は、データセットにおける値を最良に予測するモデルとして最良適合モデルを決定してもよい。再び
図7を参照すると、データセット{tt,P
c}は、通過時間ttおよび対応する逆圧P
cのための値を提供する。そのような値を使用して、上記で説明した例示的なモデルなどのモデルの所定のセットは、最良適合を提供するモデルを決定するために使用され得る。このようにして、データセットへの最良適合を提供するモデルは、未知のパラメータを推定するために選択され得る。
【0073】
フィッティング手順は、最小二乗法、加重最小二乗法(たとえば、重み付けが逆圧に比例するフィッティング)、反復比例フィッティング、行列ランク付け、回帰分析、または微分もしくは偏微分方程式の解などの、1つまたは複数のフィッティング技術を使用してもよい。加えて、モデルの所定のセットは、データセットに完全には適合してなくてもよい。したがって、最良適合モデルが使用されてもよいが、加えて、最良適合モデルは、重み付けなどによってさらに増強されてもよい。たとえば、一連の逆圧の中で、より高い逆圧は、より良好なフィッティングモデルを見つけ、均一にするために、より低い逆圧よりも重く重み付けされてもよい。
【0074】
代替のデータフィッティング手順は、未知のパラメータのセットを考慮してもよい。たとえば、式7によるモデルでは、間隔lまたはMAPのような変数は、先験的に既知のパラメータでなくてもよい(すなわち、未知の値が存在し、または、値は、測定が行われているときに正確に推定されなくてもよい)。したがって、様々な実施形態によれば、そのようなさらなる未知のパラメータは、データフィッティング技術によって選択されたモデルを使用して推定されてもよい。データセット内のデータ点の数がフィッティングパラメータの数を超えた場合、データモデルは、より正確に適合され得る。
【0075】
フィッティング手順から、選択モデルにおける未知のパラメータは、計算され得る。たとえば、式7が最良適合に基づいてモデルの所定のセットからモデルとして選択されるシナリオを検討する。加えて、未知のパラメータP
0とは対照的に、すべての既知の変数の値を先験的に知ると、データセット{tt,P
c}からの値は、未知のパラメータP
0を推定するために使用され得る。
【0076】
値が未知のパラメータP
0について推定されたら、選択モデルは、再び使用されてもよい。しかしながら、このとき、推定された未知のパラメータP
0と、逆圧P
cの値のためのゼロ値とが使用されてもよい。逆圧P
cの値のためのゼロ値を使用することは、逆圧が被験者の動脈に加えられていない状況を反映することができる。このようにして、式7は、以下のように逆圧P
cについてゼロ値を反映するように再加工され得る。
【0078】
以前の未知のパラメータP
0の値を決定すると、式10は、外部の逆圧が被験者に加えられていない関連した推定通過時間ttを決定するために使用され得る。加えて、間隔lを知り、推定通過時間でその間隔lを除算することは、外部の逆圧が被験者に加えられていない関連した推定PWVを提供することができる。ゼロ逆圧に関するそのような推定PWVは、ゼロ逆圧で直接測定されたPWVとは異なる可能性がある。それにもかかわらず、様々な実施形態による推定PWVは、従来の方法を直接使用するローカルPWV測定よりも低い不確実性に関連するローカルPWVのより信頼できる決定を提供することができる。
【0079】
図8は、様々な実施形態による、被験者の動脈内の推定PWVを決定するための方法800を示す。方法800の動作は、加圧デバイス(たとえば、100、200、400、500、600)と、1つまたは複数のセンサ(たとえば、110、112、211、213、410、510)と、制御ユニット(たとえば、120、220、420、520)または他のコンピューティングデバイスとによって実行されてもよい。
【0080】
図1〜
図8を参照し、ブロック810では、加圧デバイス(たとえば、100、200、400、500、600)は、被験者上の設定位置において逆圧を加えてもよい。膨張可能なカフなどの締付バンドとして使用される特定の加圧デバイスは、被験者上の設定位置であり得る場所を限定することがある。そうではない場合、設定位置は、いくつかの異なる逆圧の適用のために、被験者上の1つの場所に残ってもよい。加圧デバイスによって加えられる逆圧の値は、メモリ(たとえば、メモリ122)内に記憶されてもよい。
【0081】
ブロック820では、センサ(たとえば、110、112、211、213、410、510)は、PWVに関連する1つまたは複数の測定可能なパラメータ(すなわち、第1のパラメータ)を測定してもよい。様々な実施形態では、測定可能なパラメータは、脈拍通過時間である。しかしながら、他のパラメータは、代替的に、または加えて、様々な実施形態に従って測定されてもよい。測定されたパラメータは、動脈に沿った距離lによって分離された2つの位置における膨張脈拍(動脈の膨張)または流量脈拍(血流速度変動)に関する記録量に基づいてもよい。1つの発生から次の発生までの時間は、通過時間ttを定義することができる。デバイスは、生体電気インピーダンス(たとえば、インピーダンスプレスチモグラフィ(impedanceplethysmography))、光学的測定(たとえば、フォトプレチスモグラフィ(photoplethysmography)などの吸光度または散乱)、超音波、および核磁気共鳴などの、1つまたは複数の様々な原理を使用して膨張を測定してもよい。同様に、流量脈拍は、超音波、生体電気インピーダンス(たとえば、流れに敏感に作られた検出技術による)、および/または光学的測定(たとえば、光差分ドップラーもしくは通過時間)などの、1つまたは複数の様々な原理を使用するデバイスを用いて測定されてもよい。加えて、ドップラー効果を利用する伝播する電磁放射(たとえば、マイクロ波)に基づく他の方法が用いられてもよく、または、核磁気共鳴の誘導体はまた、流量を測定することができる。センサによって測定された値は、メモリ(たとえば、メモリ122)内に記憶されてもよい。
【0082】
決定ブロック830では、制御ユニット(たとえば、120、220、420、520)は、パラメータの追加の測定が推定PWVを決定するために必要であるかどうかを決定してもよい。各測定は、未知のパラメータを推定し、推定PWVを最終的に決定するために使用され得るデータ点を収集する。より多くのデータ点が収集されると、PWVの正確な推定が決定され得る可能性がより高くなる。しかしながら、測定されている被験者は、逆圧の各適用および対応する測定の時間がかかりすぎる場合、多数の測定のための無制限の忍耐を有さない可能性がある。したがって、使用される測定の数は、限られている可能性があり、所定の最小値に設定されてもよい。このようにして、プロセッサは、十分な数のデータ点が収集されたかどうかを決定するために、圧力値およびセンサ測定値が記憶されたメモリにアクセスしてもよい。パラメータの追加の測定が必要であることを決定すること(すなわち、決定ブロック830=「Yes」)に応答して、制御ユニットは、ブロック835で逆圧の変更をトリガし、ブロック810で変更された逆圧の適用を続けてもよい。パラメータの追加の測定が必要ではないことを決定すること(すなわち、決定ブロック830=「No」)に応答して、制御ユニットは、ブロック840で、ブロック850で未知のパラメータを推定するために使用され得るモデル(たとえば、式7)を選択してもよい。
【0083】
ブロック840では、制御ユニットは、モデルのセットからモデルを選択してもよい。モデルの選択は、最良適合または他の考慮事項に基づいてもよい。たとえば、フィッティング手順は、モデルの選択のために使用されてもよく、このフィッティング手順は、単純な最小二乗フィッティング、または対応する加えられた外部の逆圧に比例する値に対する重みを含むフィッティングを含んでもよい。加えて、最小二乗法、加重最小二乗法(たとえば、重み付けが逆圧に比例するフィッティング)、反復比例フィッティング、行列ランク付け、回帰分析、または微分もしくは偏微分方程式の解などの、フィッティングするための他の技術が使用されてもよい。モデルは、動脈の所定の応力-歪みの関係、Bramwell-Hill式、指数モデル、双線形モデル、および/または他のものから選択されてもよい。
【0084】
ブロック850では、制御ユニットは、逆圧に対するパラメータの関係を確立する選択されたモデルにおける1つまたは複数の未知のパラメータを推定してもよい。ブロック840で選択されたモデルを使用し、測定されたパラメータおよび対応する逆圧は、未知のパラメータの値を決定するために、モデルにおいて使用されてもよい。各データ点は、異なる未知のパラメータ値に対応してもよいが、平均値、中央値、または最頻値は、未知のパラメータの推定値として使用されてもよい。
【0085】
ブロック860では、制御ユニットは、推定された未知のパラメータに基づいて推定PWVを決定してもよい。推定PWVが決定されると、出力は、公知の変換技術、試験、診断、または他の用途を使用して圧力示度を提供するなどのために、制御ユニットによって提供されてもよい。出力は、推定PWVを示してもよく、推定PWVを決定するために使用されるモデルにおいて、印加された外部の逆圧を使用せずに決定されてもよい。出力は、医療記録に記録されてもよく、または、被験者、医療従事者、技術者、もしくは他のエンティティに提供されてもよい。制御ユニットは、ブロック860における推定PWVの決定に続いて、加圧デバイスが再びブロック810において逆圧を加えることを開始させて、方法800の動作を繰り返してもよい。オプションで、逆圧は、ブロック810における適用の前に変更されてもよい。
【0086】
前述の方法の説明およびプロセスフロー図は、単に例示的な例として提供され、様々な実施形態のステップが提示された順序で実行されなければならないことを必要とするまたは意味することを意図していない。当業者によって理解されるように、前述の実施形態におけるステップの順序は、2つ以上の順序で実行されてもよい。「その後」、「次いで」、「次に」などの単語は、ステップの順序を限定することを意図しておらず、これらの単語は、単に、方法の説明を通じて読者を導くために使用される。さらに、たとえば、冠詞「a」、「an」、または「the」を使用する単数形でのクレーム要素への任意の参照は、要素を単数形に限定するものとして解釈されるべきではない。
【0087】
「第1の」および「第2の」という用語は、たとえば、脈波伝播速度または他の要素に関連するパラメータを説明するために本明細書で使用されているが、そのような識別子は、単に便宜上であり、様々な実施形態を特定の順序、配列、ネットワークのタイプ、またはキャリアに限定することを意味しない。
【0088】
本明細書に開示された実施形態に関連して説明した様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、または両方の組合せとして実装されてもよい。ハードウェアおよびソフトウェアのこの互換性を明確に示すために、様々な例示的な構成要素、ブロック、モジュール、回路、およびステップは、それらの機能の観点から一般的に上記で説明されている。そのような機能がハードウェアまたはソフトウェアのいずれとして実装されるのかは、システム全体に課せられる特定の用途および設計制約に依存する。当業者は、説明された機能を各々の特定の応用分野について様々な方式で実装し得るが、そのような実装判断は、本開示の範囲からの逸脱を引き起こすと解釈されるべきではない。
【0089】
本明細書に開示された態様に関連して説明した様々な例示的なロジック、論理ブロック、モジュール、および回路を実装するために使用されるハードウェアは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくは他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリートゲートもしくはトランジスタロジック、ディスクリートハードウェア構成要素、または本明細書で説明した機能を実行するように設計されたそれらの任意の組合せを用いて実装または実行されてもよい。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであり得るが、代替として、プロセッサは、任意の従来型プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、または状態機械であり得る。プロセッサは、コンピューティングデバイスの組合せ、たとえばDSPとマイクロプロセッサの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連結した1つもしくは複数のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実装されてもよい。代替的には、いくつかのステップまたは方法は、所与の機能に固有の回路によって実行されてもよい。
【0090】
1つまたは複数の実施形態では、説明した機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組合せにおいて実装されてもよい。ソフトウェアにおいて実装された場合、機能は、非一時的コンピュータ可読媒体または非一時的プロセッサ可読媒体上に1つまたは複数の命令またはコードとして記憶されてもよい。本明細書で開示された方法またはアルゴリズムのステップは、非一時的コンピュータ可読またはプロセッサ可読記憶媒体上に常駐することができるプロセッサ実行可能ソフトウェアモジュールにおいて具体化され得る。非一時的コンピュータ可読またはプロセッサ可読記憶媒体は、コンピュータまたはプロセッサによってアクセスされ得る任意の記憶媒体であり得る。例として、限定はしないが、そのような非一時的コンピュータ可読またはプロセッサ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、FLASHメモリ、CD-ROMもしくは他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージもしくは他の磁気記憶デバイス、または、命令もしくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用され得、コンピュータによってアクセスされ得る任意の他の媒体を含んでもよい。本明細書で使用されるディスク(disk)およびディスク(disc)は、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピー(登録商標)ディスク、およびBlu-ray(登録商標)ディスクを含み、ディスク(disk)は、通常、磁気的にデータを再生し、ディスク(disc)は、レーザを用いて光学的にデータを再生する。上記の組合せはまた、非一時的コンピュータ可読およびプロセッサ可読媒体の範囲内に含まれる。加えて、方法またはアルゴリズムの動作は、コンピュータプログラム製品内に組み込まれ得る非一時的プロセッサ可読媒体および/またはコンピュータ可読媒体上のコードおよび/または命令の1つまたは任意の組合せまたはセットとして存在してもよい。
【0091】
開示された実施形態の前述の説明は、当業者が本発明を作成または使用することを可能にするために提供される。これらの実施形態に対する様々な修正が当業者には直ちに明らかとなることになり、本明細書で定義される一般的原理は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく他の実施形態に適用され得る。したがって、本発明は、本明細書に示す実施形態に限定されることを意図しておらず、以下の特許請求の範囲、ならびに本明細書で説明した原理および新規な特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。