特許第6546936号(P6546936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546936
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】チアゾール誘導体を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/14 20060101AFI20190705BHJP
【FI】
   C07D417/14
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-569382(P2016-569382)
(86)(22)【出願日】2015年5月22日
(65)【公表番号】特表2017-516780(P2017-516780A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2015061455
(87)【国際公開番号】WO2015181097
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2018年5月17日
(31)【優先権主張番号】14170156.5
(32)【優先日】2014年5月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】オムバーガー,ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】フォード,マルク・ジェイムズ
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−500826(JP,A)
【文献】 特表2010−509190(JP,A)
【文献】 特表2011−510928(JP,A)
【文献】 特表2012−510520(JP,A)
【文献】 特表2013−513615(JP,A)
【文献】 特表2011−510925(JP,A)
【文献】 特表2013−539464(JP,A)
【文献】 特表2012−524784(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/098229(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 417/14
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


〔式中、
は、水素又はC(O)CHであり;
は、ハロゲン、C−C−アルキルスルホニルオキシ又は置換されているヘテロアリールであり;
は、互いに独立して、ハロゲン又はC−C−アルキルスルホニルオキシであり;
nは、0、1、2、3である〕
で表されるチアゾールを調製する方法であって、式(II)
【化2】


〔式中、Rは、上記で定義されているとおりである〕
で表される化合物を、酸の存在下で、式(III)
【化3】


〔式中、
は、上記で定義されているとおりであり;
Xは、ハロゲンである〕
で表される化合物と反応させて、式(I)で表される化合物を生成させることを特徴とする、前記調製方法。
【請求項2】
が、水素又はC(O)CHであり;
が、互いに独立して、塩素又はメチルスルホニルオキシであり;
が、フッ素、塩素、臭素、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、n−プロピルスルホニルオキシ、イソ−プロピルスルホニルオキシ、n−ブチルスルホニルオキシ又はtert−ブチルスルホニルオキシであり;
nが、2であり;
Xが、臭素又は塩素である;
ことを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
が、水素であり;
が、互いに独立して、塩素又はメチルスルホニルオキシであり;
nが、2であり;
Xが、塩素である;
ことを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
が、C(O)CHであり;
が、互いに独立して、塩素又はメチルスルホニルオキシであり;
が、塩素、臭素又はメチルスルホニルオキシであり;
nが、2であり;
Xが、塩素である;
ことを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
式(II)で表される化合物を塩の形態で使用する、請求項1〜4のいずれかに記載の調製方法。
【請求項6】
前記酸がHClである、請求項1〜5のいずれかに記載の調製方法。
【請求項7】
さらに、溶媒としてアルコールを使用する、請求項1〜6のいずれかに記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チアゾール誘導体を調製するための新規調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チアゾール類は、例えば、殺菌活性成分(「J. Korean Soc. Appl. Biol. Chem.54(3), 395−402(2011)」、又は、WO 2013/098229)又は抗癌性HDAC−阻害薬(WO 2008/006561)のような薬物の、有用な前駆物質である。
【0003】
そのようなチアゾール類を合成するためのよく知られている方法は、チオアミドをα−ハロケトンと反応させる、所謂、ハンチ合成である。
【0004】
しかしながら、この合成に必要とされるハロケトンは、他の任意の求核試薬とも反応する高い反応性を有する化学種である。従って、第1級アミン又は第2級アミンを含んでいるチオアミドは、良好な収率を達成するためには、保護された形態(例えば、アミド又はカルバメートとして:Boc−保護基 WO 2007/56170、WO 2010/001220)で使用しなければならない。これに関して必要とされる付加的な保護段階及び脱保護段階は、工業的な製造にとって望ましくない。
【0005】
第1級アミン又は第2級アミンをアミド又はカルバメートとして保護せず、従って、第1級アミン又は第2級アミンが反応可能な状態にある場合、その収率は低減されるということは、例えば、WO 2004/58760(44%)、WO 2010/93191(21%)、WO 2013/4551(42%)又はWO 2004/102459(12%)において、明確に文書化されている。以下に記載されている反応の出発物質を「古典的な」ハンチ合成に付す場合も同様である。
【0006】
さらに、第1級アミン又は第2級アミン(例えば、ピペリジン)が式(III)で表される化合物(第3頁を参照されたい)との反応によってその窒素原子においてアルキル化され得るということも、例えば、WO 2004/41793、WO 2006/126171又はUS 2012/190689において知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許出願公開第2013/098229号
【特許文献2】国際特許出願公開第2008/006561号
【特許文献3】国際特許出願公開第2007/56170号
【特許文献4】国際特許出願公開第2010/001220号
【特許文献5】国際特許出願公開第2004/58760号
【特許文献6】国際特許出願公開第2010/93191号
【特許文献7】国際特許出願公開第2013/4551号
【特許文献8】国際特許出願公開第2004/102459号
【特許文献9】国際特許出願公開第2004/41793号
【特許文献10】国際特許出願公開第2006/126171号
【特許文献11】米国特許出願公開第2012/190689号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Korean Soc. Appl. Biol. Chem.54(3), 395−402(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術に鑑みて、本発明の目的は、一方では付加的な保護/脱保護段階を必要とせず、他方では望ましい生成物を高い収率でもたらすような調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、式(I)
【化1】
【0011】
〔式中、
は、水素又はC(O)CHであり;
は、ハロゲン、C−C−アルキルスルホニルオキシ又は置換されているヘテロアリールであり;
は、互いに独立して、ハロゲン又はC−C−アルキルスルホニルオキシであり;
nは、0、1、2、3である〕
で表されるチアゾールを調製する方法において、式(II)
【化2】
【0012】
〔式中、Rは、上記で定義されているとおりである〕
で表される化合物を、酸の存在下で、式(III)
【化3】
【0013】
〔式中、
は、上記で定義されているとおりであり;
Xは、ハロゲンである〕
で表される化合物と反応させて式(I)で表される化合物を生成させることを特徴とする前記調製方法によって達成された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましいのは、式(I)、式(II)及び式(III)の中のラジカルが以下のように定義される、本発明による調製方法である:
は、水素又はC(O)CHであり;
は、互いに独立して、塩素及びメチルスルホニルオキシであり;
は、フッ素、塩素、臭素、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、n−プロピルスルホニルオキシ、イソ−プロピルスルホニルオキシ、n−ブチルスルホニルオキシ、tert−ブチルスルホニルオキシであり;
nは、2であり;
Xは、臭素又は塩素である。
【0015】
さらに好ましいのは、式(I)、式(II)及び式(III)の中のラジカルが以下のように定義される、本発明による調製方法である:
は、水素又はC(O)CHであり;
は、互いに独立して、塩素及びメチルスルホニルオキシであり;
は、塩素、臭素、メチルスルホニルオキシであり;
nは、2であり;
Xは、塩素である。
【0016】
驚くべきことに、式(I)で表されるチアゾールは、本発明の条件下において、良好な収率及び高い純度で調製することが可能であり、このことは、本発明の調製方法が従来技術において既に記載されている調製方法の上記不利点を克服するということを意味する。
【0017】
本発明のさらなる態様は、式(I)〔式中、R及びRは、上記で定義されているとおりである〕で表される化合物及びその塩である。
【0018】
一般的な定義
場合により置換されていてもよい基は、1置換又は多置換されることが可能であり、ここで、多置換の場合における当該置換基は、同一であっても又は異なっていてもよい。
【0019】
上記式中に記載されている記号の定義においては、概して以下の置換基を代表する集合語を使用した。
【0020】
ハロゲン: フッ素、塩素、臭素及びヨウ素、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、さらに好ましくは、塩素。
【0021】
アルキル: 1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和ヒドロカルビルラジカル、例えば(限定するものではないが)、C−C−アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル。この定義は、複合的な置換基(例えば、アルキルスルホニル、アルコキシなど)の一部分としてのアルキルにも当てはまる。
【0022】
ヘテロアリール基は、本発明に関連して、異なって定義されていない限り、O、N、P及びSから選択される1個又は2個以上のヘテロ原子を有している芳香族ヒドロカルビル基である。C6−18−アリールの定義には、5〜18個の骨格原子(ここで、該炭素原子は、少なくとも1回ヘテロ原子と交換されている)を有するアリール基に関してに本明細書中で定義されている最も広い範囲が包含される。特に、この定義には、例えば、以下の意味が包含される:2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−イル、1,2,4−チアジアゾール−5−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−イル、1,3,4−トリアゾール−2−イル;1−ピロリル、1−ピラゾリル、1,2,4−トリアゾール−1−イル、1−イミダゾリル、1,2,3−トリアゾール−1−イル、1,3,4−トリアゾール−1−イル;3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イル、及び、1,2,4−トリアジン−3−イル。
【0023】
本発明の化合物は、任意の可能な種々の異性体形態の混合物として存在することができ、特に、立体異性体(例えば、E異性体とZ異性体、トレオ異性体とエリトロ異性体、及び、光学異性体)の混合物として存在することができ、さらに、適切な場合には、互変異性体形態の混合物としても存在することができる。E異性体とZ異性体の両方が開示及び請求されており、トレオ異性体とエリトロ異性体も同様であり、及び、さらに、光学異性体も同様であり、それら異性体の混合物も同様であり、及び、さらに、可能な互変異性体形態も同様である。
【0024】
調製方法に関する記述
該調製方法は、スキーム1において例証されている。
【0025】
スキーム1:
【化4】
【0026】
式(II)で表される化合物を、酸の存在下で、式(III)で表される化合物と反応させて、式(I)で表される化合物を生成させる。式(II)で表される化合物は、塩の形態で、例えば、対応する塩酸塩として、使用することも可能である。
【0027】
無機酸の例は、ハロゲン化水素酸、例えば、塩化水素、臭化水素及びヨウ化水素、硫酸、リン酸及び硝酸、並びに、酸性塩、例えば、NaHSO及びKHSOである。有用な有機酸としては、例えば、炭酸及びアルカン酸(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸及びプロピオン酸)、並びに、さらに、グリコール酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、シュウ酸、アルキル硫酸モノエステル、アルキルスルホン酸(1〜20個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキルラジカルを有しているスルホン酸)、アリールスルホン酸又はアリールジスルホン酸(1又は2のスルホン酸基を有している、フェニル及びナフチルなどの芳香族ラジカル)、アルキルホスホン酸(1〜20個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキルラジカルを有しているホスホン酸)又はアリールホスホン酸などを挙げることができる。好ましいのは、HCl、HBr又は酢酸であり、最も好ましいのは、HClである。
【0028】
さらに、本発明による調製方法は、溶媒の存在下で実施することも可能である。溶媒の例は、実質的に全ての不活性有機溶媒である。そのようなものとしては、好ましくは、以下のものを挙げることができる: 脂肪族及び芳香族のハロゲン化されていてもよい炭化水素類、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、ベンジン、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン及びo−ジクロロベンゼン、エーテル類、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、グリコールジメチルエーテル、ジグリコールジメチルエーテル、メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン及びジオキサン、ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン及びメチルイソブチルケトン、エステル類、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチル、ニトリル類、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル及びブチロニトリル、アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン、並びに、さらに、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、及び、DMPU。好ましいのは、アルコール類又はアセトニトリルであり、最も好ましいのは、エタノール又はイソ−プロパノールである。
【0029】
該反応は、−20℃〜+160℃の温度で、好ましくは、−5℃〜+150℃の温度で、さらに好ましくは、20〜100℃の温度で、標準圧力下で、実施する。
【0030】
その反応時間は、重要ではなく、そして、バッチサイズ及び温度に応じて、数分〜数時間の範囲内で選択され得る。
【0031】
本発明によれば、1〜5molの上記酸を、1molの式(II)で表される化合物と反応させる。
【0032】
本発明による調製方法では、1〜2mol、好ましくは、1〜1.5mol、最も好ましくは、1〜1.2molの式(II)で表される化合物を1molの式(III)で表される化合物と反応させる。
【0033】
あるいは、Rが水素である場合、式(II)で表される化合物を、式(III)で表される化合物との反応に先立って、酸で処理して対応する塩を形成させることができる。
【0034】
式(II)で表される化合物は、スキーム2に記載されていうるようにして、調製することができる。
【0035】
スキーム2:
【化5】
【0036】
式(IV)で表されるヒドロキシイミノクロリドを、脱離反応によって反応させて、式(V)で表される化合物とし、この式(V)で表される化合物を、塩基、酸及び酸性pHの溶媒の存在下で(VI)を添加した後、その場で式(II)で表される化合物に変換させる。
【0037】
本発明による反応に関しては、pHレベルを制御することが決定的に重要である。該反応は、緩衝液系を添加することによって、又は、脱離されたHClを自発的に捕捉するために弱塩基を添加し、それにより式(VI)、式(V)又は式(II)で表される化合物のさらなる脱保護が確実に起こらなくすることによって、酸性条件下で実施する。好ましくは、該pHレベルは、pH3〜pH5であり、さらに好ましくは、該pHレベルは、pH3.5〜pH4.5である。
【0038】
該弱塩基は、例えば、炭酸水素ナトリウム若しくは炭酸水素カリウムなどの炭酸水素塩の群から、又は、リン酸(二)水素(二)ナトリウム若しくはリン酸(二)水素(二)カリウムなどのリン酸水素塩の群から、又は、酢酸ナトリウム若しくは安息香酸ナトリウムなどの有機酸のアルカリ塩の群から、選択され得る。好ましいのは、炭酸水素ナトリウムである。
【0039】
該緩衝液系は、弱酸とその弱酸の塩で構成され、そして、それは、以下のものから選択され得る:酢酸/酢酸ナトリウム若しくは酢酸/酢酸アンモニウム、又は、ギ酸/ギ酸ナトリウム、又は、リン酸二水素塩/リン酸一水素塩。好ましいのは、酢酸/酢酸ナトリウムである。
【0040】
該反応は、塩化メチレン若しくは1,2−ジクロロエタンなどのハロゲンアルカン類の群から又はベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族化合物の群から又はN,N−ジアルキルホルムアミド、N,N−ジアルキル−アセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルプロピレン尿素、テトラメチル尿素などの極性非プロトン性溶媒の群から選択される溶媒の中で、又は、アセトニトリル、プロピオニトリル若しくはブチロニトリルなどのニトリル類の中で、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール若しくはイソ−ブタノールなどのアルコールの中で、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテルの中で、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトンの中で、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのカルボン酸エステルの中で、実施することができる。好ましくは、該反応は、アセトニトリル又は酢酸エチルの中で実施することができる。該反応は、これらの溶媒の混合物の中で実施することができる。有利には、該反応は、水の存在下で実施することができる。
【0041】
該反応は、−10℃から使用する溶媒の沸点までの温度範囲内で、好ましくは、0℃〜50℃の範囲内で、さらに好ましくは、5℃〜40℃の範囲内で、実施することができる。
【0042】
式(IV)で表される化合物は、既知であり、そして、「J. Org. Chem. 45, 3916 (1980)」又はUS 5064844に記載されているようにして、調製することができる。
【0043】
式(VI)で表される化合物は、よく知られている。それらは、市販されているか、又は、「Organic Synthesis」(「OS」)などの標準的な文献に記載されている方法に従って、例えば、「OS 1928, 8, 84」、「OS 1948, 28, 31」、「OS 1953, 33, 62」、「OS 1966, 46, 89」、「OS 2006, 83, 45」に記載されている方法に従って、調製することができる。
【実施例】
【0044】
実施例
本発明を、下記実施例によって例証する。
【0045】
4−[4−(5−{2−クロロ−6−[(メチルスルホニル)オキシ]フェニル}−4,5−ジヒドロ−1,2−オキサゾール−3−イル)−1,3−チアゾール−2−イル]ピペリジニウムクロリドの調製
【化6】
【0046】
93g(0.264mol)の3−クロロ−2−[3−(クロロアセチル)−4,5−ジヒドロ−1,2−オキサゾール−5−イル]フェニルメタンスルホネートを930mLのエタノールに懸濁させた。26gの37%塩酸及び42g(0.291mol)のピペリジン−4−カルボチオアミドを添加し、その混合物を70℃まで加熱し、4時間撹拌する。中間体の透明な溶液が形成された後、生成物が沈澱する。930gの溶媒を減圧下50〜60℃で留去し、その間に、930mLのトルエンを添加する。その懸濁液を5℃まで冷却し、該生成物を濾過し、トルエンで洗浄し、減圧下45℃で乾燥させる。
【0047】
99%の純度を有する98.4gの4−[4−(5−{2−クロロ−6−[(メチルスルホニル)オキシ]フェニル}−4,5−ジヒドロ−1,2−オキサゾール−3−イル)−1,3−チアゾール−2−イル]ピペリジニウムクロリドが得られる(収率:90%)。
【0048】
3−クロロ−2−(3−{2−[1−(クロロアセチル)ピペリジン−4−イル]−1,3−チアゾール−4−イル}−4,5−ジヒドロ−1,2−オキサゾール−5−イル)フェニルメタンスルホネートの調製
【化7】
【0049】
40g(0.083mol)の4−[4−(5−{2−クロロ−6−[(メチルスルホニル)オキシ]フェニル}−4,5−ジヒドロ−1,2−オキサゾール−3−イル)−1,3−チアゾール−2−イル]ピペリジニウムクロリドを300mLのTHFに懸濁させる。55g(0.096mol)のトリブチルアミンを添加し、その混合物を45℃まで昇温させ、15分間撹拌する。16.6g(0.147mol)のクロロアセチルクロリドを20mLのTHFに溶解させた溶液を2時間かけて添加する。その間に、該混合物は暗色の溶液を形成する。30分間撹拌した後、その混合物を20℃まで冷却し、17.6gの20%塩酸を320mLの冷水に溶解させた溶液に注ぐ。次いで、その混合物に320mLの水を25℃で1時間かけて添加する。中間体の結晶種を加えることで、該生成物が結晶化する。それを濾過し、水で洗浄し、減圧下45℃で乾燥させる。
【0050】
97%の純度を有する38.3gの3−クロロ−2−(3−{2−[1−(クロロアセチル)ピペリジン−4−イル]−1,3−チアゾール−4−イル}−4,5−ジヒドロ−1,2−オキサゾール−5−イル)フェニルメタンスルホネートが得られる(収率:85%)。
【0051】
2−{3−[2−(1−{[3,5−ビス(ジフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]アセチル}ピペリジン−4−イル)−1,3−チアゾール−4−イル]−4,5−ジヒドロ−1,2−オキサゾール−5−イル}−3−クロロフェニルメタンスルホネートの調製
【化8】
【0052】
16g(0.03mol)の3−クロロ−2−(3−{2−[1−(クロロアセチル)ピペリジン−4−イル]−1,3−チアゾール−4−イル}−4,5−ジヒドロ−1,2−オキサゾール−5−イル)フェニルメタンスルホネート、5,7g(0.033mol)の3,5−ビス(ジフルオロメチル)−1H−ピラゾール、4.9g(0.046mol)の炭酸ナトリウム及び1.5g(0.005mol)テトラブチルアンモニウムブロミドを100mLのアセトニトリルに懸濁させる。その混合物を70℃まで加熱し、3.5時間撹拌する。40℃で、溶媒の大部分を減圧下で留去し、100mLのトルエンで置き換える。その混合物を20℃まで冷却し、1時間撹拌し、結晶種を加え、次いで、5℃まで冷却し、1時間撹拌する。20mLの水と6mLの20% HClの混合物を添加し、30分間撹拌する。その固体を濾過し、トルエン及び水で洗浄し、減圧下45℃で乾燥させる。
【0053】
94%の純度を有する18gの2−{3−[2−(1−{[3,5−ビス(ジフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]アセチル}ピペリジン−4−イル)−1,3−チアゾール−4−イル]−4,5−ジヒドロ−1,2−オキサゾール−5−イル}−3−クロロフェニルメタンスルホネートが得られる(収率:84%)。