【実施例】
【0011】
(車両用シートの構成)
図1は車両用シートの左前方側からの斜視図であり、
図2は車両用シートの左後方側からの斜視図である。車両用シート3の構造の理解を容易にするため、図中には、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」および「下」の方向を示し、これらの方向は、以下の説明において相対的な位置関係を表現するのにも用いられる。また、これらの方向は、車両用シート3を車両に搭載したときの車両の方向に対応し、例えば、車両用シート3の前方向と車両の前方向とは同方向を示す。以下では、左前の席(例えば、運転者が右前の席である場合の助手席)に好適な車両用シート3の構造について述べるが、車両用シート3は、他の座席にも適用可能である。なお、車両の右側に搭載される車両用シートは車両用シート3の左右を入れ替えた構成になる。
【0012】
車両用シート3は、シート本体30、操作部31〜34、シートスライド調整装置35、サイドカバー37およびシートベルト装置38を備える。シート本体30は、シートクッション301と、シートバック302と、ヘッドレスト303と、を有する。シートクッション301は座面を形成する。シートバック302は背もたれを形成する。ヘッドレスト303は、シートバック302の上方に配され、乗員の頭部を支持する枕部を形成する。また、シート本体30は、シートクッション301とシートバック302との角度調整を可能にするリクライニング装置を有する。
【0013】
操作部31、33は、スライド操作用の操作部であり、シート本体30の前後方向のスライド操作を受け付ける。乗員は、操作部31、33のいずれを用いても、シート本体30のスライド操作を行うことができる。シートスライド調整装置35は、車両に対して固定され、シート本体30の前後方向のスライド(位置調整)を可能にする。また、操作部32、34は、リクライニング操作用の操作部であり、シート本体30のリクライニング操作を受け付ける。乗員は、操作部32、34のいずれを用いても、シート本体30のリクライニング操作を行うことができる。
【0014】
シート本体30の背面側(シートバック302の後方側の面)には取付枠部36が設けられており、操作部31及び32は、非操作時の状態(乗員により操作されていない状態)では、取付枠部36に収容される。取付枠部36はシートバックフレーム320に接合されているフレーム(不図示)に取り付けられている。また、シートバック302の後方側の下部には雑誌等を収容可能なポケット304が設けられており、操作部31及び32はポケット304より上方に配置される。
【0015】
シートクッション301の後部には、シートベルト装置38のリトラクタ(不図示)が固定設置されている。リトラクタから引き出されたウェビング381は、シートバック302の上端部に設置されたベルトガイド382に挿通され、その先端部のタングプレート383が左側のシートクッションサイドフレーム311にアンカー部を介して連結されたバックル384に着脱可能とされている。ベルトガイド382から引き出されたウェビング381の中途部にはタングプレート385が挿通されている。タングプレート385は、右側のシートクッションサイドフレーム312にアンカー部を介して連結されたバックル386に対して脱着可能とされている。
【0016】
(シートフレーム)
図3は
図1の車両用シートのシートフレームの左前方側からの斜視図である。
【0017】
シートフレーム300は、シートクッションフレーム310、リクライニング装置314でシートクッションフレーム310に前倒しおよび角度調整可能にヒンジ結合されるシートバックフレーム320、左右のシートスライド調整装置35および左右のライザ355、356で組み立てられる。シートクッション301がシートクッションフレーム310、シートクッションパッド(不図示)、および表皮319(
図1参照)で組み立てられ、また、シートバック302がシートバックフレーム320、シートバックパッド(不図示)、および表皮329(
図1参照)で組み立てられる。
【0018】
シートスライド調整装置35は、車両のフロアに据え付けられる左のガイドレール351、右のガイドレール352、左のガイドレール351および右のガイドレール352のそれぞれに摺動可能にはめ込まれて支持される左のスライドレール353、右のスライドレール354、ロック機構、および操作機構などで通常に組み立てられる。また、左のライザ355、右のライザ356は、シートスライド調整装置35の左のスライドレール353、右のスライドレール354上に固定的に立ち上げられ、シートクッションフレーム310を載せ、そして、シートクッションフレーム310を固定的に取り付けてそのシートクッション301を支持する。
【0019】
シートクッションフレーム310は、シートクッション301の骨格となる略矩形状の枠体からなり、
図3に示すように、左右側方にそれぞれ配置された左のシートクッションサイドフレーム311および右のシートクッションサイドフレーム312と、左のシートクッションサイドフレーム311および右のシートクッションサイドフレーム312の前方側の上面に架設された板状フレーム313と、左のシートクッションサイドフレーム311および右のシートクッションサイドフレーム312のそれぞれの後方側の内側面を連結するクッションフレーム連結パイプ315と、を備えている。
【0020】
左のシートクッションサイドフレーム311および右のシートクッションサイドフレーム312は、それぞれ前後方向に延在する板金部材からなり、左側のシートクッションサイドフレーム311と、右側のシートクッションサイドフレーム312とは、互いに略平行な状態で左右方向に離間している。
【0021】
左のシートクッションサイドフレーム311とシートバックフレーム320を連結した部分には、
図3に示すように、シートクッション301に対してシートバック302を回動可能に連結するリクライニング装置314が設けられている。リクライニング装置314は、例えば、シートバックフレーム320を起立状態に付勢する渦巻きバネ(不図示)と、渦巻きバネの延出端部を係止するバネ係止部材(不図示)と、を備えている。リクライニング装置314は、シート本体30が折り畳まれた状態にすること(リクライニングの角度を実質的に0度にしてシートクッション301とシートバック302とが接触した状態にすること)が可能に構成される。リクライニング装置314には、リクライニング装置314を覆うリクライニングカバー340が取り付けられている。なお、左のシートクッションサイドフレーム311およびリクライニング装置314はサイドカバー37で覆われている。
【0022】
シートバックフレーム320は、バックフレーム本体321と、左のサイドフレーム322と、ブラケット323と、右のサイドフレーム324と、から構成されている。
【0023】
バックフレーム本体321は、シートバックフレーム320の骨格を成すフレーム部材であり、円筒状に形成されている丸パイプを2箇所折り曲げることで略コ字状に形成されている。この丸パイプは、その両端が左のサイドフレーム322の上部および下部に位置するように折り曲げられ、左のサイドフレーム322と接合されている。
【0024】
右のサイドフレーム324は、バックフレーム本体321の右側をシートクッションフレーム310の右側に組み付けるためのブラケットである。そのため、この右のサイドフレーム324の内面には、バックフレーム本体321の右側部のフレームの外側が溶接によって接合されている。そして、この右のサイドフレーム324の外面は、シートクッションフレーム310の右のシートクッションサイドフレーム312の内面に枢着されている。
【0025】
左のサイドフレーム322は、板金部材を折り曲げた略ロ字形状からなり、上下方向に延在している。左のサイドフレーム322は、上側から下側に連続して前方および後方に徐々に張り出すような形で形成されている。
【0026】
ブラケット323は、板金部材を内側に折り曲げた略コ字形状からなり、上下方向に延在しており、ブラケット323が、左のサイドフレーム322を外側方向から挟み込む形で溶接固定されている。
【0027】
バックフレーム本体321の左側には、上述したように、丸パイプの両端が位置している。この丸パイプの両端のうち、バックフレーム本体321の下方部のフレーム321aの一端は、その軸方向が左のサイドフレーム322の面に対して直交するように、左のサイドフレーム322内面側の貫通孔に嵌通させて接合されている。バックフレーム本体321の下方部のフレーム321aは、リクライニング装置314に接続された左のサイドフレーム322と右のサイドフレーム324とを連結する連結シャフトの機能を有する。
【0028】
丸パイプの両端のうち、バックフレーム本体321の上方部のフレーム321bの他端は、その軸方向が左のサイドフレーム322の面に対して直交するように、左のサイドフレーム322の後面に溶接によって接合されている。
【0029】
そして、ブラケット323の外面は、左のシートクッションサイドフレーム311の内面に枢着されている。このとき、これら両面の間には、リクライニング装置314が組み付けられている。これにより、シートクッションフレーム310に対してシートバックフレーム320を所望する傾き位置でロックできるため、リクライニング機能を備えた車両用シート3にすることができる。
【0030】
リクライニング装置314は、その回転中心がバックフレーム本体321の下方部分のフレーム321aの丸パイプの軸心に対して一致するように組み付けられている。
【0031】
バックフレーム本体321の上方部分のフレーム321bに、ヘッドレスト303の不図示のピラーを挿設するための一対のピラーガイド328およびシートベルトを挿通させるベルトガイド382が取り付けられている。
【0032】
(リクライニングカバー)
リクライニングカバー(インナカバー)について
図4〜8を用いて説明する。
図4は
図1の車両用シートのリクライニングカバー付近の右前方側からの斜視図である。
図5は
図1の車両用シートのリクライニングカバー付近の右後方側からの斜視図である。
図6は
図1の車両用シートのリクライニングカバー付近の断面図である。
図7は
図4のリクライニングカバーの右側面図である。
図8は
図7のA1−A2線における断面図である。
【0033】
リクライニングカバー340は、
図4、5に示すように、リクライニング装置314の内側部分を覆う部材であって、合成樹脂から形成されている。
【0034】
リクライニングカバー340は、
図4、5に示すように、略矩形板状の前方壁部(第一壁部)341と、前方壁部341と対向する略矩形板状の後方壁部(第二壁部)342と、前方壁部341の下端部と後方壁部342の下端部とを連結する略半円板状の底壁部(第三壁部)343と、前方壁部341の右側端部と後方壁部342の右側端部とを連結する板状の側壁部(第四壁部)344と、前方壁部341の左端部と後方壁部342の左端部と底壁部343の左端部を連結する円盤状の鍔部345と、を備えて一体的に形成されている。円盤状の鍔部345の厚さは、前方壁部341、後方壁部342、底壁部343および側壁部344のそれぞれの厚さと同程度ある。よって、前方壁部341、後方壁部342および左のサイドフレーム322の幅に比べて非常に薄い。
【0035】
リクライニング装置314の近傍のサイドカバー37は、略矩形板状の後方壁部371と、後方壁部371の上端部から延出する略半円板状の上壁部372と、上壁部372の端部から前後方向に延出する板状の上壁部373と、後方壁部371の左側端部と上壁部372の左側端部とを連結する板状の側壁部374と、を主に備えて一体的に樹脂で形成されている。上壁部372の上壁部373側の端部付近には、内側に延出する襞部375を備え、前方側の鍔部345とサイドカバー37との間の隙間を埋める。
【0036】
鍔部345は、リクライニング装置314の回転中心を中心とする薄型の円盤であり、前方壁部341の左端部より前方に、後方壁部342の左端部より後方に、底壁部343の左端部より下方に広がっており、サイドカバー37の外周と合わせられている。これにより、シートバック302の傾斜角度に関係なく、サイドカバー37と鍔部345の位置関係を同じにすることができ、サイドカバー37とリクライニングカバー340の隙間を低減することができる。なお、サイドカバー37はライザ355およびシートスライド調整装置35の一部も覆っている。
【0037】
なお、側壁部344には、連結シャフトであるバックフレーム本体321の下方部分のフレーム321aを通すシャフト孔346、そのシャフト孔346から上方外周に先広がりに伸びて開口される切欠き状組付け開口347およびシャフト孔346から放射状に伸びる切欠き開口348が形成されており、開口347はリクライニング装置314の構成品を取り付け、または取り外しする際に利用される。また、側壁部344の左側面には、外側に延出する2つの爪34Aが一体的に形成されており、左のサイドフレーム322の孔に引っ掛けて取り付ける際に利用される。
【0038】
リクライニングカバー340は、その切欠き状組付け開口347によってその下方部のフレーム321aを交わしながらその下方部のフレーム321aにシャフト孔346をはめ合わせ、そして、左のサイドフレーム322の孔に爪34Aを引っ掛けて左のサイドフレーム322に組み付けられ、そして、その車両用シート3の内側に露出されるリクライニング装置314を覆う。
【0039】
リクライニングカバー340は、リクライニング装置314の内側部分に対して、内側から外側方向に向かって装着される部材であって、リクライニング装置314の背面を覆う後方壁部342は、
図5に示すように、側壁部344側からシート左右方向に対して後方側に傾斜して延びており、リクライニング装置314の前面を覆う前方壁部341は、側壁部344側からシート左右方向に対して前方側に傾斜して延びて構成されている。
【0040】
このように構成されるため、リクライニングカバー340は、前後方向において左のサイドフレーム322と、左のサイドフレーム322を挟み込む形で固定されるブラケット323を避けてリクライニング装置314に取り付けることができる。
【0041】
リクライニングカバー340と左のサイドフレームとの間に3mm程度の隙間も設け、シートバック302のウレタンであるシートバックパッドとの干渉領域を設定する。ウレタンの弾性でリクライニングカバー340を押しだし隙間を埋める。リクライニングカバー340側が押し出され何かに接触すればとまるため、ばらつき内で調整がされる設定としている。
【0042】
リクライニングカバー340の鍔部345の作用効果について
図9〜13を用いて説明する。
図9〜13は
図4のリクライニングカバーの効果を説明するための図であり、
図9〜11は
図1の車両用シートの左側からの側面図であり、
図12は
図1の車両用シートのリクライニングカバー付近の右前方側からの斜視図であり、
図13は
図1の車両用シートのリクライニングカバー付近の右後方側からの斜視図である。
【0043】
図9に示すように、シートバック302のリクライニング回転中心の前後の長さ(LF、LB)は下の長さ(LD)よりも大きい。
図10の矢印に示すように、シートバック302が前方にリクライニング回転すると、長さが小の部位が回転して来て破線Aで囲まれる付近にサイドカバー37とシートバック302との間に隙間が発生する。特に、シート本体30が折り畳まれた状態では、その隙間を後方から視認しやすく、また、アクセスしやすい。リクライニングカバー340に円盤状の鍔部345を設けることにより、シートバック302がリクライニング回転しても、鍔部345の外周は、
図11に示すように、破線Bの位置に位置するので、鍔部345とサイドカバー37の位置関係に変化がない。これにより、サイドカバー37とシートバック302との隙間を埋めることができる。
【0044】
シートクッション側のサイドカバー37の樹脂とシートバック側のリクライニングカバー340の円盤状の鍔部345の幅方向を合わせているので、異物等が入りづらい。円盤状の鍔部345の厚さが薄いので、
図12、13に示すように、シートクッション301のウレタンであるシートクッションパッドのカット量を少なくすることができ、シートクッション301の形状がクランクせず外観を良くすることができる。
【0045】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。