(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、優れた特性を有する静電容量コンデンサ用のポリカーボネート基板フィルムが、溶媒を使用しないプロセスで押出により製造できることを見出した。驚くべきまた重要な特徴として、該押出フィルムは、絶縁破壊強度が少なくとも300V/μmの、大きなシワなし領域を有し得ることである。該シワなし領域は十分に平滑であるため、該基板フィルムを金属化して、該領域全体で実質的に均一の絶縁破壊強度を有する金属化フィルムが得られる。
【0011】
特に、該シワなし領域の厚みは0超〜7μm未満であり、厚み変動はフィルムの平均厚の±10%であり、フィルムの表面粗さはフィルムの平均厚の3%未満である。該フィルムによって、柔軟性、薄層性および誘電率安定性などの他の長所となる物理的・電気的特性を維持しながら、従来のフィルムと比較して、コンデンサ誘電率および絶縁破壊強度が共に向上する。特に、該フィルムは、高電圧絶縁破壊強度(少なくとも300V/μm)と、高誘電率(2.7超)と、低散逸率(1%未満)と、を有し得る。従って、該フィルムとこれから製造されたコンデンサは、現在の材料と、エレクトロニクス産業用の部品の製造方法に対して有利である。特に有利な点は、該フィルムは、溶媒を使用しないプロセスで、工業規模で信頼性高く製造できる点である。溶媒キャストフィルムからの溶媒除去は困難であり得る。ここでの押出フィルムは溶媒を使用せずに処理されるため、コスト面でも製造面でも有利である。別の実施形態では、該押出フィルムの厚みは0超〜13μm以下である。
【0012】
本特許出願においては種々の数値範囲が開示される。これらの範囲は連続的であり、最小値と最大値間のすべての数値を含む。別途明示がある場合を除き、本出願の種々の数値範囲は近似である。同じ成分あるいは特性に係る範囲はすべて終点を含むものであり、該終点は互いに独立に組み合わせ可能である。
【0013】
別途明示がある場合を除き、本出願中の分子量はすべて質量平均分子量を指す。こうした分子量はすべてダルトン単位で表される。
【0014】
単数表現は量の限定を示すものではなく、参照されたアイテムが少なくとも1つ存在することを示すものである。本明細書での「その組み合わせ」とは、参照された要素の1つまたは複数と、選択的には参照されていない類似の要素と、を含むものである。明細書全体に亘って、「ある実施形態」、「別の実施形態」、「ある実施形態」、「一部の実施形態」などは、該実施形態に関連して記載された特別の要素(例えば、特徴、構造、特質およびまたは特性)が記載された少なくとも1つの実施形態に含まれており、他の実施形態には含まれていても含まれていなくてもよいことを意味する。また、記載された要素(類)は、種々の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせられ得るものと理解されるべきである。
【0015】
化合物は標準命名法を用いて記載される。例えば、表記のいかなる基によっても置換されていない位置は、その価電子帯が表示された結合または水素原子によって満たされているものと理解されるべきである。2つの文字または記号間以外のダッシュ(「−」)は、置換基の結合点を示す。例えば、−CHOは、カルボニル基の炭素を経由して結合される。「アルキル」は、特定の数の炭素原子を有するC
1−30分枝鎖および直鎖の不飽和脂肪族炭化水素基を含む。アルキルの例としては、これに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、n−およびs−ヘキシル、n−およびs−ヘプチルおよびn−およびs−オクチルが挙げられる。「アリール」は、フェニル、トロポン、インダニルまたはナフチルなどの、特定の数の炭素原子を含む芳香族部分を指す。
【0016】
別途明示される場合を除き、すべてのASTM試験は、ASTM標準2003年版に基づくものである。
【0017】
該ポリカーボネートは、以下にさらに記載するポリカーボネートホモポリマーまたはポリカーボネートコポリマーであり得る。ポリカーボネートは、式(1)の繰り返し構造カーボネート単位を有するポリマーである:
【0018】
【化1】
式中、R
1基の総数の少なくとも60%は芳香族部分を含み、残りは脂肪族、脂環式または芳香族である。ある実施形態では、R
1はそれぞれC
6−30芳香族基であり、すなわち、少なくとも1つの芳香族部分を含む。R
1は、式:HO−R
1−OHの、特に式(2)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される:
【0019】
【化2】
式中、A
1およびA
2はそれぞれ単環式の二価の芳香族基であり、Y
1は単結合または、A
1とA
2とを分離する1つまたは複数の原子を有する架橋基である。典型的な実施形態では、1原子がA
1とA
2を分離する。また、式(3)のビスフェノール化合物も含まれている:
【0020】
【化3】
式中、R
aとR
bはそれぞれ独立に、ハロゲン原子または一価の炭化水素基であり、同じであっても異なっていてもよく;pとqはそれぞれ独立に0〜4の整数であり;X
aは、2つのヒドロキシ置換芳香族基を結合する架橋基であり、各C
6アリーレン基の架橋基とヒドロキシ置換基は、C
6アリーレン基上で互いにオルト、メタまたはパラ(特定的にはパラ)に配置されている。ある実施形態では、架橋基X
aは、単結合、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)
2−、−C(O)−、あるいはC
1−18有機基である。該C
1−18有機架橋基は、環式または非環式であり、芳香族または非芳香族であり、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、シリコンまたはリンなどのヘテロ原子をさらに含み得る。該C
1−18有機基は、これに結合するC
6アリーレン基が互いに共通のアルキリデン炭素かまたはC
1−18有機架橋基の異なる炭素に結合されるように配置され得る。特に、X
aは、C
1−18アルキレン基、C
3−18シクロアルキレン基、縮合C
6−18シクロアルキレン基、あるいは式−B
1−W−B
2−基(式中、B
1とB
2は、同じであっても異なっていてもよいC
1−6アルキレン基、Wは、C
3−12シクロアルキリデン基またはC
6−16アリーレン基)である。
【0021】
典型的なC
1−18有機架橋基としては、メチレン、シクロヘキシルメチレン、エチリデン、ネオペンチリデン、イソプロピリデン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデンおよび、シクロヘキシリデン、シクロペンチリデン、シクロドデシリデンおよびアダマンチリデンなどのシクロアルキリデンが挙げられる。X
aが置換シクロアルキリデンである式(3)のビスフェノールの特定的な例としては、式(4)のシクロヘキシリデン−架橋アルキル置換ビスフェノールが挙げられる:
【0022】
【化4】
式中、R
a’とR
b’はそれぞれ独立にC
1−12アルキルであり、R
gはC
1−12アルキルまたはハロゲンであり、rおよびsはそれぞれ独立に1〜4であり、tは0〜10である。特定の実施形態では、R
a’とR
b’それぞれの少なくとも1つは、シクロヘキシリデン架橋基に対してメタ位置に配置される。置換基R
a’、R
b’およびR
gは、適切な数の炭素原子を含む場合、直鎖、環式、二環式または分枝鎖であり得、飽和または不飽和であり得る。ある実施形態では、R
a’とR
b’はそれぞれ独立にC
1−4アルキルであり、R
gはC
1−4アルキルであり、rとsはそれぞれ1であり、tは0〜5である。別の特定の実施形態では、R
a’、R
b’およびR
gはそれぞれメチルであり、rとsはそれぞれ1であり、tは0または3である。別の典型的な実施形態では、シクロヘキシリデン−架橋ビスフェノールは、クレゾール2モルと、水素化イソホロン(例えば1,1,3−トリメチル−3−シクロヘキサン−5−オン)1モルと、の反応生成物である。
【0023】
また、式(3)のビスフェノールのX
aは、式(5)の置換C
3−18シクロアルキリデンでもあり得る:
【0024】
【化5】
ここで、共に取り込まれたR
r、R
p、R
qおよびR
tの少なくとも2つが縮合脂環式環、芳香環あるいはヘテロ芳香環であることを条件として、R
r、R
p、R
qおよびR
tは独立に、水素、ハロゲン、酸素またはC
1−12有機基であり;Iは、直接結合、炭素、二価の酸素、硫黄あるいは、Zが水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1−12アルキル、C
1−12アルコキシまたはC
1−12アシルである−N(Z)−であり;hは0〜2であり、jは1または2であり、iは0または1の整数であり、kは0〜3の整数である。該縮合環が芳香族である場合、式(5)の環は、環が縮合された炭素−炭素不飽和結合を有するであろうことは理解されるであろう。kが1、iが0の場合、式(5)の環は炭素原子を4個含み、kが2の場合、式(5)の環は炭素原子を5個含み、kが3の場合、この環は炭素原子を6個含む。ある実施形態では、2つの隣接する基(例えば、共に取り込まれたR
qとR
t)が芳香族基を形成し、別の実施形態では、共に取り込まれたR
qとR
tが1つの芳香族基を形成し、共に取り込まれたR
rとR
pが別の芳香族基を形成する。共に取り込まれたR
qとR
tが芳香族基を形成する場合、R
pは二重結合酸素原子、すなわちケトンであり得る。
【0025】
式(3)のビスフェノール化合物の別の特定の実施形態では、C
1−18有機架橋基は、−C(R
c)(R
d)−基または−C(=R
e)−基(式中、R
cおよびR
dはそれぞれ独立に、水素原子あるいは一価のC
1−6直鎖または環式炭化水素基、R
eは二価の炭化水素基、pおよびqはそれぞれ0または1、R
aおよびR
bはそれぞれ、各アリーレン基の水酸基に対してメタ位置に配置されたC
1−3アルキル基、具体的にはメチル)を含む。
【0026】
式:HO−R
1−OHの他の有用な芳香族ジヒドロキシ化合物としては、式(6)の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる:
【0027】
【化6】
式中、R
hはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、C
1−10アルキル基などのC
1−10ヒドロカルビル基、ハロゲン置換C
1−10アルキル基、C
6−10アリール基またはハロゲン置換C
6−10アリール基であり、nは0〜4である。通常、該ハロゲンは臭素である。
【0028】
特定の芳香族ジヒドロキシ化合物の一部の例としては、4,4’−ジヒドロキシビフェニール、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジブロモ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(5−フェノキシ−4−ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フッ素、2,7−ジヒドロキシピレン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ダイオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチン、2,7−ジヒドロキシ−9,10−ジメチルフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェンおよび2,7−ジヒドロキシカルバゾール、レゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、5−プロピルレゾルシノール、5−ブチルレゾルシノール、5−t−ブチルレゾルシノール、5−フェニルレゾルシノール、5−クミルレゾルシノール、2,4,5,6−テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6−テトラブロモレゾルシノールなどの置換レゾルシノール化合物;カテコール;ヒドロキノン;2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−プロピルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6−テトラブロモヒドロキノンなどの置換ヒドロキノン、あるいは、これらのジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
【0029】
式(3)のビスフェノール化合物の具体的な例としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、 2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP)および1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)が挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物を少なくとも1つ含む組み合わせも使用できる。特定の一実施形態では、該ポリカーボネートは、A
1およびA
2がそれぞれp−フェニレンであり、Y
1が式(13)のイソプロピリデンであるビスフェノールAから誘導された直鎖ホモポリマーである。
【0030】
本明細書における「ポリカーボネート」には、ホモポリカーボネート(ポリマー中のR
1はそれぞれ同じである)、カーボネート単位中に異なるR
1部分を含むコポリマー(本明細書では「コポリカーボネート」と呼ぶ)、カーボネート単位と他のタイプのポリマー単位(エステル単位、ジオルガノシロキサン単位、ウレタン単位、アリーレンエーテル単位、アリーレンスルホン単位、アリーレンケトン単位およびこれらの組み合わせなど)とを含むコポリマーおよび、少なくとも1つのホモポリカーボネートおよびまたは少なくとも1つのコポリカーボネートおよびまたは少なくとも1つのポリカーボネートコポリマーとを含む組み合わせが含まれる。本明細書での「組み合わせ」には、配合物、混合物、合金、反応生成物などが含まれる。
【0031】
特定のポリカーボネートコポリマーはポリ(カーボネート−エステル)である。こうしたコポリマーは、式(1)の繰り返しカーボネート単位に加えて、式(7)の繰り返しエステル単位をさらに含む:
【0032】
【化7】
式中、Jは、ジヒドロキシ化合物から誘導された二価の基であり、例えば、C
2−10アルキレン基、C
6−20脂環式基、C
6−20芳香族基あるいは、アルキレン基が2〜6個の炭素原子、具体的には2個、3個または4個の炭素原子を含むポリオキシアルキレン基であり得;Tは、ジカルボン酸から誘導された二価の基であり、例えば、C
2−10アルキレン基、C
6−20脂環式基、C
6−20アルキル芳香族基またはC
6−20芳香族基であり得る。異なるT基およびまたはJ基の組み合わせを含むポリ(カーボネート−エステル)も使用できる。該ポリ(カーボネート−エステル)は分枝鎖であっても直鎖であってもよい。
【0033】
ある実施形態では、Jは、直鎖、分枝鎖または環式(多環式を含む)構造を有するC
2−30アルキレン基である。別の実施形態では、Jは、式(3)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される。別の実施形態では、Jは、式(4)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される。別の実施形態では、Jは、式(6)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される。
【0034】
該ポリエステル単位の調製に用いられる典型的な芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸またはテレフタル酸、1,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ビス安息香酸あるいは、これらの酸を少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。縮合環を含む酸を、1,4−、1,5−または2,6−ナフタレンジカルボン酸などに存在させてもよい。特定のジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸あるいはこれらの酸を少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。特定のジカルボン酸は、イソフタル酸とテレフタル酸との質量比が91:9〜2:98の範囲の、両者の組み合わせを含む。別の特定の実施形態では、JはC
2−6アルキレン基であり、Tは、p−フェニレン、m−フェニレン、ナフタレン、二価の脂環式基あるいはこれらの組み合わせである。
【0035】
該コポリマーのカーボネート単位とエステル単位とのモル比は、最終組成物の所望の特性に応じて大きく変わり得るが、例えば1:99〜99:1であり、具体的には10:90〜90:10であり、より具体的には25:75〜75:25である。
【0036】
式(8)のポリ(カーボネート−エステル)の特定の実施形態は、繰り返し芳香族カーボネート単位と繰り返し芳香族エステル単位とを含む:
【0037】
【化8】
式中、Arは、ジカルボン酸またはジカルボン酸類の組み合わせの二価の芳香族残基であり、Ar’は、式(3)のビスフェノールまたは式(6)のジヒドロキシ化合物の二価の芳香族残基である。このように、Arはアリール基であり、好適には式(9a)のイソフタル酸、式(9b)のテレフタル酸またはこれらの組み合わせの残基である。
【0039】
【化10】
Ar’は、例えばビフェノールまたはビスフェノールAの残基などの多環式であっても、あるいは、例えばヒドロキノンまたはレゾルシノールの残基などの単環式であってもよい。
【0040】
さらに、式(8)のポリ(カーボネート−エステル)において、xとyはそれぞれ、コポリマーの合計100質量部に対する芳香族エステル単位の質量部および芳香族カーボネート単位の質量部を表す。具体的には、芳香族エステル含量であるxは、単位x+yの合計質量に対して、20〜100質量%未満であり、より具体的には30〜95質量%であり、さらにより具体的には50〜95質量%であり;カーボネート含量であるyは、同合計質量に対して、0超〜80質量%であり、より具体的には5〜70質量%であり、さらにより具体的には5〜50質量%である。一般に、ポリエステル類の調製に従来から使用されてきた芳香族ジカルボン酸はいずれも、式(8)のポリ(カーボネート−エステル)の調製に利用され得るが、テレフタル酸だけを利用してもよく、あるいは、テレフタル酸とイソフタル酸との質量比が5:95〜95:5の範囲である、これらの混合物を利用してもよい。カーボネート単位を35〜45質量%と、イソフタレートとテレフタレートとのモル比が45:55〜55:45であるエステル単位を55〜65質量%と、を含む式(8)のポリ(カーボネート−エステル)は、ポリ(カーボネート−エステル)(PCE)と呼ばれることが多く、カーボネート単位を15〜25質量%と、イソフタレートとテレフタレートとのモル比が98:2〜88:12のエステル単位を75〜85質量%と、を含むコポリマーは、ポリ(フタレート−カーボネート)(PPC)と呼ばれることが多い。これらの実施形態では、式(8)のPCEまたはPPCは、ビスフェノールAおよびホスゲンとイソおよびテトラフタロイルクロリドとの反応から誘導でき、その固有粘度は、(温度が25℃の塩化メチレン中で測定して)0.5〜0.65dL/gmであり得る。
【0041】
別の特定の実施形態では、ポリ(カーボネート−エステル)は、式(3)のビスフェノール化合物から誘導された式(1)のカーボネート単位と、芳香族ジカルボン酸と式(6)のジヒドロキシ化合物とから誘導されたエステル単位と、を含む。具体的には、該エステル単位は、式(9)のアリーレートエステル単位である:
【0042】
【化11】
式中、R
4はそれぞれ独立に、ハロゲンまたはC
1−4アルキルであり、pは0〜3である。式(9)のアリーレートエステル単位は、テレフタル酸とイソフタル酸あるいはそれらの化学的等価物の混合物と、5−メチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、5−プロピルレゾルシノール、5−ブチルレゾルシノール、5−t−ブチルレゾルシノール、2,4,5−トリフルオロレゾルシノール、2,4,6−トリフルオロレゾルシノール、4,5,6−トリフルオロレゾルシノール、2,4,5−トリブロモレゾルシノール、2,4,6−トリブロモレゾルシノール、4,5,6−トリブロモレゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−プロピルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、2,3,5−トリ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5−トリフルオロヒドロキノン、2,3,5−トリブロモヒドロキノンあるいはこれらの化合物を少なくとも1つ含む組み合わせなどの化合物と、の反応から誘導できる。式(8)のアリーレートエステル単位は、ポリ(イソフタレート−テレフタレート−レゾルシノール)エステル単位(別名「ITR」エステル)であり得る。
【0043】
式(9)のアリーレートエステル単位を含むポリ(カーボネート−エステル)は、コポリマーの合計質量に対して、式(3)のビスフェノール化合物から誘導された式(1)のカーボネート単位を1〜100質量%未満、10〜100質量%未満、20〜100質量%未満あるいは40〜100質量%未満と、芳香族ジカルボン酸と式(6)のジヒドロキシ化合物とから誘導されたエステル単位を0超〜99質量%、0超〜90質量%、0超〜80質量%あるいは0超〜60質量%と、を含み得る。式(9)のアリーレートエステル単位を含む特定のポリ(カーボネート−エステル)は、ポリ(ビスフェノールAカーボネート)−co−ポリ(イソフタレート−テレフタレート−レゾルシノール)エステルである。
【0044】
別の特定の実施形態では、該ポリ(カーボネート−エステル)は、式(3)のビスフェノールと式(6)の芳香族ジヒドロキシ化合物との組み合わせから誘導された式(1)のカーボネート単位と、式(9)のアリーレートエステル単位と、を含む。式(3)のビスフェノールから誘導されたカーボネート単位と、式(6)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導されたカーボネート単位と、のモル比は1:99〜99:1であり得る。このタイプの特定のポリ(カーボネート−エステル)は、ポリ(ビスフェノールAカーボネート)−co−(レゾルシノールカーボネート)−co−(イソフタレート−テレフタレート−レゾルシノールエステル)である。
【0045】
該ポリカーボネートはさらに、シロキサン単位を、例えばポリ(カーボネート−シロキサン)またはポリ(カーボネート−エステル−シロキサン)を含み得る。該シロキサン単位は、式(10)の繰り返しシロキサン単位を含むポリシロキサンブロックのコポリマー中に存在する:
【0046】
【化12】
式中、Rはそれぞれ独立に、同じであっても異なっていてもよい一価のC
1−13有機基である。例えば、Rは、C
1−C
13アルキル、C
1−C
13アルコキシ、C
2−C
13アルケニル基、C
2−C
13アルケニルオキシ、C
3−C
6シクロアルキル、C
3−C
6シクロアルコキシ、C
6−C
14アリール、C
6−C
10アリールオキシ、C
7−C
13アリールアルキル、C
7−C
13アラルコキシ、C
7−C
13アルキルアリールあるいはC
7−C
13アルキルアリールオキシであり得る。これらの基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはこれらの組み合わせで、完全にあるいは部分的にハロゲン化され得る。透明なポリシロキサン−ポリカーボネートが望ましいある実施形態では、Rはハロゲンで置換されていない。これらのR基の組み合わせも同じコポリマーで使用できる。
【0047】
式(10)のEの値は、考察するように、組成物中の各成分のタイプと相対量、および該組成物の所望の特性に応じて変わり得る。一般に、Eの平均値は5〜50であり、具体的には5〜約40であり、より具体的には10〜30である。第1のコポリマーのEの平均値が第2(およびそれ以上)のコポリマーのそれより小さい場合には、これらのコポリマーの組み合わせが使用できる。
【0048】
ある実施形態では、該ポリシロキサンブロックは、式(11)または式(12)のものである:
【0050】
【化14】
式中、Eは、式(10)のシロキサンで定義したものであり、Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、式(1)のシロキサンで定義したものである。式(11)および式(12)のブロックのArはそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、芳香族部分に直接に結合した置換または未置換C
6−C
30アリーレン基である。式(11)のAr基は、式(3)のビスフェノールから誘導でき、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニルスルフィド)および1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパンから誘導できる。これらの化合物を少なくとも1つ含む組み合わせも使用できる。式(12)のR
5はそれぞれ独立に、二価のC
1−C
30有機基であり、例えば二価のC
2−C
8脂肪族基である。
【0051】
特定の実施形態では、該ポリシロキサンブロックは式(13)のものである:
【0052】
【化15】
式中、RとEは、式(10)で定義したものであり;R
6は二価のC
2−C
8脂肪族基であり;Mはそれぞれ独立に、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C
1−C
8アルキルチオ、C
1−C
8アルキル、C
1−C
8アルコキシ、C
2−C
8アルケニル、C
2−C
8アルケニルオキシ基、C
3−C
8シクロアルキル、C
3−C
8シクロアルコキシ、C
6−C
10アリール、C
6−C
10アリールオキシ、C
7−C
12アラルキル、C
7−C
12アラルコキシ、C
7−C
12アルキルアリールまたはC
7−C
12アルキルアリールオキシであり、nはそれぞれ独立に0、1、2、3または4である。ある実施形態では、Mは、臭素または塩素、メチル、エチルまたはプロピルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシまたはプロポキシなどのアルコキシ基、あるいは、フェニル、クロロフェニルまたはトリルなどのアリール基であり;R
2は、ジメチレン基、トリメチレン基またはテトラメチレン基であり;Rは、C
1−8アルキル、トリフルオロプロピルなどのハロアルキル、シアノアルキルあるいは、フェニル、クロロフェニルまたはトリルなどのC
6−8アリールである。別の実施形態では、Rは、メチル、メチルとトリフルオロプロピルの組み合わせ、またはメチルとフェニルの組み合わせである。さらに別の実施形態では、Mはメトキシであり、nは1であり、R
2は二価のC
1−C
3脂肪族基であり、Rはメチルである。
【0053】
ある実施形態では、該ポリカーボネートは、式(3)のビスフェノールから、具体的にはビスフェノールAから誘導された式(1)のカーボネート単位と、Mがメトキシ、nが1、R
2が二価のC
1−C
3脂肪族基、Rがメチルである式(13)のシロキサン単位と、を含むポリ(カーボネート−シロキサン)である。該ポリ(ポリカーボネート−シロキサン)は、50〜99質量%のカーボネート単位と1〜50質量%のシロキサン単位とを含み得る。この範囲内で、該ポリ(カーボネート−シロキサン)は、70〜98質量%の、より具体的には75〜97質量%のカーボネート単位と、2〜30質量%の、より具体的には3〜25質量%のシロキサン単位と、を含む。
【0054】
別の実施形態では、該ポリカーボネートは、式(3)のビスフェノールから、具体的にはビスフェノールAから誘導された式(1)のカーボネート単位と、Mがメトキシ、nが1、R
2が二価のC
1−C
3脂肪族基、Rがメチルである式(13)のシロキサン単位と、式(9)のエステル単位、具体的には(イソフタレート−テレフタレート−レゾルシノール)エステル単位と、を含むポリ(カーボネート−エステル−シロキサン)である。
【0055】
ポリカーボネートは、界面重合や溶融重合などのプロセスで製造できる。界面重合の反応条件は変わり得るが、典型的なプロセスは一般に、二価フェノール反応物を苛性ソーダ水溶液または苛性カリ水溶液に溶解または分散させるステップと、得られた混合物を水非混和性溶媒媒体に添加するステップと、例えばpH8〜12などにpHを制御した条件下で、トリエチルアミンなどの触媒およびまたは相間移動触媒の存在下、前記反応混合物をカーボネート前駆体に接触させるステップと、を備える。最も一般的に使用される水非混和性溶媒としては、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
【0056】
典型的なカーボネート前駆体としては、臭化カルボニルまたは塩化カルボニルなどのハロゲン化カルボニル、二価フェノールのビスハロギ酸(例えば、ビスフェノールA、ヒドロキノンなどのビスクロロギ酸)などのハロギ酸、またはグリコール(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどのビスハロギ酸)などが挙げられる。これらのタイプのカーボネート前駆体を少なくとも1つ含む組み合わせも使用できる。典型的な実施形態では、カーボネート結合を形成する界面重合反応では、カーボネート前駆体としてホスゲンが用いられ、ホスゲン化反応と呼ばれる。
【0057】
使用可能な相間移動触媒の中には、R
3のそれぞれが、同じであっても異なっていてもよく、C
1−10アルキル基であり;Qが窒素原子またはリン原子であり;Xがハロゲン原子、C
1−8アルコキシ基またはC
6−18アリールオキシ基である式(R
3)
4Q
+Xの触媒が含まれる。典型的な相間移動触媒としては、例えば、[CH
3(CH
2)
3]
4NX、[CH
3(CH
2)
3]
4PX、[CH
3(CH
2)
5]
4NX、[CH
3(CH
2)
6]
4NX、[CH
3(CH
2)
4]
4NX、CH
3[CH
3(CH
2)
3]
3NXおよびCH
3[CH
3(CH
2)
2]
3NX(式中、Xは、Cl
−、Br
−、C
1−8アルコキシ基またはC
6−18アリールオキシ基)が挙げられる。相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの質量に対して、0.1〜10質量%であり得る。別の実施形態では、相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの質量に対して、0.5〜2質量%であり得る。
【0058】
組成物の所望性状に著しい悪影響を及ぼさないものであれば、すべてのタイプのポリカーボネート末端基がポリカーボネート組成物に有用なものとして考慮される。
【0059】
分枝鎖ポリカーボネートブロックは、重合中に分岐剤を添加することにより調製できる。こうした分岐剤としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、ハロホルミル基およびこれらの官能基の混合物から選択された少なくとも3つの官能基を含む多官能性有機化合物が挙げられる。具体的な例としては、トリメリット酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸トリクロリド、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビス−フェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリスーフェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸およびベンゾフェノンテトラカルボン酸が挙げられる。分岐剤は、0.05〜2.0質量%のレベルで添加できる。直鎖ポリカーボネートと分枝鎖ポリカーボネートとを含む混合物も使用できる。
【0060】
重合中に、連鎖停止剤(キャッピング剤とも呼ぶ)を添加できる。連鎖停止剤によって分子量成長速度が制限され、ポリカーボネート中の分子量が制御される。典型的な連鎖停止剤としては、あるモノフェノール化合物、モノカルボン酸クロリドおよびまたはモノクロロホルメートが挙げられる。モノフェノール連鎖停止剤の例としては、フェノールなどの単環式フェノールと、p−クミル−フェノール、レゾルシノールモノベンゾアートおよび、p−およびターシャリ−ブチルフェノールなどのC
1−C
22アルキル−置換フェノール;および、p−メトキシフェノールなどのジフェノールのモノエーテルが挙げられる。炭素原子数が8〜9個の分枝鎖アルキル置換基を有するアルキル置換フェノールも特定的に挙げられる。例えば、4−置換−2−ヒドロキシベンゾフェノンとその誘導体、アリールサリチレート、レゾルシノールモノベンゾエートなどのジフェノールのモノエステル、2−(2−ヒドロキシアリール)−ベンゾトリアゾールとその誘導体、2−(2−ヒドロキシアリール)−1,3,5−トリアジンとその誘導体などの、あるモノフェノール紫外線吸収剤もキャッピング剤として使用できる。
【0061】
モノ−カルボン酸クロリドも連鎖停止剤として使用できる。こうしたクロリド類としては、ベンゾイルクロリド、C
1−C
22アルキル−置換ベンゾイルクロリド、トルオイルクロリド、ハロゲン−置換ベンゾイルクロリド、ブロモベンゾイルクロリド、シンナモイルクロリド、4−ナジミドベンゾイルクロリドおよびこれらの組み合わせなどの単環式モノ−カルボン酸クロリド;無水トリメリット酸クロリドおよびナフトイルクロリドなどの多環式モノカルボン酸クロリド;および、単環式および多環式モノカルボン酸クロリドの組み合わせなどが挙げられる。炭素原子数が22個以下の脂肪族モノカルボン酸の塩化物は有用である。また、アクリロイルクロリドおよびメタクリロイルクロリドなどの脂肪族モノカルボン酸の官能化塩化物も有用である。また、フェニルクロロホルメート、アルキル−置換フェニルクロロホルメート、p−クミルフェニルクロロホルメート、トルエンクロロホルメートおよびこれらの組み合わせなどの単環式モノクロロホルメートを含むモノクロロホルメートも有用である。
【0062】
あるいは、該ポリカーボネートの製造に溶融プロセスが使用できる。溶融重合プロセスでは、ポリカーボネートは一般に、均一分散を形成するためのBanbury(登録商標)ミキサーまたは二軸スクリュー押出機などで、エステル交換触媒の存在下、ジヒドロキシ反応物と、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートエステルと、を溶融状態で共反応させることによって調製できる。揮発性の一価フェノールは、蒸留によって溶融反応物から除去され、ポリマーは、溶融残基として単離される。ポリカーボネートの製造に特定的に有用な溶融プロセスでは、アリール上に電子吸引性置換基を有するジアリールカーボネートエステルが用いられる。電子吸引性置換基を有する特定的に有用なジアリールカーボネートエステルの例としては、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチル)カーボネート、ビス(4−メチルカルボキシルフェニル)カーボネート、ビス(2−アセチルフェニル)カルボキシレート、ビス(4−アセチルフェニル)カルボキシレートあるいは、これらのエステルを少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。また、有用なエステル交換触媒には、R
3、QおよびXがそれぞれ上記に定義したものである式(R
3)
4Q
+Xの相間移動触媒が含まれる。典型的なエステル交換触媒としては、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムフェノラートあるいはこれらのものを少なくとも1つ含む組み合わせが挙げられる。
【0063】
ポリカーボネートに関して上記に一般的に記載したように、該ポリエステル−ポリカーボネートも特に界面重合で調製できる。ジカルボン酸あるいはジオールそれ自体を利用しないで、対応する酸ハロゲン化物などの該酸またはジオールの反応性誘導体、特に、酸ジクロリドと酸ジブロミドが使用できる。従って、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸またはこれらの酸を少なくとも1つ含む組み合わせを使用する代わりに、イソフタロイルジクロリド、テレフタロイルジクロリドまたはこれらのジクロリドを少なくとも1つ含む組み合わせが使用できる。
【0064】
該ポリカーボネートの固有粘度は、温度25℃のクロロホルム中で測定して、0.3〜1.5dl/gmであり、具体的には0.45〜1.0dl/gmであり得る。該ポリカーボネートの質量平均分子量は、架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラムを用い、基準ポリカーボネートに対して較正するゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定して、10,000〜200,000ダルトンであり、具体的には20,000〜100,000ダルトンである。GPCサンプルは1mg/mlの濃度で調製され、1.5ml/minの流量で溶離される。異なる流動特性を有するポリカーボネートを組み合わせて使用し、全体で所望の流動特性を実現できる。ある実施形態では、ポリカーボネートは、A
3およびA
4がそれぞれp−フェニレンであり、Y
2がイソプロピリデンであるビスフェノールA系である。該ポリカーボネートの質量平均分子量は、上記のようにGPCで測定して、5,000〜100,000ダルトンであり得、より具体的には、10,000〜65,000ダルトンであり得、さらにより具体的には15,000〜35,000ダルトンであり得る。
【0065】
特に該ポリエステル−ポリカーボネートの分子量は一般に高く、固有粘度は、温度25℃のクロロホルム中で測定して0.3〜1.5dl/gmであり、好適には0.45〜1.0dl/gmである。これらのポリエステル−ポリカーボネートは分枝鎖であっても非分枝鎖であってもよく、また、質量平均分子量は一般に、上記のようにGPCで測定して10,000〜200,000であり、好適には20,000〜100,000であろう。
【0066】
該ポリ(カーボネート−シロキサン)の質量平均分子量は、架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラムを用い、サンプル濃度1mg/mlとし、ポリカーボネート標準で較正するゲル透過クロマトグラフィで測定して、2,000〜100,000ダルトンであり得、具体的には5,000〜50,000ダルトンであり得る。該ポリ(カーボネート−シロキサン)の溶融体積流量は、温度300℃、荷重1.2kgで測定して、1〜50cm
3/10min(cc/10min)であり、具体的には2〜30cc/10minであり得る。流動特性の異なるポリオルガノシロキサン−ポリカーボネートの混合物を用いて、全体として所望の流動特性を達成できる。
【0067】
前述のポリカーボネート類は、単独で使用しても組み合わせで使用してもよく、例えば、ホモポリカーボネートと1つまたは複数のポリ(カーボネート−エステル)類の組み合わせ、あるいは、2つ以上のポリ(カーボネート−エステル)類の組み合わせで使用してもよい。異なるポリカーボネート−エステル類の混合物をこれらの組成物に使用してもよい。
【0068】
ある実施形態では、該ポリカーボネートフィルム形成組成物(従ってそのフィルム)は、組成物の合計質量に対して、5質量%未満の、具体的には4質量%未満の、3質量%未満の、2質量%未満の、1質量%未満のフッ素を含む。
【0069】
ある実施形態では、該ポリカーボネートフィルム形成組成物およびフィルムは、フッ素含有化合物を1000質量ppm未満、具体的には750質量ppm未満、500質量ppm未満あるいは50質量ppm未満含む。さらなる実施形態では、該フィルム形成組成物はフッ素含有化合物を含まない。こうした化合物としては、これに限定されないが、ある離型剤、充填剤(例えば微粒子状PTFE)または難燃剤が挙げられる。
【0070】
別の実施形態では、該ポリカーボネートフィルム形成組成物(従ってそのフィルム)は、シリコーン化合物を1000質量ppm未満、具体的には750質量ppm未満、500質量ppm未満あるいは50質量ppm未満含む。ある実施形態では、該フィルム形成組成物またはフィルムはシリコーン化合物を含まない。こうしたシリコーン化合物としては、これに限定されないが、シリコーンオイルおよびポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0071】
ある実施形態では、該ポリカーボネートフィルム形成組成物およびフィルムは、フッ素含有化合物およびシリコーン化合物を1000質量ppm未満、具体的には750質量ppm未満、500質量ppm未満あるいは50質量ppm未満含む。ある実施形態では、該フィルム形成組成物またはフィルムは、フッ素含有化合物およびシリコーン化合物を含まない。
【0072】
該ポリカーボネートフィルム形成組成物およびフィルムが低含量のある金属イオンを含む場合、良好な電気特性が得られる。従って、該フィルム形成組成物およびフィルムは、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、カリウム、マンガン、モリブデン、ナトリウム、チタンおよび亜鉛のそれぞれを50質量ppm未満、具体的には40質量ppm未満、30質量ppm未満あるいは20質量ppm未満含む。
【0073】
一部の実施形態では、本質的に臭素と塩素を含まないポリカーボネートフィルム形成組成物とフィルムを使用することが望ましい。臭素と塩素を「本質的に含まない」とは、該フィルム形成組成物が、その質量に対して、臭素と塩素を3質量%未満有することを意味し、他の実施形態では、それらを1質量%未満有することを意味する。他の実施形態では、該組成物はハロゲンフリーである。「ハロゲンフリー」とは、ハロゲン含量(フッ素、臭素、塩素およびヨウ素の合計量)が、組成物合計質量に対して1000質量ppm以下であると定義される。ハロゲン量は、原子吸光法などの通常の化学分析で求められる。
【0074】
該ポリカーボネートフィルム形成組成物はさらに、例えば誘電率や熱膨張率などの特性を調節するために、1種または複数種の微粒子充填剤を選択的に含み得る。典型的な微粒子充填剤としては、溶融シリカや結晶シリカなどのシリカ粉末;窒化ホウ素粉末およびホウケイ酸粉末;アルミナおよび酸化マグネシウム(すなわちマグネシア);ケイ酸塩球;煙塵;セノスフェア;アルミノケイ酸塩(アーモスフェア(armosphere));天然ケイ砂;石英;珪岩;酸化チタン、チタン酸バリウム、バリウムストロンチウム、五酸化タンタル、トリポリ;珪藻土;合成シリカ;およびこれらの組み合わせが挙げられる。これらの充填剤はすべて、ポリマーマトリックス樹脂との接着性および分散性向上のために、シランで表面処理され得る。ポリカーボネートフィルム形成組成物中に微粒子充填剤が存在する場合、その量は大きく異なり得、所望の物性が効果的に得られる量となる。一部の例では、微粒子充填剤の量は、フィルム形成組成物の合計質量に対して0.1〜50体積%、0.1〜40体積%、あるいは5〜30体積%であり、より特定的には5〜20体積%である。
【0075】
添加剤が組成物の所望性状に著しい悪影響を及ぼさないように選択されているという条件で、該ポリカーボネートフィルム形成組成物は、誘電体基板ポリマー組成物中に組み込まれる種々の添加剤を含み得る。ある実施形態では、いかなる添加剤の量も、分子量が250ダルトン未満の化合物の含量が1,000ppm未満となる量である。典型的な添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線(UV)吸収剤、失活剤、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤、難燃剤、防滴剤および放射線安定剤が挙げられる。添加剤の組み合わせも使用できる。一般に、これらの添加剤(充填剤はいずれも除く)の量はそれぞれ独立に、フィルム形成組成物の合計質量に対して0.005〜20質量%であり、具体的には0.01〜10質量%である。
【0076】
好適な酸化防止剤は、ホスファイト、ホスホナイト、ヒンダードフェノールまたはこれらの混合物などの化合物であり得る。トリアリールホスファイトとアリールホスホネートとを含むリン含有安定剤は有用な添加剤である。二官能性リン含有化合物も見過ごされ得る(unseeded)。好適な安定剤の分子量は300以上であり得る。典型的な化合物の一部としては、Ciba Chemical社からIRGAPHOS168として販売されているトリス−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイトと、Dover Chemical社からDOVERPHOS S−9228として販売されているビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトと、が挙げられる。
【0077】
ホスファイトとホスホナイトの例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリス(tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール)ジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)メチルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、2,2’,2’’−ニトリロ[トリエチルトリス(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイト]、2−エチルヘキシル(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイトおよび5−ブチル−5−エチル−2−(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサホスフィランが挙げられる。
【0078】
2つ以上の有機リン化合物を含む組み合わせも考慮される。有機リン化合物が組み合わせで使用される場合、それらは同じタイプであっても異なるタイプであってもよい。組み合わせとしては、例えば、2つのホスファイトであってもよく、あるいはホスファイトとホスホナイトであってもよい。一部の実施形態では、分子量が300以上のリン含有安定剤が有用である。例えばアリールホスファイトなどのリン含有安定剤の組成物中の量は通常、組成物の合計質量に対して0.005〜3質量%であり、具体的には0.01〜1.0質量%である。
【0079】
例えば、アルキル化モノフェノールおよびアルキル化ビスフェノールまたはポリフェノールなどのヒンダードフェノールも酸化防止剤として使用できる。典型的なアルキル化モノフェノールとしては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール;2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール;2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール;2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール;2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシメチルフェノール;例えば2,6−ジ−ノニル−4−メチルフェノールなどの、側鎖が直鎖または分枝鎖のノニルフェノール;2,4−ジメチル−6−(1’−メチルウンデカ−1’−イル)フェノール;2,4−ジメチル−6−(1’−メチルヘプタデカ−1’−イル)フェノール;2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデカ−1’−イル)フェノールおよびこれらの混合物が挙げられる。典型的なアルキリデンビスフェノールとしては、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)−フェノール]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(6−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、2,2’−メチレンビス[6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,6−ビス(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチル−フェニル)−3−n−ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[3,3−ビス(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−フェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェニル]テレフタレート、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ2−メチルフェニル)−4−n−ドデシルメルカプトブタン、1,1,5,5−テトラ−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタンおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0080】
ヒンダードフェノール化合物の分子量は300g/モル以上であり得る。高分子量であることによって、例えば300℃以上の高温の処理温度で溶融するポリマー中に、ヒンダードフェノール部分が保持され易くなり得る。ヒンダードフェノール安定剤の組成物中の量は通常、組成物の合計質量に対して0.005〜2質量%であり、具体的には0.01〜1.0質量%である。
【0081】
一部の実施形態では、再掲になるが、ポリマーによって、5質量%超のフッ素またはシリコンが与えられないように、あるいは組成物の所望の物性に著しい悪影響を与えないようにポリマーが選択されることを条件として、該ポリカーボネートフィルム形成組成物はさらに、少なくとも1つの追加の非晶性ポリマーを選択的に含み得る。こうした追加のポリマーとしては、これに限定されないが、ポリ(フェニレンスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(アリーレンスルホン)、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリ(エーテルイミド)、ポリ(エーテルイミドスルホン)およびこれらの混合物やコポリマーなどが挙げられる。該ポリマーが存在する場合、その量は、組成物の合計質量に対して0超〜12質量%であり、具体的には0.1〜10質量%であり、より具体的には0.5〜5質量%である。ある実施形態では、該フィルム形成組成物は該ポリカーボネート以外のポリマーを含まない。
【0082】
該ポリカーボネートフィルム形成組成物は、緊密混合を形成する条件下で成分を混合することにより調製できる。こうした条件には、多くの場合、単軸または二軸スクリュー押出機、ミキシングボウル、あるいは成分にせん断を印加できる同様の混合装置内での溶融混合が含まれる。二軸スクリュー押出機は、単軸スクリュー押出機より混合能力および自己拭き取り能力が高いことから、好適であることが多い。組成物中の揮発性不純物を除去するために、押出機の少なくとも1つのベント口を通して混合物を減圧することが好都合であることが多い。多くの場合、溶融に先立ってポリカーボネート(およびまたは他の添加剤)を乾燥させることは好都合である。溶融処理は、過剰なポリマー分解を避けるために240℃〜360℃で行われることが多いが、それでも十分に溶融させることによって、未溶融成分のない緊密ポリマー混合物が得られる。また、40〜100μmのキャンドルまたはスクリーンフィルタを用いて該ポリマー混合物を溶融濾過して、望ましくない黒斑や、例えば径が1μm超の粒子などの他の異種混入物質を除去することもできる。
【0083】
典型的なプロセスでは、該種々の成分を押出混合器に投入して連続したストランドを製造し、これを冷却後ペレット状に裁断する。別の手順では、該成分を乾式混合によって混合後、ミル内で溶融・粉砕するか、あるいは押出して裁断する。また、該組成物と他の任意成分を混合し直接に押出して、フィルムを形成することもできる。ある実施形態では、これらの成分はすべて、できるだけ水分を含まない。また、機械中の滞留時間の短縮、温度の注意深い制御、摩擦熱の利用、成分間の緊密混合が確実に得られるように混合を行う。
【0084】
該組成物は、フラットダイ(flat die)を用いた、熱可塑性組成物用に従来から使用されている押出機を用いて押出せる。該押出キャストフィルム法は、押出機でポリマーを溶融するステップと、該溶融ポリマーをリップギャップが小さなフラットダイを経由して搬送するステップと、比較的高い巻き取り速度でフィルムを延伸するステップと、ポリマーを冷却・凝固化して最終のフィルムを形成するステップと、を備える。押出機は、単軸スクリュー式のものであっても二軸スクリュー式のものであってもよく、また、ダイを経由するポリマーの一定の非脈動流れを得るために、溶融ポンプを使用してもよい。ダイのリップギャップは100〜200μmと小さくてもよく、巻き取りローラーを最高速度200m/minで作動させてもよい。該押出機には、フィルムをテンパー/アニールして、凍結内部応力の発生を最小化する加熱ロールが追加されていてもよい。多くの場合、フィルム端部はトリミングされ、張力調節巻き取り機構を用いてロール上に巻き取られる。一部の例では、複合材料を薄膜に延伸する前に、市販およびまたは実験的に官能化された充填剤をポリマー中に均一に分散し得る。この場合、均一な分散を得るための充填剤のポリマーマトリックス中への混合を、延伸操作前のポリマーの溶融に用いた押出機とは別個の押出機で行ってもよく、あるいはより好適には、同じ押出機で行ってもよい。比較的厚みの薄いこうした押出フィルムを望み通りに調製するためには、溶融ポリマーを一定の均一な流れで、ダイ経由で正確に送ること、フィルムを作るポリマーのレオロジー特性、樹脂および装置が両方とも清浄であること、および巻き取り機構の機械的な特性がすべて必要となるであろう。
【0085】
ある実施形態では、該押出キャストフィルム法は、大規模装置に拡張可能なワンステップであり、いかなる溶媒の使用も必要としない。高分子量のポリマーおよびまたはガラス転移温度が高いポリマーの場合であっても、この押出プロセスを適切にデザインすることによって、材料の熱分解または機械的分解を生じ得る過剰な温度とならないポリマー環境が得られる。該溶融物に対してろ過装置を使用することによって、それから適切に除去されていなければフィルムの誘電性能を損なうであろうゲルや黒斑などの混入物質を実質的に含まないフィルムが製造できる。この方法で製造されたフィルムは、織布全体に亘って均一な厚みを有する薄膜(10μmおよびさらにそれより薄い)であり、シワあるいは表面の波状の起伏がほとんどなく平坦であり、相対的に混入物質を含まない。
【0086】
該溶融組成物は、溶融ポンプにより、押出機ダイ経由で搬送される。ある実施形態では、該フィルムを250℃〜500℃、例えば300℃〜450℃の温度で押出し、押出したフィルムを一軸に延伸して誘電体基板フィルムを製造する。具体的には、該フィルム形成組成物の成分を混合、溶融および緊密混合後、ろ過して1μm超の粒子を除去し;前述の温度でフラットダイを経由して押出し;その後一軸に延伸する。延伸後、下記のようにフィルムを直接金属化でき、あるいは貯蔵または出荷用に巻き取りロール上に巻き取りできる。フィルムの長さは少なくとも10mあるいは100〜10,000mであり得、幅は少なくとも300mmあるいは300〜3,000mmであり得る。フィルムの押出速度は変動し得る。市販の実施形態では、フィルムの押出速度は10lb/hr(4.5kg/hr)〜1000lb/hr(450kg/hr)の範囲で変わる。押出機ダイプレートからのフィルムの引抜き速度(巻き取り速度)は10m/min〜300m/minであり得る。
【0087】
フィルムはその少なくとも一面を金属化できる。フィルムの使用目的に応じて、例えば、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、亜鉛、チタン、クロムおよびバナジウムなどの種々の金属が使用できる。フィルムの少なくとも平滑な面、すなわち、光学的形状測定法で求めたRaがフィルム平均厚の±3%未満の面が金属化される。ポリマーフィルムの金属化方法は既知であり、例えば、真空金属蒸着、金属スパッタリング、プラズマ処理、電子照射処理、化学的酸化または還元反応および無電解湿式化学的蒸着などが挙げられる。該フィルムは、従来の無電解めっきによって両面を金属化できる。別の実施形態では、例えばインクジェット印刷によって、フィルムの表面上にパターン化された金属層を形成できる。該金属化層の厚みは、金属化フィルムの使用目的によって決定され、例えば、1Åから、1000nm、500nmまたは10nmまでの範囲であり得る。ある実施形態では、金属膜の厚みは1〜3000Å、1〜2000Åあるいは1〜1000Åであり得る。導電性金属を使用する場合、ポリマーフィルム上の金属層の抵抗率は0.1〜1000Ω/□(Ohm/sq)、あるいは0.1〜100Ω/□の範囲で変わり得る。
【0088】
例えば金属層の接着を高めるために、金属化されるフィルムの表面を、例えば、洗浄、火炎処理、プラズマ放電、コロナ放電などによって予備処理できる。例えば、クリヤーコート(耐引っかき性を付与するポリ(メチルメタクリレート)やポリ(エチルメタクリレート)など)あるいはポリカーボネートフィルムの別の層などの、1つまたは複数の追加の層を金属層上に堆積してラミネートを形成し得る。
【0089】
このように製造されたフィルムと金属化フィルムは、種々の有利な物性を有する。該フィルムは、シワなし領域、すなわち、十分に平滑であり、その表面が金属化されると、該金属化フィルムは、好都合なことに一貫した表面形態を有する領域を少なくとも1つ有する。ある実施形態では、非金属化フィルムの絶縁破壊強度は少なくとも300V/μm、少なくとも350V/μmあるいは少なくとも400V/μmである。ある実施形態では、非未金属化フィルムの絶縁破壊強度は最高で、520、550、580、610、640、670および700V/μmである。
【0090】
該フィルムのシワなし領域の平坦度は、特定領域全体のフィルム厚変動を測定することにより求められる。ここで、平坦なフィルムのフィルム厚変動は、測定領域全体のフィルム平均厚に対して、±10%以下、±9%以下、±8%以下、±6%以下、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下あるいは±1%以下である。ある実施形態では、該厚み変動は±1%と小さいものであり得る。
【0091】
該フィルム表面のシワなし領域の平滑度は、表面の平均表面粗さ(「Ra」)を光学的形状測定法で測定することにより定量化できる。ここで、フィルムのシワなし領域表面のRaは、光学的形状測定法で測定して、フィルム平均厚の±3%未満、±2%未満あるいは±1%未満と小さい。
【0092】
特に有利な特徴は、該シワなし領域がフィルムの大面積に亘って製造できることである。例えば、フィルム面積の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%あるいは少なくとも97%は、シワなし領域であり得る。こうして、該フィルムは、下限値およびまたは上限値を有するシワなし領域を有し得る。該範囲には、該下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、フィルム面積の80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%から選択され得る。別の実施形態では、該シワなし領域は、面積が少なくとも1m
2、少なくとも2m
2、少なくとも3m
2、少なくとも5m
2、少なくとも10m
2、少なくとも20m
2、少なくとも50m
2、あるいは少なくとも100m
2の連続領域を有し得る。大規模なシワなし領域によって、金属化フィルムがロール状で製造、貯蔵および出荷できるという点で、重要な製造上の長所が得られる。このように、該フィルムの長さは少なくとも10m、幅は少なくとも300mmであり、フィルム面積の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%あるいは少なくとも97%はシワなし領域である。別の実施形態では、該フィルムの長さは100〜10,000m、幅は300〜3,000mmであり、フィルム面積の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%あるいは少なくとも97%はシワなし領域である。このように、該フィルムの長さが100〜10,000mの場合、フィルムは、下限値およびまたは上限値を有するシワなし領域を有し得る。該範囲には、該下限値およびまたは上限値が含まれていても含まれていなくてもよい。該下限値およびまたは上限値は、フィルム面積の80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%から選択され得る。
【0093】
該組成物と製造方法は、所望の性能特性、特に電気特性を実現するために変更できる。
【0094】
該フィルムの誘電率は特に、2.7超、3.0超、3.2超、3.3超、3.4超、4.2超、4.3超、4.4超、4.5超あるいは最高7.0と高い。
【0095】
また、該フィルムの誘電率は、それが製造されるポリマーのTgまでの温度で安定であり得る。該フィルムは一般に、フィルムのポリマーのそれぞれのTg未満の温度、例えば約20℃低い温度環境で使用される。一実施形態では、フィルムの誘電率はさらに、50℃まで、60℃まで、70℃まで、80℃まで、90℃まで、100℃まで、110℃まで、120℃まで、あるいはそれ以上の温度で安定であり得る。
【0096】
該フィルムと金属化フィルムは本質的に溶剤フリーであり得、すなわち、分子量が250ダルトン未満の化合物を1,000ppm未満、750ppm未満、500ppmあるいは250ppm未満含む。
【0097】
該フィルムと金属化フィルムは、ポリカーボネート層中に、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、カリウム、マンガン、モリブデン、ナトリウム、チタンおよび亜鉛のそれぞれを50ppm未満、25ppm未満あるいは10ppm未満含み得る。
【0098】
該フィルムと金属化フィルムは、フッ素含有化合物またはシリコーン含有化合物のそれぞれを1000ppm未満、500ppm未満、250ppm未満あるいは100ppm未満含み得る。該フィルムと金属化フィルムは、0.3mの距離で拡大なしで見たときに、少なくとも3m
2の、あるいは少なくとも9m
2の領域全体に亘って、観察できる塵やゲルを有さないものであり得る。
【0099】
該フィルムと金属化フィルムは、50倍拡大で見たときに、少なくとも3m
2の、あるいは少なくとも9m
2の領域全体に亘って、観察できる空洞を有さないものであり得る。
【0100】
該金属化フィルムの散逸率は、誘電分光法で測定して、0超〜5%未満、0超〜4%未満、0超〜3%未満、0超〜2%未満あるいは0超〜1%未満であり得る。一実施形態では、該フィルムの散逸率は小さく、すなわち、0.1%未満あるいは0.08%未満である。
【0101】
該ポリカーボネートフィルムは、任意の非晶性フィルム用途に使用でき、特に、金属化に好適である。該金属化フィルムは、任意の金属化フィルム用途に使用でき、特に、例えばコンデンサあるいは回路材料として電気用途に好適である。円筒状に巻かれた金属化ポリマーフィルムを用いて、高エネルギー密度および高電圧の無極性コンデンサを製造できる。特定の実施形態では、該ポリカーボネートフィルムは、押出後、真空チャンバ内で蒸着により、厚みが1Å〜1000nm、1〜3000Åあるいは1〜1000Åになるまで、銅またはアルミニウムなどの導電性金属を移動中のポリマー上にスプレーすることによって金属化される。ポリマーフィルム上の金属の抵抗率は、約0.1Ω/□〜100Ω/□であり得る。金属化プロセスの前に、ポリマーフィルムを適切にマスキングしてフィルムの幅方向端部に未金属化縁を作ることができ、それによって、金属化フィルムの交互層(コンデンサを組み立てた場合)が反対端部において未金属化領域を有して、最終的に先端部を金属化する際の、コンデンサ電極の電気的な短絡を防止する。
【0102】
その後、積み重ねた2枚の金属化ポリマーフィルムをチューブ状に巻くことにより、コンデンサが製造できる。電線が各金属層に接続される。特定の実施形態では、2個の別個の金属化フィルムロールをコンデンサ巻き取り機に投入し、マンドレル(これは、その後除去してもよい)上で互いにしっかり巻くことにより、コンデンサの典型的な構成、すなわち、対向面上に2つの金属化層を有する誘電体を再現して、ポリカーボネート/金属化層/ポリカーボネート/金属化層の順に層が配置される。該2個のフィルムロールは、対向面上の未金属化縁で巻かれる。
【0103】
コンデンサの巻き程度は、コンデンサの所望の物理的サイズあるいは所望のキャパシタンスに依存する。2個のロールをしっかりと巻くことによって、残存していれば絶縁破壊を早め得る取り込み空気の除去に役立つ。HEPAフィルタが組み込まれた、少なくともクラス100のクリーンルーム環境で個々のコンデンサを処理することによって、誘電体フィルム層間の接点の異物混入の可能性を低減でき、また、誘電体への水分取り込みを低減できる。電気巻き上げを用いることにより、各コンデンサの均一な張力がより良好に維持され得る。その後、コンデンサの端部にテープを貼り、両端開口のトレー内でストラップで縛ってフィルム層のほどけを防止し、また、例えば、高亜鉛含量はんだと、その後のスズ90%、亜鉛10%を含む標準の柔軟な最終スプレーはんだなどの導体素子で、円筒の縁部および先端部をスプレーできる。この最初のスプレーによって、金属化表面にはスクラッチが生じて溝ができ、これによって、誘電体フィルム上の金属化とのより良好な接触が実現される。さらに、最終スプレーを組み合わせることによって、最終端子とのより良好なコンタクト接着が得られる。その後、例えばアルミニウム鉛などの導電体を各先端部にはんだ付けして、最終端子を形成できる。1つの端子は、缶の底部にスポット溶接でき、もう一方の端子は、蓋に並行溶接できる。真空充填装置内で、該コンデンサに液状含浸物(例えばイソプロピルフェニルスルホン)を満たして閉じてもよい。
【0104】
本発明は少なくとも以下の実施形態を含む。
【0105】
実施形態1:ポリカーボネートを含む一軸延伸押出フィルムであって、前記フィルムは、第1の表面と第2の表面を有する押出シワなし領域であって、厚みが0超〜7μm未満であり、厚みの変動が前記フィルム厚の±10%以下であり、光学的形状測定法で測定した平均表面粗さが前記フィルムの平均厚の±3%未満であることを特徴とする押出シワなし領域を少なくとも1つ有しており、前記フィルムはさらに、1KHzおよび室温での誘電率が少なくとも2.7であり、1kHzおよび室温での散逸率が1%以下であり、絶縁破壊強度が少なくとも300V/μmである、ことを特徴とする押出フィルム。
【0106】
実施形態2:前記ポリカーボネートは、式(1)の繰り返し構造カーボネート単位を有するポリカーボネートであることを特徴とする実施形態1に記載のフィルム:
【0107】
【化16】
式中、R1基の総数の少なくとも60%は芳香族部分を含み、残りは脂肪族、脂環式または芳香族である。
【0108】
実施形態3:前記ポリカーボネートはホモポリマーであることを特徴とする実施形態1または実施形態2に記載のフィルム。
【0109】
実施形態4:前記ポリカーボネートは、少なくとも2つの異なるR1部分を含むコポリカーボネートであることを特徴とする実施形態1乃至実施形態3のいずれかに記載のフィルム。
【0110】
実施形態5:前記フィルムの長さは少なくとも10m、幅は少なくとも300mmであり、前記フィルムの面積の少なくとも80%が前記シワなし領域であることを特徴とする実施形態1乃至実施形態4のいずれかに記載のフィルム。
【0111】
実施形態6:前記フィルムのエネルギー密度は少なくとも3J/ccであることを特徴とする実施形態1乃至実施形態5のいずれかに記載のフィルム。
【0112】
実施形態7:前記フィルムの長さは100〜10,000m、幅は300〜3,000mmであることを特徴とする実施形態1乃至実施形態6のいずれかに記載のフィルム。
【0113】
実施形態8:前記フィルムは、分子量が250ダルトン未満の化合物を1,000ppm未満有することを特徴とする実施形態1乃至実施形態7のいずれかに記載のフィルム。
【0114】
実施形態9:前記フィルムは、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、カリウム、マンガン、モリブデン、ナトリウム、チタンおよび亜鉛のそれぞれを50ppm未満有することを特徴とする実施形態1乃至実施形態8のいずれかに記載のフィルム。
【0115】
実施形態10:フッ素含有化合物またはシリコーン含有化合物のそれぞれを1000ppm未満含むことを特徴とする実施形態1乃至実施形態9のいずれかに記載のフィルム。
【0116】
実施形態11:フッ素含有化合物またはシリコーン含有化合物を100ppm未満含むことを特徴とする実施形態1乃至実施形態10のいずれかに記載のフィルム。
【0117】
実施形態12:前記フィルムは、0.3mの距離で拡大なしで見たときに、少なくとも3m
2の領域全体に亘って、観察できる塵やゲルを有さないことを特徴とする実施形態1乃至実施形態11のいずれかに記載のフィルム。
【0118】
実施形態13:前記フィルムは、50倍拡大で見たときに、少なくとも3m
2の領域全体に亘って、観察できる空洞を有さないことを特徴とする実施形態1乃至実施形態12のいずれかに記載のフィルム。
【0119】
実施形態14:前記シワなし領域の少なくとも1つの表面の表面粗さRaは、前記フィルムの平均厚みの3%未満であることを特徴とする実施形態1乃至実施形態13のいずれかに記載のフィルム。
【0120】
実施形態15:ロール状に巻かれた実施形態1乃至実施形態14のいずれかに記載のフィルムであって、前記ロールは、0.3mの距離で拡大なしで見たときに、観察できるシワやダイラインを有さないことを特徴とするフィルム。
【0121】
実施形態16:実施形態1乃至実施形態15のいずれかに記載のフィルムを含むことを特徴とする物品。
【0122】
実施形態17:実施形態16に記載のフィルムの一部分を含むことを特徴とする物品。
【0123】
実施形態18:前記シワなし領域の少なくとも一部分上に堆積された導電性金属の層をさらに備えることを特徴とする実施形態16または実施形態17に記載の物品。
【0124】
実施形態19:前記導電性金属は、アルミニウム、亜鉛、銅あるいはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする実施形態16乃至実施形態18のいずれかに記載の物品。
【0125】
実施形態20:前記導電性金属層の厚みは1〜3000Åであることを特徴とする実施形態16乃至実施形態19のいずれかに記載の物品。
【0126】
実施形態21:前記導電性金属層の抵抗率は0.1〜100Ω/□であることを特徴とする実施形態16乃至実施形態20のいずれかに記載の物品。
【0127】
実施形態22:前記導電性金属層は、化学気相蒸着法、高温真空操作またはこれらの組み合わせによって堆積されることを特徴とする実施形態16乃至実施形態21のいずれかに記載の物品。
【0128】
実施形態23:実施形態16乃至実施形態22のいずれかに記載の金属化巻きフィルム物品を含むことを特徴とするコンデンサ。
【0129】
実施形態24:実施形態23に記載のコンデンサを備えることを特徴とする電子物品。
【0130】
他のコンデンサ構造も可能である。例えば、コンデンサは、積層構造で堆積された第1および第2電極と、前記第1および第2電極のそれぞれと少なくとも部分的に接触して、それらの間に配置された該ポリカーボネートフィルムと、を少なくとも備えた平坦構造を有し得る。追加のポリカーボネートフィルムと電極層は、交互層に存在し得る。従って、電子デバイスを形成する多層物品は、ポリカーボネート層/金属層/誘電体層(この誘電体層は、本明細書に記載のポリカーボネートフィルムであっても、あるいは他の誘電体材料であってもよい)を含む本請求項の範囲内である。追加の層(例えば、追加の交互の誘電体/金属層)も選択的に存在し得る。
【0131】
以下の実施例は例示であり、限定するものではない。
[実施例]
【0132】
(材料)
表1に記載の材料を使用し、以下の手順に準拠して実施例を行った。
【0133】
(試験手順)
フィルムから光を反射させ、反射光を波長範囲で分析することによってフィルム厚を測定する、Filmetrics社(サンディエゴ(CA))製のFilmetrics F20薄膜測定システムを用いて、フィルム厚を測定する。
【0134】
Wyko NT100製の光学的形状測定器を該測定器の標準作動モードで作動させて、表面粗さを求める。測定値は、Ra、Sqなどの従来のヘッディングの下で報告されるが、ここで、「R」は、測定値が二次元データを用いて計算されたことを示し、線形またはプロファイル粗さを表しており、「S」は、測定値が三次元データを用いて計算されたことを示し、表面あるいは領域粗さを表す。2番目の文字は、計算に用いた式タイプを示しており、例えば、「a」は算術式を示し、「q」は二乗平均平方根式を示す。
【0135】
ICP(既知の金属汚染測定法であるInductibly Coupled Plasma Spectroscopy)を用いて金属汚染を求めた。
【0136】
誘電分光法を用いて誘電率(DK)および散逸率(DF)を求めた。厚みが非常に均一なポリマーフィルムを試験サンプルとして使用する。マイクロメータまたは光学的厚さゲージ(フィルムが透明な場合)を用いてフィルム厚dを正確に求める。スパッタリングまたは熱蒸発を用いて、面積Aが既知の金またはアルミニウム電極をフィルムサンプルの両面上に堆積する。その後、金属化されたサンプルを温調されたチャンバに入れ、Novocontrol Broadband Dielectric Spectrometersなどの誘電体スペクトラムアナライザに電気的に接続する。該スペクトラムアナライザによって、キャパシタンスCおよび散逸率DFを測定する。測定されたサンプルのキャパシタンス、面積および厚みから、サンプルのDKを算出する:DK=Cd/Aε
0(式中、真空誘電率であるε
0は8.85×10
−12F/mである)。
【0137】
ASTM D−149に準拠して、絶縁破壊強度を求めた。厚みが均一な1枚のポリマーフィルムを試験サンプルとして使用し、DKおよびDF測定と同じ方法を用いてその厚みを測定する。フィルムサンプルはその表面に堆積された電極のない露出フィルムとして試験される。底部電極が平坦型銅プレート、上部電極が1/4インチ径のステンレスボールである2つの金属電極間にフィルムサンプルを置く。絶縁破壊測定中に、0Vから500V/secの一定速度で連続的に増加するDC電圧を2つの電極間のサンプルに印加する。DC電圧は、Hipotronics DC Power Supplyなどの高電圧電源を用いて印加する。絶縁破壊が生じるまで電圧は上昇し、絶縁破壊によって大電流が生じ、電源はその保護回路によって自動的にリセットされる。最高到達電圧が絶縁破壊電圧V
BDとして記録され、絶縁破壊電界E
BDは、V
BD/フィルム厚dで求められる。別の方法が特定されない限り、この方法を用いた。
【0138】
長期間の使用で保証済みの機能、温度計および同様の特徴を有する絶縁抵抗計を用いて、絶縁抵抗を測定する。
【0139】
圧縮成形手順−約1.5gのパウダーまたはペレットを20mlバイアル瓶に秤量し、キムワイプおよびゴムバンドで覆った。これを、温度80℃の真空オーブン内で一晩乾燥させた。翌日真空を開放し、選択的に、真空オーブンを窒素で満たした。サンプルを素早く取り出して、バイアル瓶に蓋をした。得られた、乾燥し蓋をしたサンプルを少なくとも4〜8時間保持した。大きな鋼板上に、4×5インチ(101mm×127mm)大きさのフェロ板を置いた。長さが2インチ(101mm)、厚みが所望のサンプル厚のシム3個を、正方形の3辺を形成するように該フェロ板上に置いた。成形の準備ができ次第、個々のサンプルを中心に素早く注ぎ、別のフェロ板と鋼鈑を上に重ねた。このスタック全体を、テトラヘドロンプレス(Tetrahedron press)などの自動化プレスに入れた。初期温度を512°F(270℃)に設定し、上部圧盤は上昇するが油圧は作用しない程度に圧盤を上げた。この状態を3分間維持した後、圧盤を上昇させて自動化プレスにかけ、圧力を素早く15,000lbs(6,804kg)に上昇させ、この温度と圧力で5分間保持した。その後、圧力を15,000lbs(6,804kg)に維持しながら、プレスを212°F(100℃)まで自動的に冷却し、この最終温度で5分間保持した。最後にプレスを開放後、サンプルを素早く取り出し、まだ暖かい間に、サンプルからプレートを引き離した。サンプルがプレートに付着している場合は、容易に取り外しできるまでそれらを水に浸漬した。
【0140】
Tgが約180℃の材料についてはこの方法を用いた。Tgが145℃〜150℃のポリカーボネートについては、プレスの初期および最終温度をそれぞれ20℃下げた。最終温度が200℃〜220℃の場合は、明らかに溶融物中の結晶化によって、濁ったフィルムができることが確認された。フィルム厚は典型的には、材料のTgに応じて225〜275μmであった。嵩密度が低いパウダーにおいて、この手順後に気泡を生じる場合は、サンプルを最初に冷間プレスした。パウダー1.5gを径が1インチ(25.4mm)の金型に入れ、カーバープレス(Carver press)してコイン状のディスクを形成した。その後、このサンプルを同じ方法で一晩乾燥させ、フィルム形成に使用できた。最後に、フィルム厚は、異なる厚みのシムを用いることで調整できた。
【0142】
(比較実施例1)
ガラス転移温度が異なる2つのポリカーボネート樹脂であるPC1(ビスフェノールA系ポリカーボネート)とPC2を薄膜状に押し出して、その絶縁破壊強度を評価した。結果を表2に示す。
【0144】
考察:厚みが7μm未満、絶縁破壊強度が約750V/μm超のPC1(Tg=152℃)とPC2(Tg=204℃)のフィルムが溶融押出で製造できることが、表2からわかる。これらのフィルムは、ポリマー供給量が0.25lb/hr、巻き取り速度が11.4ft/minで製造できた。これらのフィルムでは、シワ、ダイラインおよび他の欠点が見られたため、静電容量フィルムコンデンサの製造に必要な質レベルを有していなかった。
【0145】
(比較実施例2)
表3は、ガラス転移温度が181.5℃のPC3から押出で製造されたフィルムの厚みと絶縁破壊強度を示す。
【0147】
考察:これらのフィルムの絶縁破壊強度は比較的高いものの、シワ、ダイラインおよび他の欠点が存在するため、静電容量フィルムコンデンサの製造には不適であった。
【0148】
(比較実施例3)
表4は、フィルム厚が約6μm、幅が約45ft、長さが約6,000ftのPC4のフィルムの織布全体の厚さ分布を示す。
【0150】
これらの結果から、織布全体のフィルム厚の22測定値は、平均値が5.98μm、1σがわずか0.51μmであることがわかった。
【0151】
表4に厚さ測定値を示したPC4のフィルムの絶縁破壊強度を表5に示す。
【0153】
考察:これらの結果から、PC4のフィルムの絶縁破壊強度は700V/μmを上回り、標準偏差はわずか60V/μmであり、平均電圧約4.240VDCで破壊することがわかった。
【0154】
表6は、PC4の同じフィルムの2つの面の、光学的形状測定法で測定した表面粗さ(Ra)を示す。
【0156】
これらの結果から、平均粗さ値は、両面それぞれで約15nmと11nmであり、静電容量金属化フィルムコンデンサの製造仕様で許容される180nm(フィルム平均厚の約3%未満)未満であることがわかった。
【0157】
押出法で製造したポリカーボネートとポリエーテルイミドフィルム数枚について、誘導結合プラズマ質量分光法による元素分析を行った。下記の表7から、これらのフィルムの金属量は、金属化フィルムコンデンサの製造仕様で許容される範囲内であることがわかる。
【0159】
これらの結果は、不純物がサンプル内に一様には分布していないことを示している。上記の表4に記載したものと同じであるPC4ポリカーボネートフィルムの場合、これらの結果は、この同じフィルムで測定した比較的高い絶縁破壊強度値(上記の表5)に一致していた。
【0160】
(比較実施例4)
表4に記載のPC4フィルムを金属化し、約13.5μFの静電容量フィルムコンデンサに巻いた。押出したポリカーボネートフィルムの2つのロール対のヘビーエッジを亜鉛で、織布電極をアルミニウムで金属化した。このロールを、#3と#4および#2と#5の対としてマーキングした。両方のロール対のフィルムの厚さは6μmであり、幅は100mmであった。一連のコンデンサを、それぞれのロール対セットから自動的に巻いた。
【0161】
絶縁破壊電圧測定:各ロール対セットからの2個のコンデンサ(ユニット#1およびユニット#5)に、500メガオーム(以下)の絶縁抵抗によりモニターして、破壊(絶縁破壊点)としてユニットが短絡するまで、50VDCステップ(ステップ当たり90秒間)で電圧を上昇させた。結果を表8と表9に示す。
【0163】
【表9】
表8および表9は、これらのコンデンサの絶縁破壊電圧が850V〜900Vであったことを示す。
【0164】
絶縁抵抗と電圧:過去の等級に基づいて、6μm厚のPCフィルムは典型的には、耐電圧(DWV)要求400VDCに対して、200DVCで等級付けられる。他の3個の13.5μFコンデンサについて、DWVを試験し、400VDC DWV/200 VDC IR、600VDC DWV/300 VDC IRおよび800VDC DWV/400VDC IRでの絶縁抵抗を測定し、押出PCフィルム性能を典型的な溶媒キャストPC結果と比較した(表10)。
【0166】
絶縁抵抗と温度:2つの群のそれぞれからのユニット#2,#3および#4について、温度+25℃、+85℃、+105℃と+125℃、および、200VDC,300VDC、400VDCの3つの異なる電圧における絶縁抵抗を測定した(表11A、11B、11C)。
【0170】
以下の実施例の目的は、コポリエステルカーボネートの性能を実証することである。実施例としてCPC1を用い、参考実施例としてCPC2、CPC3、CPC4、CPC5およびCPC6で表示した5つのコポリエステルカーボネートを用いた。上記の表1、以下の考察および表12に、これらのコポリエステルカーボネートの組成物についてさらに詳細に説明する。
【0171】
CPC1は、67モルの%ビスフェノールAと、33モル%の3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルイソインドリン−1−オンと、のコポリカーボネートである。
【0172】
CPC2は、ヒドロキシベンゾニトリル末端基を有する分枝鎖ビスフェノールAポリカーボネートである。
【0173】
CPC3は、約19モル%のレゾルシノールと、イソおよびテレ(1:1)フタル酸エステル結合と、6モル%のレゾルシノールカーボネート結合と、約75モル%のBPAカーボネート結合と、を有し、分子量が約30,000のポリエステルカーボネートである。
【0174】
CPC4は、約80モル%のレゾルシノールと、イソおよびテレ(1:1)フタル酸エステル結合と、10モル%のレゾルシノールカーボネート結合と、約10モル%のBPAカーボネート結合と、を有し、分子量が約21,000のコポリカーボネートである。
【0175】
CPC5は、イソおよびテレフタル酸エステル基の93:7混合物を約80モル%と、約20モル%のBPAカーボネート基と、を含み、分子量が28,000のBPAコポリエステルカーボネートである。
【0176】
CPC6は、イソおよびテレフタル酸エステル基の50:50混合物を約60モル%と、約40モル%のBPAカーボネト基と、を含むBPAコポリエステルカーボネートである。
【0178】
上記の試験手順に準拠して、これらの材料のサンプルを評価し、その結果を表13に示す。
【0180】
該コポリエステルカーボネートは、絶縁破壊強度に対して高い平均値(「650超〜800V/μm」)を示した。該コポリエステルカーボネートの誘電率は一様に、上記で評価したポリカーボネートPC1以上であった。CPC1、CPC5およびCPC6の3つのコポリエステルカーボネートは、電気特性に関して全体的に優れた性能と、高いTg値を示したため、以下のように、さらにフィルム特性を評価した。
【0181】
押出フィルムの表面粗さ:上記の手順で記載したように、CPC1、CPC5およびCPC6のフィルムを評価し、その結果を表14aと表14bに示す(表中の単位はμm)。
【0184】
これらの結果から、両面の平均粗さは0.04μm未満であったことがわかる。
【0185】
表15は、CPC1フィルムの20箇所における絶縁破壊強度を示す。
【0187】
これらの結果から、CPC1フィルムの平均絶縁破壊強度は900V/μmを上回り、標準偏差は106V/μmであり、平均電圧約9,170VDCで破壊することがわかった。
【0188】
表16は、CPC5フィルムの20箇所における絶縁破壊強度を示す。
【0190】
これらの結果から、CPC1フィルムの平均絶縁破壊強度は900V/μmを上回り、標準偏差は172V/μmであり、平均電圧約9,410VDCで破壊することがわかった。
【0191】
表17は、CPC6フィルムの20箇所における絶縁破壊強度を示す。
【0193】
これらの結果から、CPC1フィルムの平均絶縁破壊強度は840V/μmを上回り、標準偏差は130V/μmであり、平均電圧約9,360VDCで破壊することがわかった。本発明に準拠して製造したフィルムは、好都合なことに、厚みが0超〜7μm未満であり、厚みの変動が前記フィルム厚の±10%以下であり、光学的形状測定法で測定した平均表面粗さが前記フィルムの平均厚の±3%未満であり;1KHzおよび室温での誘電率が少なくとも2.7であり;1kHzおよび室温での散逸率が1%以下であり;絶縁破壊強度が少なくとも300V/μmである。
【0194】
引用された特許、特許出願および他の参考文献はすべて、参照により本明細書に援用される。
【0195】
好適な実施形態を参照して本発明を詳細に説明したが、他の変形も可能である。従って、添付の請求項の趣旨と範囲は、本明細書に含まれる実施形態の説明に限定されるべきではない。