特許第6546985号(P6546985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6546985中性子遮蔽体、中心柱、ダイバータ及びコンパクト核融合炉と、超硬質カーバイド又はボライド合金の、核融合炉用の中性子遮蔽体としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546985
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】中性子遮蔽体、中心柱、ダイバータ及びコンパクト核融合炉と、超硬質カーバイド又はボライド合金の、核融合炉用の中性子遮蔽体としての使用
(51)【国際特許分類】
   G21F 1/08 20060101AFI20190705BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20190705BHJP
   G21B 1/11 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   G21F1/08
   G21F3/00 N
   G21B1/11 A
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-501694(P2017-501694)
(86)(22)【出願日】2015年7月7日
(65)【公表番号】特表2017-524928(P2017-524928A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】GB2015051961
(87)【国際公開番号】WO2016009176
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2018年6月12日
(31)【優先権主張番号】1412540.5
(32)【優先日】2014年7月15日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1505156.8
(32)【優先日】2015年3月26日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512317995
【氏名又は名称】トカマク エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】キンガム、 デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】スミス、 ジョージ
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/030554(WO,A1)
【文献】 カナダ国特許出願公開第02700614(CA,A1)
【文献】 特開昭53−124102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21B 1
G21F 3
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核融合炉用の中性子遮蔽体であって、
結合剤及び凝集体を含む超硬質カーバイド又はボライド合金を含み、
前記凝集体は、タングステン、タンタル及び/又はハフニウムのカーバイド又はボライド化合物の粒子を含み、前記超硬質カーバイド又はボライド合金の組成は、前記超硬質カーバイド又はボライド合金の厚さにわたって変化する中性子遮蔽体。
【請求項2】
前記結合剤は金属を含む請求項1に記載の中性子遮蔽体。
【請求項3】
前記カーバイド又はボライド化合物はタングステンカーバイド、タングステンボライド、三元タングステンボロカーバイドの一以上である請求項1又は2に記載の中性子遮蔽体。
【請求項4】
前記超硬質カーバイド又はボライド合金のプラズマに面する側は、前記超硬質カーバイド又はボライド合金のプラズマに面しない側よりも中性子吸収材料の比率が低い請求項に記載の中性子遮蔽体。
【請求項5】
前記結合剤は鉄及び/又はクロムを含む請求項1からのいずれか一項に記載の中性子遮蔽体。
【請求項6】
前記超硬質カーバイド又はボライド合金はコバルト又はニッケルを含まない請求項1からのいずれか一項に記載の中性子遮蔽体。
【請求項7】
核融合炉用の中心柱であって、
請求項1からのいずれか一項に記載の中性子遮蔽体と、
超伝導材料のコアと
を含み、
前記中性子遮蔽体は、前記超伝導材料を中性子による加熱及び損傷から保護するべく構成される中心柱。
【請求項8】
コンパクト核融合炉であって、
トロイダルプラズマチャンバと、
プラズマを前記トロイダルプラズマチャンバに閉じ込める磁場を生成するべく構成されたプラズマ閉じ込めシステムと
を含み、
前記プラズマ閉じ込めシステムは、閉じ込められたプラズマの大半径が1.5m以下、かつ、前記プラズマのアスペクト比が2.5以下となるように構成され、
前記コンパクト核融合炉の敏感なコンポーネントへの中性子による損傷を防止するべく使用される前記中性子遮蔽体は、請求項1からのいずれか一項に記載の中性子遮蔽体であるコンパクト核融合炉。
【請求項9】
核融合炉用のダイバータであって、
結合剤及び凝集体を含む超硬質カーバイド又はボライド合金を含み、
前記凝集体は、タングステン、タンタル又はハフニウムのカーバイド又はボライド化合物の粒子を含み、
前記超硬質カーバイド又はボライド合金の組成は、前記超硬質カーバイド又はボライド合金の厚さにわたって変化するダイバータ。
【請求項10】
超硬質カーバイド又はボライド合金の、核融合炉用の中性子遮蔽体としての使用であって、
前記超硬質カーバイド又はボライドは結合剤及び凝集体を含み、
前記凝集体は、タングステン、タンタル又はハフニウムのカーバイド又はボライド化合物の粒子を含み、
前記超硬質カーバイド又はボライド合金の組成は、前記超硬質カーバイド又はボライド合金の厚さにわたって変化する使用。
【請求項11】
前記結合剤は金属を含む請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記カーバイド又はボライド化合物はタングステンカーバイド、タングステンボライド、三元タングステンボロカーバイドの一以上である請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記超硬質カーバイド又はボライド合金のプラズマに面する側は、前記超硬質カーバイド又はボライド合金のプラズマに面しない側よりも中性子吸収材料の比率が低い請求項10に記載の使用。
【請求項14】
前記結合剤は鉄及び/又はクロムである請求項10から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記超硬質カーバイドはコバルトもニッケルも含まない請求項10から14のいずれ一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核融合炉用の中性子遮蔽材料に関する。詳しくは、ただし排他的ではなく、本発明は、コンパクト球状トカマク炉に使用される遮蔽体に関する。
【背景技術】
【0002】
核融合パワーを生成するという課題は非常に複雑である。核融合中性子は、ジュウテリウム・トリチウム(D−T)又はジュウテリウム・ジュウテリウム(D−D)プラズマが、当該原子核がともに融合する程度まで非常にホットとなって高エネルギー中性子を放出する場合に生成される。現在のところ、これを達成する最も有望な方法は、トカマクを使用することである。従来型トカマクの核融合へのアプローチ(ITERにより実施されている)において、プラズマは、このプロセスを最適化するべく長い閉じ込め時間、高温及び高密度を有する必要がある。
【0003】
トカマクは、核融合が生じ得るホットな安定プラズマを生成するべく、強いトロイダル磁場B、高いプラズマ電流I、並びに通常は大きなプラズマ体積及び著しい補助加熱を特徴とする。補助加熱(例えば高エネルギーのH、D又はTの数十メガワットの中性ビーム入射による)は、核融合が生じ及び/又はプラズマ電流を維持するのに必要な十分高い値にまで温度を増加させる必要がある。
【0004】
問題なのは、一般に必要とされる大型サイズ、大きな磁場及び高いプラズマ電流ゆえに建設コスト及び維持コストが非常に高くなり、磁石システム及びプラズマ双方に存在する当該大きな貯蔵エネルギーに対処するべく、工学技術に非常な忍耐力が必要となることである。プラズマは、「ディスラプション」、すなわちメガアンペア電流が猛烈な不安定性において数千分の1秒でゼロまで低減すること、を引き起こす傾向がある。
【0005】
この状況は、従来型トカマクのドーナツ状トーラスをその限界にまで収縮させ、芯のあるリンゴの外観を有する「球状」トカマク(ST)とすることによって改善することができる。CulhamのSTARTトカマクにおける当該概念の最初の実現が、膨大な効率増加を実証した。ホットなプラズマを閉じ込めるのに必要な磁場を10分の1まで低減することができる。加えて、プラズマ安定性が改善され、建設コストも低減される。
【0006】
特許文献1は、中性子源又はエネルギー源として使用するコンパクト球状トカマクを記載する。球状トカマクの設計において考慮すべき重要なことは、核融合反応により生成される高中性子束から炉コンポーネントを保護することである。これは、小型トカマクにおいては、中性子束(すなわち単位面積当たりの中性子の流れ)が一般に、プラズマ容器の小さな表面積対体積比ゆえに高くなるので、特に重要となる。
【0007】
本願は、非常にコンパクトなトカマク形態に基づいており、高温超伝導磁石の使用を含む一定範囲の革新的な特徴を用いる。「高効率コンパクト核融合炉」(ECFR)は、コンパクトな核融合発電プラントを与えることを意図する。図1は、かかる炉の模式図である。プラズマ(11)は、トロイダル磁場コイル(13)及びポロイダル磁場コイル(図示せず)が生成する磁場によって真空容器(12)の中に閉じ込められる。トロイダル磁場コイルは、プラズマチャンバの中心にある中心柱(14)を降りるように走る。
【0008】
STの欠点は、中心柱の限られた空間により、中性子環境にある中心巻線を保護するべく必要な実質的な遮蔽体の設置が禁じられることにある。これにより、従来型トロイダル磁場巻線及び従来型中心ソレノイド(プラズマ電流を誘導かつ維持するべく使用される)が実用的でなくなる。STに基づく発電プラントが(限られた遮蔽体を伴う中実の銅中心ポストであって毎年又は中性子による損傷時に変更される中心ポストを使用して)設計されているが、当該プラントは、暖められた銅の相対的に高い抵抗に起因する中心柱での高エネルギー散逸を有するので、発電を経済的にするべく大きな装置が要求される。
【0009】
超伝導材料は中心コアに使用し得るが、かかる材料は中性子から受ける損傷に対して脆弱なので、当該材料がもはや超伝導でなくなるほど損傷が蓄積すると破滅的な故障となり得る。したがって、中心コアの全体サイズと、超伝導材料の断面積(これは、超伝導体を通ることができる最大電流に関連する)と、遮蔽体の厚さとの間にはトレードオフが存在する。
【0010】
炉が可能な限りコンパクトとなること(これは高効率を許容する)を保証するべく、遮蔽体の厚さを可能な限り低減する一方で、他のコンポーネントに対しては依然として十分な保護を維持しておく必要がある。プラズマと磁場コイルとの間の距離を最小限にすることにより、コイルは低電流のまま、プラズマには高磁場が許容される。
【0011】
図2は、中心柱の断面を示すとともに、遮蔽材料が克服すべき問題を例示する。中心柱(13)は、HTSコイル(21)の中心コア、及び遮蔽体(22)の外側層を含む。遮蔽体に使用される材料に応じて、外側面には酸化遮蔽材料(23)の層が存在し得る。プラズマに由来する損傷には3つの主要原因がある。一つ目は、核融合反応から生成される高エネルギー中性子が、遮蔽体の構造材から実質的に原子をたたき出し、当該材料を通って伝播する損傷カスケードをもたらすことである。2つ目は、核融合反応からの熱流束が著しく、不均一加熱により誘起される熱応力ゆえ遮蔽体に、及びHTSコアに損傷が与えられることである。超伝導性を維持しながら流れることのできる電流が高温により低減するので、コイルが抵抗を突然得ることとなって磁石のクエンチを引き起こすことがある。最後は、プラズマのエネルギー粒子が、遮蔽体の外側面にアブレーションを与えることである。これは、遮蔽体自体に損傷を引き起こすのみならず、プラズマの汚染ももたらし得る。望ましいのは、これらの影響に耐性のある遮蔽材料を得るとともに、中性子が超伝導コイルに到達しないようにすることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2013/030554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
コンパクト球状トカマクに遮蔽体を設けるという課題が、本明細書では、中性子遮蔽に使用され得る代替材料を提案することによって対処される。球状トカマクの最も空間重要度の高い領域であるがゆえに中心柱のための遮蔽体に焦点が当てられるが、本開示は、炉の他のコンポーネントとともに使用するべく容易に適合され得ることが見込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1側面によれば、核融合炉用の中性子遮蔽体であって、超硬質カーバイド又はボライド合金を含む中性子遮蔽体が与えられる。当該合金は、結合剤と、タングステン、タンタル又はハフニウムのカーバイド又はボライド化合物の粒子を含む凝集体とを含む。
【0015】
さらなる側面によれば、核融合炉用の中心柱であって、第1側面に係る中性子遮蔽体と、超伝導材料のコアとを含む中心柱が与えられる。中性子遮蔽体は、当該超伝導材料を、中性子による加熱及び損傷から保護するように構成される。
【0016】
なおもさらなる側面によれば、コンパクト核融合炉が与えられる。炉は、トロイダルプラズマチャンバと、当該プラズマチャンバにプラズマを閉じ込める磁場を生成するように構成されたプラズマ閉じ込めシステムとを含む。プラズマ閉じ込めシステムは、閉じ込められるプラズマの大半径が1.5m以下、かつ、当該プラズマのアスペクト比が2.5以下となるように構成される。感受性の高い炉コンポーネントに対する中性子による損傷を防止するべく使用される中性子遮蔽体は、第1側面に係る中性子遮蔽体である。
【0017】
なおもさらなる側面によれば、核融合炉用のダイバータであって、超硬質カーバイド又はボライド合金を含むダイバータが与えられる。当該合金は、結合剤と、タングステン、タンタル又はハフニウムのカーバイド又はボライド化合物の粒子を含む凝集体とを含む。
【0018】
なおもさらなる側面によれば、超硬質カーバイド又はボライド合金の、核融合炉用の中性子遮蔽体としての使用が与えられる。超硬質カーバイド又はボライド合金は、結合剤と、タングステン、タンタル又はハフニウムのカーバイド又はボライド化合物の粒子を含む凝集体とを含む。
【0019】
さらなる側面及び好ましい特徴が、添付の特許請求の範囲に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】球状トカマク炉の模式図である。
図2】炉遮蔽体の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
核融合炉における遮蔽体としての使用に適したものとするべく材料に必要なのは、核融合エネルギー中性子の吸収の良好性、熱衝撃への耐性、スパッタリング及びプラズマアブレーションへの耐性、中性子による損傷への耐性である。これらの特性すべてを有するように思われる本明細書で使用が提案される2つのクラスの材料は、超硬質カーバイド合金及び超硬質ボライド合金である。
【0022】
超硬質カーバイド合金は、カーバイド粒子が凝集体として作用して金属結合剤がマトリックスとして機能する金属マトリックス複合材である。超硬質カーバイド合金は、結合剤が液体となるがカーバイド粒子は固体のままである点まで材料が加熱される焼結処理によって形成される。これにより、カーバイド粒子は、液体の結合剤に埋め込まれ、その後、硬化が許容される。その結果、カーバイド又は結合剤いずれかが単独で呈する品質よりも優れた品質の材料が得られる。延性の結合剤がカーバイドセラミックの自然脆性を相殺するので、得られる複合材は、カーバイド粒子によって結合剤単独よりもずっと固い複合材となる。金属結合剤ゆえに、超硬質カーバイドは典型的に、高い熱伝導性を有する。これにより、加熱の不均一性に起因して材料が受ける熱応力が低減される。超硬質カーバイド又はボライド合金の線熱膨張係数は典型的に、4〜5×10−6の範囲である。超硬質合金材料はまた、スパッタリング(エネルギー粒子による材料の外側面のアブレーション)に耐性がある。例えば、超硬質タングステンカーバイド合金は典型的に、スパッタリング速度が、純粋タングステンのスパッタリング速度の4分の1である。
【0023】
超硬質ボライド合金も同等であるが、カーバイドではなくボライド粒子が凝集体として使用される。ボロカーバイド粒子も使用できる。
【0024】
カーバイド/ボライド及び結合剤の選択は、炉における条件によって導かれる。高中性子束に耐える必要性により、中性子にさらされることにより放射化されるコバルト及びニッケルのような多くの元素及び同位体の使用が回避される。高磁場ゆえに、結果的な力が炉内で大きな応力を引き起こす強磁性材料が使用される場合には、構造的検討を考慮する必要がある。同様の配慮が、カーバイドの選択でも生じる。さらに、材料が、遮蔽の裏にあるコンポーネントに到達する中性子束を低減できるようにしなければならないことは当然である。炭素は本来的に、核分裂中性子を減速させる減速材として作用し、使用され得る他の元素における選択の自由度を高める(多くの元素は高速中性子よりも低速中性子の有効な吸収体となるからである)。ボロン10は、有効な中性子吸収体である。
【0025】
カーバイドの有望な候補は、中性子吸収が好ましく機械的特性が十分に研究されているタングステンカーバイド、タングステンボライド、及びボロンカーバイドである。ボロンカーバイドは、炭素の減速特性とボロンの中性子吸収とを組み合わせる。多数のカーバイドを、材料の構造特性と中性子特性とをバランスさせるように使用することができる。さらに、超硬質合金材料には、カーバイドのほかに、他の成分を加えてもよい。例えば、遮蔽体にボロンを導入するべく、カーバイドが支配的な複合材にボライドを加えてよく、又はボライドが支配的な複合材にカーバイドを加えてもよい。タングステンボライドを超硬質タングステンカーバイドに加えることで、腐食への抵抗を高めることができる。使用可能なボロカーバイドは、タングステンボロカーバイド、詳しくは三元タングステンボロカーバイドを含む。当該材料に添加可能な他の成分は、酸化物及び窒化物を含み、例えば、材料の構造特性を改善するべくチタンナイトライドを添加してよい。
【0026】
タングステンカーバイド又はタングステンボロカーバイドの他の代替物には、周期律表の第3長列(又はそれを超える列)に対応する元素のボライド及び/又はカーバイドが含まれる。これらの元素の融点は、第3周期全体にわたって増加し、第6族(タングステン)がピークとなる。したがって、主な候補元素は、ハフニウム、タンタル、タングステン及びレニウムとなる。白金族金属も理論的には中性子遮蔽体に適するが、オスミウム化合物の毒性が高いことと、イリジウム及び白金のコストが法外に高いこととを理由として、あまり有用ではないとみなされている。レニウムもまた、非常に高価かつ希少である。したがって、最も可能性の高い3候補は、ハフニウム、タンタル及びタングステンとなる。これらのうち、タングステン(その化合物を含む)は最も安価かつ広く入手可能であり、粉末法による処理が容易である。
【0027】
タンタルは、タングステンよりも延性及び靭性に優れ、(例えば溶接による)形成及び接合が容易であり、酸化抵抗性が良好である。しかしながら、希少な材料なので購入するには非常に高価な上、核融合エネルギー中性子の照射にさらされると、タングステンよりもはるかに放射性となる。その活性は、約100年でタングステンのレベル未満に減衰するが、これは許容できないほどの長時間である。ハフニウムも有用である。ハフニウムジボライドは、耐火性が高く、良好な酸化抵抗性を有する。ハフニウムは極めて希少であるが、原子力産業用ジルコニウムの生産の副生成物として入手できる。
【0028】
球状トカマクにおいて重要なのは、空間の制限上、タングステン(又は、ハフニウム若しくはタンタルのような周期律表の第3長列からの他元素)が豊富な遮蔽材料を使用することである。これはさらに、(タングステンの酸化は発熱性であり、その酸化物は揮発性であるため)酸化及び腐食への抵抗性の点で重大な問題をもたらす。ボライド(及び/又はシリサイド)をタングステン又はタングステンカーバイド系遮蔽体に組み入れることが、この問題への対処に役立つ。
【0029】
遮蔽体の組成には段階をつけることができる。例えば、遮蔽体の外側(すなわちプラズマに面する)領域を、腐食及びアブレーションへの抵抗性を高めるように形成する一方、内側領域は、構造特性又は熱輸送を高めるように構成することができる。これは、例えば、遮蔽体の外側(すなわちプラズマに面する側)に向かって中性子減速材料の濃度を高くし、かつ、遮蔽体の内側に向かって中性子吸収材料の濃度を高くすることにより、遮蔽体の効率を高めるように使用することができる。このようにして、中性子が最も低速となる場所に中性子吸収体が配置されると、当該吸収体は最も高効率となる。このように細かく段階をつけた構造は、従来型の合金技術によっては不可能ではないにしても達成困難であり、超硬質合金材料の使用にさらなる利点をもたらす。
【0030】
超硬質カーバイド又はボライド合金の製造プロセスによれば、複雑な構造を、他の材料からの製造と比べて相対的に容易に作ることができる。例えば、冷却材が流れる孔を有する遮蔽体を単純に構築することができる。さらに、超硬質カーバイド又はボライド合金は、ろう付け及び特殊溶接方法(例えば電子ビーム又はレーザ溶接)を含む様々な手法により、他の材料に接合することができる。これにより、全体的な炉システムを、例えば遮蔽体を炉の主要構造物に接合するべく製造するときに、かなりの利点が得られる。
【0031】
超硬質カーバイド/ボライド合金の使用の側面のいくつかは直観に反するように思えるかもしれないが、慎重に精査すれば、こうした側面が実際には問題を引き起こさないことがわかる。例えば、結合剤に使用される金属(有望な組み合わせは鉄とクロムである)は、炉の建設に使用される他の材料と比べて融点が相対的に低く、遮蔽体の複数部分を当該融点よりも上昇させることは考えられない。しかしながら、結合剤が溶融すると、カーバイド粒子は、当該結合剤を元通りに再凝固するまで一緒に保持する傾向がある。プラズマに面する側で結合剤が揮発するという極端な場合であっても、カーバイドは、遮蔽体の構造を維持する固体シェルを形成する(ただし、熱的性能は外側層において影響を受ける)。
【0032】
さらに、粉末カーバイド/ボライドの使用は、中性子工学的に好ましいほど均一の物質を生成しないように思えるかもしれない。しかしながら、中性子の平均自由行程は、超硬質合金材料のいずれの個別粒子の直径よりも実質的に大きいので、当該粉末のブレンドは「真の」合金と同一に作用する。中性子の平均自由行程は、超硬質カーバイドに使用される粒子サイズよりも一桁又は二桁大きい。
【0033】
超硬質カーバイド又はボライド合金はまた、同様の利点をもたらす他の炉領域、例えばダイバータ、にも使用できる。
【0034】
本発明が、上述のように好ましい実施形態に関して説明されたが、当該実施形態は例示にすぎないこと、特許請求の範囲が当該実施形態に限られないことを理解すべきである。当業者であれば、本開示に鑑みて添付の特許請求の範囲に該当すると考えられる修正及び代替を行うことができる。本明細書に開示又は例示された各特徴は、単独で、又はここに開示若しくは例示されたいずれかの他の特徴との任意の適切な組み合わせで、本発明に組み入れることができる。
図1
図2