特許第6547049号(P6547049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6547049
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】衛星電波腕時計
(51)【国際特許分類】
   G04R 60/12 20130101AFI20190705BHJP
   G04G 21/04 20130101ALI20190705BHJP
   G04C 9/00 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   G04R60/12
   G04G21/04
   G04C9/00 301A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-188460(P2018-188460)
(22)【出願日】2018年10月3日
(62)【分割の表示】特願2017-193409(P2017-193409)の分割
【原出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2019-49558(P2019-49558A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2018年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 健
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−64544(JP,A)
【文献】 特開2012−13627(JP,A)
【文献】 特開2011−208944(JP,A)
【文献】 特表2007−526985(JP,A)
【文献】 特開2002−9536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04R 60/12
G04C 9/00
G04G 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻情報を含む衛星電波を受信する、矩形の平面アンテナと、
平面視において、前記平面アンテナを囲繞する胴と、を備え、
前記平面アンテナの給電部は、前記平面アンテナの中心に対し、前記平面アンテナの各辺から前記胴までの平均距離が最も短い辺の側、又は、前記平均距離が最も短い辺の対辺の側に設けられ、
前記平面アンテナの中心に対し、少なくともモータ、水晶振動子、耐磁板のいずれかは、前記平面アンテナの中心を通り、前記平均距離が最も短い辺と平行な直線よりも、前記平均距離が最も短い辺の対辺の側に設けられる衛星電波腕時計。
【請求項2】
平面視において、少なくとも1つの指針軸と、前記平面アンテナの中心と、前記給電部とが直線上に配置される請求項1に記載の衛星電波腕時計。
【請求項3】
前記平均距離が最も短い辺と直交する2辺における前記胴までの平均距離の差異は、10%以下である請求項1又は2のいずれかに記載の衛星電波腕時計。
【請求項4】
前記給電部は、前記平面アンテナの側面上に設けられたストリップ電極であるか又は接続される請求項1乃至3のいずれかに記載の衛星電波腕時計。
【請求項5】
平面視において、少なくとも前記平面アンテナの中心と、前記給電部と、電池とが直線上に配置される請求項1乃至4のいずれかに記載の衛星電波腕時計。
【請求項6】
時刻情報を含む衛星電波を受信する、矩形の平面アンテナを備え、
前記平面アンテナの給電部は、前記平面アンテナの中心に対し、前記平面アンテナの各辺から少なくともモータ、水晶振動子、耐磁板のいずれかまでの距離が最も短い辺の側、又は、前記距離が最も短い辺の対辺の側に設けられる衛星電波腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛星電波腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)衛星等の測位システムに用いられる人工衛星からの電波(以降、衛星電波と称する。)を受信し時刻を修正する電波腕時計(以降、衛星電波腕時計と称する。)が提案されている。GPS信号に代表される測位信号には、正確な時刻情報が含まれるためである。
【0003】
衛星電波は電離層をまたぐ必要があるため極超短波を使用しており、受信には、極超短波の受信に適し、腕時計に収まる程度に小型で薄型のパッチアンテナ等の平面アンテナが用いられる場合があった。
【0004】
下記特許文献1には、金属製の胴内に平面アンテナを収容した衛星電波腕時計が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−208944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の衛星電波腕時計は、平面アンテナを用いて円偏波により衛星電波を受信するものである。しかしながら、平面アンテナが金属製の胴内で偏って配置されているため、平面アンテナに近接する金属部分の影響を受け、平面アンテナの受信感度を十分に高めることが難しい。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、平面アンテナによる受信感度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下の通りである。
【0009】
(1)時刻情報を含む衛星電波を受信する、矩形の平面アンテナと、平面視において、前記平面アンテナを囲繞する胴と、を備え、前記平面アンテナの給電部は、前記平面アンテナの中心に対し、前記平面アンテナの各辺から前記胴までの平均距離が最も短い辺の側、又は、前記平均距離が最も短い辺の対辺の側に設けられ、前記平面アンテナの中心に対し、少なくともモータ、水晶振動子、耐磁板のいずれかは、前記平面アンテナの中心を通り、前記平均距離が最も短い辺と平行な直線よりも、前記平均距離が最も短い辺の対辺の側に設けられる衛星電波腕時計。
【0010】
(2)(1)において、平面視において、少なくとも1つの指針軸と、前記平面アンテナの中心と、前記給電部とが直線上に配置される衛星電波腕時計。
【0011】
(3)(1)又は(2)において、前記平均距離が最も短い辺と直交する2辺における前記胴までの平均距離の差異は、10%以下である衛星電波腕時計。
【0012】
(4)(1)乃至(3)のいずれかにおいて、前記給電部は、前記平面アンテナの側面上に設けられたストリップ電極であるか又は接続される衛星電波腕時計。
【0013】
(5)(1)乃至(4)のいずれかにおいて、平面視において、少なくとも前記平面アンテナの中心と、前記給電部と、電池とが直線上に配置される衛星電波腕時計。
【0014】
(6)時刻情報を含む衛星電波を受信する、矩形の平面アンテナを備え、前記平面アンテナの給電部は、前記平面アンテナの中心に対し、前記平面アンテナの各辺から少なくともモータ、水晶振動子、耐磁板のいずれか1つまでの距離が最も短い辺の側、又は、前記距離が最も短い辺の対辺の側に設けられる衛星電波腕時計。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明の(1)の側面によれば、モータ、水晶振動子、及び耐磁板が設けられる場合であっても、平面アンテナの受信感度を高めた衛星電波腕時計が得られる。
【0016】
また、上記本発明の(2)の側面によれば、平面アンテナによる受信感度をさらに高めた衛星電波腕時計が得られる。
【0017】
また、上記本発明の(3)の側面によれば、平面アンテナによる受信感度をさらに高めた衛星電波腕時計が得られる。
【0018】
また、上記本発明の(4)の側面によれば、容量結合型の平面アンテナを設ける場合であっても、平面アンテナの受信感度をさらに高めた衛星電波腕時計が得られる。
【0019】
また、上記本発明の(5)の側面によれば、電池が平面アンテナに近接して設けられる場合であっても、平面アンテナの受信感度を高めた衛星電波腕時計が得られる。
【0020】
また、上記本発明の(6)の側面によれば、モータ、水晶振動子、及び耐磁板が平面アンテナに近接して設けられる場合であっても、平面アンテナの受信感度を高めた衛星電波腕時計が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る衛星電波腕時計を示す図である。
図2】パッチアンテナの配置を示す図である。
図3】面実装型パッチアンテナの構造を示す斜視図である。
図4】パッチアンテナと胴との距離関係を示す図である。
図5】パッチアンテナと、モータ、水晶振動子、及び耐磁板との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る衛星電波腕時計1を示す図である。衛星電波腕時計1は、胴10、文字板12、竜頭14、第1のプッシュボタン16、第2のプッシュボタン18、時針20、分針22、秒針24、及びパッチアンテナ30を備えている。ここで、平面アンテナであるパッチアンテナ30は、文字板12の裏面(視認側と反対側の面)側に設けられている。
【0024】
胴10は、金属製である。衛星電波腕時計1が受信する衛星電波等の極超短波の電波は、導電体によって反射・吸収されるため、パッチアンテナ30を単純に胴10内に偏って配置すると、その受信面側の近傍に導電体が存在することとなり、受信感度が低下してしまう。そこで、本実施形態に係る衛星電波腕時計1は、パッチアンテナ30を単純に胴10内に偏って配置しつつ、その受信感度の低下を最小限に抑えるため、以下に示す種々の構造を有している。
【0025】
胴10に囲まれる文字板12、時針20、分針22、及び秒針24は、図示しない風防で覆われる。風防は、ガラス等の絶縁材料で形成され、パッチアンテナ30の受信感度にはほとんど影響しない。同様に、文字板12も絶縁材料、例えば、各種の合成樹脂、セラミックス、又は貝等の生体鉱物で形成され、パッチアンテナ30の受信感度に影響を及ぼさない。時針20、分針22及び秒針24についても同様に絶縁材料で形成することが受信感度の点からは望ましいが、これらを金属等の導電性材料で形成する場合には、パッチアンテナ30の受信感度に重大な影響を及ぼさないようにそのサイズや配置高さが定められる。すなわち、パッチアンテナ30の受信感度に重大な影響を及ぼさないようそのサイズを小さいものとしたり、パッチアンテナ30の受信面から十分離れた位置に配置したりする配慮がなされる。
【0026】
本実施形態に係る衛星電波腕時計1はアナログ時計であり、3時、6時、9時、及び12時を示す時字が文字板12に描かれ、時針20、分針22、及び秒針24の回転位置により、時分秒を表示するものである。衛星電波腕時計1のユーザは、竜頭14を回転し、第1のプッシュボタン16及び第2のプッシュボタン18を押下することで、時刻合わせをはじめとする各種操作を行うことができる。また、衛星電波腕時計1は、GPS衛星等より送信される衛星信号に含まれる日付や時刻に関する情報に基づき時刻合わせを行うことができる。
【0027】
本実施形態に係る衛星電波腕時計1は、文字板12の中心に時針20、分針22、及び秒針24の回転軸を有する。そのため、パッチアンテナ30は、胴10の中心に配置することはできず、胴10内で偏って配置され、それによりパッチアンテナ30の近傍に導電体が存在する。
【0028】
なお、本実施形態に係る衛星電波腕時計1は、指針として時針20、分針22、及び秒針24を有するものであるが、その他に各種の表示を行う補助指針、例えば24時間表示やパワーリザーブを設けてもよい。
【0029】
なお、図1に示した衛星電波腕時計1のデザインは一例にすぎない。ここで示したもの以外にも、例えば、衛星電波腕時計1の外形形状を、丸型でなく角型にしてもよい。また、文字板22に日窓を設けて日付や曜日を表示することとしてもよい。
【0030】
なお、本明細書では、衛星電波腕時計という用語を、腕時計であって、かつ、GPS衛星等からの衛星信号を受信し、当該衛星信号に含まれる日付や時刻に関する情報に基づき、腕時計内部に保持している時刻の情報である内部時刻を修正する機能を有している腕時計を指すものとして用いる。
【0031】
図2は、衛星電波腕時計1を視認側(図1で示した側)とは反対側から見た場合の図であり、パッチアンテナ30の配置を示す図である。ただし、衛星電波腕時計1の内部構造を示すため、裏蓋を取り外した状態を示している。図2では、胴10に囲繞されるパッチアンテナ30、電池40、電池押さえ42、電池ケース44、リード板46、指針軸50、及び外枠52を示している。ここで、点線で示すパッチアンテナ30は、平面視においてリード板46に隠れる位置に配置される。また、点線で示す指針軸50は、電池押さえ42及び電池40に隠れる位置に配置される。なお、指針軸50としては、ここでは時針20を駆動するいわゆる筒車の筒部分の外形を示した。本実施形態では、分針22及び秒針24の駆動軸はかかる筒車内を貫通する様に同軸に設けられる。
【0032】
本実施形態におけるパッチアンテナ30は、いわゆる面実装型のパッチアンテナであり、図3に示すように、セラミックス等の適宜の誘電体により形成された扁平な直方体形状のボディ36の上面に矩形の放射電極38が形成され、またボディ36の下面には1の給電電極32と、7か所のグラウンド電極34が形成されている。給電電極32は、辺E1側のボディ36の側面に設けられたストリップ電極33と連続して繋がっている。そして、ストリップ電極33は辺E1の中央部において放射電極38と近接し容量結合している。したがって、放射電極38により受信された衛星電波は、かかる容量結合を介してストリップ電極33に伝達され、給電電極32より取り出すことができる。また、ボディ36の下面には、放射電極38に対する対向電極として、下面のほぼ全面を覆うベタ電極が形成され、さらに当該ベタ電極の一部を露出するようなパターンを有する絶縁膜が設けられるが、グラウンド電極34は、露出しているベタ電極の一部であり、互いに電気的に接続している。
【0033】
なお、ここで辺E1〜E4は、放射電極38の各辺または、放射電極38と同じ高さにおけるボディ36の各辺を示すものとする。本実施形態では、放射電極38と同じ高さにおけるボディ36の各辺を示す。また、給電電極32を直接ボディ36の側面に設け、すなわち、ストリップ電極33を給電電極32として用いて、側面実装の手法により給電電極32と実装基板とを接続するようにしてもよい。
【0034】
図2に戻り、パッチアンテナ30は、耐磁板46の更に視認側に配置される回路基板であるアンテナ基板上に、放射電極38が視認側(文字板12側)を向くように実装される。このとき、平面視において、パッチアンテナ30の給電電極32は、パッチアンテナ30の平面視における中心C30に対し、辺E1側に設けられる。辺E1は、パッチアンテナ30の有する4辺(辺E1、E2、E3、E4)のうち、胴10までの平均距離が最も短い辺である。パッチアンテナ30の辺から胴10までの平均距離については、図4によって詳細に説明する。
【0035】
パッチアンテナ30の受信面、すなわち放射電極38に極超短波の衛星電波等が入射すると、受信面に誘起された電流は、容量結合を介してストリップ電極33、さらには給電電極32へと伝達される。このとき、一般に衛星電波として用いられる極超短波には円偏波が用いられており、通常はかかる極超短波を受信するアンテナもまた、円偏波の受信に適したものとされる。例えば、本実施形態のようにパッチアンテナ30を用いるのであれば、その受信特性は円偏波に適したものとされ、辺E1〜E4の各辺それぞれにおける受信感度に偏りが無いように設計される。
【0036】
ところが、図2に示すように、金属製の胴10内にパッチアンテナ30を偏って配置すると、胴10と近い位置に配置される辺、ここでは辺E1は金属部材の強い影響を受け、その受信感度は著しく低下する。電池40と近接して配置される辺E2についても同様であり、円偏波用に設計されたパッチアンテナ30ではその受信感度の低下は免れないことになる。
【0037】
ここで、パッチアンテナ30の設計として、その給電部の位置をパッチアンテナ30の中心C30から特定の辺の側に偏った位置に配置し、受信特性として直線偏波を得られるように電極形状を設計すると、その受信感度は、給電部が近接して配置された辺では低下し、かかる辺に直交する辺において高くなる。本実施形態では、給電電極32が辺E1側に偏って配置され、その受信特性が直線偏波を示すよう電極設計がなされる結果、辺E1の受信感度は低下する半面、辺E1と直交する辺E3及びE4において受信感度が高くなる。なお、辺E1と対向する辺E2においてもその受信感度は低下する。
【0038】
すなわち、本実施形態では、意図的に給電部の位置をパッチアンテナ30の中心C30から辺E1の側に偏った位置に配置し、直線偏波特性が得られるよう電極設計することにより、胴10及び電池40による干渉を受けるため衛星電波の受信に寄与しにくい辺E1及びE2の受信感度を下げ、金属部材による干渉を受けにくい辺E3及びE4の受信感度を上げることにより、全体としてパッチアンテナ30の受信感度を向上させているのである。
【0039】
したがって、本実施形態に係るパッチアンテナ30は直線偏波の受信に適したものである。本実施形態ではパッチアンテナ30の平面形状は略正方形であるが、長方形のものであってもよい。また、パッチアンテナ30、特に放射電極38には、円偏波特性を得るための構造、例えば角における切り欠きは設けないようにする。
【0040】
以上の議論から明らかなように、給電電極32を、辺E1側ではなく、辺E2側に設けることとしてもよい。その場合であっても、パッチアンテナ30は、辺E3及びE4において直線偏波に対し高い受信感度を有することとなり、給電電極32を、辺E1側に設けた場合と同様の受信感度を得ることができる。なお、辺E2は、パッチアンテナ30の各辺から胴10までの平均距離が最も短い辺(辺E1)の対辺となっている。
【0041】
また、図2には、指針軸50と、パッチアンテナ30の中心C30と、給電電極32との位置関係を示すために、直線L1を仮想的に描いている。平面視において、指針軸50と、パッチアンテナ30の中心C30と、給電電極32とは、1つの直線L1上に配置される。すなわち、指針軸50と、パッチアンテナ30と、給電電極32とは、パッチアンテナ30の中心C30を通る直線L1が、平面視において、指針軸50及び給電電極32と交わるように配置されている。
【0042】
このような構成を採用することで、パッチアンテナ30の辺E3から胴10までの平均距離と、辺E4から胴10までの平均距離とが同程度となる。そのため、辺E3側と辺E4側とにおいてパッチアンテナ30で受信される衛星電波に対する胴10の影響が同程度となり、パッチアンテナ30の受信面に誘起される電流の対称性が向上するため、衛星電波の受信感度が向上する。
【0043】
また、衛星電波腕時計1は、各種電装品の電源となる電池40を備えている。すなわち、衛星電波を受信するための高周波回路、衛星電波腕時計1全体の制御を行う制御回路指針を駆動するモータその他の機器は、電池40より電源を得ている。電池40は、ここではボタン型の電池であり、例えばリチウム電池等の1次電池や、リチウムイオン電池等の2次電池であってよい。電池40として2次電池を使用する場合には、衛星電波腕時計1は、適宜の電力生成機器、例えば太陽電池を備えたものとすることが望ましい。
【0044】
電池40は少なくとも外装は導電体である金属に覆われているため、パッチアンテナ30の近傍に配置することにより、先ほど説明した胴10の場合と同様に、その受信感度に影響を与える。そこで、本実施形態では、電池40を、パッチアンテナ30に対し、パッチアンテナ30の辺E2側に設けている。このような配置とすることで、直線偏波で衛星電波を受信するパッチアンテナ30の辺E3及びE4近傍に良導体が配置されることはなく、電池40の近傍となる辺E2は先ほど説明したように受信感度が低いため、電池40によるパッチアンテナ30全体としての衛星電波の受信感度への影響はごく限られたものとなる。
【0045】
ここで、さらに電池40を、その中心C40が直線L1と交わるように配置することが好ましい。すなわち、パッチアンテナ30の中心C30及び指針軸50の中心C50を通る直線が、給電電極32と交わり、かつ、電池40の中心C40を通ることが好ましい。このような構成を採用することで、衛星電波に対する電池40の影響が、辺E3側と辺E4側とでほぼ等しくなり、パッチアンテナ30の受信面に誘起される電流の対称性が維持されるため、パッチアンテナ30による衛星電波の受信感度がさらに向上する。
【0046】
図4は、パッチアンテナ30と胴10との距離関係を示す図である。図4は、図2と同様に、衛星電波腕時計1を裏蓋側から見た場合の図である。図4には、パッチアンテナ30と胴10との距離関係を説明するため、仮想的にX軸及びY軸を図示している。X軸は、紙面の左から右に向かう軸であり、Y軸は、紙面の上方から下方に向かう軸である。
【0047】
はじめに、パッチアンテナ30の辺E1から胴10までの平均距離d1avを考える。ここで、辺E1上の任意の点から胴10までの距離を、当該点から辺E1に垂直に伸ばし、胴10の内側側面と交わる線分の長さとし、当該点のX軸上の座標xを用いて、d1(x)と表す。図4には、辺E1の中心を例として、距離d1(x)を具体的に示している。
【0048】
辺E1から胴10までの平均距離d1avは、辺E1から胴10までの距離d1(x)の辺E1全体における平均である。すなわち、辺E1の両端の座標をそれぞれx1、x2とすると(x1<x2)、d1av=∫x1→x2d1(x)dx/(x2−x1)となる。
【0049】
同様に、辺E3から胴10までの平均距離d3avは、辺E3から胴10までの距離d3(y)の辺E3全体における平均であり、辺E3の両端の座標をそれぞれy1、y2とすると(y1<y2)、d3av=∫y1→y2d3(y)dy/(y2−y1)で求められる量である。ここでも同様に、辺E3上の任意の点から胴10までの距離d3(y)は、辺E3上の当該点から辺E3に垂直に伸ばし、胴10の内側側面と交わる線分の長さである。
【0050】
以下同様に、辺E4から胴10までの平均距離d4avは、d4av=∫y1→y2d4(y)dy/(y2−y1)で求められ、距離d4(y)は辺E4上の任意の点から辺E4に垂直に伸ばし、胴10の内側側面と交わる線分の長さである。同じく、辺E2から胴10までの平均距離d2avは、d2av=∫x1→x2d2(x)dx/(x2−x1)で求められる。
【0051】
本実施形態で示したパッチアンテナ30の配置では、明らかなとおり、4辺のうちで辺E1から胴10までの平均距離が最も短く、辺E3から胴10までの平均距離と辺E4から胴10までの平均距離とはほぼ等しい。また、4辺のうちで辺E2から胴10までの平均距離が最も長い。
【0052】
d3avとd4avとは必ずしも等しいものでなくてもよく、|d3av−d4av|/d3av≦0.1、又は|d3av−d4av|/d4av≦0.1であればよい。すなわち、パッチアンテナ30の各辺から胴10までの平均距離が最も短い辺(辺E1)と直交する2辺(E3及びE4)における胴10までの平均距離の差異は、10%以下であればよい。そのような場合であれば、辺E3側と辺E4側とに誘起される電流の差異が十分に小さくなり、パッチアンテナ30の受信面に誘起される電流の対称性が向上するため、衛星電波の受信感度が向上する。
【0053】
図5は、パッチアンテナ30と、第1のモータ60、第2のモータ62、第3のモータ64、第4のモータ66、水晶振動子70、及び耐磁板80との位置関係を示す図である。図5は、図4と同様に、衛星電波腕時計1を裏蓋側から見た場合の図である。第1のモータ60、第2のモータ62、第3のモータ64、第4のモータ66、水晶振動子70、及び耐磁板80は、他の部品に隠れていて見えないため、点線でその外形及び位置を示している。また、図5には、パッチアンテナ30と各部品との位置関係を説明するため、仮想的に直線L2を描いている。
【0054】
第1のモータ60、第2のモータ62、第3のモータ64、及び第4のモータ66は、電池40を電源として駆動するステップモータであり、時針20、分針22、及び秒針34をはじめとする各種機器を駆動する。各モータは金属製の部品を含み、衛星電波を遮蔽する導電体となり得る。本実施形態に係る衛星電波腕時計1は4つのモータを有するが、モータ数は3以下であってもよいし、5以上であってもよい。
【0055】
水晶振動子70は、電池40を電源として、衛星電波腕時計1の内部時刻の基準となる周波数で発振する。水晶振動子70の発振周波数は、例えば32.768kHzであり、16ビットのカウンタがオーバーフローするタイミングを読み取ることで1秒をカウントする。水晶振動子70は、金属製の筒に収められており、衛星電波を遮蔽し得る。
【0056】
耐磁板80は金属製であり、第1のモータ60、第2のモータ62、第3のモータ64、第4のモータ66、及び水晶振動子70よりも裏蓋側(紙面手前側)に配置される。耐磁板80は、モータ等に対する外部磁場の影響を軽減する。同時に、耐磁板80は、衛星電波を遮蔽し得る。
【0057】
図5に示す平面視において、第1のモータ60、第2のモータ62、第3のモータ64、第4のモータ66、水晶振動子70、及び耐磁板80は、パッチアンテナ30の中心C30に対し、直線L2よりも辺E2側に設けられる。ここで、直線L2は、パッチアンテナ30の中心C30を通り、パッチアンテナ30の各辺から胴10までの平均距離が最も短い辺(辺E1)と平行な直線である。ここで、各部品を直線L2よりも辺E2側に設けるとは、平面視において各部品と直線L2が交わらないように、各部品をパッチアンテナ30の中心C30に対し辺E2側に設けることをいう。
【0058】
パッチアンテナ30は、辺E3及びE4に沿って誘起される電流によって直線偏波で衛星電波を受信するものであるが、誘起される電流は、辺E3及びE4の中心付近、すなわち辺E3及びE4と直線L2との交点付近、におけるものが主となる。そのため、辺E3及びE4の近傍の中でも、特に辺E3及びE4の中心近傍に導電体が配置されると、衛星電波の受信感度が著しく劣化してしまう。
【0059】
本実施形態では、上記の構成を採用することにより、衛星電波を遮蔽し得る第1のモータ60、第2のモータ62、第3のモータ64、第4のモータ66、水晶振動子70、及び耐磁板80を、辺E3及びE4の中心近傍を避けて配置することができる。これにより、衛星電波の受信に際し主たる寄与をする辺E3及びE4の中心近傍に導電体が配置されることがなくなり、衛星電波の受信感度が向上する。
【0060】
なお、本実施形態では、衛星電波腕時計1の外形形状を丸型としたが、同程度の寸法で角型とすると、パッチアンテナ30の辺E3及びE4から胴10までの平均距離がさらに大きくなり、衛星電波の受信感度はさらに向上する。
【0061】
また、本実施形態では、面実装型のパッチアンテナ30を設けることとしたが、ピン給電型のパッチアンテナを設けることとしてもよい。その場合、給電ピンは、平面視において、パッチアンテナの中心に対し、パッチアンテナの各辺から胴10までの平均距離が最も短い辺の側、又は、その対辺の側に設けることとすればよい。
【0062】
なお、本実施形態の効果の例としては、本実施形態に係る衛星電波腕時計1と、比較例としてパッチアンテナを本実施形態と同位置に、時計回りに90°回転させて配置した衛星電波腕時計をそれぞれ実際に制作したところ、本実施形態に係る衛星電波腕時計1では、パッチアンテナ30の受信感度がおおよそ5dB向上することが確認された。
【0063】
比較例では、給電電極が設けられる辺と直交する2辺が、どちらも大きな導電体(胴及び電池)と近接する。そのため、衛星電波は導電体によって遮蔽されるなどし、受信感度が著しく低下したものと考えられる。
【0064】
一方、本実施形態に係る衛星電波腕時計1によれば、直線偏波により電流が誘起される辺E3及びE4から胴10までの平均距離が十分大きいため、衛星電波への影響を大きく受けることが無く、良好な受信感度が得られる。
【0065】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、この実施形態に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0066】
1 衛星電波腕時計、10 胴、12 文字板、14 竜頭、16 第1のプッシュボタン、18 第2のプッシュボタン、20 時針、22 分針、24 秒針、30 パッチアンテナ、32 給電電極、33 ストリップ電極、34 グラウンド電極、36 ボディ、38 放射電極、40 電池、42 電池押さえ、44 電池ケース、46 リード板、50 指針軸、52 外枠、60 第1のモータ、62 第2のモータ、64 第3のモータ、66 第4のモータ、70 水晶振動子、80 耐磁板。
図1
図2
図3
図4
図5