(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該複数の第2の走査レンズは、主走査断面において、該入射面及び該出射面の曲率中心を結ぶ直線の近傍で負の屈折力を有し、周縁部で正の屈折力を有するように形成された請求項1から3のいずれかに記載の走査光学系。
第1の走査レンズの入射面及び出射面のそれぞれの曲率中心を原点とし、該入射面の曲率中心と該出射面の曲率中心を結ぶ直線をz軸とし、該入射面及び該出射面のz=0の点を含み、z軸に垂直な面内において互いに直交するx軸及びy軸を定め、第1の走査レンズは、該入射面及び該出射面のy軸を主走査方向とし、該入射面及び該出射面のx軸を副走査方向とするように配置され、該入射面及び該出射面の少なくとも一方のxz断面における形状がy=0に関して非対称である請求項1から4のいずれかに記載の走査光学系。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、バックフォーカスが短く、かつ、エネルギー効率の高い走査光学系に対するニーズがある。本発明の課題は、バックフォーカスが短く、かつ、エネルギー効率の高い走査光学系及びそれを実現するための走査レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様による走査光学系は、複数の光束が単一の偏向器に到達するように構成された入射光学系と、該偏向器によって偏向された該複数の光束のそれぞれが走査面に集光されるように構成された結像光学系と、を備えた走査光学系であって、該結像光学系は、該複数の光束が通過するように構成された第1の走査レンズと、該複数の光束のそれぞれが通過するように構成された複数の第2の走査レンズとを備える。該偏向器の回転軸と平行な方向を副走査方向とし、副走査方向を法線とする断面を主走査断面とし、該走査面上において集光された光束が走査によって移動する方向を主走査断面に投射した方向を主走査方向とし、主走査方向を法線とする断面を副走査断面として、該入射光学系は、該複数の光束のそれぞれが副走査断面において、該偏向器の面上の1点で反射するように構成されており、該複数の光束のそれぞれの主光線が、主走査断面において、該走査面に垂直に入射するときの該主光線の該偏向器における反射点を基準点とし、該基準点から該走査面までの距離をL、該複数の光束のうちの光束i(iは光束を識別する整数)について、光束iに対応する第2の走査レンズの出射面の曲率中心から該走査面までの距離をBFi、該第1の走査レンズの光束iについての屈折力をφ1s、第2の走査レンズの光束iについての屈折力をφ2siとして、
0.15 ≦ BFi/L ≦ 0.2 (1)
0.4 ≦ φ1si/φ2si ≦1 (2)
を満足する。
【0008】
本発明の第1の態様の走査光学系においては、BFiが小さいにもかかわらず、φ1si/φ2siを式(2)の範囲に定めることによって、結像光学系の副走査方向の横倍率(副倍率)mを大きくすることができる。これは、副走査方向において走査面における所望のビーム径を得るために、入射光学系に設置されたアパーチャの副走査方向の径(辺の長さ)を大きくすることにつながる。よって、エネルギー効率の高い光学系を達成することができる。式(2)の上限を設けた理由は、φ1siが大きくなり過ぎると、第1の走査レンズ通過後の複数の光束の間隔の確保が難しくなり、間隔を確保するために副走査断面における入射角を増加しなければならず、入射光学系が副走査方向に大きくなり小型な光学系を達成できなくなるからである。上記の副走査断面における入射角は、
図4及び
図5のθ
si及びθ
soであり、後で説明する。また、式(1)の下限を設けた理由は、走査レンズが走査面に近すぎると、走査レンズを通過する光束の径が小さくなり、レンズに発生しうる異物の影響度が大きくなり、歩留まりが悪化するからである。
【0009】
本発明の第1の態様の第1の実施形態による走査光学系において、該入射光学系は、該複数の発光素子からの該複数の光束のそれぞれをほぼ平行な光束とする複数のコリメータレンズと、コリメートされた複数の光束を該偏向器の面上に集光させるシリンドリカルレンズとを備え、該シリンドリカルレンズの焦点距離fcyが105ミリメータ以上であり、かつ140ミリメータ以下である。
【0010】
本実施形態の走査光学系においては、焦点距離の長いシリンドリカルレンズを用いることで、入射光学系に設置されたアパーチャの副走査方向の径(辺の長さ)を大きくすることができ、エネルギー効率を向上できる。また、焦点距離の上限値を設けた理由は、シリンドリカルレンズの焦点距離が大きくなり過ぎると、入射光学系が副走査方向に大きくなり小型な光学系が達成できなくなるからである。
【0011】
本発明の第1の態様の第2の実施形態による走査光学系において、該複数の第2の走査レンズは、主走査断面において、該入射面及び該出射面の曲率中心を結ぶ直線の近傍で負の屈折力を有し、周縁部で正の屈折力を有するように形成されている。
【0012】
一般的に、バックフォーカスが短い走査光学系においては、第2の走査レンズの主走査方向の長さが非常に大きくなり、レンズのコストが増加するおそれがある。第2の走査レンズを本実施形態のように形成することで偏肉比が小さく、薄い形状を実現でき、レンズのコストの低減につながる。
【0013】
本発明の第1の態様の第3の実施形態による走査光学系において、第1の走査レンズの入射面及び出射面のそれぞれの曲率中心を原点とし、該入射面の曲率中心と該出射面の曲率中心を結ぶ直線をz軸とし、該入射面及び該出射面のz=0の点を含み、z軸に垂直な面内において互いに直交するx軸及びy軸を定め、第1の走査レンズは、該入射面及び該出射面のy軸を主走査方向とし、該入射面及び該出射面のx軸を副走査方向とし、主走査断面において、該走査面に垂直に入射する光束の主光線が該入射面及び該出射面の曲率中心に対応する点を通過し、副走査断面において、該基準点を通り該走査面に垂直な直線が該入射面及び該出射面の曲率中心に対応する点を通過するように配置され、該入射面及び該出射面の少なくとも一方の副走査断面、すなわちxz断面における形状がy=0に関して非対称である。
【0014】
本実施形態によれば、第1の走査レンズの入射面及び出射面の少なくとも一方のxz断面(副走査断面に相当)の形状を、y=0に関して非対称とすることにより、副走査方向において非対称に発生する像面湾曲及びボウを良好に補正することができる。
【0015】
なお、走査光学系の主走査方向、副走査方向、主走査断面、副走査断面の定義は後で与える。
【0016】
本発明の第2の態様による走査レンズは、上記の本発明の第1の態様及びその実施形態のいずれかの走査光学系に使用される第1の走査レンズと複数の第2の走査レンズとの組み合わせである。
【0017】
本態様の第1の走査レンズと複数の第2の走査レンズとの組み合わせによれば、バックフォーカスが短く、かつ、エネルギー効率の高い走査光学系を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、一般的な走査光学系の構成を示す図である。走査光学系は、コリメートレンズ101と、アパーチャ103と、シリンドリカルレンズ105と、偏向器であるポリゴンミラー107と、第1の走査レンズ109と、第2の走査レンズ111と、を含む。光源である半導体レーザ200から放出された光束は、コリメートレンズ101によってほぼ平行な光束とされ、アパーチャ103及びシリンドリカルレンズ105を通過し、ポリゴンミラー107で反射された後、第1の走査レンズ109及び第2の走査レンズ111によって走査面300上に集光される。ポリゴンミラー107が回転することによって、走査面300上において光束が集光される位置が変化し、光束による走査が実施される。ポリゴンミラー107の回転軸は、
図1の紙面に垂直な方向である。
【0020】
ここで、走査光学系の主走査方向、副走査方向、主走査断面、副走査断面を以下のように定義する。副走査方向とは、偏向器、すなわちポリゴンミラーの回転軸と平行な方向である。主走査断面とは、副走査方向を法線とする断面である。主走査方向とは、走査面上において集光された光束が走査により移動する方向を主走査断面に投射した方向である。副走査断面とは、主走査方向を法線とする断面である。
図1は、一般的な走査光学系の構成の主走査断面を示す図である。
【0021】
図2は、タンデム方式のカラープリンタ用走査光学系を説明するための図である。
図2は、走査光学系の副走査断面を示す概念図である。走査光学系は、4個の光源200a、200b、200c及び200d、4個のコリメートレンズ101a、101b、101c及び101dならびに4個の第2の走査レンズ111a、111b、111c及び111dを含む。なお、
図2においてアパーチャは省略されている。ここで、光源から偏向器107までの光学系を入射光学系100Aと呼称し、偏向器107から走査面300までの光学系を結像光学系100Bと呼称する。
【0022】
4個の光源200a、200b、200c及び200dから放出された4本の光束は、それぞれ4個のコリメートレンズ101a、101b、101c及び101dによってほぼ平行な光束とされた後、単一のシリンドリカルレンズ105によってポリゴンミラー107の面上に集光される。実際に、4本の光束は、
図1に示すように、ポリゴンミラー107の面において線状に集光されるが、副走査断面においては、
図2に示すように一点に集光される。ポリゴンミラー107の面に反射された4本の光束は、単一の第1の走査レンズ109及び4個の第2の走査レンズ111a、111b、111c及び111dのうちのそれぞれ対応するレンズを通過した後、走査面300上に集光される。
【0023】
図2に示す副走査断面において、ポリゴンミラー107の面上の光束の反射点を通過し、ポリゴンミラー107の回転軸に垂直な直線を基準軸AXと呼称する。走査光学系は、副走査断面において基準軸AXに関して対称に形成されている。ポリゴンミラー107に反射された4本の光束のうち、基準軸となす角度のより小さな2本の光束を内側光束liと呼称し、基準軸となす角度のより大きな2本の光束を外側光束loと呼称する。
【0024】
図3は、タンデム方式のカラープリンタ用走査光学系の結像光学系の副走査断面を示す図である。ポリゴンミラー107に反射された4本の光束は、第1の走査レンズ109を通過した後、折返しミラー110を経て、4個の第2の走査レンズ111a、111b、111c及び111dのうちそれぞれに対応するものを通過して、4個の感光ドラム300a、300b、300c及び300dのうちそれぞれに対応するものの面上に集光される。上述の走査光学系を収めたユニット100をレーザスキャンユニット(LSU)と呼称する。なお、
図3においては、図を簡潔にする目的で、複数の折返しミラーのうちの一つのみに符号を付している。
【0025】
以下に本発明の実施例を説明する。実施例の第1の走査レンズ及び第2の走査レンズの入射面及び出射面のそれぞれの形状は以下の式で表される。4個の第2の走査レンズ111a、111b、111c及び111dは同一の形状を有する。
【数1】
ここで、
【数2】
である。
【0026】
ここで、それぞれの面の座標軸は、それぞれの面の曲率中心を原点として定める。入射面の曲率中心と出射面の曲率中心を結ぶ直線をz軸とし、入射面から出射面へ進む方向を正の方向とする。z軸の方向は、レンズのサグの方向に相当する。それぞれの面のz=0の点を含み、z軸に垂直な面内において互いに直交するx軸及びy軸を定める。
【0027】
第1の走査レンズは、y軸を主走査方向とし、x軸を副走査方向とし、主走査断面において、走査面に垂直に入射する光束の主光線が入射面及び出射面の曲率中心に対応する点を通過し、副走査断面において、基準軸が入射面及び出射面の曲率中心に対応する点を通過するように配置する。第2の走査レンズのそれぞれは、y軸を主走査方向とし、主走査断面において、走査面に垂直に入射する光束の主光線が入射面及び出射面の曲率中心に対応する点を通過し、副走査断面において、x軸と副走査方向とが所定の角度(鋭角)を有し、4本の光束のそれぞれが通過するように配置する。上記の所定の角度(鋭角)をチルト量と呼称する。
【0028】
rは、レンズの2個の光学表面の曲率中心を結んだ直線からの距離を表す。kは、コーニック係数、Rは曲率半径を表す。A
ijは、係数を表す。
【0029】
第1の走査レンズの材料は、ポリシクロオレフィン系樹脂であり、屈折率は1.503である。第2の走査レンズの材料は、ポリメチルメタクリレート樹脂であり、屈折率は1.485である。第2の走査レンズは主走査方向に長いため、安価な材料を使用するのが好ましい。
【0030】
実施例1
図4は、実施例1の走査光学系の構成を示す図である。
図4(a)は、実施例1の走査光学系の主走査断面を示す図である。
図4(b)は、実施例1の走査光学系の入射光学系の副走査断面を示す図である。
図4(c)は、実施例1の走査光学系の結像光学系の副走査断面を示す図である。
【0031】
図4(a)に示す主走査断面において、コリメートレンズ1011を通過した光束のうちアパーチャの中心を通過する主光線のポリゴンミラー1071に到達するまでの経路と、該主光線の、ポリゴンミラー1071に反射されて走査面300に垂直に入射する経路とのなす角度を主走査断面における入射角θ
mと呼称する。
【0032】
図4(a)において、第1の走査レンズ1091のy軸は、主走査方向(走査面300に平行)であり、正の方向は上向きの方向である。第1の走査レンズ1091のz軸は、走査面300に垂直であり、正の方向は右向きの方向である。
【0033】
図4(b)及び
図4(c)に示す副走査断面において、図が煩雑になるのを避けるために、実際に存在する4本の光束のうち2本の光束のみを示している。2本の光束のうち基準軸AXのより近くに位置するものを内側光束l
iと呼称し、他方を外側光束l
oと呼称する。
図4(b)に示す副走査断面において、ポリゴンミラー1071に入射する内側光束l
iの主光線が基準軸AXとなす角度を副走査断面における内側光束l
iの入射角θ
siと呼称し、ポリゴンミラー1071に入射する外側光束l
oの主光線が基準軸AXとなす角度を副走査断面における外側光束l
oの入射角θ
soと呼称する。
【0034】
図4(c)において、第1の走査レンズ1091のx軸は、
副走査方向(走査面300に平行)であり、正の方向は下向きの方向である。第1の走査レンズ1091のz軸は、走査面300に垂直であり、正の方向は右向きの方向である。
【0035】
表1は、実施例1の走査光学系の仕様及び配置を示す表である。
【表1】
【0036】
有効走査幅とは、走査面上における、集光された光束の走査による軌跡、すなわち走査線の主走査方向の長さである。「入射角(主)」はθ
mを意味し、「入射角(副)」はθ
si及びθ
soを意味する。光源のθ⊥は、光源からの光束の主走査断面における広がり角度を意味し、光源のθ//は、光源からの光束の副走査断面における広がり角度を意味する。「アパーチャ(主)」はアパーチャ1031の主走査断面に平行な辺の長さを意味し、「アパーチャ(副)」はアパーチャ1031の副走査断面に平行な辺の長さを意味する。第一走査レンズは第1の走査レンズ1091を意味し、第二走査レンズは第2の走査レンズ1111を意味する。光源、コリメートレンズ及びアパーチャの副シフト量とは、副走査断面におけるそれぞれの中心と基準軸との間の距離を意味する。偏向基準点とは、主走査断面において光束の主光線が走査面に垂直に入射する場合の、該主光線のポリゴンミラー1071における反射点を意味する。「コリメートレンズ-出射面 〜 偏向基準点」とは、主走査断面における、コリメートレンズ1011の出射面の曲率中心、すなわち頂点から偏向基準点までの距離を意味する。この距離は、副走査断面における、コリメートレンズ1011の出射面の曲率中心と偏向基準点との間の基準軸方向の距離である。「アパーチャ 〜 偏向基準点」とは、主走査断面における、アパーチャ1031の中心から偏向基準点までの距離を意味する。この距離は、副走査断面における、アパーチャ1031の中心と偏向基準点との間の基準軸方向の距離である。「シリンドリカルレンズ-出射面 〜 偏向基準点」とは、主走査断面における、シリンドリカルレンズ1051の出射面の曲率中心、すなわち頂点から偏向基準点までの距離を意味する。この距離は、副走査断面における、シリンドリカルレンズ1051の出射面の曲率中心と偏向基準点との間の基準軸方向の距離である。「偏向基準点 〜 第一走査レンズ-入射面」とは、主走査断面における、偏向基準点から第1の走査レンズ1091の入射面の曲率中心、すなわち頂点までの距離を意味する。この距離は、副走査断面における、偏向基準点と第1の走査レンズ1091の入射面の曲率中心との間の基準軸方向の距離である。「偏向基準点 〜 第二走査レンズ-入射面」とは、主走査断面における、偏向基準点から第2の走査レンズ1111の入射面の曲率中心、すなわち頂点までの距離を意味する。この距離は、副走査断面における、偏向基準点と第2の走査レンズ1111の入射面の曲率中心との間の基準軸方向の距離である。「第二の走査レンズ出射面〜感光体(走査面)」とは、主走査断面における、第2の走査レンズ1111の出射面の曲率中心、すなわち頂点から、感光体、すなわち走査面300までの距離を意味する。この距離は、副走査断面における、第2の走査レンズ1111の出射面の曲率中心と走査面300との間の基準軸方向の距離である。この距離をBFで表す。「偏向基準点 〜 走査面」とは、主走査断面または副走査断面における、偏向基準点から走査面300までの距離を意味する。この距離をLで表す。「第二走査レンズ副シフト量」とは、副走査断面における、第2の走査レンズ1111の入射面の曲率中心と基準軸との間の距離を意味する。「第二走査レンズチルト量」とは、副走査断面において、第2の走査レンズ1111のx軸と副走査方向とがなす角度である。
【0037】
ここで、アパーチャ1031の二辺の長さは、走査面におけるビーム径が、主走査方向に50マイクロメータ、副走査方向に55マイクロメータとなるように定めた。
【0038】
表2は、実施例1の第1の走査レンズ1091及び第2の走査レンズ1111の入射面及び出射面の形状を表す係数を示す表である。
【表2】
【0039】
第1の走査レンズ1091の入射面及び出射面は、xの奇数乗項を含む項を有しない。したがって、第1の走査レンズ1091の入射面及び出射面のyz断面(主走査断面に相当)の形状は、x=0に関して対称である。すなわち、絶対値が同じで符号の異なるxの値に対応する2個のyz断面形状は同じである。第1の走査レンズの入射面及び出射面は、yの奇数乗項を含む項、X2Y1、X4Y1、X2Y3、X4Y3、X2Y5、X4Y5、X2Y7を有する。したがって、第1の走査レンズ1091の入射面及び出射面のxz断面(副走査断面に相当)の形状は、y=0に関して非対称である。すなわち、絶対値が同じで符号の異なるyの値に対応する2個のxz断面形状は異なる。
【0040】
このように、第1の走査レンズ1091の入射面及び出射面のxz断面(副走査断面に相当)の形状を、y=0に関して非対称とすることにより、副走査方向において非対称に発生する像面湾曲及びボウを良好に補正することができる。ボウとは、走査線の曲りであり、副走査方向の座標の最大値と最小値との差で表す。副走査方向において非対称に像面湾曲及びボウが発生する理由は、ポリゴンミラーにおける反射点がミラーの振り角度によってシフトするためである。
【0041】
第2の走査レンズ1111の入射面及び出射面は、xの奇数乗項を含む項を有しない。したがって、第2の走査レンズ1111の入射面及び出射面のyz断面(主走査断面に相当)の形状は、x=0に関して対称である。すなわち、絶対値が同じで符号の異なるxの値に対応する2個のyz断面形状は同じである。第2の走査レンズ1111の入射面及び出射面は、yの奇数乗項を含む項を有しない。したがって、第2の走査レンズ1111の入射面及び出射面のxz断面の形状は、y=0に関して対称である。すなわち、絶対値が同じで符号の異なるyの値に対応する2個のxz断面形状は同じである。
【0042】
第2の走査レンズ1111の入射面及び出射面のxz断面における曲率は、yの絶対値によって異なるように形成されている。このように、主走査断面におけるレンズの中心と端部で入射面及び出射面のxz断面における曲率を変化させ、また、上述のように、副走査断面においてレンズのx軸を副走査方向に対して傾斜させることにより、ボウを補正する。
【0043】
第2の走査レンズ1111は、主走査断面においてz軸近傍で負の屈折力、周縁部で正の屈折力を有しており、偏肉比が小さく非常に薄いレンズである。このような形状のレンズは、成形サイクルが短く生産性が良い。
【0044】
実施例2
図5は、実施例2の走査光学系の構成を示す図である。
図5(a)は、実施例2の走査光学系の主走査断面を示す図である。
図5(b)は、実施例2の走査光学系の入射光学系の副走査断面を示す図である。
図5(c)は、実施例2の走査光学系の結像光学系の副走査断面を示す図である。
【0045】
図5(a)に示す主走査断面において、コリメートレンズ1012を通過した光束のうちアパーチャ1032の中心を通過する主光線のポリゴンミラー1072に到達するまでの経路と、該主光線の、ポリゴンミラー1072に反射されて走査面300に垂直に入射する経路とのなす角度を主走査断面における入射角θ
mと呼称する。
【0046】
図5(a)において、第1の走査レンズ1092のy軸は、主走査方向(走査面300に平行)であり、正の方向は上向きの方向である。第1の走査レンズ109
2のz軸は、走査面300に垂直であり、正の方向は右向きの方向である。
【0047】
図5(b)及び
図5(c)に示す副走査断面において、図が煩雑になるのを避けるために、実際に存在する4本の光束のうち2本の光束のみを示している。2本の光束のうち基準軸AXのより近くに位置するものを内側光束l
iと呼称し、他方を外側光束l
oと呼称する。
図5(b)に示す副走査断面において、ポリゴンミラー1072に入射する内側光束l
iの主光線が基準軸AXとなす角度を副走査断面における内側光束l
iの入射角θ
siと呼称し、ポリゴンミラー1072に入射する外側光束l
oの主光線が基準軸AXとなす角度を副走査断面における外側光束l
oの入射角θ
soと呼称する。
【0048】
図5(c)において、第1の走査レンズ1092のx軸は、
副走査方向(走査面300に平行)であり、正の方向は下向きの方向である。第1の走査レンズ1092のz軸は、走査面300に垂直であり、正の方向は右向きの方向である。
【0049】
表3は、実施例2の走査光学系の仕様及び配置を示す表である。
【表3】
表3における用語の定義は、表1の用語の定義と同様である。
る。
【0050】
ここで、アパーチャ1032の二辺の長さは、走査面におけるビーム径が、主走査方向に50マイクロメータ、副走査方向に55マイクロメータとなるように定めた。
【0051】
表4は、実施例2の第1の走査レンズ1092及び第2の走査レンズ1112の入射面及び出射面の形状を表す係数を示す表である。
【表4】
【0052】
第1の走査レンズ1092の入射面及び出射面は、xの奇数乗項を含む項を有しない。したがって、第1の走査レンズ1092の入射面及び出射面のyz断面(主走査断面に相当)の形状は、x=0に関して対称である。すなわち、絶対値が同じで符号の異なるxの値に対応する2個のyz断面形状は同じである。第1の走査レンズ1092の入射面及び出射面は、yの奇数乗項を含む項、X2Y1、X4Y1、X2Y3、X4Y3、X2Y5、X4Y5、X2Y7を有する。したがって、第1の走査レンズ1092の入射面及び出射面のxz断面(副走査断面に相当)の形状は、y=0に関して非対称である。すなわち、絶対値が同じで符号の異なるyの値に対応する2個のxz断面形状は異なる。
【0053】
このように、第1の走査レンズ1092の入射面及び出射面のxz断面(副走査断面に相当)の形状を、y=0に関して非対称とすることにより、副走査方向において非対称に発生する像面湾曲及びボウを良好に補正することができる。ボウとは、走査線の曲りであり、副走査方向の座標の最大値と最小値との差で表す。副走査方向において非対称に像面湾曲及びボウが発生する理由は、ポリゴンミラーにおける反射点がミラーの振り角度によってシフトするためである。
【0054】
第2の走査レンズ1112の入射面及び出射面は、xの奇数乗項を含む項を有しない。したがって、第2の走査レンズ1112の入射面及び出射面のyz断面(主走査断面に相当)の形状は、x=0に関して対称である。すなわち、絶対値が同じで符号の異なるxの値に対応する2個のyz断面形状は同じである。第2の走査レンズ1112の入射面及び出射面は、yの奇数乗項を含む項を有しない。したがって、第2の走査レンズ1112の入射面及び出射面のxz断面の形状は、y=0に関して対称である。すなわち、絶対値が同じで符号の異なるyの値に対応する2個のxz断面形状は同じである。
【0055】
第2の走査レンズ1112の入射面及び出射面のxz断面における曲率は、yの絶対値によって異なるように形成されている。このように、主走査断面におけるレンズの中心と端部で入射面及び出射面のxz断面における曲率を変化させ、また、上述のように、副走査断面においてレンズのx軸を副走査方向に対して傾斜させることにより、ボウを補正する。
【0056】
第2の走査レンズ1112は、主走査断面においてz軸近傍で負の屈折力、周縁部で正の屈折力を有しており、偏肉比が小さく非常に薄いレンズである。このような形状のレンズは、成形サイクルが短く生産性が良い。
【0057】
実施例のまとめ及び従来例との比較
一般的にレンズの屈折力φは、焦点距離fの逆数であり、以下の式によって求められる。
φ = 1/f = (n-1)*(1/rs1 - 1/rs2) + (n-1)
2*t/(n*rs1*rs2)
ここで、nは屈折率、rs1及びrs2は、入射面及び出射面において光線が通過する箇所の部分曲率半径、tはレンズの厚みである。上記の式において、*は乗算を表す。
【0058】
実施例1の内側光束について、第1の走査レンズの屈折力をφ1s1、第2の走査レンズの屈折力をφ2s1とすると、
φ1s1=0.017866
φ2s1=0.020433
である。したがって、
φ1s1/φ2s1 = 0.874
である。
【0059】
実施例1の外側光束について、第1の走査レンズの屈折力をφ1s2、第2の走査レンズの屈折力をφ2s2とすると、
φ1s2=0.015601
φ2s2=0.020332
である。したがって、
φ1s2/φ2s2 = 0.767
である。
【0060】
実施例2の内側光束について、第1の走査レンズの屈折力をφ1s1、第2の走査レンズの屈折力をφ2s1とすると、
φ1s1=0.012635
φ2s1=0.018941
である。したがって、
φ1s1/φ2s1 = 0.667
である。
【0061】
実施例2の外側光束について、第1の走査レンズの屈折力をφ1s2、第2の走査レンズの屈折力をφ2s2とすると、
φ1s2=(0.009966)
φ2s2=(0.018937)
である。したがって、
φ1s2/φ2s2 = 0.526
である。
【0062】
実施例1の内側光束について、副走査断面における、第2の走査レンズの出射面の曲率中心と走査面との間の基準軸方向の距離をBF1、主走査断面または副走査断面における、偏向基準点から走査面までの距離をL1とすると、表1から
BF1/L1 = 0.188
である。
【0063】
実施例1の外側光束について、副走査断面における、第2の走査レンズの出射面の曲率中心と走査面との間の基準軸方向の距離をBF2、主走査断面または副走査断面における、偏向基準点から走査面までの距離をL2とすると、表1から
BF2/L2 = 0.186
である。
【0064】
また、実施例1の結像光学系の副走査方向の横倍率(副倍率)は、0.6倍である。第2の走査レンズが走査面に近い配置であっても、極端に小さい値でない。このため、入射光学系に設置されたアパーチャの副走査方向の径を確保することができ、エネルギー効率の高い光学系を実現している。
【0065】
実施例2の内側光束について、副走査断面における、第2の走査レンズの出射面の曲率中心と走査面との間の基準軸方向の距離をBF1、主走査断面または副走査断面における、偏向基準点から走査面までの距離をL1とすると、表3から
BF1/L1 = 0.171
である。
【0066】
実施例2の外側光束について、副走査断面における、第2の走査レンズの出射面の曲率中心と走査面との間の基準軸方向の距離をBF2、主走査断面または副走査断面における、偏向基準点から走査面までの距離をL2とすると、表3から
BF2/L2 = 0.170
である。
【0067】
また、実施例2の結像光学系の副走査方向の横倍率(副倍率)は、0.5倍である。第2の走査レンズが走査面に近い配置であっても、極端に小さい値でない。このため、入射光学系に設置されたアパーチャの副走査方向の径を確保することができ、エネルギー効率の高い光学系を実現している。
【0068】
光源からの出力エネルギーを100%として、各光学素子を通過する際の透過率、反射する際の反射率を考慮し、最終的に感光ドラムに到達するエネルギー効率を算出する。上記のエネルギー効率とは、最終的に感光ドラムに到達するエネルギー量を光源からの出力エネルギーで除した値である。
【0069】
表5は、各光学素子の透過率および反射率の値を示す表である。
【表5】
最終的に感光ドラムに到達するエネルギー効率を算出する際には、表5に示した各光学素子の透過率および反射率の値の他に、光源からの光束をコリメートレンズに取り込む際の効率及びアパーチャにおけるケラレを考慮する。
【0070】
表6は、実施例1、実施例2、従来例1、及び従来例2について、副走査断面における、第2の走査レンズの出射面の曲率中心と走査面との間の基準軸方向の距離BFと、主走査断面または副走査断面における、偏向基準点から走査面までの距離Lとの比、第1の走査レンズの屈折力をφ1sと第2の走査レンズの屈折力φ2sとの比、副倍率、及び最終的に感光ドラムに到達するエネルギー効率の値を示す表である。
【表6】
従来例1及び2は、それぞれ、特許文献1及び2に記載された光学系である。従来例1及び2のアパーチャの二辺の長さは、実施例1及び2と同様に、走査面におけるビーム径が、主走査方向に50マイクロメータ、副走査方向に55マイクロメータとなるように定めた。
【0071】
ある光束iについて、第1の走査レンズの屈折力をφ1si、第2の走査レンズの屈折力φ2siとし、光束iに対応する第2の走査レンズの出射面の曲率中心と走査面との間の距離をBFi、偏向基準点から走査面までの距離をLとすると、実施例1及び2の光学系は以下の式(1)及び(2)を満足する。
0.15 ≦ BFi/L ≦ 0.2 (1)
0.4 ≦ φ1si/φ2si ≦1 (2)
これに対して、従来例1及び2は、式(1)及び(2)のいずれも満足しない。
【0072】
このように、実施例1及び2の光学系は、BFiが小さいにもかかわらず、φ1si/φ2siを式(2)の範囲に定めることによって、結像光学系の副走査方向の横倍率(副倍率)mを大きくすることによって、入射光学系に設置されたアパーチャの副走査断面に平行な辺(径)を大きくし、エネルギー効率を高めている。