特許第6547162号(P6547162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6547162既知のデータを利用したステータスシグナリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6547162
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】既知のデータを利用したステータスシグナリング
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/24 20150101AFI20190711BHJP
   H04L 29/00 20060101ALI20190711BHJP
   H04L 1/20 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   H04B17/24
   H04L13/00 Z
   H04L1/20
【請求項の数】19
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-533161(P2018-533161)
(86)(22)【出願日】2017年1月11日
(65)【公表番号】特表2019-506047(P2019-506047A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】IB2017050138
(87)【国際公開番号】WO2017130071
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2018年7月17日
(31)【優先権主張番号】62/343,874
(32)【優先日】2016年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/317,509
(32)【優先日】2016年4月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/286,930
(32)【優先日】2016年1月25日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517247516
【氏名又は名称】ヴァレンス セミコンダクター リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リダ、アイラン
(72)【発明者】
【氏名】サラモン、アヴィヴ
【審査官】 森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−166176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/24
H04L 1/20
H04L 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知のシーケンスの送信を利用して動作ポイントの品質を示す通信システムであって、
第1の送受信器の動作ポイントの品質劣化を特定したことに応答して、第1の期間の間に第1の既知のシーケンスを送信する第1の送受信器と、
前記第1の既知のシーケンスを受信したことに応答して、第2の期間の間に第2の既知のシーケンスを用いて返信する第2の送受信器であって、前記第1の期間及び前記第2の期間のそれぞれは、前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器の間の往復遅延時間より長い、第2の送受信器とを備え、
前記第2の送受信器の動作ポイントの品質劣化を特定したことに応答して、前記第2の送受信器はさらに、前記第2の期間の間に前記第2の既知のシーケンスを送信し、次に前記第1の送受信器は、前記第1の期間の間に前記第1の既知のシーケンスを用いて返信し
前記第1の送受信器は、前記第2の既知のシーケンスを利用して、前記第1の送受信器が前記第2の既知のシーケンスを受信せずに回復できるより速く、前記第1の送受信器の前記動作ポイントの前記品質劣化から回復し、前記第2の送受信器は、前記第1の既知のシーケンスを利用して、前記第2の送受信器が前記第1の既知のシーケンスを受信せずに回復できるよりも速く、前記第2の送受信器の前記動作ポイントの前記品質劣化から回復する、通信システム。
【請求項2】
前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器は、前記第1の既知のシーケンス及び前記第2の既知のシーケンスをそれぞれ利用して、前記品質劣化の発生から1ミリ秒未満のうちに前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器の前記動作ポイントの前記品質劣化から回復する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器は、前記第1の既知のシーケンス及び前記第2の既知のシーケンスをそれぞれ利用して、前記品質劣化の発生から50マイクロ秒未満のうちに前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器の動作ポイントの前記品質劣化から回復する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記第1の送受信器は、前記第1の送受信器の前記動作ポイントの前記品質劣化から回復した後に、第3の既知のシーケンスを送信し、前記第2の送受信器は、前記第2の送受信器の前記動作ポイントの前記品質劣化から回復した後に、第4の既知のシーケンスを送信する、請求項1から3のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器は、第1のスクランブル装置及び第2のスクランブル装置をそれぞれ有し、前記第1のスクランブル装置は前記第2の送受信器に認識されており、前記第2のスクランブル装置は前記第1の送受信器に認識されており、前記第1の既知のシーケンス、前記第2の既知のシーケンス、前記第3の既知のシーケンス、及び前記第4の既知のシーケンスは異なるとともに、前記第1のスクランブル装置及び前記第2のスクランブル装置に基づいている、請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記第1の既知のシーケンス及び前記第2の既知のシーケンスは、それぞれ前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器によって送信されるアイドルシーケンスのビット単位の補数コードワードである、請求項4に記載の通信システム。
【請求項7】
前記第1の送受信器又は前記第2の送受信器によって送信されるそれぞれのビット単位の補数コードワードは、前記第1の送受信器又は前記第2の送受信器によって送信されるアイドルシーケンスに対応して現れる、請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記第3の既知のシーケンス及び前記第4の既知のシーケンスは、それぞれ前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器によって送信されるアイドルシーケンスであり、前記第2の送受信器は、前記第3の既知のシーケンスを受信して初めてデータを送信し始め、前記第1の送受信器は、前記第4の既知のシーケンスを受信して初めてデータを送信し始める、請求項4に記載の通信システム。
【請求項9】
前記第1の送受信器の前記動作ポイントの前記品質劣化を特定してから前記第1の既知のシーケンスの前記送信を開始するまでの期間は、前記第1の送受信器が名目データパケットを送信するのに必要な期間より短い、請求項1から8のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項10】
前記第1の送受信器は、データパケットを送信している途中で、前記第1の既知のシーケンスの前記送信を開始する、請求項9に記載の通信システム。
【請求項11】
前記第1の既知のシーケンスを受信してから前記第2の既知のシーケンスの前記送信を開始するまでの期間は、前記第2の送受信器が名目データパケットを送信するのに必要な期間より短い、請求項1から10のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項12】
前記第2の送受信器は、データパケットを送信している途中で、前記第2の既知のシーケンスの前記送信を開始する、請求項11に記載の通信システム。
【請求項13】
前記第1の期間及び前記第2の期間は両方とも、0.1マイクロ秒より長く、500マイクロ秒より短い、請求項1から12のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項14】
前記第1の期間及び前記第2の期間は両方とも、0.1マイクロ秒より長く、20マイクロ秒より短い、請求項1から12のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項15】
既知のシーケンスの送信を利用して、第1の送受信器及び第2の送受信器の動作ポイントの品質を示すための方法であって、
前記第1の送受信器の動作ポイントの品質劣化を特定すると、前記第1の送受信器によって第1の期間の間に第1の既知のシーケンスを送信する段階と、
前記第1の既知のシーケンスを受信すると、前記第2の送受信器によって第2の期間の間に第2の既知のシーケンスを用いて返信する段階であって、前記第1の期間及び前記第2の期間のそれぞれは、前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器の間の往復遅延時間より長い、段階と、
前記第2の送受信器の動作ポイントの品質劣化を特定すると、前記第2の送受信器によって前記第2の期間の間に前記第2の既知のシーケンスを送信し、前記第1の送受信器によって前記第1の期間の間に前記第1の既知のシーケンスを用いて返信する段階と、
前記第1の送受信器が前記第2の既知のシーケンスを受信せずに回復できるよりも速く前記第1の送受信器の前記動作ポイントの前記品質劣化から回復するために、前記第1の送受信器によって前記第2の既知のシーケンスを利用し、前記第2の送受信器が前記第1の既知のシーケンスを受信せずに回復できるよりも速く前記第2の送受信器の前記動作ポイントの前記品質劣化から回復するために、前記第2の送受信器によって前記第1の既知のシーケンスを利用する段階とを備える、方法。
【請求項16】
前記品質劣化の発生から1ミリ秒未満のうちに、前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器の前記動作ポイントの前記品質劣化から回復するために、前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器によって前記第1の既知のシーケンス及び前記第2の既知のシーケンスをそれぞれ利用する段階をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記品質劣化の発生から50マイクロ秒未満のうちに、前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器の前記動作ポイントの前記品質劣化から回復するために、前記第1の送受信器及び前記第2の送受信器によって前記第1の既知のシーケンス及び前記第2の既知のシーケンスをそれぞれ利用する段階をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の送受信器の前記動作ポイントの前記品質劣化から回復した後に、前記第1の送受信器によって第3の既知のシーケンスを送信する段階と、前記第2の送受信器の前記動作ポイントの前記品質劣化から回復した後に、前記第2の送受信器によって第4の既知のシーケンスを送信する段階とをさらに備える、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第3の既知のシーケンスを受信して初めて、前記第2の送受信器によってデータを送信する段階と、前記第4の既知のシーケンスを受信して初めて、前記第1の送受信器によってデータを送信する段階とをさらに備える、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年1月25日に出願された米国仮特許出願第62/286,930号の利益を主張し、2016年4月2日に出願された米国仮特許出願第62/317,509号の利益を主張し、また2016年6月1日に出願された米国仮特許出願第62/343,874号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
ステータスシグナリングが、送受信器機能を制御し、健全性情報及びステータス情報を監視するために一般に用いられている。しかしながら、ステータスシグナリングは機能する通信リンクを必要とし、従来技術の参考文献は、リンク相手の一方又は両方が、データを受信することができない劣悪な動作ポイントにある場合に、ステータスシグナリングを可能にするメカニズムを開示していない。
【発明の概要】
【0003】
1つの実施形態において、通信システムは、既知のシーケンスの送信を利用して動作ポイントの品質を示すように構成される。通信システムには、第1の及び第2の送受信器が含まれる。第1の送受信器は、その動作ポイントの品質劣化を特定したことに応答して、第1の期間の間に第1の既知のシーケンスを送信するように構成される。第2の送受信器は、第1の既知のシーケンスを受信したことに応答して、第2の期間の間に第2の既知のシーケンスを用いて返信するように構成され、第1及び第2の期間のそれぞれは、第1及び第2の送受信器の間の往復遅延時間より長い。また、第2の送受信器の動作ポイントの品質劣化を特定したことに応答して、第2の送受信器はさらに、第2の期間の間に第2の既知のシーケンスを送信するように構成され、次に第1の送受信器は、第1の期間の間に第1の既知のシーケンスを用いて返信するように構成される。
【0004】
別の実施形態において、既知のシーケンスの送信を利用して第1及び第2の送受信器の動作ポイントの品質を示すための方法が、以下の段階を含む。すなわち、第1の送受信器の動作ポイントの品質劣化を特定すると、第1の送受信器によって第1の期間の間に第1の既知のシーケンスを送信する段階と、第1の既知のシーケンスを受信すると、第2の送受信器によって第2の期間の間に第2の既知のシーケンスを用いて返信する段階であって、第1及び第2の期間のそれぞれは、第1及び第2の送受信器の間の往復遅延時間より長い、段階と、第2の送受信器の動作ポイントの品質劣化を特定すると、第2の送受信器によって第2の期間の間に第2の既知のシーケンスを送信し、第1の送受信器によって第1の期間の間に第1の既知のシーケンスを用いて返信する段階とである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
実施形態が、添付図面を参照しながら、例としてのみ本明細書で説明される。これらの実施形態の構造的な詳細を、これらの実施形態の基本的な理解に必要となるよりも詳細に示す試みは行われていない。図面は以下の通りである。
【0006】
図1】既知のシーケンスの送信を利用して動作ポイントの品質を示すための通信システムを示す。
【0007】
図2】既知のデータを高速収束に利用するモード変換キャンセラの1つの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1つの実施形態において、送受信器が、そのリンク相手から、当該相手が劣悪な動作ポイントに位置しているというインジケーションを受信する。その結果、送受信器は、少なくとも第1の予め定められた最短期間の間に第1の既知のデータを送信し始め、次に、その受信機(送信器の受信機)が良好な動作ポイントに位置していることを示す信号を送信する。リンク相手は、送受信器が劣悪な動作ポイントに位置しているというインジケーションをリンク相手が当該送受信器から受信する場合、類似の方式で動作するように構成される。リンク相手は、少なくとも第2の予め定められた最短期間の間に第2の既知のデータを送信し始め、次に、その受信機(リンク相手の受信機)が良好な動作ポイントに位置していることを示す信号を送信する。
【0009】
図1は、既知のシーケンスの送信を利用して動作ポイントの品質を示すための通信システムを示す。本システムは、第1の送受信器401及び第2の送受信器402を含み、これらの送受信器は通信チャネル403を介して通信する。第1の送受信器401は、自らが位置する動作ポイントの品質劣化を特定したことに応答して、第1の期間の間に第1の既知のシーケンスを送信する。次に、第2の送受信器402は、第1の既知のシーケンスを受信したことに応答して、第2の期間の間に第2の既知のシーケンスを用いて返信する。第1及び第2の期間のそれぞれは、第1及び第2の送受信器の間の往復遅延時間より長い。また、第2の送受信器402は、第2の送受信器402の動作ポイントの品質劣化を特定したことに応答して、第2の期間の間に第2の既知のシーケンスを送信し、次に第1の送受信器401は、第1の期間の間に第1の既知のシーケンスを用いて返信する。
【0010】
この通信システムの特徴は、様々なオプションであり得る。任意選択で、第1の送受信器は第2の既知のシーケンスを利用して、当該第2の既知のシーケンスを受信せずに回復できるよりも速く品質劣化から回復する。さらに、第2の送受信器は、第1の既知のシーケンスを利用して、当該第1の既知のシーケンスを受信せずに回復できるよりも速く品質劣化から回復することができる。別のオプションによれば、第1及び第2の送受信器はそれぞれ、第1及び第2の既知のシーケンスを利用して、品質劣化の発生から1ミリ秒未満のうちに品質劣化から回復する。1つの例では、品質劣化から回復するという意味は、通信システムがその期待される性能に従ってデータ交換に成功することができるということである。さらに別のオプションによれば、第1及び第2の送受信器はそれぞれ、第1及び第2の既知のシーケンスを利用して、品質劣化の発生から50マイクロ秒未満のうちに品質劣化から回復する。
【0011】
任意選択で、第1の送受信器は、品質劣化から回復した後に第3の既知のシーケンスを送信し、第2の送受信器は、品質劣化から回復した後に第4の既知のシーケンスを送信する。任意選択で、第1、第2、第3、及び第4の既知のシーケンスは異なる。さらに、第1及び第2の送受信器はそれぞれ、第1及び第2のスクランブル装置を含んでよく、第1のスクランブル装置は第2の送受信器に認識されており、第2のスクランブル装置は第1の送受信器に認識されており、第1、第2、第3、及び第4の既知のシーケンスは、これらのスクランブル装置に基づいている。追加的に又は代替的に、第1及び第2の既知のシーケンスはそれぞれ、第1及び第2の送受信器によって送信されるアイドルシーケンスのビット単位の補数コードワードであってよく、ビット単位の補数コードワードのそれぞれは、アイドルシーケンスに現れてよい。任意選択で、第3及び第4の既知のシーケンスはそれぞれ、第1及び第2の送受信器によって送信されるアイドルシーケンスである。また、別のオプションによれば、第2の送受信器は、第3の既知のシーケンスを受信して初めてデータを送信し始め、第1の送受信器は、第4の既知のシーケンスを受信して初めてデータを送信し始める。
【0012】
任意選択で、第1の送受信器の動作ポイントの品質劣化を特定してから第1の既知のシーケンスの送信を開始するまでの期間は、第1の送受信器が名目データパケットを送信するのに必要な期間より短い。さらに、第1の送受信器は、データパケットを送信している途中で、第1の既知のシーケンスの送信を開始してよい。別のオプションによれば、第1の既知のシーケンスを受信してから第2の既知のシーケンスの送信を開始するまでの期間は、第2の送受信器が名目データパケットを送信するのに必要な期間より短い。さらに、第2の送受信器は、データパケットを送信している途中で、第2の既知のシーケンスの送信を開始してよい。
【0013】
任意選択で、第1及び第2の期間は、予め決定され等しい。任意選択で、第1及び第2の期間は両方とも、0.1マイクロ秒より長く、500マイクロ秒より短い。また、任意選択で、第1及び第2の期間は両方とも、0.1マイクロ秒より長く、20マイクロ秒より短い。
【0014】
1つの例において、品質劣化はコモンモード信号のモード変換によって生じ、品質劣化を被っている間は、第1及び第2の送受信器は、それぞれの期待される性能を満たさない。この例では、第1の送受信器の動作ポイントの品質劣化は、コモンモード信号のモード変換によって生じることがあり、品質劣化を被っている間は、第1の送受信器は期待される性能を満たさない。追加的に又は代替的に、第2の送受信器の動作ポイントの品質劣化は、コモンモード信号のモード変換によって生じることがあり、品質劣化を被っている間は、第2の送受信器は期待される性能を満たさない。
【0015】
この通信システムはさらに、第1及び第2の送受信器のうち少なくとも一方が品質劣化から回復していない間に送信できなかったパケットの送信を要求するための再送信モジュールを含んでよい。また任意選択で、第1及び第2の送受信器は、500Mbpsを超える速度でデータを送信する差動通信チャネルを介して通信する。
【0016】
1つの実施形態において、既知のシーケンスの送信を利用し、通信チャネルを介して通信する第1及び第2の送受信器の動作ポイントの品質を示すための方法が、以下の段階を含む。段階1では、第1の送受信器の動作ポイントの品質劣化を特定すると、第1の送受信器によって第1の期間の間に第1の既知のシーケンスを送信する。段階2では、第1の既知のシーケンスを受信すると、第2の送受信器によって第2の期間の間に第2の既知のシーケンスを用いて返信し、第1及び第2の期間のそれぞれは、第1及び第2の送受信器の間の往復遅延時間より長い。さらに段階3では、第2の送受信器の動作ポイントの品質劣化を特定すると、第2の送受信器によって第2の期間の間に第2の既知のシーケンスを送信し、第1の送受信器によって第1の期間の間に第1の既知のシーケンスを用いて返信する。
【0017】
本方法は任意選択でさらに、第1の送受信器が品質劣化から回復した後に第1の送受信器によって第3の既知のシーケンスを送信し、第2の送受信器が品質劣化から回復した後に第2の送受信器によって第4の既知のシーケンスを送信する段階を含む。任意選択で、本方法はさらに、第3の既知のシーケンスを受信して初めて第2の送受信器によってデータを送信し、第4の既知のシーケンスを受信して初めて第1の送受信器によってデータを送信する段階を含む。
【0018】
本方法は任意選択で、第1の送受信器が第2の既知のシーケンスを受信せずに回復できるより速くその品質劣化から回復するために、第1の送受信器によって第2の既知のシーケンスを利用する段階を含んでよい。追加的に又は代替的に、本方法はさらに、第2の送受信器が第1の既知のシーケンスを受信せずに回復できるより速くその品質劣化から回復するために、第2の送受信器によって第1の既知のシーケンスを利用する段階を含む。任意選択で、本方法はさらに、第1及び第2の送受信器が、品質劣化の発生から1ミリ秒未満のうちに品質劣化から回復するために、それぞれ第1及び第2の既知のシーケンスを利用する段階を含む。別のオプションによれば、本方法はさらに、第1及び第2の送受信器が、品質劣化の発生から50マイクロ秒未満のうちに品質劣化から回復するために、それぞれ第1及び第2の既知のシーケンスを利用する段階を含む。
【0019】
1つの例において、第1の送受信器の動作ポイントの品質劣化を特定してから第1の既知のシーケンスを送信し始めるまでの期間は、第1の送受信器がパケットを送信するのに必要な期間より短い。また任意選択で、本方法はさらに、第1及び第2の送受信器のうち少なくとも一方が品質劣化から回復していない間に送信できなかったパケットを送信する段階を含む。
【0020】
図2は、既知のデータを高速収束に利用するモード変換キャンセラの1つの実施形態を示す。この実施形態は、以下の要素、すなわち、受信機アナログフロントエンド(Rx−AFE222)と、第2の送受信器138に結合されている差動通信チャネル210に結合されたコモンモードセンサAFE(CMS−AFE230)とを含む送受信器130を含む。Rx−AFE222は、受信された差動信号をデジタルイコライザ及び/又はデジタルキャンセラ(DEDC131)に送る。CMS−AFE230は、受信された差動信号のコモンモード信号のデジタル表現を抽出し、補償信号を生成して差動干渉を軽減する高速適応モード変換キャンセラ(FA−MCC132)に、抽出されたデジタル表現を転送する。補償信号は、差動干渉の影響の少なくとも一部を、送受信器がその期待される性能を満たすことができる程度までキャンセルする場合に、補償信号は差動干渉を軽減することに留意されたい。例えば、送受信器が約200Mb/sのスループットをサポートすると期待されているならば、補償信号は、送受信器が200Mb/sのスループットをサポートできる場合に差動干渉を軽減し、送受信器が200Mb/sのスループットをサポートできない場合には差動干渉を軽減しない。
【0021】
送受信器130は、深刻な差動干渉が発生したというインジケーションを受信したことに応答して、既知のデータを送信する第2の送受信器138を示す。送受信器130は、そのスライスエラーの精度を既知のデータを利用して改善し(場合によっては、スライスエラーを減少させることを意味する)、これにより、深刻な差動干渉をある程度軽減するレベルであって、再送信モジュール136がエラーのあったパケットの再送信を、2ミリ秒のウィンドウにわたって一定速度のデータ送信を維持するのに十分高速に要求できるレベルに対して、FA−MCC132の高速適応が可能になる。
【0022】
任意選択で、デジタルイコライザは適応デジタルイコライザであってよく、デジタルキャンセラは適応デジタルキャンセラであってよい。DEDCは、適応デジタルイコライザ及び適応デジタルキャンセラ(ADEC)の両方を含んでよい。この場合、FA−MCC及びADECは、元の送信信号の表現(ROS)を再構築し、物理符号化サブレイヤ(PCS135)にスライスされたシンボルを提供するスライサ133にROSを供給してよい。PCS135は、スライスされたシンボルからビットストリームを抽出し、スライスされたシンボルをパースするリンクレイヤコンポーネントをパケットに供給してよい。任意選択で、リンクレイヤコンポーネントは再送信モジュール136を含む。
【0023】
一般に、差動通信チャネルのパラメータは、完全に認識されているわけではなく、送受信器130は、深刻な差動干渉がない場合に、第1のパケット損失率で動作する。時には、差動通信チャネルは深刻な差動干渉を被ることがあり、深刻な差動干渉は、送受信器130のパケット損失率を第1のパケット損失率の少なくとも10倍、1000倍、及び/又は100万倍となる第2のパケット損失率に増大させる。追加的に又は代替的に、深刻な差動干渉は、コモンモード信号のモード変換によって引き起こされることがあり、深刻な差動干渉とみなされる干渉を被っている間に、送受信器はその期待される性能を満たさない。
【0024】
任意選択で、FA−MCC132は短時間で収束し、その結果、深刻な差動干渉に応じた再送信は依然として、送受信器130が1ミリ秒未満又はさらに50マイクロ秒未満のパケット遅延バラツキ内でパケットを転送することを可能にする。さらに、深刻な差動干渉が発生したというインジケーションを受信したことに応答して、FA−MCC132は、深刻な差動干渉の影響を速やかに軽減するために、その適応ステップサイズ(ADSS)を少なくとも50%だけ増大させることができる。任意選択で、FA−MCC132は、深刻な差動干渉の影響を軽減した後に、そのADSSを減少させてよい。
【0025】
この実施形態で用いられる要素は、様々な方法で実装されてよい。アナログフロントエンド(Rx−AFE、Tx−AFE、及びCMS−AFEなど)は、アナログ要素及び/又はアナログとデジタルの要素を用いて実装されてよい。バッファが、データを格納するメモリと、パラレルバス又はシリアルバスなどの通信チャネルを介してデータにアクセスするプロセッサとを用いて実装される。デジタルキャンセラ、イコライザ、DBF、FA−MCC、ADEC、DEDC、スライサ、セレクタ、エラー発生機、スクランブル装置、PCS、リンクレイヤモジュール、再送信モジュール、制御装置、及び/又は速度制御装置などの要素は、以下のハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェア要素のうち1つ又は複数を含む組み合わせを利用して実装されてよく、それらの要素は、ASIC、FPGA、プロセッサ、メモリブロック、ディスクリート回路、集積回路、少なくとも1つのメモリブロックに格納されたコマンドを実行する少なくとも1つのプロセッサ、コンピュータ処理装置で実行された場合にコンピュータ処理装置に特定の動作を実行させるコンピュータ実行可能命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体、プロセッサとプロセッサによって実行可能な命令のプログラムとを含むコンピュータ可読記憶媒体(命令が実行された場合、プロセッサは特定の動作を実行する)、1つ又は複数の処理ユニットと1つ又は複数のプロセッサユニットによる実行のために構成された1つ又は複数のプログラムを格納するメモリとを含むコンピュータシステム(1つ又は複数のプログラムは、特定の動作の命令を含む)、データ処理装置とデータ処理装置によって実行可能な命令を格納する非一時的コンピュータ可読媒体とを含むシステム(命令は実行されると、データ処理装置に特定の動作を実行させる)などである。
【0026】
本明細書では、「1つの実施形態」への言及は、参照されている特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。さらに、本明細書における「1つの実施形態」又は「いくつかの実施形態」への別個の言及が、必ずしも同じ実施形態を意味するわけではない。さらに、「1つの実施形態」及び「別の実施形態」への言及が、必ずしも異なる実施形態を意味しなくてよいが、場合によっては、ある実施形態の異なる態様を示すのに用いられる用語であってよい。
【0027】
図に示された個々のブロックは、機能的な性格を帯びてよく、したがって、必ずしも別個のハードウェア要素に対応しなくてよい。本明細書で開示された方法は、特定の順序で実行される特定の段階を参照して説明され示されたが、これらの段階は、実施形態の教示から逸脱することなく均等な方法を形成するために、組み合わされ、細分化され、及び/又は並べ替えられてよいことが理解される。したがって、本明細書で特に示されない限り、各段階の順序及びグループ化は、これらの実施形態を限定するものではない。さらに、これらの実施形態の方法及びメカニズムが、明確さを目的に単数形で説明されることがある。しかしながら、特に断りのない限り、いくつかの実施形態は、方法の複数の繰り返し又はメカニズムの複数の具体例を含んでよい。例えば、1つの実施形態において1つのプロセッサが開示される場合、その実施形態の範囲は、複数のプロセッサの使用も含むことが意図されている。
図1
図2